特許第6150248号(P6150248)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公立大学法人 富山県立大学の特許一覧 ▶ 城西ニット有限会社の特許一覧

<>
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000002
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000003
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000004
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000005
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000006
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000007
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000008
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000009
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000010
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000011
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000012
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000013
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000014
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000015
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000016
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000017
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000018
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000019
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000020
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000021
  • 特許6150248-布地の欠陥検査方法と装置 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150248
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】布地の欠陥検査方法と装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/898 20060101AFI20170612BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20170612BHJP
   D06H 3/08 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   G01N21/898 A
   G01N21/88 J
   D06H3/08
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-99028(P2013-99028)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-167456(P2014-167456A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2013-15733(P2013-15733)
(32)【優先日】2013年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】513024177
【氏名又は名称】城西ニット有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】中田 崇行
(72)【発明者】
【氏名】包 躍
(72)【発明者】
【氏名】小屋 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貢
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−209501(JP,A)
【文献】 特開昭48−096182(JP,A)
【文献】 特開2005−208847(JP,A)
【文献】 特開2012−215512(JP,A)
【文献】 特開2010−060370(JP,A)
【文献】 特開2005−265467(JP,A)
【文献】 特開2007−285754(JP,A)
【文献】 特開2003−057190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
D06B 1/00−23/30
D06C 3/00−29/00
D06G 1/00− 5/00
D06H 1/00− 7/24
D06J 1/00− 1/12
G01B 11/00−11/30
G06T 1/00− 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地を製造して送り出す布地製造装置の布地送出部に撮影装置を配置し、前記布地送出部から送り出される布地に対して斜め方向に前記布地表面を撮影し、
斜めに撮影された画像を透視変換して斜め撮影の歪みを補正し、
前記歪みが補正された補正画像を複数のブロックに分割し、
前記補正画像が分割された前記ブロックの輝度値の平均である平均輝度値を求め、
複数の前記ブロックのうちの検査対象となる一つのブロックである検査対象ブロック毎に、前記検査対象ブロックに隣接する前記ブロックである処理対象ブロックについて、前記各平均輝度値に各々所定の係数を乗じて、それらのブロックの前記平均輝度値の差分を取るフィルタによる画像処理を行うものであって、前記画像処理は異なる性質の複数の前記フィルタにより行い、
複数の前記フィルタによる前記画像処理により得られた前記各検査対象ブロックの各演算値の何れもが所定の閾値を超えた場合に、その検査対象ブロックの前記布地部分に欠陥があると判断することを特徴とする布地の欠陥検査方法。
【請求項2】
前記ブロックは、前記布地の進行方向に沿った方向であって等間隔に分割を行い、前記布地の模様の繰り返し周期に合わせた区画で前記画像を分割する請求項1記載の布地の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記フィルタは、前記検査対象ブロックに隣接した前記処理対象ブロックについての、数が異なる複数の1次元フィルタであって、処理結果に逆の性質を有する複数種類のフィルタである請求項2記載の布地の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記フィルタは、前記検査対象ブロックの両側に隣接した前記処理対象ブロックの数が異なる複数種類のフィルタであって、前記差分を取るための前記処理対象ブロックが、前記検査対象ブロックに近接している第一のフィルタと、前記差分を取る前記検査対象ブロックが前記処理対象ブロックに対して相対的に離れている第二のフィルタから成る請求項3記載の布地の欠陥検査方法。
【請求項5】
前記布地は編み地である請求項4記載の布地の欠陥検査方法。
【請求項6】
布地を製造して送り出す布地製造装置の布地送出部に配置され前記布地表面に対して平行に往復動可能に設けられた撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された前記布地の画像を処理する画像処理手段を備え、
前記画像処理手段は、
前記布地の画像を複数のブロックに分割する画像分割手段と、
分割された前記ブロックの輝度値の平均を求める平均輝度値算出手段と、
複数の前記ブロックのうちの検査対象となる一つのブロックである検査対象ブロック毎に、前記検査対象ブロックに隣接する前記ブロックである処理対象ブロックについて、前記各平均輝度値に各々所定の係数を乗じて、それらのブロックの前記平均輝度値の差分を取るフィルタによる画像処理を行うものであって、複数の異なる前記フィルタによる画像処理を行う画像フィルタ処理手段と、
複数の前記フィルタによる前記画像フィルタ処理手段により得られた前記各検査対象ブロックの各演算値の何れもが所定の閾値を超えた場合に、その検査対象ブロックの前記布地部分に欠陥があると判断する欠陥判断手段とを備えたことを特徴とする布地の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記撮影装置の光軸は、前記布地表面に立てた法線に対して、前記布地の送出方向に傾斜して配置され、前記画像処理手段は、前記撮影装置で斜めに撮影された画像を透視変換して斜め撮影の歪みを補正する補正手段を備えた請求項6記載の布地の欠陥検査装置。
【請求項8】
前記撮影装置の光軸は、前記布地表面に立てた法線に対して、前記布地の幅方向に傾斜して配置され、前記画像処理手段は、前記撮影装置で斜めに撮影された画像を透視変換して斜め撮影の歪みを補正する補正手段を備えた請求項6記載の布地の欠陥検査装置。
【請求項9】
前記画像分割手段は、前記布地の進行方向に沿った方向であって等間隔に前記画像の分割を行うものであって、前記布地の模様の繰り返し周期に合わせた区画で前記画像を分割する請求項6記載の布地の欠陥検査装置。
【請求項10】
前記画像フィルタ処理手段は、前記検査対象ブロックの両側に隣接した前記処理対象ブロックの数が異なる複数種類の1次元フィルタであって、前記差分を取るための前記処理対象ブロックが、前記検査対象ブロックに近接している第一のフィルタと、前記差分を取る前記検査対象ブロックが前記処理対象ブロックに対して相対的に離れている第二のフィルタとを備えた請求項6記載の布地の欠陥検査装置。
【請求項11】
前記撮影装置に設けられた照明装置の光軸も、前記布地表面に立てた法線に対して斜めに配置されている請求項7または8記載の布地の欠陥検査装置。
【請求項12】
前記布地製造装置は編み機である請求項6記載の布地の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動織機や自動編み機等で自動的に製造される布地に発生する糸切れ等による欠陥を、非接触で検査する布地の欠陥検査方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織物や編み物の布地について、製造時に織機や編み機に取り込まれる糸が切れることがあり、糸が足りない状態のまま布地が製造されることにより布地に欠陥が発生する。この欠陥は、織機や編み機等の機械を停止させて人の手で糸の状態を元に戻さない限り連続して発生し続けるため、布地の製造とともにリアルタイムで検査を行う必要がある。
【0003】
従来、織物の布地の欠陥を非接触で検査する方法として、特許文献1,2に開示されているように、発光素子から照射された光により織布表面を走査し、その反射光を検知して、織布の欠陥を検知する検反装置がある。この検反装置の検査方法は、織布からの反射光を、空間フィルタを介して受光し、その受光信号を基に織布の異常を検知するものである。
【0004】
その他、織物製品の検査方法として、撮影画像を周波数変換して尤度比検定を行うことにより欠陥を見つける方法、レーザ光によるスペックルパターンもしくは撮影画像のパワースペクトルから欠陥を見つける方法、撮影画像をウェーブレット変換後に処理を行い織物のテクスチャを除去することで欠陥を見つける方法がある。
【0005】
一方、図18図19に示すような編み物の布地16の傷等を検査する方法としては、特許文献3に開示されているように、発光手段と受光手段を設けて、編み地からの反射光を受光した受光手段の出力信号を処理して編み地の傷を検知するものも提案されている。この検知方法は、受光手段からの出力信号を所定の帯域フィルタにかけて必要な情報を抽出し、編み地の傷を検知するものである。
【0006】
その他、編み地の傷を検査方法として、特許文献4に開示されているように、編み地表面の画像を撮影し、その映像信号を空間的に微分して、編み地の傷を検知するものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−180784号公報
【特許文献2】特開平6−1802198号公報
【特許文献3】特開平5−25761号公報
【特許文献4】特開昭62−242844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の光学的に検知する方法や撮影画像を用いた方法は、織物や編み物の欠陥検査において、受光素子やカメラで撮影した画像の全体を使用し、あらかじめ記録した欠陥が無い画像との差分や数フレーム前の画像との差分をとっていた。そのため、明確な濃淡差が生じるような模様が存在する布地で検査を行うと、2枚の画像の間で模様の位置にずれが生じたときに全体の差分が大きくなり、布地が薄い場所が広がる欠陥のような差分の小さい欠陥の検査が難しいものであった。
【0009】
さらに、欠陥が発生した場合に連続で欠陥が生じるのを最小限に抑えるために、布地を製造した直後に検査を行うことが望ましいことから、検査機器を設置する場合には、織機や編み機によって布地が製造された直後の位置に設置する必要がある。しかし、リアルタイムの撮影画像を使用する場合、機械に直接に検査機器を設置すると、機械の振動によって撮影画像にぶれが生じる可能性がある。また、検査機器を製造機械に接続せずに設置した場合でも、布地を製造した際に機械の振動によって布地が振動するため、同様にぶれが生じるという問題があった。
【0010】
また、製造された直後の布地を上から撮影すると、布地の厚さが薄い部分から装置の機器や部品が見えるため、図21に示すように、布地16の裏にある編み機等のボルトの頭hや、ローラーの境目iなどが撮影画像に写り込むという現象があった。このため、実際には正常部分でありながら欠陥として検査するという過検査を起こす可能性があった。
【0011】
従って、いずれの検査方法も製造された直後の、移動している布地の検査には十分に対応していないという問題があった。しかも、織物の布地の欠陥を光学的に検知する検知方法は、布地表面の織りパターンが比較的一定の場合に有効であるが、編み物の布地の場合、表面の編み目パターンの種類が極めて多く、透孔や厚さの変化等があり、反射光による受光信号のフィルタ処理では、編み目の柄と欠陥部分との区別がつかず、欠陥の検査ができないものであった。
【0012】
また、上記従来のレーザ光のスペックルパターンによる検査方法は、撮影範囲が狭いのに対して検査装置が大掛かりであり、幅の広い織物全体を検査することが困難であった。ウェーブレット変換による方法は検査時間が長いため、動いている布地に対して検査のための処理を間に合わせることが困難であり、リアルタイムの検査ができないものであった。
【0013】
特許文献3,4に開示された編み物の傷を検知する方法では、編み地に生じた明らかな傷は検査可能であるが、小さい傷や編糸の編成欠陥によるコントラストの低い欠陥部分は明確な信号として検査することが出来ないという問題があった。さらに、不明瞭な欠陥を検査するために、検査感度を上げると、誤検査も多くなって検査精度が低下するという問題があり、検査感度と検査精度の向上は互いに相反するものであった。
【0014】
特に、スポーツのユニホーム等で多用される経編ニットという布を傷検査の対象とした場合、図19に示す布地16のように、汗の蒸散作用等を狙った複雑な立体構造を持つため、糸切れによる傷が発生しても正確に欠陥を検出できないものであった。破れ、模様ズレ等の欠陥は、比較的大きな欠陥に属し、現状の編み機に付いているセンサでも容易に検出され、発生頻度も年に数回程度と低いものであるので大きな問題ではなかった。しかし、糸切れによる欠陥は、1台の編み機において、週に数度の発生頻繁であり、従来のセンサでは検出不能であった。しかも、糸切れにより編成された編み物の布地16は、一様の模様を有した布地16の糸が切れて、糸切れのまま出来上がった布地は、図20(a)に示すように、布地16に穴が開くような大きな欠陥16aが現れる。一方、模様を構成するレイヤーの糸が切れると、図20(b)に示すように、布地の厚さが薄い部分が広がるような欠陥16bとなる。これらの欠陥を有する布地16は、一見して欠陥品とわからないことも多く、編み物製造業者にとっては、早急に解決したい深刻な問題であった。
【0015】
その他、レーザを照射して織物の布地から反射した光または布地の隙間を通過した光の有無で欠陥を調べる方法も用いられているが、織りパターンが一定の布の場合は有効であるものの、汗の蒸散作用等を狙った複雑な立体構造を持つ経編ニットのような編み物の布地では、正確な欠陥検査ができないという問題があった。これらの理由により、従来の検査方法では、様々な織りパターンの織物や、図18図19等に示すような編み物の布地16での正確で迅速な欠陥検査は困難であった。
【0016】
この発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、自動的に製造される布地の欠陥を、高速で高精度に検査することが出来る布地の欠陥検査方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明の欠陥検査方法は、織物や編み物の布地を製造して送り出す布地製造装置の布地送出部に撮影装置を配置し、前記布地送出部から送り出される布地に対して斜め方向に前記布地表面を撮影し、斜めに撮影された画像を透視変換して斜め撮影の歪みを補正し、前記歪みが補正された補正画像を複数のブロックに分割し、前記補正画像が分割された前記ブロックの輝度値の平均である平均輝度値を求める。次に、複数の前記ブロックのうちの検査対象となる一つのブロックである検査対象ブロック毎に、前記検査対象ブロックに隣接する前記ブロックである処理対象ブロックについて、前記各平均輝度値に各々所定の係数を乗じて、それらのブロックの前記平均輝度値の差分を取るフィルタによる画像処理を行うものであって、前記画像処理は異なる性質の複数の前記フィルタにより前記画像処理を行う。そして、複数の前記フィルタによる前記画像処理により得られた前記各検査対象ブロックの各演算値の何れもが所定の閾値を超えた場合に、その検査対象ブロックの前記布地部分に欠陥があると判断する布地の欠陥検査方法である。
【0018】
前記ブロックは、前記布地の進行方向に沿った方向であって等間隔に分割を行い、前記布地の模様の繰り返し周期に合わせた区画で前記画像を分割するものである。
【0019】
前記フィルタは、前記検査対象ブロックに隣接した前記処理対象ブロックについての、数が異なる複数の1次元フィルタであって、処理結果に逆の性質を有する複数種類のフィルタである。
【0020】
さらに、前記フィルタは、前記検査対象ブロックの両側に隣接した前記処理対象ブロックの数が異なる複数種類のフィルタであって、前記差分を取るための前記処理対象ブロックが、前記検査対象ブロックに近接している第一のフィルタと、前記差分を取る前記検査対象ブロックが前記処理対象ブロックに対して相対的に離れている第二のフィルタから成るものである。
【0021】
またこの発明は、布地を製造して送り出す織機や編み機等の布地製造装置の布地送出部に配置され、前記布地表面に対して平行に往復動可能に設けられた撮影装置と、前記撮影装置により撮影された前記布地の画像を処理する画像処理手段を備える布地の欠陥検査装置である。前記画像処理手段は、前記布地の画像を複数のブロックに分割する画像分割手段と、分割された前記ブロックの輝度値の平均を求める平均輝度値算出手段と、複数の前記ブロックのうちの検査対象となる一つのブロックである検査対象ブロック毎に、前記検査対象ブロックに隣接する前記ブロックである処理対象ブロックについて、前記各平均輝度値に各々所定の係数を乗じて、それらのブロックの前記平均輝度値の差分を取るフィルタによる画像処理を行うものであって、複数の異なる前記フィルタによる画像処理を行う画像フィルタ処理手段と、複数の前記フィルタによる前記画像フィルタ処理手段により得られた前記各検査対象ブロックの各演算値の何れもが所定の閾値を超えた場合に、その検査対象ブロックの前記布地部分に欠陥があると判断する欠陥判断手段とを備えたものである。
【0022】
前記撮影装置の光軸は、前記布地表面に立てた法線に対して、前記布地の送出方向に傾斜して配置され、前記画像処理手段は、前記撮影装置で斜めに撮影された画像を透視変換して斜め撮影の歪みを補正する補正手段を備えたものである。
【0023】
前記撮影装置の光軸は、前記布地表面に立てた法線に対して、前記布地の幅方向に傾斜して配置され、前記画像処理手段は、前記撮影装置で斜めに撮影された画像を透視変換して斜め撮影の歪みを補正する補正手段を備えたものである。
【0024】
前記画像分割手段は、前記布地の進行方向に沿った方向であって等間隔に前記画像の分割を行うものであって、前記布地の模様の繰り返し周期に合わせた区画で前記画像を分割するものである。
【0025】
前記画像フィルタ処理手段は、前記検査対象ブロックの両側に隣接した前記処理対象ブロックの数が異なる複数種類の1次元フィルタであって、前記差分を取るための前記処理対象ブロックが、前記検査対象ブロックに近接している第一のフィルタと、前記差分を取る前記検査対象ブロックが前記処理対象ブロックに対して相対的に離れている第二のフィルタとを備えたものである。
【0026】
前記撮影装置に設けられた照明装置の光軸も、前記布地表面に立てた法線に対して斜めに配置されているものでも良い。
【発明の効果】
【0027】
この発明の布地の欠陥検査方法と装置によれば、種々のパターンの布地においても、欠陥箇所を高感度で、高精度に検査可能である。これにより、自動的に早期に織物編み物の布地の欠陥を検知して製造機械を早期に停止させたりすることが出来、布地の欠陥率を大幅に低減することが出来る。複雑な立体構造を持つ経編ニットに発生する傷を正確に検査することが可能である。
【0028】
特に、この発明の布地の欠陥検査方法と装置は、布地の特徴に着目して、進行方向に合わせたブロック分割を行い後の画像処理を容易且つ正確なものとすることができる。ブロック分割したブロック内の平均輝度値を用いて検査することにより、編み機等の振動による画像のぶれの影響を抑えることができる。さらに、布地の模様に合わせた幅でブロック分割を行い、1つのブロック内に収まる欠陥によるブロック内画像の平均輝度値の変化を顕著にしているので、欠陥検査をより容易且つ正確に行うことができる。
【0029】
互いに逆の性質の2種類のフィルタを用いて画像処理を行うようにしたので、ノイズや機器の写り込みによる誤検知を防止することができる。また、布地の構造的特徴に基づく光透過特性を利用して、撮影装置の斜め配置により、糸が抜けた時の光通過割合を増加させ、欠陥の識別をより正確に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】この発明の一実施形態の布地の欠陥検査方法の撮影方法による効果を比較する概略説明図である。
図2】この実施形態の布地の欠陥検査装置の撮影方法を説明する概略図である。
図3】この実施形態の布地の欠陥検査装置の概略ブロック図である。
図4】この実施形態の布地の欠陥検査装置を示す概略斜視図である。
図5】この実施形態の布地の欠陥検査方法を示すフローチャートである。
図6】この実施形態の布地の欠陥検査方法における布地撮影画像のブロック分割を示す概略図である。
図7】この実施形態の布地の欠陥検査方法に用いる3ブロックフィルタ(a)と、5ブロックフィルタ(b)の2種類のフィルタとその係数の例を説明する図である。
図8】この実施形態の検査対象の編み地を斜めに撮影した画像(a)と、透視変換した画像をフィルタ処理して欠陥検出した結果を示す画像(b)(c)(d)である。
図9】この実施形態の検査対象の他の編み地を斜めに撮影した画像(a)と、透視変換した画像をフィルタ処理して欠陥検出した結果を示す画像(b)(c)(d)である。
図10】この実施形態の布地撮影画像を分割したブロックの相対的位置と画像処理した出力値の相対的な値による欠陥検査結果を示すグラフである。
図11】この実施形態の他の布地撮影画像を分割したブロックの相対的位置と画像処理した出力値の相対的な値による欠陥検査結果を示すグラフである。
図12】この実施形態の編み地を斜めに撮影する場合において、布地の送り方向に撮影装置の光軸を傾斜させた場合の傾斜角度の違いによる検査結果を示す画像である。
図13】この実施形態の編み地を斜めに撮影する場合において、布地の幅方向に撮影装置の光軸を傾斜させた場合の傾斜角度の違いによる検査結果を示す画像である。
図14】この実施形態の布地の欠陥検査方法により検出した値であって、傾斜角度別に、欠陥が存在するブロックとその隣接ブロックとの差分値の絶対値について、撮像装置の光軸を布地の送り方向に傾斜させた場合の傾斜角度と出力値を示すグラフである。
図15】この実施形態の布地の欠陥検査方法により検出した値であって、傾斜角度別に、欠陥が存在するブロックとその隣接ブロックとの差分値の絶対値について、撮像装置の光軸を布地の幅方向に傾斜させた場合の傾斜角度と出力値を示すグラフである。
図16】この実施形態の布地の欠陥検査方法による検出結果を示す画像である。
図17】この実施形態の布地の欠陥検査方法による検出結果を示す画像である。
図18】この発明の布地の欠陥検査方法が適用される編み地の例を示す画像である。
図19】この発明の布地の欠陥検査方法が適用される編み地の例を示す画像である。
図20】この発明の布地の欠陥検査方法が適用される編み地の欠陥例を示す画像である。
図21】この発明の布地の欠陥検査方法が適用される編み地に映る背景の影響を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図19はこの発明の一実施形態を示すもので、検査対象となる布地は図18図19示すような編み物である。この布地16には等間隔に四角形の模様が存在し、四角形の内部は布の生地が薄くなっている。布地16の欠陥には糸抜け、破れ、模様のずれ、毛玉の発生などの欠陥があるが、この実施形態では、スポーツのユニホーム等で多用される経編ニットの糸切れの欠陥を対象とする。発生した欠陥の例は、図20に示すように、欠陥16a,16bが、布地16が送り出される方向に一直線に発生する。ここで、欠陥16a,16bが一度発生すると、編み機を止めて抜けた糸を元の状態に修復するまでは連続して欠陥が発生し続ける。また、欠陥が一定長さ以上発生したまま編まれたニット製品は、それまでの正常に編まれた部位を含めて全て破棄しなければならない。そのため、欠陥が現れた際には直ちに編み機を止めて糸の状態を復旧させる必要がある。また、欠陥の現れ方は2種類存在し、切れた糸の場所によって欠陥の現れ方が変化する。例えば、図19に示す検査対象の布地16は3つのレイヤーによって構成されており、一様の模様となる布地の上に模様を構成するレイヤーが2つ重なっている。
【0032】
一様の模様となる布地16の糸が切れると、図20(a)に示すように、布地16に穴が開くような大きな欠陥が現れ、模様を構成するレイヤーの糸が切れると、図20(b)に示すように、布地の厚さが薄い部分が広がるような欠陥となる。同じレイヤーの糸であれば、どの位置の糸が切れても同じ傾向の欠陥が現れるため、欠陥を検査する際には図20に示す2種類の欠陥が検査できればよい。
【0033】
布地16の厚さが薄い部分が広がる場合の欠陥は、布地16を正面から撮影すると欠陥部分が明瞭に写らないことがある。そのため、この発明の実施形態では、カメラを布地に対して斜めの方向から撮影する。カメラを斜めにして撮影した場合の効果について、その原理を図1(a)、(b)に示す。ここでは布地16の移動方向に対して平行な糸17についてのみ考え、布地16の移動方向に対して垂直な糸17がない部分の断面について考える。また、照明装置15からの光Lはカメラ等の撮影装置14と同一の方向から照射しているものとする。糸17の幅をy、布地16に対して撮影装置14を正面から撮影した場合の糸17同士の隙間をi、撮影装置14を布地16の表面に垂直な線である法線に対して角度θだけ傾けたときの糸17同士の隙間をiとする。このときiの長さは
=icosθ (1)
となることから、0<θ<π/2の場合、i>iが成り立つ。このことから、布地16を撮影装置14の光軸に対して傾けた場合は、図1(b)に示すように、糸17が占める面積に対して隙間の面積が狭くなる。一方、糸17が1本抜けた場合の隙間の増加量はいずれの場合もyとなる。このことから、糸17が抜けた場合に光が糸17に反射せずに通過する割合が相対的に増加することになるため、欠陥部分とそれ以外の部分で輝度の差が明確になる。よって、布地に対して撮影装置14を傾けることにより欠陥の識別が容易になる.
【0034】
この実施形態の検査対象の布地16は、ベースとなる布地16のレイヤーと、模様を構成するレイヤー2つ、計3つのレイヤーからなるため、糸17が抜けると幅方向にも隙間が生じることから、実際に検査を行う際には、図2(a)、(b)に示すように、撮影装置14を布地16の面に垂直な線から布地16の進行方向に角度θαだけ傾け、布地16の幅方向には角度θβだけ傾けた状態で撮影を行う。
【0035】
この実施形態で用いる布地の欠陥検査装置10は、図3図4に示すように、自動的に編成作業を行う編み機12にビデオカメラ等の動画の撮影装置14が水平方向に往復動自在に取り付けられている。撮影装置14は、編み機12の上部に、アーム13を介して図示しない駆動装置に取り付けられ、編み機12の編み針が設けられた布地送出部18の上方に、それより僅かに広い範囲に亘り往復運動可能に設けられている。
【0036】
編み機12は、所定の編み目模様の編み物の布地16を形成するための制御装置20に接続され、制御装置20は、モニタ22を有したコンピュータ24に接続されている。撮影装置14もコンピュータ24に接続され、撮影画像は、A/D変換されて、コンピュータ24内の記憶装置に記録され、コンピュータ24の画像処理手段である画像処理回路やプログラムの画像処理手段により、後述する所定の画像処理が行われる。
【0037】
撮影装置14の光軸は、図2に示すように、布地16の表面に対する法線に対して布地16の送り方向に所定の角度θαだけ傾斜させて配置されている。さらに、布地16の幅方向に対してθβだけ傾斜させて配置されている。撮影装置14の対物レンズの周辺には、リング状に照明装置15が取り付けられ、照明装置15の中心軸も編み地16に対して上記角度θα、θβだけ傾斜している。
【0038】
次に、この発明の一実施形態の布地の欠陥検査方法について説明する。先ず、撮影装置14は、編み地16の表面に対して平行であって、編まれて送り出される方向に対して直角方向に往復動し、例えば撮影装置14がビデオカメラの場合毎秒30枚の画像を撮影する。このとき、編み地16の照明状態は、照明光Lの中心方向が対物レンズの光軸と同軸に、斜め方向に照射する照明装置15により、編み地16の欠陥16aが陰になって、検査しやすくなる。
【0039】
以下、この実施形態の欠陥検査方法について詳しく説明する。まず、位置のずれや機器の写り込みおよび画像のぶれに対応するために、この実施形態では、撮影画像を布地16の模様の繰り返し周期に合わせた幅の一定ブロック毎に分割し、そのブロック内部の輝度情報を利用して欠陥の検査を行う。この欠陥検査の処理の流れを図5に示す。
【0040】
まず、編み機12の稼働開始とともに、欠陥検査を開始し、撮影装置14により製造される編み物の布地16の画像を取り込む(s11)。ここでは、輝度値を利用するため、撮影装置14のカメラは、モノクロカメラを使用する。また、撮影画像は、撮影装置14が傾斜して配置されているので、図8(a)、図9(a)に示すように、遠近感のある透視画像で撮影される。斜めから撮影した画像をそのまま使用すると、布地16の模様が変化して、ブロック分割の範囲設定が困難になることから、この画像を公知の変換処理方法により透視変換し、図8(b)、図9(b)に示すように、正面から撮影した画像と同様の画像にする(s12)。これにより、後の画像処理を容易に行うことができる。透視変換を行う際の4つの基準点の決定は、編み機12へカメラを設置した後に画像を撮影し、布地16の模様を基準に、例えば目視で4点の座標を設定する。
【0041】
ブロックの形状については、布地の欠陥が布の進行方向に一直線に現れることから、図6に示すように、布地16の進行方向に沿った方向に長くなるように等間隔でのブロック分割を行う。ブロック分割の間隔は模様の配置が2列で1つの周期を繰り返しており、欠陥の幅もその周期の幅に近い大きさで発生することが多いことから、この実施形態では布地16の模様の周期と同じ幅とした(s13)。
【0042】
明確な濃淡差が存在する布地16で画像間の差分を取った際の位置のずれや編み機の振動による画像のぶれに対応するため、この実施形態ではブロック内の輝度値の平均値を算出する(s14)。ブロックの大きさを布の模様の周期に合わせていることから、欠陥がない場合は隣接しているブロック同士で平均値に大きな差は発生しない。しかし、欠陥がある場合は、欠陥があるブロックのみ平均輝度値が低くなる。この平均輝度値が低いブロックを、画像処理用のフィルタによって処理し検査する。
【0043】
フィルタは図7に示すように、特性が異なる2種類の1次元フィルタを用いる。これらのフィルタの幅と係数は、この実施形態では、例えば欠陥の存在する画像21枚と欠陥の存在しない画像53枚の計74枚の画像を使用して実験的に得た。
【0044】
図7(a)に示す3ブロックのフィルタによる処理は、直近の前後のブロックを調べるため、布地16の後ろに存在する機器の写り込みが発生しても過剰に反応せず、欠陥が存在する場合は絶対値が大きな負の値が出力される(s15)。しかし、綿埃の付着のようなノイズなどによる局所的な輝度変化が発生した場合にも反応する。一方、図7(b)に示す5ブロックのフィルタによる処理は、広い範囲を調べ、係数の値を欠陥がある場合の平均値の傾向を基に設定しているため、ノイズが存在する場合でも過剰に反応せず、欠陥が存在すると絶対値が大きな負の値が出力される(s16)。しかし、機器の写り込みのように輝度の変化が広範囲にわたって連続で発生する現象が起きた場合にも反応するという特徴がある。
【0045】
このように、2種類のフィルタに逆の性質を持たせて、これら2つのフィルタをブロック内の平均輝度値に対して適用し、両方のフィルタが反応した場合に、そのブロックに欠陥が存在すると判定する(s17)。
【0046】
具体的には、図8(a)、図9(a)に示す透視変換前の画像を透視変換して斜め撮影の影響を無くした後、フィルタにより処理する。図8(b)、図9(b)では、3ブロックのフィルタを用いて画像処理し検査した結果を示し、図8(c)、図9(c)では、5ブロックのフィルタを用いて画像処理し検査した結果を示す。図8(b)、図9(c)に示すように、各3ブロックのフィルタ及び5ブロックのフィルタによる画像処理で、各々欠陥であるとする判定が得られたが、図8(d)、図9(d)に示すように、両方のフィルタによる判定では、同じ箇所で欠陥であるとする判定は出ていない。このときの布地16の位置と平均輝度値を画像処理した出力値は、図10に示すように、3ブロックのフィルタを用いて画像処理した出力値の絶対値が閾値を超えている箇所において、5ブロックのフィルタにより画像処理した出力値の絶対値は、閾値を超えていない。同様に、図11に示すように、5ブロックのフィルタを用いて画像処理した出力値の絶対値が閾値を超えている箇所において、3ブロックのフィルタにより画像処理した出力値の絶対値は、閾値を超えていない。このように、両方のフィルタを編み機の上から撮影した画像に適用すると、ノイズや機器の写り込みに片方のフィルタが反応してももう片方のフィルタで過検査を防ぐことができる。これにより、ノイズや機器の写り込みを誤検出しにくい欠陥検査が可能となる。
【0047】
この実施形態の画像処理では、いずれのフィルタも欠陥部分に対して適用すると、絶対値が大きな負の値を出力することから、閾値は負の値のみを設け、フィルタの出力値が閾値を下回った場合にそのブロックに欠陥が存在すると判定する。フィルタの閾値Thは、フィルタの出力値の絶対値の平均値をAve、フィルタの出力値の絶対値の標準偏差をSD、補正倍率をαとすると、
Th=−(Ave+SD×α) (2)
となる。αは実験より得られた経験値である。閾値Thはフィルタごとに個別に設定する。しかし、欠陥部分が存在する画像を用いて閾値を計算すると標準偏差の値が極めて大きくなり、閾値が過度に大きくなり、欠陥の検査が困難になる。従って、欠陥部分のデータが含まれたフィルタ出力値を閾値計算の対象から外すために、閾値算出の際にフィルタの出力値の絶対値が大きい値を上から数個除外した上で平均値と標準偏差を計算する。
【0048】
具体的には、まず、それぞれのブロックのフィルタ出力値を計算した後に、すべてのブロックの出力値の絶対値を求める。次に、絶対値が大きい値を大きい方から順にあらかじめ設定した規定の数だけ探し出し、同時にその値が算出されたブロックの位置を記録する。そして、ブロック全体のフィルタ出力値の平均値を計算する際に絶対値が大きな値の位置の記録を参照し、計算対象から絶対値が大きい値を計算から除外する。あらかじめ設定した規定数と実験ですべての欠陥パターンを含むサンプルを使用し、0から順に1つずつ除外個数を増やしていき、どの欠陥サンプルに対しても欠陥の検査漏れが無くなった時の値を閾値Thとする。
【0049】
これらの方法により欠陥の検査が可能であるが、蛍光灯のちらつきのような撮影画像全体に及ぶ輝度変化やノイズが発生した場合に、欠陥でない部分を検査することがある。そこで、現在のフレームから数フレーム前までの検査結果を参照し、複数のフレームで欠陥が検査された場合、その布に欠陥が存在すると判断する(s18)。結果を参照するフレーム数と欠陥の存在を判断する閾値は、撮影装置14の移動速度やフレーム数およびブロックの幅を基に定めた一定値とする。
【0050】
この実施形態の布地の欠陥検査方法と装置によれば、編み地16の細かな欠陥を容易に検査することが出来、編み物の欠陥の発生を抑え、編み機12の稼働率の向上につながる。
【0051】
なお、この発明の布地の欠陥検査方法と装置は、上記実施形態に限定されず、画像処理は、他の方法を加えても良く、適宜の処理方法と合わせて、より精度の高い検査を可能にしても良い。また、編み物以外に、織物にも適用することが可能であり、織機に取り付けて織布の欠陥検査に用いることも可能である。
【実施例】
【0052】
次に、この発明の一実施例について以下に説明する。この実施例の動作の流れは次のようになる。図3に示す欠陥検査装置10の制御装置20から編み機12へ動作開始の信号が送られると、編み機12と撮影装置14を保持したアーム13及び図示しない駆動装置が動作する。検査プログラムはコンピュータ24上で動作し、制御装置20を介して編み機12の動作を検知して検査を開始する。撮影装置14は検査開始とともに動作を開始し、撮影装置14で撮影した画像はコンピュータ24に直接送られる。検査プログラムが欠陥を検査した場合、制御装置20を介して編み機12へ停止信号を送り、編み機12とアーム13の動作を停止させる。
【0053】
この実施例では、欠陥が存在する布地のサンプルを使用し、撮影装置のカメラを布地に対して傾けたときに欠陥が明確に見えるようになるかどうかを検証した。サンプルは布地の厚みが薄くなる場合の欠陥が存在するものを使用し、サンプルの正面の位置からカメラを布地の進行方向と幅方向にそれぞれ5度ずつ角度を傾けて撮影を行い、欠陥部分の濃淡差が明確になるかどうかを調べた。実験では傾ける方向は1方向のみとし、布地の進行方向に傾けた場合と、布地の幅方向に傾けた場合の実験は別々に行った。濃淡差の評価については、画像をブロックに分け、ブロック内の輝度値の合計値について欠陥が存在するブロックとその隣接ブロックとの差分をとり、その大きさについて角度ごとに比較を行った。すべての角度で同一の場所の輝度データを使用するために、布地にマーカーを設置し、透視投影の座標をマーカーの中心に設定して変換を行い、輝度値の合計値を算出した。
【0054】
布地の進行方向に、カメラを0度から5度刻みに50度まで傾けた場合の撮影画像を図12に示す。同様に、布地の幅方向にカメラを0度から5度刻みに50度まで傾けた場合の撮影画像を図13に示す。
【0055】
また、角度別の欠陥が存在するブロックと、その隣接ブロックとの差分値の絶対値について、布地の進行方向にカメラを0度から5度刻みに50度まで傾けた場合の結果を図14、布地の幅方向にカメラを0度から5度刻みに50度まで傾けた場合の結果を図15に示す。いずれも0度から25度までの間は値に大きな差は見られないが、布地の進行方向について傾けた場合は、30度以上傾けた場合に差分値が大きくなっている。布の幅方向について傾けた場合は、30度で、0度よりも大きな値が算出されている。以上より、カメラを傾けて布地を撮影した場合の方が、より明確に欠陥を撮影できていることが確認された。
【0056】
次に、工場で使用されている編み機を使用して、実験的にブロックの大きさと閾値を求めた。まず上記実施例の結果を基にして、さらにカメラ傾きは小さいほど射影歪みが少なく、ピクセル解像度の違いも小さくなることを考慮し、θαとθβはともに30度に設定した。
【0057】
次に、編み機で編まれた直後の欠陥のない布をカメラで撮影し、布地の模様を基に透視変換の4点の座標を調べる。このとき、布地の端の方は編む部分と巻き取りのローラーとの間による張力によりゆがみが発生しているため、布地の中央付近を撮影する。そして、4点の座標を使用して透視変換を行った画像から、ブロックの大きさを設定する。この結果から、この実施例では、ブロックの幅は、画像上の18pixelに設定した。
【0058】
最後に、設定した透視変換座標とブロックの幅を使用し、上記2種類のフィルタの閾値の補正倍率と参照するフレームの数と閾値を調べた。生産現場の照明条件下で撮影した多数の欠陥サンプルの画像を使用して閾値や参照フレーム数を調整しながら繰り返し実験を行い、欠陥が検査できる値を調べた。得られた結果は、3ブロックフィルタの補正倍率αは7.0、5ブロックフィルタの補正倍率αは7.0、フィルタの閾値算出の際にデータを除外する数は上位7つ、参照フレーム数は5フレーム、欠陥が存在すると判断するフレーム数の閾値は4フレームであった。
【0059】
これらのパラメータにより、穴が開く欠陥と布地の厚さが薄い部分が広がるような欠陥の両方を検査することができるかどうかを、欠陥のサンプルを使用して実験で確認した。その結果、図16に示すように2種類の欠陥についていずれも検査できていることが確認された。
【0060】
次に、この実施例の検査方法の検査精度と有効性を確認するために、生産現場にある2種類の布を使用して欠陥の検査実験を行った。2種類の布地は、図18図19に示すように、これらの布地は模様の傾向は似ているが、模様の大きさや太さが異なる。画像は工場で使用されている編み機と試作したこの発明の検査システムを使用し、それぞれの布地について1000枚の連続して撮影されたフレーム画像を使用した。図19の布地の画像では欠陥を13回通過し、図18の布の画像では欠陥を9回通過した様子が撮影された。図19の布地のパラメータは、先に求めたものを使用した。図18の布地のパラメータは、3ブロックフィルタの補正倍率αは5.0、5ブロックフィルタの補正倍率αは6.0とし、その他は図19の布地と同様のパラメータとした。
【0061】
実験の結果、いずれの布地についても撮影された欠陥をすべて認識することができ、欠陥部分を正常と判定する誤検査も、正常部分を欠陥と判定する過検査も発生しなかった。このことから、この発明による検査方法は、正確な欠陥認識を行うことができることを確認した。
【0062】
この発明の欠陥検査装置の実用性を確認するため、試作システムを編み機に設置し、実際の生産時に編み機とともに試作システムを稼動させ、長時間の検査を行った。実験は3日間にわたって夜間を含めて布織り機が稼働している間に行い、その間に欠陥が検出された場合に正しく検査を行うことができるかどうか調べた。パラメータは先に求めたものを用いた。
【0063】
実験の結果、3日間で3回欠陥を発生し、いずれについても図17に示すように、欠陥の部分のみを確実に抽出することができた。また、欠陥がない場所についてもノイズを検査せずに正確に判定することができた。
【0064】
この発明の欠陥検査方法により、これまで困難であった明確な濃淡模様が存在する布製品の自動検査を可能にした。また、生産現場で実際に使用されている編み機を使用し、実際の布製品を用いて検査方法のブロックサイズを決定し、欠陥のサンプルを用いて閾値を実験的に求めたところ、実用的なシステムを構築することができた。編み機に試作システムを取り付け、工場が稼動している間に検査を行った結果、欠陥の有無を正確に識別することができた。
【符号の説明】
【0065】
10 欠陥検査装置
12 編み機
14 撮影装置
15 照明装置
16 編み地
16a,16b 欠陥
17 糸
18 布地送出部
20 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21