特許第6150213号(P6150213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6150213芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂及び変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150213
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂及び変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 10/02 20060101AFI20170612BHJP
   C08G 14/04 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   C08G10/02
   C08G14/04
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-127438(P2013-127438)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-969(P2015-969A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】東原 豪
(72)【発明者】
【氏名】大越 篤
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−037215(JP,A)
【文献】 特開昭62−207314(JP,A)
【文献】 特開昭61−228013(JP,A)
【文献】 特開昭61−241315(JP,A)
【文献】 特開2009−155638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 10/00−10/06
14/00−14/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される芳香族炭化水素化合物ホルムアルデヒド縮合反応させることにより、式(2)で示されるジアリールメタンを含有しない芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を得る工程を含む、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の製造方法
【化1】

(1)
(式中、R1はヒドロキシメチル基を表し、lは0〜2の整数を表し、xはlが0の場合は〜6の整数を、lが1の場合は〜8の整数を、lが2の場合は〜10の整数を表す。)
【化2】

(2)
(式中、R1は式(1)の場合と同義であり、yはlが0の場合は0〜5の整数を、lが1の場合は0〜7の整数を、lが2の場合は0〜9の整数を表す。)
【請求項2】
得られる芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の質量平均分子量が200〜25000である、請求項1に記載の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の製造方法
【請求項3】
得られる芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂中の酸素含有率が7〜18質量%である、請求項1又は2に記載の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の製造方法
【請求項4】
前記芳香族炭化水素化合物が式(3)で示され、前記ジアリールメタンが式(4)で示される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の製造方法
【化3】

(3)
(式中、R2、ヒドロキシメチル基を表し、xは〜6の整数を表す。)
【化4】

(4)
(式中、R2は、式(3)の場合と同義であり、yは0〜5の整数を表す。)
【請求項5】
前記芳香族炭化水素化合物が式(5)で示され、前記ジアリールメタンが式(6)で示される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の製造方法
【化5】

(5)
(式中、R3ヒドロキシメチル基を表し、xは〜8の整数を表す。)
【化6】

(6)
(式中、R3は、式(5)の場合と同義であり、yは、0〜7の整数を表す。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法により芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を得る工程と、
前記工程において得られた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と式(7)で示される化合物とを、酸性触媒の存在下で反応させる工程とを含む、
変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の製造方法
【化7】

(7)
(式(7)中、X及びYはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はシクロヘキシル基を表し、a及びbは1≦a+b≦10、a≧1、b≧0を満たす整数を、cは0〜2の整数を表す。)
【請求項7】
前記式(7)で示される化合物が、フェノール、フェニルフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン及びジヒドロキシアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項6に記載の樹脂の製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂及び変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
キシレン、メシチレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素とホルムアルデヒドとを酸触媒の存在下に反応させて該芳香族炭化水素がホルムアルデヒドで架橋した芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が得られることは周知である。
【0003】
この芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、数多くの分子種からなるオリゴマーの混合物で、芳香環間にメチレン結合、エーテル結合、アセタール結合などを有しており、フェノール類、カルボン酸、アミン類等と反応させることで、特性の異なる種々の変性芳香族炭化水素樹脂を与えることも周知である(非特許文献1)。
【0004】
その一方で、一般的にはこれら芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂には、芳香族炭化水素2分子とホルムアルデヒド1分子からなるジアリールメタンが存在し、変性後も未反応成分として残存するため、変性樹脂から得られる硬化物の機械強度、耐熱分解性を低下することが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−228013号公報
【特許文献2】特開昭61−241315号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A.Ninagawa et al.;Makromol.Chem.,107,p.196(1967)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、これらの性能低下を招くジアリールメタンをまったく含まない樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、式(1)で示される化合物及びホルムアルデヒドを酸性触媒の存在下で反応させて得られる芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂において、式(2)で示されるジアリールメタンをまったく含まない樹脂が、上記の性能低下を抑制することができたので、本発明に到達した。
すなわち、本発明はつぎのとおりである。
[1]
式(1)で示される芳香族炭化水素化合物及びホルムアルデヒドとの縮合反応により得られる芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂であって、式(2)で示されるジアリールメタンを含有しない、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂。
【化1】
(1)
(式中、Rは各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はヒドロキシメチル基を表し、lは0〜2の整数を表し、xはlが0の場合は0〜6の整数を、lが1の場合は0〜8の整数を、lが2の場合は0〜10の整数を表す。)
【化2】
(2)
(式中、Rは式(1)の場合と同義であり、yはlが0の場合は0〜5の整数を、lが1の場合は0〜7の整数を、lが2の場合は0〜9の整数を表す。)
[2]
質量平均分子量が200〜25000である、[1]に記載の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂。
[3]
酸素含有率が7〜18質量%である、[1]又は[2]に記載の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂。
[4]
前記芳香族炭化水素化合物が式(3)で示され、前記ジアリールメタン(A)が式(4)で示される、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂。
【化3】
(3)
(式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はヒドロキシメチル基を表し、xは0〜6の整数を表す。)
【化4】
(4)
(式中、Rは、式(3)の場合と同義であり、yは、0〜5の整数を表す。)
[5]
前記芳香族炭化水素化合物が式(5)で示され、前記ジアリールメタン(A)が式(6)で示される、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂。
【化5】
(5)
(式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はヒドロキシメチル基を表し、xは0〜8の整数を表す。)
【化6】
(6)
(式中、Rは、式(5)の場合と同義であり、yは、0〜7の整数を表す。)
[6]
[1]〜[5]のいずれか一項に記載の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、式(7)で示される化合物とを、酸性触媒の存在下で反応させて得られる変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂。
【化7】
(7)
(式(7)中、X及びYはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はシクロヘキシル基を表し、a及びbは1≦a+b≦10、a≧1、b≧0を満たす整数を、cは0〜2の整数を表す。)
[8]
前記式(7)で示される化合物が、フェノール、フェニルフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン及びジヒドロキシアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも一種である、[6]に記載の樹脂。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂は、物性低下の原因となるジアリールメタンをまったく含まないため、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板のマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、半導体用のコーティング剤又は半導体製造におけるレジスト用樹脂等の広範な用途に利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する(以下、本実施の形態と称する)。なお、本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施の形態のみに限定されない。
<芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂>
本実施形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、式(1)で示される芳香族炭化水素化合物とホルムアルデヒドを、酸性触媒の存在下で縮合反応させることにより得られる。
上記反応で得られる芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、芳香環上に付加したホルムアルデヒドから形成されるメチレン基、オキシメチレン基を含む構造を有しており、これらの置換基が芳香環に結合する位置、数によって多くの化合物の混合物として得られるが、本実施形態の樹脂は、式(2)で示されるジアリールメタンをまったく含まない。
例えばキシレンメタノールを、一般的な条件下でホルマリン及び濃硫酸共存下で反応させて得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂は、下記式(8)〜(11)で示される化合物を代表組成とする混合物となるが、本実施形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、ジアリールメタンである下記式(12)の構造を有する化合物をまったく含まない。
このような芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、式(2)で示されるジアリールメタンをまったく含まないため、後述する芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を変性して得られた変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の硬化物の機械強度、耐熱分解性に優れた樹脂を得ることができる。
【0011】
【化8】
(8)
【化9】
(9)
【化10】
(10)
【化11】
(11)
【化12】
(12)
【0012】
本実施の形態における芳香族炭化水素ホルムアルデヒドの原料となる芳香族炭化水素化合物は、式(1)で示される。
【化13】
(1)
(式中、Rは各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はヒドロキシメチル基を表し、lは0〜2の整数を表し、xはlが0の場合は0〜6の整数を、lが1の場合は0〜8の整数を、lが2の場合は0〜10の整数を表す。)
この中でも、式(3)及び/又は式(5)で示されるものであることが好ましい。
【化14】
(3)
(式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はヒドロキシメチル基を表し、xは0〜6の整数を表す。)
【化15】
(5)
(式中、Rは、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はヒドロキシメチル基を表し、xは0〜8の整数を表す。)
このような化合物を具体的に例示すると、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クメン、プソイドクメン、メシチレン、ビフェニル、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、トリメチルナフタレン、アントラセン、メチルアントラセン、ジメチルアントラセン、フェニルメタノール、フェニルジメタノール、トリルメタノール、トリルジメタノール、キシリルメタノール、キシリルジメタノール、メシチルメタノール、メシチルジメタノール、ナフチルメタノール、ナフチルジメタノール、メチルナフチルメタノール、メチルナフチルジメタノール、ジメチルナフチルメタノール、ジメチルナフチルジメタノール、アントラセニルメタノール、アントラセニルジメタノール、メチルアントラセニルメタノール、メチルアントラセニルジメタノールなどが挙げられる。この中でも、環上の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシメチル基に置換されたものであることが、得られた樹脂にジアリールメタンをまったく含まない観点から好ましく、そのような化合物の具体例としては、フェニルメタノール、フェニルジメタノール、トリルメタノール、トリルジメタノール、キシリルメタノール、キシリルジメタノール、メシチルメタノール、メシチルジメタノール、ビフェニルメタノール、ビスフェニルメタノール、ナフチルメタノール、ナフチルジメタノール、メチルナフチルメタノール、メチルナフチルジメタノール、ジメチルナフチルメタノール、ジメチルナフチルジメタノール、アントラセニルメタノール、アントラセニルジメタノール、メチルアントラセニルメタノール、メチルアントラセニルジメタノール等が挙げられる。
これらの芳香族炭化水素化合物は、特に限定されず、工業的に入手できるものを利用することができる。
【0013】
本実施の形態におけるホルムアルデヒドとしては、特に限定されず、通常工業的に入手可能な、ホルムアルデヒドの水溶液が挙げられる。
本実施の形態におけるホルムアルデヒドは、パラホルムアルデヒド及びトリオキサン等のホルムアルデヒドを発生する化合物等の使用により発生するホルムアルデヒドを包含する。ゲル化抑制の観点から、好ましくは、ホルムアルデヒド水溶液である。
【0014】
本実施の形態における縮合反応において、式(1)で示される化合物とホルムアルデヒドのモル比は、特に限定されないが、1:1〜1:20であり、好ましくは1:1.5〜1:17.5、より好ましくは1:2〜1:15、さらに好ましくは1:2〜1:12.5、よりさらに好ましくは1:2.5〜1:10、特に好ましくは1:3〜1:10、最も好ましくは1:3〜1:5である。本実施の形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、前記のような割合で、式(1)で示される化合物とホルムアルデヒドとを縮合反応させるため、架橋構造が多く、また、前記範囲とすることで、未反応で残る芳香族メタノールの量を少なくし、得られる芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の収率を比較的高く維持することができる。
【0015】
本実施の形態における酸性触媒としては、特に限定されず、公知の無機酸、有機酸を使用することができ、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ふっ酸等の無機酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸;ケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸が挙げられる。
これらの中でも、製造上の観点から、硫酸、シュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、リンタングステン酸が好ましい。
【0016】
酸性触媒の使用量は、特に限定されないが、式(1)で示される芳香族炭化水素化合物及びホルムアルデヒドの合計量100質量部に対して、0.0001〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは0.001〜85質量部、さらに好ましくは0.001〜70質量部となるよう調整する。このような範囲とすることで、適当な反応速度が得られ、かつ反応速度が大きいことに基づく樹脂粘度の増加を防ぐことができる。
酸性触媒の添加方法は、特に限定されず、一括して添加してもよいし、分割して添加してもよい。
【0017】
本実施の形態における縮合反応の圧力は、特に限定されず、常圧でも加圧でもよい。
本実施の形態における縮合反応は、特に限定されず、例えば常圧下で、使用する原料が相溶する温度以上(通常80〜300℃)で加熱還流させながら、又は生成水を留去させながら行う方法がある。
本実施の形態における縮合反応は、必要に応じて、系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
【0018】
本実施の形態における縮合反応は、必要に応じて、縮合反応に不活性な溶媒を使用することもできる。前記溶媒としては、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル;2−プロパノール等のアルコール;メチルイソブチルケトン等のケトン;エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル;酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
本実施の形態における縮合反応は、特に限定されないが、アルコールが共存する場合、樹脂の末端がアルコールで封止され、低分子量で低分散(分子量分布の狭い)芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が得られ、変性後も溶剤溶解性が良好で低溶融粘度の樹脂となる観点から、アルコール共存下で行うことが好ましい。前記アルコールは、特に限定されず、例えば、炭素数1〜12のモノオールや炭素数1〜12のジオールが挙げられる。前記アルコールは単独で添加してもよいし、複数を併用してもよい。芳香族メタノールホルムアルデヒド樹脂の生産性の観点から、これらのうち、プロパノール、ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノールが好ましい。
アルコールが共存する場合、アルコールの量は、特に限定されないが、例えば、式(1)で示される化合物1当量に対して、ヒドロキシル基が0.5〜10当量となる量が好ましい。
【0020】
本実施の形態における縮合反応は、芳香族炭化水素化合物、ホルムアルデヒド及び酸性触媒を反応系に同時に添加してもよいし、芳香族炭化水素化合物をホルムアルデヒド及び酸性触媒が存在する系に逐次添加する縮合反応としてもよい。前記の逐次添加する方法は、得られる樹脂中の酸素含有率を高くし、後の変性工程において(7)式で示される化合物とより多く反応させることができる観点から好ましい。
【0021】
反応時間は、特に限定されないが、0.5〜30時間が好ましく、0.5〜20時間がより好ましく、0.5〜10時間がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐熱分解性に優れた樹脂が経済的に、かつ工業的に有利に得られる。
【0022】
反応温度は、特に限定されないが、80〜300℃が好ましく、85〜270℃がより好ましく、90〜240℃がさらに好ましい。このような範囲とすることで、経済的に、かつ工業的に有利に得られる。
【0023】
反応終了後、必要に応じて前記溶媒をさらに添加して希釈した後、静置することにより二相分離させ、油相である樹脂相と水相を分離した後、さらに水洗を行うことで酸性触媒を完全に除去し、添加した溶媒及び未反応の原料を蒸留等の一般的な方法で除去することにより、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が得られる。
【0024】
前記反応によって得られる芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、酸素含有率及び耐熱性のバランスの観点から、芳香環の少なくとも一部が式(i)で示される結合及び/又は式(ii)で示される結合で架橋されている構造を有することが好ましい。
―(CH― (i)
―CH―A― (ii)
(前記式(i)中のpは1〜10の整数を表し、式(ii)中のAは(OCHを表し、mは1〜10の整数を表す。)
前記好適な態様において、芳香環の少なくとも一部は、―(CH―で表される結合と―(OCH−で示される結合がランダムに配列されている結合、例えば、―CH―OCH―CH−、―(CH―OCH−、―CH―OCH―OCH―CH−などで架橋されていてもよい。
【0025】
本実施の形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200〜4000であることが好ましく、より好ましくは250〜3500であり、さらに好ましくは300〜4000である。
本実施の形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、GPC分析により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が200〜25000であることが好ましく、より好ましくは250〜20000であり、さらに好ましくは300〜15000である。
本実施の形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶融粘度の観点から、分散度(Mw/Mn)が1.0〜5.0であることが好ましく、より好ましくは1.1〜4.5であり、さらに好ましくは1.2〜4.0である。
【0026】
本実施の形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性、及び後述する変性工程での(7)式で示される化合物との反応性の観点から、有機元素分析による樹脂中の酸素濃度が7〜18質量%であることが好ましく、より好ましくは7.5〜17.5質量%であり、さらに好ましくは8〜17質量%である。
【0027】
本実施の形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性、ハンドリングの観点から、常温(25℃)で液体のものが好ましく、軟化点が140℃以下であることが好ましく、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは120℃以下である。
【0028】
本実施の形態の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、水酸基価が0〜100mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは5〜95であり、さらに好ましくは10〜90である。
【0029】
<変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂>
本実施形態の変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、前記芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と、式(7)で示される化合物を酸性触媒の存在下で加熱し、反応させることにより得られる。
本実施形態においては、前記反応を変性反応と称する。
【0030】
【化16】
(7)
(式(7)中、X及びYはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はシクロヘキシル基を表し、a及びbは1≦a+b≦10、a≧1、b≧0を満たす整数を、cは0〜2の整数を表す。)
式(7)においては、製造上の観点から、X及びYが炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又はシクロヘキシル基であることが好ましく、a及びbが1〜2、nが1〜2であることが好ましい。
式(7)で示される具体的な化合物としては、例えば、フェノール、メトキシフェノール、ベンゾキシフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、クレゾール、フェニルフェノール、ナフトール、メトキシナフトール、ベンゾキシナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン、メトキシアントラセン、ベンゾキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセン等を例示することができる。
これらのうち、少なくとも2個のベンゼン環の非共有電子対が関与する共役構造を含むフェノール誘導体は、耐熱分解性に優れるため好ましく、フェノール、フェニルフェノール、ナフトール、メトキシナフトール、ベンゾキシナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン、メトキシアントラセン、ベンゾキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセンがより好ましい。
また、これらのうち、ヒドロキシ基を有するものは、酸架橋剤との架橋性に優れるため、更に好ましく、フェノール、フェニルフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセンが特に好ましい。
【0031】
式(7)で示される化合物の使用量は、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂中の含有酸素モル数1モルに対して、0.1〜5モルが好ましく、0.2〜4モルがより好ましく、0.3〜3モルがさらに好ましい。このような範囲とすることで、得られる変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の収率を比較的高く維持でき、かつ未反応で残る(7)で示される化合物の量を少なくすることができる。
得られる樹脂の分子量は、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂中の含有酸素モル数、及び式(7)で示される化合物の使用量の影響を受け、ともに多くなると、分子量は減少する。
ここで、含有酸素モル数は、有機元素分析により芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂中の酸素含有率(質量%)を測定し、下記計算式に従って算出することができる。
含有酸素モル数(mol)=使用樹脂量(g)×酸素含有率(質量%)/16
【0032】
本実施の形態における前記変性反応に使用し得る酸性触媒は、特に限定されず、公知の無機酸、有機酸より適宜選択することができ、例えば塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ふっ酸等の無機酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、ギ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸;あるいはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸が挙げられる。なかでも、環境問題や製造上の観点から、硫酸、シュウ酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、リンタングステン酸が好ましい。
【0033】
酸性触媒の使用量は、特に限定されないが、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂100質量部に対して、0.0001〜100質量部が好ましく、より好ましくは0.001〜85質量部、さらに好ましくは0.001〜70質量部となるよう調整する。このような範囲とすることで、適当な反応速度が得られ、かつ反応速度が大きいことに基づく樹脂粘度の増加を防ぐことができる。また、酸性触媒は一括で仕込んでも分割で仕込んでもよい。
【0034】
本実施の形態における前記変性反応は、特に限定されず、例えば、酸性触媒存在下、通常常圧で行われ、使用する原料が相溶する温度以上(通常80〜300℃)で加熱還流、又は生成水を留去させながら行う。圧力は常圧でも加圧でもよい。必要に応じて、系内に窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを通気してもよい。
【0035】
本実施の形態における前記変性反応は、必要に応じて、縮合反応に不活性な溶媒を使用することもできる。前記溶媒としては、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ジオキサン、ジブチルエーテル等のエーテル;2−プロパノール等のアルコール;メチルイソブチルケトン等のケトン;エチルプロピオネート等のカルボン酸エステル;酢酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0036】
本実施の形態における前記変性反応の反応時間は、0.5〜20時間が好ましく、1〜15時間がより好ましく、2〜10時間がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐熱分解性や溶剤への溶解性に優れた樹脂が経済的に、かつ工業的に得られる。
【0037】
本実施の形態における前記変性反応の反応温度は80〜300℃が好ましく、85〜270℃がより好ましく、90〜240℃がさらに好ましい。このような範囲とすることで、耐熱分解性に優れた樹脂が経済的に、かつ工業的に得られる。
【0038】
前記変性反応終了後、必要に応じて、前記溶媒をさらに添加して希釈した後、静置することにより二相分離させ、油相である樹脂相と水相を分離した後、さらに水洗を行うことで酸性触媒を完全に除去し、添加した溶媒及び未反応の原料を蒸留等の一般的な方法で除去することにより、変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が得られる。
【0039】
本実施の形態の変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、変性前の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と比較して耐熱分解性及び水酸基価が上昇する。例えば、前記記載の酸性触媒使用量0.05質量部、反応時間5時間、反応温度200℃で変性すると、耐熱分解性は1〜50%程度、水酸基価は1〜300mgKOH/g程度上昇する。
【0040】
本実施の形態の変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が200〜4000であることが好ましく、より好ましくは250〜3500であり、さらに好ましくは300〜3000である。
本実施の形態の変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、GPC分析により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が200〜25000であることが好ましく、より好ましくは250〜20000であり、さらに好ましくは300〜150000である。
本実施の形態の変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、分散度(Mw/Mn)が1.0〜5.0であることが好ましく、より好ましくは1.1〜4.5であり、さらに好ましくは1.2〜4.0である。
【0041】
本実施の形態の変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性、ハンドリングの観点から、軟化点が50〜240℃であることが好ましく、より好ましくは60〜230℃であり、さらに好ましくは70〜220℃である。
【0042】
本実施の形態の変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、特に限定されないが、耐熱分解性や溶剤への溶解性の観点から、水酸基価が60〜380であることが好ましく、より好ましくは70〜370であり、さらに好ましくは80〜360である。
【実施例】
【0043】
以下、本実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0044】
<分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求め、分散度(Mw/Mn)を求めた。
装置:Shodex GPC−101型(昭和電工(株)製)
カラム:LF−804×3
溶離液:THF 1ml/min
温度:40℃
<樹脂中ジアリールメタン存在比>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、得られた値から以下の計算式を用いて算出した。
計算式:ジアリールメタンのピーク積分値/樹脂全体のピーク積分値×100(%)
<樹脂中の炭素・酸素含有率>
有機元素分析により樹脂中の炭素・酸素含有率(質量%)を測定した。また、樹脂1g当たりの含有酸素モル数を下記計算式に従って算出した。
装置:CHNコーダーMT−6(ヤナコ分析工業(株)製)
計算式:樹脂1g当たりの含有酸素モル数(mol/g)=酸素含有率(質量%)/16
<軟化点>
JIS−K5601に準拠して樹脂の軟化点を測定した。
<水酸基価>
JIS−K1557に準拠して樹脂の水酸基価を測定した。
<熱重量減少率>
300ml/分の窒素流通下、試料を10℃/分で昇温した際の200℃から350℃の間の重量減少率を測定した。
装置:EXSTAR6000 TG/DTA6200(SII(株)製)
【0045】
<実施例1(キシレンメタノールホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、37質量%ホルマリン水溶液97.3g(ホルムアルデヒドとして1.2mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)108.6gを仕込み、常圧下、100℃前後で還流しながら撹拌、ここに溶融させた2,4‐ジメチルベンズアルコール81.7g(0.6mol、三菱ガス化学(株)製)を2時間かけて滴下し、その後さらに2時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)100g、メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)100gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトンを減圧下に留去し、無色のキシレンメタノールホルムアルデヒド樹脂86.3gを得た。
GPC測定の結果、Mnは540、Mwは1090、Mw/Mnは2.02であった。有機元素分析の結果、炭素含有率は75.3質量%、酸素含有率は14.6質量%(樹脂1g当たりの含有酸素モル数は0.0091mol/g)であった。水酸基価は45mgKOH/gであった。樹脂中ジキシリルメタンは検出されなかった。
【0046】
<実施例2(ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、1−ナフタレンメタノール94.8g(0.6mol、東京化成工業(株)製)、37質量%ホルマリン水溶液219g(ホルムアルデヒドとして2.7mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)108.6gを仕込み、常圧下、100℃前後で還流しながら撹拌、5時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)300g、メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)200gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトンを減圧下に留去し、淡黄色固体のナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂93.4gを得た。
GPC測定の結果、Mnは604、Mwは1126、Mw/Mnは1.87であった。有機元素分析の結果、炭素含有率は82.3質量%、酸素含有率は11.6質量%(樹脂1g当たりの含有酸素モル数は0.0073mol/g)であった。軟化点は79℃で、水酸基価は33mgKOH/gであった。樹脂中ジナフチルメタンは検出されなかった。
【0047】
<実施例3(ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、37質量%ホルマリン水溶液219g(ホルムアルデヒドとして2.7mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)108.6gを仕込み、常圧下、100℃前後で還流しながら撹拌、ここに溶融させた1−ナフタレンメタノール94.8g(0.6mol、東京化成工業(株)製)を4時間かけて滴下し、その後さらに2時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)200g、メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)150gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトンを減圧下に留去し、淡黄色固体のナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂104.1gを得た。
GPC測定の結果、Mnは655、Mwは1334、Mw/Mnは2.04であった。有機元素分析の結果、炭素含有率は81.9質量%、酸素含有率は12.0質量%(樹脂1g当たりの含有酸素モル数は0.0075mol/g)であった。軟化点は85℃で、水酸基価は40mgKOH/gであった。樹脂中ジナフチルメタンは検出されなかった。
【0048】
<実施例4(ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、蒸留水135g、92質量%パラホルムアルデヒド91g(ホルムアルデヒドとして2.8mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)112g、1−ブタノール92g(1.2mol、和光純薬工業(株)製)を仕込み、常圧下、100℃前後で還流しながら撹拌、ここに溶融させた1−ナフタレンメタノール98g(0.6mol、東京化成工業(株)製)を5時間かけて滴下し、その後さらに2時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)300g、メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)150gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトンを減圧下に留去し、淡黄色液体のナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂139.2gを得た。
GPC測定の結果、Mnは380、Mwは473、Mw/Mnは1.25であった。有機元素分析の結果、炭素含有率は78.3質量%、酸素含有率は14.1質量%(樹脂1g当たりの含有酸素モル数は0.0088mol/g)であった。樹脂中ジナフチルメタンは検出されなかった。
【0049】
<実施例5(ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、37質量%ホルマリン水溶液231g(ホルムアルデヒドとして2.9mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(三菱ガス化学(株)製)79.1gを仕込み、常圧下、100℃前後で還流しながら撹拌、ここに溶融させた2−ナフタレンメタノール100g(0.6mol、和光純薬工業(株)製)を4時間かけて滴下し、その後さらに2時間反応させた。希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製)150g、メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)150gを加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトンを減圧下に留去し、淡黄色固体のナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂105.9gを得た。
GPC測定の結果、Mnは539、Mwは1097、Mw/Mnは2.04であった。有機元素分析の結果、炭素含有率は79.6質量%、酸素含有率は14.3質量%(樹脂1g当たりの含有酸素モル数は0.0088mol/g)であった。軟化点は51℃で、水酸基価は45mgKOH/gであった。樹脂中ジナフチルメタンは検出されなかった。
【0050】
<実施例6(変性ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、窒素気流下で、実施例3で得たナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂100.0g(含有酸素モル数0.75mol)、フェノール106g(1.13mol、和光純薬工業(株)製)を仕込み、100℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)41mgを加え、反応を開始した。160℃まで昇温しながら2時間反応させた。混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(重量比))360gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤、未反応原料を減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂157gを得た。
GPC分析の結果、Mnは956、Mwは1605、Mw/Mnは1.68であった。水酸基価は、277mgKOH/gであった。樹脂中ジナフチルメタンは検出されなかった。
【0051】
<実施例7(変性ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積1Lの四つ口フラスコに、窒素気流下で、実施例3で得たナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂150.0g(含有酸素モル数1.13mol)、フェノール264g(2.82mol、和光純薬工業(株)製)を仕込み、100℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)41mgを加え、反応を開始した。155℃まで昇温しながら2時間反応させた。混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(重量比))600gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤、未反応原料を減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂255gを得た。
GPC分析の結果、Mnは670、Mwは881、Mw/Mnは1.32であった。水酸基価は、298mgKOH/gであった。樹脂中ジナフチルメタンは検出されなかった。
【0052】
<実施例8(変性ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコに、窒素気流下で、実施例3で得たナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂55.0g(含有酸素モル数0.41mol)、1−ナフトール148.7g(1.03mol、スガイ化学工業(株)製)を仕込み、100℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)61mgを加え、反応を開始した。175℃まで昇温しながら2.5時間反応させた。混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(重量比))300gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤、未反応原料を減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂122gを得た。
GPC分析の結果、Mnは571、Mwは712、Mw/Mnは1.25であった。水酸基価は、246mgKOH/gであった。樹脂中ジナフチルメタンは検出されなかった。
【0053】
<実施例9(変性ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積1Lの四つ口フラスコに、窒素気流下で、実施例4で得たナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂100.0g(含有酸素モル数0.88mol)、フェノール207g(2.2mol、和光純薬工業(株)製)を仕込み、100℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)41mgを加え、反応を開始した。160℃まで昇温しながら2時間反応させた。混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(和光純薬工業(株)製)=1/1(重量比))350gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤、未反応原料を減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂151gを得た。
GPC分析の結果、Mnは537、Mwは653、Mw/Mnは1.22であった。水酸基価は、340mgKOH/gであった。樹脂中ジナフチルメタンは検出されなかった。
【0054】
<比較例1(ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積2Lの四つ口フラスコに、窒素気流中、47質量%ホルマリン水溶液703.0g(ホルムアルデヒドとして11.0mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)240.0g、ナフタレン467.0g(3.6mol、和光純薬工業(株)製)、n−オクタン100g(和光純薬工業(株)製)を順に仕込み、常圧下、100℃前後で200rpmで撹拌・還流しながら6時間反応させた。静置後、下相の水相を除去したのち温水で2回水洗を行い、150℃/30mmHgで1時間減圧処理を行い、淡黄色のナフタレンホルムアルデヒド樹脂460.0gを得た。
GPC測定の結果、Mnは293、Mwは530、Mw/Mnは1.81であった。有機元素分析の結果、炭素含有率は83.8質量%、酸素含有率は10.0質量%であった。樹脂中ジナフチルメタン存在比は2%であった。
【0055】
<比較例2(変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂)>
リービッヒ冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積1.0Lの四つ口フラスコに、窒素気流下で、比較例1で得た樹脂100g、フェノール220.0g(2.34mol、東京化成工業(株)製)を仕込み、120℃で加熱溶融させた後、撹拌しながらパラトルエンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)34.4mgを加え、反応を開始した。直ちに190℃まで昇温して3時間攪拌した後、混合溶剤(メタキシレン(三菱ガス化学(株)製)/メチルイソブチルケトン(関東化学(株)製)=1/1(重量比))500gで希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下に除去して、黒褐色固体の変性ジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂135.0gを得た。
GPC分析の結果、Mnは430、Mwは675、Mw/Mnは1.57であった。水酸基価は、279mgKOH/gであった。樹脂中ジナフチルメタン存在比は1.5%であった。
【0056】
エポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を使用し、硬化剤として実施例6で得られた変性ナフタレンメタノールホルムアルデヒド樹脂を用いて、成形(220℃、70分)し、硬化試験片を得た。この試験片を用いて熱重量減少率測定を行った。結果を表1に示す。
【0057】
エポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を使用し、硬化剤として比較例2で得られた変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂を用いて、成形(220℃、70分)し、硬化試験片を得た。この試験片を用いて熱重量減少率測定を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
ビフェニル型エポキシ樹脂として日本化薬株式会社NC−3000を、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを使用した。
【0059】
以上の結果より、ジアリールメタンを含まない芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を原料として使用した変性芳香族メタノールホルムアルデヒド樹脂は、ジアリールメタンを含む、従来法で合成したナフタレンホルムアルデヒド樹脂を原料として使用した変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂と比較して、耐熱性が優れていることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂、及び変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板のマトリックス樹脂、ビルドアップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、各種コーティング剤、接着剤、半導体用のコーティング剤又は半導体製造におけるレジスト用樹脂等の広範な用途に利用可能である。