(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150209
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】トンネル換気方法
(51)【国際特許分類】
E21F 1/00 20060101AFI20170612BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20170612BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20170612BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
E21F1/00 Z
F24F7/06 F
F24F7/007 B
F24F13/02 D
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-84281(P2015-84281)
(22)【出願日】2015年4月16日
(65)【公開番号】特開2016-204858(P2016-204858A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2015年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】391061646
【氏名又は名称】株式会社流機エンジニアリング
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
(72)【発明者】
【氏名】山舘 智
(72)【発明者】
【氏名】内田 正孝
(72)【発明者】
【氏名】若山 真則
(72)【発明者】
【氏名】柴藤 昭裕
【審査官】
亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−102484(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102619548(CN,A)
【文献】
特開平08−013998(JP,A)
【文献】
特開2014−202046(JP,A)
【文献】
特開2005−061019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 1/00−17/18
F24F 7/00−7/06
F24F 13/00−13/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの坑口側に主たる送風路を配置し、この主たる送風路に主たる送風手段を備え、前記トンネルの切羽側に1又は複数の従たる送風路を配置し、この従たる送風路及び前記主たる送風路を中継器で連通し、前記主たる送風路及び前記従たる送風路を通して前記トンネル内に気体を送風するトンネル換気方法であって、
前記中継器として、前記主たる送風路からの気体が流入する緩衝空間を有し、この緩衝空間の気体が前記従たる送風路に流出する構成のものを使用し、
前記緩衝空間は前記従たる送風路に流れる気体のバッファ空間として機能し、前記従たる送風路の送風量が増え始めた場合において前記緩衝空間の気体が前記従たる送風路に流れる気体の不足分を補う構成とされ、
前記緩衝空間の圧力を計測する圧力計を備え、前記従たる送風路に従たる送風手段を備え、前記圧力計の計測値に基づいて前記緩衝空間内の圧力が所定の範囲内となるように前記主たる送風手段を駆動し、もって当該主たる送風手段の送風量を制御する主たる制御手段を備え、前記圧力計の計測値に基づいて前記従たる送風手段の起動及び停止を制御する従たる制御手段を備え、
前記主たる送風路からトンネルの切羽側が複数に分岐し、複数の前記従たる送風路を構成する場合において、
前記主たる送風路に主たる送風量検出器を設け、かつ、複数の前記従たる送風路のそれぞれに従たる送風量検出器を設け、
前記主たる送風量検出器で検出した主送風量と、複数の前記従たる送風量検出器で検出した従送風量の総和とを比較し、偏差が過度に大きい場合、前記従たる送風路において漏風があると判断する、
ことを特徴とするトンネル換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルを掘削する際に使用するトンネル換気方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルを掘削する際に使用するトンネル換気設備・換気方法としては、トンネル外の空気(外気)等の新鮮な空気を送風するための送風路が備わる設備・方法が存在する。また、当該送風路としては、掘削の進行に応じた融通性が高く、安価であることから、難燃性、軟質性を有するプラスチックやプラスチックコーティング布等からなる風管が多用されている。
【0003】
一方、道路や鉄道、地下備蓄基地、地下発電所等の建設に際しては、トンネルが長距離に及ぶことや、複数に分岐することがある。また、複数に分岐する場合においても、縦坑、横坑、斜坑等の坑道(いわゆるアクセストンネル)の先端部から、本坑、先進導坑、避難坑、水抜き坑等が分岐する場合や、主たるトンネルの途中から1又は複数のトンネルが分岐する場合等、様々な態様が存在する。いずれにしても、これらのトンネルは、複雑な構造を呈することになる。
【0004】
現在、このような長距離に及ぶトンネルや複数に分岐するトンネルにも、短い、あるいは分岐しないトンネルの場合と同様に、風管等を使用したトンネル換気設備・換気方法が利用されている。もっとも、トンネルが長距離に及ぶ場合や複数に分岐する場合は、坑口側のトンネル部に主たる風管を、切羽側のトンネル部に従たる風管をそれぞれ配置し、主たる風管及び従たる風管を、必要により中継器を介在させる等して連通させるのが一般的である。
【0005】
しかるに、坑口側のトンネル部と切羽側のトンネル部とでは、あるいは同じ切羽側のトンネル部でも、各トンネル部に応じて、それぞれトンネル内のダスト(粉塵)濃度やガス濃度(以下、これらの濃度を単に「汚染濃度」とも言う。)が異なり、換気を必要とする程度、つまり送風量が異なる。したがって、長距離に及ぶトンネルや複数に分岐するトンネルの換気設備・換気方法は、より複雑なものになる。
【0006】
この点を補足説明すると、まず、例えば、発破工法におけるトンネルの掘削は、マーキング、削孔、装薬、発破、ずり出し、コソク、一次コンクリート吹付け、支保工建込み、二次コンクリート吹付け等の作業を繰り返すことで進行する。そして、各作業毎にトンネル内の汚染濃度が変化する。具体的には、発破、一次コンクリート吹付け、二次コンクリート吹付け時等には汚染濃度が高くなり、それ以外の作業時には汚染濃度が低くなる。少し例を挙げると、必要送風量は、例えば、マーキング時に600m
3/min(分)、削孔時に900m
3/min(分)、装薬時に900m
3/min(分)、発破時に2000m
3/min(分)、ずり出し時に1500m
3/min(分)、コソク時に1200m
3/min(分)、一次コンクリート吹付け時に1500m
3/min(分)であるなどとされている。したがって、同じ切羽側のトンネル部でも掘削の進行が異なるため、各トンネル部毎に送風量が異なるのである。また、各切羽側のトンネル部毎に断面積が異なる場合は、このことも送風量が異なる原因となる。さらに、切羽側のトンネル部は掘削の進行にともなって長くなるため、必要送風量が増加する。なお、トンネルの掘削工法としては、発破工法のほかに、例えば、機械掘削工法なども存在する。しかるに、いずれの掘削工法においても、各作業毎にトンネル内の汚染濃度が変化するのは同様である。したがって、後述する本発明は、トンネルの掘削工法いかんに関わらず好適に利用することができる。
【0007】
以上のような背景のもと、特許文献1は、主たるトンネルの途中から2本のトンネルが分岐する場合を例に、次のような風管を提案をしている。
すなわち、「吸込口に送風手段を設けた本管の途中の適宜箇所から分岐管を分岐せしめ、該分岐部分の下流側の本管および分岐管内に、各々先端開口部を絞ったレデューサを設けたことを特徴とする分岐管付き風管」である。
【0008】
しかるに、この風管を採用すると、分岐管の送風量が増えると本管が負圧となるため、本管が軟質性を有する場合は、萎んでしまうという問題が生じる。そこで、当該風管を採用する場合は、分岐管及び本管の送風量を常に最大に固定する必要があり、エネルギー効率に劣るものとなる。また、当該風管を採用する場合、場合によっては、送風手段を大型化する必要があり、坑口近隣の環境等によっては、送風手段を搬入することができなくなって施工そのものが不可能になってしまうおそれもある。
【0009】
なお、本管が萎んでしまうのを防ぐためには、例えば、レデューサ等の中継器を、本管や分岐管から切り離しておくという方法も考えられる。しかるに、この方法によると、切り離した部分から風管内にトンネル内の汚染空気が流入するおそれがある。また、切り離した部分から新鮮な空気が流出するおそれもある。新鮮な空気の流出は、エネルギー効率の低下を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−279741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする主たる課題は、トンネルが長距離に及ぶ場合や複数に分岐する場合等においても適用可能なエネルギー効率に優れるトンネル換気方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決した本発明は次の通りである。
(参考発明1)
トンネルの坑口側に配置される主たる送風路と、この主たる送風路に備わる主たる送風手段と、前記トンネルの切羽側に配置される1又は複数の従たる送風路と、この従たる送風路及び前記主たる送風路を連通する中継器と、を有するトンネル換気設備であって、
前記中継器が、前記主たる送風路からの気体が流入する緩衝空間を有し、この緩衝空間の気体が前記従たる送風路に流出する構成とされ、
前記緩衝空間の圧力を計測する圧力計と、前記従たる送風路に備わる従たる送風手段と、前記圧力計の計測値に基づいて前記主たる送風手段の送風量を制御する主たる制御手段と、前記従たる送風手段の送風量を制御する従たる制御手段と、を有する、
ことを特徴とするトンネル換気設備。
【0013】
(参考発明2)
前記従たる送風手段の出口側における圧力を計測する従たる圧力計を備え、
この従たる圧力計の計測値を少なくとも1つのファクターとして、前記従たる制御手段が前記従たる送風手段の送風量を制御する構成とされた、
参考発明1記載のトンネル換気設備。
【0014】
(請求項1記載の発明)
トンネルの坑口側に主たる送風路を配置し、この主たる送風路に主たる送風手段を備え、前記トンネルの切羽側に1又は複数の従たる送風路を配置し、この従たる送風路及び前記主たる送風路を中継器で連通し、前記主たる送風路及び前記従たる送風路を通して前記トンネル内に気体を送風するトンネル換気方法であって、
前記中継器として、前記主たる送風路からの気体が流入する緩衝空間を有し、この緩衝空間の気体が前記従たる送風路に流出する構成のものを使用し、
前記緩衝空間は前記従たる送風路に流れる気体のバッファ空間として機能し、前記従たる送風路の送風量が増え始めた場合において前記緩衝空間の気体が前記従たる送風路に流れる気体の不足分を補う構成とされ、
前記緩衝空間の圧力を計測する圧力計を備え、前記従たる送風路に従たる送風手段を備え、前記圧力計の計測値に基づいて
前記緩衝空間内の圧力が所定の範囲内となるように前記主たる送風手段
を駆動し、もって当該主たる送風手段の送風量を制御する主たる制御手段を備え、
前記圧力計の計測値に基づいて前記従たる送風手段の
起動及び停止を制御する従たる制御手段を備え、
前記主たる送風路からトンネルの切羽側が複数に分岐し、複数の前記従たる送風路を構成する場合において、
前記主たる送風路に主たる送風量検出器を設け、かつ、複数の前記従たる送風路のそれぞれに従たる送風量検出器を設け、
前記主たる送風量検出器で検出した主送風量と、複数の前記従たる送風量検出器で検出した従送風量の総和とを比較し、偏差が過度に大きい場合、前記従たる送風路において漏風があると判断する、
ことを特徴とするトンネル換気方法。
【0015】
(主な作用効果)
中継器が主たる送風路からの気体が流入する緩衝空間を有し、当該緩衝空間の圧力に基づいて主たる送風手段の送風量を制御するトンネル換気設備・方法によると、主たる送風手段の送風量を常に最小値とすることができる。したがって、エネルギー効率に優れる。
【0016】
また、上記緩衝空間の気体が従たる送風路に流出する構成とされていると、従たる送風路の送風量が増え始めた場合においては、当該緩衝空間の空気が一時的に従たる送風路に流れ込む空気の不足分を補うことになる。したがって、主たる送風手段による送風量の増加に若干タイムラグ(遅れ)があるとしても円滑に送風することができる。
主送風量と従送風量の総和とを比較し、偏差が過度に大きい場合、従たる送風路において漏風があると判断することができ、漏風の有無を適確に判断できる。
ここで、必要な主送風量及び従送風量は、トンネルの断面及び工事の進行長などに基づいて適切な送風量が決定される。したがって、漏風としての判断基準たる、主送風量と従送風量の総和との偏差も対象現場によって適切に選択すればよい。
【0017】
(参考発明3)
前記トンネルの切羽側が複数に分岐している場合において、この分岐するトンネルそれぞれに前記従たる送風路を備え、
複数の前記分岐するトンネルにおける汚染濃度の最大合計値が最小値となるように前記分岐するトンネルにおける作業の進行をそれぞれ調節し、前記最大合計値に応じた主たる送風手段を使用する、請求項1記載のトンネル換気方法。
【0018】
(主な作用効果)
汚染濃度の最大合計値に基づき、分岐するトンネルにおける作業の進行をそれぞれ調節することで、過度に大容量の送
風手段の使用を防止でき、経済的な運転が可能である。
【0019】
【0020】
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、トンネルが長距離に及ぶ場合や複数に分岐する場合等においても適用可能なエネルギー効率に優れるトンネル換気方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】トンネル換気設備・トンネル換気方法の説明図である。
【
図2】トンネル換気設備を構成する各種装置の配置例である。
【
図3】トンネル自体とトンネル換気設備を構成する各種装置との位置関係の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、発明を実施するための形態を説明する。
(適用例)
図2に示すように、本形態のトンネル換気装置は、トンネルTの坑口側に配置される主たる送風路2や、トンネルTの切羽側に配置される従たる送風路6、主たる送風路2及び従たる送風路6を連通する中継器3等の装置が、適宜組み合わされて構成される。
【0024】
これらの要素2,3,6は、トンネルTが長距離に及ぶ場合には、例えば、
図2の(1)に示すように、主たる送風路2、中継器3、従たる送風路6の順に連通させることができる他、
図2の(2)に示すように、主たる送風路2、中継器3、従たる送風路6、更に中継器3、従たる送風路6の順に連通させることができる。つまり、本発明のトンネル換気設備・方法は、従たる送風路6を、中継器3を介在させて、直列的に複数本繰り返し連通させることができ、極めて長距離に及ぶトンネルにも適用することができる。
【0025】
また、トンネルTが複数に分岐する場合としては、例えば、
図2の(3)に示すように、主たるトンネルTAの途中から複数本の従たるトンネルTBが分岐する場合の他、
図2の(4)に示すように、縦坑、横坑、斜坑等の主たるトンネル(アクセストンネル)TAの先端部から、本坑、先進導坑、避難坑、水抜き坑等の従たるトンネルTBが分岐する場合等にも適用することができる。
【0026】
なお、ここで注意を要するのは、本発明のトンネル換気装置・方法においては、主たるトンネルTAに主たる送風路2が、従たるトンネルTBに従たる送風路6がそれぞれ配置されることが必須の要件ではないという点である。すなわち、
図3の(1)に示すように、主たるトンネルTAの途中から中継器3を介して従たる送風路6が配置されることも、
図3の(2)に示すように、従たるトンネルTBの途中まで主たる送風路2が延在し、従たるトンネルTBの途中から中継器3を介して従たる送風路6が配置されること、あるいはこの従たる送風路6が従たるトンネルTBにおいて中継器3を介して繰り返し配置されることも可能である。
【0027】
そこで、以下では、様々な適用態様の中から、
図1に示すように、主たるトンネル(アクセストンネル)TAの先端部(終端部)から複数本の、図示例では6本の従たるトンネルTB〜TGが分岐する場合を例に説明する。
【0028】
(送風路)
本形態においては、送風路として、主たる送風路2、従たる送風路6、及び補助送風路4が備わる。主たる送風路2は、トンネルTの坑口側、図示例では主たるトンネルTAに配置する。また、従たる送風路6は、トンネルTの切羽側、図示例では従たるトンネルTB〜TGに配置する。さらに、補助送風路4は、中継器3と従たる送風手段5とを繋ぐ位置であって、図示例では従たるトンネルTB〜TGに配置する。
【0029】
これらの送風路2,4,6には、いわゆるダクト、風管一般(硬質風管をも含む)を使用することもできる。ただし、経済性や施工性の観点から、軟質性を有する風管(軟質風管)を使用するのが好ましく、軟質性及び難燃性を有する風管を使用するのがより好ましい。軟質性を有する風管としては、ターポリンからなる風管を好適に使用することができる。
【0030】
(送風手段)
本形態においては、主たる送風路2の送風を行う主たる送風手段1、及び従たる送風路6の送風を行う従たる送風手段5が備わる。主たる送風手段1は、主たるトンネルTAの坑口付近に配置する。主たる送風手段1は、トンネル外の新鮮な空気(外気)を取り込み、主たる送風路2内を送風させる。また、従たる送風手段5は、従たるトンネルTB〜TGの始端側、つまり主たるトンネルTA側に配置する。従たる送風手段5は、中継器3や補助送風路4を介して、主たる送風路2からの空気を取り込み、この空気を切羽に向けて従たる送風路6内を送風させる。
【0031】
本形態においては、主たる送風手段1に主たる送風量検出器8Aを、従たる送風手段5に従たる送風量検出器8B〜8Gを、それぞれ設けている。この形態によると、従たる送風量検出器8B〜8Gによる送風量と、主たる送風量検出器8Aによる送風量との関係から、送風路2,4,6からの空気の流出を検出することができる。
【0032】
ここで、本形態においては、トンネルTの切羽側が従たる(分岐する)トンネルTB〜TGに分岐しているので、複数の従たるトンネルTB〜TGにおける汚染濃度の最大合計値が最小値となるように各従たるトンネルTB〜TGにおける作業の進行をそれぞれ調節し、主たる送風手段1として上記最大合計値に応じた装置を使用すると好適である。この形態によると、主たる送風手段1を小型化することができ、搬入や設置等が容易になり、また、エネルギー効率に優れる。
【0033】
(中継器)
本形態においては、主たる送風路2と従たる送風路6とを、図示例では補助送風路4を介して連通する中継器3が備わる。この中継器3は、主たるトンネルTAの先端部(終端部)であって従たるトンネルTB〜TGが分岐する分岐部付近に配置する。
【0034】
中継器3は、主たる送風路2及び従たる送風路6、あるいは補助送風路4に対して、送風路2,4,6内の空気が流出しないように、かつトンネルT(TA〜TG)内の汚染空気が送風路2,4,6内に流入しないように接続する。
【0035】
ここで、本形態の中継器3は、主たる送風路2からの空気が流入する図示しない緩衝空間を有し、かつこの緩衝空間の空気が、従たる送風路6、あるいは補助送風路4に流出する構成とされている、との特徴を有する。この構成の中継器3を使用すると、従たる送風路6、あるいは補助送風路4の送風量が増え始めた場合において、緩衝空間の空気が一時的に従たる送風路6、あるいは補助送風路4に流れ込む空気の不足分を補うことになる。したがって、主たる送風手段1による送風量の増加が若干遅れるとしても、円滑に送風を継続することができる。つまり、中継器3の緩衝空間は、送風する空気のバッファ空間として機能する。
【0036】
なお、従たるトンネルTB〜TGが複数である本形態において、従たる送風手段5の送風量は、各従たる送風手段5毎に各別に変化するため、従たる送風手段5の合計送風量の変化が極めて激しい。したがって、この緩衝空間の存在は極めて有用である。
【0037】
このように、中継器3の緩衝空間は、バッファとして機能するものである以上、単に空間であればよいというのではなく、所定以上の容量を有する空間である必要がある。この緩衝空間の必要容量は、主たる送風手段1の性能等によって異なるため一概には言えず、主たる送風手段1自体の性能の他、この主たる送風手段1を制御する制御手段の性能、場合によっては従たる送風手段5の性能等をも考慮して決定することになる。ただし、緩衝空間の容量が多いと本形態のトンネル換気設備・方法に大きな不都合が生じるというものではないので、搬送や設置等の点で問題が生じないようであれば、緩衝空間を大きめに、例えば、主たる送風路2の容量の1.5〜3.0倍となるように設定するとよい。
【0038】
また、中継器3の緩衝空間は、バッファとして機能するものである以上、圧力変動によって膨縮しない材料からなるのが好ましい。具体的には、例えば、−200〜+200Paの圧力で膨縮しない材料からなる剛の構造体であるのが好ましい。ただし、トンネル内における施工の安全性は極めて重要であり、中継器3の損壊という不測の事態が生じないようにする必要がある。したがって、図示例のように、中継器3に緩衝空間と連通する正圧安全弁12及び負圧安全弁12を設けておくのが好ましい。
【0039】
(主たる送風手段の制御)
本形態においては、上記緩衝空間の圧力を計測する圧力計9と、この圧力計9の計測値に基づいて主たる送風手段1の送風量を制御する主たる制御手段、例えば、PID制御手段とが備わる。この形態においては、例えば、圧力計9の信号(計測値)が、必要によりコントローラ10に取り込まれる等したうえで、緩衝空間内の圧力が所定の範囲内となるように、インバータ制御器11を介して主たる送風手段1を駆動し、もって送風量を制御する。これにより、主たる送風手段1がインバータ制御器11から与えられた回転数指令に基づいて回転し、主たる送風路2を通して中継器3の緩衝空間に所定の風量を送風することになり、緩衝空間内の圧力が所定の範囲内に治まるようになる。
【0040】
緩衝空間内の圧力は、0〜300Paとなるように設定するのが好ましく、+100Pa(正圧)となるように設定するのがより好ましい。圧力を上記範囲とすれば、中継器3の緩衝空間における空気の流入・流出防止と、経済性とのバランスをとることができる。
【0041】
また、本形態においては、中継器3に緩衝空間が備わるものの、円滑な送風という観点からは、主たる送風手段1として、風量の加速時間及び減速時間が、従たる送風手段5におけるようよりも、速いものを使用し、あるいは速くなるように設定するのが好ましい。
【0042】
(従たる送風手段の制御)
従たる送風手段5の送風量は、例えば、従たるトンネルTB〜TB内のダスト濃度センサやガス濃度センサ等において計測された粉塵(ダスト)濃度、COガス濃度、NO
2ガス濃度等の汚染濃度に基づいて決定することができる。
【0043】
ただし、従たる送風手段5の出口部に従たる圧力
計を備え、この従たる圧力
計の計測値をも考慮して送風量を決定するのが好ましい。従たるトンネルTB〜TGは、掘削の進行にともなって長くなり、長くなると必要送風量が増え、また、従たる送風手段5の出口部における圧力が高くなる。したがって、従たる圧力
計の計測値をも考慮して送風量を決定することで、従たるトンネルTB〜TGの長さにも対応した適切な送風量が決定されることになる。
ここで、送風手段5送風量はトンネルの断面及び工事の進行長などに基づいて適宜選択される。
【0044】
(その他)
従たるトンネルTB〜TGにおいて、換気が必要になった場合は、例えば、連絡風管4に設けられたダンパ等の開閉手段7を開くとともに、従たる送風手段5を起動して、従たる送風路TB〜TGの送風を行う。この際、従たる送風機5の起動には、緩衝空間の圧力が50Pa以上という条件を付加することもでき、また、緩衝空間の圧力が0Pa以下になったら停止するという条件を付加することもできる。
【0045】
開閉手段7の種類・構造等は特に限定されないが、安全性及び円滑性を考慮するのであれば、エア駆動による自動開閉式のダンパを使用するのが好ましい。
【0046】
また、従たるトンネルTB〜TGの換気方式も特に限定されないが、通常は、国又は公的機関が定めた換気方式によることになる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、トンネルを掘削する際に使用するトンネル換気方法として適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 主たる送風手段
2 主たる送風路
3 中継器
4 補助送風路
5 従たる送風手段
6 従たる送風路
7 ダンパ
8 送風量センサ
9 従たる圧力計
10 コントローラ
11 インバータ制御器
12 安全弁
TA 主たるトンネル
TB〜TG 従たるトンネル