特許第6150021号(P6150021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150021
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】導電パターン形成部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20170612BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20170612BHJP
   G03F 7/09 20060101ALI20170612BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20170612BHJP
   G03F 7/30 20060101ALI20170612BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20170612BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20170612BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20170612BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20170612BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20170612BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20170612BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/038 501
   G03F7/09 501
   G03F7/40 501
   G03F7/30
   G03F7/40
   H01B13/00 503D
   H01B1/22 A
   H01B1/00 H
   H01B13/00 503B
   H01B5/14 A
   H01B5/14 B
   H05K3/12 610G
   H05K3/12 610B
   H05K3/28 D
   G06F3/041 495
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-561876(P2016-561876)
(86)(22)【出願日】2016年4月15日
(86)【国際出願番号】JP2016062150
(87)【国際公開番号】WO2016171083
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-86437(P2015-86437)
(32)【優先日】2015年4月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】水口 創
(72)【発明者】
【氏名】河野 友孝
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−282023(JP,A)
【文献】 特開2013−077098(JP,A)
【文献】 特開2015−040316(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/118875(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/146107(WO,A1)
【文献】 特開2015−018157(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/170943(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G03F 7/004
G03F 7/038
G03F 7/09
G03F 7/30
G03F 7/40
H01B 1/00
H01B 1/22
H01B 5/14
H01B 13/00
H05K 3/12
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された、カルボキシル基を有する樹脂(a)からなる層A、及び、透明電極層Bの表面に、導電性粒子、及び、二重結合とカルボキシル基とを有する樹脂(c)を含有する組成物Cを塗布して、塗布膜Cを得る、塗布工程と、
前記塗布膜Cを乾燥して乾燥膜Cを得る、乾燥工程と、
前記乾燥膜Cを露光して露光膜Cを得る、露光工程と、
前記露光膜Cを現像してパターンCを得る、現像工程と、
前記パターンCをキュアして導電パターンCを得る、キュア工程と、を備え、
前記導電性粒子に占める粒径0.3〜2.0μmの粒子の割合が、80個数%以上であり、
前記カルボキシル基を有する樹脂(a)の酸価が50〜250mgKOH/gである、導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項2】
前記導電性粒子に占める粒径0.5〜1.5μmの粒子の割合が、80個数%以上である、請求項1記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項3】
前記組成物Cが、さらに光重合開始剤を含有する、請求項1又は2記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項4】
前記二重結合とカルボキシル基を有する樹脂(c)が、酸価が50〜250mgKOH/gのアクリル樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項5】
前記透明電極層Bが銀を含有し、かつ、前記組成物Cが前記導電性粒子として銀粒子を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項6】
前記透明電極層Bが含有する銀が、繊維状である、請求項5記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項7】
前記組成物Cが、沸点200℃以上のアルコール系溶剤を含有する、請求項1〜6のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項8】
前記乾燥工程の温度が、50〜80℃である、請求項1〜7のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項9】
前記現像工程の現像圧力が、0.02〜0.2MPaである、請求項1〜8のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項10】
前記組成物Cが、エポキシ樹脂を含有する、請求項1〜9のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項11】
前記カルボキシル基を有する樹脂(a)からなる層Aの酸価SAと、前記導電パターンCの有機成分酸価SCとの差が、20〜150mgKOH/gである、請求項1〜10のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項12】
前記組成物Cが、ウレタン結合を有する化合物を含有する、請求項1〜11のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項13】
前記組成物Cが、シクロヘキサン骨格を有する化合物を含有する、請求項1〜11のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項14】
前記導電パターンC上に、イソボルニル基を含有するOptical Clear Adhesive層Dを積層する工程を備える、請求項1〜13のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【請求項15】
前記導電パターンC上に、ベンゾトリアゾール系化合物を含有するOptical Clear Adhesive層Dを積層する工程を備える、請求項1〜14のいずれか一項記載の導電パターン形成部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電パターン形成部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量式タッチパネルの表示領域に形成される表示電極は、ITO(酸化インジウムスズ)等からなる透明電極である。そのパターン加工のプロセスとしては、スパッタ等により基材にITO等の金属薄膜を膜付けして、その表面にさらに感光性を有する樹脂であるフォトレジストを塗布してフォトマスクを介して露光をし、現像でレジストパターンを形成した後にエッチング及びレジスト除去をするのが一般的である。
【0003】
一方で、基材上に予め感光性樹脂層及び透明電極層を積層したものを用意しておくことで、透明電極のパターンを形成する都度フォトレジストを塗布したり、除去したりすることを省く技術も考案されている(特許文献1及び2)。
【0004】
静電容量式タッチパネルでは表示領域の周辺には、透明電極と接続する周囲配線が形成される。この周囲配線の形成の方法としては、感光性を有する導電ペーストをフォトリソ法で微細加工する方法が知られている(特許文献3〜7)。この導電ペーストを用いて、上記の感光性樹脂層及び透明電極層を積層した基材から形成した透明電極パターンに接続する周囲配線を形成しようとした場合、該基材上に形成された感光性樹脂層及び透明電極層の表面に、導電ペーストを塗布してからその加工をする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−18157号公報
【特許文献2】特開2014−199814号公報
【特許文献3】特許第5278632号公報
【特許文献4】国際公開第2013/108696号
【特許文献5】特許第5360285号公報
【特許文献6】特許第5403187号公報
【特許文献7】国際公開第2013/146107号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基材上の感光性樹脂層の表面に導電ペーストの塗布膜が形成された部位においては、導電ペーストをフォトマスクを介して露光した後の現像工程において、導電ペーストの塗布膜の未露光部の溶解除去の際に残渣が発生するばかりでなく、形成された導電パターンと感光性樹脂層とのイオンマイグレーションが問題視されていた。
【0007】
そこで本発明は、未露光部の溶解除去における残渣の発生を抑制しながら、基材上に形成された導電パターンと感光性樹脂層とのイオンマイグレーション耐性に優れる、導電パターン形成部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討をした結果、導電パターンの形成に用いる導電ペーストが含有する導電性粒子として、その粒径が一定の条件を満たすものを用いることが、上記課題の解決に極めて有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、基材上に形成された、カルボキシル基を有する樹脂(a)からなる層A、及び、透明電極層Bの表面に、導電性粒子、及び、二重結合とカルボキシル基とを有する樹脂(c)を含有する組成物Cを塗布して、塗布膜Cを得る、塗布工程と、上記塗布膜Cを乾燥して乾燥膜Cを得る、乾燥工程と、上記乾燥膜Cを露光して露光膜Cを得る、露光工程と、上記露光膜Cを現像してパターンCを得る、現像工程と、上記パターンCをキュアして導電パターンCを得る、キュア工程と、を備え、上記導電性粒子に占める粒径0.3〜2.0μmの粒子の割合が、80個数%以上であり、前記カルボキシル基を有する樹脂(a)の酸価が50〜250mgKOH/gである、導電パターン形成部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電パターン形成部材の製造方法によれば、未露光部の溶解除去における残渣発生を抑制でき、かつ、基材上に形成されたカルボキシル基を有する樹脂からなる層とのイオンマイグレーション耐性に優れる導電パターンを形成することができる。
【0011】
さらにベンゾトリアゾール系化合物もしくはイソボルニル骨格を有するOCAを積層させることでよりイオンマイグレーション耐性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】導電パターン形成部材の断面を示す概略図である。
図2】イオンマイグレーション耐性の評価に用いた導電パターンの概略図である。
図3】残渣の評価に用いた導電パターンの概略図である。
図4】OCA層を積層した導電パターン形成部材の断面を示す概略図である。
図5】OCA層を積層したイオンマイグレーション耐性の評価に用いた導電パターンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の導電パターン形成部材の製造方法は、基材上に形成された、カルボキシル基を有する樹脂(a)からなる層A、及び、透明電極層Bの表面に、導電性粒子、及び、二重結合とカルボキシル基とを有する樹脂(c)を含有する組成物Cを塗布して、塗布膜Cを得る、塗布工程と、上記塗布膜Cを乾燥して乾燥膜Cを得る、乾燥工程と、上記乾燥膜Cを露光して露光膜Cを得る、露光工程と、上記露光膜Cを現像してパターンCを得る、現像工程と、上記パターンCをキュアして導電パターンCを得る、キュア工程と、を備え、上記導電性粒子に占める粒径0.3〜2.0μmの粒子の割合が、80%以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明の導電パターン形成部材の製造方法が備える塗布工程は、樹脂層A及び透明電極層Bの表面に、組成物Cを塗布して、塗布膜Cを得る工程である。
【0015】
透明電極層Bは、カルボキシル基を有する樹脂(a)(以下、「樹脂(a)」)からなる層A(以下、「樹脂層A」)の上に積層している。そして樹脂層Aは、基材上に形成されている。
【0016】
その上に樹脂層Aが形成される基材とは、その表面上に透明電極層や導電パターン等を形成するための、支持体をいう。基材としては、例えば、ガラス、ガラスエポキシ基板若しくはセラミックス基板等のリジッド基板又はポリエステルフィルム若しくはポリイミドフィルム等のフレキシブル基板が挙げられる。
【0017】
基材上に形成されている樹脂層Aは、いわゆる感光性樹脂層であり、透明電極層Bのパターン形成のためのフォトレジストとしての機能を果たすものである。樹脂層Aを構成する樹脂(a)は、その分子鎖中にカルボキシル基を有しており、アルカリ可溶性である。樹脂(a)としては、例えば、アクリル系共重合体、エポキシカルボキシレート化合物、ポリアミック酸又はシロキサンポリマーが挙げられる。可視光透過率の高いアクリル系共重合体又はエポキシカルボキシレート化合物が好ましい。
【0018】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、アクリル系モノマー及び不飽和カルボン酸等の不飽和酸を共重合成分として、共重合させることにより得られる。
【0019】
アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸(以下、「AA」)、メチルアクリレート、エチルアクリレート(以下、「EA」)、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート(以下、「BA」)、iso−ブチルアクリレート、iso−プロパンアクリレート、グリシジルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、エポキシ基を不飽和酸で開環させた水酸基を有するエチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFのアクリル酸付加物若しくはクレゾールノボラックのアクリル酸付加物等のエポキシアクリレートモノマー又はγ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、あるいは、それらのアクリル基を、メタクリル基に置換した化合物が挙げられる。樹脂層Aの可視光透過性を高めるため、脂肪鎖又は脂環式構造を有するアクリル系モノマーが好ましい。
【0020】
不飽和酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸若しくは酢酸ビニル又はこれらの酸無水物が挙げられる。共重合成分として用いる不飽和酸の多少により、得られるアクリル系共重合体の酸価を調整することができる。
【0021】
エポキシカルボキシレート化合物とは、エポキシ化合物と、不飽和二重結合を有するカルボキシル化合物と、を出発原料として合成することができる化合物をいう。
【0022】
出発原料となり得るエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルエーテル類、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類又はエポキシ樹脂が挙げられる。より具体的には、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート又はtert−ブチルグリシジルアミンが挙げられる。
【0023】
出発原料となり得る不飽和二重結合を有するカルボキシル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸又はα−シアノ桂皮酸が挙げられる。
【0024】
エポキシカルボキシレート化合物と多塩基酸無水物とを反応させて、エポキシカルボキシレート化合物の酸価を調整しても構わない。多塩基酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルーヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸又は無水マレイン酸が挙げられる。
【0025】
上記の多塩基酸無水物により酸価を調整したエポキシカルボキシレート化合物が有するカルボキシル基と、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和二重結合を有する化合物と、を反応させることにより、エポキシカルボキシレート化合物が有する反応性の不飽和二重結合の量を調整しても構わない。
【0026】
エポキシカルボキシレート化合物が有するヒドロキシ基と、ジイソシアネート化合物とを反応させることにより、ウレタン化をしても構わない。ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート又はノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0027】
樹脂(a)の酸価は、樹脂層Aがアルカリ可溶性のフォトレジストとして機能するものであるため、50〜250mgKOH/gであることが好ましく、パターン加工性をより高めるため、60〜150mgKOH/gがより好ましい。なお樹脂(a)の酸価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定することができる。
【0028】
樹脂層Aの可視光透過率は、本発明の製造方法により製造される導電パターン形成部材をタッチパネルの構成要素とする場合には、80%以上であることが好ましい。
【0029】
樹脂層Aの上に積層されている透明電極層Bは、全面的に平坦な層ではなく、樹脂層Aのフォトレジストとしての機能を利用してパターン加工がされた、任意形状のパターンである。すなわち、透明電極層は樹脂層Aを完全に覆い隠しているのではなく、透明電極層Bのパターンが形成されていない部位においては、樹脂層Aが露出した状態となっている。
【0030】
透明電極層Bは、導電成分のみからなるか、又は、導電成分を含有する。透明電極層Bを構成する導電成分としては、例えば、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム若しくはタングステン又はこれら金属の酸化物あるいはカーボンナノチューブが挙げられる。より具体的には、例えば、インジウムスズ酸化物(以下、「ITO」)、インジウム亜鉛酸化物、酸化インジウム−酸化亜鉛複合酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウム亜鉛酸化物、フッ素亜鉛酸化物、フッ素インジウム酸化物、アンチモンスズ酸化物又はフッ素スズ酸化物が挙げられる。中でも、導電性及び可視光透過性が高く、かつ価格面でも有利な、ITO又は繊維状の銀(以下、「銀繊維」)が好ましく、後述する導電パターンCとの接続信頼性が高い、銀繊維がより好ましい。
【0031】
パターン加工をする前の、透明電極層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法又はコーティング法が挙げられる。
【0032】
透明電極層Bの厚さは、良好な導電性及び可視光透過性を両立させるため、0.01〜1.5μmが好ましい。また透明電極層Bの可視光透過率は、樹脂層Aと同様の理由から、80%以上であることが好ましい。
【0033】
樹脂層A及び透明電極層Bの表面に塗布される組成物Cは、導電性粒子、及び、二重結合とカルボキシル基とを有する樹脂(c)(以下、「樹脂(c)」)を含有する。
【0034】
組成物Cが含有する導電性粒子としては、銀、金、銅、白金、鉛、スズ、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、チタン若しくはインジウム又はこれら金属の合金が挙げられるが、導電性高い銀、金又は銅が好ましく、安定性が高くかつ価格面でも有利な、銀がより好ましい。
【0035】
導電性粒子の形状としては、長軸長を短軸長で除した値であるアスペクト比が、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。導電性粒子のアスペクト比が1.0以上であると、導電性粒子同士の接触確率が、より高まることになる。一方で、導電性粒子のアスペクト比が2.0以下であると、後述する露光工程において露光光が遮蔽されにくく、現像マージンが広くなる。導電性粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で導電性粒子を観察し、無作為に100個の導電性粒子の一次粒子を選択して、それぞれの長軸長及び短軸長を測定し、両者の平均値からアスペクト比を求めることで決定することができる。
【0036】
導電性粒子の粒径は、0.3〜2.0μmが好ましく、0.5〜1.5μmがより好ましい。組成物Cを樹脂層A上に塗布すると、組成物Cが含有する成分によって樹脂層Aが膨潤して、導電性粒子が樹脂層A中に取り込まれ、残渣が発生し易くなる。ここで導電性粒子の粒径が0.3μm以上であると、樹脂層A中に取り込まれた導電性粒子が後述する現像工程において露出し易く、その洗い流しが可能となり、その結果として、イオンマイグレーション耐性が向上する。一方で、導電性粒子の粒径が2.0μm以下であると、得られる導電パターンCの直進性が高くなる。上記のような残渣抑制効果を得るため、本発明の導電パターン形成部材の製造方法においては、組成物Cが含有する導電性粒子に占める粒径0.3〜2.0μmの粒子の割合が、80%以上であることが必要であり、90%以上であることが好ましい。
【0037】
導電性粒子の粒径は、電子顕微鏡で導電性粒子を観察し、無作為に20個の導電性粒子の一次粒子を選択して、それぞれの最大幅を測定し、それらの平均値を求めることで算出することができる。また、組成物Cが含有する導電性粒子に占める粒径0.3〜2.0μmの粒子の割合は、電子顕微鏡で導電性粒子を観察し、無作為に100個の導電性粒子の一次粒子を選択して、それぞれの最大幅を測定し、最大幅が0.3〜2.0μmの範囲にあった一次粒子の割合から決定することができる。
【0038】
また、導電パターンCが含有する導電性粒子の粒径は、採取した導電パターンCをテトラヒドロフラン(以下、「THF」)に溶解し、沈降した導電性粒子を回収し、ボックスオーブンを用いて70℃で10分間乾燥をしたものについて、上記と同様に算出することができる。
【0039】
組成物Cの固形分に占める導電性粒子の割合は、60〜95質量%が好ましい。導電性粒子の割合が60質量%以上であると、導電性粒子同士の接触確率が高まり、得られる導電パターンCの抵抗値を安定化することができる。一方で、導電性粒子の割合が95質量%以下であると、後述する露光工程において露光光が遮蔽されにくく、現像マージンが広くなる。ここで固形分とは、溶剤を除く、組成物Cの全成分をいう。
【0040】
組成物Cが含有する樹脂(c)としては、例えば、アクリル系共重合体又はエポキシカルボキシレート化合物が挙げられる。得られる導電パターンCの密着性を高めるため、エポキシカルボキシレート化合物が好ましい。
【0041】
二重結合とカルボキシル基とを有するアクリル系共重合体は、アクリル系モノマー及びカルボキシル基と不飽和二重結合とを有する不飽和酸を共重合成分として、共重合させることにより得られる。不飽和酸としては、例えば、AA、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸若しくは酢酸ビニル又はこれらの酸無水物が挙げられる。共重合成分として用いる不飽和酸の多少により、得られるアクリル系共重合体の酸価を調整することができる。
【0042】
樹脂(c)の酸価は、樹脂(a)と同様であることが好ましい。また樹脂(c)の酸価は、樹脂(a)と同様に測定することができる。
【0043】
組成物Cは、光重合開始剤を含有しても構わない。光重合開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、エタノンー1−[9−エチル−6−2(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4’−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、又は、メチレンブルー等の光還元性色素と、アスコルビン酸若しくはトリエタノールアミン等の還元剤との組み合わせが挙げられるが、光感度の高い、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0044】
光重合開始剤の添加量は、樹脂(c)100質量部に対して、0.05〜30質量部が好ましい。光重合開始剤の添加量が0.05質量部以上であると、露光部の硬化密度が増加して、現像後の残膜率を高くすることができる。一方で、光重合開始剤の添加量が30質量部以下であると、組成物Cを塗布して得られた塗布膜Cの上部での、光重合開始剤による過剰な光吸収が抑制される。その結果、得られる導電パターンCが逆テーパー形状となることによる、樹脂層Aとの密着性低下が抑制される。
【0045】
組成物Cは光重合開始剤と共に、増感剤を含有しても構わない。
【0046】
増感剤としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール又は1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールが挙げられる。
【0047】
増感剤の添加量は、樹脂(c)100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましい。増感剤の添加量が0.05質量部以上であると、光感度が向上する。一方で、増感剤の添加量が10質量部以下であると、導電ペーストを塗布して得られた塗布膜C上部での、過剰な光吸収が抑制される。その結果、製造された導電パターンCが逆テーパー形状となることによる、樹脂層Aとの密着性低下が抑制される。
【0048】
組成物Cは、溶剤を含有しても構わない。溶剤としては、樹脂(c)の溶解性が高く、かつ溶剤の揮発による塗布ムラの生じにくい、沸点200℃以上のアルコール系溶剤が好ましい。沸点200℃以上のアルコール系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、オクタンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、イソデカノール、イソトリデカノール又はエチレングリコールモノヘキシルエーテルが挙げられる。
【0049】
溶剤の添加量は、樹脂(c)100質量部に対して10〜200質量部が好ましい。溶剤の添加量が10質量部以上であると、組成物Cの塗布膜の膜厚を均一に制御し易い。一方で、溶剤の添加量が200質量部以下であると、組成物Cの保管中に生じる導電性粒子の沈降を抑制できる。
【0050】
組成物Cは、エポキシ樹脂を含有しても構わない。エポキシ樹脂としては、例えば、エチレングリコール変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂又は複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。得られる導電パターンCの樹脂層Aへの密着性を高めるため、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又は水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、露光光の透過性が高い、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0051】
エポキシ樹脂の添加量は、樹脂(c)100質量部に対して0.05〜20質量部エポキシ樹脂の添加量が0.05質量部以上であると、得られる導電パターンCと、樹脂層Aとの密着性を高めることができる。一方で、エポキシ樹脂の添加量が20質量部以下であると、露光膜Cの現像液に対する溶解性が良好となる。
【0052】
組成物Cを塗布する方法としては、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷又はブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター若しくはバーコーターを用いた塗布が挙げられる。
【0053】
本発明の導電パターン形成部材の製造方法が備える乾燥工程は、塗布膜Cを乾燥して、乾燥膜Cを得る工程である。
【0054】
得られる乾燥膜Cの膜厚は、1〜20μmが好ましい。乾燥膜Cの膜厚は、触針式段差計(例えばサーフコム(登録商標)1400;(株)東京精密製)を用いて測定することができる。より具体的には、無作為に選んだ3つの位置の膜厚を触針式段差計(測長:1mm、走査速度:0.3mm/sec)でそれぞれ測定し、それらの平均値を乾燥膜Cの膜厚とすることができる。
【0055】
塗布膜Cを乾燥する方法としては、例えば、ボックスオーブン、ホットプレート若しくは赤外線等による加熱乾燥又は真空乾燥が挙げられる。加熱の温度は50〜80℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。加熱の温度が50℃以上であると、乾燥膜Cが含有する溶剤等の量が十分に少なくなり、現像マージンが広くなる。一方で、加熱の温度が80℃以下であると、樹脂層Aが膨潤しづらく、樹脂層A中に取り込まれる導電性粒子が減ることで、現像工程における残渣が発生しにくくなる。なお加熱の時間は、1分〜数時間が好ましい。ここで、加熱の温度とは、K熱電対において基板表面を測定した温度をいう。
【0056】
本発明の導電パターン形成部材の製造方法が備える露光工程は、塗布膜Cを露光して、乾燥膜Cを得る工程である。
【0057】
露光の光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ又はi線(365nm)、h線(405nm)若しくはg線(436nm)を発するLEDが挙げられる。露光の方法としては、例えば、真空吸着露光、プロキシ露光、プロジェクション露光又は直描露光が挙げられる。
【0058】
本発明の導電パターン形成部材の製造方法が備える現像工程は、露光膜Cを現像して未露光部を溶解除去して所望のパターンCを得る工程である。
【0059】
アルカリ現像を行う場合の現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンの水溶液が挙げられる。これらの水溶液に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド若しくはγ−ブチロラクトン等の極性溶媒、メタノール、エタノール若しくはイソプロパノール等のアルコール類、乳酸エチル若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン若しくはメチルイソブチルケトン等のケトン類又は界面活性剤を添加しても構わない。
【0060】
有機現像を行う場合の現像液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド若しくはヘキサメチルホスホルトリアミド等の極性溶媒又はこれら極性溶媒とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、メチルカルビトール若しくはエチルカルビトールとの混合溶液が挙げられる。
【0061】
現像の方法としては、例えば、基材を静置又は回転させながら現像液を露光膜Cの表面にスプレーする方法、現像液を吐出するノズルが多数配置された現像槽の中を、基材をコンベアで通過させる方法、現像液中に浸漬する方法、又は、基材を現像液中に浸漬しながら超音波をかける方法が挙げられる。大面積を均一に現像するという観点からは、現像槽の中を、基材をコンベアで通過させる現像が好ましい。その場合、ノズルから吐出される現像液の圧力は、0.02〜0.2MPaが好ましい。現像液の圧力が0.02MPa以上であると、打力により樹脂層A中に取り込まれた導電性粒子を除去し易くなる。一方で、現像液の圧力が0.2MPa以下であると、得られるパターンCの樹脂層Aに対する密着性が悪化しづらい。 現像工程で得られたパターンCは、リンス液によるリンス処理を施しても構わない。ここでリンス液としては、例えば、水あるいは水にエタノール若しくはイソプロピルアルコール等のアルコール類又は乳酸エチル若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類を加えた水溶液が挙げられる。
【0062】
本発明の導電パターン形成部材の製造方法が備えるキュア工程は、パターンCをキュアして導電パターンCを得る工程である。
【0063】
キュアの温度は、100〜300℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。キュアの温度が100℃未満であると、樹脂(c)の体積収縮量が大きくならず、得られる導電パターンCの比抵抗が十分に低くならない。一方で、キュアの温度が300℃を超えると、耐熱性が低い基材等の上に、導電パターンを形成することができない。
【0064】
キュアの方法としては、例えば、オーブン、イナートオーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、紫外線ランプ、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター若しくはキセノンフラッシュランプ等の電磁波、又は、マイクロ波による加熱乾燥、あるいは、真空乾燥が挙げられる。加熱により、得られる導電パターンCの硬度が高まり、他の部材との接触による欠けや剥がれ等を抑制することができ、さらには樹脂層Aとの密着性を向上させることができる。
【0065】
イオンマイグレーション耐性をより向上させるため、樹脂層Aの酸価SAと、導電パターンCの有機成分酸価SCとの差(SA−SCの値)は、20〜150mgKOH/gであることが好ましく、30〜100mgKOH/gであることがより好ましく、40〜90mgKOH/gであることがさらに好ましい。得られる導電パターンCは、カルボキシル基を有する樹脂(c)に起因して吸湿性が高く、その影響で導電性粒子を起点とするイオンマイグレーション現象が起こりやすい。しかしながら、SA−SCの値が20mgKOH/g以上であると、水分を樹脂層Aが優先的に吸湿するため、導電パターンCの吸湿が抑制され、結果として導電パターン形成部材のイオンマイグレーション耐性を向上させることができる。一方で、SA−SCの値が150mgKOH/g以下であると、樹脂層Aと導電パターンCとがそれぞれ含有する、樹脂(a)及び樹脂(c)のカルボキシル基同士の水素結合量を増やすことができ、樹脂層Aと導電パターンCとの密着性を向上させることができる。
【0066】
SAの値は、採取した1質量部の樹脂層Aを、100質量部のTHFに溶解し、該溶液をフェノールフタレイン液を指示薬として0.1mol/L水酸化カリウム溶液で滴定して、算出することができる。
【0067】
SCの値は、まず、採取した1質量部の導電パターンCを、10質量部のTHFに溶解し、フィルター等で導電粒子を除去後、該溶液をフェノールフタレイン液を指示薬として0.1mol/L水酸化カリウム溶液で滴定して導電パターンCの酸価を算出することができる。
なお組成物Cにエポキシ樹脂が含有されている場合、キュア工程でカルボキシル基と反応し、導電パターンCの有機成分酸価を下げることができる。
【0068】
本発明の導電パターン形成部材は、マイグレーションの抑制を目的に、ベンゾトリアゾール系化合物またはイソボルニル骨格を有するOCA(Optical Clear Adhesive)層Dで被覆できる。
【0069】
ベンゾトリアゾール系化合物としては1H−ベンゾトリアゾール(1,2,3−ベンゾトリアゾール)、4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、4−メチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、5−メチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N−メチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N−エチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジメチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジエチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジプロピルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジブチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジヘキシルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジオクチルベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジメチル−4−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジメチル−5−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジエチル−4−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジエチル−5−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジプロピル−4−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジプロピル−5−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジブチル−4−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジブチル−5−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジヘキシル−4−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン、N,N−ジヘキシル−5−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミンなどが挙げられる。
【0070】
イソボルニル骨格を有する化合物としてはイソボルニルアセテート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルシクロヘキサノールなどが挙げられ、これら化合物をアクリル共重合体の構成成分の一つとして含有してもよい。
【0071】
OCA層Dを形成するためのOCA材は上記化合物を含有する粘着剤を離型処理された基材の上に塗工し、乾燥することで得られる。得られたOCA材を熱ラミネーター等で熱圧着することでOCA層Dを形成することができる。
【0072】
本発明のタッチパネルは、本発明の製造方法により製造された導電パターン形成部材を具備する。より具体的には、本発明の製造方法により製造された導電パターン形成部材は、タッチパネル用の部材として好適に用いられる。タッチパネルの方式としては、例えば、抵抗膜式、光学式、電磁誘導式又は静電容量式が挙げられるが、静電容量式タッチパネルは特に微細な配線が求められることから、本発明の導電パターン形成部材がより好適に用いられる。本発明の製造方法により製造された導電パターンCをその周囲配線として備え、かつ該周囲配線が50μmピッチ(配線幅+配線間幅)以下であるタッチパネルにおいては、額縁幅を細くでき、ビューエリアを広くすることができる。
【実施例】
【0073】
以下に本発明を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0074】
各実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりである。
【0075】
[樹脂(a)]
(合成例1)
共重合比率(質量基準):EA/メタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2−EHMA」)/BA/N−メチロールアクリルアミド(以下、「MAA」)/AA=20/40/20/5/15
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「DMEA」)を仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2−EHMA、20gのBA、5gのMAA、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、樹脂(a−1)を得た。得られた樹脂(a−1)の酸価は103mgKOH/gであった。
【0076】
(合成例2)
共重合比率(質量基準):EA/2−EHMA/BA/MAA/AA=20/20/20/15/25
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、20gの2−EHMA、20gのBA、5gのMAA、25gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、樹脂(a−2)を得た。得られた樹脂(a−2)の酸価は153mgKOH/gであった。
【0077】
(合成例3)
共重合比率(質量基準):EA/2−EHMA/BA/MAA/AA=30/20/10/25/15
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、30gのEA、20gの2−EHMA、10gのBA、25gのMAA、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、樹脂(a−3)を得た。得られた樹脂(a−3)の酸価は101mgKOH/gであった。
【0078】
(合成例4)
共重合比率(質量基準):EA/2−EHMA/BA/グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)/AA=20/40/20/5/15
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2−EHMA、20gのBA、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、樹脂(a−4)を得た。得られた樹脂(a−4)の酸価は107mgKOH/gであった
[樹脂(c)]
(合成例5)
共重合比率(質量基準):EA/2−EHMA/スチレン(以下、「St」)/グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」)/AA=20/40/25/5/10
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのEA、40gの2−EHMA、25gのSt、10gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、樹脂(c−1)を得た。得られた樹脂(c−1)の酸価は73mgKOH/gであった。
【0079】
(合成例6)
共重合比率(質量基準):エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(FA−324A;日立化成工業(株)製)/EA/GMA/AA=60/20/5/15
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのDMEAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、60gのエチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、20gのEA、15gのAA、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのDMEAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのGMA、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのDMEAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、樹脂(c−2)を得た。得られた樹脂(c−2)の酸価は104mgKOH/gであった。
【0080】
(合成例7)
窒素雰囲気の反応溶液中に、492.1gのカルビトールアセテート、860.0gのEOCN−103S(日本化薬(株)製;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;エポキシ当量:215.0g/当量)、288.3gのAA、4.92gの2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール及び4.92gのトリフェニルホスフィンを仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mg・KOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。引き続き、この反応液に169.8gのカルビトールアセテート及び201.6gのテトラヒドロ無水フタル酸を仕込み、95℃で4時間反応させ、樹脂(c−3)を得た。得られた樹脂(c−3)の酸価は104mgKOH/gであった。
【0081】
(合成例8)
窒素雰囲気の反応容器中に、368.0gのRE−310S(日本化薬(株)製;エポキシ当量:184.0g/当量)、141.2gのAA、1.02gのハイドロキノンモノメチルエーテル及び1.53gのトリフェニルホスフィンを仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、エポキシカルボキシレート化合物を得た。その後、この反応溶液に755.5gのカルビトールアセテート、268.3gの2,2−ビス(ジメチロール)−プロピオン酸、1.08gの2−メチルハイドロキノン及び140.3gのスピログリコールを加え、45℃に昇温した。この溶液に485.2gのトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを、反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させ、樹脂(c−4)を得た。得られた樹脂(c−4)の酸価は80.0mgKOH/gであった。
【0082】
(合成例9)
窒素雰囲気の反応容器に、300gのデナコールEX−203(ナガセケムテックス(株)製)のアクリル酸付加物(分子量:368)、500gのDMEA、0.5gの2−メチルハイドロキノン及び200gの2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を仕込み、45℃に昇温した。この溶液に201.3gのトルエンジイソシアネートを、反応温度が50℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させた。この溶液に120gのGMAを加え、95℃に昇温して6時間反応させ、樹脂(c−5)を得た。得られた化合物(c−5)の酸価は83mgKOH/gであった。
【0083】
[光重合開始剤]
・IRGACURE(登録商標)OXE−01(以下、「OXE−01」;チバジャパン(株)製)
・IRGACURE(登録商標)369(以下、「IC−369」;チバジャパン(株)製)
[モノマー]
・ライトアクリレートMPD−A(以下、「MPD−A」;共栄社化学(株)製)
[アルコール系溶剤]
・ジエチレングリコール(以下、「DEG」)
[エポキシ樹脂]
・jER(登録商標)828(以下、「828」;三菱化学(株)製)
・jER(登録商標)YX−8000(以下、「YX−8000」;三菱化学(株)製)
[透明電極材料]
・ITO(酸化インジウム97質量%、酸化スズ3質量%)
・銀繊維(線径5nm、線長5μm)
[OCA(d)]
(合成例10)
窒素雰囲気の反応容器中に、150gの酢酸エチルを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、50.0gのEA、10.0gの2−ヒドロキシエチルアクリレート、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gの酢酸エチルからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。
次に上記アクリル共重合体溶液に1gの1,2,3−ベンゾトリアゾールを添加し、樹脂固形分が30%になるように酢酸エチルで希釈し、そこへ1.2gのデュラネートP301−75E(旭化成(株)製;固形分75%)を添加したものを片面を離型処理された50μmのPETフィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥することでOCA(d−1)を得た。
【0084】
(合成例11)
窒素雰囲気の反応容器中に、150gの酢酸エチルを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、50.0gのイソボルニルメタクリレート、10.0gの2−ヒドロキシエチルアクリレート、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gの酢酸エチルからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。
次に上記アクリル共重合体溶液を酢酸エチルで樹脂固形分が30%になるように希釈し、そこへ1.2gのデュラネートP301−75E(旭化成(株)製;固形分75%)を添加したものを片面を離型処理された50μmのPETフィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥することでOCA(d−2)を得た。
【0085】
(合成例12)
窒素雰囲気の反応容器中に、150gの酢酸エチルを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、50.0gのイソボルニルメタクリレート、10.0gの2−ヒドロキシエチルアクリレート、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gの酢酸エチルからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。
次に上記アクリル共重合体溶液に1gの1,2,3−ベンゾトリアゾールを添加し、樹脂固形分が30%になるように酢酸エチルで希釈し、そこへ1.2gのデュラネートP301−75E(旭化成(株)製;固形分75%)を添加したものを片面を離型処理された50μmのPETフィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるように塗工して、75℃で5分間乾燥することでOCA(d−3)を得た。
【0086】
(実施例1)
<樹脂層Aの形成>
基材として、厚さ30μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。基材の片面に、樹脂(a−1)、MPD−A及びOXE−01がそれぞれ100:50:1の割合で混合された組成物A1を塗布し、熱処理及び乾燥をして、厚さが4μmの樹脂層A1を形成した。
<透明電極層Bの形成>
樹脂層Aの表面に、ITOの焼結体ターゲットを備えたスパッタ装置を用いて、ITOからなる厚さ22nmのITO薄膜を形成した。
<ITO薄膜のパターン加工>
ITO薄膜にフォトマスクを密着させ、超高圧水銀ランプを有する露光機で200mJ/cmの露光量で樹脂層A1及びITO薄膜を露光し、さらにフォトマスクを介すことなく、200mJ/cmの露光量で樹脂層A1及びITO薄膜を全面露光した露光後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で30秒間スプレー現像し、樹脂層A1上にパターン加工された透明電極層B1を形成した。
<組成物Cの調製>
100mLクリーンボトルに、10.0gの化合物(C−1)、2.0gのIC−369及び5.0gのジエチエングリコールを入れ、自転−公転真空ミキサー“あわとり錬太郎”(登録商標)ARE−310((株)シンキー製)で混合して、17.0gの樹脂溶液C1(固形分70.1質量%)を得た。
得られた17.0gの樹脂溶液C1、68.0gの銀粒子を混ぜ合わせ、3本ローラーミル(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、85.0gの組成物C1を得た。
<導電パターン形成部材の製造>
樹脂層A1及びパターン加工された透明電極層B1の表面に、組成物C1をスクリーン印刷機で乾燥膜C1の膜厚が5μmになるように塗布し、70℃で10分間乾燥後、所定のフォトマスクを介して超高圧水銀ランプを有する露光機で300mJ/cmの露光量で露光し、0.2質量%炭酸ナトリウム水溶液を0.1MPaの圧力で30秒間スプレー現像した後、140℃で60分間キュアを行い、導電パターン形成部材1を製造した。
【0087】
導電パターン形成部材1の樹脂層A1の酸価SAは98mgKOH/g、導電パターンC1の有機成分酸価SCは55mgKOH/gであり、SA−SCの値は、43mgKOH/gであった。
<残渣の評価>
図3に示す導電パターンC1を形成した導電パターン形成部材1について、未露光部分の全光線透過率Tを、NDH−7000SP(日本電色工業(株)製)を用いて、JIS K7361−1に準じて測定した。一方で、組成物Cを塗布していない部位の(樹脂層A単独の)全光線透過率Tを、同様に測定し、Tに対するTの低下率を算出して、以下の判断基準に基づき良/不良の別を判断した。結果を表2に示す。
低下率が10%以下 : 良
低下率が10%超 : 不良
<イオンマイグレーション耐性の評価>
図2に示す導電パターンC1を形成した導電パターン形成部材1を、85℃、85%RHの高温高湿槽に投入し、端子部からDC5Vの電圧を印加して、急激に抵抗値が3桁低下する短絡時間を確認した。計10個の導電パターン形成部材1で同評価を繰り返し、それらの平均値を、イオンマイグレーション耐性の値とした。結果を表2に示す。
【0088】
(実施例2〜14)
透明電極層Bが銀繊維の場合は下記方法により形成した以外は、表1に示す条件の導電パターン形成部材を実施例1と同様の方法で製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
<透明電極層Bの形成>
銀繊維の水分散液(固形分0.2質量%)を樹脂層A2上に塗布し、100℃で5分間乾燥し、厚さ1.0μmからなる銀繊維薄膜を形成した。
<銀繊維薄膜のパターン加工>
銀繊維薄膜にフォトマスクを密着させ、超高圧水銀ランプを有する露光機で200mJ/cmの露光量で樹脂層A2及び銀繊維薄膜を露光し、さらにフォトマスクを介すことなく、200mJ/cmの露光量で樹脂層A2及び銀繊維薄膜を全面露光した露光後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で30秒間スプレー現像し、樹脂層A2上にパターン加工された透明電極層B2を形成した。
(実施例15)
実施例1と同様の方法で、導電パターン形成部材を製造した。
<OCA層Dの形成>
樹脂層A1及びパターン加工した透明電極層B1、導電パターンC1の表面にOCA(d−1)を80℃、圧着圧力0.5MPaの条件でラミネートして、図5に示す積層部材6、及び図6に示す積層部材7をそれぞれ製造した。
積層部材6及び7について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例16〜17)
表1に示す導電パターン形成部材を実施例15と同様の方法で製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0089】
(比較例1〜3)
表1に示す条件の導電パターン形成部材を実施例1もしくは実施例2と同様の方法で製造し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0090】
実施例1〜17においては、いずれも残渣が十分に抑制された、イオンマイグレーション耐性に優れる導電パターン形成部材を製造できていることが判る。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の製造方法により製造された導電パターン形成部材は、タッチパネルの構成要素として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 透明電極層B
2 導電パターンC
3 層A
4 支持体
5 端子部
6 乾燥膜Cの露光エリア
7 乾燥膜Cの未露光部エリア
8 塗布膜Cの印刷エリア
9 OCA層D
図1
図2
図3
図4
図5