【実施例】
【0060】
実施例1:本発明の第1の実施形態によるミクロポーラス炭素材料の調製。
ステップi)A1)デンプンの乾燥重量に対する乾燥重量として表される25〜50%の範囲のアミロースを含むデンプンから得られるマルトデキストリン、および架橋剤としてのピロメリト酸二無水物を反応させることによる、架橋ポリマーの調製。
ロケットイタリア社(Roquette Italia SpA)からKleptose Linecaps 17として販売され、DE17を有する4.89gのマルトデキストリン(少なくとも一晩100〜120℃にてストーブで乾燥された)を、20mlのジメチルスルホキシドを入れた100mlフラスコ中で連続的に撹拌しながら可溶化した。次いで5mlのトリエチルアミンを加え、数分後、3.76gのピロメリト酸二無水物を加えた。ピロメリト酸二無水物に対するマルトデキストリンの質量比(mass a ratio)は1:0.77であった。最初のマルトデキストリンとピロメリト酸二無水物との間のモル比は、0.57モルのピロメリト酸二無水物に対するマルトデキストリンのグルコース1モルのモル比として表される1:0.57であった(グルコース単位のモル質量は162.145g/ml)。間もなく、網目構造の形成方法により撹拌子の動きが妨げられた。24時間後、反応は終了したと考えられた。翌日、このポリマーを乳鉢ですりつぶし、水流ポンプを用いてブフナー漏斗中の脱イオン水で洗浄した。風乾後、ポリマーをソックスレー抽出器でアセトンを用いて総時間約14時間精製した。
【0061】
ステップii)およびiii)架橋ポリマーの熱分解および結果として起こる冷却
このようにして得られた架橋ポリマーを「1ステップ」で熱分解に供した。架橋ポリマーを窒素流入中(100ml/分)、10℃/分の温度ランプ(ramp)で800℃に加熱した。具体的には、ステップI)により得られた15mgの架橋ポリマーをTGAのためアルミナ板に置き、次いで30℃の窒素流入下で炉に入れ、800℃になるまで10℃/分の計画昇温を施した。次いでこのようにして得られた塊を冷却し、炭素材料を回収した。5.25mgの炭素材料を得た(収率35%)。熱分解方法に続いてTGA解析を行った。
【0062】
実施例2:本発明の第2の実施形態によるミクロポーラス炭素材料の調製。
ステップi)4mlのジメチルスルホキシド(DMSO)および0.9772gのβ−シクロデキストリンを可溶化するまで、撹拌下、ガラスバイアルに加える。次いで1mlのトリエチルアミンを触媒として加えた。
【0063】
数分後、0.7512gのピロメリト酸二無水物を加えた。ピロメリト酸二無水物に対するβ−シクロデキストリンの質量比は1:0.77であった。最初のβ−シクロデキストリンとピロメリト酸二無水物との間のモル比は1:4であった。24時間後、反応は終了したと考えられ、この塊をブフナー漏斗中、脱イオン水、次いでアセトンで洗浄し、こうして1日間乾燥させた。
【0064】
次のステップは、アセトンを用いたソックスレー漏斗の精製であった。抽出は20時間続いた。このようにして得られた架橋ポリマーを乾燥させた。
【0065】
ステップii)およびiii)架橋ポリマーの熱分解および結果として起こる冷却
このようにして得られた架橋ポリマーを「1ステップ」で熱分解に供した。架橋ポリマーを窒素流入中(60ml/分)、10℃/分の温度ランプ(ramp)で800℃に加熱した。具体的には、ステップi)により得られた15mgの架橋ポリマーをTGAのためアルミナ板に置き、次いで30℃の窒素流入下で炉に入れ、800℃になるまで10℃/分の計画昇温を施した。次いでこのようにして得られた塊を冷却し、炭素材料を回収した。4.35mgの炭素材料を得た(収率29%)。熱分解方法に続いてTGA解析を行った。
【0066】
実施例3:本発明の第3の実施形態によるミクロポーラス炭素材料の調製。
ステップi)20mlのジメチルスルホキシド(DMSO)および4.8860gのα−シクロデキストリンを可溶化するまで、撹拌下、ガラスバイアルに加える。次いで5mlのトリエチルアミンを触媒として加えた。
【0067】
数分後、4.3820gのピロメリト酸二無水物を加えた。ピロメリト酸二無水物に対するα−シクロデキストリンの質量比は1:0.90であった。最初のマルトデキストリンとピロメリト酸二無水物との間のモル比は1:4であった。24時間後、反応は終了したと考えられ、この塊をブフナー漏斗中、脱イオン水、次いでアセトンで洗浄し、こうして1日間乾燥させた。
【0068】
次のステップは、アセトンを用いたソックスレー漏斗の精製であった。抽出は14時間続いた。このようにして得られた架橋ポリマーを乾燥させた。
【0069】
ステップii)およびiii)架橋ポリマーの熱分解および結果として起こる冷却
このようにして得られた架橋ポリマーを「1ステップ」で熱分解に供した。架橋ポリマーを窒素流入中(100ml/分)、10℃/分の温度ランプ(ramp)で800℃に加熱した。具体的には、ステップi)により得られた15mgの架橋ポリマーをTGAのためアルミナ板に置き、次いで30℃の窒素流入下で炉に入れ、800℃になるまで10℃/分の計画昇温を施した。次いでこのようにして得られた塊を冷却し、炭素材料を回収した。4.2mgの炭素材料を得た(収率28%)。熱分解方法に続いてTGA解析を行った。
【0070】
実施例4:本発明の第4の実施形態によるミクロポーラス炭素材料の調製。(γ)
ステップi)20mlのジメチルスルホキシド(DMSO)および4.8860gのγ−シクロデキストリンを可溶化するまで、撹拌下、ガラスバイアルに加える。次いで5mlのトリエチルアミンを触媒として加えた。
【0071】
数分後、3.2865gのピロメリト酸二無水物を加えた。ピロメリト酸二無水物に対するγ−シクロデキストリンのモル比は1:0.67であった。最初のマルトデキストリンとピロメリト酸二無水物との間のモル比は1:4であった。24時間後、反応は終了したと考えられ、この塊をブフナー漏斗中、脱イオン水、次いでアセトンで洗浄し、こうして1日間乾燥させた。
【0072】
次のステップは、アセトンを用いたソックスレー漏斗の精製であった。抽出は14時間続いた。このようにして得られた架橋ポリマーを乾燥させた。
【0073】
ステップii)およびiii)架橋ポリマーの熱分解および結果として起こる冷却
このようにして得られた架橋ポリマーを「1ステップ」で熱分解に供した。架橋ポリマーを窒素流入中(100ml/分)、10℃/分の温度ランプ(ramp)で800℃に加熱した。具体的には、ステップi)により得られた15mgの架橋ポリマーをTGAのためアルミナ板に置き、次いで30℃の窒素流入下で炉に入れ、800℃になるまで10℃/分の計画昇温を施した。次いでこのようにして得られた塊を冷却し、炭素材料を回収した。4.43mgの炭素材料を得た(収率29.5%)。熱分解方法に続いてTGA解析を行った。
【0074】
実施例5:最終炭素材料に対するランプ(ramp)温度の作用
本発明の第1の実施形態の実施例1および本発明の第2の実施形態の実施例2に記載したのと同じ成分および同じ手順を、ステップii)において異なる温度のランプ(ramp)、すなわち5℃/分、20℃/分および30℃/分を用いて繰り返した。
【0075】
結果をそれぞれ
図1および
図2に示す。
【0076】
図1および2から明らかなように、どちらの架橋ポリマーも、温度のランプ(ramp)を変化させることによる炭素残渣の量の変化を示さない。
【0077】
実施例6:最終炭素材料に対する熱分解の作用
本発明の第1の実施形態の実施例1および本発明の第2の実施形態の実施例2に記載したのと同じ成分および同じ手順を、ステップii)の熱分解温度を700、800℃および900℃として用いて繰り返した。結果をそれぞれ
図3および
図4に示す。
【0078】
図3および4から明らかなように、どちらの架橋ポリマーも、900℃に達したときに重量の減少を示さず、700℃および800℃での炭素材料の量もよく似ていた。
【0079】
したがって
図3〜4から、熱分解が700〜900℃の範囲で温度で起こり得ることは明らかであった。
【0080】
実施例7:実施例1および実施例2により得られた炭素材料の解析
実施例1のA1)を用いた架橋ポリマーの元素分析では、窒素2.755%、炭素50.204%、水素6.328%および硫黄0.00%、100%の残りが酸素の割合であった。
【0081】
(β−シクロデキストリンを用いた)実施例2のA2)を用いた架橋ポリマーの元素分析は、窒素3.089%、炭素48.941%、水素6.178%および硫黄0.00%、100%の残りが酸素の割合であった。
【0082】
800℃での熱分解後の実施例1のA1)を用いた架橋ポリマーの元素分析は、窒素1.41%、炭素60.24%、水素0.94%および硫黄0.00%を示し、100%の残りが酸素の割合である。
【0083】
800℃での熱分解後の(β−シクロデキストリンを用いた)実施例2のA2)を用いた架橋ポリマーの元素分析では、窒素1.546%、炭素87.270%、水素0.732%および硫黄0.00%、100%の残りが酸素の割合であった。
【0084】
実施例1および2で得られた炭素材料を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)で解析した。写真を
図5a〜5fに示す。得られた炭素材料は、球状を有した。
【0085】
細孔の大きさおよび表面積を判定するため、炭素材料をさらに解析した。
【0086】
具体的には、実施例1および実施例2により調製した炭素材料は、単寸法のミクロポアを示した。
【0087】
上記のように細孔径分布は、自動吸着装置(ASAP 2020)を用いて得られた窒素吸着−脱着等温線で特徴付けた。装置および技術の詳細は、上記に報告する。上記に記載したように、表面積に使用したモデルは、Langmuirモデルである。容積および細孔分布は、DFTモデルを用いて判定する。
【0088】
実施例1によるミクロポーラス炭素材料の結果を
図6に示す。明らかなように、本発明の第1の実施形態による炭素材料のミクロポアの細孔径分布は、7〜8Åの範囲および10〜12Åの範囲に入る。
【0089】
実施例1によるミクロポーラス炭素材料の結果を
図7に示す。明らかなように、本発明の第1の実施形態による炭素材料のミクロポアの細孔径分布は、6〜16Åの範囲に入る。
【0090】
次いで本発明により得られた多孔質炭素材料をIUPACの定義に従い「ミクロポーラス」材料に分類した。
【0091】
上記で説明したように細孔径分布の測定に使用した同じ装置を用いてBET比表面積を算出するため、実施例1および実施例2による炭素材料をさらに試験し、結果を以下の表1に報告する。
【0092】
実施例8:実施例3および実施例4により得られた炭素材料の解析
実施例3および4で得られた炭素材料を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)で解析した。得られた炭素材料は、球状を有した。
【0093】
細孔の大きさおよび表面積を判定するため、炭素材料をさらに解析した。
【0094】
具体的には、実施例3および実施例4により調製した炭素材料は、単寸法のミクロポアを示した。
【0095】
上記のように細孔径分布は、自動吸着装置(ASAP 2020)を用いて得られた窒素吸着−脱着等温線で特徴付けた。装置および技術の詳細は、上記に報告する。上記に記載したように、表面積に使用したモデルは、Langmuirモデルである。容積および細孔分布は、DFTモデルを用いて判定する。
【0096】
実施例3によるミクロポーラス炭素材料の結果を
図14に示す。明らかなように、本発明の第3の実施形態による炭素材料のミクロポアの細孔径分布は、7〜15Åの範囲に入る。
【0097】
実施例4によるミクロポーラス炭素材料の結果を
図15に示す。明らかなように、本発明の第1の実施形態による炭素材料のミクロポアの細孔径分布は、7〜15Åの範囲に入る。
【0098】
次いで本発明により得られた多孔質炭素材料をIUPACの定義に従い「ミクロポーラス」材料に分類した。
【0099】
上記で説明したように細孔径分布の測定に使用した同じ装置を用いてBET比表面積を算出するため、実施例3および実施例4による炭素材料をさらに試験し、結果を以下の表1に報告する。
【0100】
【表1】
【0101】
実施例9:吸収特性
実施例2により得られた炭素材料の吸収特性を、10ppmのメチルオレンジ溶液を用いて検証した。
【0102】
吸収は、異なる時間にUVスペクトルにより評価した。
【0103】
メチルオレンジの吸収を評価した。吸収は、実施例2の50mgの炭素材料を5mlのメチルオレンジの溶液(10ppm)に加えて、メチルオレンジ(ピーク464nm)の濃度のUV−Vis分析(PerkinElmer lambda 15、λ=200〜650nm)により時間について評価した。結果を
図8に図示する。
図8で明らかなように、本発明の材料では7時間後にメチルオレンジの吸収がほぼ終了した。簡単にするため1mgのメチルオレンジを含む100mlの水に加えた1gの炭素材料に正規化すると、メチルオレンジを1時間後に0.79mg、3時間後に0.93mgを吸収することができた。7時間後にすべてのメチルオレンジを吸収した。
【0104】
吸収を評価するため、ドキソルビシン水溶液を用いてこの試験を繰り返した。
【0105】
実施例2により得られた4mgの炭素材料を2mg/mlのドキソルビシン水溶液に懸濁した。負荷容量(loading capacity)は75.29%であった。
【0106】
実施例10:ガスの吸収特性
ガス吸収の評価をマイクロカロリーメーターにより行い、最終測定を30℃の温度で行った。
【0107】
解析中、初期圧力(pi)および外部温度(Ti)を測定した。平衡に達したとき、平衡圧(pe)および平衡温度(Te)を測定した。
【0108】
サンプルごとの吸収量(Na)は、気体の状態方程式(PV=nRT)により算出した。
【0109】
得られた結果についてNaとpeとの関係をプロットした。1グラム当たりの吸収量と平衡圧との吸収等温線を得た。
【0110】
このプロットから、吸収の種類を評価し、よってそれが可逆的または不可逆的であるかどうかを評価することができた。
【0111】
吸収の一部または全部が不可逆的であるかどうかを理解するため、吸収の第1のステップ(第1の吸収)後に脱気ステップを行った。
【0112】
続いて、第2の吸収ステップ(第2の吸収)を行った。
【0113】
得られた2つの吸収等温線が重なる場合、その方法は全部が可逆的である。
【0114】
得られた2つの吸収等温線が異なる場合、その方法は一部が不可逆的である。
【0115】
実施例10a:本発明の第1の実施形態の炭素材料による水の吸収
実施例2の炭素材料で得られた等温線を
図9に示す。
【0116】
図9から明らかなように実施例2の炭素材料の第1の等温線および第2の等温線は重なったため、水の吸収は可逆的であった。
【0117】
実施例10b:本発明の第1の実施形態の炭素材料によるCO
2の吸収
実施例1の炭素材料で得られた等温線を
図10に示す。
【0118】
図10から明らかなように実施例1の炭素材料の第1の等温線、第2の等温線および第3の等温線は重ならなかったため、CO
2の吸収は不可逆的であった。
【0119】
CO
2の第1の吸収の最大吸収は1287μmol/g
サンプルであった。これは461mbarの圧力の56.6mg/g
サンプルに相当する。文献によれば、最良の活性炭素は、大気圧以上で約60mg/gのCO
2を吸収することができる。
【0120】
CO
2の他の2つのイミッション(immission)の最大吸収量について、以下を取得した:
−第2の吸収:355mbarの圧力で39.05mg/g
サンプル。
−第3の吸収:401mbarの圧力で39.39mg/g
サンプル。
【0121】
本試験をさらに窒素を用いて繰り返した。本発明の炭素材料は、このガスを吸収せず、等温線を描くことができなかった。したがって本発明の炭素材料は、CO
2を選択的に吸収し、N
2との相互作用を有さなかった。
【0122】
実施例10c:本発明の第2の実施形態の炭素材料のCO
2の吸収
実施例2の炭素材料で得られた等温線を
図11に示す。
【0123】
図11から明らかなように、実施例2の炭素材料の第1の等温線、第2の等温線および第3の等温線は重なったため、CO2の吸収は可逆的であった。
【0124】
CO
2の第1の吸収の最大吸収は、370mbarの圧力で45.23mg/g
サンプルであった。
【0125】
CO
2の他の2つのイミッション(immission)の最大吸収量について、以下を取得した:
−第2の吸収:345mbarの圧力で45.45mg/g
サンプル。
−第3の吸収:658mbarの圧力で50.07mg/g
サンプル。
【0126】
実施例11:本発明のミクロポーラス炭素材料の安定性
実施例1および実施例2により得られた炭素材料をTGA解析のため窒素下で加熱した。
【0127】
両材料のTGAを
図12に報告する。
【0128】
図12から分かるように、実施例2の炭素材料は650℃で分解し始める一方、実施例1のそれは400℃であった。両材料の重量の減少は低く、実施例2の炭素材料で2%および実施例1の炭素材料で13%であった。
【0129】
実施例12:本発明のミクロポーラス炭素材料の安定性
実施例3および実施例4により得られた炭素材料をTGA解析ため窒素下で加熱した。
【0130】
両材料のTGAを
図13に報告する。
【0131】
図13から分かるように、実施例3の炭素材料は250℃で分解し始める一方、実施例4のそれは245℃であった。両材料の重量の減少は低く、実施例3の炭素材料で28%および実施例4の炭素材料で29%であった。