特許第6150240号(P6150240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6150240-包装材およびそれを用いてなる包装構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150240
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】包装材およびそれを用いてなる包装構造
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/00 20060101AFI20170612BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170612BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20170612BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   A61J1/00 370C
   A61K45/00
   A61K9/70 401
   A61K31/138
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-208811(P2012-208811)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61187(P2014-61187A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 庸一
(72)【発明者】
【氏名】太田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】花谷 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】坂元 左知子
(72)【発明者】
【氏名】向畑 剛
(72)【発明者】
【氏名】岩男 美宏
【審査官】 胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−120642(JP,A)
【文献】 特開2011−148536(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090900(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/083787(WO,A1)
【文献】 特開2009−128223(JP,A)
【文献】 特開2006−305975(JP,A)
【文献】 特開2011−184482(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/029977(WO,A1)
【文献】 特開2008−188414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/00
A61K 9/70
A61K 31/138
A61K 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貼付剤用の包装材であって、ヒートシール性を有する無延伸イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートからなる内層、不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性樹脂を含む酸素吸収層、及び外層にアルミ箔からなる酸素バリア層を有し、
酸素吸収層がテトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体に由来する構造単位を含むポリエステルである酸素吸収性樹脂を含む、包装材。
【請求項2】
酸素吸収層がテトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体に由来する構造単位を含む酸素吸収性ポリエステルポリオールとイソシアネート系硬化剤からなる酸素吸収性接着剤層である、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
貼付剤が、経皮吸収性薬物を含有する粘着剤層を支持体の片面に形成してなる経皮吸収製剤である、請求項1又は2に記載の包装材。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の包装材にて貼付剤を包装してなる包装構造。
【請求項5】
貼付剤が、経皮吸収性薬物を含有する粘着剤層を支持体の片面に形成してなる経皮吸収製剤である、請求項記載の包装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼付剤用の包装材、特に、易酸化性成分および油状成分を粘着剤中に含有し且つ酸素の影響を受けやすい貼付剤用の包装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貼付剤、特に粘着剤層中に薬物を含有させた経皮吸収用貼付剤では、保存中での品質保持などの観点から、密閉性の包装材料を用いて密封包装されている。しかしながら、易酸化性成分および油状成分を粘着剤中に含有する貼付剤を包装材料で包装した場合、包装材料の内面に貼付剤が接触することによって易酸化性成分および油状成分が包装材料に吸着又は移行して粘着剤中の易酸化性成分および油状成分の含有量が変化し、粘着特性が変化する。また、経皮吸収用貼付剤の場合には、含有する薬物の経皮吸収性の低下や含有薬物自体の吸着により薬理効果の低下などの問題が指摘されている。
上記問題に対して、包装材料の内面をエチレン/ビニルアルコール共重合体又はアクリロニトリル/メチルアクリレート共重合体から形成することが提案されている(特開平5−305108号公報)。また、酸素などの影響を受けやすい薬効成分の安定性に優れた貼付剤、および貼付剤の薬効成分の安定性に優れた保存方法として、脱酸素能を有する包装容器内に封入された貼付剤、および脱酸素能を有する包装容器内に封入することを特徴とする貼付剤の保存方法が提案されている(特開平11−47233号公報)。
しかしながら、貼付剤中の易酸化性成分および油状成分の包装材料への移行と貼付剤中の酸素の影響を受けやすい薬効成分の安定性を同時に満足できる包装材の実現は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−305108号公報
【特許文献2】特開平11−47233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、貼付剤の粘着剤中に含まれる易酸化性成分および油状成分が包装材に吸着又は移行することを防止すると共に、酸化による変色、薬効の低下を防止し、長期間保存することが可能な包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、貼付剤用の包装材であって、ヒートシール性を有するポリエチレンテレフタレートからなる内層、不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性樹脂を含む酸素吸収層、及び外層にアルミ箔からなる酸素バリア層を有する包装材を提供する。
【0006】
本発明の包装材においては、
(1)酸素吸収層が不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性ポリエステルポリオールとイソシアネート系硬化剤からなる酸素吸収性接着剤層であること、
(2)酸素吸収性ポリエステルポリオールがテトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体に由来する構造単位を含むポリエステルポリオールであること、
(3)貼付剤が、経皮吸収性薬物を含有する粘着剤層を支持体の片面に形成してなる経皮吸収製剤であることが好ましい。
【0007】
さらに、本発明の包装構造においては、
(4)上記の包装材にて貼付剤を包装してなる包装構造であること、
(5)貼付剤が、経皮吸収性薬物を含有する粘着剤層を支持体の片面に形成してなる経皮吸収製剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、貼付剤の粘着剤中に含まれる易酸化性成分および油状成分が包装材に吸着又は移行することを防止すると共に、酸化による変色、薬効の低下を防止し、長期間保存することが可能な包装材が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の包装材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の貼付剤用の包装材は、ヒートシール性を有するポリエチレンテレフタレートからなる内層、不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性樹脂を含む酸素吸収層、及び外層にアルミ箔からなる酸素バリア層を有する。
ヒートシール性を有するポリエチレンテレフタレート樹脂としては、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、油状成分の非収着性に優れていると共に、適度なガス透過性を有することから、酸素吸収性中間層による容器内の脱酸素機能を阻害することがない。このため、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、貼付剤中の油状成分の包装材料への移行の防止と貼付剤中の酸素の影響を受けやすい薬効成分の安定性を同時に満足できる包装材の内層として優れている。前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、より好ましくはイソフタル酸やアジピン酸で変性された共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である。この樹脂は結晶性が低いためヒートシール性に優れている。
また、ポリエチレンテレフタレートからなる内層は無延伸あるいは低倍率で延伸された状態が好ましい。高倍率で延伸されたポリエチレンテレフタレートは配向結晶化によりヒートシール性が失われるため好ましくない。
【0011】
酸素吸収層は、不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性樹脂を含有する。不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性樹脂は、自動酸化反応すなわち酸素吸収反応に伴う分解ガスの発生が少ないため、分解ガス発生量の多い不飽和脂肪酸や不飽和基を有する鎖状炭化水素重合物から成る酸素吸収剤に比べ、貼付剤用の包装材用途として優れている。アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アルコール等の分解ガス発生を抑えることにより、分解ガスと貼付剤成分との化学反応による貼付剤の品質低下を抑えることが出来、長期安定保存が可能となる。
不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性樹脂としては、シクロヘキセン環を有するポリマー、例えばエチレン−メチルアクリレート−シクロヘキシルメチルアクリレート共重合体やテトラヒドロ無水フタル酸誘導体を原料とする重縮合ポリマーを挙げることが出来る。また、共役ジエン系重合物の環化反応物を使用することも出来る。
好ましい不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性樹脂としては、下記モノマー(i)及びモノマー(ii)からなる群より選ばれるモノマーを含む原料を重合してなる樹脂が挙げられる:
(i)下記構造(a)及び(b)の両方の基に結合し、かつ、1個又は2個の水素原子と結合した炭素原子が不飽和脂環構造に含まれているモノマー;
(a)不飽和脂環構造内の炭素−炭素二重結合基、
(b)複素原子を含む官能基、該官能基から誘導される結合基、炭素−炭素二重結合基及び芳香環からなる群より選ばれる基;
(ii)不飽和脂環構造内の炭素−炭素二重結合に隣接する炭素原子が電子供与性置換基及び水素原子と結合し、かつ、該炭素原子に隣接する別の炭素原子が複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基と結合しており、該電子供与性置換基と複素原子を含む官能基又は該官能基から誘導される結合基とがシス位に位置しているモノマー。
【0012】
モノマー(i)及びモノマー(ii)を含む原料を重合して得ることができる酸素吸収性樹脂は、好ましくはテトラヒドロフタル酸若しくはテトラヒドロ無水フタル酸などのその誘導体に由来する構造単位を含むポリエステルである。
(i)の構造を有する酸成分として、Δ2−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体、Δ3−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体、Δ2−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体、Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体を挙げることが出来る。好ましくは、Δ3−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はΔ3−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体であり、特に好ましくは4−メチル−Δ3−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又は4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体である。4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸は、例えば、イソプレンを主成分とするナフサのC5留分を無水マレイン酸と反応させた、4−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸を含む異性体混合物を、構造異性化することにより得ることが出来、工業的に製造されている。
(ii)の構造を有する酸成分として、特に好ましくはcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体又はcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸若しくはその誘導体である。cis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸は、例えば、トランス−ピペリレンを主成分とするナフサのC5留分を無水マレイン酸と反応させることにより得ることが出来、工業的に製造されている。
【0013】
また、酸素吸収層は、酸素吸収性接着剤を用いた層が好ましい。酸素吸収性接着剤層としては、不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性ポリエステルポリオールからなる主剤とイソシアネート系硬化剤を含有するものが好ましい。
イソシアネート系硬化剤としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のイソシアネート類を使用することができる。芳香族ジイソシアネート類としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネート類としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ジイソシアネート類としては、例えばシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等が挙げられる。さらには、これらイソシアネート類をトリメチロールプロパンアダクトやイソシアヌレート、ビュレット体等として使用することも出来る。以上のイソシアネート類およびイソシアネート類の誘導体は単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イソシアネート系硬化剤は、主剤である酸素吸収性樹脂に対して、固形分重量部で3phr〜30phr添加することが好ましく、より好ましくは5phr〜20phr、さらに好ましくは7phr〜15phrである。添加量が少なすぎると、接着性及び凝集力が不十分となり、多すぎると、樹脂単位重量中に含まれる酸素吸収成分の配合量が少なくなり、酸素吸収性能が不十分となる。また、硬化により樹脂の運動性が著しく低下した場合、酸素吸収反応が進行しにくくなり、酸素吸収性能は低下する。
【0014】
酸素吸収性接着剤層に用いる不飽和脂環構造を酸素吸収部位として有する酸素吸収性ポリエステルポリオールは、テトラヒドロフタル酸若しくはその誘導体に由来する構造単位を含むポリエステルポリオールが好ましい。
【0015】
酸素バリア層としては、アルミニウム箔が使用でき、アルミ箔は酸素だけではなく、水分や光のバリア性にも優れており好適に使用できる。
【0016】
包装材の製造には、それ自体公知の押出成形法を用いることができる。例えば、樹脂の種類に応じた数の押出機を用いて、多層多重ダイを用いて押出成形を行うことで積層体が成形できる。さらに、押出コート法や、サンドイッチラミネーションを用いることができ、また、予め形成されたフィルムのドライラミネーション法によって積層体を製造することもできる。
積層体は、三方又は四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピローパウチ類などに製袋することにより包装袋とすることができる。製袋は公知の製袋法で行うことができる。
【0017】
上記包装材にて包装される貼付剤は、支持体層と粘着剤層からなり、粘着剤層には薬物を配合し、薬物を経皮吸収させて各種疾患の治療又は予防を行うものである。ここにいう薬物は特に限定されず、全身性作用薬、局所作用薬のいずれをも用いることができる。そのような薬物としては、例えば、副腎皮質ステロイド剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗リウマチ剤、睡眠剤、抗精神病剤、抗うつ剤、気分安定剤、精神刺激剤、抗不安剤、抗てんかん剤、片頭痛治療剤、パーキンソン病治療剤、ムスカリン受容体拮抗剤、レストレスレッグス症候群治療剤、脳循環・代謝改善剤、抗認知症剤、自律神経作用剤、筋弛緩剤、降圧剤、利尿剤、血糖降下剤、高脂血症治療剤、痛風治療剤、全身麻酔剤、局所麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、ビタミン剤、狭心症治療剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、抗ヒスタミン剤、メディエーター遊離抑制剤、ロイコトリエン拮抗剤性ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤、抗甲状腺剤、抗腫瘍剤、制吐剤、鎮暈剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、去痰剤、禁煙補助剤、抗骨粗鬆症剤などが挙げられる。これら薬物は遊離体の形態で用いてもよく、塩の形態で用いてもよい。また、これらの薬物は、単独で、又は2種以上混合して用いてもよい。
本発明に用いられる貼付剤は酸素の影響を受けやすい易酸化性成分を含んでいるものであり、具体的には、分子中にアミノ基、ベンジル基、チオール基およびカルボニル基のうちの少なくとも一種を含有する化合物である。例えば、アミン、アミド、環式アミン、ラクトン、カルボン酸構造を有する化合物がそれに含まれる。
【0018】
支持体層としては、貼付時に著しい違和感がないものであれば、特に限定されない。具体的には、ポリエステル、ポリエチレン若しくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、アイオノマー樹脂などの合成樹脂からなる単独フィルム、又はこれらのラミネートフィルム、あるいは、ゴム製、上記合成樹脂製、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル製、またはナイロン等のポリアミド製の多孔性フィルム若しくはシート、不織布、織布又はこれらと上記合成樹脂フィルムとのラミネート物などが挙げられる。
【0019】
貼付剤は、経皮吸収製剤であって、経皮吸収性薬物を含有する粘着剤層を支持体の片面に形成してなるものが好ましい。また、該粘着剤層の他方の面に積層された剥離処理した離型フィルムを有していても良い。
貼付剤の形態としては、平面状の扁平な形態であり、平面形状は、略矩形のほか、三角形、五角形等の多角形、すなわち略直線で輪郭付けられる形状や、楕円、円形等の曲線で輪郭づけられる形状、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
貼付剤の大きさは、貼付剤の用途や適用箇所などに応じて、適宜選択することができる。例えば、貼付剤の形状が略矩形である場合、一般的には、その一辺の長さが15mm〜90mmであり、他辺の長さも15mm〜90mmである。
【0020】
貼付剤の総厚みは、通常、50μm〜2000μmであり、好ましくは、100μm〜1000μmの範囲である。また、貼付剤は支持層と粘着剤層からなるが、支持体層は、厚みが通常、1μm〜1000μmであり、粘着剤層は通常、10μm〜200μmであり、好ましくは、15μm〜150μmである。
【0021】
粘着剤層には、油状成分が含有されていても良い。含有される油状成分は、粘着剤層を可塑化してソフト感を付与して皮膚刺激性を低減させたり、薬物の経皮吸収性を調整したりする。油状成分は室温(25℃)で液状であるもの、または2種以上を混合して用いる場合には、最終的に混合物が室温(25℃)で液状となるものが好ましい。このような油状成分としては、例えば、オレイルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;グリセリン、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール;カプリル酸、オレイン酸等の高級脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル等の脂肪酸エステル;セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル等の多塩基酸エステル;トリイソステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ソルビタン、ジカプリル酸プロピレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等の多価アルコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;スクアラン、流動パラフィン等の炭化水素;オリブ油、ヒマシ油等の植物油;シリコーン油;N−メチルピロリドン、N−ドデシルピロリドンのようなピロリドン類;デシルメチルスルホキシドのようなスルホキシド類などが挙げられる。これらの油状成分は、単独で、又は2種以上混合して用いてもよい。
【0022】
本発明の貼付剤用の包装体の形状は、貼付剤を包装できるような形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、正方形、長方形など略矩形のほか、三角形、五角形等の多角形、円形、楕円形、その他の図形等が挙げられる。また、貼付剤用の包装体の形状と包装される貼付剤の形状とは、貼付剤の個別包装(密封)が可能である限り、同一であっても異なるものであってもよい。
【実施例】
【0023】
1.[不飽和脂環構造を含むポリエステルポリオールの調製]
攪拌装置、窒素導入管、Dean−Stark型水分離器を備えた3Lのセパラブルフラスコに、4−メチル−Δ3−テトラヒドロ無水フタル酸を45モル%及びcis−3−メチル−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸を21モル%含有するメチルテトラヒドロ無水フタル酸異性体混合物(日立化成社製;HN−2200)を898g、無水コハク酸(和光純薬社製)を60g、1,4−ブタンジオール(和光純薬社製)を702g、重合触媒としてイソプロピルチタナート(キシダ化学社製)を300ppm、及びトルエン20mlを仕込み、窒素雰囲気中150℃〜200℃で生成する水を除きながら約5時間反応させた。引き続いて反応系よりトルエンを除いた後、0.7kPaの減圧下、200〜220℃で約6時間重合を行い、ポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールのMnは約3400、Mwは27100であった。
【0024】
2.[酸素吸収性接着剤溶液の調製]
得られたポリエステルポリオールを酢酸エチルに20wt%の濃度で溶解し、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製;A−50)を固形分換算で10phr添加し、振騰して酸素吸収性接着剤溶液を調製した。
【0025】
3.[貼付剤用包装材の作製]
調製した接着剤溶液を、12μm二軸延伸PETフィルムと7μmアルミ箔からなるドライラミネートフィルム基材のアルミ箔面側に#18のバーコーターにて塗布した。直ちに100℃の電気オーブンにて1分間処理して接着剤に含まれる溶剤を飛ばした後、ドライラミネートフィルム基材の接着剤塗布面と、20μm無延伸イソフタル酸変性PETフィルムを対向させて70℃の熱ロールで圧着し、35℃窒素雰囲気下で5日間キュアすることにより、二軸延伸PETフィルム/アルミ箔/酸素吸収性接着剤(膜厚4μm)/無延伸PETフィルムからなる酸素吸収性積層フィルムを得た。
【0026】
4.[酸素吸収性能の評価]
2cm×10cmに切り出した酸素吸収性積層フィルム試験片を、内容積85cm3の酸素不透過性のスチール箔積層カップに、グリセリン溶液からなる調湿液と共に仕込んでアルミ箔積層フィルム蓋でヒートシール密封し、22℃雰囲気下にて保存した。調湿液によりカップ内湿度は50%RHに制御された。7日、および30日間保存後のカップ内酸素濃度をマイクロガスクロマトグラフ装置(アジレント・テクノロジー社製;M200)にて測定し、フィルム1m2当たりの酸素吸収量を算出した。その結果7日後および30日後の酸素吸収量はそれぞれ、170ml/m2、450ml/m2であった。
【0027】
5.[貼付剤の作製]
アクリル酸2−エチルヘキシル、N−ビニルピロリドンおよびアクリル酸を、74:22:4の重合比(重量換算)で共重合し、絶対分子量が1.8×106であるポリマーを調製した。このポリマー41.5重量部(固形分)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)50.9重量部、プロプラノロール7.4重量部およびエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート0.2重量部を、酢酸エチルで粘度調整しながらよく混合し、粘着剤溶液を得た。
この粘着剤溶液を、乾燥後の厚みが60μmとなるよう、シリコーン処理した二軸延伸PETフィルム上に塗布し、乾燥後、支持体として二軸延伸PETフィルムを貼り合せた。これを窒素雰囲気下で、70℃で48時間加熱後、10cm2の大きさに裁断して貼付剤を得た。
【0028】
[実施例1]
得られた酸素吸収性積層フィルムを7cm×7cmの正方形状に2枚切り出し、これらを無延伸PETフィルム層が対向するように重ね合わせて、内部に作製した貼付剤を一枚充填して4辺をシール幅5mmでヒートシールし、内容積2mlの貼付剤入り包装構造を作製した。
貼付剤の品質変化を下記の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0029】
[比較例1]
酸素吸収性積層フィルムの代わりに、酸素吸収性能を有さない二軸延伸PETフィルム/アルミ箔/無延伸PETフィルムから成るドライラミネート積層フィルムを包装材として用いた以外は実施例1と同様にして貼付剤入り包装構造を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0030】
[比較例2]
20μm無延伸イソフタル酸変性PETフィルムの代わりに30μmLDPEフィルムをラミネートすることにより作製した、二軸延伸PETフィルム/アルミ箔/酸素吸収性接着剤(膜厚4μm)/LDPEフィルムからなる酸素吸収性積層フィルムを包装材として用いた以外は実施例1と同様にして貼付剤入り包装構造を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0031】
[試験例]
実施例1、比較例1、比較例2の包装構造を50℃で3ヵ月間保存した後の、それぞれの貼付剤の薬物(プロプラノロール)含有量、不純物生成率、色彩、IPM含有量を測定し、保存開始前(初期)の値と比較した。
薬物含有量は、貼付剤のメタノール抽出液を液体クロマトグラフィ(HPLC)で分析して求め、初期に対する保存後の割合で評価した。
不純物生成率は、薬物含有量測定時のHPLCクロマトグラムにおける、薬物ピーク面積に対する薬物以外のピーク面積の総和の割合の、保存後と初期の差(保存後の増加量)で評価した。
色彩は、色彩色差計を用いて測定し、L***表色系における初期と保存後の色差ΔE*で評価した。
IPM含有量は、貼付剤のヘキサン抽出液をガスクロマトグラフィで分析して求め、初期に対する保存後の割合で評価した。
【0032】
【表1】
表1から明らかであるように、実施例1では、いずれの評価項目も良好な結果であった。それに対し、比較例1では薬物含有量の低下、不純物生成率の増加、色彩変化が比較的大きく、薬物の分解が著しいことがわかる。また、比較例2では、不純物生成率と色彩の変化は比較的小さく、酸素吸収性接着剤の効果が発揮されているものと考えられるが、IPM含有量と薬物含有量の低下が大きく、包装材内層へのこれらの吸着が生じるものであった。
【符号の説明】
【0033】
1 包装材
2 内層
3 酸素吸収性中間層
4 酸素バリア層
図1