特許第6150166号(P6150166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150166
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】水耕栽培方法及び栽培支援システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   A01G31/00 601A
   A01G31/00 612
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-168245(P2013-168245)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-35975(P2015-35975A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2015年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100126930
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】小寺 恵介
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−111073(JP,A)
【文献】 特開2012−000017(JP,A)
【文献】 特開2004−000146(JP,A)
【文献】 特開2000−125680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00,31/00−31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射及び養液の施用により植物を栽培する水耕栽培方法であって、
培地に定植された結球レタスを栽培対象の植物とし、定植後の結球レタスにおける中肋部突出球の発生率を植物生育不良の発生率として、
前記養液の電気伝導度を示す養液EC値、及び、光合成有効光量子束密度と光照射時間との積である積算光量子束密度について、栽培期間における前記植物生育不良の発生率が設定閾値以下となるのに要する最小の積算光量子束密度と養液EC値との相関を最適相関として求め、
栽培状態の調整として養液EC値又は光照射時間又は光合成有効光量子束密度を調整することで、栽培状態を栽培期間における養液EC値と栽培期間における積算光量子束密度とが前記最適相関を満足する値となる栽培状態に調整する水耕栽培方法。
【請求項2】
前記最適相関において養液EC値の採用値に対応する積算光量子束密度を積算光量子束密度の目標値とし、
この積算光量子束密度の目標値を一日当たり光照射時間の採用値と栽培期間日数の採用値との積により除した値を光合成有効光量子束密度の目標値とし、
栽培状態の調整として光合成有効光量子束密度を前記光合成有効光量子束密度の目標値に調整する請求項1記載の水耕栽培方法。
【請求項3】
前記最適相関において養液EC値の採用値に対応する積算光量子束密度を積算光量子束密度の目標値とし、
この積算光量子束密度の目標値を光合成有効光量子束密度の採用値と栽培期間日数の採用値との積により除した値を一日当たり光照射時間の目標値とし、
栽培状態の調整として一日当たり光照射時間を前記一日当たり光照射時間の目標値に調整する請求項1記載の水耕栽培方法。
【請求項4】
養液EC値の下限値を規定しておく請求項1〜3のいずれか1項に記載の水耕栽培方法。
【請求項5】
一日当たり光照射時間の上限値を規定しておく請求項1〜4のいずれか1項に記載の水耕栽培方法。
【請求項6】
栽培期間日数の下限値及び上限値を規定しておく請求項1〜5のいずれか1項に記載の水耕栽培方法。
【請求項7】
請求項2又は3に記載した水耕栽培方法の実施に用いる栽培支援システムであって、
前記最適相関を記憶する記憶部と、前記光合成有効光量子束密度の目標値又は前記一日当たり光照射時間の目標値を演算する演算部とを備え、
この演算部は、前記養液EC値、前記一日当たり光照射時間、前記栽培期間日数が設定される照射時間規定モードでは、前記最適相関において養液EC値の設定値に対応する前記積算光量子束密度を積算光量子束密度の目標値として前記記憶部から読み出すとともに、この読み出した積算光量子束密度の目標値を一日当たり光照射時間の設定値と栽培期間日数の設定値との積により除した値を光合成有効光量子束密度の目標値として演算し、
前記養液EC値、前記光合成有効光量子束密度、前記栽培期間日数が設定される光量子束密度規定モードでは、前記最適相関において養液EC値の設定値に対応する前記積算光量子束密度を積算光量子束密度の目標値として前記記憶部から読み出すとともに、この読み出した積算光量子束密度の目標値を光合成有効光量子束密度の設定値と栽培期間日数の設定値との積により除した値を一日当たり光照射時間の目標値として演算する構成にしてある栽培支援システム。
【請求項8】
前記照射時間規定モードでは、前記養液EC値及び前記一日当たり光照射時間の夫々が設定値に等しくなり、かつ、前記光合成有効光量子束密度が前記演算部により演算された光合成有効光量子束密度の目標値に等しくなる栽培状態を設定された栽培期間日数にわたって自動的に維持し、
前記光量子束密度規定モードでは、前記養液EC値及び前記光合成有効光量子束密度の夫々が設定値に等しくなり、かつ、前記一日当たり光照射時間が前記演算部により演算された一日当たり光照射時間の目標値に等しくなる栽培状態を設定された栽培期間日数にわたって自動的に維持する栽培管理部を設けてある請求項7記載の栽培支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射及び養液の施用により植物を栽培する水耕栽培方法、及び、その水耕栽培方法の実施に用いる栽培支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の第1頁右欄には、野菜などの植物の栽培では、光放射強度、温度、湿度、気流条件、炭酸ガス濃度、水分、養分などの生育環境状況を人工的に有効適切に制御することで野菜などの植物を高品質、高効率、安定に栽培生産することが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には人工光による水耕栽培において用いる養液の成分について記載され、さらに、特許文献3には養液を施用する水耕栽培において植物に照射する光の光合成有効光量子束密度について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−207127号公報
【特許文献2】特開2011−19476号公報
【特許文献3】特開2012−196202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、養液と照射光とについて個別に考慮した水耕栽培方法は上記特許文献2,3を初め種々提案されているが、水耕栽培において養液と照射光との関係、特に養液のEC値(養液の電気伝導度を示す値)と照射光の積算光量子束密度(光合成有効光量子束密度と光照射時間との積)との関係について考慮することは従来行われていなかった。
【0006】
しかし、本発明者は、光の照射及び養液の施用により植物を栽培する水耕栽培では、養液EC値と積算光量子束密度との関係が栽培植物の生育不良発生に大きく関与することを自らの研究を通じて知見するに至った。
【0007】
本発明はこの知見に基づくものであり、その主たる課題は、栽培植物の生育不良発生率を効果的かつ確実に低減して栽培植物の高い生産性を安定的に確保する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は水耕栽培方法に係り、その特徴は、
光の照射及び養液の施用により植物を栽培する水耕栽培方法であって、
培地に定植された結球レタスを栽培対象の植物とし、定植後の結球レタスにおける中肋部突出球の発生率を植物生育不良の発生率として、
前記養液の電気伝導度を示す養液EC値、及び、光合成有効光量子束密度と光照射時間との積である積算光量子束密度について、栽培期間における植物生育不良の発生率が設定閾値以下となるのに要する最小の積算光量子束密度と養液EC値との相関を最適相関として求め、
栽培状態の調整として養液EC値又は光照射時間又は光合成有効光量子束密度を調整することで、栽培状態を栽培期間における養液EC値と栽培期間における積算光量子束密度とが前記最適相関を満足する値となる栽培状態に調整する点にある。
【0009】
つまり、栽培期間Tにおける植物生育不良の発生率zが設定閾値zs以下となるのに要する最小の積算光量子束密度Mminと養液EC値xとの間には例えば図5に示す如き特定の相関Kが存在することを本発明者は研究により知見するに至った。
【0010】
したがって、上述の如く、この相関を最適相関として求めておき、そして、栽培状態の調整として養液EC値又は光照射時間又は光合成有効光量子束密度の調整により、栽培状態を栽培期間における養液EC値と栽培期間における積算光量子束密度とがこの最適相関を満足する値となる栽培状態に調整するようにすれば、栽培期間における植物生育不良の発生率を多少の誤差が生じるにしても最適相関の存在からほぼ確実に設定閾値以下にすることができる。
【0011】
また、最適相関は植物生育不良の発生率が設定閾値以下となるのに要する最小の積算光量子束密度についてのものであることから、上記の如く栽培状態を調整すれば、照射光として人工光を用いる場合において光照射時間や光合成有効光量子束密度が過大となる人工光過剰生成の無駄も確実に回避することができる。
【0012】
これらのことから、上記第1特徴構成の水耕栽培方法によれば、栽培期間における植物生育不良の発生率を効果的かつ確実に低減して栽培植物の高い生産性を安定的に確保することができ、また、照射光として人工光を用いる場合では人工光過剰生成の無駄を回避できることからも、栽培植物の生産コストをさらに安価にすることができる。
【0013】
なお、この第1特徴構成の水耕栽培方法の実施において、生育不良発生率の設定閾値は人工光の生成コストなども考慮して必要に応じた値を選定すればよく、例えば、5%や10%などの値を適宜選定すればよい。
【0014】
また、本発明で言う養液EC値は、必ずしも厳密な意味での養液の電気伝導度である必要はなく、養液の電気伝導度に相当する数値(即ち、養液の肥料含有度を示す数値)であってもよい。
【0015】
また、上記第1特徴構成では、培地に定植された結球レタスを栽培対象の植物とし、定植後の結球レタスにおける中肋部突出球の発生率を植物生育不良の発生率とするから、具体的には次の利点を得ることができる。
【0016】
つまり、リーフレタスは栽培が容易でその水耕栽培は広く普及しているが、同じレタスでも結球レタスの場合、中肋部突出球と称される中肋部が突出した形状不良による不良球の発生率が高くて(90%近くに及ぶこともある)商品として歩留まりが極端に悪い為、商品生産を目的とする結球レタスの水耕栽培は殆ど実施されていないのが実状である。
【0017】
これに対し、培地に定植された結球レタスを栽培対象の植物にするとともに、定植後の結球レタスにおける中肋部突出球の発生率を植物生育不良の発生率として上述の栽培法を実施する第1特徴構成の水耕栽培方法によれば、定植後の結球レタスにおける中肋部突出球の発生率を多少の誤差が生じるにしても前述最適相関の存在からほぼ確実に設定閾値以下にすることができ、これにより、設定閾値として適当な値を選定しておけば、水耕栽培による結球レタスの生産性を従前に比べ効果的かつ安定的に高めることができる。
【0018】
そして、このことで、商品生産を目的とする結球レタスの水耕栽培を可能にすることができて、露地物結球レタスの端境期における結球レタスの安定供給や露地物結球レタスに比べ一層衛生的なカット野菜向け結球レタスの生産加工なども可能になる。
【0019】
本発明の第特徴構成は、第特徴構成の水耕栽培方法を実施するのに好適な水耕栽培方法に係り、その特徴は、
前記最適相関において養液EC値の採用値に対応する積算光量子束密度を積算光量子束密度の目標値とし、
この積算光量子束密度の目標値を一日当たり光照射時間の採用値と栽培期間日数の採用値との積により除した値を光合成有効光量子束密度の目標値とし、
栽培状態の調整として光合成有効光量子束密度を前記光合成有効光量子束密度の目標値に調整する点にある。
【0020】
この第特徴構成の水耕栽培方法によれば、栽培状態の調整として光合成有効光量子束密度を上記光合成有効光量子束密度の目標値(即ち、最適相関において養液EC値の採用値に対応する積算光量子束密度(目標値)を一日当たり光照射時間の採用値と栽培期間日数の採用値との積により除した値)に調整することで、栽培状態を栽培期間における養液EC値と栽培期間における積算光量子束密度とが最適相関を満足する値となる栽培状態に調整することができ、これにより、栽培期間における植物生育不良の発生率をほぼ確実に設定閾値以下にすることができる。
【0021】
そして、この第特徴構成の水耕栽培方法では、養液EC値、一日当たり光照射時間、栽培期間日数の夫々を固定化した状態での光合成有効光量子束密度の調整により栽培状態を最適相関が満たされる栽培状態に調整するから、特に一日当たり光照射時間が何等かの理由で規定されている場合に有用な栽培方法となる。
【0022】
本発明の第特徴構成は、第特徴構成の水耕栽培方法を実施するのに好適な水耕栽培方法に係り、その特徴は、
前記最適相関において養液EC値の採用値に対応する積算光量子束密度を積算光量子束密度の目標値とし、
この積算光量子束密度の目標値を光合成有効光量子束密度の採用値と栽培期間日数の採用値との積により除した値を一日当たり光照射時間の目標値とし、
栽培状態の調整として一日当たり光照射時間を前記一日当たり光照射時間の目標値に調整する点にある。
【0023】
この第特徴構成の水耕栽培方法によれば、栽培状態の調整として一日当たり光照射時間を上記一日当たり光照射時間の目標値(即ち、最適相関において養液EC値の採用値に対応する積算光量子束密度(目標値)を光合成有効光量子束密度の採用値と栽培期間日数の採用値との積により除した値)に調整することで、栽培状態を栽培期間における養液EC値と栽培期間における積算光量子束密度とが最適相関を満足する値となる栽培状態に調整することができ、これにより、栽培期間における植物生育不良の発生率をほぼ確実に設定閾値以下にすることができる。
【0024】
そして、この第特徴構成の水耕栽培方法では、養液EC値、光合成有効光量子束密度、栽培期間日数の夫々を固定化した状態での一日当たり光照射時間の調整により栽培状態を最適相関が満たされる栽培状態に調整するから、特に光合成有効光量子束密度が何等かの理由で規定されている場合に有用な栽培方法となる。
【0025】
本発明の第特徴構成は、第1〜第特徴構成のいずれかの水耕栽培方法を実施するのに好適な水耕栽培方法に係り、その特徴は、
養液EC値の下限値を規定しておく点にある。
【0026】
本発明者による研究によれば、養液EC値が過度に低い場合、積算光量子束密度とは無関係に植物の生育不良が高い発生率で生じるようになり、植物生育不良の発生率が設定閾値以下となるのに要する最小の積算光量子束密度と養液EC値との間における前述の如き特定の相関が認められなくなる。
【0027】
これに対し、この第特徴構成の水耕栽培方法によれば、養液EC値の下限値を規定しておくから、その養液EC値の下限値として、養液EC値が過度に低いことに原因する生育不良が生じるようになる養液EC値を選定しておけば、養液EC値が過度に低いことに原因する生育不良の発生は無くして、前述の最適相関が満たされる栽培状態への調整による生育不良発生率の低減を確実に具現化することができ、これにより、栽培期間における植物生育不良の発生率を一層確実に設定閾値以下に低減することができる。
【0028】
本発明の第特徴構成は、第1〜第特徴構成のいずれかの水耕栽培方法を実施するのに好適な水耕栽培方法に係り、その特徴は、
一日当たり光照射時間の上限値を規定しておく点にある。
【0029】
結球レタスを初めとして栽培対象とする植物の中には、一定の周期で暗期がないと養液EC値や積算光量子束密度とは無関係に特定の生育不良が発生する植物が間々存在する。
【0030】
これに対し、この第特徴構成の水耕栽培方法によれば、一日当たり光照射時間の上限値を規定しておく(換言すれば、明期が一定時間継続した後には必ず暗期が存在するようにしておく)から、その一日当たり光照射時間の上限値として、明期の継続による特定の生育不良が生じるようになる一日当たり光照射時間を選定しておけば、明期の継続に原因する生育不良の発生は無くして、前述の最適相関が満たされる栽培状態への調整による生育不良発生率の低減を確実に具現化することができ、これにより、栽培期間における植物生育不良の発生率を一層確実に設定閾値以下に低減することができる。
【0031】
本発明の第特徴構成は、第1〜第特徴構成のいずれかの水耕栽培方法を実施するのに好適な水耕栽培方法に係り、その特徴は、
栽培期間日数の下限値及び上限値を規定しておく点にある。
【0032】
結球レタスを初めとして栽培対象とする植物は一般的に、栽培期間が過度に短い場合や過度に長い場合には、養液EC値や積算光量子束密度とは無関係に生育不良になる。
【0033】
これに対し、この第特徴構成による水耕栽培方法によれば、栽培期間日数の下限値及び上限値を規定しておくから、それら栽培期間日数の下限値及び上限値として、栽培期間が過度に短いことに原因する生育不良が生じるようになる栽培期間日数、及び、栽培期間が過度に長いことに原因する生育不良が生じるようになる栽培期間日数を選定しておけば、栽培期間が過度に短いことや過度に長いことに原因する生育不良の発生は無くして、前述の最適相関が満たされる栽培状態への調整による生育不良発生率の低減を確実に具現化することができ、これにより、栽培期間における植物生育不良の発生率を一層確実に設定閾値以下に低減することができる。
【0034】
本発明の第特徴構成は、第又は第特徴構成の水耕栽培方法の実施に用いる栽培支援システムに係り、その特徴は、
前記最適相関を記憶する記憶部と、前記光合成有効光量子束密度の目標値又は前記一日当たり光照射時間の目標値を演算する演算部とを備え、
この演算部は、前記養液EC値、前記一日当たり光照射時間、前記栽培期間日数が設定される照射時間規定モードでは、前記最適相関において養液EC値の設定値に対応する前記積算光量子束密度を積算光量子束密度の目標値として前記記憶部から読み出すとともに、この読み出した積算光量子束密度の目標値を一日当たり光照射時間の設定値と栽培期間日数の設定値との積により除した値を光合成有効光量子束密度の目標値として演算し、
前記養液EC値、前記光合成有効光量子束密度、前記栽培期間日数が設定される光量子束密度規定モードでは、前記最適相関において養液EC値の設定値に対応する前記積算光量子束密度を積算光量子束密度の目標値として前記記憶部から読み出すとともに、この読み出した積算光量子束密度の目標値を光合成有効光量子束密度の設定値と栽培期間日数の設定値との積により除した値を一日当たり光照射時間の目標値として演算する構成にしてある点にある。
【0035】
この第特徴構成の栽培支援システムによれば、上記照射時間規定モードでは、養液EC値、一日当たり光照射時間、栽培期間日数の夫々(具体的にはそれらの採用値)を設定するだけで、前述の最適相関を満たす栽培状態への調整として光合成有効光量子束密度を調整する際の調整目標値(即ち、光合成有効光量子束密度の目標値)が自動的に演算されるから、その調整目標値を手計算して前述第特徴構成の水耕栽培方法を実施するのに比べ、煩雑な手計算を不要にして前述第特徴構成の水耕栽培方法の実施を容易にすることができる。
【0036】
また、上記光量子束密度規定モードでは、養液EC値、光合成有効光量子束密度、栽培期間日数の夫々(具体的にはそれらの採用値)を設定するだけで、前述の最適相関を満たす栽培状態への調整として一日あたり光照射時間を調整する際の調整目標値(即ち、一日あたり光照射時間の目標値)が自動的に演算されるから、その調整目標値を手計算して前述第特徴構成の水耕栽培方法を実施するのに比べ、煩雑な手計算を不要にして前述第特徴構成の水耕栽培方法の実施を容易にすることができる。
【0037】
本発明の第特徴構成は、第特徴構成の栽培支援システムを実施するのに好適な栽培支援システムに係り、その特徴は、
前記照射時間規定モードでは、前記養液EC値及び前記一日当たり光照射時間の夫々が設定値に等しくなり、かつ、前記光合成有効光量子束密度が前記演算部により演算された光合成有効光量子束密度の目標値に等しくなる栽培状態を設定された栽培期間日数にわたって自動的に維持し、
前記光量子束密度規定モードでは、前記養液EC値及び前記光合成有効光量子束密度の夫々が設定値に等しくなり、かつ、前記一日当たり光照射時間が前記演算部により演算された一日当たり光照射時間の目標値に等しくなる栽培状態を設定された栽培期間日数にわたって自動的に維持する栽培管理部を設けてある点にある。
【0038】
この第特徴構成の栽培支援システムによれば、上記照射時間規定モードでは、前述の最適相関を満たす栽培状態の調整として光合成有効光量子束密度を調整する際の調整目標値が自動的に演算されるのみならず、養液EC値及び一日当たり光照射時間がそれらの設定値に等しくなり、かつ、光合成有効光量子束密度が演算部により演算された目標値に等しくなる栽培状態が、設定された栽培期間日数にわたって栽培管理部により自動的に維持されるから、前述第特徴構成の水耕栽培方法を全自動的に実施することができ、その水耕栽培方法の実施を一層容易にすることができる。
【0039】
また、上記光量子束密度規定モードでは、前述の最適相関を満たす栽培状態への調整として一日あたり光照射時間を調整する際の調整目標値が自動的に演算されるのみならず、養液EC値及び光合成有効光量子束密度がそれらの設定値に等しくなり、かつ、一日当たり光照射時間が演算部により演算された目標値に等しくなる栽培状態が、設定された栽培期間日数にわたって栽培管理部により自動的に維持されるから、前述第特徴構成の水耕栽培方法を全自動的に実施することができ、その水耕栽培方法の実施を一層容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】水耕栽培装置の斜視図
図2】水耕栽培装置の正面視断面図
図3】水耕栽培装置の系統図
図4】養液EC値一定状況下での結球レタスにおける中肋部突出球の発生率と積算光量子束密度との関係を示すグラフ
図5】生育不良発生率を一定値以下にするのに要する最小の積算光量子束密度と養液EC値の相関を示すグラフ
図6】第1実施形態における栽培状態の調整手順を示すフローチャート
図7】第2実施形態における制御盤の構成図
【発明を実施するための形態】
【0041】
〔第1実施形態〕
図1及び図2は水耕栽培装置を示し、この水耕栽培装置では、棚格子1の上に栽培槽2を載置した栽培棚3を上下に複数段設け、各段の栽培棚3において栽培槽2の上には栽培空間4を確保し、各栽培空間4の天井部には光照射灯5を装備してある。
【0042】
栽培槽2に貯留する栽培用養液Lの液面上には定植用培地としての栽培プレート6を配設し、この栽培プレート6に行列配置で形成した多数の栽培孔に発芽した結球レタスV(栽培植物の一例)を定植することで、多数の結球レタスVを光照射灯5による光照射と養液Lの施用とをもって水耕栽培する。
【0043】
光照射灯5を装備する栽培空間4の天井部は厚板ブロック7で形成し、栽培空間4の両側部には、栽培槽2の側縁部と厚板ブロック7の側縁部とにわたる壁材8を設け、この壁材8より栽培空間4の両側部を閉塞することで各栽培空間4をトンネル状の空間にしてある。
【0044】
栽培空間4の床部に相当する栽培槽2、栽培空間4の天井部を形成する厚板ブロック7、栽培空間4の両側部を閉塞する壁材8、並びに、定植用培地としての栽培プレート6はいずれも発泡スチロールなどの樹脂製断熱材で形成し、これにより、これら構成部材の製作加工並びに組み付けを容易にするとともに、それらが備える高い断熱性をもって栽培空間4を外部に対して効果的に断熱する。
【0045】
厚板ブロック7の下面部(即ち、天井面部)には、下方の栽培空間4に向かって開口する溝状凹部9を形成し、光照射灯5は、この溝状凹部9の全長にわたらせた状態で溝状凹部9の上底部に配設してある。
【0046】
また、溝状凹部9の内面には、その全面にわたらせて光反射層9aを設け、これにより、光照射灯5による照射光のうち溝状凹部9の内面に向うものも栽培空間4向きに反射させるようにして栽培空間4に対する光照射効率を高める。
【0047】
栽培空間4の天井部を形成する厚板ブロック7の内部には、櫛歯状に分岐した複数の内部給気路10、及び、同じく櫛歯状に分岐した複数の内部排気路11を形成し、厚板ブロック7の一側面には、それら内部給気路10の入口となる給気接続口10aを形成し、厚板ブロック7の他側面には、それら内部排気路11の出口となる排気接続口11aを形成してある。
【0048】
また、厚板ブロック7には、内部給気路10と栽培空間4とを連通させる複数の天井給気孔10b、及び、内部排気路11と栽培空間4とを連通させる複数の天井排気孔11bの夫々を、厚板ブロック7の面方向(即ち天井面方向)に分散させて形成してある。
【0049】
つまり、後述する気液熱交換器12により冷却した調整空気Gを内部給気路10及び天井給気孔10bを通じて天井部から均一に栽培空間4に供給するとともに、この給気に併行して栽培空間4の内部空気G′を天井排気孔11b及び内部排気路11を通じて天井部から均一に排出し、これにより、栽培空間4に対して集中的かつ均一に調温(冷房)を施して、栽培空間4の全体を結球レタスVの育成に適した均一な温度状態に調整する。
【0050】
調整空気Gを冷却する気液熱交換器12は、調整空気Gを各段の栽培空間4に供給する循環ファン13とともに最下段の栽培棚3の下に配置し、この気液熱交換器12の空気出口を給気ダクト14を通じて各段の厚板ブロック7における給気接続口10aに接続するとともに、この気液熱交換器12の空気入口を排気ダクト15を通じて各段の厚板ブロック7における排気接続口11aに接続してある。
【0051】
つまり、気液熱交換器12で冷却した調整空気Gの供給に伴い各段の棚培空間4から排出される内部空気G′を排気ダクト15を通じて集合状態で気液熱交換器12に戻して冷却し、この冷却空気を再び調整空気Gとして給気ダクト14を通じ各段の栽培空間4に分配供給するようにしてある。
【0052】
図1は水耕栽培装置の単位ユニットUを示すものであり、図3に示すように、この単位ユニットUを一列状に連ねて複数配置することで所要長の水耕栽培装置を構築する。そして、気液熱交換器12、循環ファン13、給気ダクト14、排気ダクト15は単位ユニットUごとに装備される。
【0053】
図3において、16は各段の栽培槽2に供給する養液Lを冷却する熱源側熱交換器であり、この熱源側熱交換器16では、冷凍機17との間での冷水循環路18を通じた冷水循環おいて冷凍機17から供給される低温冷水Cと、還液路19を通じて各段の栽培槽2から戻る養液L′とを熱交換させて、その戻り養液L′を所定温度toまで冷却する。
【0054】
還液路19には、補給水路20及び補給液路21を接続した補給槽22を介装し、この補給槽22において、各段の栽培槽2から戻る養液L′に対し所要量の水Wを補給水路20から補給するとともに所要量の原養液LLを補給液路21から補給することで、各栽培槽2に供給する養液Lを調整する。
【0055】
具体的には、補給水路20に装備したボールタップ弁20aにより補給槽22の液位を所定液位に保つように補給水路20からの水Wの補給量を調整するのに対し、補給槽22においてEC値センサ22aにより検出される養液LのEC値x(電気伝導度)に基づき補給液路21に装備の給液弁21aを調整して補給液路21からの原養液LLの補給量を調整することで、各栽培槽2に供給する養液LのEC値xを所要値に調整する。
【0056】
なお、EC値センサ22aにより検出される養液EC値x(養液Lの電気伝導度)は養液Lの肥料含有度を示す値である。
【0057】
熱源側熱交換器16で冷却した養液Lは循環ポンプ23により主給液路24を通じて各単位ユニットUの気液熱交換器12に分配送給し、これに対し、各単位ユニットUでは、排気ダクト15を通じて各段の栽培空間4から戻る内部空気G′を気液熱交換器12において主給液路24から供給される冷却後の養液Lと熱交換させて所定温度tgiまで冷却し、この冷却空気を調整空気Gとして給気ダクト14を通じ各段の栽培空間4に供給する。
【0058】
また、気液熱交換器12を通過した熱交換後の養液L(即ち、内部空気G′との熱交換で熱源側出口温度toから所定温度幅Δtだけ昇温した養液)は、給液路25を通じて各段の栽培槽2に分配供給する。
【0059】
各段の栽培槽2の装置長手方向における一端部には、栽培槽2の液位を所定液位に保つオーバーフロー排液口26を装備し、上記の如く各段の栽培槽2に養液Lを供給するのに伴い、各段の栽培槽2における槽内養液Lを各段のオーバーフロー排液口26へオーバーフローにより流出させ、これら各段のオーバーフロー排液口26へ流出する養液L′を還液路19を通じて熱源側熱交換器16に戻すようにしてある。
【0060】
つまり、この水耕栽培装置では、各気液熱交換器12での養液Lと調整空気Gとの熱交換により、各段の栽培空間4に供給する調整空気Gの温度tgiを調整して各段の栽培空間4を結球レタスVの育成に適した温度状態に調整すると同時に、各段の栽培槽2に供給する養液Lの温度ti(=to+Δt)を調整して各段の栽培槽2における養液Lを結球レタスVの育成に適した温度状態に調整する。
【0061】
そして、熱源側熱交換器16で冷却した養液Lを気液熱交換器12での調整空気Gの冷却に用いて、養液Lを調整空気Gに対する冷却用熱媒液として兼用する形態を採ることで、装置構成の簡素化及び小型化を可能にしている。
【0062】
27は各段の栽培空間4における温度trを検出する温度センサ、18aは冷凍機17から熱源側熱交換器16に供給する冷水Cの流量を調整して熱源側熱交換器16の冷却出力を調整する冷水調整弁であり、これら温度センサ27により検出される各段の栽培空間温度trに基づき冷水調整弁18aを調整して熱源側熱交換器16の冷却出力を調整することで気液熱交換器12に供給する養液Lの温度toを調整し、この養液温度調整により各段の栽培空間4における温度trを調整するとともに各段の栽培槽2に供給する養液Lの温度tiを調整する。
【0063】
28は水耕栽培装置の運転制御を司る制御盤であり、この制御盤28には、運転管理者による各種運転条件の設定を受け付ける設定部28a、及び、この設定部28aにおいて設定された各種運転条件に従って水耕栽培装置を自動運転する栽培管理部28bを設けてある。
【0064】
具体的には、運転管理者は、運転条件として栽培期間日数T(即ち、定植期間日数)、栽培空間温度tr、養液EC値x、一日当たり光照射時間D(換言すれば、一日における光照射灯5の点灯時間帯)、並びに、光照射灯5による照射光の光合成有効光量子束密度I(略言すれば、光照射灯5の点灯時における光照射強度)の夫々を設定部28aにおいて設定する。
【0065】
この設定は具体的には次の(イ)〜(チ)の手順で行う。
【0066】
(イ)結球レタスVの栽培にあたっては、結球レタスVについて養液EC値xが一定下での栽培期間における中肋部突出球の発生率zと積算光量子束密度M(=光合成有効光量子束密度Iと一日当たりの光照射時間Dと栽培期間日数Tとの積)との関係を示す図4に示す如きデータを複数の養液EC値xごとに予め収集する。
【0067】
(ロ)また、これらの収集データから、栽培期間における中肋部突出球の発生率zが設定閾値zs(例えば5%)となるのに要する最小の積算光量子束密度Mminと養液EC値xとの間に存在する図5に示す如き特定の相関を最適相関Kとして予め求めておく。
【0068】
(ハ)そして、上記各値T,tr,x,D,Iの設定にあたり、図6に示す如く、最適相関Kにおいて養液EC値xの採用値に対応する積算光量子束密度Mminを積算光量子束密度Mの目標値として求める。(図6の♯1)
【0069】
(ニ)ここで,一日当たり光照射時間Dの採用値が予め決められている場合には、積算光量子束密度Mの目標値を予め決められている一日当たり光照射時間Dの採用値と栽培期間日数Tの採用値との積により除した値を光合成有効光量子束密度Iの目標値として次の式1により演算する。(図6の♯2)
【0070】
I=2500×M/D/T/9 ………(式1)
M:積算光量子束密度 [mol/m2]
I:光合成有効光量子束密度[μmol/m2/s]
D:一日当たり光照射時間[h/日]
T:栽培期間日数[日]
なお、2500/9は単位を揃えるための係数である。
【0071】
(ホ)つまり、一日当たり光照射時間Dの採用値が予め決められている場合には、式1により求めた光合成有効光量子束密度Iの目標値、並びに、栽培期間日数T、養液EC値x、一日当たり光照射時間D夫々の採用値を、栽培空間温度trの採用値とともに設定部28aにおいて設定する。(図6の♯3)
【0072】
(へ)一方、一日当たり光照射時間Dの採用値が決められていない場合には、先ず、光合成有効光量子束密度Iの採用値を決定する。(図6の♯4)
なお、この光合成有効光量子束水度Iの採用値は実測値であってもよい。
【0073】
(ト)続いて、上記した積算光量子束密度Mの目標値を光合成有効光量子束密度Iの採用値と栽培期間日数Tの採用値との積により除した値を一日当たり光照射時間Dの目標値として次の式2により演算する。(図6の♯5)
【0074】
D=2500×M/I/T/9 ………(式2)
【0075】
(チ)つまり、一日当たり光照射時間Dの採用値が決められていない場合には、式2により求めた一日当たり光照射時間Dの目標値、並びに、栽培期間日数T、養液EC値x、光合成有効光量子束密度I夫々の採用値を、栽培空間温度trの採用値とともに設定部28aにおいて設定する。(図6の♯6)
【0076】
このように各値T,tr,x,D,Iを設定すると、制御盤28の栽培管理部28bは、設定された栽培期間日数Tにわたって、温度センサ27による検出温度trに基づく冷水調整弁18aの調整により栽培空間温度trをその設定値に自動調整するともに、EC値センサ22aの検出EC値xに基づく給液弁21aの調整により栽培槽2に対する供給養液Lの養液EC値xをその設定値に自動調整する。
【0077】
また同様に、制御盤28の栽培管理部28bは、設定された栽培期間日数Tにわたって、光照射灯5のON/OFFにより一日当たり光照射時間Dをその設定値に自動調整するとともに、光照射灯5の出力調整により光照射灯5による照射光の光合成有効光量子束密度Iを設定値に自動調整する。
【0078】
そして、このように制御盤28の栽培管理部28bが各値T,tr,x,D,Iを自動調整することで、一日当たり光照射時間Dの採用値が決められている場合及び決められていない場合のいずれにしても、水耕栽培装置での結球レタスVの栽培状態は、栽培期間Tにおける養液EC値xと栽培期間Tにおける積算光量子束密度Mとが最適相関Kを満足する値となる栽培状態に調整され、これにより、この水耕栽培装置において栽培する結球レタスVについて栽培期間Tにおける中肋部突出球の発生率zを設定閾値zs以下にすることができる。
【0079】
なお、各値T,tr,x,D,Iの設定にあたっては、養液EC値xが過度に低いことに原因する結球レタスVの生育不良を防止するために養液EC値xの下限値xminを規定しておき、この下限値xmin以上の範囲(xmin≦x)において養液EC値xを設定する。
【0080】
また、明期の過剰継続に原因する結球レタスVの生育不良を防止するために一日当たり光照射時間Dの上限値Dmaxを規定しておき、この上限値Dmax以下の範囲(D≦Dmax)において一日当たり光照射時間Dを設定する。
【0081】
そしてまた、栽培期間が過度に短いことや長いことに原因する結球レタスVの生育不良を防止するために栽培期間日数Tの下限値Tmin及び上限値Tmaxを規定しておき、この上下限値Tmin,Tmaxの間の範囲(Tmin≦T≦Tmax)において栽培期間日数Tを設定する。
【0082】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態では、図7に示す如く、上述の設定部28a及び栽培管理部28bに加えて、最適相関Kを記憶する記憶部28c、及び、光合成有効光量子束密度Iの目標値又は一日当たり光照射時間Dの目標値を演算する演算部28dを制御盤28に装備してある。
【0083】
この演算部28dは、設定部28aにおいて、光合成有効光量子束密度Iの目標値を除く、栽培期間日数T、栽培空間温度tr、養液EC値x、一日当たり光照射時間D夫々の採用値が設定されると、照射時間規定モードを実行する。
【0084】
そして、この照射時間規定モードでは、演算部28dは、前記最適相関Kにおいて養液EC値xの設定値に対応する積算光量子束密度Mminを積算光量子束密度Mの目標値として記憶部28cから読み出し、この読み出した積算光量子束密度Mの目標値を一日当たり光照射時間Dの設定値と栽培期間日数Tの設定値との積により除した値を光合成有効光量子束密度Iの目標値として演算し、この演算目標値を栽培管理部28bに対して自動設定する。
【0085】
一方、演算部28dは、設定部28aにおいて、一日当たり光照射時間Dの目標値を除く、栽培期間日数T、栽培空間温度tr、養液EC値x、光合成有効光量子束密度I夫々の採用値が設定されると、光量子束密度規定モードを実行する。
【0086】
そして、この光量子束密度規定モードでは、演算部28は、前記最適相関Kにおいて養液EC値xの設定値に対応する積算光量子束密度Mminを積算光量子束密度Mの目標値として記憶部28cから読み出し、この読み出した積算光量子束密度Mの目標値を光合成有効光量子束密度Iの設定値と栽培期間日数Tの設定値との積により除した値を一日当たり光照射時間Dの目標値として演算し、この演算目標値を栽培管理部28bに対して自動設定する。
【0087】
これらの自動設定に対し、栽培管理部28bは第1実施形態の場合と同様、温度センサ27による検出温度trに基づく冷水調整弁18aの調整により栽培空間温度trを調整するともに、EC値センサ22aの検出EC値xに基づく給液弁21aの調整により栽培槽2に対する供給養液Lの養液EC値xを調整することで、また、光照射灯5のON/OFFにより一日当たり光照射時間Dを調整するとともに、光照射灯5の出力調整により光照射灯5による照射光の光合成有効光量子束密度Iを調整することで、照射時間規定モードでは、栽培空間温度tr、養液EC値x、一日当たり光照射時間Dの夫々が設定部28
aにおいて設定された値に等しくなり、かつ、光合成有効光量子束密度Iが演算部28dにより演算された光合成有効光量子束密度Iの目標値に等しくなる栽培状態を、設定部28aにおいて設定された栽培期間日数Tにわたって自動的に維持する。
【0088】
また、光量子束密度規定モードでは、栽培空間温度tr、養液EC値x、光合成有効光量子束密度Iの夫々が設定部28aにおいて設定された値に等しくなり、かつ、一日当たり光照射時間Dが演算部28dにより演算された一日当たり光照射時間Dの目標値に等しくなる栽培状態を、設定部28aにおいて設定された栽培期間日数Tにわたって自動的に維持する。
【0089】
なお、この第2実施形態においても、養液EC値xの下限値xmin、一日当たり光照射時間Dの上限値Dmax、栽培期間日数Tの下限値Tmin及び上限値Tmaxは規定しておき、光量子束密度規定モードにおいて演算部28dにより演算された一日当たり光照射時間Dの目標値が一日当たり光照射時間Dの上限値Dmaxより大きい場合、制御盤28は、設定部28aにおいて設定された光合成有効光量子束密度Iの設定値変更を運転管理者に対して要求する報知を行う。
【0090】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を列記する。
【0091】
ここでは、培地に定植された結球レタスを栽培対象の植物Vとし、定植後の結球レタスにおける中肋部突出球の発生率を植物生育不良の発生率zとするが、栽培期間Tにおける植物生育不良の発生率zが設定閾値zs以下となるのに要する最小の積算光量子束密度Mminと養液EC値xとの間に特定の相関Kが認められる植物であれば、本発明の水耕栽培方法はどのような植物にも適用することができる。
【0092】
また、栽培期間Tにおける植物生育不良の発生率zが設定閾値zs以下となるのに要する最小の積算光量子束密度Mminと養液EC値xとの相関を最適相関Kとして求めるのに、植物生育不良発生率zの設定閾値zsは、栽培する植物や栽培コストなどを考慮して適宜に選定すればよい。
【0093】
上述の第2実施形態において制御盤28の演算部28dは、演算した光合成有効光量子束密度Iの目標値、及び、演算した一日当たり光照射時間Dの目標値を栽培管理部28bに対して自動設定するものにしたが、これに代え、演算部28は、光合成有効光量子束密度Iの目標値又は一日当たり光照射時間Dの目標値を自動演算するだけのものにして、この演算部28dにより演算された光合成有効光量子束密度Iの目標値又は一日当たり光照射時間Dを他の栽培条件とともに運転管理者が設定部28aにおいて設定するようにしてもよい。
【0094】
また、積算光量子束密度Mの目標値、光合成有効光量子束密度Iの目標値、一日当たり光照射時間Dの目標値の夫々を手計算で求めるようにしてもよく、さらには、栽培空間温度tr、養液EC値x、一日当たり光照射時間D、光合成有効光量子束密度I夫々の調整を運転管理者が人為的に行うようにしてもよい。
【0095】
前述の各実施形態では、光照射灯5の出力調整により光合成有効光量子束密度Iを調整するようにしたが、光照射灯5の高さ調整や光照射灯5の照射台数調整などにより光合成有効光量子束密度Iを調整するようにしてもよい。
【0096】
栽培植物Vに対する照射光は人工光に限られるものではなく、光合成有効光量子束密度I及び一日当たり光照射時間Dを調整する光調整手段を備えているのであれば、人工光と自然光との両方、あるいは、自然光のみを栽培植物Vに照射する水耕栽培にも本発明は適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明による水耕栽培方法及び栽培支援システムは、特に結球レタスの栽培に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
L 養液
V 栽培対象植物、結球レタス
x 養液EC値
I 光合成有効光量子束密度
M 積算光量子束密度
T 栽培期間、栽培期間日数
z 植物生育不良の発生率、中肋部突出球の発生率
zs 設定閾値
K 最適相関
D 一日当たり光照射時間
28c 記憶部
28d 演算部
28b 栽培管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7