(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電動自転車においては、駆動輪とペダルの回転機構とが機械的に接続されていないので、運転者がペダルを踏み込んだ際に、ペダルのトルクが直接駆動輪に伝わらない構成となっている。このため、機械的な動力伝達機構を含む従来の自転車やアシスト自転車では、ペダルの踏み応えを感じながらペダルを踏む力を調節して漕いでいたが、上記電動気自転車は、駆動輪から伝わる反力がペダルから感じられないので、従来の自転車と同じ感覚でペダルを漕ぐことができず、運転に際して違和感を感じることとなっていた。
例えば、自転車には、自転車自体の重量と運転者の体重によって、慣性力が生じているため、停止状態から漕ぎ始める時(漕ぎだし時)、或いは走行中に加速する時には、定速走行時に比較して、ペダルが重く感じられる。
【0005】
これに対して、上記従来の電動自転車では、機械的に駆動輪とペダルが接続されていないので、走行状況に応じたペダル感覚(ペダルの重さ)を、漕ぎ足が感じることが少なく、これが違和感となってしまっていた。
特許文献1に記載の電動自転車では、一般の自転車の走行感覚を模倣するような観点からペダルクランク軸に回転抵抗となるような部材(例えば、発電機)を設けることが記載されているが、具体的にどのような制御を行って、一般の自転車の走行感覚を模倣するのか、といった構成は記載されていない。
【0006】
特許文献2に記載の電動自転車は、ペダルの重さを調整する機構が設けられているが、バッテリの残量などの車両の状況に基づいてペダルの重さが変化するものであり、一般の自転車の走行感覚を模倣するための制御が行われるものではない。
この発明は、ペダル回転機構と駆動輪とが機械的に接続されている車両と同様な漕ぎ感覚を得られる電動車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような問題を解決する本発明は、以下のような構成を有する。
(1)運転者を載せる車体と、
該車体の前後にそれぞれ支持された前輪と後輪とを有する車両であって、
運転者の踏力を受ける
と共に、前記前輪及び後輪と機械的に接続されていないペダルと、
回転軸と、
前記ペダルが先端部に設けられ、踏力をトルクとして前記回転軸に伝えるクランクと、
前記前輪又は前記後輪の少なくとも一方を駆動させるモータとを備え、
ペダルの踏力によって前記回転軸にトルクが加えられた時に、これに抗する抵抗を前記回転軸に発生させる抵抗付与手段と、
車両の走行
状態を検出する走行状態検出手段と、
前記走行
状態検出手段によって検出された
車速に応じて前記抵抗付与手段によって付与される抵抗の度合を調整する抵抗調整手段とを備えることを特徴とする電動車両。
【0009】
(
2)前記走行状態検出手段
は、更に、踏力によって前記回転軸に伝達されるトルク
を検出し、前記抵抗調整手段は、検出されたトルクを加味して抵抗の度合を調整する上記(
1)に記載の電動車両。
【0010】
(
3)前記抵抗付与手段は発電機であって、前記抵抗調整手段は発電機に流れる電流を制御することによって抵抗を調節するものである上記(1)
又は(
2)のいずれか1に記載の電動車両。
【0011】
(
4)前記走行状態検出手段によって検出された前記回転軸に伝達されるトルクに基づいて、前記抵抗調整手段は発電機の回転数を決定することにより抵抗を発生させる上記(4)に記載の電動車両。
【0012】
(
5)更に、前記モータの駆動トルクを制御する駆動制御手段を有し、
前記駆動制御手段は、走行状態検出手段によって検出された走行状態に基づいて駆動トルクを決定する上記(1)〜(
4)のいずれか1に記載の電動車両。
【0013】
(
6)前記駆動制御手段は、走行状態検出手段から、踏力によって前記回転軸に伝達されるトルクを取得するペダルトルク取得手段と、
前記ペダルトルク取得手段によって取得されたペダルトルクに基づき駆動トルクを決定する駆動トルク決定手段を有する上記(
5)に記載の電動車両。
【0014】
(
7) 前記駆動制御手段は、
走行状態検出手段から車速を取得する車速取得手段と、
前記車速取得手段によって取得された車速が所定値より小さい場合には、ペダルトルクにかかわらず、車速を増速させる駆動トルクを決定する加速トルク決定手段とを有する上記(
5)又は(
6)に記載の電動車両。
(8)
前記駆動制御手段は、
走行状態検出手段から車速を取得する車速取得手段を有し、
前記駆動トルク決定手段は、
ペダルトルクに基づいて目標車速を取得する目標車速取得手段を有するとともに、
前記車速取得手段によって取得された車速が所定値より大きい場合には、前記車速取得手段で取得した車速が前記目標車速取得手段で取得した目標車速となるために必要とするトルクを駆動トルクと決定する上記(6)に記載の電動車両。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ペダルを踏み込む力に対して抵抗が付与されるので、駆動輪から機械的な反力が直接伝わらない電動車両のペダル漕ぎ感覚を、機械的な動力伝達機構を含む自転車でペダルを漕いだ場合の感覚に近づける事が可能となる
。車速に応じて、付与される抵抗が調節されるので、走行状況に応じた漕ぎ感覚の演出が可能となる。
【0016】
請求項
2に記載の発明によれば、ペダル踏力によって発生するトルクに応じて、付与される抵抗が調節されるので、運転者の踏力の変化に応じた漕ぎ感覚の調整が可能となる。
請求項
3に記載の発明によれば、発電機によって抵抗が付与されるので、発電機に供給される電流を制御することで、より細かい抵抗値の制御が可能となり、漕ぎ感覚の調節を精密に行うことが可能となる。
【0017】
請求項
4に記載の発明によれば、発電機の回転数を決定することによって抵抗を調節するので、発電機の制御が容易となり、その結果漕ぎ感覚の演出を一層精密に行うことができる。
請求項
5に記載の発明によれば、走行状態に基づいてモータの駆動トルクを決定するので、走行状態に応じた車速制御が可能となる。
【0018】
請求項
6に記載の発明によれば、ペダルトルクに基づいて駆動トルクが決定されるので、従来の動力伝達機構を含む自転車の走行感覚に沿った感覚を再現することができる。
請求項
7に記載の発明によれば、車速が所定値よりも小さい場合には、ペダルトルクの値にかかわらず、直ちに加速できるトルクが出力されるので、安定した走行が可能な速度へ短時間で増速できる。
請求項8に記載の発明によれば、ペダルトルクに基づいて駆動トルクが決定されるので、従来の動力伝達機構を含む自転車の走行感覚に沿った感覚を再現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の車両の好適実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の電動車両1の一実施形態を示すもので、電動自転車の全体斜視図である。車体2は、操作部20と、本体21とを備える。操作部20は、ハンドル22と、ハンドル22の回動軸であるステム221と、前輪23fを備える。本体21は、例えば、1本の基体や、複数の部材を組み合わせたフレームで構成されており、この実施形態では、1つの基体で構成されている。本体21の先端部ヘッドチューブ211には、ハンドル22のステム221が回動自在に支持されており、後端部では、従動輪である後輪23bが支持され、制御ユニットCUとバッテリユニットBUが搭載されている。なお、ハンドル22には、両端のハンドルグリップ部分223に制動装置を操作する制動操作手段としてのブレーキレバー224が設けられている。このブレーキレバー224には、制動するための操作量を検出するブレーキセンサBBSが設けられている。
【0021】
一方、本体21の中央部には、支柱24が立設され、支柱24の基端部には発電ユニットGUが設けられている。支柱24の先端部には、サドル241が取り付けられている。ステム下端部にはフロントフォーク222が接続されており、該フロントフォーク222の先端には、駆動輪である前輪23fが設けられている。前輪23fの中心軸部分には駆動モータユニットMCが設けられている。駆動モータユニットMCは、駆動モータMであるインホイールモータを有する。該インホイールモータの出力軸はフロントフォーク222に固定されており、駆動輪23fは、インホイールモータの駆動によって駆動輪として回転駆動する。駆動モータユニットMUには、走行状況検出手段としての駆動輪回転数センサMRSと駆動モータ電流センサMTSが設けられており、駆動輪回転数センサMRSは、駆動輪の回転数を検出し、駆動モータ電流センサMTSは、駆動モータに流れる電流値を検出する。この電流値によって駆動モータMが出力しているトルクTmを知ることができる。
【0022】
発電ユニットGUの左右両側には、入力軸が突出し、各左右入力軸は、クランク25L、25Rが、それぞれ逆方向に向けて接続されたクランク軸250L(右側のクランク軸250Rは図示されていない)となっている。左右のクランク25L、25Rの先端には、ペダル251L、251Rがそれぞれ回動自在に支持されている。また、発電ユニットGUは、抵抗付与手段としての発電機Gを備え、クランク25L、25Rに加えられた踏力が、入力軸を介して回転トルクTpとして、発電機Gのロータに伝達される。発電ユニットGUは、入力軸に加わったトルクTpを発電機Gに伝達する機械的な伝達機構、例えば変速装置などを備えてもよい。発電ユニットGUは、更に、発電機電流センサPIS、走行状態検出手段としてのペダル用トルクセンサPTS、ペダル用回転数センサPRSを備えている。ペダル用トルクセンサPTSは、運転者の踏み込みによってペダルから伝えられるトルクTpを検出するセンサであり、ペダル用回転数センサPRSは、ペダルの回転数を検出する。発電機電流センサPISは、発電機に流れる電流値を検出する。この電流値は、発電機によってペダルに与えられる抗力を測るものである。
【0023】
制御ユニットCUは、集積回路及びメモリ等によって構成された車両制御回路ECや、バッテリの放電や充電を制御するバッテリ制御回路BC、発電機制御回路GC、モータ制御回路MCを備えている。制御ユニットCUに隣接して設けられているバッテリユニットBUは、バッテリBTと、バッテリBTから出力される電流値を検出するバッテリ電流センサBIS、バッテリBTから出力される電圧を検出する電圧センサBVSを備えている。バッテリユニットBUは、車体2に対して、機械的及び電気的に着脱自在に設けられており、車体2から取り外した状態で外部電源によって充電可能に構成されている。バッテリBTの電力は、駆動モータMに供給され、駆動モータMの回生時には、回生電力がバッテリBTに供給される。また、バッテリBTの電力は発電機Gによってペダル抗力を発生させる際には、発電機Gに供給され、発電機Gによって発電された電力は、バッテリBTに供給されて蓄積される。駆動モータMと発電機Gは、それぞれ電気エネルギーと機械的な回転エネルギーとの間で相互にエネルギー変換を行うアクチュエータであり、駆動モータMは、主として電力を回転トルクに変換するが、回生時には回転トルクを電力に変換する。また、発電機Gは、主として回転トルクを電力に変換するが、ペダルの回転数を制御する場合には、発電機制御回路GCによって電力を回転トルクに変換する場合もある。
【0024】
図2は、本発明の制御系の構成を示すブロック図である。制御系は、車両制御回路EC、バッテリ制御回路BC、発電機制御回路GC、モータ制御回路MCを備え、各車両制御回路ECから他の制御回路へ向けて指示信号が供給される。車両制御回路ECには、各センサから検出値が入力され、入力された値に基づいて、ペダルの回転軸に与える抗力の値、ペダルの目標回転数、目標車速等を決定する。
発電機制御回路GCは、車両制御回路ECからペダル目標回転数の指示に基づいて、実際のペダルの回転数が目標回転数となるよう発電機の回転を制御する。具体的には、発電機の電流を制御することにより発電機のロータの回転に抵抗を与え、ペダルの回転数を制御する。
【0025】
モータ制御回路MCは、車両制御回路ECから目標車速値の指示に基づいて、実際の車速が目標値となるように、駆動モータMに供給される電力を制御する。また、回生時には、駆動モータから得られる回生電力をバッテリBTへ供給できるように回路を切り換え制御する。
バッテリ制御回路BCは、車両制御回路ECの指示に基づいてモード切り換えを行う。バッテリ制御回路BCは、発電機系統と駆動モータ系統とに分けられ、それぞれについて、駆動モータMに電力を供給するモード、駆動モータMからの回生電力を充電するモード及び発電機Gに電力を供給するモード、発電機Gから発電された電力を充電するモードとの間で、モードの切り換えを行う。
【0026】
以下、
図3〜
図6に示されているフローチャートに基づいて、本発明の電動車両の走行制御処理について説明する。本制御処理は、車両を停止している状態からペダルを踏んで漕ぎ出す際の行われる漕ぎ出し判定制御処理S101と、車両を走行させる際に駆動出力に関して行われる駆動制御処理S103と、走行時の運転者のペダルの踏み込み操作に対して、機械的な動力伝達機構でペダルと駆動輪とがつながっている一般自転車のペダル漕ぎ感覚に沿うようにペダル回転軸の抵抗を制御するペダル制御処理S105とを備えている。
【0027】
図4に示されているフローチャートに基づいて、漕ぎ出し判定処理について説明する。本発明の電動車両では、駆動輪に加わっている走行抵抗がペダルの踏み込みの抗力として伝わらない構成となっているので、ペダルの踏力を受けつつペダルの回転を制御する処理が行われる。
ブレーキセンサBBSからブレーキ操作量を取得する(ステップS201)。取得した操作量からブレーキに基づいて、ブレーキがONとなっているか否か、即ち、駆動輪をロックする操作が行われているか否か判断する(ステップS203)。ブレーキがOFFとなっている場合には、駆動モータ回転数センサMRSから駆動モータの回転数N1を取得し(ステップS205)、取得した回転数から車速Vを演算する(ステップS207)。この車速の取得は、別個に車速センサを設けて、該車速センサから車速を取得してもよい。
このように、走行状態検出手段によって検出される走行状態は車速である。
【0028】
次に、ステップS207で取得した車速Vがゼロ以下(V≦0)であるか判定する(ステップS209)。車速Vがゼロ以下である場合には、車両が前進可能な状態であることを意味しているので、次に漕ぎ出し操作が行われているか判定する。即ち、ペダル用トルクセンサPTSからペダルを介して加えられているトルクTpを取得して、そのトルクTpが予め定められている閾値aより大きいか判断する(ステップS211)。クランク軸250がフリー回転する状態ではペダル踏力によるトルク検出ができないので、ペダル用トルクセンサPTSにトルク検出させるために、予め発電機Gに0回転数指令がされており、ステップS211に先だって、クランク軸250の回転が規定された状態となっている。
【0029】
閾値aは、例えば次のような値に設定される。チェーンなどの動力伝達機構を含む従来型の自転車では、駆動輪が止まっている停止状態ではペダルも前進方向には動かない。このように前記従来型の自転車のペダル操作感覚を再現させるために、閾値aは、車両停止時において、ペダルが固定されている感覚を演出するために必要なトルク値に設定される。或いは、車両を前進させるために必要な最低値として設定された値としてもよい。又は、高齢者等のように踏力が、一般健常者よりも弱い人でも発進できるようにするため、閾値aは、単にペダルに足を載せた程度で加わるトルクに設定してもよい。トルク値Tpが、閾値aより大きい場合には、ペダルに前進させるための踏力が加わっている(或いは、運転者に前進させる意思がある)と判断できるので、駆動走行制御処理に移行する(ステップS213)。
【0030】
ステップS203でブレーキONである(車輪を止めた状態)と判断された場合、これは車両を止めた状態とする意思があることを意味する。そこで、モータ制御回路MCに対して、駆動モータMの目標回転数を0にする指令を供給する(ステップS219)。このような処理によって、駆動モータMの回転は規制され、実質的に駆動輪にブレーキが掛かった状態となる。ステップS219の後、発電機制御回路GCに対して、目標回転数を0にする指令を供給する(ステップS221)。この処理によって、ペダルが固定される。
【0031】
ステップS209で車速Vがゼロ又はマイナスでないと判断された場合、少なくとも車両は前進していることを意味する。車両の状態としては、例えば、運転者はサドルに乗っていないか、または、サドルに乗ったままペダルを漕いでいない状態で前進していると推定される。次に、漕ぎ出し判定処理においてペダルに加わるトルクを検出するためにペダルを固定する必要があり、ペダル回転数を0にする指令を発電機制御回路GCに供給する(ステップS221)。
【0032】
一方、ステップS211でペダルトルクTpが閾値aより小さい場合には、前進するための十分なトルクが出るような踏力がペダルに加わっていないと判断されるので、漕ぎ出しを意識した運転操作はされていないと判定され、駆動制御処理(ステップS213)には移行せず、ペダル回転数を0とする指示を発電機制御回路GCに供給する(ステップS221)。ペダル回転数を0とする制御は、踏力によってクランク軸250に入力されるトルクの値が、後述する閾値bを越えるまで実行される。
【0033】
以上の処理において、ステップS211で閾値aよりペダルトルクTpが小さいと判断された状態とは、具体的には、自転車のサドル241に乗った運転者がプレーキレバー224を戻して(OFFにして)、片足をペダルに載せ、漕ぎ出すために準備を整えた状態である。この時点では、運転者及び車体の自重などによって、駆動輪は止められており、また、クランク25R、25Lも止められた状態となっている。
【0034】
ここで、ペダルに載せている足を踏ん張って、ペダル踏力を増加させ、閾値aよりペダルトルクTpが大きくなると、自転車を発進させるために必要なトルクがペダルによって加えられたと推定されるので、駆動制御処理が開始される(ステップS213)。これは、一般の自転車において、片足を地面に付け、他方の足でペダルを踏んで、自転車を発進させた状態と同様の状態と推定される。
【0035】
次に、
図5に示されているフローチャートに基づいて駆動制御処理について説明する。ペダル用トルクセンサPTSよりペダルから入力されるトルクTpを取得する(ステップS301)。取得されたペダルトルクTpが閾値aより大きいか判断する(ステップS303)。閾値aより大きい場合には、駆動輪23fを駆動させる意思があると判断できるので、車速Vを、駆動輪回転数センサMRSで取得した回転数から算出する(ステップS305)。
ステップS305で得られた車速Vが閾値cより大きいか判断する(ステップS307)。閾値cは、自転車が速度0状態から加速され、両足を両側のペダルにそれぞれ載せられる程度の速度に設定されている。
車速Vが閾値cより大きい場合には、ステップS301で取得したペダルトルクTpに基づいて目標車速を演算する(ステップS309)。次に、車速が目標車速となるために、駆動モータMが出力する必要があるトルク値を演算しトルク指令値T0とする(ステップS311)。このようなトルク指令値T0の演算は、現在車速と目標車速との差や、速度0から発進した時の加速の度合いを考慮して決定される。
【0036】
決定されたトルク指令値T0は、モータ制御回路MCに供給され(ステップS313)、モータ制御回路MCでは指令されたトルク値T0が駆動モータMから出力されるように電流値を制御する。
ステップS307で、車速Vが閾値cより小さい場合には、両足をペダルに載せられる程の速度に達していないことを意味するので、車両の状態は不安定な状態なので、安定走行できる程度の速度まで早急に加速する必要がある。つまり、早急に閾値cまで速度を上げる必要があり、トルク指令値T0を駆動モータMの出力トルクの最大値に設定し(ステップS317)て、指令する(ステップS313)。この処理(ステップS313)で設定される出力トルク値は最大値でなくてもよいが、加速が必要であるので、少なくとも、現在駆動モータMが出力しているトルクよりも大きなトルクが必要である。この最大値出力は、車速が閾値cに達した時にキャンセルされる。以後はステップS309〜311の処理が行われる。
【0037】
また、ステップS303で、ペダルトルクTpが閾値aより小さい場合には、加速する意思がないものと判断できるので、駆動モータMの出力トルクを0に決定し(ステップS315)、トルク指令値T0(=0)をモータ制御回路MCに供給する(ステップS313)。この状態は、駆動モータMは駆動せず、自転車が惰性で進行している状態である。上記ステップS301、ステップS305、ステップS309、ステップ311、ステップS317及びステップS313によって駆動制御手段が構成される。ステップS301によってペダルトルク取得手段が構成される。ステップS305によって車速取得手段が構成される。ステップS309〜313によって、駆動トルク決定手段が構成される。ステップS317によって加速トルク決定手段が構成される。
駆動制御が開始されると、次に、ペダルトルクTpが閾値bより大きいか判断する(ステップS215)。閾値bは、更に加速させるために必要な値であって、閾値b>閾値aとなっている。ペダルトルクTpが閾値bより小さい場合には、加速する意図がないものと判定し、ペダル回転数は0に設定された状態に維持される(ステップS221)。
【0038】
ペダルトルクTpが閾値bより大きい場合には、ペダル制御処理(ステップS217)が行われる。以下、ペダル制御処理の概要について説明する。
図6に示されているように、ペダル251Lに足を載せて踏み込む力(踏力)Kは、略鉛直方向に向かって加えられる。この踏力がクランク軸250Lを回転させる力、即ちトルクは、ペダル251Lの回転軌跡(円輪)の接線方向に分解された分力Qにクランクの長さを乗した値となる。
図7に示されているように、ペダル踏力Kは、ペダルの位置によって変化し、また、分力Qも大きく変化する。ペダル踏力Kは、頂点近傍にペダルが位置すると加わり始め、前側近傍から下方にかけて最大となり、後方へ移動するに従って減少する。更に、分力Qは、円周に沿って移動するペダルの移動方向が下方に向いている辺りで踏力Kの向きと重なり、大きさが最大となる。従って、ペダルが一回転する間にクランク軸250Lに加わるトルクTpは周期的に変化し、これに基づき回転数も周期的に変化する。
図8は、運転車によるペダル漕ぎ操作に応じて変化するペダル回転数の周期的変化を示す図である。図中のグラフ(a)は、平坦地で定速を維持しつつ走行する場合の回転数の変化を概念的に示すものであり、回転数変化は略正弦波に沿った曲線によって示される。このような回転数の変化は、ペダルのクランク軸から動力が機械的に駆動輪に伝わる一般の自転車においても同様に生じているが、走行する車両の慣性が駆動輪からペダルに直接伝わるため、運転者がペダルを漕ぐ際にペダルから感じる感覚には、グラフで示されている程の大きな変化はない。
【0039】
しかしながら、本発明の車両のように駆動輪23fとクランク軸250とが機械的に接続されていない場合には、慣性による反力が伝わらないので、回転数の変化がペダルを踏む足に直接感じられ、一般自転車の運転時感覚と大きく異なる感覚が生じて、これが違和感となる。特に、登坂時や、加速時等において、ペダル踏力を上げた場合には、グラフ(b)に示されているように、変化する回転数の幅が大きくなり、特に違和感が大きくなる傾向がある。そこで、ペダル漕ぎ時の違和感を解消するため、ペダル漕ぎ時において、クランク軸250にペダル踏力に抗する力を与えて、機械的に駆動輪とペダルが接続されている一般自転車と近似したペダル漕ぎ感覚を演出する。さらに、違和感が増幅されるペダル踏力増加時には、クランク軸250Lの回転数を調整する処理を更に実行することで、違和感の発生を抑制する。
【0040】
以下、
図9に示されているフローチャートに基づいて、ペダル制御処理について説明する。ペダル用トルクセンサPTSからペダルから入力されるトルクTpを取得する(ステップS401)。取得したトルクTpが閾値
αより大きいか判断する(ステップS403)。閾値
αより小さい場合には、運転者は加速を意図していないと判断し、ペダル回転数を0に設定、即ちペダルが固定された状態とすることを決定する(ステップS419)。トルクTpが閾値
αより大きい場合には、ステップS221又はステップS419で設定されたペダル回転数0設定が解除される。即ち、ペダルは回転可能状態となる。そして、ペダル回転数センサPRSから供給されるクランク25L、25Rの回転量θをモニターする(ステップS405)。クランク25L、25Rの回転量θが所定値
βより大きくなったか判断する(ステップS407)。所定値
βは、ペダルが回転しているか否かを判定するための値である。
【0041】
回転量θが所定値
βより大きい場合には、ペダルが回転していると判断できるので、ペダルから発電機Gに入力されてくる回転数をモニターし、周期的に発生する回転数の変化の割合を検出する。そして、その変化の割合に応じて発電機の目標回転数を設定する。回転数の変化の割合は、例えば、回転数の変化をモニターした期間内での最高値と最低値の差(dN)を算出する。この回転数の差は、周期的に変化する回転数の振幅として算出してもよい。又は、平均値と最大値との差、又は平均値と最小値との差を変化の割合を示す指標として演算してもよい。或いは、平均値における曲線の傾き(回転数の加速度)を変化の割合を示す指数として取得してもよい。又は、最大値と最小値との結んだ直線の傾きや、
図8の各グラフに示されている正弦波と目標回転数Ngとで囲まれた部分の面積値(積分値)を指標とすることもできる。この実施形態では、回転数の変化の割合を示す指標として、既述の通り、回転数の最高値と最低値の差を算出する(ステップS409)。
【0042】
回転数差dNが所定値
γよりも大きいか否か判断する(ステップS411)。回転数差dNが所定値
γより大きい場合には、加速を意図してペダルを踏んでいると判断し、ステップS401とステップS405で取得したペダルトルクTpと回転量θに基づき、取得されたペダルトルクTpで回転量θとなった時の車速Vを演算する(ステップS413)。そして、
図8のグラフに示されているように、加速している場合(
図8(b))が、特にペダルの漕ぎムラが発生して違和感が生じやすいので、次のような処理を行う。一般自転車の車速が、ステップS413で求められた車速Vとなるようにペダルを漕いだ場合のペダル回転数Ng1を演算する。そして、そのペダル回転数Ng1より高い値を発電機Gの目標回転数Ng2として決定する (ステップS415)。このように、目標回転数Ng2を、実際の自転車で予想される回転数よりも高く設定する(Ng1<Ng2:
図8(b))ことにより、ペダルを回転させるために必要とされるトルクが小さくなる(換言すると、ペダル踏力によって入力されるトルクに対する抗力が小さくなる)ので、ペダルを漕いでいる時の違和感が軽減される。
【0043】
ステップS407で回転量θが所定値
βより小さいと判断された場合には、ペダルはまだ回転していないと判断されるので、駆動輪回転数センサMRSから取得した駆動輪回転数Nmに基づき、車速Vを演算する(ステップS421)。一般自転車の車速が、ステップS421で求められた車速Vとなるようにペダルを漕いだ場合のペダル回転数r0を演算し、発電機Gの目標回転数r1として決定する(ステップS423)。
なお、ステップS403で、ペダルトルクTpが閾値
αより小さい場合には、発電機Gの目標回転数を0として、ペダルを固定した状態に維持する(ステップS419)。さらに、ステップS411で、回転数差dNが所定値
γより小さい場合には、減速を意図していると判断し、この様な場合には、ペダルの漕ぎムラも感じにくいので、発電機Gの待機回転数を目標回転数に設定する(ステップS425)。
【0044】
そして、ステップS423、ステップS415、ステップS425及びステップS419で決定された発電機Gの目標回転数は、発電機制御回路GCに供給される(ステップS417)。ここで、発電機制御回路GCは、目標回転数となるように、ペダルの回転に適宜抵抗を与えて回転数制御を行う。
上記ステップS401、ステップS413、ステップS415、ステップS417、及びステップS401、ステップS421、ステップS423、ステップS417によって抵抗調整手段が構成される。
【0045】
抗力付与手段は、発電機Gのほか、ディスクブレーキなどの摩擦制動装置を用い、制動部材の押圧力を調整することによって抗力を調節する抗力調整手段を設けてもよい。或いは、抗力付与手段としてフライホイールを設け、抗力調整手段は、フライホイールとクランク軸との間に設けられた変速装置を用い、変速比を変更することによって抗力を調節する構成とすることもできる。
【0046】
なお、本発明は、ペダルに抗力を与えて回転を制御するための発電機Gと、駆動力を出力する駆動モータMとを、別個に制御することで、一般の自転車やアシスト自転車の操作感覚に沿った操作感を演出するものであるが、これに限らず、ペダルと駆動輪を別個に制御することによって、従来の構成では達成できない、全く新しい操作感覚の車両を提供することも可能である。ペダル回転に対する駆動輪の回転比を、従来よりも高い比率として、従来の自転車よりも高速走行できる車両を提供し、或いは、逆に従来よりも低い比率として、ペダルをより多く回転させなければ前進しない制御内容とし、ダイエット効果を発揮できる車両を提供することもできる。
以上の説明は電動車両として自転車を例に挙げて説明したが、前後に車輪を有する二輪車に限らず、三輪車や、前輪と後輪が二輪づつある四輪車であってもよい。また、駆動輪は、前輪でなく後輪であってもよい。