特許第6150227号(P6150227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社悠心の特許一覧

<>
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000003
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000004
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000005
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000006
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000007
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000008
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000009
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000010
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000011
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000012
  • 特許6150227-定量注出用包装袋 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150227
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】定量注出用包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/36 20060101AFI20170612BHJP
   B65D 30/22 20060101ALI20170612BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20170612BHJP
   B65D 81/32 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B65D33/36
   B65D30/22 J
   B65D83/00 G
   B65D81/32 G
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-130606(P2013-130606)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-3751(P2015-3751A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年12月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】 小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−193039(JP,A)
【文献】 特開2008−273632(JP,A)
【文献】 特開2000−203603(JP,A)
【文献】 特開2002−248158(JP,A)
【文献】 実開平03−084755(JP,U)
【文献】 韓国登録特許第10−1226739(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/36
B65D 30/22
B65D 81/32
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具える一枚もしくは二枚の積層プラスチックフィルムを、シーラント層が相互に対向する姿勢として遊端縁部を融着接合させてなる包装袋本体と、その上端部または上側部に突設されたフィルム状液体注出ノズルとを具えてなる包装袋において、
前記包装袋本体の液状被包装物の主収納スペースの上部もしくは下部に上記液体注出ノズルに連通する定量配分スペースが、包装袋本体の幅方向に延在する2つの対向する横シール部からなる融着仕切り部によって区画形成されてなり、
該融着仕切り部は、前記2つの横シール部の対向する端部がそれぞれ前記定量配分スペース側に突出するように湾曲した形状からなると共に、該横シール部端部間に狭隘送出路を具え、その狭隘送出路は、前記主収納スペースと定量配分スペースとの連通をもたらすと共に、前記フィルム状液体注出ノズルに形成される注出通路よりも液状被包装物に対する流動抵抗の大きい通路であって、前記主収納スペース内から前記定量配分スペース内への液状被包装物の流入による膨満姿勢で腰折れして、前記定量配分スペースと主収納スペースとの連通を遮断する逆流防止構造を有することを特徴とする定量注出用包装袋。
【請求項2】
前記フィルム状液体注出ノズルは、外気の侵入を阻止できる逆止機能を有することを特徴とする請求項1に記載の定量注出用包装袋。
【請求項3】
前記フィルム状液体注出ノズルは、ノズル先端開口位置から基端部にかけて、それを構成する表裏2枚のプラスチックフィルムに、相互に入り込む一条以上の凹凸条を具えることを特徴とする請求項1または2に記載の定量注出用包装袋。
【請求項4】
前記主収納スペース内に、液状被包装物と共に、該液状被包装物に混合される溶液が封入された積層プラスチックフィルムからなる小袋を収納することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の定量注出用包装袋。
【請求項5】
前記小袋は、少なくとも1辺が、小袋の他の辺の接合部に比して相対的に弱い接合部によって形成されていることを特徴とする請求項4に記載の定量注出用包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品や化粧品、医薬品等の分野において好適に用いられる包装袋に関し、包装袋本体の上端部または上側部にフィルム状液体注出ノズルを突設してなり、液状の袋内被包装物を、包装袋本体の押圧(ワンプッシュ)によって、所定の容積の定量配分スペース内へ流入させ、複数回に分けて袋内被包装物を定量注出することのできる定量注出用包装袋を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物実験では、細菌や菌類などの微生物を、培地を用いて実験的に培養する操作が広く一般的に行われている。この場合、特定の微生物のみを用いた実験結果を得る必要があるため、他の微生物等が混入しない状態で培養することが重要である。
【0003】
そこで従来は、雑菌等が混入しないようにするため、使用する全ての培地や培養器具を滅菌処理していた。例えば、培地の作製においては、図1に示したように粉末培地を計量し、これを純水と共に殺菌処理した三角フラスコ内に入れて加熱溶解し、さらに高圧蒸気滅菌を行い、フラスコ口の加熱滅菌を行った後、複数のシャーレに分注して作製する。
【0004】
このように従来の培地作製方法では、多くの操作が必要であり、このような操作の間に雑菌が混入するおそれが高く、またすべての器具を滅菌処理するなど、時間とコストがかかるという問題点があった。さらに、加熱溶解した液体培地をシャーレに分注する際、各シャーレに目分量で注いでいることが多いため、培地の分注量が、必ずしも一定量ではなく、この一方で、培地をピペットを用いて一定量づつ注出しようとした場合には、コンタミネーションの原因になるおそれがあった。
【0005】
そのため、微生物実験において、培地の作製のみならず、簡単な操作で、しかも雑菌等の混入を防いで、一定量の液体を複数回に分けて高精度に注出できる容器の開発が求められていた。
【0006】
また、飲食品や化粧品、医薬品等の分野においても、品質の低下や雑菌の混入等を抑制するため1回分の使用量を小袋に分けて封入しているものが多くある。しかしながら、このような小袋は、使用量を調整することができず、また1回毎に開封され破棄されることになるため、大量のゴミが発生することや、コストが高くなるという点に問題があり、大袋から一定量を小分け(分配)して取り出すことができ、しかも当初の品質を維持することのできる包装袋が求められていた。
【0007】
ところで、開封した後も液状の袋内被包装物の酸化や、包装袋内への雑菌の侵入等を抑えることができる液体充填用のフレキシブル包装袋にとしては、例えば、特許文献1および2に、セルフシール逆止機能つきの、プラスチックフィルムからなる液体注出ノズルを備えるフレキシブル包装袋が開示されている。
【0008】
これらのフレキシブル包装袋によれば、セルフシール逆止機能つきの液体注出ノズルの作用の下で、袋内被包装物の注出中および注出後の、外気や微生物等の袋内への侵入を完全に阻止することができるため、包装袋の開封後も、袋内を長期にわたって無菌状態に保つことができるが、被包装物の注出量は、包装袋本体の傾動角度や袋本体部への押圧力によってしか調整することができず、一定量の被包装物を高い精度で注出することはできなかった。
【特許文献1】特許第4392198号公報
【特許文献2】特開2005−59958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記フレキシブル包装袋の特性および機能を維持しつつ、簡単な操作で、しかも雑菌等の混入を防ぎながら、袋内の液状被包装物を所定量づつ複数回に分けて高精度に定量注出することのできる包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するために鋭意研究した結果、発明者は、下記の要旨構成になる本発明に到った。即ち、本発明は、少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具える一枚もしくは二枚の積層プラスチックフィルムを、シーラント層が相互に対向する姿勢として遊端縁部を融着接合させてなる包装袋本体と、その上端部または上側部に突設されたフィルム状液体注出ノズルとを具えてなる包装袋において、
前記包装袋本体の液状被包装物の主収納スペースの上部もしくは下部に上記液体注出ノズルに連通する定量配分スペースが、包装袋本体の幅方向に延在する2つの対向する横シール部からなる融着仕切り部によって区画形成されてなり、
該融着仕切り部は、前記2つの横シール部の対向する端部がそれぞれ前記定量配分スペース側に突出するように湾曲した形状からなると共に、該横シール部端部間に狭隘送出路を具え、その狭隘送出路は、前記主収納スペースと定量配分スペースとの連通をもたらすと共に、前記フィルム状液体注出ノズルに形成される注出通路よりも液状被包装物に対する流動抵抗の大きい通路であって、前記主収納スペース内から前記定量配分スペース内への液状被包装物の流入による膨満姿勢で腰折れして、前記定量配分スペースと主収納スペースとの連通を遮断する逆流防止構造を有することを特徴とする定量注出用包装袋を提供するものである。
【0011】
なお、本発明の定量注出用包装袋においては、
(1)前記フィルム状液体注出ノズルは、外気の侵入を阻止できる逆止機能を有すること、
(2)前記フィルム状液体注出ノズルは、ノズル先端開口位置から基端部にかけて、それを構成する表裏2枚のプラスチックフィルムに、相互に入り込む一条以上の凹凸条を具えること、
(3)前記主収納スペース内に、液状被包装物と共に、該液状被包装物に混合される溶液が封入された積層プラスチックフィルムからなる小袋を収納すること、
(4)前記小袋は、少なくとも1辺が、小袋の他の辺の接合部に比して相対的に弱い接合部によって形成されていること
より好ましい解決手段となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の定量注出用包装袋によれば、包装袋本体の主収納スペース内に充填された液状被包装物を、該包装袋本体への手指による押圧(ワンプッシュ)によって簡単に、前記狭隘送出路を介して所要の容積を有する定量配分スペース内に送入および充満させることができ、液体注出ノズルに注出口を形成(開口)した後、該定量配分スペースへの押圧に基づいて、袋内の液状被包装物を、定量配分スペースの容積分に応じて、一定量づつ高精度に注出することができる。
【0013】
なおここでは、狭隘送出路は、液状被包装物に十分大きな流動抵抗を及ぼすことになるので、定量配分スペースの押圧による、液状被包装物の主収納スペースへの逆流は、該流動抵抗の作用下によって有効に防止することができる。
【0014】
ここで、前記狭隘送出路が、定量配分スペースが液状被包装物によって充満されることによって腰折れして、遮断(密閉)される場合には、液状被包装物の、定量配分スペースから主収納スペースへの逆流をより効果的に阻止することができる。
【0015】
しかも、フィルム状液体注出ノズルは、平坦な2枚の積層プラスチックフィルムからなり、逆止機能を発揮することができるため、液状被包装物の注出中および注出後に、包装袋内に外気が侵入することがないため、定量配分スペースに送出した液状被包装物に相当する体積分だけ主収納スペースが収縮(減圧)していく。したがって、前記狭隘送出路の遮断(密閉)効果は、主収納スペースへの押圧を停止することで、狭隘送出路から液状被包装物の一部が主収納スペースへと戻流するに際し、該狭隘送出路の内面同士が、前記主収納スペースの減圧雰囲気に晒されて負圧吸着されることで一層向上するので、定量配分スペース内の液状被包装物を戻流させることなく、一定量の被包装物を定量配分スペース内に確実に滞留させることができる。
【0016】
また、フィルム状液体注出ノズルを構成する表裏2枚の積層プラスチックフィルムの、ノズル先端開口位置から基端部分にかけて、直線状、折曲状あるいは湾曲状に連続して延びて相互に入り込む複数の凹凸条を形成した場合には、該凹凸条が蓋栓の役割を果し、ノズル先端の注出口を開封して注出口を形成した後も、液状被包装物が注出口から不測に漏れ出すことがないという効果がある。
【0017】
なお、フィルム状液体注出ノズルは、上記凹凸条の有無にかかわらず、ノズルの注出通路が自動的に密閉するため、複数回に亘って被包装物を注出した場合の、注出中および注出後のいずれにおいても、外気および雑菌等が袋内へ侵入するおそれがなく、袋内被包装物の酸化や汚損等を有効に抑制することができる。したがって、微生物実験や飲食品等において、袋内被包装物の酸化等を阻止しながら大袋からの、高精度の定量小分け(分配)が可能となりコストおよびゴミの削減が可能になる。
【0018】
なお、上記のようにして定量配分スペース内に滞留させた液状被包装物は、液体注出ノズル先端の注出口を開封し、包装袋を傾動するか、定量配分スペースを加圧することで簡単に注出され、上記操作を繰り返すことで、袋内の液状被包装物を複数回に分けて常に一定量で正確に注出することができる。
【0019】
また、本発明では、定量配分スペースを区画する融着仕切り部を、包装袋本体を上下方向に区画する1本の横シール部、または相互に対向させて形成した2本の横シール部、あるいは横シール部と、その遊端、すなわち、延在端から包装袋本体の辺縁に沿って上方、もしくは下方に向って形成した縦シール部とによって形成することもできる。
【0020】
なお、融着仕切り部を、定量配分スペース側に突出させて湾曲または折曲げて形成した2本の横シール部によって形成した場合は、その横シール部間に形成される狭隘送出路の長さが長くなって、該狭隘送出路の流動抵抗が大きくなると共に、腰折れによる遮断がより有利に発揮されることになり、定量配分スペースからの主収納スペースへの被包装物の逆流を効果的に防止することができる。
とくにこの効果は、2つの横シール部間に形成された狭隘送出路を、主収納スペースから定量配分スペースに向って次第に狭幅とすることで一層高めることができる。
【0021】
また、融着仕切り部を、横シールおよび縦シールによって構成した場合には、液状被包装物を主収納スペースから定量配分スペースへと導く狭隘送出路が長くなり、前記したように狭隘送出路の流動抵抗が大きくなると共に、腰折れし、さらに狭隘送出路内面同士の負圧吸着によって優れた遮断(密閉)効果が期待できる。
【0022】
また例えば、包装袋本体の、ヒートシールの施されていない、一枚の積層プラスチックフィルムの折返し辺側の辺縁に沿わせて狭隘送出路を設けた場合には、該狭隘送出路が、圧力を加えなくても積層プラスチックフィルムの自己復元力によって常に開口した状態となるので、液状被包装物を小さな力で簡単に前記定量配分スペースへと送り出すことができる。
【0023】
また、本発明では、複数の定量配分スペースを、相互に隣接するように融着仕切り部を介して設けると共に、それらを共通の一の狭隘送出路の介在下で、括れ通路を介して相互に連通させることで、包装袋本体への手指による押圧(ワンプッシュ)によって液状被包装物をすべての定量配分スペース内へ送入および充満させることができると共に、使用者が用途や好みに合わせて、注出する定量配分スペースの数を選択することで注出する液状被包装物の量を適宜調整することができる。
【0024】
また、本発明において、包装袋本体の主収納スペース内に、液状被包装物と共に、混合用溶液が封入される積層プラスチックフィルム製の小袋を収納したときは、使用開始まで2液(液状被包装物と混合用溶液)を分離して、反応の抑制下で保存することができる。このような包装袋は、例えば、微生物実験において、真菌や細菌が多く含まれる材料から目的とする真菌あるいは細菌のみを分離するために、これに抗生物質を添加する場合に好適に利用することができ、抗生物質を小袋内に封入しておき、これを包装袋本体の収納スペース内に、液体培地と共に収納し、使用に際して小袋を破袋させることで、無菌的に液体培地と抗生物質とを混合することができる。なお、包装袋本体内に収納する小袋は、少なくとも1辺が他の辺よりも相対的に弱い接合部を有するものとすれば、包装袋本体への外側からの押圧によって、簡単に小袋を破袋することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来の培地作製方法を示す図である。
図2】本発明の定量注出用包装袋に、液状被包装物を充填包装した定量注出用包装体の一実施形態を示す斜視図である。
図3(a)は、本発明の定量注出用包装袋の側面図であり、狭隘送出路を漏斗状に形成したもの(b)は、本発明の好適例であり、狭隘送出路が包装袋本体の、一枚の積層プラスチックフィルムの折返し辺側の辺縁に沿わせて形成されたものである。
図4】本発明の定量注出用包装袋の好適例を示す側面図である。
図5】本発明の定量注出用包装袋の好適例を示す側面図である。
図6】複数の定量配分スペースを有する本発明の定量注出用包装袋の好適例を示す図である。
図7】(a)本発明の定量注出用包装袋の他の実施形態を示す図、(b)III−III線に沿う拡大断面図、(c)本発明の定量注出用包装袋の他の実施形態を示す図である。
図8図3(a)のII−II線に沿う拡大断面図である。
図9】二液分離用の小袋を有する本発明の定量注出用包装袋に、液状被包装物を充填包装した定量注出用包装体の一実施形態を示す斜視図である。
図10】本発明の定量注出用包装袋を用いて培地を作製する方法と従来の培地作製方法とを比較する図である。
図11】実施例の定量注出性評価試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の定量注出用包装袋Aは、図2の液状被包装物を充填した状態を示す斜視図に示すように、少なくともベースフィルム層とシーラント層とを具える、ここでは一枚の積層プラスチックフィルムを、シーラント層が相互に対向するように幅方向に折返して、シーラント層どうしを、たとえばヒートシールによって融着接合させてなる包装袋本体1と、積層プラスチックフィルムの重ね合わせた遊端部側1aの側部に、側方へ突出する姿勢で融着接合させて突設された液体注出ノズル2とから構成される。
【0027】
定量注出用包装袋Aは、一実施形態として図3(a)の側面図に示したように、液体注出ノズル2と包装袋本体1とを別体として形成し、液体注出ノズル2の基端部2c外表面を、包装袋本体1の遊端部側1aの上側部内表面に融着接合して形成することができる他、液体注出ノズル2を包装袋本体1の上側部または上端から突出させて包装袋本体1と一体に形成することもできる。
なお、図3に示す定量注出用包装袋Aは、図2に示したように包装袋本体1を、一枚の積層プラスチックフィルムを、シーラント層が相互に対向するように折り返して形成し、液体注出ノズル2を包装袋本体1の上側部から側方に突出するように設けたものであるが、図4に示す定量注出用包装袋Aは、二枚の積層プラスチックフィルムを、シーラント層が相互に対向するように重ね合わせ、周縁部をヒートシール等によって融着接合させてなる包装袋本体1と、該包装袋本体1の上端部分に、液体注出ノズル2の基端部2cを融着接合して、上方へ突出する姿勢で設けたものである。
【0028】
なお、図3および図4のいずれの定量注出用包装袋Aも、袋内に充填包装した液状被包装物は、包装袋本体1を液体注出ノズル2の先端を開封して形成される先端注出口2bが下向きとなるように傾動あるいは反転させることで注出させることができる。
【0029】
また、定量注出用包装袋Aは、図3および図4に示すところでは、包装袋本体1上部の、液体注出ノズル2の下方側で、表裏となる二枚の積層プラスチックフィルムのシーラント層を、ヒートシールその他によって相互に融着接合させて形成した融着仕切り部3によって、液体注出ノズル2の内部注出通路2aに連通する定量配分スペース4を区画形成してなり、該定量配分スペース4と液状被包装物の主収納スペース5とが、融着仕切り部3に設けられた狭隘送出路6によって連通されている。
ここで、狭隘送出路6は、狭幅で液体注出ノズル2の注出通路2aよりも液状被包装物に対する高い流動抵抗を有するため、主収納スペース5の押圧によって狭隘送出路6を介して定量配分スペース4へと送出された液状被包装物が、主収納スペース5へと逆流するおそれがない。
【0030】
また、主収納スペース5内に充填された液状被包装物は、該主収納スペース5の押圧によって、狭隘送出路6を介して定量配分スペース4へと送出され、液状被包装物の流入によって膨張した定量配分スペース4は、その膨張した定量配分スペース4とその外周シール部分との周長の違いを吸収するため、その角部や狭隘送出路6などの強度の低い部分にシワが発生し、さらに液状被包装物で充満されて膨満状態となると、狭隘送出路6が強く腰折れし、完全に遮断(密閉)されることになる。
【0031】
したがって、本発明の定量注出用包装袋Aによれば、主収納スペース5の押圧によって簡単に、液状被包装物を定量配分スペース4へと送出することができると共に、液状被包装物を、狭隘送出路6が腰折れして完全に遮断するまで送出することで、定量配分スペース4へと送出した液状被包装物が主収納スペース5へと逆流することがなく、常に一定量の液状被包装物が定量配分スペース4に充填され、一定量の液状被包装物を、液体注出ノズル2を介して複数回にわたって注出することができる。
【0032】
さらに、液体注出ノズルの注出通路2aを、基端部2cから先端の注出口2bに向かって次第に狭幅となるように、とくに図4に示すように、注出口2bの近傍において、注出通路2aの両側縁を相互に対向して湾曲させた場合には、狭幅の注出通路2aの長さが長くなって、注出通路2aおよびその先端注出口2b部分における流動抵抗が大きくなり、注出口2bの開封後の、2回目以降の注出において、主収納スペース5を押圧して液状被包装物を定量配分スペース4内へ送出させたとしても、液状被包装物が注出口2bから漏れ出すことがなく、一定量の液状被包装物を定量配分スペース4内に滞留させることができる。
なお、この効果は、液体注出ノズル2先端の注出口2bの開口幅を、0.3〜5.0mmとしたした場合に有効に発揮することができ、この場合には、例えば包装袋本体1を、液体注出ノズル2の先端開口(注出口)が真下を向くように反転させても液状被包装物が漏れ出すことがない。
【0033】
ところで、本発明では、狭隘送出路6は融着仕切り部3のいずれか1ヶ所に設ければ良いが、とくに、図3(a)のように2つの横シール部aを定量配分スペース4に突出するように、相互に対向して湾曲させて設けた場合には、2つの横シール部aの間に形成される狭隘送出路6の長さが長くなって、狭隘送出路6内の流動抵抗が大きくなると共に、上記腰折れによる遮断効果が有効に発揮され、さらには定量配分スペース4に突出した部分が堰となって、定量配分スペース4からの液状被包装物の逆流を効果的に阻止することができる。なお、この効果は、狭隘送出路6を、主収納スペース5から定量配分スペース4に向って次第に狭幅となるように形成した場合に一層、効果的に発揮されることになる。
【0034】
また、狭隘送出路6は、図3(b)のように包装袋本体1の、一枚の積層プラスチックフィルムのヒートシールの施されない折返し辺1b側に設け場合には、狭隘送出路6が、圧力を加えなくても積層プラスチックフィルムの復元力によって常に開口した状態となり、小さな力で液状被包装物を主収納スペース5から定量配分スペース4へと押し出すことができる。
【0035】
ところで、定量配分スペース4を区画形成するための融着仕切り3は、図3のように包装袋本体1を上下に分割するような直線状または湾曲状の横シール部の他、包装袋本体1の上部に向って傾斜した形状や階段状に折れ曲がった形状など、様々な形状のシール部によって形成することができる。
【0036】
例えば、融着仕切り部3は、図5に好適例として示したように、横シール部3aと、該横シール部3aの遊端から、包装袋本体1の折返し辺1bに沿って上方に向って延在させた縦シール部3bによって構成した場合は、縦シール部3bと包装袋本体1の折返し辺1bとの間に狭隘送出路6が形成され、液状被包装物は、この狭隘送出路6の終端、即ち、縦シール部3b上端の送入口6aから定量配分スペース4へと流入されることになる。
【0037】
図5のように融着仕切り部3を横シール部3aと縦シール部3bによって構成した場合には、横シールのみからなる場合(図3、4)よりも、狭隘送出路6を長くすることができるため、狭隘送出路6内の流動抵抗が大きくなると共に、定量配分スペース4の膨満に伴う腰折れによる遮断の効果が高まり、さらには主収納スペース5への押圧を停止した後、主収納スペース5へと戻流する液状被包装物が通過することによって濡れた状態となる狭隘送出路6の積層プラスチックフィルムの内表面どうしが、該狭隘送出路6内表面に滞留した被包装物の分子間力によって密着し、上記狭隘送出路6の密閉力が強化され、定量配分スペース4からの液状被包装物の戻流を有効に阻止することができるという効果が期待できる。
とくに、縦シール部3bを、狭隘送出路6が主収納スペース5から定量配分スペース4に向って次第に幅狭となるように形成した場合には、上記の逆流防止の効果を一層、有効に発揮させることができる。
【0038】
また、図5(b)では、融着仕切り部3を構成する縦シール部3bが、その頂部から定量配分スペース4の方向へ折り曲げられている。これによれば狭隘送出路6の終端、すなわち定量配分スペー4への液状被包装物の狭隘送入口6aがさらに長くなり、狭隘送出路6の流動抵抗が大きくなると共に、定量配分スペース4の膨満に伴う、狭隘送出路6の腰折れと負圧吸着がさらに強くなって遮断力(密閉力)を向上させることができ、とくに、狭隘送出路6が定量配分スペース4側に向けて次第に幅狭となるように形成した場合には、その効果を一層向上させることができる。
【0039】
さらに、図の好適例に示すように、複数の定量配分スペース4を互いに隣接するように設けた場合には、それぞれの定量配分スペース4は、融着仕切り部3に設けられた共通の一の狭隘送出路6の介在下で、括れ通路7を介して相互に連通されるので、液状被包装物の注出に際しては、必要とする定量配分スペース4分だけを押圧することで、使用者の用途や好み等に合わせて、液体注出ノズル2の注出口2bを経て外部に注出する被包装物の量を調整することができる。
なお、融着仕切り部3は、定量配分スペース4を、液体注出ノズル2と連通するように、かつ狭隘送出路6を介して主収納スペース5と連通するように区画形成できるものであれば、どのような形態にも形成することができる。
【0040】
また、融着仕切り部3の厚み、すなわち幅は、3〜15mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは3〜10mmである。これは、融着仕切り部3の厚みが3mm未満では、狭隘送出路6の長さ(図3(b)の場合)、あるいは狭隘送出路6終端の、送入口6aの長さ(図5(a)の場合)が短くなってしまい、狭隘送出路6の流動抵抗が小さく、また定量配分スペース4の膨満による狭隘送出路6の遮断効果を充分に発揮させることができず、定量配分スペース4から液状被包装物が戻流するおそれがある。一方、融着仕切り部3の厚みが大きいほど、上記狭隘送出路6(図3(b)の場合)あるいは送入口6a(図5(a)の場合)が長くなり、狭隘送出路6の流動抵抗が大きくなると共に、腰折れによる遮断、さらには狭隘送出路6内面の負圧吸着による密閉の効果が期待できるが、厚みが15mm超では、狭隘送出路6が被包装物に及ぼす流動抵抗が大きくなりすぎて、液状被包装物を定量配分スペース4へ送出させるための、主収納スペース5への押圧力が大きくなり、融着仕切り部3や包装袋Aの融着部分が剥離するおそれがある。
【0041】
さらに、狭隘送出路6の幅は、0.5〜15mmの範囲であることが好ましく、狭隘送出路6の、最も狭幅の部分が0.5〜5.0mmであることがより好ましい。これは、狭隘送出路6の幅が0.5mm未満では、液状被包装物がスムーズに通過することができず、主収納スペース5への押圧力が大きくなり、したがって融着仕切り部3への入力が大きくなってシール部が剥離するおそれがあり、一方、狭隘送出路6の幅が15mm超、とくに最も狭幅の部分が5.0mm超では、狭隘送出路6をもって被包装物に十分大きな流動抵抗を及ぼすことができな他、定量配分スペース4の膨満に基づく腰折れによって、定量配分スペース4と主収納スペース5との連通を充分に遮断することができず、定量配分スペース4から主収納スペース5内へ液状被包装物が逆流するおそれがある。
【0042】
また、本発明の定量注出用包装袋Aにおいては、液体注出ノズル2が逆止機能を有することが好ましく、この場合には、袋内への外気の侵入が阻止されるため、主収納スペース5は、定量配分スペース4へ送出した液状被包装物の体積に対応する分だけ次第に収縮(潰れ変形)し、減圧傾向となっている。そのため、狭隘送出路6の上記腰折れによる遮断力は、主収納スペース5への押圧を停止し、狭隘送出路6から液状被包装物が主収納スペース5へと戻流するに際して、狭隘送出路6の内表面どうしが主収納スペース5の減圧雰囲気に晒されて負圧吸着することで強化されることになる。
【0043】
なお、定量配分スペース4に充填された液状被包装物は、包装袋本体1を、液体注出ノズル2の先端を開封して形成した注出口2bを、下向きになるように傾動させるか、定量配分スペース4を押圧することで簡単に定量で注出することができ、定量配分スペース4からの液状被包装物の注出後は、上記操作を繰り返すことで、常に定量配分スペース4の容積分の液状被包装物を一定量で注出することができる。
【0044】
また、本発明では、図7(a)に示すように液体注出ノズル2に形成される先端注出口2bから基端部2cにかけて、図7(b)の拡大断面図に示すように、ノズル2を構成する表裏一対の積層プラスチックフィルムに相互に入り込む一条以上の凹凸条12を形成することが好ましい。これによれば、該凹凸条12が蓋栓の役割を果して、注出通路2aが密閉し、注出口2bの開封後においても外気の侵入を阻止することができると共に、液状被包装物が不測に漏れ出すことを効果的に阻止することができる。
なお、凹凸条12は、図示のように直線状に延在するもののみならず、湾曲、迂曲および折曲等して延在するものとすることもできる。
【0045】
ところで、図7(a)の定量注出用包装袋Aにおいては、液状被包装物の注出にあたって定量配分スペース4を押圧すると、その押圧力によって加圧された液状被包装物の作用によって凹凸条12が伸びて(平坦となって)開口するため、液状被包装物の注出が許容されることになる。
一方、注出の停止にあたり、定量配分スペース4への押圧を停止すると、一旦伸びた積層プラスチックフィルムは、そのアイロン効果によって元の凹凸条12の形状に戻り、蓋栓としての役割を果すようになる。
【0046】
ここにおいて、凹凸条12の形成は、たとえば、所要の凹凸形状に応じた断面形状を有する押込刃を、液体注出ノズル2を構成する積層プラスチックフィルムの内面シーラント層の溶融温度よりもはるかに低い温度に加熱して、対をなす押切刃間に表裏の両フィルムを同時に挟み込むことによって、または表裏の両フィルム間に離型フィルムを介装し、それらのフィルムの対向シーラント層の溶融温度もしくはその近くまで加熱した押切刃によって十分に加熱加圧することによっても形成することができる。
【0047】
また、主収納スペース5内に包装される液状被包装物を定量配分スペース4内に充填する際は、液状被包装物が液体注出ノズル2内に流入しないようにするため、液体注出ノズル2の基端部分2cを指等で押さえる必要があるが、そのためには、図7(c)に例示したように基端部分2cの上部および下部をヒートシール等(融着部13、14)して開口径aを小さくすることが好ましく、例えば、500mlサイズの包装袋においては、開口径aを3〜20mmの範囲とすることがとくに効果的である。
【0048】
なお、図3図7の実施形態のように包装袋本体1の側方へ液体注出ノズル2を突出させて設けた包装袋においては、包装袋本体1に対する液体注出ノズル2の基端部2cの融着接合部下部を含む近傍領域に、対面する一対の積層プラスチックフィルムのシーラント層同士を融着させて形成した融着部13を設けることが好ましく、これによれば、液体注出ノズル2に流れ込む被包装物が融着部13によって一旦、堰止められることになるため、注出流の整流が行われて被包装物の注出量を確実にコントロールすることができると共に、液だれの発生も抑制することができる。
また、融着部13は、包装袋本体1と液体注出ノズル2基端部2cとの融着接合強度を向上させる効果も有している。
【0049】
また、ここにおける定量注出用包装袋Aでは、液体注出ノズルの逆止機能または図7(a)に示すような凹凸条12による効果によって外気の侵入が阻止されて、液状被包装物の注出時のみならず、注出の停止および注出後の長期に亘って外気や雑菌等の袋内への侵入を阻止することができるので、一度に袋内被包装物を全量使用しなくても、袋内に残存する袋内被包装物の品質が低下したり汚損されたりすることがなく、大袋からの小分け(分注)を無菌状態で行うことができる。
【0050】
したがって、この定量注出用包装袋では、液状被包装物を、常に一定量(定量配分スペースの容積分)で複数回にわたって注出することができるため、計量等する手間を省くことができ、さらに液状被包装物を分注するのに器具等を使う必要がないため、滅菌処理等の必要がなく、また操作が簡単で短時間で行うことができるため、コンタミネーションを有効に抑制できるという効果も期待できる。
【0051】
ところで、上述した液体注出ノズル2の外気の侵入を阻止する逆止機能とは、以下のようにして発揮されるものである。
定量注出用包装袋内に充填された液状被包装物は、積層プラスチックフィルムからなる液体注出ノズル2の開封による注出口2bの形成下で、それを傾動させて液状被包装物の水頭圧を作用させることや手指によって定量配分スペース4を加圧することにより、所要量が袋内から注出され、そして、液体注出ノズル2の注出口2bからの液状被包装物の流出は、この定量注出用包装袋A元の起立姿勢に復帰させることにより停止する。
この流出の停止により、液体注出ノズル2の注出通路2a内は、液状被包装物の毛細管現象によって常時、液状被包装物が介在して濡れた状態になるため、その停止と同時に、内面どうしが液状被包装物を介在させることによって生じる分子間力に由来して相互に強く密着し、したがって、液体注出ノズル2の先端部に設けた注出口2bもまた、密着したままとなり、外気の、包装袋本体1内への侵入を確実に阻止することができる。
【0052】
また、液体注出ノズル2の注出口2bを経て、液状被包装物を注出するに当たっては、軟質の積層プラスチックフィルムからなる包装袋本体1は、液体注出ノズル2のもつ逆止機能(注ぎ出された液状被包装物に代わって、空気が包装袋本体1内に侵入しないこと)により、外気の吸い込み(逆流)を行わないので、包装袋本体1部分は、その注出体積分に相当する量だけ次第に収縮ないしは潰れ変形することになる。
【0053】
したがって、液体注出ノズル2の逆止機能は、包装袋の起立復帰によって、該液体注出ノズル2が水頭圧の作用から解放されて製造時の元形状に復帰することに加え、液体注出ノズル2内の液状被包装物の一部が、包装袋本体1内へ戻流するに際して、液状被包装物によって濡れた表裏一対のフィルムどうしの内表面(注出通路2a)が、包装袋本体1内の減圧雰囲気に晒されて相互に負圧吸着し合うこと等によって自動的に行われる(セルフシール)ことになり、このような吸着は、包装袋からの液状被包装物の注出に伴って、収縮ないしは潰れ変形された包装袋本体1が、それに固有の弾性復元力に基づいて、その内部を減圧傾向へと作用するときに、より確実になる。
【0054】
なお、この液体注出ノズル2の有する逆止機能とは、包装袋から被包装物を注出する際に、被包装物と入れ代わって、空気等が液状被包装物が充填された袋本体1内へ侵入するのを防ぐ、外側からの侵入防止機能であって、例えば、特開2005−52596号公報の逆止ノズルのように、被包装物が袋本体から流出するのを防ぐ内側からの洩出阻止機能とは異なるものである。
【0055】
ところで、逆止機能を有する液体注出ノズル2は、図3のように包装袋本体1とは別体からなる場合、例えば、図8に、図3のノズル幅方向のII−II線に沿う拡大断面図で示すように、相互に融着される表裏のそれぞれの積層プラスチックフィルム8、9を、たとえば縦方向を積層プラスチックフィルムのほぼ幅方向に向けて配設したそれぞれのベースフィルム層8a、9aと、このベースフィルム層8a、9aの両面に積層したそれぞれのシーラント層8b,8c、9b,9cとの3層構造としたところにおいて、互いに対向する内面側のシーラント層8b、9bどうしを、基端辺を除く周辺部分で、所定の幅、たとえば0.5〜3mmの幅、好ましくは1.0〜2.0mmの幅にわたって、好適にはヒートシールにより所要の形態(楔形)となるように融着させることで、簡易迅速に、しかも常に確実に製造することができる。かかる液体注出ノズル2は平坦形状をなし、それの基端部で、外面側のシーラント層8c、9cを包装袋本体1の内表面にこれも好ましくはヒートシールによって融着させることで、その包装袋本体1に、常に適正にかつ確実に、しかも簡単に接合させることができる。
【0056】
なお、積層プラスチックフィルム8、9は、液状被包装物の負荷を受けないので、たとえば、PE20/NY15/PE20の薄い、3層構造の積層プラスチックフィルムが適当であり、薄ければ薄いほどよく、腰の弱いフィルムの方が逆止作用が良好である。とくに、表裏2枚の積層プラスチックフィルム8、9は、フラット性(平坦度)の高いものの方が高い逆止効果が得られ、表裏2枚のプラスチックフィルムの重ね合わせた時の隙間を2μm〜300μm程度とすることが必要となる。また、シーラント材料としてPVDCを用いて、例えば、PE15/PET12/PVDC5の組み合わせからなる薄く柔らかい3層積層フィルムにより液体注出ノズル2を形成した場合には、注出口2bが小さな力で開きやすく、注ぎ出しが容易で、さらにPVDC自身が、ガスバリア性とヒートシール性に優れるため、ベースフィルムにガスバリア層を形成する必要がなく好ましい。
【0057】
また、逆止機能を有する液体注出ノズル2においては、表裏2枚の積層プラスチックフィルム8、9の密着力をより確実にして、その逆止機能を向上させるため、内面側シーラント層8b、9bの表面、とくに、注出通路2aの形成部分の内表面に、コロナ放電処理や、UVオゾン処理、樹脂コーティング処理、金属蒸着処理、無電解めっき処理、金属低温溶射処理、プラズマエッチング処理、火炎処理等の濡れ処理を施して、フィルム表面の物理的な表面改質と極性官能基生成による化学的な表面改質との相乗効果により、フィルムの濡れ性を高めることが好ましい。
【0058】
このような液体注出ノズル2は、その基端部分2cにおいて、例えば、このノズル2の外表面に位置することになるシーラント層、たとえば、無延伸の各種のPE層、PP層、EVA層、メタロセン触媒ポリエチレン層等のオレフィン系樹脂層、エチレン酢酸ビニル共重合体層、エチレンアクリル酸エチル共重合体層、アイオノマー層、PVDC層、EVOH層等の熱可塑性樹脂層を介して、軟質積層プラスチックフィルム(主として2層)からなる包装袋本体1の内表面のシーラント層(好ましくは、同種のシーラント層)に、たとえばヒートシールによって融着させることにより、該包装袋本体1に突出した状態で簡易、迅速に、しかも確実に融着接合され、図2〜7に示すような定量注出用包装袋Aを形成することができる。
【0059】
また、本発明の定量注出用包装袋Aは、図9に、液状被包装物等の充填包装状態で示すように包装袋本体1の主収納スペース5内に、液状被包装物と共に、混合用の溶液を封入した積層プラスチックフィルムからなる小袋11を収納することで、2液混合用の包装体として使用することもできる。これによれば、使用の開始にあたって、小袋11を破袋させて、小袋11内の溶液と主収納スペース5内の液状被包装物とを、主収納スペース5内で無菌状態で混合することができる。
【0060】
このような2液混合用の包装体は、微生物実験において多く利用されている培地の作製に好適に利用することができ、例えば、多くの真菌や細菌が多く含まれる材料から病原性真菌を分離するために、液体培地に抗生物質を添加する際に利用することができる。通常、このような培地を作製するには、粉末培地を精製水に懸濁させて、沸騰するまで加熱して溶解させ、これを加圧蒸気滅菌し約50℃に冷却した後、この液体培地に抗生物質を添加する。この時、抗生物質を無菌的に液体培地に添加することが必要となるが、従来の方法では、コンタミネーションを抑制するのが非常に困難であった。これに対しても、本発明によれば、主収納スペース5内に液体培地と共に、抗生物質をあらかじめ封入した小袋11を収納し、使用開始にあたって小袋11を破袋することで、液体培地と抗生物質とを簡単かつ無菌的に混合することができる。
【0061】
なお、混合用液体の封入前、もしくは封入後の小袋11は、包装袋本体1の主収納スペース5の底部、頂部または側部に予め固着しておくことが好ましく、さらに小袋11の少なくとも1辺を、他の辺部分の通常の接合強度の半分程度の弱接合部としておくことが好ましい。これによれば、収納スペース5への外部からの押圧によって、小袋11を容易に破袋させることができ、2液を袋内で簡単に混合させることができる。ところで、前記弱接合部の、たとえばヒートシールによる接合強度は、0.3〜3(N/15mm)の範囲とすることが好ましく、それが0.3(N/15mm)未満では、弱接合部に意図しない開封が起こるおそれがあり、一方で、3(N/15mm)を越えると、弱接合部を開封するのに要する力が、他の融着接合部等にも不測の影響(破袋や開封)を及ぼすおそれがある。
【実施例】
【0062】
(培地の作製)
本発明の定量注出用包装袋を用いて培地を作製した。その手順を従来の方法と比較して図10に示す。従来の三角フラスコを用いた培地の作製方法では、粉末培地を溶解させて得た液体培地を、液体が固まらないうちに目分量でほぼ同量となるように分注するか、ピペットを用いてシャーレに分注する。そして、余った培地は基本的に廃棄し、使用した三角フラスコやピペットは、中性洗剤で汚れを落とした後、水道水で30回、純水で5回洗浄する。
【0063】
一方、本発明の定量注出用包装袋を用いた培地の作製では、粉末培地を純水に加温溶解し、高圧蒸気滅菌することまでは従来と同様であるが、次に、溶解および滅菌した液体培地を、液中シール充填等によって外気および細菌等が侵入しないように無菌的に本発明の定量注出用包装袋へ充填する。この定量注出用包装袋は、密封されているため、外気や細菌等が侵入することがなく、使用時まで長期に亘って保管することができるので、一度に大量に作製しておけば手間を省くことができ、コストの削減も可能となる。
【0064】
そして、使用に当たって、培地が充填された上記定量注出用包装袋を95℃で3時間加熱して再溶解し、その液体培地を定量配分スペースに送入、充満させた後、液体注出ノズルからシャーレに一定量で注出する。
【0065】
(定量注出性の評価実験)
本発明の定量注出用包装袋の定量注出性を評価するため、20mlの定量配分スペース域を有する200ml用の定量注出用包装袋を用いて、分注を行いその際の注出量の平均値とバラツキを求めた。この分注実験を2回行った結果を表1および図11に示す。これによれば、1回の注出量の平均値は、ほぼ20mlであり、バラツキも小さく、安定した定量注出性を有することがわかった。
【0066】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の定量注出用包装袋は、品質の低下や雑菌の混入を抑制しながら液状の被包装物を常に一定量で注出することができるため、微生物実験のみならず飲食品や化粧品、医薬品等の分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
A 定量注出用包装袋
1 包装袋本体
1a 遊端部
1b 折返し
2 液体注出ノズル
2a 注出通路
2b 注出口
2c 基端部または基端部分
3 融着仕切り部
3a 横シール
3b 縦シール
4 定量配分スペース
5 主収納スペース
6 狭隘送出路
6a 狭隘送入口
7 括れ通路
8、9 積層プラスチックフィルム
8a、9a ベースフィルム層
8b、9b 内面側シーラント層
8c、9c 外面側シーラント層
11 小袋
12 凹凸
13 融着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11