【実施例1】
【0039】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
<貨物車両用自動開閉ドアの構成>
図1は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの展開ドアとスライドドアを共に開口部に閉止した状態を示す斜視図である。
図2は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアのスライドドアのみを開放(半開)した状態を示す斜視図である。
図3は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの展開ドアとスライドドアを共に展開し、開口部を開放(全開)した状態を示す斜視図である。
本発明の貨物車両用自動開閉ドアは、
図1から
図3に示すように、貨物車両1の箱型の荷物室2の開口部3の一側縁に、その側縁を回動中心にして水平方向に開くように取り付けられた展開ドア4と、この展開ドア4に、スライド開閉するように取り付けられたスライドドア5とから成る。このように展開ドア4とスライドドア5とで開口部3を閉塞し得ると共に、このスライドドア5のみを開閉駆動部6で開閉するようになっている。即ち、開閉駆動部6により、開口部3を部分的に開閉するようになっている。
図3に示すように、スライドドア5と共に展開ドア4を開放すれば、開口部3を全開にすることができる。
本発明の貨物車両用ドアは、上記したような貨物車両1の荷物室2に限らず、低温の冷蔵車両の冷蔵庫、冷凍車にも実施することができる。
【0040】
図3に示すように、開口部3に向かって展開ドア4の右端縁にヒンジ7を取り付け、展開ドア4の左側が展開する(観音開きする)構成になっている。この展開方向は図示例に限定されない。この逆の配置でもよい。展開ドア4の左端縁にヒンジ7を取り付け、展開ドア4の右側が展開する構成にすることもできる。貨物車両1で配送する商品の種類、道路状況に応じて適宜使い分けることができる。
【0041】
<開口部3の構成>
荷物室2の開口部3は、展開ドア4が閉止する領域OTと、スライドドア5が閉止する領域STとから成る。
図2と
図3に示すように、スライドドア5が閉止する領域STには、密閉性の向上を図るための、軟質樹脂製又はゴム製のウエザーストリップ8が開口部3の左側に取り付けられている。スライドドア5が閉止する領域STには、スライドドア5の上下端縁がスライドする開口部レール9が取り付けられている。
【0042】
更に、開口部3の展開ドア4が閉止する領域OTには、展開ドア4が確実に閉止されているか否かをチェックする開閉検出センサ10が設けられている(
図8参照)。図示例では、この開閉検出センサ10を開口部3の上部に配置した例を示しているがこれを下部に配置することも可能である。
【0043】
この開口部3には、ロック装置となるラッチ錠11が取り付けられている。このラッチ錠11を係合させるストライカー12(係合受け部)はスライドドア5に取り付けられている。このロック装置によりスライドドア5を展開ドア4と共に、開口部3のウエザーストリップ8に強固に密着させることができ、開口部3を閉塞した際の密閉性を高めている。
【0044】
この開口部3の周囲には、このラッチ錠11の鍵穴13が設けられている。この鍵穴13に鍵を差し込んで、ラッチ錠11の施錠と開錠を行うようになっている。図示例では、スライドドア5の上下方向のやや上方位置に、ラッチ錠11のストライカー12(係合受け部)が取り付けられている。人が立って鍵を操作する際に容易な高さになっている。しかし、車種や開口部3の大きさ形状に応じてラッチ錠11を取り付ける位置を変更してよいことは勿論である。このラッチ錠11は、ラッチ施錠、電動開錠するようになっている。
【0045】
<展開ドア4の構成>
図4は展開ドアを外側から視認した状態を示す正面図である。
図5は展開ドアを荷物室側から視認した状態を示す正面図である。
展開ドア4は、貨物車両1の荷物室2の開口部3の一側縁に、その側縁をヒンジ7により、ここを回動中心にして水平方向に開くように取り付けられている。本発明の展開ドア4は、
図4に示すようにシンプルな形状をなす。展開ドア4には荷物室2の密閉性を高めるための、軟質樹脂製又はゴム製のウエザーストリップ14が取り付けられている(
図5参照)。
【0046】
本発明の展開ドア4は1枚板から成り、スライドドア5が収まる段差4aが形成されている。展開ドア4に重なるように並列してスライドドア5がスライド移動するようになっている。このように展開ドア4は1枚板から成り、従来のように袋状の構成ではないので、薄くかつ軽量化を図ることができる。この段差4aにスライドドア5を並列させることで、この展開ドア4を安全に開閉させることができ、デザイン性の向上に寄与している。この段差4aの上下位置に、スライドドア5の上下端縁がスライドする展開ドアレール15が取り付けられている。
【0047】
<スライドドア5の構成>
図6はスライドドアを外側から視認した状態を示す正面図である。
図7はスライドドアを荷物室側から視認した状態を示す正面図である。
スライドドア5は、展開ドア4と共に開口部3を閉止するものである。このスライドドア5は、開閉駆動部6により自動で開閉するようになっている。このスライドドア5は、展開ドア4に並列してスライド移動するようになっている。
【0048】
このスライドドア5の操作はリモコンによる。図示例は、展開ドア4の外側(荷物室2側の反対側)に並列した構成を示している。このスライドドア5を開閉する際に、荷物室2内に積載した貨物と接触しないようにするためである。但し、このスライドドア5を展開ドア4の内側(荷物室2側)に並列した構成にすることも可能である。
【0049】
スライドドア5の上部には、
図6と
図7に示すように、例えば展開ドア4の外面と開口部3間で円滑にスライドできるように、スライドローラ5xが備えられている。
図2と
図3に示すように、開口部3の上部に取り付けられた開口部レール9と、展開ドア4の上部に取り付けられた展開ドアレール15の間を滑動し得るようになっている。そのため、スライドドア5の横幅が、展開ドア4の横幅より広くなっている。この幅が広いため、この部分で開閉駆動部6の駆動機構を構成する位置にもなる。後述するように、スライドドア5には、スライドドア側係合部5aとなるピンが取り付けられている。このピン(スライドドア側係合部5a)は、開閉駆動部6の動作子側係合部6aとなる係合穴6bに着脱自在に係合するものである。
【0050】
一方、スライドドア5の下部には、
図6と
図7に示すように、展開ドア4の外面と開口部3間で円滑にスライドできるように、スライドガイド5yが備えられている。展開ドア4の下部に取り付けられた展開ドアレール15の間を滑動し得るようになっている。
【0051】
スライドドア5の開口部3側には、
図7に示すように、展開ドア4との密閉性を高めるための軟質樹脂製又はゴム製のウエザーストリップ16が取り付けられている。更に、このスライドドア5が展開ドア4に対して全開したかどうかを検出するスライドドア全開検出マグネットが備えられている(図示していない)。
【0052】
このスライドドア5は、上述したスライドドア5の周縁に取り付けられたストライカー12を、開口部3の周囲に取り付けられたラッチ錠11に係合させる構成である。この開口部3に設けられた鍵穴13に鍵を差し込んで、ラッチ錠11の施錠と開錠を行う。
【0053】
本発明では従来のようなロッド型の施錠装置に替えて、上述したようなラッチ錠11にしたのは、スライドドア5の表面に大きく突出するロッド型の施錠装置を廃止してデザイン性の向上を図るためである。更に、軽量化を図るためでもある。
【0054】
<開閉駆動部の構成>
図8は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの開閉駆動部を示す正面図である。
図9は実施例1の貨物車両用自動開閉ドアの開閉状態を説明する説明平面図であり、(a)は展開ドアを閉止する状態、(b)はスライドドアを閉止する状態、(c)は展開ドアとスライドドアとで開口部を閉塞している状態である。
荷物室2の開口部3には、スライドドア5をスライド移動させる動作子6cを有する開閉駆動部6が取り付けられている。実施例1の開閉駆動部6は、ラック17とピニオン19とから成り、このラック17はラックレール6d間でスライド移動し、このラック17が動作子6cとして機能するようになる。
このピニオン19は、例えば駆動モータ18で駆動するようになっている。このピニオン19は駆動モータ18の回動軸に連結された減速機を介して駆動するようになっている。
【0055】
開閉駆動部6のラック17の一端に、動作子側係合部6aがボルト17a等で取り付けられ、これに係合穴6bが形成されている。この係合穴6bは、スライドドア5に取り付けられたスライドドア側係合部5aとなるピンが着脱自在に係合する。この動作子側係合部6aは、ラックレール6dを複数のローラ6eで挟むように取り付けられ、更に動作子側係合部6aの下側は補強レール6fにより保護されている。このように動作子側係合部6aは、ラックレール6dと補強レール6fの間でスライド移動自在に取り付けられている。この動作子側係合部6aは、ラック17をピニオン19でスライド移動させることにより同時にスライド移動させることができる。
【0056】
スライドドア5と共に展開ドア4を、開口部3に閉止した際に、動作子側係合部6aの係合穴6bに、スライドドア側係合部5aのピンが着脱自在に係合するように成る。基本態様として、スライドドア5は展開ドア4と並列状態でのみ展開される。そこで、スライドドア5と展開ドア4が並列した状態で開口部3に閉止する際に、ピン(スライドドア側係合部5a)の位置と、動作子側係合部6aの係合穴6bの位置が適正な位置で係合しやすくする必要がある。スライドドア5が展開ドア4の段差4aに完全に収まり、その状態をある程度維持しやすいように、スライドドア5の端縁と展開ドア4の段差4aの端縁とにマグネット(図示せず)等で吸着される構成にすることが望ましい。このマグネットの吸着力は、開閉駆動部6でスライドドア5により開口部3を閉塞する際に、その閉止するときのスライド移動を阻害しない程度の弱いものが好ましい。
【0057】
この開閉駆動部6の動作子6c(ラック17)のスライド移動動作により、スライドドア5を開閉することができる。
図1、
図2に示すように、スライドドア5の開閉に際してスライドドア5を開口部3において開放し、また隙間なく閉止することができる。
【0058】
<展開ドアとスライドドアの動作状態>
この動作子側係合部6aは、開口部3の周囲に取り付けられた開閉駆動部6のラック17の一端に位置する部材であるため、開口部3の上部で左右方向へ移動するようになっている。一方、スライドドア側係合部5aはスライドドア5に取り付けられているので、展開ドア4の動きに応じて移動する。
図9(a)に示すように展開ドア4を展開しているときは、スライドドア5も展開しているので、スライドドア側係合部5aのピンは、動作子側係合部6aの係合穴6bに係合していない。
【0059】
図9(b)に示すように展開ドア4を開口部3に閉じるときは、スライドドア5も展開ドア4に並列した状態になるので、スライドドア側係合部5aのピンは、動作子側係合部6aの係合穴6bに係合する。そこで、
図9(c)に示すように駆動モータ18で駆動されるピニオン19の回動に伴い(
図8参照)、このピニオン19に噛合するラック17(作動子6c)をスライド移動させることができる。即ちラック17(作動子6c)を直線往復運動させることにより、動作子側係合部6aはラック17の動作に応じてスライドドア5をスライド移動させて、スライドドア5を開閉することができる(
図1、
図2参照)。
【0060】
<動作子側係合部とスライドドア側係合部の構成>
図10は動作子側係合部にスライドドア側係合部が係合する状態を示し、(a)は係合する前の拡大側面図、(b)はピニオンとラックとの噛合状態の拡大断面図、(c)は係合した状態の拡大側面図である。
スライドドア側係合部5aのピンは、スライドドア5の上部であって荷物室2側に向けて取り付けられた部材である。
一方、動作子側係合部6aは、ラック17の一端にボルト17aで取り付けられる部材であり、スライドドア5のピン5aが着脱自在に係合する係合穴6bが形成された部材である。図示例では断面で上向きの略コ字形状の部材から成り、その一端はラック17に取り付けられ、他端に係合穴6bが開けられている。
なお、スライドドア側係合部5aに係合穴6bを形成し、動作子側係合部6aにピンを取り付けることも可能である。更に、係合穴に代えて、ピンを係止できる形状であればよく、略V字形状、略U字形状の部材にすることも可能である。
【0061】
<開閉駆動部を開口部の上部に配置>
実施例1の貨物車両用自動開閉ドアでは、開閉駆動部6(駆動モータ18)のピニオン19とラック17は簡単な構成に成り、このモータ等の開閉駆動部6(ピニオン19)を例えば開口部3の上部に配置することにより、従来のように展開ドア4に荷物室2側に向けて突出していた開閉駆動機構が無くなり、荷物室2の庫内空間を広く利用することができる。
【0062】
更に、従来のように展開ドア4を、スライドドア5が出入する袋状の構成にする必要がないので、展開ドア4とスライドドア5の板厚が従来の構成に比較して薄くなる。そこで、荷物室2の庫内空間をより広くすることができる。
【0063】
<緊急時の動作の説明>
一方、何らかの原因で、駆動モータ18が動作不能状態になったときには、スライドドア5の駆動機構がピニオン19と動作子6c(ラック17)による直線運動であり、従動側(スライドドア5)からでも動作可能になるので、このスライドドア5を手動で開閉することができる。そこで、スライドドア5がどの位置で開閉不能な状態になっても、スライドドア5を緊急解除することができる。
【0064】
<開閉駆動部の変形例1>
本発明の開閉駆動部6は、動作子6c(ラック17)をスライド移動させ、この動作子6cに取り付けられた動作子側係合部6aに、スライドドア5に取り付けられたスライドドア側係合部5aを着脱自在に係合させ、必要に応じてスライドドア5をスライド移動させる構成であればよい。この動作子6c、開閉駆動部6は、上述したようなラック17とピニオン19とから成る構成に限定されない。
変形例1の開閉駆動部は、図示していないが、ラック17とピニオン19に替えて、チェーンとスプロケットから成るものにした。例えば、動作子6cとして機能するチェーンと、このチェーンを回動させるスプロケットとから成るものでも良い。このチェーンに動作子側係合部6aを取り付け、スプロケットをモータ等で回動させることで、動作子側係合部6aをスライド移動させ、スライドドア5を開閉させることができる。
【0065】
<開閉駆動部の変形例2>
変形例2の開閉駆動部は、図示していないが、ラック17とピニオン19に替えて、ベルトとプーリから成るものにした。例えば、動作子6cとして機能するベルトと、このベルトを回動させるプーリとから成るものでも良い。このベルトに動作子側係合部6aを取り付け、プーリをモータ等で回動させることで、動作子側係合部6aをスライド移動させ、スライドドア5を開閉させることができる。
【0066】
<開閉駆動部の変形例3>
変形例3の開閉駆動部は、図示していないが、ラック17とピニオン19に替えて油圧装置から成るものにした。例えば、動作子6cとして機能する油圧装置のピストンと、ピストンを往復運動させるシリンダとから成るものでも良い。このピストンに動作子側係合部6aを取り付け、このピストンを往復運動させ、動作子側係合部6aをスライド移動させることができ、スライドドア5を開閉させることができる。
このように開閉駆動部は、スライド移動させることができる構成であって、必要に応じて従動側(スライドドア5)からでも手動で動作させることができる構成であれば、これらの構成に限定されない。
【0067】
なお、本発明は上述した発明の実施の形態に限定されず、スライドドア5の開閉構造の主要な部分を荷物室2側の上部に設けることで、展開ドア4のコンパクト化を図り、荷物室2内の庫内空間を広くでき、更に緊急時に動作不能状態のスライドドア5を解除するときに、容易かつ確実に緊急解除することができれば、図示したような構成に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。