(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る乗員状態判定装置10は、車両1に設けられている。本実施形態では、車両1は図示しないエンジンの駆動力により駆動されるエンジン車である。
【0021】
乗員状態判定装置10は、車両1が衝突した際に乗員の状態を判定するものである。乗員状態判定装置10は、乗員情報取得手段20と、制御部30とを備える。また、車両1には、加速度センサS(Sa〜Sd)と、通信装置40と、エンジンの作動を制御するエンジン制御部50とが備えられている。
【0022】
図2に示すように、乗員情報取得手段20は、免許証から乗員情報を読み取る読取手段21と、予め乗員情報が記録されたカード情報記録部22と、読み取った乗員情報が記録された乗員情報と一致するかを判断する乗員情報判定手段23とを備える。
【0023】
乗員情報取得手段20は、例えば車両の運転席付近に設けられて、運転者が乗車して免許証を乗員情報取得手段20の読取手段21に挿入できるように構成される。読取手段21は、例えばカードリーダーであり、カードが挿入されると、カードから情報を読み取る。本実施形態では、カードは免許証である。また、乗員情報としては、例えば免許証番号、住所、生年月日(年齢)、性別等が挙げられ、本実施形態では、運転免許証からは免許証番号、年齢が読み取られる。乗員情報取得手段20により乗員情報が取得される乗員は、本実施形態では運転者である。乗員情報取得手段20は、取得した乗員情報を制御部30に入力する。
【0024】
カード情報記録部22には、予め車両1の保有者が1以上の乗員情報を記録している。乗員情報判定手段23は、カード情報記録部22に記録されている乗員情報のうち、読取手段21が読み取った乗員情報と一致する乗員情報があるか否かを判断する。
【0025】
乗員情報判定手段23が一致する乗員情報がなかったと判定する場合には、乗員情報取得手段20は、一致する乗員情報がないことを示す信号をエンジン制御部50及び通信装置40に入力する。乗員情報判定手段23が一致する乗員情報があったと判定する場合には、乗員情報取得手段20は、一致する乗員情報があることを示す信号をエンジン制御部50に入力する。そして、乗員情報取得手段20は一致する乗員情報があれば、該当する乗員の性別も取得し、この性別も乗員情報としてさらに取得する。
【0026】
カード情報記録部22に記録されている乗員情報のうち、読取手段21が読み取った乗員情報と一致する乗員情報がない場合には、車両が盗難されたとも考えられる。従って、乗員情報判定手段23が一致する乗員情報がなかったと判定する場合には、乗員情報取得手段20は、一致する乗員情報がないことを示す信号をエンジン制御部50及び通信装置40に入力している。これにより、エンジン制御部50は、一致する乗員情報がないことを示す信号が入力されると、エンジンの作動を停止する。通信装置40は、乗員情報がないことを示す信号が入力されると、乗員に対して警告を行うと共に外部のサービスセンタ等に送信する。
【0027】
エンジン制御部50は乗員情報判定手段23が一致する乗員情報があったと判定し、一致する乗員情報があることを示す信号が入力されると、エンジン制御を開始する。
【0028】
制御部30は、基準波形等の各種情報が記録された記録部31と、車両1に搭載された加速度センサSの検出結果と基準波形等に基づいて車両1の衝突形態を判別する衝突形態判別手段(車両状態取得手段)32と、乗員情報取得手段20により取得された乗員情報と衝突形態とに基づいて乗員状態を判定する乗員状態判定手段33とを備える。
【0029】
衝突形態判別手段32は、衝突時に起動して、加速度センサSからの情報に基づいて衝突形態、即ち正面衝突、オフセット衝突及びポール衝突のいずれの衝突形態であるのかを判別する(詳細は後述する)。なお、衝突形態としてはその他にも挙げられるものであるが、本実施形態では、正面衝突、オフセット衝突及びポール衝突のいずれの衝突形態であるのかを判別するものである。乗員状態判定手段33は、乗員情報取得手段20により入力された乗員情報と、衝突形態判別手段32により判別された衝突形態とから、乗員の状態、つまり乗員の傷害の度合いを判定する。
【0030】
即ち、本実施形態の乗員状態判定装置10では、車両の衝突時に衝突形態を判別し、判別された衝突形態の場合の乗員情報から判別される乗員の傷害の度合い、即ち重傷度を判定しているのである。衝突が乗員に与える影響は乗員の年齢や性別で大きく異なるものである。例えば、女性と男性では骨格が異なることから、衝突の形態に応じて女性と男性とでは乗員の傷害の度合いである傷害発生確率が変化する。また、年齢によっても衝突の状態に応じて乗員の傷害の度合いは変化する。本実施形態では、乗員情報として乗員の年齢と乗員の性別を取得しているので、この乗員の衝突形態毎の乗員の年齢と性別とによる乗員の傷害の度合いを判定する。この乗員の傷害の度合いの判定は、例えば衝突形態毎の乗員の年齢と性別とによる重傷度を示すマップを用いてもよいし、以下説明するように傷害発生確率Pとして算出して行っても良い。
【0031】
本実施形態の乗員の傷害発生確率Pの算出について説明する。衝突形態判別手段32によって判別された衝突形態と車両1の衝突速度とから、車体の対象部位(例えば、トーボード)の変形量や変形時間等を予測する。そして、これら対象部位の変形量や変形時間等の情報と、記録部31に記録されている車両および乗員情報とから、乗員の傷害発生確率Pを予測する。
【0032】
すなわち、傷害発生確率Pは、衝突形態別に下記式(1)(2)から算出することができる。
P=1/(1+exp(−Z)) (1)
Z=β
0+(β
1x
1+・・・+β
n1x
n)+(β
n1+1x
n1+1+・・・+β
n2x
n2)+(β
n2+1x
n2+1・・・+β
nnx
nn) (2)
【0033】
上記式(2)をより詳しく説明すると、以下の通りである。係数βと傷害因子xの積の和Zは、各傷害因子の傷害発生への影響度の総和を意味する。この値Zが増大すると傷害発生確率Pが増大する。
【0034】
上記式(2)における傷害因子x
n1+1〜x
n2は衝突形態毎に異なる値が入力される。βについても、衝突形態毎に異なる値が入力される。
【0035】
また、上記式(2)におけるβ
1x
1+・・・+β
n1x
nでは、各傷害因子xはエアバッグ展開有無や乗員情報を示すものであり、β
1x
1+・・・+β
n1x
nはそれらの傷害発生への影響度の総和を意味する。上記の乗員情報、例えば性別や年齢などはここで各傷害因子として入力される。これにより、本実施形態では、乗員情報が傷害発生確率Pにおいて考慮されることとなる。
【0036】
上記式(2)におけるβ
n1+1x
n1+1+・・・+β
n2x
n2は、各傷害因子xを記録部31に記録された衝突波形の特徴点を示すものであり、衝突波形の傷害発生への影響度の総和を意味する。上記式(2)におけるβ
n2+1x
n2+1・・・+β
nnx
nnは、各傷害因子xを対象部位の変形量および変形時間、車体変形の傷害発生への影響度の総和を意味する。
【0037】
このように、衝突形態毎に傷害因子は異なり、各係数βの値も異なる。傷害発生確率Pの算出式が衝突形態毎に異なる値が代入されることによって、予測精度は単一の算出式よりも向上する。
【0038】
本実施形態では、この傷害発生確率Pを求めるにあたり、衝突形態判別手段32により衝突形態を詳細に、かつ正確に判別するだけでなく、乗員情報取得手段20からの乗員情報を参照して求めることで、乗員の傷害の度合いをより正確に判定するのである。そして、制御部30は、判定された乗員状態を通信装置40に入力する。
【0039】
通信装置40は、制御部30に接続されており、制御部30から乗員状態を含む所定情報を取得する。また、乗員情報取得手段20が取得した乗員情報を取得する。通信装置40はこれらの情報を外部のサービスセンタ等に送信する。
【0040】
本実施形態の乗員状態判定装置10は、衝突形態判別手段32を有することで衝突形態を正確に判別することができ、かつ、乗員情報取得手段20により乗員情報を取得することで、判別された衝突形態における傷害発生確率Pをより正確に判定することができる。従って、この情報がサービスセンタに送信されることで、このサービスセンタを介して救命機関がより早期に適切な対応を行うことができる。この場合に、さらに乗員情報もサービスセンタに送信されることから、サービスセンタがさらに早期に乗員情報を取得して、早期に個別に対応することが可能である。
【0041】
また、本実施形態では、乗員状態判定装置10が記録された乗員情報と乗員情報とが一致することを確認できることで、正確な情報をサービスセンタへ送信することができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、乗員情報が入力されることを利用して、乗員状態判定装置10が記録された乗員情報と乗員情報とが一致するか否かを判定するように構成している。これにより、車両の盗難を未然に防止することができる。
【0043】
本実施形態の乗員状態判定装置10による乗員状態の判定について、
図3を用いて説明する。
【0044】
初めに、ステップS1で、乗員情報取得手段20が免許証から運転者の乗員情報を読み取って乗員情報を取得する。ステップS2へ進み、ステップS2では、乗員情報判定手段23が読み取った乗員情報をカード情報記録部22に記録されている乗員情報に照合する。ステップS3へ進み、ステップS3では、乗員情報判定手段23が乗員情報とカード情報記録部22に記録されている乗員情報とが一致するかどうかを判断する。一致するものがなければ(No)ステップS4へ進む。一致するものがあれば(Yes)ステップS6へ進む。
【0045】
ステップS4では、エンジン制御部50が一致する情報がないことを示す信号を取得し、エンジンを作動できない状態とする。そして、ステップS5へ進み、通信装置40が一致する情報がないことを示す信号を取得し、警告及び通報を行う。制御が終了する。
【0046】
ステップS6では、乗員情報取得手段20が乗員情報とカード情報記録部22に記録されている乗員情報とが一致することを示す信号をエンジン制御部50へ入力するのでエンジンが始動する。
【0047】
その後、走行中などに車両の衝突が起こると(ステップS7)、ステップS8へ進む。ステップS8では、衝突形態判別手段32が起動して、衝突形態を判別する。また、乗員状態判定手段33は、乗員情報取得手段20により入力された乗員情報と、衝突形態判別手段32により判別された衝突形態とから、乗員状態を判定する。ステップS9へ進む。
ステップS9では、乗員状態が通信装置40へ入力され、通信装置40が乗員状態や衝突情報、また、乗員情報をサービスセンタへ送信する。
【0048】
これにより、サービスセンタに事故情報が入力される。サービスセンタに衝突状態や乗員状態が送信されることで、サービスセンタを介して救命機関が迅速な対応を行うことができる。さらに乗員情報が送信されることから、サービスセンタに予め登録されている乗員情報、例えば緊急連絡先や血液型などの情報に基づいて救命機関が迅速な対応を行うことができる。
【0049】
上述した実施形態における衝突形態判別手段について、以下詳細に説明する。なお、衝突状態判別手段は以下のものに限定されず、衝突形態を判別することができるものであればよい。
【0050】
加速度センサSは、車両1に搭載されて車両1の衝突時の加速度(減速度)を検出する。本実施形態では、4つの加速度センサSが車両1に設けられている。例えば、車両1の前端部に、右フロントセンサSa及び左フロントセンサSbが設けられ、車両1の前後方向中央部に、右サイドセンサSc及び左サイドセンサSdがそれぞれ設けられている。
【0051】
車両1に搭載する加速度センサSの数は特に限定されず、車両1に少なくとも一つ搭載されていればよい。また加速度センサSを設ける位置も特に限定されないが、衝突時に車両1の変形の影響を受けにくい位置であることが好ましい。
【0052】
制御部30が備える衝突形態判別手段32は、車両1が衝突した際に、加速度センサSの検出結果から得られる衝突波形に基づいて、予め類別した車両1の衝突形態を判別する。すなわち、車両1の衝突が何れの衝突形態(例えば、正面衝突、斜め衝突、オフセット衝突、ポール衝突等)に属するかを判別する。
【0053】
本発明では、衝突形態判別手段32が、各衝突形態に対応する基準波形と、加速度センサSの検出結果から得られた衝突波形との相似度に基づいて車両1の衝突形態を判別する。
【0054】
なお本実施形態では、車両1に複数の加速度センサSが設けられているが、衝突形態判別手段32は、このうちの何れか一つの加速度センサS(Sa〜Sd)の検出結果に基づいて車両1の衝突形態を判別する。例えば、車両1の衝突時の出力が最大である加速度センサSa〜Sdの何れかの検出結果に基づいて車両1の衝突形態を判別する。勿論、衝突形態の判別は、特定の加速度センサSの検出結果に基づくものであってもよいし、複数の加速度センサSの検出結果に基づくものであってもよい。
【0055】
以下、衝突形態判別手段32による衝突形態の判別手順について説明する。なお
図4は、衝突形態の判別手順を示すフローチャートである。
【0056】
衝突形態判別手段32は、加速度センサSと、記録部31とに接続され、予め類別した車両の衝突形態に対応する複数の基準波形と、加速度センサSの検出結果から得られる衝突波形に基づいて車両の衝突形態を判別するものであり、記録部31に記憶された基準波形と、加速度センサの検出結果から得られる衝突波形との相似度に基づいて、車両の衝突形態を判別するものである。以下、衝突形態判別手段32の具体的なステップから衝突形態判別手段32について説明する。
【0057】
図4に示すように、衝突形態判別手段32は、車両1の衝突が起こると、衝突が終了した時点で、加速度センサSの検出結果に基づいて衝突波形を形成する(ステップS1)。本実施形態では、加速度センサSの検出結果から算出された車両1の変位と、車両1の加速度とに基づいて衝突波形を形成する。すなわち加速度センサSの検出結果である車両1の加速度(減速度)と、検出結果である加速度を2階積分して得られる車両1の変位とから、例えば、
図5に示すような衝突波形を形成する。
【0058】
なお加速度センサSは、所定の間隔で車両1の加速度を検出(サンプリング)しており、各検出結果(加速度情報)は記録部31に適宜記録される。そして衝突形態判別手段32は、この加速度情報を記録部31から必要な加速度情報を読み出して衝突波形を形成する。また記録部31は、いわゆるイベントデータレコーダ(EDR)としても機能するものであり、この記録部31には、加速度情報の他に、例えば、乗員体格や、エアバッグ点火有無等の車両情報も適宜記録される。
【0059】
次に、衝突形態判別手段32は、得られた衝突波形を、各衝突形態に対応する基準波形と比較し、両者の相似度(相似の程度)を求める(ステップS2)。そして、衝突形態毎に求められた両波形の相似度から車両1の衝突形態を判別する(ステップS3)。すなわち、衝突形態判別手段32は、衝突波形と各基準波形との相似度が最も高い衝突形態を車両1の衝突形態であると判別する。
【0060】
なお衝突波形と基準波形との相似度は、これら衝突波形及び基準波形を正規化した上で、例えば、最大値を100%としてそれぞれの波形を正規化した上で求められることが好ましい。これにより、相似度を比較的容易且つ正確に求めることができる。
【0061】
ここで基準波形は、衝突形態毎に予め規定したものであり、例えば、
図6に示すように、正面衝突、オフセット衝突、ポール衝突等の各衝突形態で波形の特徴が異なる。このため、加速度センサSの検出結果から得られた衝突波形と複数の各基準波形との相似度に基づいて衝突形態を判別することで、車両1の衝突形態を正確に判別することができる。特に、基準波形が、衝突時の車両1の変位と加速度との関係から規定されたものである場合、衝突形態毎の波形の特徴の違いが顕著であり、車両1の衝突形態を判別し易い。
【0062】
このような各衝突形態に対応する複数の基準波形は、記録部31に予め記録されている。なお基準波形の形成方法は、特に限定されないが、例えば、該当車両の有限要素シミュレーションの結果に基づいて作成すればよい。
【0063】
衝突波形と基準波形との相似度の求め方は、特に限定されないが、例えば、本実施形態に係る衝突形態判別手段32は、次のような手順で相似度を求めている。衝突形態判別手段32は、例えば、
図7に示すように衝突形態に対応する基準波形と衝突波形とを比較し、基準波形の複数の特徴点と衝突波形との残差に基づいて相似度を求めている。なお
図7は、正面衝突、オフセット衝突及びポール衝突の基準波形を正規化したものと衝突波形の正規化したものとを比較した例である。
【0064】
ここで、基準波形の特徴点としては、例えば、波形の傾きが変化する点等が挙げられ、各衝突形態に対応する基準波形上に複数の特徴点をそれぞれ設定する。例えば、オフセット衝突の場合、基準波形には4つの特徴点C1〜C4を設定し、正面衝突及びポール衝突の場合、基準波形にはそれぞれ3つの特徴点C1〜C3を設定している(
図6参照)。このように特徴点の数は、衝突形態によって異なっていてもよいし同じであってもよい。
【0065】
これら基準波形の各特徴点と衝突波形との残差の求め方も特に限定されないが、本実施形態に係る衝突形態判別手段32は、基準波形の各特徴点と衝突波形の複数のサンプリング点との最小差を、各特徴点と衝突波形との残差として求めている。例えば、
図8に示すように、基準波形における特徴点C1と衝突波形との残差を求める場合、特徴点C1と衝突波形の複数のサンプリング点、例えば、サンプリング点P1〜P3との差d1〜d3を求め、そのうちの最小差d2を特徴点C1と衝突波形との残差とする。なお本実施形態では、サンプリング点P1〜P3との差を求めているが、対象とするサンプリング点の数は特に限定されず、必要に応じて適宜決定されればよい。例えば、サンプリング点の全てを対象としてもよい。
【0066】
基準波形の各特徴点C1〜C4について衝突波形との残差が求まると、次いで、基準波形の各特徴点と衝突波形の複数のサンプリング点との残差の和の最小値に基づいて、相似度を求める。例えば、本実施形態では、各特徴点の残差(最小差)の和の平均値を算出し、この平均値に基づいて基準波形と衝突波形との相似度を求める。相似度は、残差の和の平均値が小さいほど高くなる。そして、この相似度が最も高い基準波形に対応する衝突形態が、車両1の衝突形態であると判断される。例えば、
図7に示す例では、基準波形と衝突波形との相似度はオフセット衝突の場合が最も小さくなるため、車両1の衝突形態はオフセット衝突であると判断される。
【0067】
このように各衝突形態に対応する基準波形と衝突波形との相似度に基づいて衝突形態を判別することで、車両1の衝突形態を正確に判別することができる。また上述のように基準波形の特徴点と衝突波形との残差の和の平均値に基づいて相似度を求めることで、各衝突形態に対応する基準波形の特徴点の数が異なる場合でも、相似度を正確に比較することができる。勿論、各衝突形態で基準波形の特徴点の数が一致している場合には、残差の和から相似度を求めるようにしてもよい。
【0068】
また本実施形態では、基準波形の各特徴点と衝突波形の複数のサンプリング点との最小差を、各特徴点と衝突波形との残差としているが、各特徴点と衝突波形との残差の求め方はこれに限定されるものではない。さらに本実施形態では、衝突波形と基準波形との相似度を、基準波形の特徴点と衝突波形の残差に基づいて判断するようにしたが、相似度の判断方法は、必ずしも残差に基づくものでなくてもよい。
【0069】
また本実施形態では、車両1に複数の加速度センサSが搭載されているが、一つの加速度センサSによっても衝突形態を正確に判別することができる。
【0070】
上述した実施形態では、運転者の乗員情報のみが入力されるようにしたが、これに限定されない。運転者以外の乗員の乗員情報を乗車した場合に入力するように構成してもよい。
【0071】
上述した実施形態では、免許証により乗員情報を取得したが、これに限定されない。カードとしては、乗員の各種情報を取得することができればよく、例えば、保険証などの公的機関が発行したカードや、予め乗員が乗員情報を登録した本カードリーダー専用カードであってもよい。保険証である場合には、例えば乗員のかかりつけの病院情報なども読み取れるようにして、救助に必要な様々な情報をサービスセンタへ送信することができるように構成してもよい。また、本実施形態では媒体例としてカードを挙げたがこれに限定されない。他の情報記録媒体であってもよい。
【0072】
上述した実施形態では、カードから直接取得することができる乗員情報は免許証番号及び年齢であったが、これに限定されない。年齢を乗員情報として少なくとも取得できれば、上述したような傷害発生確率Pを算出する場合に乗員情報として用いることができるので好ましいが、他の傷害発生確率Pを算出する場合に有効な乗員情報、例えば、身長や体重など乗員の傷害の度合いに影響するような乗員情報を予めカードに入力して、これを読み取るように構成してもよい。また、予め記録部31もしくはカード情報記録部22に氏名以外の情報を記録しておいてもよい。例えば、カードで氏名を読み取り、該当者の通院情報や血液型などを記録部31もしくはカード情報記録部22から取得できるように構成してもよい。
【0073】
また、本実施形態のように運転免許証をカードとした場合には、運転免許証が入力されないとエンジンが作動されないようにして無免許運転を防止することができるように構成してもよい。
【0074】
本実施形態では車両1は駆動力をエンジンから得ていたが、これに限定されず、車両1は駆動力をモーターから得ることのできる電動車両であってもよい。
【0075】
また、傷害発生確率の予測に用いる情報(乗員情報を除く)は、必要に応じて適宜決定されればよく、特に限定されるものではない。
【0076】
例えば、上述の実施形態では、衝突形態判別手段32が、車両の変位と加速度とに基づいて衝突波形を形成し、この衝突波形と基準波形とから衝突形態を判別するようにしたが、衝突波形及び基準波形は、例えば、時間と車両の加速度とから形成されたものであってもよい。この場合には、衝突波形及び基準波形を正規化して比較することが好ましい。なお、時間に関しては、衝突期間を考慮して最大時間を設定し、設定した最大時間を100%として正規化すればよい。