特許第6150254号(P6150254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6150254-映像表示装置 図000002
  • 特許6150254-映像表示装置 図000003
  • 特許6150254-映像表示装置 図000004
  • 特許6150254-映像表示装置 図000005
  • 特許6150254-映像表示装置 図000006
  • 特許6150254-映像表示装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150254
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20170612BHJP
   G02B 27/48 20060101ALI20170612BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20170612BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   G02B27/01
   G02B27/48
   B60K35/00 A
   G03B21/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-199776(P2013-199776)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-64539(P2015-64539A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 徹
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−164482(JP,A)
【文献】 特開2013−105108(JP,A)
【文献】 特表2009−512896(JP,A)
【文献】 特開2013−130832(JP,A)
【文献】 特開2010−271554(JP,A)
【文献】 特開2014−063063(JP,A)
【文献】 特開2013−156314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 27/48
B60K 35/00
G03B 21/00
G03H 1/22
G09G 3/00 − 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を出射する光源と、
該光源に電力を供給する光源駆動部と、
前記コヒーレント光の光強度を制御する光制御手段と、
前記コヒーレント光から所望の表示画像を生成する画像生成部と、を備え、
前記表示画像の映像を観察者に観察させる映像表示装置であって、
前記画像生成部は、前記コヒーレント光を回折させ映像光とするホログラフィック光学素子と、該ホログラフィック光学素子からの前記映像光を導く光学部材と、を備え、
前記光制御手段は、前記映像光の前記光強度を検出する検出部と、
該検出部の検出結果に基づいて前記光源駆動部の出力電圧を調整する電圧調整部と、
前記出力電圧の出力時間を調整する時間調整部と、を有し、
前記電圧調整部及び前記時間調整部は、前記映像光の前記光強度の検出結果に基づいて、表示される映像の輝度を一定に保持するように前記光源の出力を制御し、前記映像光の前記光強度の検出値が所定の境界値以下の場合、前記時間調整部により前記出力時間を調整することを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
前記光制御手段は、外光の照度を検出する外光検出部を有し、
前記外光検出部により測定された外部照度測定値に基づき、前記電圧調整部と前記時間調整部の少なくとも一方を用いて前記光源の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載の映像表示装置。
【請求項3】
前記光制御手段は、前記光源に流れる電流を制限する電流制限部を有し、
該電流制限部は、予め設定されていた基準電流値以下の電流値となるように、前記光源駆動部を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の映像表示装置。
【請求項4】
前記光源が複数個設けられているとともに、複数個の前記光源に対応して、前記電圧調整部及び前記時間調整部が複数個設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光を用いた映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コヒーレント光、主にレーザ光は、小型、高効率、高い指向性等の特徴を生かし、光記録装置、計測器、プリンタ、医療機器、事務機器等、幅広い分野で応用されてきた。特に、最近では、レーザ光をスクリーンや壁等の投射面に照射して画像を表示する映像表示装置、所謂レーザプロジェクタが、一般的に知られるようになってきた。また、レーザプロジェクタ以外の映像表示装置として、三次元ディスプレイやヘッドマウントディスプレイ(HMD、Head Mounted Display)、ヘッドアップディスプレイ(HUD、Head-Up Display)等へ適用されるようになってきた。
【0003】
上述のヘッドアップディスプレイ(HUD)に適用される映像表示装置の例として、特許文献1では、図6に示すようなヘッドアップディスプレイ装置900が提案されている。図6は、従来例1のヘッドアップディスプレイ装置900を説明する図であって、図6(a)は、ヘッドアップディスプレイ装置900を示す構成図であり、図6(b)は、合成レーザー光発生装置910の構成図である。
【0004】
図6(a)に示すヘッドアップディスプレイ装置900は、合成レーザー光発生装置910と、MEMSスキャナ920と、カラーセンサ930と、透過スクリーン940と、反射部950と、ハウジング960と、ライトセンサ970と、ヘッドアップディスプレイ装置900の電気的な制御を行う制御部980と、を備えて構成されている。また、合成レーザー光発生装置910は、図6(b)に示すように、複数のレーザーダイオード(911r、911g、911b)と、複数のレーザーダイオード(911r、911g、911b)のそれぞれに対応した集光光学系(912r、912g、912b)と、液晶パネル(偏光制御素子)913と、偏光板(偏光部)914と、複数のレーザーダイオード(911r、911g、911b)のそれぞれに対応したダイクロイックミラー(915r、915g、915b)と、を備えている。そして、ヘッドアップディスプレイ装置900は、複数のレーザーダイオード(911r、911g、911b)から生成した車両情報を表す表示画像を運転者に視認させる装置である。
【0005】
そして、運転者に表示画像を視認させる際には、運転者が視認しやすいように、表示画像の輝度を調整する必要があった。従来例のヘッドアップディスプレイ装置900では、調整例1として、算出された輝度目標値に基づき、制御部980の偏光制御部を介し液晶パネル913の偏光角度を調整し、偏光板914の透過率を制御することにより、表示画像の表示輝度を調整している。或いは、調整例2として、外部照度測定値が所定の境界外部照度以上の場合、ライトセンサ970から出力された外部照度測定値から適した表示画像の輝度である輝度目標値を算出し、その算出結果に基づき、制御部980のレーザー光制御部を介し複数のレーザーダイオード(911r、911g、911b)のレーザー光強度を制御することにより、表示画像の表示輝度を調整している。一方、外部照度測定値が所定の境界外部照度未満の場合、算出された輝度目標値に基づき、制御部980の偏光制御部を介し液晶パネル913の偏光角度を調整し、偏光板914の透過率を制御することにより、表示画像の表示輝度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−15738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、調整例1、調整例2のいずれの場合も、偏光板914を用いており、液晶パネル913により偏光角度を調整しているので、細かい輝度の調整が難しく、安定して輝度目標値にするのは難しかった。更に、偏光板914を透過させて光を減じることで、輝度を調節しているので、光の利用効率が必ず落ちてしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するもので、光の利用効率が良く安定した目標輝度が得られる映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明の映像表示装置は、コヒーレント光を出射する光源と、該光源に電力を供給する光源駆動部と、前記コヒーレント光の光強度を制御する光制御手段と、前記コヒーレント光から所望の表示画像を生成する画像生成部と、を備え、前記表示画像の映像を観察者に観察させる映像表示装置であって、 前記画像生成部は、前記コヒーレント光を回折させ映像光とするホログラフィック光学素子と、該ホログラフィック光学素子からの前記映像光を導く光学部材と、を備え、前記光制御手段は、前記映像光の前記光強度を検出する検出部と、該検出部の検出結果に基づいて前記光源駆動部の出力電圧を調整する電圧調整部と、前記出力電圧の出力時間を調整する時間調整部と、を有し、前記電圧調整部及び前記時間調整部は、前記映像光の前記光強度の検出結果に基づいて、表示される映像の輝度を一定に保持するように前記光源の出力を制御し、前記映像光の前記光強度の検出値が所定の境界値以下の場合、前記時間調整部により前記出力時間を調整することを特徴としている。
【0010】
これによれば、本発明の映像表示装置は、出力レベルを細かく分けて調整することができ、所望の目標光強度(輝度)に対して細かく制御することができる。更に、従来例のように偏光板を用いて光強度(輝度)調整をしていないので、出力したコヒーレント光を無駄にすることがない。更に、表示画像に対応して表示画像の輝度調整を随時行うことができる。更に、光強度の検出値が所定の境界値以下の場合、つまり光源が低出力の場合、電圧(電流)を一定にしたまま光源の出力を変えている。このため、この低出力である領域は、電圧(電流)の変化に対する出力の変化が小さく、しかも不安定な変化領域となっているので、この低出力領域において、電圧(電流)値を一定にして、光源の出力を調整することができる。これらのことにより、光の利用効率が良く、目標光強度(輝度)に対して安定して光強度(輝度)を合わせることができる。
【0013】
また、本発明の映像表示装置は、前記光制御手段が、外光の照度を検出する外光検出部を有し、前記外光検出部により測定された外部照度測定値に基づき、前記電圧調整部と前記時間調整部の少なくとも一方を用いて前記光源の出力を制御することを特徴としている。
【0014】
これによれば、外光の明るさの違い、例えば昼と夜等に対応して、光源の出力を調整することができる。このことにより、観察者により視認される映像の明るさをその時の状況に合うように変更することができ、観察者が見やすい映像を提供することができる。
【0015】
また、本発明の映像表示装置は、前記光制御手段が、前記光源に流れる電流を制限する電流制限部を有し、該電流制限部が、予め設定されていた基準電流値以下の電流値となるように、前記光源駆動部を制御することを特徴としている。
【0016】
これによれば、光源の劣化や衝撃による光軸のズレ等により、光源に過剰な電流が流れることを防止できる。このことにより、光源に与えるダメージを低減することができ、光源の寿命を延ばすことができる。
【0017】
また、本発明の映像表示装置は、前記光源が複数個設けられているとともに、複数個の前記光源に対応して、前記電圧調整部及び前記時間調整部が複数個設けられていることを特徴としている。
【0018】
これによれば、光源が複数個設けられているので、観察者により視認される映像の色を複数にすることができ、映像の表現を豊かにすることができる。更に、複数個の光源に対応して電圧調整部及び時間調整部が複数個設けられているので、異なる色で異なる表示画像の面積であっても、それぞれの電圧調整部及び時間調整部によりそれぞれの光源の出力を調整し、表示される映像のそれぞれの光強度(輝度)を一定に保持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の映像表示装置は、出力レベルを細かく分けて調整することができ、所望の目標光強度(輝度)に対して細かく制御することができる。更に、従来例のように偏光板を用いて光強度(輝度)調整をしていないので、出力したコヒーレント光を無駄にすることがない。これらのことにより、光の利用効率が良く、目標光強度(輝度)に対して安定して光強度(輝度)を合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態の映像表示装置を説明する構成図である。
図2】本発明の第1実施形態の映像表示装置に係わる制御系統を説明するブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態の映像表示装置を説明する構成図である。
図4】本発明の第2実施形態の映像表示装置に係わる制御系統を説明するブロック図である。
図5】本発明の第1実施形態の変形例1の映像表示装置に係わる制御系統を説明するブロック図である。
図6】従来例1のヘッドアップディスプレイ装置900を説明する図であって、図6(a)は、ヘッドアップディスプレイ装置900を示す構成図であり、図6(b)は、合成レーザー光発生装置910の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の映像表示装置101を説明する構成図である。図2は、本発明の第1実施形態の映像表示装置101に係わる制御系統を説明するブロック図である。
【0025】
本発明の第1実施形態の映像表示装置101は、図1に示すように、車両に搭載され、ヘッドアップディスプレイ(HUD、Head-Up Display)として、使用される。
【0026】
また、本発明の第1実施形態の映像表示装置101は、図1に示すように、コヒーレント光Lcを出射する光源LDと、光源LDに電力を供給する光源駆動部14と、コヒーレント光Lcから所望の表示画像を生成する画像生成部11と、コヒーレント光Lcの光強度を制御する光制御手段M15と、を備えて構成される。そして、光制御手段M15により光源LDの出力を調整し、その調整された映像光Lfによる映像VMを、フロントガラスFGを通して、観察者STに観察させる(視認させる)ようにしている。
【0027】
映像表示装置101の光源LDは、図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態では、赤色(Red)及び緑色(Green)と2色の光源LD(RLD、GLD)が設けられている。また、詳細に図示はしていないが、赤色(Red)及び緑色(Green)を発光させるために、2種類の半導体レーザ素子を用いている。これにより、半導体レーザ素子を用いているので、高い可干渉性(コヒーレント)を有したコヒーレント光Lcを光源LDから出射させることができる。また、光源LDが複数個設けられているので(本発明の第1実施形態では2個)、観察者STにより視認される映像VMの色を複数にすることができ、映像VMの表現を豊かにすることができる。
【0028】
また、半導体レーザ素子として、例えば、赤色の場合は642nmの波長等の光を出射する素子が好適に用いられ、緑色の場合は515nmの波長等の光を出射する素子が好適に用いられている。なお、本発明の第1実施形態では、高い可干渉性(コヒーレント)を有したコヒーレント光Lcを得るために、半導体レーザ素子を好適に用いたが、これに限るものではない。例えば、ナトリウムランプの光のような単色光をピンホールに通すことによってもコヒーレント光を作ることができ、このような光源を用いても良い。
【0029】
映像表示装置101の光源駆動部14は、オペレーショナル・アンプリファイア(Operational Amplifier)が組み込まれた駆動回路であって、それぞれの光源LD(RLD、GLD)に接続されて、それぞれの光源LD(RLD、GLD)を駆動している。
【0030】
映像表示装置101の画像生成部11は、コヒーレント光Lcを回折させ映像光Lfとするホログラフィック光学素子41と、ホログラフィック光学素子41からの映像光Lfを導く光学部材OPと、を備えて構成される。
【0031】
ホログラフィック光学素子41は、光源LDからのコヒーレント光Lcを回折させ映像光Lfとする機能を有している。具体的には、本発明の第1実施形態では、位相変調方式LCOS(Liquid crystal on silicon)を用いており、この位相変調方式LCOSに書き込まれた「ホログラムパターン」にコヒーレント光Lcが照射されることによって、回折光が発生し、図1に示すフーリエレンズFL1を通して、コヒーレント光である映像光Lfとして出射されている。なお、「ホログラムパターン」には、光の強度と位相が記録されている。
【0032】
また、ホログラフィック光学素子41には、図1に示すように、LCOSドライバ51が接続されており、このLCOSドライバ51は、中央演算処理装置71により作成された「ホログラムパターン」を位相変調方式LCOSに、随時書き込む機能を有している。
【0033】
光学部材OPは、主に、ホログラフィック光学素子41からの映像光Lfを導く光学部品から構成され、本発明の第1実施形態では、図1に示すように、光路を変更する平面ミラー(12、22)と、光を集光またはコリメートする光学レンズ32と、表示画面の表示範囲を規定するスリッタ52と、コヒーレント光である映像光Lfを拡散するディフューザ13と、を有している。他に、光学部材OPには、光源LDからのコヒーレント光Lcを集光またはコリメートする光学レンズ42も有している。
【0034】
スリッタ52は、映像光Lfの照射範囲の殆どを通過させており、この通過した映像光Lfに相当する範囲が、観察者STにより視認される映像VM(図1を参照)の表示範囲、つまり表示画像となる。
【0035】
ディフューザ13は、図1に示すように、スリッタ52の光路の後側に配置され、透過する映像光Lfを拡散している。また、ディフューザ13には、ディフューザ13を駆動する駆動部13dが接続されており、ディフューザ13を回転させている。これにより、コヒーレント光である映像光Lfの指向性を低減させている。このことにより、コヒーレント光に起因するスペックルパターンを低減することができ、観察者STにより視認される映像VMの品質を向上させることができる。ここで言うスペックルパターンとは、高い可干渉性(コヒーレント)を有した光が被照射物体にあたって散乱される際に、被照射物体上の各部分で散乱された散乱光同士が干渉することによって生じる微細な干渉縞のことを言う。なお、本発明の第1実施形態では、ディフューザ13を回転させた構成にしたが、これに限るものではなく、例えば振動させて動かしても良い。
【0036】
平面ミラー(12、22)や光学レンズ32及び光学レンズ42は、一般に使用されている光学部品を用いており、特別な仕様を有するものではない。なお、光学部材OPとして、昼光の悪影響を防止するために、各種フィルタを用い、光路の途中に配置しても良いし、平面ミラー(12、22)の代わりに曲面ミラーを用いても良い。また、図1に示す光学部材OPの組合せのみに限るものではない。
【0037】
映像表示装置101の光制御手段M15は、図1に示すように、光強度を検出する検出部35と、検出部35の検出結果に基づいて光源駆動部14の出力電圧を調整する電圧調整部55と、光源駆動部14の出力電圧の出力時間を調整する時間調整部75と、電圧調整部55及び時間調整部75を制御する制御部95と、を有して構成される。
【0038】
検出部35は、コヒーレント光である映像光Lfの光強度を検出しており、図1に示すように、スリッタ52の近傍に配置され、2個の光源RLD及び光源GLDに対応して、2個の検出部35Rと検出部35Gが設けられている。そして、それぞれの検出部35に照射される映像光Lfに対して、赤色(Red)及び緑色(Green)の色毎に別個に光強度を検出している。この検出部35として、フォトダイオード(PD、Photodiode)を好適に用いている。
【0039】
電圧調整部55は、D/Aコンバーター(Digital to Analog Converter)を有する制御回路からなり、検出部35(35R、35G)の検出結果に基づいて、光源駆動部14の出力電圧を調整している。また、電圧調整部55は、図1に示すように、2個の光源LD(RLD、GLD)に対応して、電圧調整部55R及び電圧調整部55Gが2個の光源LD(RLD、GLD)にそれぞれに光源駆動部14を介して接続されているとともに、電圧調整部55R及び電圧調整部55Gが検出部35R及び検出部35Gのそれぞれに制御部95を介して接続されている。これにより、異なる色で異なる表示画像の面積であっても、それぞれの電圧調整部55(55R、55G)によりそれぞれの光源LDの出力を調整することができる。
【0040】
時間調整部75は、PWM(Pulse Width Modulation)回路を有する制御回路からなり、検出部35(35R、35G)の検出結果に基づいて、光源LDの出力時間を調整している。また、時間調整部75は、図1に示すように、2個の光源LD(RLD、GLD)に対応して、時間調整部75R及び時間調整部75Gが2個の光源LD(RLD、GLD)にそれぞれに光源駆動部14を介して接続されているとともに、時間調整部75R及び時間調整部75Gが検出部35R及び検出部35Gのそれぞれに制御部95を介して接続されている。これにより、異なる色で異なる表示画像の面積であっても、それぞれの時間調整部75(75R、75G)によりそれぞれの光源LDの出力を調整することができる。
【0041】
制御部95は、集積回路(IC、integrated circuit)を用い、主に電圧調整部55及び時間調整部75を制御して、光源LDの出力を調整している。また、この制御部95は、検出部35の検出結果に基づいて光源LDの出力を調整する機能の他に、光源LDの発熱による温度変化に伴う光源LDの出力変化に対しても調整する機能を有している。
【0042】
以上のように構成された映像表示装置101は、図2に示すように、電圧調整部55(55R、55G)と時間調整部75(75R、75G)とを組み合わせて、光源LD(RLD、GLD)の出力を制御し、表示される映像VMの輝度を一定に保持するようにしている。
【0043】
具体的には、例えば、電圧調整部55により、10ビットのA/D変換を用い、電圧を1024段階に調整し、更に、時間調整部75により、パルス幅のデュ−ティ・サイクルを変え、電圧の出力時間を200段階に調整している。これにより、映像表示装置101は、光源LDの出力レベルを細かく分けて調整することができ、所望の目標光強度(輝度)に対して細かく制御することができる。また、映像表示装置101は、従来例のように偏光板914を用いて光強度(輝度)調整をしていないので、出力したコヒーレント光Lcを無駄にすることがなく、光の利用効率が良い。
【0044】
特に、本発明の第1実施形態では、映像表示装置101は、光強度の検出値が所定の境界値以下の場合、例えば最高の光強度に対して10%(これが境界値)以下の場合、時間調整部75により出力時間を調整するようにしている。この光源LDが低出力である、この10%(これが境界値)以下の領域は、電圧(電流)の変化に対する出力の変化が小さく、しかも不安定な変化領域となっているので、この低出力領域において、電圧(電流)値を一定にして、光源LDの出力を調整することができる。このことにより、目標光強度(輝度)に対して安定して光強度(輝度)を合わせることができる。
【0045】
以上のように構成された本発明の第1実施形態の映像表示装置101における、効果について、以下に説明する。
【0046】
本発明の第1実施形態の映像表示装置101は、光源駆動部14の出力電圧を調整する電圧調整部55(55R、55G)と出力電圧の出力時間を調整する時間調整部75(75R、75G)とを組み合わせて、光源LDの出力を制御するので、出力レベルを細かく分けて調整することができる。このため、所望の目標光強度(輝度)に対して細かく制御することができる。更に、従来例のように偏光板914を用いて光強度(輝度)調整をしていないので、出力したコヒーレント光Lcを無駄にすることがない。これらのことにより、光の利用効率が良く、目標光強度(輝度)に対して安定して光強度(輝度)を合わせることができる。
【0047】
また、光強度の検出値が所定の境界値以下の場合、時間調整部75により出力時間を調整するので、つまり光源LDが低出力の場合、電圧(電流)を一定にしたまま光源LDの出力を変えている。このため、この低出力である領域は、電圧(電流)の変化に対する出力の変化が小さく、しかも不安定な変化領域となっているので、この低出力領域において、電圧(電流)値を一定にして、光源LDの出力を調整することができる。このことにより、目標光強度(輝度)に対して安定して光強度(輝度)を合わせることができる。
【0048】
また、光源LDが複数個設けられているので、観察者STにより視認される映像VMの色を複数にすることができ、映像VMの表現を豊かにすることができる。更に、複数個の光源LDに対応して電圧調整部55及び時間調整部75が複数個設けられているので、異なる色で異なる表示画像の面積であっても、それぞれの電圧調整部55及び時間調整部75により、それぞれの光源LDの出力を調整し、表示される映像VMのそれぞれの光強度(輝度)を一定に保持することができる。
【0049】
また、ホログラフィック光学素子41からの映像光Lfの光強度を検出部35(35R、35G)が検出し、電圧調整部55及び時間調整部75が、検出部35の検出結果に基づいて、光源LDの出力を制御するので、表示画像に対応して表示画像の輝度調整を随時行うことができる。このことにより、目標光強度(輝度)に対して正確に光強度(輝度)を合わせることができるとともに、光の利用効率を向上させることができる。
【0050】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態の映像表示装置102を説明する構成図である。図4は、本発明の第2実施形態の映像表示装置102に係わる制御系統を説明するブロック図である。また、第2実施形態の映像表示装置102は、第1実施形態に対し、光制御手段M25が外光検出部27及び電流制限部28を有している構成が異なる。なお、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0051】
本発明の第2実施形態の映像表示装置102は、図3に示すように、本発明の第1実施形態と同様に、車両に搭載され、ヘッドアップディスプレイ(HUD、Head-Up Display)として、使用される。
【0052】
また、本発明の第2実施形態の映像表示装置102は、図3に示すように、コヒーレント光Lcを出射する光源LDと、光源LDに電力を供給する光源駆動部24と、コヒーレント光Lcから所望の表示画像を生成する画像生成部11と、コヒーレント光Lcの光強度を制御する光制御手段M25と、を備えて構成される。そして、光制御手段M25により光源LDの出力を調整し、フロントガラスFGを通して、その調整された映像光Lfによる映像VMを観察者STに観察させる(視認させる)ようにしている。
【0053】
映像表示装置102の光源LDは、図3及び図4に示すように、本発明の第2実施形態では、赤色(Red)及び青色(Blue)と2色の光源LD(RLD、BLD)が設けられている。また、詳細に図示はしていないが、赤色(Red)及び青色(Blue)を発光させるために、2種類の半導体レーザ素子を用いている。また、半導体レーザ素子として、例えば、赤色の場合は642nmの波長等の光を出射する素子が好適に用いられ、青色の場合は445nmの波長等の光を出射する素子が好適に用いられている。
【0054】
映像表示装置102の光源駆動部24は、オペレーショナル・アンプリファイア(Operational Amplifier)が組み込まれた駆動回路であって、それぞれの光源LD(RLD、BLD)に接続されて、それぞれの光源LD(RLD、BLD)を駆動している。
【0055】
映像表示装置102の画像生成部11は、本発明の第1実施形態と同様に、コヒーレント光Lcを回折させ映像光Lfとするホログラフィック光学素子41と、ホログラフィック光学素子41からの映像光Lfを導く光学部材OPと、を備えて構成される。
【0056】
光学部材OPは、主に、ホログラフィック光学素子41からの映像光Lfを導く光学部品から構成され、本発明の第2実施形態では、図3に示すように、光路を変更する平面ミラー(12、22)と、光を集光またはコリメートする光学レンズ32と、表示画面の表示範囲を規定するスリッタ52と、映像光Lfを拡散するディフューザ13と、を有している。他に、光学部材OPには、光源LDからのコヒーレント光Lcを集光またはコリメートする光学レンズ42も有している。
【0057】
映像表示装置102の光制御手段M25は、図3に示すように、光強度を検出する検出部35と、検出部35の検出結果に基づいて光源駆動部24の出力電圧を調整する電圧調整部55と、光源駆動部24の出力電圧の出力時間を調整する時間調整部75と、外光DLの照度を検出する外光検出部27と、光源LDに流れる電流を制限する電流制限部28と、電圧調整部55及び時間調整部75を制御する制御部95と、を有して構成される。
【0058】
検出部35は、映像光Lfの光強度を検出しており、図3に示すように、スリッタ52の近傍に配置され、2個の光源RLD及び光源BLDに対応して、2個の検出部35Rと検出部35Bが設けられている。そして、それぞれの検出部35に照射される映像光Lfに対して、赤色(Red)及び青色(Blue)の色毎に別個に光強度を検出している。この検出部35として、フォトダイオード(PD、Photodiode)を好適に用いている。
【0059】
電圧調整部55は、D/Aコンバーター(Digital to Analog Converter)を有する制御回路からなり、検出部35(35R、35B)の検出結果に基づいて、光源駆動部24の出力電圧を調整している。また、電圧調整部55は、図3に示すように、2個の光源LD(RLD、BLD)に対応して、電圧調整部55R及び電圧調整部55Bが2個の光源LD(RLD、BLD)にそれぞれに光源駆動部24を介して接続されているとともに、電圧調整部55R及び電圧調整部55Bが検出部35R及び検出部35Bのそれぞれに制御部95を介して接続されている。これにより、異なる色で異なる表示画像の面積であっても、それぞれの電圧調整部55(55R、55B)によりそれぞれの光源LD(RLD、BLD)の出力を調整することができる。
【0060】
時間調整部75は、PWM(Pulse Width Modulation)回路を有する制御回路からなり、検出部35(35R、35B)の検出結果に基づいて、光源LDの出力時間を調整している。また、時間調整部75は、図3に示すように、2個の光源LD(RLD、BLD)に対応して、時間調整部75R及び時間調整部75Bが2個の光源LD(RLD、BLD)にそれぞれに光源駆動部24を介して接続されているとともに、時間調整部75R及び時間調整部75Bが検出部35R及び検出部35Bのそれぞれに制御部95を介して接続されている。これにより、異なる色で異なる表示画像の面積であっても、それぞれの時間調整部75(75R、75B)によりそれぞれの光源LDの出力を調整することができる。
【0061】
光制御手段M25の外光検出部27は、フォトダイオード(PD、Photodiode)と電流増幅回路を内蔵した照度センサを用いており、図3に示すように、フロントガラスFGの近傍に配設し、外光DL、ここでは主に昼光(太陽光)の照度を検出している。そして、光制御手段M25は、この外光検出部27により測定された外部照度測定値に基づき、電圧調整部55と時間調整部75の少なくとも一方を用いて、光源LDの出力を制御している。これにより、外光DLの明るさの違い、例えば昼と夜、晴れと曇り、或いはトンネル内外等に対応して、光源LDの出力を調整することができる。このことにより、観察者STにより視認される映像VMの明るさをその時の状況に合うように変更することができ、観察者STが見やすい映像VMを提供することができる。
【0062】
また、図3に示すディフューザ13と平面ミラー22との間に外光検出部27を配設することで、フロントガラスFGから映像表示装置102内に入光して平面ミラー22で反射されディフューザ13に到達された外光DLの照度を検出することができる。これにより、外光DLの影響による映像VMのコントラスト変化に対して、光源LDの出力を微妙に調整することができる。このことにより、観察者STに視認される映像VMのコントラストの補正が可能となり、観察者STがより見やすい映像VMを提供することができる。なお、本発明の第2実施形態の映像表示装置102は、光源駆動部24の出力電圧を調整する電圧調整部55(55R、55B)と出力電圧の出力時間を調整する時間調整部75(75R、75B)とを組み合わせて、光源LDの出力を制御しているので、このような微妙な調整を容易にしている。
【0063】
光制御手段M25の電流制限部28(28R、28B)は、コンパレータ(comparator)を用いており、図3に示すように、それぞれの光源LD(RLD、BLD)を駆動する光源駆動部24にそれぞれ接続されている。そして、予め設定されていた基準電流値以下の電流値となるように、光源駆動部24を制御して、光源LDに流れる電流を制限している。これにより、光源LDの劣化や衝撃による光軸のズレ等により、光源LDに過剰な電流が流れることを防止できる。このことにより、光源LDに与えるダメージを低減することができ、光源LDの寿命を延ばすことができる。
【0064】
以上のように構成された映像表示装置102は、図4に示すように、電圧調整部55(55R、55B)と時間調整部75(75R、75B)とを組み合わせて、光源LD(RLD、BLD)の出力を制御し、表示される映像VMの輝度を一定に保持するようにしている。
【0065】
以上のように構成された本発明の第2実施形態の映像表示装置102における、効果について、以下に説明する。
【0066】
本発明の第2実施形態の映像表示装置102は、光源駆動部24の出力電圧を調整する電圧調整部55(55R、55B)と出力電圧の出力時間を調整する時間調整部75(75R、75B)とを組み合わせて、光源LDの出力を制御するので、出力レベルを細かく分けて調整することができる。このため、所望の目標光強度(輝度)に対して細かく制御することができる。更に、従来例のように偏光板914を用いて光強度(輝度)調整をしていないので、出力したコヒーレント光Lcを無駄にすることがない。これらのことにより、光の利用効率が良く、目標光強度(輝度)に対して安定して光強度(輝度)を合わせることができる。
【0067】
また、外光検出部27により測定された外部照度測定値に基づき、電圧調整部55と時間調整部75の少なくとも一方を用いて、光源LDの出力を制御するので、外光DLの明るさの違い、例えば昼と夜、晴れと曇り、或いはトンネル内外等に対応して、光源LDの出力を調整することができる。このことにより、観察者STにより視認される映像VMの明るさをその時の状況に合うように変更することができ、観察者STが見やすい映像VMを提供することができる。
【0068】
また、光制御手段M25の電流制限部28(28R、28B)が予め設定されていた基準電流値以下の電流値となるように、光源駆動部24を制御するので、光源LDの劣化や衝撃による光軸のズレ等により、光源LDに過剰な電流が流れることを防止できる。このことにより、光源LDに与えるダメージを低減することができ、光源LDの寿命を延ばすことができる。
【0069】
また、光源LDが複数個設けられているので、観察者STにより視認される映像VMの色を複数にすることができ、映像VMの表現を豊かにすることができる。更に、複数個の光源LDに対応して電圧調整部55及び時間調整部75が複数個設けられているので、異なる色で異なる表示画像の面積であっても、それぞれの電圧調整部55及び時間調整部75により、それぞれの光源LDの出力を調整し、表示される映像VMのそれぞれの光強度(輝度)を一定に保持することができる。
【0070】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0071】
<変形例1>
図5は、本発明の第1実施形態の変形例1の映像表示装置C101に係わる制御系統を説明するブロック図である。上記第1実施形態では、2種類の光源LD(RLD、GLD)を用いて構成したが、3種類の光源LD(RLD、GLD、BLD)を用いて構成しても良い。その際には、図5に示すように、3種類の光源LDに対応した検出部C35と電圧調整部C55と時間調整部C75を設けるようにすると良い。
【0072】
<変形例2>
変形例1では、光源LDとして、赤色(Red)、緑色(Green)、青色(Blue)と3色の光源LD(RLD、GLD、BLD)を設けるように好適に構成にしたが、更に、黄色(Yellow)を加えた4色の光源を設ける構成であっても良く、4色以上の光源を設ける構成であっても良い。また、逆に1色の光源を用いる構成であっても良い。
【0073】
<変形例3>
上記第1実施形態では、上記第2実施形態で用いた外光検出部27を用いない構成としたが、照度計が車両に搭載されている場合は、その照度計からの外部照度測定値の情報を映像表示装置101に入力することができる。これにより、外光検出部27を有することにより、上記第2実施形態の映像表示装置102で得られる機能を実現することができる。
【0074】
<変形例4>
上記実施形態では、ディフューザ13をスリッタ52の光路の後側に好適に配置したが、ディフューザ13は、フーリエレンズFL1以降の光路に配置されていれば良い。
【0075】
<変形例5>
上記実施形態では、車両に搭載されたヘッドアップディスプレイ(HUD、Head-Up Display)への適用であったが、これに限るものでなく、例えば、三次元ディスプレイやヘッドマウントディスプレイ(HMD、Head Mounted Display)にも適用可能である。
【0076】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
11 画像生成部
41 ホログラフィック光学素子
14、24 光源駆動部
35、35B、35G、35R、C35 検出部
55、55B、55G、55R、C55 電圧調整部
75、75B、75G、75R、C75 時間調整部
27 外光検出部
28 電流制限部
DL 外光
LD、RLD、GLD、BLD 光源
Lc コヒーレント光
Lf 映像光
M15、M25 光制御手段
OP 光学部材
ST 観察者
VM 映像
101、102、C101 映像表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6