【実施例】
【0020】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0021】
実施例1(様態(イ):(ii)の方法)
純水2リットルに、硫酸第一鉄・7水和物100gを添加し、撹拌、溶解して水溶液とした。その後、撹拌を継続して、液温を70℃に昇温し、4800ミリリットル/分の流速で水溶液中に空気を吹き込みながら、7.3重量%の濃度のケイ酸ナトリウム水溶液1170ミリリットルを添加して中和し、酸化率75.4%まで酸化した。酸化後の溶液のpHは、6.0であった。得られた生成物を濾過、洗浄し、恒温乾燥機内で窒素注入しながら60℃の温度で24時間乾燥して、Fe/Si比で1/2.12のケイ素を含む、本発明のセシウム吸着材(試料A)を得た。
【0022】
実施例2(様態(イ):(ii)の方法)
純水2リットルに、硫酸第一鉄・7水和物20gを添加し、撹拌、溶解して水溶液とした。その後、撹拌を継続して、液温を70℃に昇温し、4800ミリリットル/分の流速で水溶液中に空気を吹き込みながら、水酸化アルミニウム5gを添加した後、13.3重量%の濃度のケイ酸ナトリウム水溶液130ミリリットルを添加して中和し、酸化率94.2%まで酸化した。酸化後の溶液のpHは、6.1であった。得られた生成物を、実施例1と同様に、濾過、洗浄、乾燥して、Fe/Si/Al比で1/2.14/0.89のケイ素とアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料B)を得た。
【0023】
実施例3(様態(イ):(ii)の方法)
実施例2において、硫酸第一鉄・7水和物の添加量を100g、水酸化アルミニウムの添加量を10g、ケイ酸ナトリウム水溶液の添加量を674ミリリットルとし、酸化率を68.9%とした以外は、実施例2と同様にして、Fe/Si/Al比で1/2.22/0.36のケイ素及びアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料C)を得た。尚、酸化後の溶液のpHは、6.0であった。
【0024】
実施例4(様態(イ):(ii)の方法)
純水2リットルに、硫酸第一鉄・7水和物100gを添加し、撹拌、溶解して水溶液とした。その後、撹拌を継続して、液温を70℃に昇温し、4800ミリリットル/分の流速で水溶液中に空気を吹き込みながら、水酸化アルミニウム5g、水酸化マグネシウム5gを添加した後、13.3重量%の濃度のケイ酸ナトリウム水溶液545ミリリットルを添加して中和し、酸化率74.8%まで酸化した。酸化後の溶液のpHは、6.0であった。得られた生成物を、実施例1と同様に、濾過、洗浄、乾燥して、Fe/Si/Al/Mg比で1/1.79/0.18/0.24のケイ素、アルミニウム及びマグネシウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料D)を得た。
【0025】
実施例5(様態(イ):(ii)の方法)
実施例3において、空気の吹込みを、アルミニウム化合物、ケイ素化合物の添加後に行い、ケイ酸ナトリウム水溶液の添加量を410ミリリットルとし、酸化率を60.0%とした以外は、実施例3と同様にして、Fe/Si/Al比で1/1.35/0.36のケイ素及びアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料E)を得た。尚、酸化後の溶液のpHは、3.5であった。
【0026】
実施例6(様態(ロ):(iii)の方法)
純水2リットルに、硫酸第一鉄・7水和物100gを添加し、撹拌、溶解して水溶液とした。その後、撹拌を継続して、液温を70℃に昇温し、5重量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH8.0に中和した。次いで、13.3重量%の濃度のケイ酸ナトリウム水溶液100ミリリットルを添加しながら、pHが10.0になった時点から4800ミリリットル/分の流速で水溶液中に空気を吹き込んだ。ケイ酸ナトリウム水溶液を添加後に、9.8重量%の濃度の硫酸を添加し、最終的にpH6.0に中和して、酸化率73.6%まで酸化した。得られた生成物を、実施例1と同様に、濾過、洗浄、乾燥して、Fe/Si比で1/0.33のケイ素を含む、本発明のセシウム吸着材(試料F)を得た。
【0027】
実施例7(様態(ロ):(iii)の方法)
純水2リットルに、硫酸第一鉄・7水和物100gを添加し、撹拌、溶解して水溶液とした。その後、撹拌を継続して、液温を70℃に昇温し、4800ミリリットル/分の流速で水溶液中に空気を吹き込みながら、5重量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH8.0に中和した。次いで、13.3重量%の濃度のケイ酸ナトリウム水溶液79ミリリットルを添加し、pHを10.0とした後、9.8重量%の濃度の硫酸でpH6.0に中和して、酸化率69.8%まで酸化した。得られた生成物を、実施例1と同様に、濾過、洗浄、乾燥して、Fe/Si比で1/0.26のケイ素を含む、本発明のセシウム吸着材(試料G)を得た。
【0028】
実施例8(様態(ロ):(iii)の方法)
実施例6において、硫酸第一鉄・7水和物の中和pHを5.7とし、ケイ酸ナトリウムの添加量を573ミリリットル、酸化率を73.9%とした以外は実施例6と同様にして、Fe/Si比で1/1.88のケイ素を含む、本発明のセシウム吸着材(試料H)を得た。
【0029】
実施例9(様態(ロ):(iii)の方法)
実施例7において、硫酸第一鉄・7水和物の中和pHを5.7とし、ケイ酸ナトリウムの添加量を194ミリリットル、酸化率を85.2%とした以外は実施例7と同様にして、Fe/Si比で1/0.64のケイ素を含む、本発明のセシウム吸着材(試料I)を得た。
【0030】
実施例10(様態(ロ):(iii)の方法)
実施例6において、ケイ酸ナトリウムの添加量を145ミリリットルとし、鉄化合物と中和剤の添加後、ケイ素化合物の添加前に、水酸化アルミニウム0.5gを添加して、酸化率を72.4%とした以外は実施例6と同様にして、Fe/Si/Al比で1/0.48/0.02のケイ素及びアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料J)を得た。
【0031】
実施例11(様態(ロ):(iii)の方法)
実施例7において、ケイ酸ナトリウムの添加量を110ミリリットルとし、鉄化合物と中和剤の添加後、ケイ素化合物の添加前に、水酸化アルミニウム0.5gを添加して、酸化率を71.1%とした以外は実施例6と同様にして、Fe/Si/Al比で1/0.36/0.02のケイ素及びアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料K)を得た。
【0032】
実施例12(様態(イ):(ii)の方法)
硫酸第一鉄を総Fe量として8.67g/リットル含む、硫酸法酸化チタンの製造工程から発生した副生硫酸2リットルを70℃に昇温した。撹拌して、4800ミリリットル/分の流速で副生硫酸中に空気を吹き込みながら、13.3重量%の濃度のケイ酸ナトリウム水溶液750ミリリットルを添加して中和し、酸化率75.7%まで酸化した。酸化後の溶液のpHは、6.0であった。得られた生成物を、実施例1と同様にして、濾過、洗浄し、乾燥して、Fe/Si比で1/2.86のケイ素を含む、本発明のセシウム吸着材(試料L)を得た。
【0033】
実施例13(様態(イ):(ii)の方法)
実施例12において、ケイ酸ナトリウムの添加量を642ミリリットルとし、ケイ素化合物の添加前に、水酸化アルミニウム10gを添加して、酸化率を70.6%とした以外は実施例12と同様にして、Fe/Si/Al比で1/2.45/0.41のケイ素及びアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料M)を得た。
【0034】
実施例14(様態(ロ):(iii)の方法)
硫酸第一鉄を総Fe量として8.67g/リットル含む、硫酸法酸化チタンの製造工程から発生した副生硫酸2リットルを70℃に昇温した。撹拌して、4800ミリリットル/分の流速で副生硫酸中に空気を吹き込みながら、5重量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液を250ミリリットル添加し、水酸化アルミニウム0.5gを添加し、更に100ミリリットルのケイ酸ナトリウムを添加した。その後、5重量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液186ミリリットルを再度添加して、pHを6.0に調整し、酸化率を85.0%とした。得られた生成物を、実施例1と同様にして、濾過、洗浄し、乾燥して、Fe/Si/Al比で1/0.38/0.02のケイ素及びアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料N)を得た。
【0035】
実施例15(様態(ハ):(ii)の方法)
実施例13において、先ず、市販のマグネタイト(Fe
3O
4)6.0gを添加し、次いで、水酸化アルミニウム0.5gを添加した後、626ミリリットルのケイ酸ナトリウムを添加して、酸化率を71.5%とした以外は実施例13同様にして、コア・シェル構造を有し、コア部がマグネタイトであり、シェル部がFe/Si/Al比で1/2.39/0.02のケイ素及びアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料O)を得た。
【0036】
実施例16(様態(イ):(ii)の方法)
硫酸第一鉄を総Fe量として7.65g/リットル含む、硫酸法酸化チタンの製造工程から発生した副生硫酸2リットルを70℃に昇温した。撹拌して、4800ミリリットル/分の流速で副生硫酸中に空気を吹き込みながら、13.3重量%の濃度のケイ酸ナトリウム水溶液920ミリリットルを添加して中和し、酸化率64.5%まで酸化した。酸化後の溶液のpHは、6.01であった。得られた生成物を、実施例1と同様にして、濾過、洗浄し、乾燥して、Fe/Si比で1/3.97のケイ素を含む、本発明のセシウム吸着材(試料P)を得た。
【0037】
実施例17(様態(イ):(ii)の方法)
実施例16において、ケイ酸ナトリウムの添加量を1100ミリリットルとし、ケイ素化合物の添加前に、Al
2O
3として8.1重量%濃度の硫酸アルミニウム水溶液100ミリリットルを添加して、酸化率を65.4%とした以外は実施例16と同様にして、Fe/Si/Al比で1/4.75/0.76のケイ素及びアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料Q)を得た。
【0038】
実施例18(様態(イ):(ii)の方法)
実施例17において、ケイ酸ナトリウム水溶液の添加量を890ミリリットル硫酸アルミニウム溶液の添加量を50ミリリットルとし、酸化率を65.4%とした以外は、実施例17と同様にして、Fe/Si/Al比で1/3.84/0.38のケイ素及びアルミニウムを含む、本発明のセシウム吸着材(試料R)を得た。
【0039】
比較例1
市販のγ−Fe
2O
3を、比較対象のセシウム吸着材(試料S)とした。
【0040】
比較例2
市販のレピドクロサイト鉄酸化物(FeOOH)を、比較対象のセシウム吸着材(試料T)とした。
【0041】
比較例3
Feとして6.7g/リットルの濃度の硫酸第一鉄・7水和物水溶液7リットルを45℃に昇温した。撹拌して、4800ミリリットル/分の流速で溶液中に空気を吹き込みながら、pHが8.5となるように5重量%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和し、酸化率100%まで酸化した後、得られた生成物を、実施例1と同様にして、濾過、洗浄し、乾燥して、比較対象のセシウム吸着材(試料U)とした。
【0042】
実施例1〜18で得られた試料A〜Rの内容を、表1に取り纏めた。
【0043】
【表1】
【0044】
評価1
実施例1〜18、比較例1〜3の試料A〜U各2gを、塩化セシウムを溶解してセシウム濃度を10mg/リットルとした試験液200ミリリットルに加えた。24時間振盪後、遠心分離機を用い、回転数3000rpmで20分間かけて遠心分離した。遠心分離した上澄み液(1)を0.45μmのフィルターでろ過してから、セシウムの濃度を、発光分析装置(Thermo Fisher Schientific社製:iCAP Q ICP−MS)により測定した。
【0045】
評価2
実施例6〜11(試料F〜K)について、評価1を行った後の試料0.5gに純水50ミリリットルを添加し、評価1と同様にして、再度遠心分離し、上澄み液(2)中のセシウムの濃度を測定した。
【0046】
結果を表2に示す。
本発明のセシウム吸着材は、優れたセシウムの吸着能力を有しており、また、一旦、吸着したセシウムは脱離し難く、セシウムが高度に不溶化されていることが判る。
【0047】
【表2】
【0048】
評価3
実施例3、6、12〜15の試料C、F、L〜O各2gを、塩化セシウムを溶解してセシウム濃度を下記表3記載の濃度とし、更にナトリウム濃度が1重量%となるように塩化ナトリウムを添加した試験液200ミリリットルに加えた。評価1と同様にして、セシウムの除去率を算出した。
【0049】
結果を表3に示す。
本発明のセシウム吸着材は、夾雑イオンの存在下でも、十分なセシウムの吸着能力を有していることが判る。
【0050】
【表3】
【0051】
評価4
実施例12〜15の試料L〜Oについて、各10gを、塩化セシウムを溶解してセシウム濃度を1mg/リットルとした試験液1リットルに加えた。評価1と同様にして、セシウム吸着試験を行った。この吸着試験後の試料に純水を加え試験溶液とし、pHをシュウ酸・シュウ酸アンモニウム(シュウ酸とシュウ酸アンモニウム)、水酸化ナトリウムを用いて、それぞれ3.0、12.5に調整した。その後、評価2と同様にして、セシウムの溶出率を算出した。
【0052】
結果を表4に示す。
本発明のセシウム吸着材は、水中でpHを酸性又はアルカリ性に調整することにより、セシウムが容易に脱離することが判る。
【0053】
【表4】