特許第6150314号(P6150314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6150314
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】貨物車両用自動開閉ドア
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/58 20060101AFI20170612BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20170612BHJP
   E05F 15/56 20150101ALI20170612BHJP
   E05F 15/635 20150101ALI20170612BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20170612BHJP
   E05F 15/657 20150101ALI20170612BHJP
   E05F 15/77 20150101ALI20170612BHJP
【FI】
   E05D15/58 A
   B60J5/10 E
   B60J5/10 K
   B60J5/10 A
   E05F15/56
   E05F15/635
   E05F15/643
   E05F15/657
   E05F15/77
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-67755(P2016-67755)
(22)【出願日】2016年3月30日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】596166313
【氏名又は名称】株式会社 いそのボデー
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】特許業務法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 栄治
(72)【発明者】
【氏名】霜鳥 信勝
(72)【発明者】
【氏名】高橋 諒
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−291666(JP,A)
【文献】 特開2003−082919(JP,A)
【文献】 実開昭61−025214(JP,U)
【文献】 実開昭64−041592(JP,U)
【文献】 独国実用新案第202011051834(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/79
E05D 15/58
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物車両(1)の荷物室(2)の開口部(3)に取り付けられた貨物車両用自動開閉ドアであって、
前記開口部(3)の一側縁に、その側縁を回動中心にして水平方向に開くように取り付けられた展開ドア(4)と、
前記展開ドア(4)に、スライド開閉するように取り付けられたスライドドア(5)と、
前記荷物室(2)の開口部(3)に取り付けられた、前記スライドドア(5)をスライド移動させる動作子(6c)を有する開閉駆動部(6)と、
前記動作子(6c)に取り付けられた動作子側係合部(6a)と、
前記スライドドア(5)に取り付けられた、前記動作子側係合部(6a)に着脱自在に係合するスライドドア側係合部(5a)と、を備え、
前記スライドドア(5)と共に前記展開ドア(4)を、前記開口部(3)に閉止した際に、前記動作子側係合部(6a)に前記スライドドア側係合部(5a)が着脱自在に係合するように成り、
前記開閉駆動部(6)の動作子(6c)のスライド移動動作により、前記スライドドア(5)を前記開口部(3)において開放又は閉止し、
前記開閉駆動部(6)が電気的に動作不能状態になったときに、前記スライドドア(5)を手動で動かすことにより、前記動作子(6c)を直線移動させ、該スライドドア(5)を手動でも開閉し得るように構成した、ことを特徴とする貨物車両用自動開閉ドア。
【請求項2】
前記展開ドア(4)は1枚板から成る、ことを特徴とする請求項1の貨物車両用自動開閉ドア。
【請求項3】
前記開閉駆動部(6)は、前記動作子(6c)として機能するラック(17)と、該ラック(17)に噛合してスライド移動させるピニオン(19)とを有する、ことを特徴とする請求項1又は2の貨物車両用自動開閉ドア。
【請求項4】
前記開閉駆動部(6)は、前記動作子(6c)として機能するチェーンと、該チェーンを回動させるスプロケットとを有する、ことを特徴とする請求項1又は2の貨物車両用自動開閉ドア。
【請求項5】
前記開閉駆動部(6)は、前記動作子(6c)として機能するベルトと、該ベルトを回動させるプーリとを有する、ことを特徴とする請求項1又は2の貨物車両用自動開閉ドア。
【請求項6】
前記開閉駆動部(6)は、前記動作子(6c)として機能するピストンと、該ピストンを往復運動させるシリンダとを有する、ことを特徴とする請求項1又は2の貨物車両用自動開閉ドア。
【請求項7】
前記動作子側係合部(6a)は係合穴(6b)を有し、前記スライドドア側係合部(5a)はピンから成り、
前記スライドドア(5)と共に前記展開ドア(4)を、前記開口部(3)に閉止した際に、該動作子側係合部(6a)の係合穴(6b)に、該スライドドア側係合部(5a)のピンを掛け止めるように構成した、ことを特徴とする請求項1、2,3、4、5又は6の貨物車両用自動開閉ドア。
【請求項8】
前記開閉駆動部(6)は前記開口部(3)の上部に取り付けられた、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7の貨物車両用自動開閉ドア。
【請求項9】
前記開閉駆動部(6)は、荷物室(2)の開口部(3)に取り付けた受信部にリモコンスイッチからの信号を受信させて遠隔操作する、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8の貨物車両用自動開閉ドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物車両の箱型の荷物室の開口部において自動開閉するドアに係り、特に開閉ドアを薄型化、軽量化すると共に、そのセキュリティ性とデザイン性を高めた貨物車両用自動開閉ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
長年に渡る国内道路網の整備拡張により、全国的に道路交通網の改善がなされ、国道を利用した長距離輸送が盛んに行われるようになった。宅配サービス事業を担うトラック輸送は、幹線道路に沿って展開された郊外型の大型店舗の増加や、通信販売システムの盛況等も手伝って、その重要性は益々高まる一方である。
【0003】
このような状況の中、実際にトラック輸送に携わる作業者には、一人で貨物車両の運転と荷物の配達という両方の作業を兼ねることによって作業効率を高める努力が求められている。更に、大きさや重さ、形状等の全く異なる様々な形態の荷物について、1〜2名の作業者には多様な人の要求を受け入れて全国何処にでも配送する責任が負わされている。特に都市部では、狭い路地や交通量の多い箇所を走り廻りながら的確に目的地を見つけ出し、人や車の往来の激しい路上に貨物車両を駐車して荷物の積み降ろしを行っていた。極めて困難かつ危険な作業を強いられているのが現状であった。
【0004】
貨物車両を公道に駐車しての配送作業は、走行車両による衝突事故防止等に細心の注意を要する。例えば、狭い場所に貨物車両を駐車して、そのまま荷物を届けている間に、他の車両が扉近くにまで近づいて駐車した場合には、箱型荷物室の観音開き式の後部扉を開け閉めすることができなくなり、または誤って開けた扉を周囲の物に当てるというおそれもあった。
【0005】
特に箱型荷物室が観音開き式の後部扉の場合、両手で荷物を抱えたまま扉の開閉することは極めて困難であり、一旦地上に荷物を置いて扉を開け、再度地上から荷物を担ぎ上げて荷室に運び込むことがあった。強風や雨天、降雪等荒天時には、荷物を濡らす等の弊害がある上、作業者には余計な作業を強いることになって、作業効率を低下させることになった。
【0006】
図11から図16を用いて従来例を説明する。図11図12に示すように、貨物車両51の箱型荷物室52(以下、適宜荷物室ともいう。)の開口部53には、この開口部53の一側縁に、その側縁を回動中心にして水平方向に開くように取り付けた展開ドア54と、この展開ドア54は袋状の構成になり、この中にスライドドア55が出入し、スライド開閉するようにスライドドア55が取り付けられた貨物車両用ドアが提案されている。
【0007】
スライドドア55を開閉するスライド駆動機構56は、図13に示すように、展開ドア54の荷物室52側の下部に設けられている。スライド駆動機構56は、展開ドア54の荷室内側下部に、箱型荷物室52内への突出量を最小限に抑えた薄型の開閉駆動用モータ57と、これによって振り子状に駆動される開閉アーム58とが設けられ、開閉アーム58の先端を、スライドドア55の側壁面に固着された鉛直状のレール59(仮想線表示)に摺動自在に連結したものである。開閉操作スイッチを操作すると、スライドドア55が矢視線方向に開閉するようになっている。このスライド駆動機構56はカバー60で保護されている(図12参照)。
【0008】
展開ドア54外部には、図11に示すように、これを箱型荷物室52の開口部53に開閉自在にロックするロックロッド61が取り付けられている。このロックロッド61は、展開ドア54の下方位置に設けられたロックハンドル62を操作することで、その上下の各先端部61a,61bが開口部53周囲に設けられた係合部63にそれぞれ自在に係合するようになっている。例えば、丸棒材の先端がL字状に曲折した先端部61a,61bを、係合部63のスリットに挟むように構成したものがある。
【0009】
箱型荷物室52内に貨物を搬入する際には、ロックハンドル62を操作して、ロックロッド61を回動させて各先端部61a,61bを、係合部63のスリットから外す。これで、開口部53から展開ドア54をスライドドア55と共に開閉することができる。貨物を搬入した後、又は搬送中はこのロックハンドル62を操作して、各係合部63に各先端部61a,61bを係合させる。
【0010】
このようにロックロッド61が、スライドドア55と共に展開ドア54を開口部53に強固に閉止しているので、貨物車両51の走行の際に、展開ドア54がスライドドア55と共に不用意に開くことを防止している。このロックロッド61方式のロック装置は、展開ドア54をその上下位置で、強固に固定する方式であるために、従来から使用されている。特に観音開き方式のドアに良く使用されているロック装置である。
【0011】
一方、展開ドア54に装着されたスライドドア55の開閉端には、図示していないが、ロック金具を設けている。このロック金具に対応する開口部53には、ロック金具の閉鎖に連動して密閉状態に自動ロックされ、かつ所定の操作によってロック解除可能とするようにした自動ロック機構が組み込まれている。
【0012】
自動ロック機構は、図示していないが、例えばベース板に、スライドドア55のロック金具を掛け止める係合片を上下方向に可動させるモータと、このモータの回転力を上下方向に変換させるギヤ機構とから成る。更に、ロック金具が、自動ロック機構に近づいたことを検知するセンサと、係合片が上端に移動したことを検知するセンサを備えたものである。
【0013】
図11から図13に示す「貨物車両用ドア」におけるスライドドア55をリモコンスイッチで開けるときは、図14(a)に示すような操作を行なう。
「開操作」
先ず、ドライバーは、パーキングブレーキを引く。パーキングブレーキを引かないとメインスイッチが入らないようになっている。運転席のメインスイッチを「ON」にする。これでスライドドア55の施錠が自動的に解除される。
次に、リモコンスイッチの「開」ボタンを押す。開動作を始め、全開状態になると停止する。これで荷物の出し入れが可能になる。
なお、大きな荷物の場合は、展開ドア54を手動で開ける。展開ドア54を開ける際は、必ずスライドドア55が全開の状態(スライドドア55が展開ドア54内に収納された状態)になったことを確認してから開ける。
【0014】
「閉操作」
図11から図13に示す「貨物車両用ドア」におけるスライドドア55をリモコンスイッチで閉めるときは、図14(b)に示すような操作を行なう。
リモコンスイッチの「閉」ボタンを押す。スライドドア55が閉操作を始め、全閉状態で停止する。なお、この状態ではまだ施錠はされていない。
運転席内のメインスイッチを「OFF」にする。このときスライドドア55の施錠が自動的に行われ、操作が終了する。
なお、車両走行中は必ず運手席内のメインスイッチを切る。
【0015】
「電気式緊急解除操作」
図11から図13に示す「貨物車両用ドア」におけるスライドドア55が、電気的な原因で閉じたまま開閉できなくなることがある。例えば、ノイズ等の電気的な原因でスライドドア55が施錠又は解錠の動作途中で止まることがある。このようなときは、図15に示すような操作を行なう。
先ず、パーキングブレーキを引く。運転席のメインスイッチを「ON」にする。
次に、リモコンスイッチの「開」ボタンを押す。5秒以上の間隔を空け、このリモコンスイッチの「閉」ボタンを押す。5秒以上の間隔を空け、リモコンスイッチの「開」ボタンを押す。
これでスライドドア55の施錠が解除される。スライドドア55が閉じているときは、スライドドア55は開動作を始める。
【0016】
「機械的な緊急時のロック解除操作」
電気的な故障ではなく、モータが動作不能状態の機械的な故障のときは、上述したリモコンスイッチの操作では解決できないときがある。そのときは、図16に示すような操作を行なう。
先ず、車両バッテリのメイン電源スイッチを「OFF」にする。運転席内のメインスイッチを「OFF」にする。
展開ドア54内部のレール59の取り付けねじを外す(図13参照)。スライドドア55のロック金具を外す。これにより、スライド駆動機構56の振り子状に動作する開閉アーム58との連関動作が解除される。そこで、スライドドア55を手動で開けることができる。
展開ドア54内側内面に装着したスライド駆動機構56のカバー60を外す(図12参照)。既に外れている内部のレール59を取り出す。
蝶ねじを展開ドア54にねじ込み、スライドドア55の開閉を規制する。
【0017】
走行する時は、例えば、展開ドア54下部に取り付けた蝶ねじを完全に締め込み、スライドドア55が動かないように固定し、車両を走行させることができる。
スライドドア55を開ける時は、締め込んでいた蝶ねじを、スライドドア55に当たらない位置まで緩めれば、スライドドア55を開けることができる。
展開ドア54を開ける時は、スライドドア55を全開にした後、蝶ねじを完全に締め込み、スライドドア55が展開ドア54から飛び出さないようにしてから、展開ドア54を開けることができる。
【0018】
展開ドア(観音ドア)に、スライド開閉するようにスライドドアを取り付けた貨物車両用ドアに関する技術が提案されている。例えば特許文献1の特開2003−82919公報「車両用荷室扉」のように、荷室壁面に形成された搬入出口の縁部に同搬入出口の略半分程度を閉鎖可能な展開ドアを設け、展開ドアの肉厚内もしくは荷室内側面には、搬入出口の残り略半分を閉鎖可能なスライドドアを摺動自在に装着すると共に、展開ドアの肉厚内側あるいは荷室内側面に比較的薄型の開閉駆動用モータを有するスライド駆動機構を組み込まれてなる車両用荷室扉が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2003−82919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図12に示すように、従来の展開ドア54はスライドドア55が出入する袋状の構成で分厚いものであった。更に、この袋状構成の展開ドア54には、スライドドア55をスライド開閉するスライド駆動機構56が設けられている。このスライド駆動機構56は開閉駆動用モータ57と、これによって振り子状に駆動される開閉アーム58とが設けられたもので、これらはカバー60で保護されている。この袋状構成の展開ドア54の厚みが増して、スライド駆動機構56の厚みが荷物室52側に突出しているので、荷物室52内の空間が狭められるといった問題を有していた。
【0021】
更に、袋状構成の展開ドア54の重量と、スライド駆動機構56の重量と、スライドドア55の重量と、貨物車両用ドア全体の重量が重たくなり、人力による展開ドア54の開閉は煩雑な場合がある。坂道においての人力による展開ドア54の開閉は困難な場合があるといった問題を有していた。
【0022】
また、特許文献1の「車両用荷室扉」には、電気式の緊急解除手段、機械的な緊急時のロック解除手段が備えられている。しかし、貨物車両51で貨物を配送中に、自動開閉ドアのスライドドア55が故障、又は動作不能状態になると、集配作業の時間指定や、駐車禁止によるスピーディーな集配作業が要請されるドライバーは狼狽することがある。この開閉駆動用モータ57が開閉アーム58をウォームギヤで振り子状に駆動する構造であるために、スライドドア55側からこの開閉アーム58を動作させることができなかった。このように狼狽すると簡単な緊急解除手段についても実行することができなくなり、却ってその解除に長時間を要することがある。
【0023】
更に、特許文献1の「車両用荷室扉」には、スライドドア55を開口部53にロックするために、スライドドア55にロック金具を設け、開口部53には自動ロック機構を組み込む必要があった。そのために、このロック金具が自動ロック機構に施錠された状態になり、開錠できなくなることがある。そこで、上述した緊急解除の操作と併せて、このロック金具をスライドドア55から外す必要があり、路上での緊急解除は不可能に近いものであった。
【0024】
また、特許文献1の「車両用荷室扉」では、緊急解除したあとに、通常の使用状態に復帰させるときは、上述した作業を逆の順序で実施するために長時間を要するものであった。勿論、修理工場において修理する必要もあった。
【0025】
なお、故障時、緊急時に、動作不能になったスライドドア55を簡単に開閉できるような構造にすることも可能である。しかし、スライドドア55を簡単に開閉できる構造にすると、作業者(ドライバー)が荷物の集配で貨物車両51から離れた隙に、ドライバー以外の者によってスライドドア55を簡単に開けられ、その箱型荷物室52内の荷物を盗難されやすいという問題があった。
【0026】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、スライドドアの開閉構造の主要な部分を荷物室側に設けることで、展開ドアのコンパクト化を図り、荷物室内の庫内空間を広くでき、更に緊急時に動作不能状態のスライドドアを解除するときに、容易かつ確実に緊急解除することができる貨物車両用自動開閉ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、貨物車両(1)の荷物室(2)の開口部(3)に取り付けられた貨物車両用自動開閉ドアであって、
前記開口部(3)の一側縁に、その側縁を回動中心にして水平方向に開くように取り付けられた展開ドア(4)と、
前記展開ドア(4)に、スライド開閉するように取り付けられたスライドドア(5)と、
前記荷物室(2)の開口部(3)に取り付けられた、前記スライドドア(5)をスライド移動させる動作子(6c)を有する開閉駆動部(6)と、
前記動作子(6c)に取り付けられた動作子側係合部(6a)と、
前記スライドドア(5)に取り付けられた、前記動作子側係合部(6a)に着脱自在に係合するスライドドア側係合部(5a)と、を備え、
前記スライドドア(5)と共に前記展開ドア(4)を、前記開口部(3)に閉止した際に、前記動作子側係合部(6a)に前記スライドドア側係合部(5a)が着脱自在に係合するように成り、
前記開閉駆動部(6)の動作子(6c)のスライド移動動作により、前記スライドドア(5)を前記開口部(3)において開放又は閉止し、
前記開閉駆動部(6)が電気的に動作不能状態になったときに、前記スライドドア(5)を手動で動かすことにより、前記動作子(6c)を直線移動させ、該スライドドア(5)を手動でも開閉し得るように構成した、ことを特徴とする。
前記展開ドア(4)は1枚板から成るものである。
【0028】
前記開閉駆動部(6)は、前記動作子(6c)として機能するラック(17)と、該ラック(17)に噛合してスライド移動させるピニオン(19)とを有するものである。
【0029】
または、前記開閉駆動部(6)は、前記動作子(6c)として機能するチェーンと、該チェーンを回動させるスプロケットとを有するものを利用することができる。
前記開閉駆動部(6)は、前記動作子(6c)として機能するベルトと、該ベルトを回動させるプーリとを有するものを利用することができる。
前記開閉駆動部(6)を、前記動作子(6c)として機能するピストンと、該ピストンを往復運動させるシリンダとを有するものを利用することができる。
【0030】
前記動作子側係合部(6a)は係合穴(6b)を有し、前記スライドドア側係合部(5a)はピン(5a)から成り、
前記スライドドア(5)と共に前記展開ドア(4)を、前記開口部(3)に閉止した際に、該動作子側係合部(6a)の係合穴(6b)に、該スライドドア側係合部(5a)のピン(5a)を掛け止めるように構成したものである。
前記開閉駆動部(6)は前記開口部(3)の上部に取り付けられたものが好ましい。
【0031】
前記開閉駆動部(6)は、荷物室(2)の開口部(3)に取り付けた受信部にリモコンスイッチからの信号を受信させて遠隔操作する構成にすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、展開ドア(4)にスライド開閉するように取り付けられたスライドドア(5)について、開閉駆動部(6)で駆動される動作子(6c)のスライド移動動作により開閉することができる。即ち、動作子(6c)に取り付けられた動作子側係合部(6a)に、スライドドア(5)に取り付けられたスライドドア側係合部(5a)を係合させ、この動作子(6c)の直線往復運動をスライドドア(5)に伝達し、スライドドア(5)をスライド移動させ、スライドドア(5)を開閉することができる。
【0033】
例えば、開閉駆動部(6)におけるモータ等で駆動されるピニオン(19)の回動に伴い、このピニオン(19)に噛合するラック(17)(動作子(6c))をスライド移動させる。このラック(17)を直線往復運動させることにより、スライドドア(5)を開閉することができる。
同様に、チェーンとチェーンを回動させるスプロケットとを有する開閉駆動部、ベルトとベルトを回動させるプーリとを有する開閉駆動部、又はピストンを往復運動させるシリンダを有する開閉駆動部でも、動作子(6c)の直線往復運動によりスライドドア(5)を開閉することができる。
【0034】
展開ドア(4)の展開中には、動作子側係合部(6a)とスライドドア側係合部(5a)とが係合していないので、この動作子(6c)を開閉駆動部(6)が誤って作動させても、スライドドア(5)を不用意に動作させることはなく、展開ドア(4)を安全に開閉させることができる。
【0035】
開閉駆動部(6)が動作不能状態になったときには、スライドドア(5)を駆動する構成がピニオン(19)とラック(17)(動作子(6c))によるものであり、従動側(スライドドア(5))からでも動作可能になり、このスライドドア(5)を手動で開閉することができる。そこで、スライドドア(5)がどの位置で開閉不能な状態になっても、スライドドア(5)を緊急解除することができる。
同様に、チェーンとチェーンを回動させるスプロケットとを有する開閉駆動部、ベルトとベルトを回動させるプーリとを有する開閉駆動部、又はピストンを往復運動させるシリンダを有する開閉駆動部でも、動作子(6c)を従動側(スライドドア(5))からでも動作させ、このスライドドア(5)を緊急解除することができる。
【0036】
スライドドア(5)をスライド開閉する構成が、ピニオン(19)とラック(17)、チェーンとスプロケット、ベルトとプーリ又はピストンとシリンダという簡単な構成、かつこれが従来のように荷物室(2)へ突出しない構成であるため、この荷物室(2)の庫内空間を広く利用することができる。
更に、従来のように展開ドア(4)は、スライドドア(5)が出入する袋状の構成にする必要がないので、展開ドア(4)とスライドドア(5)の板厚が従来の構成に比較して薄くなる。荷物室(2)の庫内空間を更に広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの展開ドアとスライドドアを共に開口部に閉止した状態を示す斜視図である。
図2】実施例1の貨物車両用自動開閉ドアのスライドドアのみを開放(半開)した状態を示す斜視図である。
図3】実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの展開ドアとスライドドアを共に展開し、開口部を開放(全開)した状態を示す斜視図である。
図4】展開ドアを外側から視認した状態を示す正面図である。
図5】展開ドアを内側(荷物室側)から視認した状態を示す正面図である。
図6】スライドドアを外側から視認した状態を示す正面図である。
図7】スライドドアを内側(荷物室側)から視認した状態を示す正面図である。
図8】実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの開閉駆動部を示す正面図である。
図9】実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの開閉状態を説明する説明平面図であり、(a)は展開ドアを閉止する状態、(b)はスライドドアを閉止する状態、(c)は展開ドアとスライドドアとで開口部を閉塞している状態である。
図10】動作子側係合部にスライドドア側係合部が係合する状態を示し、(a)は係合する前の拡大側面図、(b)はピニオンとラックとの噛合状態の拡大断面図、(c)は係合した状態の拡大側面図である。
図11】従来の自動開閉ドアを閉じた状態を示す貨物車両の斜視図である。
図12】従来の自動開閉ドアを開けた状態の貨物車両の斜視図である。
図13】従来のスライド駆動機構を示すスライドドアの一部切り欠いた展開ドアの正面図である。
図14】車両用荷室扉におけるスライドドアをリモコンスイッチで開閉するときの操作手順を示すものであり、(a)は開操作、(b)は閉操作である。
図15】電気式緊急解除の操作手順を示すものである。
図16】機械的な緊急時のロック解除の操作手順を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の貨物車両用自動開閉ドアは、展開ドアと、この展開ドアに、スライド開閉するように取り付けられたスライドドアと、 荷物室の開口部に取り付けられた、スライドドアをスライド移動させる動作子を有する開閉駆動部と、スライドドアに取り付けられた、動作子側係合部に着脱自在に係合するスライドドア側係合部と、を備えたものである。本発明は、スライドドアと共に展開ドアを、開口部に閉止した際に、動作子側係合部にスライドドア側係合部が着脱自在に係合するように成り、開閉駆動部の動作子のスライド移動動作により、スライドドアの開閉に際してスライドドアを開口部において開放し、また隙間なく閉止し得るものである。
【実施例1】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<貨物車両用自動開閉ドアの構成>
図1は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの展開ドアとスライドドアを共に開口部に閉止した状態を示す斜視図である。図2は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアのスライドドアのみを開放(半開)した状態を示す斜視図である。図3は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの展開ドアとスライドドアを共に展開し、開口部を開放(全開)した状態を示す斜視図である。
本発明の貨物車両用自動開閉ドアは、図1から図3に示すように、貨物車両1の箱型の荷物室2の開口部3の一側縁に、その側縁を回動中心にして水平方向に開くように取り付けられた展開ドア4と、この展開ドア4に、スライド開閉するように取り付けられたスライドドア5とから成る。このように展開ドア4とスライドドア5とで開口部3を閉塞し得ると共に、このスライドドア5のみを開閉駆動部6で開閉するようになっている。即ち、開閉駆動部6により、開口部3を部分的に開閉するようになっている。図3に示すように、スライドドア5と共に展開ドア4を開放すれば、開口部3を全開にすることができる。
本発明の貨物車両用ドアは、上記したような貨物車両1の荷物室2に限らず、低温の冷蔵車両の冷蔵庫、冷凍車にも実施することができる。
【0040】
図3に示すように、開口部3に向かって展開ドア4の右端縁にヒンジ7を取り付け、展開ドア4の左側が展開する(観音開きする)構成になっている。この展開方向は図示例に限定されない。この逆の配置でもよい。展開ドア4の左端縁にヒンジ7を取り付け、展開ドア4の右側が展開する構成にすることもできる。貨物車両1で配送する商品の種類、道路状況に応じて適宜使い分けることができる。
【0041】
<開口部3の構成>
荷物室2の開口部3は、展開ドア4が閉止する領域OTと、スライドドア5が閉止する領域STとから成る。図2図3に示すように、スライドドア5が閉止する領域STには、密閉性の向上を図るための、軟質樹脂製又はゴム製のウエザーストリップ8が開口部3の左側に取り付けられている。スライドドア5が閉止する領域STには、スライドドア5の上下端縁がスライドする開口部レール9が取り付けられている。
【0042】
更に、開口部3の展開ドア4が閉止する領域OTには、展開ドア4が確実に閉止されているか否かをチェックする開閉検出センサ10が設けられている(図8参照)。図示例では、この開閉検出センサ10を開口部3の上部に配置した例を示しているがこれを下部に配置することも可能である。
【0043】
この開口部3には、ロック装置となるラッチ錠11が取り付けられている。このラッチ錠11を係合させるストライカー12(係合受け部)はスライドドア5に取り付けられている。このロック装置によりスライドドア5を展開ドア4と共に、開口部3のウエザーストリップ8に強固に密着させることができ、開口部3を閉塞した際の密閉性を高めている。
【0044】
この開口部3の周囲には、このラッチ錠11の鍵穴13が設けられている。この鍵穴13に鍵を差し込んで、ラッチ錠11の施錠と開錠を行うようになっている。図示例では、スライドドア5の上下方向のやや上方位置に、ラッチ錠11のストライカー12(係合受け部)が取り付けられている。人が立って鍵を操作する際に容易な高さになっている。しかし、車種や開口部3の大きさ形状に応じてラッチ錠11を取り付ける位置を変更してよいことは勿論である。このラッチ錠11は、ラッチ施錠、電動開錠するようになっている。
【0045】
<展開ドア4の構成>
図4は展開ドアを外側から視認した状態を示す正面図である。図5は展開ドアを荷物室側から視認した状態を示す正面図である。
展開ドア4は、貨物車両1の荷物室2の開口部3の一側縁に、その側縁をヒンジ7により、ここを回動中心にして水平方向に開くように取り付けられている。本発明の展開ドア4は、図4に示すようにシンプルな形状をなす。展開ドア4には荷物室2の密閉性を高めるための、軟質樹脂製又はゴム製のウエザーストリップ14が取り付けられている(図5参照)。
【0046】
本発明の展開ドア4は1枚板から成り、スライドドア5が収まる段差4aが形成されている。展開ドア4に重なるように並列してスライドドア5がスライド移動するようになっている。このように展開ドア4は1枚板から成り、従来のように袋状の構成ではないので、薄くかつ軽量化を図ることができる。この段差4aにスライドドア5を並列させることで、この展開ドア4を安全に開閉させることができ、デザイン性の向上に寄与している。この段差4aの上下位置に、スライドドア5の上下端縁がスライドする展開ドアレール15が取り付けられている。
【0047】
<スライドドア5の構成>
図6はスライドドアを外側から視認した状態を示す正面図である。図7はスライドドアを荷物室側から視認した状態を示す正面図である。
スライドドア5は、展開ドア4と共に開口部3を閉止するものである。このスライドドア5は、開閉駆動部6により自動で開閉するようになっている。このスライドドア5は、展開ドア4に並列してスライド移動するようになっている。
【0048】
このスライドドア5の操作はリモコンによる。図示例は、展開ドア4の外側(荷物室2側の反対側)に並列した構成を示している。このスライドドア5を開閉する際に、荷物室2内に積載した貨物と接触しないようにするためである。但し、このスライドドア5を展開ドア4の内側(荷物室2側)に並列した構成にすることも可能である。
【0049】
スライドドア5の上部には、図6図7に示すように、例えば展開ドア4の外面と開口部3間で円滑にスライドできるように、スライドローラ5xが備えられている。図2図3に示すように、開口部3の上部に取り付けられた開口部レール9と、展開ドア4の上部に取り付けられた展開ドアレール15の間を滑動し得るようになっている。そのため、スライドドア5の横幅が、展開ドア4の横幅より広くなっている。この幅が広いため、この部分で開閉駆動部6の駆動機構を構成する位置にもなる。後述するように、スライドドア5には、スライドドア側係合部5aとなるピンが取り付けられている。このピン(スライドドア側係合部5a)は、開閉駆動部6の動作子側係合部6aとなる係合穴6bに着脱自在に係合するものである。
【0050】
一方、スライドドア5の下部には、図6図7に示すように、展開ドア4の外面と開口部3間で円滑にスライドできるように、スライドガイド5yが備えられている。展開ドア4の下部に取り付けられた展開ドアレール15の間を滑動し得るようになっている。
【0051】
スライドドア5の開口部3側には、図7に示すように、展開ドア4との密閉性を高めるための軟質樹脂製又はゴム製のウエザーストリップ16が取り付けられている。更に、このスライドドア5が展開ドア4に対して全開したかどうかを検出するスライドドア全開検出マグネットが備えられている(図示していない)。
【0052】
このスライドドア5は、上述したスライドドア5の周縁に取り付けられたストライカー12を、開口部3の周囲に取り付けられたラッチ錠11に係合させる構成である。この開口部3に設けられた鍵穴13に鍵を差し込んで、ラッチ錠11の施錠と開錠を行う。
【0053】
本発明では従来のようなロッド型の施錠装置に替えて、上述したようなラッチ錠11にしたのは、スライドドア5の表面に大きく突出するロッド型の施錠装置を廃止してデザイン性の向上を図るためである。更に、軽量化を図るためでもある。
【0054】
<開閉駆動部の構成>
図8は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの開閉駆動部を示す正面図である。図9は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの開閉状態を説明する説明平面図であり、(a)は展開ドアを閉止する状態、(b)はスライドドアを閉止する状態、(c)は展開ドアとスライドドアとで開口部を閉塞している状態である。
荷物室2の開口部3には、スライドドア5をスライド移動させる動作子6cを有する開閉駆動部6が取り付けられている。実施例1の開閉駆動部6は、ラック17とピニオン19とから成り、このラック17はラックレール6d間でスライド移動し、このラック17が動作子6cとして機能するようになる。
このピニオン19は、例えば駆動モータ18で駆動するようになっている。このピニオン19は駆動モータ18の回動軸に連結された減速機を介して駆動するようになっている。
【0055】
開閉駆動部6のラック17の一端に、動作子側係合部6aがボルト17a等で取り付けられ、これに係合穴6bが形成されている。この係合穴6bは、スライドドア5に取り付けられたスライドドア側係合部5aとなるピンが着脱自在に係合する。この動作子側係合部6aは、ラックレール6dを複数のローラ6eで挟むように取り付けられ、更に動作子側係合部6aの下側は補強レール6fにより保護されている。このように動作子側係合部6aは、ラックレール6dと補強レール6fの間でスライド移動自在に取り付けられている。この動作子側係合部6aは、ラック17をピニオン19でスライド移動させることにより同時にスライド移動させることができる。
【0056】
スライドドア5と共に展開ドア4を、開口部3に閉止した際に、動作子側係合部6aの係合穴6bに、スライドドア側係合部5aのピンが着脱自在に係合するように成る。基本態様として、スライドドア5は展開ドア4と並列状態でのみ展開される。そこで、スライドドア5と展開ドア4が並列した状態で開口部3に閉止する際に、ピン(スライドドア側係合部5a)の位置と、動作子側係合部6aの係合穴6bの位置が適正な位置で係合しやすくする必要がある。スライドドア5が展開ドア4の段差4aに完全に収まり、その状態をある程度維持しやすいように、スライドドア5の端縁と展開ドア4の段差4aの端縁とにマグネット(図示せず)等で吸着される構成にすることが望ましい。このマグネットの吸着力は、開閉駆動部6でスライドドア5により開口部3を閉塞する際に、その閉止するときのスライド移動を阻害しない程度の弱いものが好ましい。
【0057】
この開閉駆動部6の動作子6c(ラック17)のスライド移動動作により、スライドドア5を開閉することができる。図1図2に示すように、スライドドア5の開閉に際してスライドドア5を開口部3において開放し、また隙間なく閉止することができる。
【0058】
<展開ドアとスライドドアの動作状態>
この動作子側係合部6aは、開口部3の周囲に取り付けられた開閉駆動部6のラック17の一端に位置する部材であるため、開口部3の上部で左右方向へ移動するようになっている。一方、スライドドア側係合部5aはスライドドア5に取り付けられているので、展開ドア4の動きに応じて移動する。図9(a)に示すように展開ドア4を展開しているときは、スライドドア5も展開しているので、スライドドア側係合部5aのピンは、動作子側係合部6aの係合穴6bに係合していない。
【0059】
図9(b)に示すように展開ドア4を開口部3に閉じるときは、スライドドア5も展開ドア4に並列した状態になるので、スライドドア側係合部5aのピンは、動作子側係合部6aの係合穴6bに係合する。そこで、図9(c)に示すように駆動モータ18で駆動されるピニオン19の回動に伴い(図8参照)、このピニオン19に噛合するラック17(作動子6c)をスライド移動させることができる。即ちラック17(作動子6c)を直線往復運動させることにより、動作子側係合部6aはラック17の動作に応じてスライドドア5をスライド移動させて、スライドドア5を開閉することができる(図1図2参照)。
【0060】
<動作子側係合部とスライドドア側係合部の構成>
図10は動作子側係合部にスライドドア側係合部が係合する状態を示し、(a)は係合する前の拡大側面図、(b)はピニオンとラックとの噛合状態の拡大断面図、(c)は係合した状態の拡大側面図である。
スライドドア側係合部5aのピンは、スライドドア5の上部であって荷物室2側に向けて取り付けられた部材である。
一方、動作子側係合部6aは、ラック17の一端にボルト17aで取り付けられる部材であり、スライドドア5のピン5aが着脱自在に係合する係合穴6bが形成された部材である。図示例では断面で上向きの略コ字形状の部材から成り、その一端はラック17に取り付けられ、他端に係合穴6bが開けられている。
なお、スライドドア側係合部5aに係合穴6bを形成し、動作子側係合部6aにピンを取り付けることも可能である。更に、係合穴に代えて、ピンを係止できる形状であればよく、略V字形状、略U字形状の部材にすることも可能である。
【0061】
<開閉駆動部を開口部の上部に配置>
実施例1の貨物車両用自動開閉ドアでは、開閉駆動部6(駆動モータ18)のピニオン19とラック17は簡単な構成に成り、このモータ等の開閉駆動部6(ピニオン19)を例えば開口部3の上部に配置することにより、従来のように展開ドア4に荷物室2側に向けて突出していた開閉駆動機構が無くなり、荷物室2の庫内空間を広く利用することができる。
【0062】
更に、従来のように展開ドア4を、スライドドア5が出入する袋状の構成にする必要がないので、展開ドア4とスライドドア5の板厚が従来の構成に比較して薄くなる。そこで、荷物室2の庫内空間をより広くすることができる。
【0063】
<緊急時の動作の説明>
一方、何らかの原因で、駆動モータ18が動作不能状態になったときには、スライドドア5の駆動機構がピニオン19と動作子6c(ラック17)による直線運動であり、従動側(スライドドア5)からでも動作可能になるので、このスライドドア5を手動で開閉することができる。そこで、スライドドア5がどの位置で開閉不能な状態になっても、スライドドア5を緊急解除することができる。
【0064】
<開閉駆動部の変形例1>
本発明の開閉駆動部6は、動作子6c(ラック17)をスライド移動させ、この動作子6cに取り付けられた動作子側係合部6aに、スライドドア5に取り付けられたスライドドア側係合部5aを着脱自在に係合させ、必要に応じてスライドドア5をスライド移動させる構成であればよい。この動作子6c、開閉駆動部6は、上述したようなラック17とピニオン19とから成る構成に限定されない。
変形例1の開閉駆動部は、図示していないが、ラック17とピニオン19に替えて、チェーンとスプロケットから成るものにした。例えば、動作子6cとして機能するチェーンと、このチェーンを回動させるスプロケットとから成るものでも良い。このチェーンに動作子側係合部6aを取り付け、スプロケットをモータ等で回動させることで、動作子側係合部6aをスライド移動させ、スライドドア5を開閉させることができる。
【0065】
<開閉駆動部の変形例2>
変形例2の開閉駆動部は、図示していないが、ラック17とピニオン19に替えて、ベルトとプーリから成るものにした。例えば、動作子6cとして機能するベルトと、このベルトを回動させるプーリとから成るものでも良い。このベルトに動作子側係合部6aを取り付け、プーリをモータ等で回動させることで、動作子側係合部6aをスライド移動させ、スライドドア5を開閉させることができる。
【0066】
<開閉駆動部の変形例3>
変形例3の開閉駆動部は、図示していないが、ラック17とピニオン19に替えて油圧装置から成るものにした。例えば、動作子6cとして機能する油圧装置のピストンと、ピストンを往復運動させるシリンダとから成るものでも良い。このピストンに動作子側係合部6aを取り付け、このピストンを往復運動させ、動作子側係合部6aをスライド移動させることができ、スライドドア5を開閉させることができる。
このように開閉駆動部は、スライド移動させることができる構成であって、必要に応じて従動側(スライドドア5)からでも手動で動作させることができる構成であれば、これらの構成に限定されない。
【0067】
なお、本発明は上述した発明の実施の形態に限定されず、スライドドア5の開閉構造の主要な部分を荷物室2側の上部に設けることで、展開ドア4のコンパクト化を図り、荷物室2内の庫内空間を広くでき、更に緊急時に動作不能状態のスライドドア5を解除するときに、容易かつ確実に緊急解除することができれば、図示したような構成に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の貨物車両用ドアは、主に貨物車両に利用できるだけでなく、その他の冷凍車両、温蔵車両又は乗用車の開閉構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 貨物車両
2 荷物室
3 開口部
4 展開ドア
5 スライドドア
5a スライドドア側係合部
6 開閉駆動部
6a 動作子側係合部
6b 係合穴
6c 動作子
7 ヒンジ
17 ラック
19 ピニオン
【要約】
【課題】スライドドアの開閉構造の主要な部分を荷物室側に設けることで、展開ドアのコンパクト化を図り、荷物室内の庫内空間を広くでき、更に緊急時に動作不能状態のスライドドアを解除するときに、容易かつ確実に緊急解除できる。
【解決手段】荷物室2の開口部3の側縁を回動中心にして水平方向に開くように取り付けられた展開ドア4と、展開ドア4に、スライド開閉するように取り付けられたスライドドア5と、開口部3に取り付けられた、スライドドア5をスライド移動させる動作子6cを有する開閉駆動部6と、動作子6cに取り付けられた動作子側係合部6aと、スライドドア5に取り付けられた、動作子側係合部6aに着脱自在に係合するスライドドア側係合部5aと、を備え、スライドドア5と共に展開ドア4を、開口部3に閉止した際に、動作子側係合部6aにスライドドア側係合部5aが着脱自在に係合するように成る。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16