(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150206
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】誘導加熱システム及び電力供給方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/04 20060101AFI20170612BHJP
H05B 6/44 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
H05B6/04
H05B6/44
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-209719(P2013-209719)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-76141(P2015-76141A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151367
【弁理士】
【氏名又は名称】柴 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100184262
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 義則
(72)【発明者】
【氏名】杉本 真人
(72)【発明者】
【氏名】小野 徹也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 正稔
【審査官】
豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−219311(JP,A)
【文献】
特開平5−182753(JP,A)
【文献】
特開2006−344386(JP,A)
【文献】
特開2010−67409(JP,A)
【文献】
特開2005−312111(JP,A)
【文献】
特開昭60−249288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/00 − 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱コイルと入力端として高周波用接続端及び低周波用接続端とを有する複数の誘導加熱機と、
前記各誘導加熱機の前記高周波用接続端に接続された高周波用切替器と、
前記各誘導加熱機の前記低周波用接続端に接続された低周波用切替器と、
高周波電力を出力する高周波用電源と、
低周波電力を出力する低周波用電源と、
前記高周波用電源に接続された高周波用整合器と、
前記低周波用電源に接続された低周波用整合器と、
前記高周波用切替器及び前記低周波用切替器を制御する切替制御部と、
を備え、
一の誘導加熱機に接続した前記高周波用切替器又は前記低周波用切替器により、前記一の誘導加熱機と前記高周波用整合器又は前記低周波用整合器との接続状態又は接続待機状態において、前記切替制御部にて他の一の誘導加熱機に接続した前記低周波用切替器又は前記高周波用切替器を閉に切り替えることで、前記一の誘導加熱機に接続した一方の整合器とは逆の他方の整合器と前記他の一の誘導加熱機とを接続する、誘導加熱システム。
【請求項2】
前記切替制御部は、任意の一の誘導加熱機に接続した高周波用切替器を制御することにより前記一の誘導加熱機と前記高周波用整合器とを接続し、かつ、前記一の誘導加熱機に接続した低周波用切替器を制御することにより前記一の誘導加熱機と前記低周波用整合器とを接続する、請求項1に記載の誘導加熱システム。
【請求項3】
複数の誘導加熱機と、高周波用整合器を経由して高周波電力を供給する高周波用電源と、低周波用整合器を経由して低周波用電力を供給する低周波用電源と、切替制御部とを用い、
前記複数の誘導加熱機のうち任意の一の誘導加熱機が、前記高周波用整合器及び前記低周波用整合器の何れか一方の整合器を経由して、前記高周波用電源及び前記低周波用電源の何れか一方の電源からの電力の供給状態又は供給待ち状態であるとき、
前記切替制御部により、前記一の誘導加熱機に接続した一方の整合器とは逆の他方の整合器を介在して他の一の誘導加熱機を未使用の他方の電源と接続し、前記他の一の誘導加熱機が前記他方の整合器を経由して前記他方の電源から電力の供給を受ける、電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の誘導加熱機に電力を供給可能な誘導加熱システム及び電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ワークを誘導加熱する際、加熱コイルから発生する磁束のワークの被処理表面から内部への浸透深度が周波数により異なるため、ワークの熱処理層の厚さに応じて周波数が選択される。熱処理層を厚くするためには低い周波数が用いられ、熱処理層を浅くするためには高い周波数が用いられる。そのため、異なった周波数によりワークを誘導加熱するよう、出力周波数の異なる電源が配置され、各誘導加熱装置に切替器を介在して各電源を接続することでシステム構成されたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
さらに、近年では、複数の電源を備え、異なる周波数を重畳してワークを誘導加熱するシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−249288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のシステムでは、誘導加熱機1台に対して複数の周波数を同時に出力して、例えば低周波と高周波を重畳して熱処理することはできない。また、前述の異なる周波数を重畳してワークを誘導加熱するシステムでは、低周波と高周波とを重畳しないで一方の電源からしか出力していないときには電源の稼働率が悪い。
【0006】
そこで、本発明は、高周波用電源及び低周波用電源から複数の誘導加熱機の任意の一台に異なる周波数電力を重畳して供給し、しかも電源の稼働率を高めることができる、誘導加熱システム及び電力供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の誘導加熱システムは、
加熱コイルと入力端として高周波用接続端及び低周波用接続端とを有する複数の誘導加熱機と、各誘導加熱機の高周波用接続端に接続された高周波用切替器と、各誘導加熱機の低周波用接続端に接続された低周波用切替器と、高周波電力を出力する高周波用電源と、低周波電力を出力する低周波用電源と、高周波用電源に接続された高周波用整合器と、低周波用電源に接続された低周波用整合器と、高周波用切替器及び低周波用切替器を制御する切替制御部と、を備え、
一の誘導加熱機に接続した高周波用切替器又は低周波用切替器により、一の誘導加熱機と高周波用整合器又は低周波用整合器との接続状態又は接続待機状態において、切替制御部にて他の一の誘導加熱機に接続した低周波用切替器又は高周波用切替器を閉に切り替えることで、一の誘導加熱機に接続した一方の整合器とは逆の他方の整合器と他の一の誘導加熱機とを接続する。
【0008】
前記構成において、好ましくは、切替制御部は、任意の一の誘導加熱機に接続した高周波用切替器を制御することにより一の誘導加熱機と高周波用整合器とを接続し、かつ一の誘導加熱機に接続した低周波用切替器を制御することにより一の誘導加熱機と低周波用整合器とを接続する。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の電力供給方法は、複数の誘導加熱機と、高周波用整合器を経由して高周波電力を供給する高周波用電源と、低周波用整合器を経由して低周波用電力を供給する低周波用電源と、切替制御部とを用い、複数の誘導加熱機のうち任意の一の誘導加熱機が、高周波用整合器及び低周波用整合器の何れか一方の整合器を経由して、高周波用電源及び低周波用電源の何れか一方の電源からの電力の供給状態又は供給待ち状態であるとき、切替制御部により、一の誘導加熱機に接続した一方の整合器とは逆の他方の整合器を介在して他の一の誘導加熱機を未使用の他方の電源と接続し、他の一の誘導加熱機が他方の整合器を経由して他方の電源から電力の供給を受ける。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高周波用電源及び低周波用電源から一台の誘導加熱機に対して異なる周波数の電力を重畳して供給することも、二台の誘導加熱機に対して各電源から単周波の電力を供給することもでき、電源の稼働率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る誘導加熱システムの構成図である。
【
図2】
図1の切替制御部の動作を示すフロー図である。
【
図3】
図1の切替制御部において記憶しているデータの一例を示すテーブルである。
【
図4】
図1の切替制御部の動作を示す別のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
〔誘導加熱システム〕
図1は本発明の実施形態に係る誘導加熱システムの構成図である。本発明の実施形態に係る誘導加熱システム1は、複数の誘導加熱機10と、高周波用電源21と、低周波用電源31と、高周波用整合器22と、低周波用整合器32と、切替制御部40とを備える。誘導加熱システム1では、単一の電源系を備えており、単一の電源系が高周波用電源21と低周波用電源31とからなる。高周波用電源21及び低周波用電源31は、交流を直流に変換する順変換部と、直流を平滑化する平滑部と、平滑化した直流を所定の周波数でON/OFFする逆変換部とを備えており、順変換部及び逆変換部を制御するための制御部21a,31aを備える。高周波用電源21は高周波電力を出力し、低周波用電源31は低周波電力を出力する。ここで、高周波用電源21,低周波用電源31における「高周波」及び「低周波」の用語は、一方が他方よりも周波数が高く、他方が一方よりも周波数が低いという意味で用いている。
【0014】
高周波用整合器22が高周波用電源21に接続されており、低周波用整合器32が低周波用電源31に接続されている。各整合器22,32内には、マッチングトランス22a、32aを備え、マッチングトランス22a,32aは何れも一次巻線及び二次巻線を備え、一次巻線には複数の切替用のタップが備えられており、タップを切り替えることにより一次巻線の巻数を変化させる。これにより、マッチングトランス22a,32aの二次側電圧を変換することができ、各電源21,31の負荷インピーダンスを調整することができる。各電源21,31が電圧型のインバータである場合には、マッチングトランス22a,32aの二次巻線と各整合器22,32の出力端との間にはそれぞれコンデンサ22b,32bが設けられており、整合器22,32から負荷側で構成する回路で、各電源21,31の定格周波数に共振させることができる。
【0015】
各誘導加熱機10は、加熱コイル11に対し高周波用切替器23及び低周波用切替器33が接続されて構成されている。各誘導加熱機10は、加熱コイル11と入力端として高周波用接続端12a及び低周波用接続端13aとを有していればよい。
図1に示す形態では、高周波用切替器23と加熱コイル11との間には高周波用電流変成器12が設けられ、低周波用切替器33と加熱コイル11との間には低周波用電流変成器13が設けられている。高周波用電流変成器12、低周波用電流変成器13はそれぞれトランスにより構成され、各電源21,31が電流型のインバータである場合にはマッチング用のコンデンサがトランスの一次側に並列に接続して構成されている。高周波用電流変成器12の一次巻線は高周波用接続端12aに接続され、高周波用電流変成器12の二次巻線は加熱コイル11に接続されている。低周波用電流変成器13の一次巻線は低周波用接続端13aに接続され、低周波用電流変成器13の二次巻線は加熱コイル11に接続されている。各誘導加熱機10には、切替制御部40に対して切替指令を通知する切替指令部14と、高周波用電源21及び低周波用電源31の各電源制御部21a,31aに対して出力指令を通知する出力指令部15と、を備えている。
【0016】
高周波用整合器22は、ブスバー等の給電路を経由して各誘導加熱機10の高周波用切替器23に並列接続されている。同様に、低周波用整合器32は、ブスバー等の給電路を経由して各誘導加熱機10の低周波用切替器33に並列接続されている。
【0017】
切替制御部40は、各誘導加熱機10の切替指令部14からの指令に従って各誘導加熱機10の高周波用切替器23及び低周波用切替器33をON状態からOFF状態へ、又はOFF状態からON状態へ制御する。
【0018】
図2は切替制御部の動作を示すフロー図である。
ステップ1:切替制御部40は、各誘導加熱機10の切替指令部14から切替要求があるかを判断する。
ステップ2:ステップ1において切替要求があると判断されると、切替要求を受け付け、切替制御部40は要求に係る切替の順序を記憶しておく。
図3は切替制御部40において記憶しているデータの一例を示すテーブルである。切替要求の受付順に、高周波用切替器23,低周波用切替器33の何れか一方又は双方に、切替要求があったかを記憶する。
ステップ3:切替制御部40は、ステップ2において記憶した切替の順序に従って進むことになると、先ず、低周波用切替器33のみの切替要求かを判断する。
ステップ4:ステップ3において、低周波用切替器33のみの切替要求でないと判断すると、高周波用切替器23のみの切替要求かを判断する。
ステップ5:ステップ4において、高周波用切替器23のみの切替要求でないと判断すると、つまり、高周波用切替器23及び低周波用切替器33の切替要求であると判断すると、対象電源である高周波用電源21及び低周波用電源31の何れもが使用可能かを判断する。その際、切替制御部40は、高周波用電源21及び低周波用電源31が使用中かについて、他の誘導加熱機10からの高周波用切替器23及び低周波用切替器33の切替要求の有無に基づいて判断する。
ステップ6:ステップ5において、対象電源の何れもが使用可能であると判断すると、要求元の誘導加熱機10の高周波用切替器23及び低周波用切替器33の何れもONにする。これにより、高周波用電源21及び低周波用電源31の何れも要求元の誘導加熱機10に接続される。
ステップ7:ステップ3において、低周波用切替器33のみの切替要求であると判断すると、対象電源である低周波用電源31が使用可能かを判断する。その際、切替制御部40は、低周波用電源31が使用中か否かについて、他の誘導加熱機10からの低周波用切替器33の切替要求の有無に基づいて判断する。
ステップ8:ステップ7において、対象電源が使用可能であると判断すると、要求元の誘導加熱機10の低周波用切替器33をONにする。これにより、低周波用電源31を要求元の誘導加熱機10に接続する。
ステップ9:ステップ4において、高周波用切替器23のみの切替要求であると判断すると、対象電源である高周波用電源21が使用可能かを判断する。その際、切替制御部40は、高周波用電源21が使用中か否かについて、他の誘導加熱機10から高周波用切替器23の切替要求の有無に基づいて判断する。
ステップ10:ステップ9において、対象電源が使用可能であると判断すると、要求元の誘導加熱機10の高周波用切替器23をONにする。これにより、高周波用電源21を要求元の誘導加熱機10に接続する。
ステップ6,ステップ8,ステップ10は、誘導加熱機10から切替要求が出ている間はその状態を保持し、切替要求が切れた後は、次の切替要求に基づき、切替要求が切れた切替器をOFFにし、切替要求が出された切替器をONにする。次の切替要求がない場合は、現在の状態を保持する。
【0019】
以上の説明では、切替要求が低周波用切替器33のみの切替要求かをステップ3で判断し、次に切替要求が高周波用切替器23のみの切替要求かをステップ4で判断している。しかしながら、切替要求が高周波用切替器23のみの切替要求かをステップ3で判断し、次に切替要求が低周波用切替器33のみの切替要求かをステップ4で判断してもよい。
【0020】
図4は切替制御部の動作を示す別のフロー図である。
図4のフロー図は
図2のステップ1を省略したものであり、切替制御部40に切替順序を予め記憶している点で異なっている。ステップ2以降の一連のステップは
図2と同じなので説明を省略する。
【0021】
これらの一連のステップによれば、切替制御部40が、切替手順に従って当該切替要求に係る対象電源が使用されているか否かを判断し、切替要求に係る対象電源が使用されていなければ、切替要求を出力した誘導加熱機10における高周波用切替器23、低周波用切替器33の何れか一方又は双方をONにする。
【0022】
誘導加熱システム1では、各誘導加熱機10に出力指令部15を備えており、要求元の誘導加熱機10に高周波用電源21、低周波用電源31の何れか一方又は双方が接続されていることを切替制御部40が判断した後、出力指令部15から高周波用電源21及び低周波用電源31の各電源制御部21a,31aの何れか一方又は双方に、加熱入信号及び出力指令値が出力される。すると、各電源制御部21a,31aは、当該誘導加熱機10の出力指令に従って電源の出力を制御し、電力を出力する。
【0023】
〔誘導加熱システムによる電力供給方法〕
誘導加熱システム1においては、高周波用電源21に接続された高周波用切替器23と低周波用電源31に接続された低周波用切替器33が、各誘導加熱機10の加熱コイル11に対して並列に接続されている。よって、単一の電源系から一の誘導加熱機に複数の周波数の電力を供給することができる。すなわち、何れか一の誘導加熱機10の切替指令部14から切替制御部40に対して高周波用切替器23及び低周波用切替器33をONにするように指令を出し、切替制御部40がその指令に従って高周波用切替器23及び低周波用切替器33をONにする。その後、その一の誘導加熱機10の出力指令部15から高周波用電源21及び低周波用電源31の各電源制御部21a,31aに対してそれぞれ出力指令を通知する。すると、高周波用電源21から出力された高周波電力が、高周波用整合器22を経由してその一の誘導加熱機10に流れ、低周波用電源31から出力された低周波が、低周波用整合器32を経由してその一の誘導加熱機10に流れる。よって、一の誘導加熱機10において、高周波電力と低周波電力が重畳して加熱コイル11に流れる。高周波電力と低周波電力の出力比を調整することにより、高周波と低周波との間の周波数による誘導加熱効果が得られ、単一の電源系が多周波の電源機能を有する。
【0024】
また、誘導加熱システム1では、単一の電源系から単周波の電力だけを一の誘導加熱機10に流すこともできる。すなわち、何れか一の誘導加熱機10の高周波用切替器23及び低周波用切替器33を連動してON制御する一方、その一の誘導加熱機10から高周波用電源21、低周波用電源31の何れか一方のみに対して出力指令を通知する。すると、出力指令を受けた何れかの電源から、その電源に接続された整合器22又は32を経由してその一の誘導加熱機10に電力が供給される。しかしながら、高周波用切替器23及び低周波用切替器33を連動してONすると、その一の誘導加熱機10から高周波用電源21、低周波用電源31の何れか一方のみに対して出力指令が通知された場合には、出力指令が通知されない他方の電源は未使用となり、その結果、稼働率が低下する。
【0025】
そこで、誘導加熱システム1では、単一の電源系から誘導加熱機10に単周波の電力を供給する形態であっても、或る誘導加熱機10に高周波又は低周波の電力を供給する一方、別の誘導加熱機10に低周波又は高周波の電力を供給することが好ましい。ここで、単一の電源系から或る誘導加熱機10に対する電力の供給開始時間が、別の誘導加熱機10に対する電力の供給開始時間よりも前後してもよいし、単一の電源系から或る誘導加熱機10に対する電力の供給終了時間が、別の誘導加熱機10に対する電力の供給終了時間よりも前後してもよい。
【0026】
すなわち、任意の一の誘導加熱機10が、高周波用整合器22及び低周波用整合器32の何れか一方の整合器を経由して、高周波用電源21及び低周波用電源31の何れか一方の電源から電力の供給状態又は供給待ちの状態において、一の誘導加熱機に接続した一方の整合器と逆の他方の整合器を介在して他の一の誘導加熱機10を未使用の他方の電源と接続し、他の一の誘導加熱機10が他方の整合器を経由して他方の電源から電力を受けることができる。
【0027】
具体的に説明すると、誘導加熱システム1では、任意の一の誘導加熱機10の切替指令部14からの指令に基づいて、切替制御部40が何れか一の誘導加熱機10の高周波用切替器23をONにすると共に、その一の誘導加熱機10の出力指令部15から高周波用電源21に対してのみ出力指令を通知する。すると、一の誘導加熱機10の高周波用切替器23だけがONとなり、高周波用電源21から高周波用整合器22を経由してその一の誘導加熱機10に電力が供給される。その途中において、別の誘導加熱機10の切替指令部14からの指令に基づいて切替制御部40が別の誘導加熱機10の低周波用切替器33をONにすると共に、その別の誘導加熱機10の出力指令部15から低周波用電源31に対してのみ出力指令を通知する。すると、別の要求元の誘導加熱機10と低周波用整合器32とが接続され、低周波用電源31から低周波電力が供給される。なお、誘導加熱システム1において或る誘導加熱機10に低周波電力を供給しているとき又は供給待ち状態であるとき、別の誘導加熱機10に高周波電力を供給する場合についても同様である。
【0028】
このように、誘導加熱システム1は、任意の誘導加熱機10に対して二周波を重畳して電力を供給することも、任意の誘導加熱機10に対して高周波又は低周波の何れかの単周波の電力の供給状態又は供給待ち状態において別の誘導加熱機10に対しての未使用の電源から単周波の電力を供給することできる。よって、単一の電源系の稼働率を高めることができ、生産性の向上を図ることができる。なお、
図1に示す誘導加熱システム1には、誘導加熱機10を4台示しているが、2台、3台又は5台以上であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1:誘導加熱システム
10:誘導加熱機
11:加熱コイル
12:高周波用電流変成器
12a:高周波用入力端
13:低周波用電流変成器
13a:低周波用入力端
14:切替指令部
15:出力指令部
21:高周波用電源
21a:電源制御部
22:高周波用整合器
22a,32a:マッチングトランス
22b,32b:コンデンサ
23:高周波用切替器
31:低周波用電源
31a:電源制御部
32:低周波用整合器
33:低周波用切替器
40:切替制御部