(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セルと、前記セルを構成する正極電極及び負極電極のどちらか一方の電極と接する双極板と、前記セルの外側に引き出される端子部を有すると共に、前記双極板と導通する集電板と、前記集電板に積層されて、前記セルの内外に電解液を給排する給排板とを備える電解液循環型電池であって、
前記給排板は、前記集電板との対向側を表とし、その反対側を裏とするとき、表面と裏面との間を貫通し、前記端子部が挿通される挿通孔を備え、
前記端子部は、前記挿通孔を通って前記給排板の表面側から裏面側に引き出される電解液循環型電池。
【発明を実施するための形態】
【0020】
《本発明の実施形態の説明》
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0021】
(1)実施形態に係る電解液循環型電池は、セルと双極板と集電板と給排板とを備える。双極板は、セルを構成する正極電極及び負極電極のどちらか一方の電極と接する。集電板は、セルの外側に引き出される端子部を有すると共に、双極板と導通する。給排板は、集電板に積層されて、セルの内外に電解液を給排する。給排板は、表面と裏面との間を貫通し、端子部が挿通される挿通孔を備える。そして、端子部は、挿通孔を通って給排板の表面側から裏面側に引き出される。ここでは、給排板は、集電板との対向側を表とし、その反対側を裏とする。
【0022】
上記の構成によれば、電解液が漏洩したとしても、漏洩した電解液が集電板の端子部に接触し難い。端子部が給排板の表面側から裏面側に引き出されているため、端子部と最も近接するセルとの間には少なくとも給排板が介在される。即ち、従来の端子部を給排板の表面に沿って引き出す場合に比べ、端子部と最も近接するセルとの距離が長くなるからである。
【0023】
また、電解液循環型電池の構成部材の積層方向内方への締付力に対して十分な機械的強度を有する。端子部が給排板の表面側から裏面側に引き出されているため、従来のフレームピースのように端子部を引き出す凹部を設ける必要がなく局所的に非常に薄くなる箇所もないからである。
【0024】
(2)上記電解液循環型電池の一形態として、複数のセルと、複数のセルの間で互いに接すると共に、互いに異なる前記セルの内外に電解液を給排する一対の給排板とを備えることが挙げられる。この場合、各給排板の挿通孔から引き出された端子部同士が接触している。
【0025】
上記の構成によれば、端子部同士の接続作業を簡略化できる。端子部を給排板の表面側から裏面側へ引き出すため、上記一対の給排板から引き出される端子部同士の間には、従来のような2枚の給排板が存在しない。そのため、その端子部同士を接触させることができるからである。従って、端子部同士を繋ぐブリッジ金具を不要にできる。
【0026】
(3)上記電解液循環型電池の一形態として、給排板は、裏面に形成され、挿通孔に連続すると共に挿通孔から給排板の周縁に亘る凹部を備えることが挙げられる。この場合、端子部の一部が凹部に嵌め込まれ、端子部の先端が周縁よりも外側に引き出されている。
【0027】
上記の構成によれば、上記凹部を備えることで、端子部を給排板の裏面に沿って給排板の周縁よりも外側に引き出し易い。また、凹部に端子部の一部を嵌め込むことで、端子部が給排板の裏面よりも突出し難くできる。そのため、例えば、複数のサブセルスタックが隣接されて、互いに接する一対の給排板を備える場合、各給排板から引き出される端子部同士を接触させ易い。
【0028】
(4)上記電解液循環型電池の一形態として、給排板との間に双極板の周縁部を収納する環状溝を形成するフレームと、環状溝内に配置され、フレームと給排板とで圧接される弾性材料からなる環状のパッキンとを備えることが挙げられる。そして、パッキンは、双極板の周縁部を挟持する。
【0029】
上記の構成によれば、集電板や給排板とセルとの間をパッキンによりシールでき、パッキンを用いる場合に比べて作業者のスキルに依存し易い溶着作業が不要であるため、組立性に優れる。また、双極板の周縁部へのパッキンの挿着は、パッキンを拡げて嵌め込むだけの簡単な作業で取り付けることができながら、パッキンがずれたり外れたりすることなく確実に取り付けることができる。さらに、弾性材料からなる環状のパッキンを備えることで、パッキンがフレーム及び給排板と双極板の周縁部との間で圧接されることで変形してフレーム、給排板、及び双極板に密着し、高いシール性を確保することができる。そして、パッキンが弾性材料からなることで、電解液の流通に伴い、双極板が変形したり応力を受けたりすることがあっても、パッキンが追従して伸縮するため応力を緩和する効果がある。そのため、フレームや双極板が損傷することを抑制することができる。
【0030】
なお、従来のような、端子部を給排板の表面に沿って給排板と端部フレームアッシーとの間から外側へ引き出す場合、上述のように端部フレームアッシーのフレームピースには端子部と対向する箇所に凹部が形成されている。この構成のときに上記パッキンによるシール構造を備えると、パッキンの周方向全周に亘って均一的に押圧力を付加することが難しい。フレームピースに形成される凹部に収納された端子部の一部は、給排板やフレームピースと非接触となる箇所があり、セルスタックを締め付ける押圧力を給排板・端子部・フレームピースを介してパッキンに十分に作用させることが困難だからである。そのため、フレームピースにおける凹部の形成された箇所とそれ以外の箇所とで、パッキンに付加される押圧力に差が生じる場合がある。具体的には、フレームピースにおける凹部の形成された箇所に付加される押圧力は、フレームピースにおけるそれ以外の箇所に比べて弱くなる。その結果、パッキンにおけるフレームピースの凹部と対向する箇所のシール性が不十分になる虞がある。或いは、シール性が不十分にならないように押圧力を高めれば、シール性は高められるものの、パッキンにおけるフレームピースの凹部と対向する箇所以外に過剰な押圧力が付加されて部分的にパッキンが劣化し易くなる。その結果、パッキンにおけるフレームピースの凹部と対向する箇所以外のシール性が不十分となる虞がある。
【0031】
これに対して、上記の構成によれば、端子部が給排板の表面側から裏面側に引き出されているため、従来のフレームピースのように端子部を引き出すための凹部をフレームに設ける必要がない。即ち、フレームの全周に亘って給排板と接触させることができる。そのため、パッキンの周方向全周に亘って均一的に押圧力を付加できる。
【0032】
(5)上記電解液循環型電池の一形態として、パッキンを備える場合、給排板は、表面に形成され、パッキンを位置決めする凸状枠部を備えることが挙げられる。
【0033】
上記の構成によれば、凸状枠部を備えることで給排板に対してパッキンを位置決めし易いため、電解液循環型電池の組立の際、パッキンを給排板に対して載置し易い。
【0034】
(6)上記電解液循環型電池の一形態として、パッキンと凸状枠部とを備える場合、更に、パッキンと凸状枠部との間にパッキンの周方向全周に亘って介在される弾性シートを備えることが挙げられる。
【0035】
上記の構成によれば、弾性シートを備えることで、パッキンの圧縮永久歪率を低減して、パッキンを長寿命化すると共に、パッキンによるシール性を長期に亘って維持できる。
【0036】
(7)実施形態に係る電解液循環型電池の給排板は、セルと外部機器の間で電気を入出力する端子部を有する集電板に積層されて、セルの内外に電解液を給排する。そして、表面と裏面との間を貫通し、端子部を挿通させて表面側から裏面側に引き出す挿通孔を備える。ここでは、給排板は、集電板との対向側を表とし、その反対側を裏とする。
【0037】
上記の構成によれば、電解液が漏洩しても、漏洩した電解液が集電板の端子部に接触し難い電解液循環型電池を構築できる。
【0038】
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。ここでは、電解液循環型電池としてレドックスフロー電池(RF電池)を例に説明する。
【0039】
〔レドックスフロー電池〕
実施形態に係るRF電池は、
図6、7を用いて説明した従来のRF電池と同様、セルスタックと、セルスタックに正極用電解液を循環させる正極用循環機構(タンク106、供給用導管108、排出用導管110、ポンプ112)と、セルスタックに負極用電解液を循環させる負極用循環機構(タンク107、供給用導管109、排出用導管111、ポンプ113)とを備える。実施形態に係るRF電池の主たる特徴とするところは、セルスタックと外部機器との間で電気を入出力する集電部分を含むその近傍の構成にある。具体的には、実施形態に係るRF電池は、給排板及び集電板の構成が従来のRF電池とは異なる。以下の実施形態では、セルスタックの概要を説明した後、主たる特徴部分である給排板及び集電板を中心に説明し、続いて、これらに関連する構成部材を説明する。以下、従来と同様の構成については、
図6、7と同一符号を付してその説明を省略する。なお、
図6の実線矢印は充電反応を、破線矢印は放電反応をそれぞれ示している。
図6では、正負極の電解液にバナジウムイオン水溶液を用いたバナジウム系RF電池の場合を例に示しているが、電解液はバナジウムイオン水溶液に限定されるわけではない。
【0040】
[セルスタック]
図1に示すセルスタック2は、
図7を参照した従来のセルスタック200と同様に、複数積層したサブセルスタック2sを備える。各サブセルスタック2sは、フレームアッシーと、正極電極104と、隔膜101と、負極電極105とをこの順番に積層することで形成される積層体で構成され、フレームアッシー間に形成される電極の収納空間でセル100を構成している。積層体の積層方向両端に位置して、セル100を構成する正極端部104及び負極電極105のどちらか一方と隣接するフレームアッシーを、端部フレームアッシー30という(
図3)。また、正極端部104及び負極電極105の両方と隣接するフレームアッシーを中間フレームアッシー60という(
図3)。更に、上記積層体の両側に積層され、セル100(サブセルスタック2s)の外側に引き出される端子部12を有する集電板10と、集電板10の両側に積層される給排板20とを備える。そして、複数積層したサブセルスタック2sの両側から2枚のエンドプレート210、220で挟み込んで締付機構230により締め付けることでセルスタック2が構成される(
図1)。締付機構230は、例えば、締付軸231と、締付軸231の両端に螺合されるナット232,233と、ナット232とエンドプレート210の間に介在される圧縮バネ234とで構成されている。
【0041】
セルスタック2における従来との主な相違点は、給排板20のセル100側を表面としその反対側を裏面とするとき、
図1、2に示すように、集電板10の端子部12が、給排板20の裏面側に引き出されている点にある。即ち、セルスタック2の両端側(エンドプレート210、220側)に配置される集電板10の端子部12は、
図1の両端に示すように、給排板20とエンドプレート210,220との間から引き出される。一方、セルスタック2の中間(両端以外)に配置される集電板10の端子部12は、
図1、2に示すように、互いに接する給排板20の間から引き出される。
図2は、
図1の破線円で囲まれた箇所を拡大して示している。なお、
図2、3に関し、隣り合う端子部12(引出片)は、通常、互いに接した状態となっていることが多いが、説明の便宜上、両図では、隣り合う端子部12の間に若干の隙間を開けて示している。以下、各部材を詳細に説明する。
【0042】
[給排板]
給排板20は、セル100の内外に電解液を給排する。給排板20の輪郭形状は、ここでは矩形状であるが、その他、円形状や正方形状など適宜選択できる。給排板20の大きさは、端部フレームアッシー30の輪郭が形成する大きさと同じである。給排板20の表面には、端部フレームアッシー30の端部フレームピース31が対向する領域と、それ以外の領域(端部フレームピース31から露出されている双極板121と対向する領域)とが存在する(
図3)。そして、給排板20は、
図3、4に示すように、表面と裏面との間を貫通する挿通孔21を備える。
図3は、説明の便宜上、エンドプレート210,220のみ上面図を示している。
【0043】
(挿通孔)
挿通孔21は、給排板20の表面と裏面との間を貫通し、集電板10の端子部12を挿通させて給排板20の表面側から裏面側へ引き出させる。挿通孔21の形状は、細長い矩形状である(
図4)。挿通孔21の数は、端子部12の数に合わせて選択すればよい。ここでは、挿通孔21の数は一つである。
【0044】
挿通孔21の形成箇所は、給排板20のうち、端部フレームピース31との対向領域よりも内側とすることが好ましい。特に、端部フレームピース31から露出する双極板121の外縁に対向する箇所に挿通孔21を設ければ、この露出する双極板121の実質的に全面を集電板10の本体部11で覆うことができる。より具体的には、双極板121の周縁部との対向領域よりも内側のうち、パイプ202i、202o(
図7)と同一側、及びパイプ202i、202oとは反対側(
図7の紙面奥側)の少なくとも一方とすることが挙げられる。ここでは、挿通孔21は、上記周縁部との対向領域よりも内側のうち、パイプ202i、202oとは反対側で上記周縁部との対向領域に隣接して設けている。なお、集電板10が端子部12を2つ備える場合、挿通孔21の形成箇所は、上記周縁部との対向領域よりも内側のうち、パイプ202i、202oと同一側と、パイプ202i、202oとは反対側との両方とすることが挙げられる。
【0045】
(凹部)
給排板20の裏面には、挿通孔21に連続すると共に、挿通孔21から給排板20の周縁に亘って形成される凹部22を備えることが好ましい(
図3、4)。そうすれば、凹部22に端子部12の一部を嵌め込ませて、端子部12の先端を給排板20の裏面において上記周縁よりも外側に引き出し易い。
【0046】
凹部22の深さは、端子部12の厚さよりも大きいことが好ましい。凹部22の深さとは、給排板20の表裏方向の凹部22の長さを言う。そうすれば、凹部22に端子部12を嵌め込ませた際、端子部12が給排板20の裏面よりも外側に突出しない。本例のようにサブセルスタック2sを複数積層すると、
図1(その他、
図2、
図3の中央部分)に示すように、異なるサブセルスタック2sに備わる給排板20が互いに接するように配置される。この場合でも、各給排板20の表面側から裏面側に引き出される端子部12同士が干渉し合うこと無く接触させることができる。それにより、接触する端子部12同士を容易に接続することができるため接続作業を簡略化できる。凹部22の幅は、端子部12の幅よりも大きければよく、挿通孔21の幅と同等としてもよいし、挿通孔21の幅よりも小さくてもよい。凹部22の幅は、給排板20の表裏方向と端子部21の引出方向の両方向に直交する方向の凹部22の長さを言う。
【0047】
(凸状枠部)
給排板20の表面には、凸状枠部23を備えることが好ましい。この凸状枠部23は、
図3に示すように、端部フレームアッシー30が双極板121の周縁部を挟持する環状のパッキン40を備える場合に、パッキン40を位置決めし易い。更に、パッキン40との間に介在される弾性シート50を備える場合に、弾性シート50を位置決めし易い。そのため、サブセルスタック2sの組立の際、弾性シート50及びパッキン40を載置し易い。また、この凸状枠部23は、セルスタック2を組み立てた際、弾性シート50及びパッキン40を押圧する。
【0048】
凸状枠部23の形成箇所は、給排板20における集電板10との接触領域と端部フレームピース31に対向する外周縁領域との間とする。具体的には、凸状枠部23の一部が挿通孔21に隣接するように設けることが好ましい。ここでは、挿通孔21に隣接すると共に、挿通孔21と集電板10の本体部11の周縁に沿うように形成している。そのため、凸状枠部23を本体部11(集電板10)の位置決めに利用することもできる。
【0049】
凸状枠部23の幅は、締付機構230によりセルスタック2を所望の締付力で締め付けてパッキン40や弾性シート50に押圧力が付加された際のパッキン40や弾性シート50の幅以上とすることが好ましい。ここでは、凸状枠部23の幅は、凸状枠部23の周方向及び給排板20の表裏方向の両方向に直交する方向の凸枠状部23の長さを言い、パッキン40や弾性シート50の幅は、凸状枠部23の幅に沿った長さを言う。そうすれば、締付機構230によりセルスタック2を所望の締付力で締め付けた状態で、凸状枠部23に対して、パッキン40や弾性シート50の凸状枠部23との対向面を全面に亘って接触させることができる。そのため、パッキン40や弾性シート50の全域に亘って均一的に上記押圧力を付加し易い。即ち、凸状枠部23の幅は、サブセルスタック2s(セルスタック2)の締付前におけるパッキン40や弾性シート50の幅よりも大きい。
【0050】
凸状枠部23の高さは、締付機構230によりセルスタック2を所望の締付力で締め付けてパッキン40や弾性シート50に押圧力が付加された際に、給排板20と本体部11との間や、双極板121と本体部11との間に隙間が形成されない程度とすることが好ましい。凸状枠部23の高さは、給排板20の表裏方向の凸枠状部23の突出長さを言う。
【0051】
(材質)
給排板20の材質は、各極の電解液に対して化学反応しない材料で、耐食性に優れる上に、耐衝撃性に優れる材質が挙げられる。例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの種々のフッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩化ビニル(耐衝撃性硬質塩化ビニル)などの樹脂とすることが好ましい。
【0052】
(作製方法)
給排板20の作製は、押出成型した矩形板に対して切削加工により挿通孔21、凹部22、及び凸状枠部23を形成することで行える。例えば、凸状枠部23は、押出成型した矩形板の一面のうち、凸状枠部23となる箇所を除く領域を切削加工することで形成できる。
【0053】
[集電板]
集電板10は、セル100と外部機器との間で電気を入出力する。集電板10は、双極板121との導通面を有する本体部11と、本体部11と電気的に接続され、外部機器に接続される端子部12とを備える。ここでは、本体部11と端子部12とは一体に形成されている。
【0054】
(本体部)
本体部11の輪郭形状は、導通する双極板121の形状に合せて適宜選択できる。ここでは、本体部11の輪郭形状は、矩形状であるが、その他、円形状や正方形状などとしてもよい。
【0055】
(端子部)
端子部12は、L字状に折り曲げられた屈曲片で構成されており、この屈曲片は本体部11につながって挿通孔21内に収納される収納片と、給排板20の裏面に沿ってサブセルスタック2sの外側に引き出される引出片とを備える。上記収納片は、本体部11に対して略直角につながっている。一方、上記引出片の一部は、給排板20の凹部22に嵌め込まれている。そして、端子部12(引出片)の先端は、給排板20の裏面に沿って給排板20の周縁よりも外側に引き出されている。端子部12の先端には、隣接する端子部12と接続するためのボルト又はリード線(図示略)を接続するためのボルトを挿通するボルト孔が形成されている。
【0056】
端子部12の幅は、本体部11の幅と同等でもよいし、本体部11の幅よりも小さくてもよい。後者の場合、端子部12を本体部11に対して屈曲させ易い上に、端子部12自体をL字状に屈曲させ易い。ここで、端子部12の幅とは、凹部22の幅に沿った方向の長さであり、給排板20の表裏方向と端子部12の引出方向の両方に直交する方向の長さを言う。
【0057】
1つの集電板に備わる端子部12の数は、単数でもよいし複数(例えば、2つ)でもよい。端子部12の数を単数とする場合、端子部12の引出方向は、パイプ202i、202o(
図7)と同一側や、本体部11を挟んでパイプ202i、202oと反対側とすることが挙げられる。前者の場合、端子部12とパイプ202i,202oとを同一側に引き出すため、後者の場合に比べて、セルスタック2における上記引出方向の長さを短くでき、セルスタック2を小型化できる。後者の場合、端子部12と外部機器との接続作業を行い易くて好ましい。パイプ202i、202oに接続される導管108〜111(
図6)が邪魔にならないからである。その上、仮に、パイプ202i、202oと導管108〜111との接続箇所から電解液が漏洩したとしても、端子部12と漏れた電解液との距離が遠いため漏れた電解液が端子部12に接触し難い。
【0058】
一方、端子部12の数を2つとする場合、端子部の引出方向は、本体部11を挟んで互いに対向する方向とすることが挙げられる。そうすれば、サブセルスタック2sの組立の際、給排板20と集電板10とを一体化した組合体を、本体部11を下、端子部12の上記引出片を上として組み立てるとき、両端子部12を保持して各引出片を互いに離れる方向へ引っ張れば、集電板10の本体部11が垂れ下がることを抑制できる。サブセルスタック2sを組み立てる際、まず、一方の上記組合体を、その裏面が組立台上に接するように配置する。そして、一方の上記組合体の上に複数のセル100を積層し、更にその上に他方の上記組合体を載置する。その際、他方の上記組合体は、本体部11を下、端子部12の上記引出片を上とした状態で載置される。そのため、両端子部12を保持すれば本体部11の中央部分が自重により垂れ下がることを抑制できる。また、端子部12の数を1つとして端子部の引出方向を一方側とする場合は、本体部11の端子部12のある側と反対側が自重により垂れ下がり易いが、上記構成とすることで、本体部11の端子部12のある側と反対側の垂れ下がりをも抑制できる。
【0059】
両端子部の具体的な引出方向は、一方の端子部をパイプ202i、202oと同一側とし、他方の端子部を本体部11を挟んでパイプ202i、202oと反対側とすることが挙げられる。パイプ202i、202oと同一側に端子部を引き出すと、電気の入出力と電解液の給排をセルスタック2の同じ側で纏めて行うことができる。パイプ202i、202oと反対側に電気の入出力を行う端子部を引き出すと、万一パイプ202i、202o近傍から電解液が漏洩した場合でも、漏れた電解液が端子部に接触し難い。
【0060】
ここでは、端子部12の数は、単数である。また、端子部12の引出方向は、本体部11を挟んでパイプ202i、202oと反対側としている。
【0061】
(材質)
集電板10の材質は、導電率の高い金属材料からなることが好ましく、具体的には、銅が挙げられる。その他、集電板10は、鉄、ニッケル、クロム、錫、アルミニウム、およびこれらのいずれかの元素を主成分とする合金で構成することもできる。但し、集電板10には、高い導電率と高い強度とが求められることから、実用的には集電板10は銅で構成されている場合が多い。
【0062】
[給排板と集電板の組立]
給排板20と集電板10の組立は、
図4を参照して説明する。
図4は、給排板20と集電板10とが分離し、互いに接触する前の状態を示す。まず、
図4の実線に示すように、本体部11に対して略直角に折り曲げられた端子部12を備える集電板10と、給排板20とを準備する。この端子部12は、L型に屈曲される前の平板状である。次に、給排板20の挿通孔21内に端子部12を挿通させて、給排板20と本体部11とを接触させる。その状態で、
図4の二点鎖線に示すように、端子部12のうち挿通孔21から外側に露出する部分を折り曲げて給排板20の凹部22に嵌め込む。それにより、端子部12の先端が給排板20の周縁よりも外側に引き出される。以上により、端子部12を給排板20の表面側から裏面側に引き出すことができる。
【0063】
[端部フレームアッシー]
端部フレームアッシー30は、双極板121と、端部フレームピース31と、パッキン40とを備える。端部フレームアッシー30に備わる双極板121は、正極電極104と負極電極105のいずれか一方の電極と接触する。端部フレームアッシー30は、双極板121をいわば、一つの端部フレームピース31で支持したような構成であり、一対の分割フレームを備えていない点で、従来の端部フレームアッシーとは異なる。
【0064】
双極板121の一面は、正極電極104及び負極電極105のいずれか一方の電極と接触し、他面は集電板10に導通される。ここでは、双極板121の輪郭形状は、矩形状であるが、その他、円形状や正方形状などとしてもよい。双極板121の材質は、例えば、プラスチックカーボンやカーボン板が用いられている。
【0065】
端部フレームピース31は、給排板20の表面(上記外周縁領域)と接触すると共に、給排板20との間に双極板121の周縁部を収納する。端部フレームピース31の断面形状は、L字状である。ここでいう断面は、端部フレームピース31の周方向に直交する面である。端部フレームピース31の給排板20との対向面には、内周縁部の厚さが薄くなるように段差面が形成されており、この段差面により端部フレームピース31と給排板20との間に環状溝32が形成されている。そして、この環状溝32内に双極板121の周縁部が収納される。端部フレームピース31の材質は、上述した給排板20と同様の材質を用いることができる。
【0066】
パッキン40は、環状溝32内に配置され、双極板121の周縁部を挟持すると共に、端部フレームピース31と給排板20(ここでは凸状枠部23)とで圧接されて環状溝32内をシールする。具体的には、双極板121の周縁部の表裏を挟持する一対の脚部41と、双極板121の外縁でこれら脚部41を連結する基部42とを備える。パッキン40の材質は、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)やフッ素ゴムといった弾性材料が挙げられる。このパッキン40は、例えば、特開2012−216510号公報に記載のパッキンを利用できる。
【0067】
[弾性シート]
パッキン40と凸状枠部23との間にパッキン40の周方向全周に亘って介在される弾性シート50を備えることが好ましい。即ち、弾性シート50の介在箇所は、凸状枠部23の全領域とすることが好ましい。そうすれば、パッキン40の圧縮永久歪率を低減して、パッキン40を長寿命化すると共に、パッキン40によるシール性を長期に亘って維持できる。その上、パッキン40の配置が、パッキン40の周方向の少なくとも一部に弾性シート50を配置する場合に比べて容易である。
【0068】
弾性シート50の輪郭形状は、パッキン40の輪郭形状に合わせて適宜選択でき、例えば、矩形枠状、円形枠状、正方形枠状などとすることが挙げられる。弾性シート50の断面形状は、矩形状、円形状、正方形状など適宜選択できる。凸状枠部23との接触面が多い矩形状などとすると、サブセルスタック2sの組立の際、弾性シート50を凸状枠部23に安定して配置し易い。ここでは、弾性シート50の輪郭形状は、矩形枠状であり、弾性シート50の断面形状は、矩形状である。
【0069】
弾性シート50の材質は、上述したパッキン40と同様の材料、例えば、EPDMやフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0070】
[中間フレームアッシー]
中間フレームアッシー60は、双極板121と中間フレームピース61とパッキン40とを備える。中間フレームアッシー60の双極板121及びパッキン40は、端部フレームアッシー30の双極板121及びパッキン40と同様である。但し、中間フレームアッシー60に備わる双極板121は、正極電極104と負極電極105の両方に接触状態で挟まれている点で、端部フレームアッシー30とは異なる。中間フレームアッシー60は、双極板121を一対の分割フレーム61a,61bで挟持する構成である点で、従来の中間フレームアッシーと同様の構成であり、かつ端部フレームアッシー30と異なる。即ち、中間フレームピース61は、一対の分割フレーム61a,61bで構成される。
【0071】
各分割フレーム61a,61bの断面形状は、略L字状である。ここでいう断面は、分割フレーム61a,61bの周方向に直交する断面である。各分割フレーム61a,61bは、双極板121を囲んでおり、双極板121の周縁部を挟持する。各分割フレーム61a,61bの押圧方向に互いに対向する対向面にはそれぞれ、内周縁部の厚さが薄くなるように段差面が形成されており、分割フレーム61aと分割フレーム61bとの対向面の間に環状溝62が形成されている。そして、この環状溝62内に双極板121の周縁部が収納される。
【0072】
〔作用効果〕
上述したRF電池1によれば、端子部12が、給排板20の裏面側から引き出されているため、仮に、電解液が端部フレームアッシー30と中間フレームアッシー60との間から漏洩しても、漏洩した電解液が集電板10の端子部12に接触し難い。端部フレームアッシー30と上記中間フレームアッシー60との間と端子部12との間には、給排板20と端部フレームピース31とが介在されているため、漏洩した電解液と端子部12との間の距離が遠いからである。また、仮に、電解液が給排板20と端部フレームアッシー30との間から漏洩しても、漏洩した電解液と端子部12との間の距離が遠いため、漏洩した電解液が集電板10の端子部12に接触し難い。給排板20と端部フレームピース31との間と端子部12との間には、給排板20が介在されており、通常、給排板20の厚さは、端部フレームピース31の厚さの数倍程度あるからである。
【0073】
端子部12が、給排板20の表面側から裏面側に引き出されているため、端子部12と双極板121との間には給排板20が介在されている。その上、端子部12を給排板20の表面に沿って外部に引き出すために端部フレームピース31に凹部を形成する必要がなく、従来に比べて端部フレームピース31に部分的に薄い箇所が存在しない。従って、セルスタック2の締付機構230による積層方向内方への押圧力に対して十分な機械的強度を有する。
【0074】
端子部12が、給排板20の表面側から裏面側に引き出されているため、異なるサブセルスタック2sに備わり、互いに裏面同士が接して配置される一対の給排板20の裏面から引き出される端子部12同士の間には、従来の2枚の給排板は介在されるなどの介在物が存在しない。そのため、この端子部12同士を接触させることができ、端子部12同士の接続作業を簡略化できる。
【0075】
端子部12が、給排板20の表面側から裏面側に引き出されているため、端部フレームピース31に凹部を形成して端子部12を給排板20の表面に沿って外部に引き出す必要がない。即ち、端部フレームピース12の全周に亘って給排板20を接触させることができる。そのため、パッキン40の周方向全周に亘って均一的に押圧力を付加できる。
【0076】
〔変形例〕
変形例として、
図5に示すように、給排板90は、本体部91と、供給用突出部92i及び排出用突出部92oと、電解液供給路93i及び電解液排出路93oとを備える形態とすることもできる。本体部91は、セル100と対向する対向面91fを有する。供給用突出部92iは、本体部91に一体かつ本体部91の周縁よりも外側に突出して形成され、外部(電解液タンク106(107))から一方の極の電解液を供給する供給用導管108(109)が接続される接続面92ifを有する。排出用突出部92oは、供給用突出部92iと同様に本体部91に一体かつ本体部91の周縁よりも外側に突出して形成され、外部(電解液タンク107(106))に他方の極の電解液を排出する排出用導管111(110)が接続される接続面92ofを有する。電解液供給路93iは、供給用突出部92iから本体部91に連通し、供給用突出部92iの接続面92ifに開口する突出部側給液用開口部93itと、本体部91の対向面91fに開口する本体部側給液用開口部93ibとを有する。電解液排出路93oは、本体部91から排出用突出部92oに連通し、本体部91の対向面91fと排出用突出部92oの接続面92ofのそれぞれに開口する本体部側排液用開口部93obと突出部側排液用開口部93otとを有する。そして、挿通孔21は、給排板90の本体部91の両突出部92i,92oとは反対側に表面と裏面との間を貫通するように設けられている。集電板10の端子部12は、挿通孔21を通って、給排板90の表面側から裏面側に引き出されている。
【0077】
なお、上述の実施形態では、セルスタックを複数のセルを備えるサブセルスタックを複数積層して構成したが、セルの数は単数としたり、サブセルスタックの数を単数としたりすることもできる。即ち、セルスタックは、単数のセルを備える一つのサブセルスタックで構成したり、複数のセルを備える一つのサブセルスタックで構成したり、単数のセルを備えるサブセルスタックを複数積層して構成したりできる。
【0078】
また、上述の実施形態では、端部フレームアッシーと中間フレームアッシーの両方とも、双極板とフレームとの間にパッキンを介在させたが、
図7を参照した従来のフレームアッシーと同様に一対の枠片の間に双極板の周縁部を挟み、有機溶剤を用いて枠部同士を溶着してフレームを形成すると共にフレームと双極板とを溶着した端部フレームアッシーや中間フレームアッシーなどを用いることもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 レドックスフロー(RF)電池
2 セルスタック 2s サブセルスタック
10 集電板 11 本体部 12 端子部
20 給排板 21 挿通孔 22 凹部 23 凸状枠部
30 端部フレームアッシー 31 端部フレームピース 32 環状溝
40 パッキン 41 脚部 42 基部
50 弾性シート
60 中間フレームアッシー
61 中間フレームピース 61a,61b 分割フレーム 62 環状溝
90 給排板 91 本体部 91f 対向面
92i 供給用突出部 92if 接続面
92o 排出用突出部 92of 接続面
93i 電解液供給路
93ib 本体部側給液用開口部 93it 突出部側給液用開口部
93o 電解液排出路
93ob 本体部側排液用開口部 93ot 突出部側排液用開口部
100 セル
101 隔膜 102 正極セル 103 負極セル
104 正極電極 105 負極電極
106 正極電解液タンク 107 負極電解液タンク
108、109 供給導管 110、111 排出導管
112、113 ポンプ
120 フレームアッシー 121 双極板 122 フレームピース
123、124 給液マニホールド 125、126 排液マニホールド
127 シール部材
200 セルスタック 200s サブセルスタック
201 給排板 202i 供給パイプ 202o 排出パイプ
210、220 エンドプレート
230 締付機構
231 締付軸 232、233 ナット 234 圧縮バネ