(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150269
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】再生型燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04119 20160101AFI20170612BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20170612BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20170612BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20170612BHJP
H01M 8/0606 20160101ALI20170612BHJP
H01M 8/18 20060101ALI20170612BHJP
C25B 9/00 20060101ALI20170612BHJP
C25B 1/04 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
H01M8/04 K
H01M8/00 Z
H01M8/04 J
H01M8/10
H01M8/06 R
H01M8/18
C25B9/00 A
C25B1/04
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-219780(P2012-219780)
(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-72150(P2014-72150A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(72)【発明者】
【氏名】曽根 理嗣
【審査官】
武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0166603(US,A1)
【文献】
特開2001−130901(JP,A)
【文献】
特開平06−036785(JP,A)
【文献】
特開平08−037013(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0068544(US,A1)
【文献】
特開2001−338672(JP,A)
【文献】
特開2003−105577(JP,A)
【文献】
特開2010−067454(JP,A)
【文献】
特開2009−138253(JP,A)
【文献】
特開2014−072119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
C01B 3/00−6/34
C25B 1/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子膜とその両側に設けられた電極からなる燃料電池/水電解セルに、発電時には前記高分子膜の一方の側の電極に酸素ガスを供給し、他方の側の電極に水素ガスを供給して発電し、水の電気分解時には、燃料電池/水電解セルにおいて水を電気分解して酸素ガス及び水素ガスを発生させる再生型燃料電池において、
酸素ガスを貯蔵する酸素タンクと、
水素ガスを貯蔵する水素タンクと、
発電時に供給される酸素ガスのうち発電に使用されなかった酸素ガスと、水を貯蔵する第1の貯槽と、
発電時に供給される水素ガスのうち発電に使用されなかった水素ガスと、水を貯蔵する第2の貯槽と、
前記第1の貯槽及び第2の貯槽の少なくとも一方の水の蒸気圧を制御する蒸気圧制御手段と、を備え、
前記燃料電池/水電解セル、酸素タンク、水素タンク、第1の貯槽、第2の貯槽及びこれらを接続する液体及び気体の経路は閉鎖系とされ、前記酸素タンクと第1の貯槽は接続され必要に応じて互いに酸素ガスが行き来できるようにされており、発電時には当該酸素ガスが前記高分子膜の前記一方の側の電極に供給され、前記水素タンクと第2の貯槽は接続され必要に応じて互いに水素ガスが行き来できるようにされており、発電時には当該水素ガスが前記高分子膜の前記他方の側の電極に供給され、
さらに、発電時に、前記酸素タンクと前記燃料電池/水電解セルとを直接つなぐ経路、及び、前記水素タンクと前記燃料電池/水電解セルとを直接つなぐ経路を備え、
前記第1の貯槽と第2の貯槽とは互いに分離されており、
前記蒸気圧制御手段は、少なくとも前記第1の貯槽の温度を可変とすることによって水の蒸気圧を制御しながら、発電時に必要とされる水を前記高分子膜に供給することを特徴とする再生型燃料電池。
【請求項2】
前記高分子膜の酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を計測する差圧ゲージを備え、その計測結果に基づいて、前記第1及び/又は第2の貯槽の液面の位置を変えることにより、前記差圧を所定範囲に抑えることを特徴とする請求項1に記載の再生型燃料電池。
【請求項3】
前記第1の貯槽又は酸素側の経路において酸素ガスの圧力を計測する第1の圧力ゲージ及び前記第2の貯槽又は水素側の経路において水素ガスの圧力を計測する第2の圧力ゲージを備え、前記第1及び第2の圧力ゲージの計測値をもとに前記第1及び/又は第2の貯槽の液面の位置を変えることにより、酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を所定範囲に抑えることを特徴とする請求項1に記載の再生型燃料電池。
【請求項4】
前記高分子膜の酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を計測する差圧ゲージを備え、その計測結果に基づいて、前記第1の貯槽の酸素ガス及び/又は第2の貯槽の水素ガスの圧力を変えることにより、前記差圧を所定範囲に抑えることを特徴とする請求項1に記載の再生型燃料電池。
【請求項5】
前記燃料電池/水電解セルは、燃料電池部と水電解部とが一体とされたものである、請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の再生型燃料電池。
【請求項6】
前記燃料電池/水電解セルは、燃料電池部と水電解部とが別体とされたものである、請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の再生型燃料電池。
【請求項7】
高分子膜とその両側に設けられた電極からなる燃料電池/水電解セルに、発電時には前記高分子膜の一方の側の電極に酸素ガスを供給し、他方の側の電極に水素ガスを供給して発電し、水の電気分解時には、燃料電池/水電解セルにおいて水を電気分解して酸素ガス及び水素ガスを発生させる再生型燃料電池において、
酸素ガスを貯蔵する酸素タンクと、
水素ガスを貯蔵する水素タンクと、
発電時に供給される酸素ガスのうち発電に使用されなかった酸素ガスと、水を貯蔵する貯槽と、
前記貯槽における水の蒸気圧を制御する蒸気圧制御手段と、を備え、
前記燃料電池/水電解セル、酸素タンク、水素タンク、貯槽及びこれらを接続する液体及び気体の経路は閉鎖系とされ、前記酸素タンクと貯槽は接続され必要に応じて互いに酸素ガスが行き来できるようにされており、発電時には、当該酸素ガスが前記高分子膜の前記一方の側の電極に供給されるとともに、前記水素タンクから水素ガスが前記高分子膜の前記他方の側の電極に供給され、
さらに、発電時に、前記酸素タンクと前記燃料電池/水電解セルとを直接つなぐ経路、及び、前記水素タンクと前記燃料電池/水電解セルとを直接つなぐ経路を備え、
前記蒸気圧制御手段は、前記貯槽の温度を可変とすることで水の蒸気圧を制御することによって、発電時に必要とされる水を前記高分子膜に供給することを特徴とする再生型燃料電池。
【請求項8】
さらに、水素ガスと水とを分離し、分離された水素ガスを前記水素タンクに供給する気液分離部を備え、当該気液分離部が前記閉鎖系に組み込まれていることを特徴とする請求項7に記載の再生型燃料電池。
【請求項9】
さらに、酸素ガスと水とを分離する酸素側の気液分離部を備え、当該酸素側の気液分離部が前記閉鎖系に組み込まれていることを特徴とする請求項7又は8に記載の再生型燃料電池。
【請求項10】
前記高分子膜の酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を計測する差圧ゲージを備え、その計測結果に基づいて、前記貯槽の液面の位置を変えることにより、前記差圧を所定範囲に抑えることを特徴とする請求項7乃至9のうちいずれか1項に記載の再生型燃料電池。
【請求項11】
前記高分子膜の酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を計測する差圧ゲージを備え、その計測結果に基づいて、前記貯槽の酸素ガスの圧力を変えることにより、前記差圧を所定範囲に抑えることを特徴とする請求項7乃至9のうちいずれか1項に記載の再生型燃料電池。
【請求項12】
前記第1の貯槽又は酸素側の経路において酸素ガスの圧力を計測する第1の圧力ゲージ及び水素側の前記気液分離部又は水素側の経路において水素ガスの圧力を計測する第2の圧力ゲージを備え、前記第1及び第2の圧力ゲージの計測値をもとに前記第1の貯槽及び/又は水素側の前記気液分離部の液面の位置を変えることにより、酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を所定範囲に抑えることを特徴とする請求項8又は9に記載の再生型燃料電池。
【請求項13】
前記燃料電池/水電解セルは、燃料電池部と水電解部とが一体とされたものである、請求項7乃至12のうちいずれか1項に記載の再生型燃料電池。
【請求項14】
前記燃料電池/水電解セルは、燃料電池部と水電解部とが別体とされたものである、請求項7乃至12のうちいずれか1項に記載の再生型燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素及び酸素使用する、蓄電機能を持たせた再生型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、水素及び酸素を使用する再生型燃料電池の発電作用及び充電(蓄電)作用を説明する図である。
図4(a)は、燃料電池部と水電解部とが別々に設けられたセパレート型と呼ばれるものであり、
図4(b)は、燃料電池部と水電解部とが一体とされた、ユニタイズド型(又は「リバーシブル型」)と呼ばれるものである。
【0003】
図4(a)の燃料電池では、充電(蓄電)時に、水が水電解部において水素ガスと酸素ガスに電気分解される。得られた水素ガス及び酸素ガスは、それぞれのタンクに貯蔵される。発電時には、それぞれのタンクに貯蔵された水素ガスと酸素ガスを燃料電池部で反応させて発電する。その際に得られる水は、専用のタンクに貯蔵される。
図4(b)の燃料電池でも充電(蓄電)時及び発電時の反応は同じであるが、いずれの反応もユニタイズド燃料電池部で行われる点が、
図4(a)の場合と異なる。
【0004】
水を電気分解するときには電極は水分を含んでいる必要があるが発電時には電極は乾いている必要があるため、一般的な再生型燃料電池では、
図4(a)のようなセパレート型が採用されることが多い。一方、例えば宇宙用途のように重量に対して厳しい制約が課せられる場合には、対質量効果の観点から、ユニタイズド型にメリットがある。
【0005】
また、発電時には、電子と分かれた水素イオンを、高分子膜を通して反対側に移送する必要があり、そのためには高分子膜が水分を含んで湿潤している必要がある。かかる要請を満たすために、本願出願人は、酸素ガスと水素ガスとを高分子膜の両側において互いに逆方向に流すことによって高分子膜を適切に湿潤させることができることを提案した(特許文献1)。また、燃料電池部と水電解部とが一体とされた燃料電池の例は、特許文献2及び3にも見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4013218号公報
【特許文献2】特開2006−127807号公報
【特許文献3】特開2007−115588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特に、宇宙用途で燃料電池を使用する場合には、酸素ガス等の資源を外部に排出することなく可能な限り再生して使用したいとの要請がある。また、このようなことが可能になれば、水素ガス、酸素ガス等の無駄な消費を抑えることができるため、宇宙用途に限らず地上でのメリットも大きい。このため、水素ガス、酸素ガス、水を一切外部に排出せずに再使用できるようにした閉鎖系の燃料電池システムが考えられている。その場合には、発電時において高分子膜をどのように湿潤させるかが重要な問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、高分子膜とその両側に設けられた電極からなる燃料電池/水電解セルに、発電時には前記高分子膜の一方の側の電極に酸素ガスを供給し、他方の側の電極に水素ガスを供給して発電し、充電時には、燃料電池/水電解セルにおいて水を電気分解して酸素ガス及び水素ガスを発生させる再生型燃料電池において、酸素ガスを貯蔵する酸素タンクと、水素ガスを貯蔵する水素タンクと、発電時に供給される酸素ガスのうち発電に使用されなかった酸素ガスと、水を貯蔵する第1の貯槽と、発電時に供給される水素ガスのうち発電に使用されなかった水素ガスと、水を貯蔵する第2の貯槽と、前記第1の貯槽及び第2の貯槽の少なくとも一方の水の蒸気圧を制御する蒸気圧制御手段と、を備え、前記燃料電池/水電解セル、酸素タンク、水素タンク、第1の貯槽、第2の貯槽及びこれらを接続する液体及び気体の経路は閉鎖系とされ、前記酸素タンクと第1の貯槽は接続され必要に応じて互いに酸素ガスが行き来できるようにされており、発電時には当該酸素ガスが前記高分子膜の前記一方の側の電極に供給され、前記水素タンクと第2の貯槽は接続され必要に応じて互いに水素ガスが行き来できるようにされており、発電時には当該水素ガスが前記高分子膜の前記他方の側の電極に供給され、前記蒸気圧制御手段によって水の蒸気圧を制御することによって、発電時に必要とされる水を前記高分子膜に供給することを特徴とする。
【0009】
上記発明において、前記蒸気圧制御手段は、前記第1の貯槽又は第2の貯槽の温度を可変とすることによって水の蒸気圧を制御するものとすることができる。
【0010】
上記発明において、前記高分子膜の酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を計測する差圧ゲージを備え、その計測結果に基づいて、前記第1及び/又は第2の貯槽の液面の位置を変えることにより、前記差圧を所定範囲に抑えるようにすることができる。
【0011】
上記発明において、前記第1の貯槽又は酸素側の経路において酸素ガスの圧力を計測する第1の圧力ゲージ及び前記第2の貯槽又は水素側の経路において水素ガスの圧力を計測する第2の圧力ゲージを備え、前記第1及び第2の圧力ゲージの計測値をもとに前記第1及び/又は第2の貯槽の液面の位置を変えることにより、酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を所定範囲に抑えるようにすることができる。
【0012】
上記発明において、前記高分子膜の酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を計測する差圧ゲージを備え、その計測結果に基づいて、前記第1の貯槽の酸素ガス及び/又は第2の貯槽の水素ガスの圧力を変えることにより、前記差圧を所定範囲に抑えるようにすることができる。
【0013】
上記発明において、前記燃料電池/水電解セルは、燃料電池部と水電解部とが一体とされたものとすることができる。
【0014】
上記発明において、前記燃料電池/水電解セルは、燃料電池部と水電解部とが別体とされたものとすることができる。
【0015】
上記の課題を解決するために、第1の発明は、高分子膜とその両側に設けられた電極からなる燃料電池/水電解セルに、発電時には前記高分子膜の一方の側の電極に酸素ガスを供給し、他方の側の電極に水素ガスを供給して発電し、充電時には、燃料電池/水電解セルにおいて水を電気分解して酸素ガス及び水素ガスを発生させる燃料電池において、酸素ガスを貯蔵する酸素タンクと、水素ガスを貯蔵する水素タンクと、発電時に供給される酸素ガスのうち発電に使用されなかった酸素ガスと、水を貯蔵する貯槽と、前記貯槽における水の蒸気圧を制御する蒸気圧制御手段と、を備え、前記燃料電池/水電解セル、酸素タンク、水素タンク、貯槽及びこれらを接続する液体及び気体の経路は閉鎖系とされ、前記酸素タンクと貯槽は接続され必要に応じて互いに酸素ガスが行き来できるようにされており、発電時には、当該酸素ガスが前記高分子膜の前記一方の側の電極に供給されるとともに、前記水素タンクから水素ガスが前記高分子膜の前記他方の側の電極に供給され、前記蒸気圧制御手段によって水の蒸気圧を制御することによって、発電時に必要とされる水を前記高分子膜に供給することを特徴とする。
【0016】
上記発明において、さらに、発電時に供給される水素ガスのうち発電に使用されなかった水素ガスについて、当該水素ガスと水とを分離し、分離された水素ガスを前記水素タンクに供給する気液分離部を備えることができ、ここで、当該気液分離部が前記閉鎖系に組み込まれている。
【0017】
上記発明において、さらに、発電時に供給される酸素ガスのうち発電に使用されなかった酸素ガスについて、当該酸素ガスと水とを分離する酸素側の気液分離部を備えることができ、当該酸素側の気液分離部が前記閉鎖系に組み込まれている。
【0018】
上記発明において、前記蒸気圧制御手段は、前記貯槽の温度を可変とすることによって水の蒸気圧を制御するものとすることができる。
【0019】
上記発明において、前記高分子膜の酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を計測する差圧ゲージを備えることができ、その計測結果に基づいて、前記貯槽の液面の位置を変えることにより、前記差圧を所定範囲に抑えることができる。
【0020】
上記発明において、前記高分子膜の酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を計測する差圧ゲージを備えることができ、その計測結果に基づいて、前記貯槽の酸素ガスの圧力を変えることにより、前記差圧を所定範囲に抑えることができる。
【0021】
上記発明において、前記第1の貯槽又は酸素側の経路において酸素ガスの圧力を計測する第1の圧力ゲージ及び前記気液分離部又は水素側の経路において水素ガスの圧力を計測する第2の圧力ゲージを備えることができ、前記第1及び第2の圧力ゲージの計測値をもとに前記第1及び/又は第2の貯槽の液面の位置を変えることにより、酸素側の酸素ガスと水素側の水素ガスの差圧を所定範囲に抑えることができる。
【0022】
上記発明において、前記燃料電池/水電解セルは、燃料電池部と水電解部とが一体とされたものとすることができる。
【0023】
上記発明において、前記燃料電池/水電解セルは、燃料電池部と水電解部とが別体とされたものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本願発明に係る燃料電池は、前述のように貯槽における水の蒸気圧を制御して適切な水分を高分子膜に供給することができるので、全体を閉鎖系とした状態でも運転を継続できる。また、タンク及び/又は貯槽における圧力を計測する圧力ゲージを備え、その計測結果に基づいて、気液分離部及び/又は水を貯蔵する貯槽の液面高さを制御して気体に体積変化を起こさせることにより、アクティブに高分子膜の両側に発生する差圧を所定範囲に抑えるようにしたことにより、酸素ガスと水素ガスとが混合することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本願発明の実施形態1に係る再生型燃料電池システムの構成を示した図である。
【
図2】本願発明の実施形態2に係る再生型燃料電池システムの構成を示した図である。
【
図3】本願発明の実施形態3に係る再生型燃料電池システムの構成を示した図である。
【
図4】水素及び酸素を使用する再生型燃料電池の発電作用及び充電(蓄電)作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に図面を参照しながら、本願発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、あくまでも本願発明の一実施形態を例示するものであり、本願発明の技術的範囲は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係るユニタイズド再生型燃料電池システムの概略構成を示している。なお、
図1には気体と液体のラインのみが示されており、負荷等の電気的な回路は省略してある。
【0028】
図1の符号10は、ユニタイズド再生型燃料電池システムの中心的役割を果たす燃料電池/水電解スタック(以下、単に「スタック」という。)を示しており、この部分に燃料電池部と水電解部とが一体化されている。スタック10は、多数の燃料電池/水電解セル(以下、単に「セル」という。)を積層した構造とされている。各セルは、高分子膜と、その両側に設けられた電極から構成され、これらが直列に積層されている。各セルの高分子膜としては、例えば15〜225μm程度の薄いイオン交換膜を使用することができ、この高分子膜と各電極との間には反応を促進するための触媒が配置されている。
【0029】
図1を見ると分かるように、左の酸素側と右の水素側がほぼ対称な構成とされている。そして、右の水素側の構成要素のうち左の酸素側に構成要素と対応するものには、同じ符号に記号「’」を付してある。
【0030】
図1において、符号1は酸素タンク、符号1’は水素タンク、符号2は酸素側の貯槽、符号2’は水素側の貯槽を、それぞれ示している。符号1a、1a’、6、6’は、それぞれのタンク又は貯槽におけるガスの圧力を計測するための圧力ゲージ、符号7、7’、9、9’は、ガス(酸素又は水素)又は水を循環させるためのポンプ、符号11は酸素側と水素側の圧力差(差圧)を測定する差圧ゲージを示している。符号4、4’、5b、5b’、9a、9a’は逆止弁を示している。符号3、3’、5a、5a’、8a、8a’、8b、8b’はバルブを示している。そして、12、12’はレギュレータを、13、13’は背圧レギュレータをそれぞれ示している。
【0031】
酸素タンク1及び水素タンク1’には、予め所定圧力の酸素ガス及び水素ガスが収容されている。また、貯槽2には、予め所定圧力の酸素及び所定量の水(液体)が収容されており、貯槽2’には、予め所定圧力の水素及び所定量の水(液体)が収容されている。そして、
図1に示したスタック、酸素タンク、水素タンク、各貯槽及びこれらを接続する液体及び気体の経路は閉鎖系とされており、通常の運転時に、外部からの酸素、水素、水の供給を必要としない。
【0032】
水電解(蓄電)の場合には、各セルの酸素側及び水素側の電極に、酸素側の電極を正、水素側の電極を負とする電圧が印加される。そして、貯槽2から水がポンプ9を経由してスタック10に供給されて、この水が各セルの酸素側の電極において、触媒の作用により酸素ガス(O
2)と水素イオンと電子に電解される。水素イオンは高分子膜を通って水素側へと運ばれ、電気回路を通って水素側の電極へ到達した電子と結合し、水素ガス(H
2)となる。
【0033】
このとき、高分子膜内で水素イオンを水素側へ運ぶ役割をするのは、高分子膜に含まれる水である。したがって、水電解が行われるためには、高分子膜が湿潤したた状態にあることが必要とされる。一方、電解後の酸素ガスと水の混合系は、開とされたバルブ8aを経由して貯槽2に送られる。
図1右側の水素側においても、酸素側の各構成要素に対応する水素側の各構成要素が、酸素側と同様に動作する。
【0034】
燃料電池として使用する発電時には、バルブ3及び8aを閉とした後、バルブ5aを開とし、逆止弁5bを経由して酸素ガスがスタック10に吹き付けられる。水素側の電極では触媒の作用により水素ガスが電子と水素イオンに分離し、水素イオンは高分子膜を通って酸素側に到達する。このときも、高分子膜内で水素イオンを水素側へ運ぶ役割をするのは、高分子膜に含まれる水である。
【0035】
酸素側では、酸素ガスと水素イオン、そして電気回路を通ってきた電子が反応して水が生成される。このとき、反応に寄与しなかった余剰の酸素ガスと反応により生成された水は、開とされたバルブ8bを経由して貯槽2に送られる。貯槽2では酸素ガスと水が分離され、酸素ガスは、ポンプ7、逆止弁4を経由してスタック10へ送り返される。かかる反応が繰り返されることにより、セルの酸素側が正、水素側が負となる起電力が発生し、発電が継続する。発電時にも、
図1右側の水素側の各構成要素は、酸素側の対応する各構成要素と同様に動作する。
【0036】
前述の説明から分かるように、貯槽2は、酸素ガス及び水の気液分離部としての役割も兼ねており、貯槽2’は、水素ガス及び水の気液分離部としての役割も兼ねている。
【0037】
前述のように、発電時には、電子と分かれた水素イオンをセルの酸素側へ運ぶために、高分子膜が十分な量の水分を含んで湿潤された状態にあることが必要である。従来のように、酸素ガスは酸素タンク1からのみ供給し、水素は水素タンク1’からのみ供給する構成とすると、高分子膜が乾燥し、十分な量の水分が維持できなくなるため、外部から高分子膜に水分を供給してやる必要があった。
【0038】
これに対して、
図1に示す本実施形態では、全てを閉鎖系として運転する事を前提としたことにより、貯槽2及び2’に予め液体の水が収容されており、この水を高分子膜に供給するための水として利用する。具体的には、貯槽2及び2’の温度を個別に制御することによって、貯槽において水の蒸気圧を所定の値に設定する。温度を変えるには、加熱する場合にはヒータを、また冷却する場合には冷却装置を使用することができる。また、特に航空宇宙用途においては、周囲の減圧環境を利用し、貯槽の急減圧を行うことにより断熱膨張によって冷却することも可能である。
【0039】
この水の蒸気圧の設定には、圧力ゲージ6及び6’を使用することができる。このそれぞれの貯槽における設定された蒸気圧に基づいてガス化した水を、貯槽2からは酸素ガスと共に、貯槽2’からは水素ガスと共に、スタック10に供給する。このような構成にすることによって、外部から水を供給することなく、高分子膜に含まれる水の量を調節し、高分子膜が適度に湿潤した状態を維持することができる。
【0040】
以上の説明から理解されるように、
図1のユニタイズド再生型燃料電池システムにおいて必要とされる水、酸素ガス、水素ガスは、予め酸素タンク1及び水素タンク1’に収容した酸素ガス及び水素ガス、並びに、予め貯槽2に収容した所定圧力の酸素ガス及び所定量の水、そして、予め貯槽2’に収容した所定圧力の水素ガス及び所定量の水のみによって、賄われている。すなわち、外部から酸素ガス、水素ガス、水を供給することなく蓄電及び発電を継続することが可能である。この意味において、
図1のユニタイズド再生型燃料電池システムは、完全に閉じた閉鎖系(もしくは孤立系)とすることができる。
【0041】
これまでの燃料電池のうち地上用途のものについては、少なくとも酸素ガスについては、空気中の酸素を利用することができるので、水電解によって生成された酸素をタンクに貯蔵して再利用するという要請はあまりなかった。しかし、宇宙用途を考慮した場合にはあらゆる資源を再利用したいという要請があるので、本実施形態のように閉鎖系のシステムは都合がよい。
【0042】
また、上記では、貯槽2及び2’の温度を制御することによって水の蒸気圧を設定する場合について説明したが、例えば貯槽2及び2’の容積/温度を変動させる機構を設けて、例えば断熱膨張や圧縮により容積を制御したり、あるいは温度制御を施すことによって、ガス中に含まれる水蒸気量を設定することもできる。これ以外にも水の蒸気圧を設定する方法として種々の方法が知られており、これらも本願発明の技術的範囲に属するものである。
【0043】
ところで、前述のように、高分子膜としては15〜225μm程度の薄いイオン交換膜が使用されることが多いが、他の種類の膜を使用する場合でも高分子膜は非常に薄いため、高分子膜の両側にかかる圧力の差(差圧)が大きくなると、高分子膜が破れるおそれがある。また、破れないまでも差圧が50KPa程度(大気圧の約半分程度)に達すると、圧力の高い方から圧力の低い方へガスの分子が通り抜けることがある。その結果、水素ガスと酸素ガスとが混じり合い、爆発する危険を伴う。このため、高分子膜の両側の差圧を小さく抑えることが重要となる。
【0044】
高分子膜の両側にかかる差圧の発生を抑える方法の一つとして、
図1の貯槽2及び2’に相当するものの間を連通管でつなぎ、この連通管の途中にベローズを設けたものが提案されている(特開2007−100204号公報参照)。これは、貯槽2及び2’に相当するものの間に圧力の差が生じると、ベローズが圧力に応じて移動し、両側の圧力を均等にするというものである。しかしながら、ベローズに何らかの原因で損傷を受け、穴があくなどすると、やはり酸素ガスと水素ガスが混合して爆発する危険がある。
【0045】
そこで、本実施形態では、各セルの酸素側と水素側における差圧を計測する差圧ゲージ11を設けて、両側の差圧がある一定値を超えたときに、貯槽2及び2’の液面の位置を上下させる制御を行うことにより、酸素側と水素側における差圧を一定値以下に抑える。液面の位置を上下させる具体的な方法としては、例えば、各貯槽2、2’のそれぞれに、バルブを介して予備タンクを接続し、差圧ゲージ11の計測結果に基づいてバルブの開閉を制御して貯槽2、2’の液面を上下に移動させ、これにより高分子膜の両側の差圧を所定の範囲に収まるようにする。このようにすれば、貯槽2と貯槽2’を繋いだ部分で水素ガスと酸素ガスが混ざり合う可能性はまずないので、爆発の危険性を回避することができる。別の方法として、差圧ゲージ11の計測結果に基づいて、貯槽2における酸素ガス又は貯槽2’における水素ガスの一方又は両方の圧力を変えることにより、高分子膜の両側の差圧を所定の範囲に収まるようにすることもできる。またこの差圧制御には、貯槽2および2’に設置された圧力ゲージの読み値を使用し、この差が規定の圧力の差の中に入るように液面を上下に移動させることもできる。
【0046】
さらに、差圧ゲージを設ける代わりに、圧力ゲージ6及び6’の計測結果を利用して上記のような液面制御を行うか、あるいは、酸素ガスの経路及び水素ガスの経路の別の場所に圧力ゲージを設け、これらの計測結果に基づいて上記のような液面制御を行ってもよい。さらに、差圧ゲージとこれらの圧力ゲージの両方を設けることもできる。
【0047】
本願出願人は、特許第4013218号において、発電時に高分子膜の両側に吹き付ける酸素ガスと水素ガスの流れる方向を互いに対向する向きに流す「対向流」とすることによって、効率よく発電させることができる燃料電池を提案した。この燃料電池によれば、高分子膜の酸素側で生成される水が高分子膜に十分に浸透し、水素側において酸素ガスとは逆方向に流れる水素ガスから水素イオンを取り込む効率が高くなり、水素イオンが酸素側に到達しやすくなるためと考えられる。
【0048】
これに対して本実施形態では、全体を閉鎖系として制御することにより、系全体を湿潤した状態に維持し、加えて発電時に、前述のように貯槽2及び2’に収容されている水の蒸気圧を適切に制御することによって、ここから供給される酸素ガス及び水素ガスに適切な湿度を与え、この水分を高分子膜に供給することできる。このため、酸素ガスと水素ガスの流れる向きを前述のような対向流ではなく、同じ向きにした「並行流」にした場合を含めてガスの流れ方に依存すること無く、高分子膜には十分な水が供給され、燃料電池として適正に動作する。
【0049】
[実施形態2]
図2は、本発明の実施形態2に係るユニタイズド再生型燃料電池システムの概略構成を示している。
図2でも、気体と液体のラインのみが示されており、負荷等の電気的な回路は省略してある。
図2の符号20は、ユニタイズド再生型燃料電池システムのスタックを示しており、その構造及び動作は、
図1のスタック10と同様であるため、その詳しい説明は省略する。また、
図2のその他の構成要素についても、
図1と同じ構成要素については同じ記号で示してある。
【0050】
図2において、符号21は酸素タンク、符号21’は水素タンク、符号22は貯槽を、それぞれ示している。貯槽22は、実施形態1の酸素側の貯槽2に相当し、水素側の貯槽は設けられていない。符号21a、21a’、26は、それぞれのタンク又は貯槽におけるガスの圧力を測定するための圧力ゲージである。符号27、29、35は、それぞれに対応するガスあるいは水を循環させるためのポンプを示している。符号31は酸素側と水素側の圧力差(差圧)を測定する差圧ゲージ、符号38は水素側に設けられた気液分離部である。酸素タンク21及び水素タンク21’には、予め所定圧力の酸素ガス及び水素ガスが収容されている。また、貯槽22には、予め所定圧力の酸素ガス及び所定量の水(液体)が収容されている。
【0051】
図2に示す実施形態2のシステムには、実施形態1のシステムとは異なり、水素側に気液分離部38が設けられている。気液分離部38は気体と液体とを分離するための専用の装置であり、実施形態1における気液分離部を兼ねた貯槽2及び2’に比べると、その容積は非常に小さい。
【0052】
水の電解時(蓄電時)には、貯槽22からポンプ29を経由して水がスタック20に供給され、ここで、酸素ガス、水素イオン、電子に電解される。電解によって生成された水素イオンは、高分子膜内の水の作用によって高分子膜を通って水素側へ伝達される。電解によって生成された酸素ガスと水の混合系は、開とされたバルブ28aを経由して貯槽22に送られる。貯槽22では、酸素ガスと水が分離される。酸素ガスは、開とされたバルブ23を経由して酸素タンク21に蓄えられる。
【0053】
一方、水素側の電極では水素イオンと電子によって水素ガスが生成される。スタック20において生成された水素は湿潤された状態で気液分離部38に送られ、ここで水素へガスと水が分離される。分離された水素ガスはバルブ36を経由して水素タンク21’に送られる。気液分離部38に水が貯まった場合には、適宜、バルブ39を開いて貯槽22に戻すことができる。
【0054】
燃料電池として使用する発電時には、バルブ23及び28aを閉とした後、バルブ25aを開とし、逆止弁25bを経由して酸素ガスがスタック20の酸素側の電極に吹き付けられる。水素側の電極では触媒の作用により水素ガスが電子と水素イオンに分離し、水素イオンは高分子膜を通って酸素側に到達する。このときも、水素イオンを水素側へ運ぶ役割をするのは、高分子膜に含まれる水である。
【0055】
酸素側では、酸素ガスと水素イオン、そして電気回路を通ってきた電子が反応して水が生成される。このとき、反応に寄与しなかった余剰の酸素ガスと反応により生成された水は、開とされたバルブ28bを経由して貯槽22に送られる。貯槽22では酸素ガスと水が分離され、酸素ガスは、ポンプ27、逆止弁24を経由してスタック20へ送り返される。かかる反応が繰り返されることにより、セルの酸素側が正、水素側が負となる起電力が発生し、発電が継続する。
【0056】
水素側では、バルブ36を閉じ、バルブ37を開き、さらにバルブ32を開くことにより、逆止弁33’を経由して、水素タンク21’からスタック20に対して水素ガスが供給される。水分を含んだ未反応の水素ガスは、気液分離部38に送られ、ここで水分が除去された後、ポンプ35により昇圧され、逆止弁33を経由して、スタック2に再度供給される。
【0057】
図2に示す実施形態2では、貯槽22に液体の水が収容されており、この水を、発電時において高分子膜を湿潤させるための水として供給する。具体的には、貯槽22の温度を制御することによって、貯槽22において水の蒸気圧を所定の値に設定する。温度を変えるには、加熱する場合にはヒータを、また冷却する場合には冷却装置を使用することができる他、また、特に航空宇宙用途等においては、周囲の減圧環境を利用することにより急減圧を行うことにより、断熱膨張による温度減衰も期待できる等、実施形態1の場合と同様に、種々の方法を用いることができる。このような構成にすることによって、外部から水を一切供給することなく、高分子膜に含まれる水の量を調節し、適切に湿潤した状態を維持することができる点は、実施形態1の場合と同様である。
【0058】
以上の説明から理解されるように、
図2のユニタイズド再生型燃料電池システムにおいて必要とされる水、酸素ガス、水素ガスは、予め酸素タンク21及び水素タンク21’に収容した酸素ガス及び水素ガス、並びに、予め貯槽22に収容した所定圧力の酸素ガス及び所定量の水のみによって賄われている。すなわち、外部から酸素ガス、水素ガス、水を供給しなくても継続して運転することが可能である。この意味において、
図2のユニタイズド再生型燃料電池システムも、実施形態1の場合と同様に、完全に閉じた閉鎖系もしくは孤立系とすることができる。
【0059】
上記では、貯槽22の温度を制御することによって水の蒸気圧を設定する場合について説明したが、その代わりに例えば貯槽22の容積/温度を変動させる機構を設けて、例えば断熱膨張や圧縮により容積を制御したり、温度制御を施すことによって水の蒸気圧を設定するようにしたり、あるいはその他の方法で蒸気圧を設定するようにできることは、実施形態1の場合と同様である。
【0060】
また、本実施形態では、高分子膜の両側にかかる差圧を低く抑える方法として、各セルの酸素側と水素側における差圧を計測する差圧ゲージ31を設けて、両側の差圧がある一定値を超えたときに、貯槽22の液面の位置を上下させる制御を行うことにより、酸素側と水素側における差圧を一定値以下に抑える。実施形態1と同様に、貯槽22にバルブを介して予備タンクを接続し、差圧ゲージ31の計測結果に基づいてバルブの開閉を制御して貯槽22の液面を上下に移動させ、これにより高分子膜の両側の差圧を所定の範囲に収まるようにする。またこの差圧制御には,貯槽22に設置された圧力ゲージの読み値と、気液分離部38の圧力を計測し、これらの差が規定の圧力の差の中に入るように液面を上下に移動させることもできる。
【0061】
さらに、本実施形態でも、前述のように貯槽22に収容されている水の蒸気圧を適切に制御することによって、ここから供給される酸素ガス及び水素ガスに適切な湿度を与え、この水分を高分子膜に供給することできる。なお、気液分離部38は、貯槽22と同様に、温度制御/液面制御等により、温度及び差圧の制御のために使用することも可能である。本実施形態でも、実施形態1の場合と同様に、酸素ガスと水素ガスの流れる向きを前述のような対向流ではなく、同じ向きにした「並行流」にした場合を含め、ガスの流れ方に依存せずに、高分子膜には十分な水が供給され、燃料電池として適正に動作する。さらにまた、上記の構成では気液分離部38を備えていたが、酸素側における水の経路をうまく使ってセルの高分子膜が常に湿潤した状態に維持することができ、酸素側の循環量を制御しつつこれを最適に保ち水素側において余剰の水が生じない場合には、気液分離部38は必ずしも必要ではない。
【0062】
[実施形態3]
図3は、本発明の実施形態3に係るユニタイズド再生型燃料電池システムの概略構成を示しており、これは、
図2に示した実施形態2を変形したものである。実施形態3が実施形態2と異なるのは、気液分離部38と同様の機能をもつ気液分離部38’を酸素側にも設けたことである。酸素側に気液分離部38’を設けることにより、気液分離はこの気液分離部38’において行いつつ、貯槽22において、温度制御/液面制御等により、より精度の高い湿度と差圧の制御のために使用することも可能である。
【0063】
[その他の実施形態]
上記実施形態1〜3では、いずれもスタックをユニタイズド型として説明した。しかしながら、本発明の特徴である、全体を閉鎖系とし、系内を湿潤した環境に維持しつつ、発電時に貯槽における水の蒸気圧を制御して高分子膜に水を供給すること、セルの高分子膜の酸素側と水素側の圧力差を計測しそれに基づいて液面の位置を制御し、当該差圧を所定範囲に抑えることは、燃料電池部と水電解部とが別々に設けられたセパレート型にも適用することが可能であることは、当業者には容易に理解される。