特許第6150207号(P6150207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150207
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20170612BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20170612BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   G08B21/02
   G08B25/04 K
   H04N7/18 D
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-3822(P2014-3822)
(22)【出願日】2014年1月13日
(65)【公開番号】特開2015-132963(P2015-132963A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】508099922
【氏名又は名称】知能技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158768
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 達也
(72)【発明者】
【氏名】大津 良司
【審査官】 吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0132597(US,A1)
【文献】 特開2009−174830(JP,A)
【文献】 特開2004−096457(JP,A)
【文献】 特開2005−128967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00−5/01
5/06−5/22
A61G7/00−7/16
9/00−15/12
99/00
G01B11/00−11/30
G06T1/00−1/40
3/00−9/40
G08B19/00−31/00
H04N7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元検知手段と、危険行動判定手段と、を備えた主に病室において用いる監視システムであって、
上記3次元検知手段は画素ごとに被検知物までの距離を計測可能な検知手段であり、
赤外線を断続的に照射する赤外線パルス照射手段と、
赤外線を検知するための画素を2次元に配置した検知部を有するカメラと、
上記赤外線パルス照射手段が照射する赤外線パルスが上記カメラの検知部に戻ってくるまでの時間を計測することで被検知物までの距離を上記画素ごとに導出可能な距離導出部と、
を備え、
前記危険行動判定手段は、
監視領域内に危険領域を3次元領域として設定し、且つ、当該危険領域に人の身体の部位の内、どの部位が入った際に危険と判定するかを設定する危険領域設定手段と、
上記3次元検知手段が検知した各画素ごとの距離と上記危険領域とから導出される当該危険領域内に検知された物体の2次元形状または3次元形状より、当該物体が人の身体の部位である可能性が高いか否かを判定し、且つ、上記物体が人の身体のどの部位である可能性が高いかを判定する物体判定手段と、
を備え、
上記物体判定手段は、上記3次元検知手段が検知した各画素ごとの距離と上記危険領域とから導出される当該危険領域内に検知された物体の大きさが所定以上の大きさである場合に、当該物体が人の身体の部位である可能性が高いか否かを判定し、且つ、上記物体が人の身体のどの部位である可能性が高いかを判定するものであり、
上記危険行動判定手段は、当該物体判定手段が相当する可能性が高いと判定した人の身体の部位が上記危険領域設定手段により設定された人の身体の部位に一致する場合に危険行動であると判定する
ことを特徴とする監視システム。
【請求項2】
上記3次元検知手段が検知した各画素ごとの距離と上記危険領域とから導出される当該危険領域内に検知された物体が人の身体の部位である可能性が高いか否かを判定し、且つ、上記物体が人の身体のどの部位である可能性が高いかを判定する際に、予め設けられた人の身体の部位の2次元形状または3次元形状のリストと比較して判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
上記危険領域内において検知された物体がどの方向から当該危険領域に入ったかをさらに考慮して危険行動であるか否かの判定を行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項4】
上記危険領域内において検知された物体の移動速度をさらに考慮して危険行動であるか否かの判定を行う
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の監視システム。
【請求項5】
上記危険行動判定手段が危険行動であると判定した場合に、アラームが起動する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の監視システム。
【請求項6】
上記危険行動判定手段が危険行動であると判定した場合に、上記危険領域内において検知された人の身体の部位によって異なるアラームが起動する
ことを特徴とする請求項5に記載の監視システム。
【請求項7】
上記3次元検知手段が検知した各画素ごとの距離より、当該各画素ごとの検知物の位置を導出し、画像を形成する画像形成手段と、
上記形成した画像を電子データとして送信する通信手段と、
当該通信手段により送信された電子データを受信し、画像として表示する表示手段と、
をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の動きを検知し監視するシステムに関するものである。特に、ベッド上での人の動きを捉え、ベッドから転落等を防止するための監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療機関における重大事故において、ベッド周辺での転落事故はかなりの割合を占めている。医療機関は事故防止のため、種々のセンサー等を導入し、事故防止に注力しているが、重大事故数は顕著には減少していない現状がある。
【0003】
事故防止のセンサーとしては数多くのものが実用化されている。例えば、ベッドに圧力センサを設けて、患者が身体を起こしたことを検知するもの、ベッド脇の床に圧力センサを設けて患者が落下したことを検知するもの、あるいは、ベッドの縁に患者がいることを検知する赤外線ラインセンサーといったものがある。
【0004】
また、多焦点CCDカメラ等を検知手段として用いて、患者を見守るシステムも提案されている。このシステムにおいては、室内にいる見守るべき対象者の状態を、平面位置と高さ方向の情報として検知可能な検知手段と、検知手段で得られた高さ方向情報の比較に際し、室内をベッド、ベッドサイド、フロアの各領域に区画し、それぞれの領域に対応して設定された比較基準高さと比較する。その比較結果により各領域内で対象者他の状況を判断する。その判断結果によって得られた対象者の状況を、通報手段を介して看護師等に通報する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−86286
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ベッドに圧力センサを設けて、患者が身体を起こしたことを検知するシステムにおいては、寝返りや体位を変えただけでもセンサーが反応する等の誤検出が生じていた。また、そもそも、ベッドから身体を起こしただけでは、その後にベッドから患者が落下するといった危険行動につながるかどうかが不明であり、危険行動に直接つながるような行動だけを検知するものでは無かった。
【0007】
ベッド脇の床に圧力センサを設けて患者が落下したことを検知するものは、患者の落下を知ることができても、落下を防止することはできなかった。
また、圧力センサ等の接触型のセンサーは、患者の体重や車椅子等の重量物が荷重により劣化や故障が生じ易かった。さらに、一度検知すると、リセットするまで検知ができず、リセットを忘れたことでセンサーが働かず、重大事故が発生するという危険性もあった。
【0008】
ベッドの縁に患者がいることを検知する赤外線ラインセンサーは、非接触で検知可能であるため、故障が少ないという利点があるものの、布団等も検知してしまうため、誤検出が多かった。また、患者が赤外線位置を学習し、その位置を避けるようにベッドから降りようとする場合もあり、患者の危険行動を検知できないだけではなく、むしろ、患者の危険行動を促す恐れもあった。
【0009】
特許文献1に開示されているシステムにおいては、例えば、ベッドからの所定の高さ位置の平面において、ベッドの面積に対して所定割合を越える物体を検知した際には、アラームを鳴らすようにしているため、誤検出が少なくなるという長所を有しているものの、患者が布団を跳ね上げた場合等にはやはり誤検出が生じてしまう。また、日光の入射等により測定個所に明暗が生じると、やはり誤検出が生じるという問題があった。
【0010】
このように誤検出が頻繁に生じてしまうと、アラームが鳴っても、そのアラームの信ぴょう性に看護師が疑問を持ってしまうため、迅速な行動を怠って、重大な事故につながるといった課題もある。
【0011】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、誤検出をできるだけ少なくし、且つ患者の危険行動を確実に捉えることを可能にする監視システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る監視システムは、3次元検知手段と、危険行動判定手段と、を備えた主に病室で用いる監視システムであって、上記3次元検知手段は画素ごとに被検知物までの距離を計測可能な検知手段であり、赤外線を断続的に照射する赤外線パルス照射手段と、赤外線を検知するための画素を2次元に配置した検知部を有するカメラと、上記赤外線パルス照射手段が照射する赤外線パルスが上記カメラの検知部に戻ってくるまでの時間を計測することで被検知物までの距離を上記画素ごとに導出可能な距離導出部と、を備え、前記危険行動判定手段は、監視領域内に危険領域を3次元領域として設定し、且つ、当該危険領域に人の身体の部位の内、どの部位が入った際に危険と判定するかを設定する危険領域設定手段と、上記3次元検知手段が検知した各画素ごとの距離と上記危険領域とから導出される当該危険領域内に検知された物体の2次元形状または3次元形状より、当該物体が人の身体の部位である可能性が高いか否かを判定し、且つ、上記物体が人の身体のどの部位である可能性が高いかを判定する物体判定手段と、を備え、当該物体判定手段が相当する可能性が高いと判定した人の身体の部位が上記危険領域設定手段により設定された人の身体の部位に一致する場合に危険行動であると判定することを特徴とする。
【0013】
特に、上記物体判定手段は、上記3次元検知手段が検知した各画素ごとの距離と上記危険領域とから導出される当該危険領域内に検知された物体の大きさが所定以上の大きさである場合に、当該物体が人の身体の部位である可能性が高いか否かを判定し、且つ、上記物体が人の身体のどの部位である可能性が高いかを判定することを特徴とする。
【0014】
また、上記3次元検知手段が検知した各画素ごとの距離と上記危険領域とから導出される当該危険領域内に検知された物体が人の身体の部位であるか否かを判定し、且つ、上記物体が人の身体のどの部位であるを判定する際に、予め設けられた人の身体の部位の3次元形状のリストと比較して判定することを特徴とする。
【0015】
さらに、上記危険領域内において検知された物体がどの方向から当該危険領域に入ったかをさらに考慮して危険行動であるか否かの判定を行うことを特徴とする。
【0016】
また、上記危険領域内において検知された物体の移動速度をさらに考慮して危険行動であるか否かの判定を行うことを特徴とする。
【0017】
さらに、上記危険行動判定手段が危険行動であると判定した場合に、アラームが起動することを特徴とする。
【0018】
また、上記危険行動判定手段が危険行動であると判定した場合に、上記危険領域内において検知された人の身体の部位によって異なるアラームが起動することを特徴とする。
【0019】
また、上記3次元検知手段が検知した各画素ごとの距離より、当該各画素ごとの検知物の位置を導出し、画像を形成する画像形成手段と、
上記形成した画像を電子データとして送信する通信手段と、
当該通信手段により送信された電子データを受信し、画像として表示する表示手段と、
をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る監視システムは上記のように構成され、物体の3次元形状を精度よく、且つリアルタイムに得られるので、2次元形状または3次元形状の特徴を比較することで、人の身体の部位である可能性が高いか否かの判定を高精度で行える。したがって、誤検出が大きく減少するだけではなく、落下等の重大事故につながる前兆となる行動であるか否かをより詳細に判断できる。さらに、入院患者の危険行動パターンを考慮して、精度を高めることも可能である。
【0021】
また、夜間であっても照明なしで監視を行える。
さらに、布団等の背景の影響を受けることもない。
また、非接触検知であるので、耐久性にも問題はない。
【0022】
さらに、部屋やベッドの配置、あるいは被監視者の特徴に応じて、最適な監視状況を簡単な設定変更で得ることができる。
このように多くの優れた特長を有することで、入院患者を守るだけではなく、看護師の精神的且つ身体的負担を大きく低減する等の効果も生まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る監視システムを構成する3次元検知手段の配置例である。
図2】本発明に係る監視システムで用いる3次元距離画像カメラの原理説明図である。
図3】本発明に係る監視システムの危険領域の例である。
図4】本発明に係る監視システムの構成図である。
図5】本発明に係る監視システムにおける危険判定のフローチャートである。
図6】本発明に係る監視システムにおける危険判定のフローチャートである。
図7】本発明に係る監視システムにおいて、検出した物体が身体の所定部位である可能性が高いか否かを判断するためのフローチャートである。
図8】本発明の実施の形態2に係る監視システムの危険領域の例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態1.
本発明に係る監視システムの構成およびその使用方法等に関して、以下において、図面を用いて説明する。なお、以下の説明は本発明に関する良好な一例を開示するものであり、本発明が当該実施の形態に限定されるものではない。
【0025】
まず、図面を用いて、監視システムの構成について説明する。
監視システムは、主に3次元検知手段1と危険行動判定手段5等からなる。危険行動判定手段5等については後述する。まず、3次元検知手段1の配置例に関して、図1を用いた説明から始める。
【0026】
図1は、病室等において、部屋の隅にベッド2が置かれ、ベッド上に患者等の被監視者が寝ているところである。病院の病室に限らず、介護施設の部屋や自宅療養者がいる自宅の部屋でも良い。3次元検知手段1は、このベッド2上およびその近傍における被監視者の行動を撮像できるように、ベッド2よりも高い位置に備えられている。例えば、壁や家具の上部等に設置する。
【0027】
3次元検知手段1は、図2に示すように、赤外線パルス照射部11、カメラ12、および図示しない距離導出部を備えている。
赤外線パルス照射部11は、極めて短い時間間隔で、赤外線光を断続的に照射する赤外線パルス光源である。
【0028】
カメラ12は、CMOSイメージセンサー等の2次元に画素を配置した撮像装置であり、赤外線パルス照射部が照射する赤外線に対して十分な感度を有している。ここでは、画素数として約2万画素のCMOSイメージセンサーを用いた。
距離導出部は、図2に示すように、赤外線パルス照射部11が照射したパルス光が被写体から反射してカメラ12に帰ってくるまでの時間を画素ごとに計測し、画素ごとに被写体との距離を導出する。計測手法としては、例えば、パルス光の出射時の位相と帰還時の位相との差を計測し、その位相差と光速度から時間及び距離を導出する。
【0029】
このような計測手法を用いることで、約2万画素の距離情報をリアルタイムで得ることが可能となる。それによって、1秒間に10から15フレームのフレームレートで、距離情報を含んだ撮像画像を出力することができる。すなわち、3次元撮像画像を高速に出力することが可能である。
また、被写体までの距離は、約1cmという高精度で測定が可能である。
【0030】
なお、ステレオビジョンと呼ばれる撮像方法、すなわち、複数のカメラで異なる角度から撮像する方法でも、立体画像を得ることができるが、複数の平面画像から立体画像を構築するのに多くの演算を要するため、リアルタイムの処理は不可能である。また、距離精度もかなり悪い。さらに背景の影響も受けやすい。
また、多焦点CCDカメラを用いて、複数の距離における画像を同時に得ることが可能であるが、複数の異なる面における画像を得るだけで、立体画像を得ることはできない。また、デフォーカス面の画像も撮像してしまうため、被写体との距離は大きな誤差を含むと同時に、背景の影響を強く受けることになる。
【0031】
3次元検知手段1を用いる大きな理由は、上述のように、リアルタイム処理で3次元画像が得られることと、測定距離精度に優れていることである。しかし、それ以外にも、暗闇で使用可能であり、且つ昼間でも太陽光や影の影響を受けないという長所もあり、病室での撮像に適している。また、布団等の背景の影響は完全に無視できる。
【0032】
この3次元検知手段1を用いて、ベッド2上およびその近傍における被監視者の行動を撮像し、常時監視することができる。その際に、被監視者の危険行動を察知するため、複数の危険領域を設けている。危険領域とは、例えば、図3において点線で示す4A、4B、および4Cのような3次元領域である。4Aと4Bはベッドの縁の所定領域であり、この領域に被監視者が入った場合、ベッドから落ちる危険性のある領域である。また、4Cはベッドのすぐ横の床の領域であり、この領域に被監視者の身体がある場合は、被監視者がベッドから落ちたと判断できる領域である。また、4C領域に被監視者の足のみがある場合には、被監視者がベッドを降りたと判断できる。
【0033】
なお、被監視者の危険行動の予知は、予め入院患者等の行動データを収集し、転落等の危険行動を起こす前兆となる行動を分析することで精度を高めることができる。
例えば、4A領域に被監視者の手がある場合には危険行動とは判断せず、頭や足がある場合に危険行動と判断することで、真に落下等の可能性がある場合だけを危険行動と判断することができる。
【0034】
次に、監視システムの全体構成について図4を用いて説明する。
監視システムは、3次元検知手段1の他に危険行動判定手段5からなる。また、必要に応じて、通報手段6やモニター手段7を備えている。
【0035】
危険行動判定手段5は、3次元検知手段1の撮像情報を基に、被監視者が危険な行動を行っていないかを判断する手段であり、主としてコンピューターと処理ソフトウエアが協働することによりデータ処理や様々な判断を行う手段である。なお、コンピューターと処理ソフトウエアではなく、専用のプロセッサーを用いることも可能である。
危険行動判定手段5は、危険領域設定手段51、座標変換手段52、物体判定手段53、および最終判定手段54といった各処理手段からなる。
【0036】
危険領域設定手段51は、図3で示したような3次元領域である危険領域をXYZ座標等により規定する。危険領域は一つであっても良いが、図3で示すように複数の領域であるほうが、より被監視者の危険につながる行動を予知する精度は向上する。危険領域の形状は直方体であっても良いし、曲面を含むような形状であっても良い。ベッドの構造や被監視者の特徴等に応じて、適宜最適な形状と位置を決めてやれば良い。
【0037】
また、危険領域設定手段51は、3次元領域である危険領域だけではなく、その危険領域に人の身体の部位の内、どの部位が入った際に危険と判定するかに関しても設定を行う。例えば、図3の4A領域では、前述したように、頭や足が入った場合には危険行動であると設定する。
【0038】
座標変換手段52は、カメラ12の画素位置(x、y)とその画素において測定された被写体との距離lから、座標変換により実座標(X、Y、Z)を得て、被写体の部分位置を表現する。このように実座標に変換することで、被写体の3次元座標系上での位置と3次元形状を得ることができる。また、物体の大きさも実際の大きさを簡単な演算処理で導出できる。
【0039】
物体判定手段53は、3次元検知手段1が検知した各画素ごとの距離と危険領域とから、危険領域内にある物体の3次元形状を導出し、この物体が人の身体のどこかの部位である可能性が高いか否かを判定し、且つ、物体が人の身体のどの部位である可能性が高いかを判定する機能を持っている。
物体判定手段53は上述した機能を満足するものであれば、どのような構成でも良いが、本実施の形態では、図4に示すように、大きさ判定手段531、身体部位想定手段532、および身体部位認定手段533の各手段からなる。これらの各手段の具体的な動作については後述する。
【0040】
最終判定手段54は、物体判定手段53が、危険領域内に検知された物体が人の身体の部位である可能性が高いと判定した場合に、その人の身体の部位が危険領域設定手段により設定された人の身体の部位に一致するか否かを判定する。一致したと判定した場合には、看護師や介護人に異常を知らせるための通報を行う。
【0041】
この通報は、通報手段6により行われる。
通報手段6は、本実施の形態においては、アラーム起動手段61、アラーム手段62、状況確認手段63、およびアラーム停止手段64とからなる。
アラーム起動手段61は、最終判定手段54から異常を知らせるべきであるとの電気信号を得た時に、アラーム62を起動する役割を有している。例えば、アラーム62が看護師の詰め所で鳴る警報であるならば、アラーム起動手段61は警報のスイッチを入れる手段である。また、アラーム62が看護師の携帯電話に異常が発生したことを知らせる電子メールを送信する電子メール送信装置であるならば、アラーム起動手段61は、その送信を制御するパソコンのソフトウエアである。
【0042】
アラーム62が看護師の詰め所で鳴る警報であるならば、それを停止するためにアラーム停止手段64が必要であり、例えば、壁に設けられたアラーム停止スイッチである。
また、アラーム起動手段61は、アラーム手段62を起動すると同時に、状況確認手段63を同時に起動しても良い。状況確認手段63は、例えば、後述する3次元検知手段1の撮像画像を表示するモニター等の表示手段73である。病院内では、何人もの患者を同時に複数の監視システムで監視していることが多い。そこで、危険行動が行われた際には、その患者の映像を看護師の詰め所等に置かれたモニター等の表示手段73にすぐに映し出すようにしても良い。看護師は表示手段73により即座に患者の状況を確認可能であり、何をすべきかを迅速に判断できる。また、アラーム停止手段64を表示手段73に設けるようにすれば、看護師は状況を確認後に、マウスクリック等で警報を停止するようにすることもできる。
【0043】
次にモニター手段7について説明する。
モニター手段7は、3次元検知手段1が撮像した動画像を表示する装置である。
3次元検知手段1の撮像データは、画像形成手段71により、ディスプレイモニター等の表示手段73に表示可能なデータに変換される。この表示可能なデータは、有線や無線方式により、画像形成手段71から表示手段73に送信される。
【0044】
3次元検知手段1が撮像した動画像は3次元映像であるので、3Dテレビと同様の方式で、表示手段73に表示することができる。
あるいは、もっと簡易的に、距離情報を色に変換して、疑似的な3次元映像を表示しても良い。例えば、距離が近い部分は赤等の暖色で表し、遠くなるにしたがって、青等の寒色に、順次、色を変えて表示しても良い。このように、奥行きを色で表現することも可能である。
【0045】
奥行きを色で表現するのであれば、スマートフォンや携帯電話、タブレットPC等のディスプレイも、表示手段73として使用可能である。
看護師はいつも詰め所にいるわけではなく、病室の見回り等を行っている時間も長い。したがって、携帯できる機器に被監視者の映像が表示されれば、病室の見回り等を行っている際であっても迅速な行動が可能となる。
【0046】
次に、監視システムの動作に関して、図5から図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、監視システムを起動し、3次元検知手段1が撮像を開始する。この撮像された3次元映像のデータは、10分の1秒ごとに座標変換手段52に送信され、画素ごとに実空間座標(X、Y、Z)に変換される。これが、図5における撮像データ処理(ステップA)である。この画素ごとの変換データは、物体判定手段53に送られる。
【0047】
物体判定手段53においては、まず、大きさ判定手段531が、それぞれの危険領域内に物体が存在するかどうかを判断する(ステップB)。このステップBの詳細は、図6で示すように、まず、危険領域内に所定の大きさ以上の物体があるか否かを判断する(ステップB1)。この判断は必ずしも必要では無いが、必要な場合にだけ、この後の判断処理を行うことで、処理の効率化を図ることができる。例えば、危険領域内に虫が飛来してきても、物体とは判断せず、5cm程度以上の物体を検出した場合だけ物体が存在すると判断する。
【0048】
この判断は、画素ごとに変換された実空間座標(X、Y、Z)が、それぞれの危険領域内にあるかどうかを判定し、そのように判断された連続した画素の実空間座標の長さを求める等の処理を行えば良い。
そして、危険領域内に所定の大きさ以上の物体があると判定された場合だけ、物体を検出したと認定し、次の判定ステップCに進む。上述したようにこのステップBは必ずしも必要では無いオプションのスクリニーング・ステップであるので、このステップBを実施しない場合には、ステップAから直接ステップCに進んでも良い。
【0049】
次に、この物体が人の身体の部位に相当する可能性が高いか否かを判断する(ステップC)。
このステップCの詳細は、図7で示すように、まず、物体の大きさに相当する可能性のある部位を特定する(ステップC1)。例えば、予め、人の身体の各部位の大きさをリスト化しておき、それを参照することで、判定を行うことができる。ここで大きさは、2次元的な面積であっても良いし、3次元的な表面積であっても良い。例えば、頭部ならば200平方cmから500平方cmであると予め定めておき、その範囲内の物体が検出されたならば、頭部の可能性がある物体が検出されたと判断する。
あるいは、もっと単純に1次元的な長さから初期スクリーニングを行っても良い。例えば、手の指は3cmから10cm、手は10cmから20cm、頭は15cmから25cmといった具合に部位とその長さ範囲をリストにしておけば良い。このようにして、検出された物体が相当する可能性のある身体の部位の候補を決める。
あるいは、もっと精密にスクリーニングを行うためには、物体の体積で判断しても良い。
【0050】
そして、その候補となった身体の部位と物体との2次元形状あるいは3次元形状の特徴が一致するかどうかを判定する(ステップC2)。この判定においても、人の身体の各部位の2次元形状あるいは3次元形状をリスト化しておき、それを参照することで、判定を行うことができる。例えば、手の場合、様々な角度から見た手の3次元形状をリストに登録しておき、物体とすべての角度から見た手の3次元形状の特徴を比較して、物体が手であるか否かを認定する。あるいは、頭部であるか否かを2次元形状で判断するのであれば、アスペクト比が3分の1以上且つ3.3以下としておけば、腕や脚等と区別することができるし、人の部位では無い棒状の物体とも区別できる。
【0051】
このように、物体が手である可能性が高いと認定された場合、最終判定手段54は、被監視者が危険な行動を行う前兆であるについて判断を行う(ステップE)。この判断は、危険領域認定手段が設定した身体の部位に手が含まれる場合には、危険な行動を行う前兆であると判断し、アラーム起動手段61にそれを電気信号により伝達し、最終的にアラーム手段62がアラームを鳴らす等の通報行為を行う(ステップF)。
【0052】
以上が、本発明に係る監視システムの構成例および動作例である。上記は構成例および動作例であって、本発明は必ずしもこれに限定されるわけではない。
例えば、ステップB1において、ある画素が検知した物体に部分が危険領域内にあるかどうかを、実座標において比較した。これに代えて、危険領域の実座標の範囲を、画素と測定距離(x、y、l)の範囲に逆変換しておいて比較することも可能である。
【0053】
さらに、ステップC1からC3においては、物体に相当する身体のすべての部位との一致を調べたが、危険領域51が設定した特定の部位であるか否かだけを調べても良い。このようにすれば、さらに効率化が可能であり、最終判定手段54は不要となる。
【0054】
また、危険領域51は、足や頭といったひとつの部位が危険領域に入った際に危険な行動であると設定したが、複数の部位、例えば、手と頭が同時に危険領域に入った場合に危険な行動であると設定しても良い。
【0055】
また、危険行動にランク付けを行い、それによってアラームの種類を変えても良い。例えば、危険領域に足が入った場合、その足の高さ位置が低い位置にある場合には、危険は小さいと判断して、周期の長い警報を鳴らし、足の高さ位置が高い位置にある場合には、危険は大きいと判断して、周期の短いけたたましい警報を鳴らすようにしても良い。もちろん、危険領域と身体の部位との組み合わせでも、危険度は変わるため、その危険度に応じてアラームの種類を変えても良い。
【0056】
さらに、本監視システムは、常時監視を行っているため、身体の各部位の移動方向や移動速度も検出できる。そこで、身体の各部位がベッド内から外に移動したときには危険行動の可能性があり、逆に、ベッドの外からベッド内に移動した場合は危険行動ではない、といった判断条件を加えることも可能である。このようにすることで、介護者がベッド内に手を入れた場合に、アラームがご起動することを防止することができる。また、被監視者の手や足の移動速度が異常に早い場合には、けいれん等を起こしている可能性もあり、危険領域内でなくともアラームを起動するようにしても良い。
【0057】
以下において、本発明に係る監視システムの特長についてまとめる。
まず、従来の監視システムと大きく異なる点は、赤外線パルス光と赤外線カメラを用いることで、物体の3次元形状を精度よく、且つリアルタイムに得られるようになったことである。これによって、以下の具体的なメリットが得られる。
【0058】
まず、物体の形状だけではなく、カメラからの距離も計測できるため、計測したい物体の2次元形状や3次元形状に加えて、実際の長さ、面積、表面積あるいは体積も簡単な演算で導出できる。そのため、最初に面積等によって、身体の部位に相当する可能性のある物体か否かのスクリーニング精度が向上する。
さらに次のステップとして、2次元あるいは3次元形状の特徴を比較することで、人の身体の部位である可能性が高いか否かの判定を高精度で行える。これによって、身体の部位以外の物体、例えば、布団や枕、被監視者の持ち物等が危険領域に入っても、危険行動と誤判断する可能性が非常に減少する。例えば、被監視者が布団を大きく蹴り上げた場合、危険領域をベッドから所定の高さに設定しておいたとしても、本監視システム以外のシステムでは誤検出してしまうことがある。一方、本システムにおいては、布団の3次元形状の特徴と身体の部位の特徴は異なるので、誤検出することは基本的にない。
【0059】
さらに、本監視システムでは、人の身体のどの部位である可能性が高いかも認知できるため、入院患者の危険行動パターンを考慮して、落下等につながる前兆となる行動であるか否かをより詳細に判断できる。すなわち、真に必要な際だけ、アラームを起動できる。被監視者の行動に応じて、危険度のランク付けも可能である。
【0060】
また、赤外線を用いているので、夜間であっても監視のために照明は不要である。
さらに、普通の2次元の撮像カメラを用いた場合、デフォーカスした物体も撮像に影響を与える。例えば、背景となる布団の色や模様も映り込んでしまうため、誤検出の原因となる。一方、本監視システムにおいては、3次元位置が完全に特定できるため、背景となる布団等の影響は全く受けない。
【0061】
常時監視であり、且つリアルタイムで処理を行えるので、被監視者の身体の部位の動きの方向や動きの速さも認知でき、それらを危険行動判定の条件に加えることも可能である。このようにすることで、誤検出をさらに防止することができる。
【0062】
また、非接触のシステムであるため、耐久性が優れている。
さらに、危険領域の設定も自由に変更できるため、部屋やベッド等の配置、あるいは被監視者の特徴等に応じた最適な監視状況を得ることができる。
【0063】
以上に述べてきたように、本監視システムは数多くの長所を有している。特に重要なことは、転落事故等の重大事故につながる被監視者の前兆となる行動を予め検知し、看護師等に通報できることである。従来のシステムでも、ある程度は行動予知が可能であったかもしれないが、安全である行動も危険行動として検知する過剰検出が頻繁に発生してしまうため、看護師等に負担が掛かったり、真に危険な行動があった場合に、看護師の適切な行動が遅れてしまうといった問題が生じていた。
【0064】
一方、本監視システムでは、患者の危険行動分析に基づいた、細かな監視および判断が可能となったことで、過剰検出を最小限に抑えることができるとともに、真に危険につながる前兆を素早く捉えることができる。
これによって、患者、看護師、病院等に以下のメリットが生じる。
【0065】
まず、患者にとっては、落下等の危険性が減少する。
また、転落等の危険性が減少するので、ベッドに無理やり拘束される等の処置を受けなくて済む。
【0066】
看護師にとっては、安心して仕事を行えるため、心的な負担が減少する。また、過剰検出が減少することで、誤ったアラームが起動することがなく、頻繁に病室にチェックに行く等の身体の負担も減少数する。
さらに、モニターで3次元映像を確認できるので、必要な対処を正確且つ迅速に行える。
【0067】
病院等の医療機関にとっても、重大事故を未然に防止できることで、責任問題が生じるリスクが減少する。また、看護師の心的および身体の負担が減ることで、看護師や医師にストレスなく仕事をしてもらうことができるため、病院全体として効率的な治療、診療が可能となる。
【0068】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る監視システムに関して、図8を用いて説明する。
なお、実施の形態1と異なる点は、より危険行動の検知精度を向上させるため、危険領域の設定が複雑になっていることである。
図8には、4Dから4Iの6つの危険領域が設定されている。これらの危険領域は、現場で実際に看護にあたる看護師の経験を基に設定した。
【0069】
まず、危険領域4Dは、ベッド脇に設けられている落下防止用柵の外側の領域である。この領域内に、手足や頭を検出すれば、危険行動と判断する。
危険領域4Eは、ベッドの足側にある仕切りの上の領域であり、やはり、この領域内に手足や頭を検出すれば、危険行動と判断する。
【0070】
危険領域4Fはベッド上の高い位置の領域であり、天井に近い領域である。この領域内に頭や肩を検出した場合、被監視者はベッド上で立ち上がった状態であり、最高度の危険度と判断する。ベッドから飛び降りる等の危険度の高い行為であるからである。
【0071】
危険領域4Gは、ベッドの頭側にある仕切り付近の領域であり、この領域内に頭や肩を検出した場合、被監視者は上体を起こしたと判断し、危険予備行為と判断する。上体を起こしただけでは、直ぐに危険行動を取る可能性は大きくないが、看護師等の立場からは注意すべき状態である。ただし、この領域に足を検出した場合は、危険行為と判断する。
【0072】
危険領域4Hは、ベッド内部であって、被監視者が寝ている時の通常の高さよりもわずかに高い位置のある領域である。この領域において、手足や頭を検出した場合、被監視者は、必ずしも危険行動を取る可能性は大きくない。被監視者が眠りから覚めて、身体を動かしている状態と考えられるからである。ただし、この場合も、看護師等の立場からは注意すべき状態であり、危険予備行為と判断する。
【0073】
危険領域4Iは、ベッドのすぐ横の床の領域であり、この領域に被監視者の身体がある場合は、あるいは、頭や手を検出した場合は、被監視者がベッドから落ちたと考えられるので、緊急事態と判断する。また、4C領域に被監視者の足のみがある場合には、被監視者がベッドを降り、外に出る等の行動を取る可能性が高いので、危険行為と判断する。
【0074】
このように、現場で実際に看護にあたる経験のある看護師の意見を基に、平面方向および高さ方向に多重の危険領域を設定することで、被監視者の状況を確実且つ詳細に検出することができるので、状況に応じた適切な対応が可能となる。
【0075】
また、それぞれの危険領域で検出される身体の部位に応じて、危険度のランク付けを行い、ランクに応じて、アラームの鳴り方や看護師への連絡の仕方といった通報方法を変えることで、看護師が迅速且つ適切な処置および行動を取ることが可能になる。
通報方法としては、例えば、危険予備行為、危険行為、最高度の危険行為、緊急事態の順に、アラームの音量を大きくする。また、いずれの場合でも、看護師の詰め所に設置したモニター画面や携帯情報端末に、被監視者の映像を映すようにすることで、より迅速に被監視者の状態を知ることができる。
【0076】
また、危険度のランク付けが低い場合には、詰め所に設置したモニター画面や携帯情報端末に簡易な一次警報を出し、その後に、被監視者の行動に異変が無ければ、一定時間後に一次警報を解除してもよい。一次警報後に、危険度のランク付けが高い行動を検知した場合には、本格的な危険警報をモニター画面や携帯情報端末に表示するといった様々な使用方法も可能である。
すなわち、本発明においては、複数の危険領域の設定が自由に行えるので、看護師の経験に基づいた最適な設定が可能となる。
【0077】
なお、実施の形態1および2で開示した本発明に係る監視システムは、病院だけではなく、介護施設や自宅療養者がいる家庭でも用いることが可能であり、警報も介護者や家族といった必要な人に知らせることで、病院で用いる場合と同様の特長を発揮することができる。
【符号の説明】
【0078】
1.3次元検知手段
2.ベッド
3.被監視者
4A、4B、4C、4D、4E、4F、4G、4H、4I 危険領域
5.危険行動判定手段
6.通報手段
7.モニター手段
11 赤外線パルス照射手段
12 カメラ
51 危険領域設定手段
53 物体判定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8