特許第6150293号(P6150293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6150293クリヤー塗料組成物及びこれを用いた補修塗装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150293
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】クリヤー塗料組成物及びこれを用いた補修塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20170612BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170612BHJP
   C09D 101/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   C09D175/04
   C09D7/12
   C09D101/00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-211949(P2013-211949)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-74720(P2015-74720A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】東谷 智章
(72)【発明者】
【氏名】柳口 剛男
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−146177(JP,A)
【文献】 特開2006−152259(JP,A)
【文献】 特開2008−163204(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102952445(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/04
C09D 7/12
C09D 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、セルロース誘導体、ポリイソシアネート化合物及び有機溶剤を含み、
ポリエステルポリオールが、非芳香族ポリカルボン酸と多価アルコールを製造原料とする水酸基価が50〜500mgKOH/g、重量平均分子量が100〜5,000の範囲内にある樹脂であって、
セルロース誘導体の数平均分子量が1000〜100,000の範囲内にあり、
ポリエステルポリオール及びセルロース誘導体の量が、アクリルポリオール100質量部を基準として、ポリエステルポリオールが1〜40質量部、セルロース誘導体が1〜40質量部の範囲内にあることを特徴とするクリヤー塗料組成物。
【請求項2】
アクリルポリオールが、スチレン、脂環式(メタ)アクリレートおよび水酸基含有重合性不飽和モノマーを構成モノマー成分として含有する請求項1に記載のクリヤー塗料組成物。
【請求項3】
ポリエステルポリオールのガラス転移温度が、−50〜40℃の範囲内にある請求項1又は2に記載のクリヤー塗料組成物。
【請求項4】
有機溶剤がその成分の一部としてエステル系有機溶剤と脂肪族炭化水素系有機溶剤を共に含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載のクリヤー塗料組成物。
【請求項5】
被塗面に、着色ベース塗料組成物を塗装し、得られた着色ベース塗膜上に請求項1ないし4のいずれか1項に記載のクリヤー塗料組成物を塗装することを特徴とする補修塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車外板、鉄道車両、産業機器などの金属製品の補修塗装に有用なクリヤー塗料組成物及びこれを用いた補修塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車補修塗装用のクリヤー塗料は、常温乾燥或いは強制乾燥の条件で硬化可能な2成分系塗料が広く用いられている。かかる2成分系塗料は主として有機溶剤系であり、水酸基/イソシアネート硬化系が一般的である。
【0003】
これらの成分は車両等に設けられた補修塗装用着色ベース塗膜上に吹き付ける直前に混合される。この混合物は補修塗装業者が吹き付けなどの塗装作業を容易にすべく、適度に低い粘度のままで、そして、吹き付け後には車両上で可能な限り迅速に硬化する必要がある。
【0004】
一方、近年、低揮発性有機化合物(VOC)、すなわち環境に優しい塗料の開発が求められている。
【0005】
こうしたニーズへの対応策として、水酸基含有樹脂や硬化剤であるポリイソシアネートの低分子量化などの方策が試みられてきた。
【0006】
例えば特許文献1にはモノカルボン酸を製造原料とする特定のポリエステルオリゴマー及びポリイソシアネートを含むコーティング組成物が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には特定のグラフト共重合体、ポリエステルポリオール及びポリイソシアネートを含む塗料組成物が、特許文献3には、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂並びにエステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤から選ばれる少なくとも1種の有機溶剤を含んでなるベース塗料と希釈剤とからなる塗料組成物が記載されている。
【0008】
これら特許文献記載の組成物によれば、低VOCで環境に配慮され、塗装業者が作業しやすい適度な粘度を有することができ、そして仕上がり性に優れた塗膜が得られるものであるが、塗着後の乾燥性(指触乾燥性と記する場合がある)が不十分であり、その改善が必要とされている。
【0009】
【特許文献1】WO2002−098942号パンフレット
【特許文献2】特開2013−95912号公報
【特許文献3】特開2006−152259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、塗装時の作業性が良好であり、仕上がり性に優れ、且つ指触乾燥性に優れたクリヤー塗膜を形成するのに適するクリヤー塗料組成物およびこれを用いた補修塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記した課題に鋭意検討した結果、アクリルポリオールに、特定のポリエステルポリオールと特定のセルロース誘導体を特定量含ませることによって、塗装作業性、指触乾燥性および仕上がり性を満足するクリヤー塗膜が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち本発明は、
アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、セルロース誘導体、ポリイソシアネート化合物及び有機溶剤を含み、
ポリエステルポリオールが、非芳香族ポリカルボン酸と多価アルコールを製造原料とする水酸基価が50〜500mgKOH/g、重量平均分子量が100〜5,000の範囲内にある樹脂であって、
セルロース誘導体の数平均分子量が1000〜100,000の範囲内にあり、
ポリエステルポリオール及びセルロース誘導体の量が、アクリルポリオール100質量部を基準として、ポリエステルポリオールが1〜40質量部、セルロース誘導体が1〜40質量部の範囲内にあることを特徴とするクリヤー塗料組成物、並びに、被塗面に、着色ベース塗料組成物を塗装し、得られた着色ベース塗膜上に該クリヤー塗料組成物を塗装することを特徴とする補修塗装方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクリヤー塗料組成物によれば、塗装作業性が良好であり、光沢と透明感のある仕上がり性と指触乾燥性、研磨性に共に優れたクリヤー塗膜を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に用いられるアクリルポリオールは、従来公知のものを制限なく使用することができ、有機溶剤希釈性を有し、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマーを必須成分として含み、且つ少なくとも1種の(メタ)アクリロイル基モノマーを含む重合性不飽和モノマーの共重合体であることができる。
【0015】
水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン変性体、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖含有(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリロイルモノマー;アリルアルコール等を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0016】
該水酸基含有重合性不飽和モノマーの使用量としては、アクリルポリオール(A)を構成するモノマー成分に基いて5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲内であることが本発明のベース塗料組成物を用いて形成される塗膜の硬度、仕上がり性の点から望ましい。
【0017】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーに共重合される重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐状アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、3−テトラシクロドデシル(メタ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する(メタ)アクリロイルモノマー;;(メタ)アクリル酸;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等のカルボニル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリロイルモノマー;イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のイソシアナト基含有(メタ)アクリロイルモノマー;γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリロイルモノマー;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の酸化硬化性基含有(メタ)アクリロイルモノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
また、(メタ)アクリロイルモノマー以外の共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物;スチレン、α−メチルスチレン等のビニル芳香族化合物;トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に少なくとも2個の重合性不飽和基を有する多ビニル化合物;マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクロレイン、ホルミルスチロール、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等)、アセトアセトキシアリルエステル等のカルボニル基含有重合性不飽和モノマー;アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアナト基含有重合性不飽和モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー;エポキシ基含有重合性不飽和モノマー又は水酸基含有重合性不飽和モノマーと不飽和脂肪酸との反応生成物等の酸化硬化性基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明において上記アクリルポリオールとしては、スチレン、脂環式アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレートを構成モノマー成分として含有することが適している。
【0020】
特にアクリルポリオールを構成するモノマー成分合計量に基づくスチレンの使用量が、5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、脂環式(メタ)アクリレートの使用量が、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、そしてスチレンおよび脂環式アルキル(メタ)アクリレートの合計量が30質量%以上、特に50質量%以上であることが、本発明のクリヤー塗料組成物を用いて形成される塗膜の指触乾燥性、透明性の観点から好適である。
【0021】
本発明において上記アクリルポリオールの重量平均分子量は2,000〜15,000、好ましくは4,000〜10,000の範囲内にあることが、クリヤー塗料組成物の着色ベース塗膜に対するヌレ広がりやすさの点から好適である。
【0022】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値であり、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した数平均分子量をポリスチレンの数平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0023】
また、アクリルポリオールのガラス転移温度としては、40〜100℃、好ましくは60〜90℃の範囲内にあることが本発明のクリヤー塗料組成物を用いて形成される塗膜の硬度の点から好適である。
【0024】
本明細書において、ガラス転移温度(絶対温度)は、下記式により算出される値である。
1/Tg=W/T+W/T+・・・W/T
式中、W、W・・・Wは各モノマーの質量%〔=(各モノマーの配合量/モノマー全質量)×100〕であり、T、T・・・Tは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)である。なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、Polymer Hand Book (4th Edition)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成したものを試料とし、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析「DSC−50Q型」(商品名、島津製作所社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−100℃〜+100℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を使用する。
【0025】
本発明におけるポリエステルポリオールは、非芳香族多塩基酸と多価アルコールを製造原料とするものであり、これらを含む成分を常法に従って縮合反応して得られる。
【0026】
非芳香族多塩基酸としては、脂環族多塩基酸及び脂肪族多塩基酸の総称である。また、脂環族多塩基酸及び脂肪族多塩基酸には、それぞれ飽和及び不飽和のものも含む。
【0027】
非芳香族多塩基酸の具体例には、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の脂環族系多塩基酸、ハイミック酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸等の脂肪族多塩基酸等が挙げられる。
【0028】
多塩基酸に占める非芳香族多塩基酸の使用割合としては多塩基酸全量を基準として、75モル%以上、好ましくは95モル%以上にあることが適している。これにより本発明のクリヤー塗料組成物のヌレ性が向上し、平滑感のあるクリヤー塗膜が得られる効果がある。
【0029】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジメチロールヘプタン、水添ビスフェノールA、ヒドロキシアルキル化ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)ジメチルヒダントイン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、グリセリン、ソルビトール、アニトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
本発明において上記ポリエステルポリオールは、重量平均分子量が100〜5,000の範囲内であり、好ましくは200〜4500の範囲内にあることが好ましい。
【0031】
ポリエステルポリオールの重量平均分子量がこの範囲内にあることによって、仕上がり性に優れたクリヤー塗膜が得られるからである。
【0032】
また、該ポリエステルポリオールの水酸基価としては、50〜500mgKOH/gの範囲内にあり、特に50〜400mgKOH/gの範囲内にあることが、クリヤー塗料組成物のヌレ性とクリヤー塗膜の仕上がり性の点から望ましい。
【0033】
また、ポリエステルポリオールのガラス転移温度としては、−20〜80℃の範囲内、好ましくは5〜50℃の範囲内にあることが好適である。
【0034】
ポリエステルポリオールのガラス転移温度がこの範囲内にあることによって本発明クリヤー塗料組成物から形成されるクリヤー塗膜の指触乾燥性が良好であることができる。
【0035】
ポリエステルポリオール(B)のガラス転移温度は、示差走査型熱分析「DSC−50Q型」(商品名、島津製作所社製)を用いて、試料を測定カップにとり、真空吸引して溶剤を除去した後、3℃/分の昇温速度で−100℃〜+100℃の範囲で熱量変化を測定し、低温側の最初のベースラインの変化点を使用する。
【0036】
本発明においてセルロース誘導体としては、本発明のクリヤー塗料組成物により形成されるクリヤー塗膜の磨き性を向上させるために使用されるものであり、セルロースを構成単位として含有する化合物である。例えば、セルロースの水酸基が脂肪酸や硝酸等の酸によりエステル化したセルロースのエステル化物、該セルロースのエステル化物に重合性不飽和基を導入して得られる重合性不飽和基含有セルロースエステル化物を重合性不飽和モノマーと反応してなる変性セルロースエステル化物等を挙げることができる。
【0037】
セルロースのエステル化物としては例えば、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。これらのうちセルロースアセテートブチレートが好適に使用できる。
【0038】
セルロースアセテートブチレートは、セルロースの部分アセチル化物をさらにブチルエステル化して得られるものであり、具体的には、例えば「CAB−381−0.5」、「CAB−381−0.1」、「CAB−381−2.0」、「CAB−551−0.2」、「CAB−551−0.01」、「CAB−553−0.4」、「CAB−531−1」、「CAB−500−5」、「CAB−321−0.1」、「Solus2100」、「Solus2300」(以上、米国イーストマン ケミカル社製、商品名)などの市販品が例示でき、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
本発明ではセルロースアセテートブチレートの数平均分子量が、1,000〜100,000、特に3,000以上で且つ15,000未満の範囲内にあることが好ましい。この範囲内であると、透明感のある仕上がり性と磨き性を両立するクリヤー塗膜が得られる。
【0040】
本発明のクリヤー塗料組成物に含まれる有機溶剤としては、従来公知の有機溶剤を制限なく使用できるが、指触乾燥性と塗装作業性の両立の観点から、有機溶剤としてエステル系有機溶剤と脂肪族炭化水素系有機溶剤を共に含むことが適している。
【0041】
該有機溶剤におけるエステル系有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸2エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせることができる。
【0042】
脂肪族炭化水素系有機溶剤としては、n−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン等の直鎖状アルカン;2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、3,4−ジエチルヘキサン、2,6−ジメチルオクタン、3,3−ジメチルオクタン、3,5−ジメチルオクタン、4,4−ジメチルオクタン、3−エチル−3−メチルヘプタン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、4−メチルノナン、5−メチルノナン、2−メチルウンデカン、3−メチルウンデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン等の分岐状アルカン;シクロペンタン、t−デカリン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,2−メチルエチルシクロヘキサン、1,3−メチルエチルシクロヘキサン、1,4−メチルエチルシクロヘキサン、1,2,3−トリメチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサンおよび1,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のシクロアルカン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0043】
本発明において、貯蔵段階でのクリヤー塗料組成物に含まれるエステル系有機溶剤及び脂肪族炭化水素系有機溶剤の量としては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール及びセルロース誘導体合計固形分を基準としてエステル系有機溶剤が20〜100質量部、好ましくは30〜90質量部、脂肪族炭化水素系有機溶剤が10〜80質量部、好ましくは30〜70質量部の範囲内が適当である。
【0044】
上記有機溶剤は、クリヤー塗料組成物製造のいずれの段階においても混合することができ、あるいは塗料中に含まれる樹脂の製造において、反応溶媒または希釈溶剤として配合することもできる。
【0045】
本発明のクリヤー塗料組成物は上記アクリルポリオール、ポリエステルポリオールおよびセルロース誘導体を含有してなり、ポリエステルポリオール及びセルロース誘導体の量がアクリルポリオール100質量部を基準として、
ポリエステルポリオールが、1〜40質量部、特に1〜10質量部、
セルロース誘導体が1〜40質量部、特に1〜15質量部の範囲内にあることが適している。
【0046】
ポリエステルポリオールの量が40質量部より多いと、クリヤー塗膜の指触乾燥性が低下することがあり、一方1質量部より少ないと、クリヤー塗料組成物の粘度が高くなり、着色ベースコート塗膜へのヌレ性が低下するので好ましくない。
また、セルロース誘導体の量が40質量部より多いと、クリヤー塗膜の光沢感が低下することがあり、一方1質量部より少なすぎるとクリヤー塗膜の磨き性が低下するから好ましくない。
【0047】
本発明のクリヤー塗料組成物は、必要に応じて有機金属化合物を含有することができる。該有機金属化合物としては、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどが挙げられ、これらは1種または2種以上混合して用いることができる。これらには、さらに必要に応じて第三級アミン、りん酸化合物など公知のウレタン硬化触媒を併用することもできる。
【0048】
上記有機金属化合物を含ませることによって、後述のポリイソシアネート硬化剤を配合した場合などにおいて塗膜の乾燥性を向上させる効果がある。
【0049】
その使用量は、通常、クリヤー塗料組成物中に含まれる樹脂の合計100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.02〜5質量部の範囲内が適当である。
【0050】
本発明のクリヤー塗料組成物は、ポリイソシアネートを含む硬化剤を配合することにより2液型の塗料組成物として供することが適している。この場合、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール及びセルロース誘導体を含む成分と硬化剤成分は使用直前に混合され、必要に応じて希釈シンナーにより塗装に適した粘度に調整され塗装に供されることが望ましい。
【0051】
このような場合に適用可能なポリイソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物が包含され、その具体例としてはヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−(または2,6−)ジイソシアネート、1,3−(または1,4−)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類化合物;これらのジイソシアネート化合物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4´−トルイジンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m−もしくはp−)フェニレンジイソシアネート、4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、3,3´−ジメチル−4,4´−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート化合物;これらのジイソシアネ−ト化合物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4´,4´´−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4´−ジメチルジフェニルメタン−2,2´,5,5´−テトライソシアネートなどの1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物のビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロ−ルプロパン、ヘキサントリオ−ルなどのポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物;これらのウレタン化付加物のビュ−レットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等のポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0052】
ポリイソシアネートを含む硬化剤成分との配合割合は、樹脂中の水酸基に対してイソシアネート基が、NCO/OHの当量比で、通常、0.5〜3.0、好ましくは0.5〜1.8となる範囲内であることが適当である。
【0053】
上記本発明のクリヤー塗料組成物は、さらに必要に応じて、上記以外の樹脂、顔料、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、顔料分散剤などの塗料用添加剤を配合することができる。
【0054】
<塗装>
本発明のクリヤー塗料組成物は、鉄、アルミニウム、真鍮、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Feなどの)めっき鋼板などの金属;これらの金属表面に燐酸塩処理、クロメート処理などの化成処理を施した表面処理金属;プラスチック等の素材に、プライマー及び/又は中塗及び/又は上塗着色ベース及び/又はトップクリヤーを塗装した被塗物の硬化塗膜面又は未硬化塗膜面に塗布され、乾燥性、仕上がり性に優れた塗膜を形成することができる。
【0055】
本発明のクリヤー塗料組成物を例えば補修塗装用クリヤーコートとして使用する場合には、必要に応じて下地調整を行った被塗面に、通常、水性又は溶剤型の液状の補修塗装用着色ベース塗料を塗装し、ついで該ベース塗膜が未硬化の状態で、該ベース塗膜上に補修塗装用クリヤーコートを塗装し乾燥させることによって好適に補修塗膜を形成することができる。
【0056】
また補修塗装用着色ベース塗料を塗装した後、該ベース塗膜を硬化後、該ベース塗膜上に補修塗装用クリヤーコートを塗装し乾燥させてもよい。
【0057】
塗装時には必要に応じて希釈シンナーで塗装に適した粘度に調整してスプレー塗装、静電塗装、ハケ塗装、ローラー塗装等公知の塗装手段で塗装することができるが、塗膜の仕上がり外観の点からスプレー塗装を行うことが好ましい。
【0058】
補修塗装用クリヤーコートの乾燥は例えば20〜100℃、好ましくは40〜100℃の温度条件で、5〜60分間乾燥させることが好ましい。膜厚は、被塗面の状態に応じて適宜調整できるが、一般には乾燥膜厚として、5〜100μm、特に10〜60μmの範囲内が適している。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ここで「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0060】
<アクリルポリオールの製造>
製造例1
温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えたガラス製4つ口フラスコに下記混合溶液1を入れ、撹拌しながら窒素気流下145℃まで昇温した。145℃に達したところで下記混合溶液2を4時間かけて滴下し、さらに滴下終了後145℃の温度に1時間保持した。その後酢酸イソブチル37部で希釈しアクリルポリオール溶液(A−1)を得た。
【0061】
<混合溶液1>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 17部
メチルシクロヘキサン 12部
<混合溶液2>
スチレン 25部
t−ブチルメタクリレート 9部
イソボルニルアクリレート 35部
2−エチルヘキシルアクリレート 3部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 28部
ジ−t−アミルパーオキサイド 5部
得られたアクリルポリオール溶液(A−1)の樹脂固形分は65%であり、樹脂の重量平均分子量は5700、ガラス転移温度78℃、樹脂固形分あたりの水酸基価120.8mgKOH/gであった。
【0062】
製造例2
温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入口を備えたガラス製4つ口フラスコに下記混合溶液1を入れ、撹拌しながら窒素気流下125℃まで昇温した。125℃に達したところで下記混合溶液2を3時間かけて滴下し、さらに滴下終了後125℃の温度に1時間保持した。その後酢酸ブチル37部で希釈しアクリルポリオール溶液(A−2)を得た。
【0063】
<混合溶液1>
酢酸ブチル 30部
<混合溶液2>
スチレン 40部
イソボルニルアクリレート 25部
イソブチルメタクリレート 2部
2−エチルヘキシルアクリレート 5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 28部
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 6.1部
得られたアクリルポリオール溶液(A−2)の樹脂固形分は60%であり、樹脂の重量平均分子量は10000、ガラス転移温度73℃、樹脂固形分あたりの水酸基価120.8mgKOH/gであった。
【0064】
<ポリエステルポリオールの製造>
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌機、加熱装置及び精留塔を具備した反応装置に、下記混合溶液を入れ、攪拌しながら160℃まで昇温し、1時間反応を続けた。次いで、内容物を160℃から230℃まで4時間かけて徐々に昇温し、精留塔を通して生成した縮合水を留去した。230℃で反応を続け、適宜、酸価を測定し、酸価が6以下になったことを確認し、加熱を停止し、精留塔を水分離器と置換し、減圧し水分を留去した。冷却して助剤ろ過を行いポリエステルポリオール(B−1)を得た。
【0065】
<混合溶液>
シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸 103部
1,3−プロパンジオール 76部
得られたポリエステルポリオール(B−1)の樹脂固形分は100%であり、重量平均分子量は400、ガラス転移温度14℃、樹脂固形分あたりの水酸基価290mgKOH/gであった。
【0066】
製造例4
加熱装置、温度計、攪拌機、精留塔および水分離器の付属した還流冷却器を備えた反応器に下記混合溶液を入れ、3時間かけて160℃から230℃まで昇温させた。次いで、内容物を230℃で1時間保ち、生成した縮合水(7.4部)を精留塔を用いて留去させた。次いで酢酸ブチルを5部加え、酢酸ブチルと縮合水を還流させ水分離器を用いて水を取り除いた。酢酸ブチル添加の2時間後から、酸価を測定し始め、酸価が2以下になったところで120℃まで冷却した後、酢酸ブチルで不揮発分70%となるよう希釈し、ポリエステルポリオール溶液(B−2)を得た。
【0067】
<混合溶液>
ヘキサヒドロ無水フタル酸 26.7部
アジピン酸 28部
ネオペンチルグリコ−ル 5.3部
1,6−ヘキサンジオ−ル 40部
得られたポリエステルポリオール溶液(B−2)の樹脂固形分は70%であり、樹脂の重量平均分子量は20,000、ガラス転移温度−60℃、樹脂固形分あたりの水酸基価55mgKOH/gであった。
【0068】
<クリヤー塗料の製造>
実施例1〜11、比較例1〜10
下記表1に示す配合で各成分を混合して各主剤を作成し、硬化剤(注1)を表1にしたがって配合した後、希釈シンナー(注2)により不揮発分が40質量%となるように希釈して、クリヤー塗料を夫々作成した。また、希釈した各クリヤー塗料を、「レタンPGHBエコベース 202 サンメタリック」(商品名、関西ペイント社製自動車補修用溶剤系メタリック塗料)を塗装した工程板上に気温20℃にて乾燥膜厚50μmとなるようにスプレー塗装を行い、各試験塗板を得た。これらについて下記方法、基準にて評価を行った。評価結果を表1にあわせて示す。尚、表中の数値は実配合である。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
<評価基準>
(*1)塗装作業性:スプレー塗装時の塗装感
◎:スプレー直後に塗料が被塗物に均一に濡れ広がり、塗面状態が非常に良好である、
〇:スプレー直後に塗料が被塗物に均一に濡れ広がり、塗面状態が良好である、
△:スプレー直後に塗料が被塗物に若干濡れ広げ難く、塗面状態がやや不良である、
×:スプレー直後に塗料が被塗物に塗り広げ難く、塗面状態が不良である。
(*2)指触乾燥性:上記で得られた希釈した各クリヤー塗料を、温度20℃、湿度50%の恒温恒湿室中で、乾燥膜厚50μmとなるようにスプレーで塗装し、指で触って塗料が指に付かなくなるまでの指触乾燥時間を測った。
◎:乾燥時間10分未満、
○:乾燥時間10分以上且つ15分未満、
△:15以上且つ20分未満、
×:20分以上。
(*3)仕上がり性:各試験塗板の光沢を目視判定した。
◎:光沢が非常にあり良好、
○:光沢良好、
△:光沢に劣る、
×:光沢が非常に低く不良。
(*4)モドリムラ性:上記で得られた希釈した各クリヤー塗料を塗装し、乾燥させた試験塗板の塗膜中におけるアルミの配向状態を目視で観察した。
◎:ムラなし、
○:ムラわずかにあるが実用レベル、
△:ムラ僅かにあり、
×:ムラが著しい。
【0072】
(*5)ミガキ性
電着板に「レタンPGHBエコベース 400 ディープブラック」(商品名、関西ペイント社製自動車補修用溶剤塗料)を乾燥膜厚15μmになるようにスプレー塗装し、さらに上記で得られた各クリヤー塗料を20℃の条件下で、乾燥膜厚が50μmになるようにスプレー塗装した。その後、試験板を電気熱風乾燥器を用いて60℃で30分乾燥して室温まで冷却して試験板を作成した。各試験板を#2000の耐水研磨紙を用いて水研ぎした後、粗磨き用バフに粗磨き用コンパウンドを使って、60秒間ポリッシングし、耐水研磨紙によるペーパーキズの取れ具合を目視評価した。さらに、仕上げ用バフに仕上げ用コンパウンドを使って60秒間ポリッシングし、バフ磨きキズの除去を行い、仕上りを目視で判定した。
◎:ペーパーキズが全くない、
○:ペーパーキズがほとんどない、
△:ペーパーキズが若干残っている、
×:べーパーキズが顕著に残っている。
(注1)硬化剤:マルチ硬化剤標準形、商品名、関西ペイント社製、ポリイソシアネート化合物
(注2)希釈シンナー:関西ペイント社製、レタンPGエコシンナー20、
(注3)「Solus−2100」:商品名、イーストマン ケミカル社製、セルロースアセテートブチレート、数平均分子量5000、
(注4)「CAB551−0.01」:商品名、イーストマン ケミカル社製、セルロースアセテートブチレート、数平均分子量16,000。