特許第6150315号(P6150315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6150315EMM−19*:新規ゼオライトイミダゾレート骨格の物質、それを製造する方法、およびその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150315
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】EMM−19*:新規ゼオライトイミダゾレート骨格の物質、それを製造する方法、およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20170612BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20170612BHJP
   C01B 39/46 20060101ALN20170612BHJP
   C07F 3/06 20060101ALN20170612BHJP
【FI】
   C07D471/04 107Z
   C07D471/04CSP
   B01D53/02
   !C01B39/46
   !C07F3/06
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2016-101312(P2016-101312)
(22)【出願日】2016年5月20日
(62)【分割の表示】特願2015-503568(P2015-503568)の分割
【原出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2016-185969(P2016-185969A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2016年6月7日
(31)【優先権主張番号】61/618,057
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/838,186
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/838,820
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/839,720
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】モバエ・アフェウォルキ
(72)【発明者】
【氏名】ニ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エル・スターン
(72)【発明者】
【氏名】サイモン・シー・ウエストン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ゼンゲル
【審査官】 清水 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−528251(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/140788(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/148975(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/148982(WO,A1)
【文献】 H. HAYASHI et al.,ZEOLITE A IMIDAZOLATE FRAMEWORKS,NATURE MATERIALS,英国,NATURE PUBLISHING GROUP,2007年 7月 1日,V6 N7,P501-506
【文献】 PHAN A. et al.,ACCOUNTS OF CHEMICAL RESEARCH,2010年,43(1),pp.58-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/04
B01D 53/02
C01B 39/46
C07F 3/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有し、SOD骨格型を示し、かつ以下に記載されたd間隔範囲および相対強度範囲(d間隔範囲(Å)/相対強度範囲(%)):
12.5〜12.0 / 30〜80、
11.8〜11.4 / 60〜100、
8.56〜8.31 / 5〜30、
7.33〜7.16 / 20〜70、
6.91〜6.75 / 10〜40、
6.78〜6.63 / 20〜70、
5.86〜5.75 / 10〜40、
5.48〜5.38 / 50〜90、
4.82〜4.75 / 30〜80、
4.77〜4.70 / 10〜40、
4.57〜4.50 / 60〜100、
4.25〜4.19 / 60〜100、
4.14〜4.08 / 5〜30、
3.92〜3.87 / 30〜80、
3.84〜3.80 / 5〜30、
3.54〜3.50 / 5〜30、
3.37〜3.33 / 5〜30、
3.24〜3.20 / 5〜30、
2.830〜2.804 / 10〜40、
2.750〜2.726 / 5〜30、
2.731〜2.707 / 5〜30、
2.659〜2.636 / 5〜30、
2.545〜2.524 / 5〜30、および
2.379〜2.361 / 5〜30
で定義されるピークを有するX線回折パターンを示す、多孔質結晶物質。
【請求項2】
実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有し、SOD骨格型を示し、かつ以下に記載されたd間隔範囲および相対強度範囲(d間隔範囲(Å)/相対強度範囲(%)):
12.5〜12.0 / 20〜70、
11.4〜10.9 / 60〜100、
8.36〜8.13 / 10〜40、
7.49〜7.30 / 20〜70、
6.72〜6.57 / 10〜40、
6.51〜6.37 / 20〜70、
6.22〜6.09 / 5〜30、
5.63〜5.52 / 30〜80、
5.44〜5.35 / 60〜100、
4.85〜4.77 / 5〜30、
4.65〜4.58 / 20〜70、
4.48〜4.42 / 60〜100、
4.15〜4.10 / 50〜90、
3.89〜3.84 / 5〜30、
3.77〜3.72 / 20〜70、
3.73〜3.69 / 20〜70、
3.41〜3.37 / 5〜30、
3.23〜3.20 / 10〜40、
3.10〜3.07 / 10〜40、
2.963〜2.934 / 5〜30、
2.770〜2.745 / 5〜30、
2.682〜2.659 / 5〜30、および
2.627〜2.605 / 20〜70
で定義されるピークを有するX線回折パターンを示す、多孔質結晶物質。
【請求項3】
実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有し、SOD骨格型を示し、かつ以下に記載されたd間隔範囲および相対強度範囲(d間隔範囲(Å)/相対強度範囲(%)):
12.3〜11.8 / 10〜40、
11.1〜10.7 / 60〜100、
8.25〜8.02 / 5〜30、
7.37〜7.20 / 5〜30、
6.60〜6.45 / 5〜30、
6.40〜6.26 / 10〜40、
5.52〜5.42 / 20〜70、
5.36〜5.26 / 30〜80、
4.40〜4.34 / 10〜40、および
4.08−4.03 / 5〜30
で定義されるピークを有するX線回折パターンを示す、多孔質結晶物質。
【請求項4】
実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有し、SOD骨格型を示し、かつ以下に記載されたd間隔範囲および相対強度範囲(d間隔範囲(Å)/相対強度範囲(%)):
12.6〜12.1 / 20〜70、
11.4〜10.9 / 60〜100、
8.39〜8.16 / 10〜40、
7.48〜7.29 / 5〜30、
6.51〜6.37 / 10〜40、
5.64〜5.53 / 10〜40、
5.44〜5.34 / 20〜70、
4.66〜4.59 / 5〜30、
4.48〜4.42 / 10〜40、
4.16〜4.10 / 10〜40、および
3.77〜3.72 / 5〜30
で定義されるピークを有するX線回折パターンを示す、多孔質結晶物質。
【請求項5】
実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有し、SOD骨格型を示し、かつ以下に記載されたd間隔範囲および相対強度範囲(d間隔範囲(Å)/相対強度範囲(%)):
12.5〜12.0 / 20〜70、
11.4〜11.0 / 60〜100、
8.39〜8.16 / 10〜40、
7.47〜7.28 / 5〜30、
6.52〜6.38 / 10〜40、
5.63〜5.53 / 20〜70、
5.44〜5.34 / 20〜70、
4.66〜4.59 / 5〜30、
4.49〜4.42 / 20〜70、
4.16〜4.10 / 20〜70、および
3.79〜3.74 / 5〜30
で定義されるピークを有するX線回折パターンを示す、多孔質結晶物質。
【請求項6】
気体を吸着する方法であって、前記気体を請求項1に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、前記気体を吸着する方法。
【請求項7】
前記気体が、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
気体を含む流体流から前記気体を分離する方法であって、前記流体流を請求項1に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、前記気体を前記流体流から分離する方法。
【請求項9】
前記気体が、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
気体を吸着する方法であって、前記気体を請求項2に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、前記気体を吸着する方法。
【請求項11】
前記気体が、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
気体を含む流体流から前記気体を分離する方法であって、前記流体流を請求項2に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、前記気体を前記流体流から分離する方法。
【請求項13】
前記気体が、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
気体を吸着する方法であって、前記気体を請求項3に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、前記気体を吸着する方法。
【請求項15】
前記気体が、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
気体を含む流体流から前記気体を分離する方法であって、前記流体流を請求項3に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、前記気体を前記流体流から分離する方法。
【請求項17】
前記気体が、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、多孔質結晶物質(又は多孔質結晶材料)、その合成およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
知られている多孔質結晶物質の1つのファミリーは、ゼオライト物質であり、これは頂点共有(corner−sharing)[TO]四面体(ここで、Tは、四面体配位の任意の陽イオンである)によって定義される、3次元の4結合骨格構造体(four−connected framework structure)に基づいている。このファミリーの中の知られている物質として、[SiO]頂点共有四面体単位の3次元の微孔質結晶骨格構造体を含むケイ酸塩、[SiO]および[AlO]頂点共有四面体単位の3次元の微孔質結晶骨格構造体を含むアルミノケイ酸塩、[AlO]および[PO]頂点共有四面体単位の3次元の微孔質結晶骨格構造体を含むアルミノリン酸塩、およびシリコアルミノリン酸塩(silicoaluminophosphates)(SAPO)(ここで、骨格構造体は、[SiO]、[AlO]および[PO]の頂点共有四面体単位から構成されている)がある。ゼオライト物質ファミリーには、200種類を超えるいろいろな多孔質骨格型(ポーラスフレームワークタイプ(porous framework types))が含まれ、その多くは触媒および吸着剤として高い商品価値を有する。
【0003】
ゼオライトイミダゾレート(zeolitic imidazolate)骨格またはZIFは、無機ゼオライト物質と似た特性を有する。ZIFは、[M(IM)]四面体結合(ここで、IMは、イミダゾレート型連結部分であり、Mは遷移金属である)に基づいている。こうした物質は一般に、ゼオライトイミダゾレート骨格またはZIFと呼ばれるが、それは、遷移金属に架橋する際にイミダゾレート(IM)によって形成される角度が、ゼオライトのSi−O−Si結合の角度145°と似ているからである。知られている多くのゼオライト構造体のZIF対応物が製造されてきた。さらに、これまでゼオライトに知られていなかった多孔質骨格型も製造されてきた。この研究の考察は、例えば、Yaghiおよびその共同研究者等の以下の刊行物中に見いだすことができる:非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、および非特許文献7。
【0004】
ZIF構造体に関するこの研究の多くは、特許文献1(その内容全体を本明細書に援用する)に要約されている。特に、特許文献1の刊行物は、一般構造:M−L−M[式中、Mは、遷移金属を含み、Lは、以下のI、II、III、またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される構造体を含む連結部分である]を含むゼオライト骨格を開示している。
【化1】
[式中、A、A、A、A、A、A、およびAは、CまたはNであってよく、R〜Rは、AおよびAがCを含むときに存在し、R、RまたはRは、Mを妨害しない立体障害を引き起こさない基を含み、R、R、R、R、R、R、R10、R11、およびR12はそれぞれ個別にアルキル、ハロ−、シアノ−、ニトロ−であり、M、M、M、M、M、およびMはそれぞれ遷移金属を含み、また連結部分が構造体IIIを含む場合に、R10、R11、およびR12はそれぞれ個別に電子吸引基である]。
【0005】
Ni等によるもっと最近の研究では、混合原子価のZIFの構造および合成が特許文献2に開示されている。特に、その著者等は、特許文献2の刊行物において、一般構造M−IM−M[式中、Mは、第1原子価を有する金属を含み、Mは、前記第1原子価とは異なる第2原子価を有する金属を含み、さらにIMは、イミダゾレートまたは置換イミダゾレート連結部分である]を含む四面体骨格を有する多孔質結晶物質を開示している。そのような物質は、時として、知られているZIF物質と同じ構造であると言うことができる。
【0006】
ZIF物質は、従来、金属イオン源およびイミダゾレートまたは置換イミダゾレートリンカー源を適切な溶媒に溶かして、反応混合物を生じさせ、その後、その反応混合物を、沈殿物として結晶ZIF物質を生じさせるのに十分な条件下に維持することによって、製造することができる。例えば、特許文献1では、ソルボサーマル技法を用いてZIF物質を製造できることが述べられている。こうした技法は、水和した金属塩(例えば、硝酸塩)とイミダゾール型の有機化合物とをアミド溶媒(N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)など)中で混合し、その後、得られた溶液を48〜96時間加熱して(例えば、85〜150℃)ゼオライト骨格を有する沈殿物にすることを含みうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0202038号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0307336明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】‘‘ゼオライトイミダゾレート骨格の例外的な化学的安定性および熱安定性(Exceptional Chemical and Thermal Stability of Zeolitic Imidazolate Frameworks)’’,Proceedings of the National Academy of Sciences of U.S.A.,Vol.103,2006,pp.10186−91
【非特許文献2】‘‘ ゼオライトAイミダゾレート骨格(Zeolite A Imidazolate Frameworks)’’,Nature Materials,Vol.6,2007,pp.501−6
【非特許文献3】‘‘ ゼオライトイミダゾレート骨格の高処理量の合成およびCO2捕捉への応用(High−Throughput Synthesis of Zeolitic Imidazolate Frameworks and Application to CO2 Capture)’’,Science,Vol.319,2008,pp.939−43
【非特許文献4】‘‘ 選択的二酸化炭素貯蔵体としてのゼオライトイミダゾレート骨格中の膨大なケージ(Colossal Cages in Zeolitic Imidazolate Frameworks as Selective Carbon Dioxide Reservoirs)’’,Nature,Vol.453,2008,pp.207−12
【非特許文献5】‘‘ 同じ配置形態のゼオライトイミダゾレート骨格における細孔寸法および官能性の制御およびそれらの二酸化炭素の選択的捕捉特性(Control of Pore Size and Functionality in Isoreticular Zeolitic Imidazolate Frameworks and their Carbon Dioxide Selective Capture Properties)’’,Journal of the American Chemical Society,Vol.131,2009,pp.3875−7
【非特許文献6】‘‘ 一連の同じ配置形態のゼオライトイミダゾレート骨格における二酸化炭素捕捉の複合的な実験的かつ計算機的研究(A Combined Experimental−Computational Investigation of Carbon Dioxide Capture in a Series of Isoreticular Zeolitic Imidazolate Frameworks)’’,Journal of the American Chemical Society,Vol.132,2010,pp.11006−8
【非特許文献7】‘‘ ゼオライトイミダゾレート骨格の合成、構造、および二酸化炭素捕捉特性(Synthesis,Structure,and Carbon Dioxide Capture Properties of Zeolitic Imidazolate Frameworks)’’,Accounts of Chemical Research,Vol.43,2010,pp.58−67
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ZIF物質を生じさせる沈殿法またはソルボサーマル法の1つの問題は、得られるゼオライト物質の骨格の型をほとんどまたは全く制御できないことである。例えば、文献で報告されているように、亜鉛イオンと5−アザベンゾイミダゾール分子との溶液からZIFが結晶化される場合、得られるZIF物質(すなわち、ZIF−22)はLTA骨格型を有する傾向がある(例えば、Yaghiおよびその共同研究者らによる前述の記事‘‘ ゼオライトAイミダゾレート骨格(Zeolite A Imidazolate Frameworks)’’(Nature Materials,Vol.6,2007,pp.501−6)を参照)。
【0010】
ZIF物質を生じさせるための沈殿法またはソルボサーマル法の別の問題は、イミダゾレート型リンカーにおける所望の官能基を所望の骨格型のZIFに組み込むことが困難または不可能でありうることである。上で述べたように、ZIF−22の従来の合成では、5−アザベンゾイミダゾレート(5−azabenzimidazolate)リンカーを有するLTA構造体が得られる。リンカー上の5−アザ基は、ルイス塩基としての官能性を有するので、それは、求電子中心を有する気体分子(二酸化炭素など)に対する親和性を有しうる。しかし、ZIF−22は、CO吸着に関してZIF物質における例外的なものではない。本出願の実施例5、またZIF−22のプリン対応物(すなわち、5位だけでなく、5位と7位の両方に「アザ」官能基を有する)であるZIF−20に関するCO吸着データ(前述のNature Materials 2007の記事で報告されている)を参照されたい。事実、Yaghiおよびその共同研究者らが、ZIFのCO吸着性能を、‘‘ ゼオライトイミダゾレート骨格の合成、構造、および二酸化炭素捕捉特性(Synthesis,Structure,and Carbon Dioxide Capture Properties of Zeolitic Imidazolate Frameworks)’’,Accounts of Chemical Research,Vol.43,2010,pp.58−67で考察した際に、ZIF−22もZIF−20も彼らによって言及すらされていなかった。理論に縛られることはないが、CO吸着におけるZIF−22のある程度の性能は、構造体内の5−アザベンゾイミダゾレートリンカーが互いに十分には接近していないことによるものと考えられ、十分に接近していないのは、骨格型LTAに大きなケージが存在する(すなわち、小さなβケージが大きなαケージで分離されている)ことによるものでありうる。したがって、CO吸着を向上させるためには、5−アザベンゾイミダゾレートリンカーを有するZIF組成物を有すること、および大きなケージが減少するか存在しないこと(例えば、骨格型SOD、すなわち、小さいβケージのみ)が極めて望ましいであろうが、この合成系に対して熱心に研究がなされたにも関わらず、従来法ではそれは製造されていない。
【0011】
したがって、得られる構造に対する制御もっと行える(例えば、所望の官能基を、所望の骨格型を有するZIF物質に組み込める)ZIF物質を製造するための方法を提供することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本明細書では、とりわけ、望ましいリンカーと骨格型(フレームワークタイプ)との組合せを有する改善されたZIF物質を得るための方法が提供される。
【0013】
本発明の一態様は、SOD骨格型を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物であって、前記ゼオライトイミダゾレート骨格の構造体が、約28℃の温度において、
(i)約75トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.60ミリモルのCO
(ii)約100トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.75ミリモルのCO
(iii)約200トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも1.15ミリモルのCO、および/または
(iv)約39トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.35ミリモルのCO
を収着することができる、ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物に関する。
【0014】
本発明の別の態様(これは第1の態様と関連付けられうる)は、実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物であって、前記ゼオライトイミダゾレート骨格の構造体が、約28℃の温度において、
(i)約75トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.60ミリモルのCO
(ii)約100トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.75ミリモルのCO
(iii)約200トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも1.15ミリモルのCO、および/または
(iv)約39トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.35ミリモルのCO
を収着することができる、ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物に関する。
【0015】
本発明のさらに別の態様(最初の2つの態様の一方または両方と関連付けられうる)は、実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有し、SOD骨格型であり、かつ表1b、表1d、表7b、表8bおよび表9bのいずれかに記載されたd間隔範囲および相対強度範囲で定義されるピークを有するX線回折パターンを示す、多孔質結晶物質に関する。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、気体を吸着する方法であって、前記気体(例えば、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンを含む)を、本発明の最初の3つの態様のいずれかに記載の多孔質結晶物質と接触させることを含む、気体を吸着する方法に関する。
【0017】
さらにもっと別の本発明の更なる態様(前の態様と関連付けられうる)は、前記気体(例えば、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンを含む)を含む流体流から気体を分離する方法であって、前記流体流を、本発明の最初の3つの態様のいずれかに記載の多孔質結晶物質と接触させることを含む、気体を流体流から分離する方法に関する。
【0018】
本発明のもっと更なる態様は、
(a)合成混合物を生じさせるために、反応媒質と、イミダゾレートまたは置換イミダゾレート反応物(IM)の源と、金属MおよびMの反応物源とをともに混合するステップ(又は工程)であって、MおよびMが同一または異なる金属陽イオン(又は金属カチオン)を含み、その反応物の少なくとも1つが反応媒質自体および合成混合物中に比較的不溶性である、混合するステップ(又は工程)と、
(b)少なくとも1つの比較的不溶性の反応物を有する前記合成混合物を、一般構造:M−IM−Mを含む四面体骨格を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を形成させるのに十分な条件下で維持するステップ(又は工程)と、
(c)前記ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を、その単位格子体積を安定的に減少させるのに十分な条件下で処理するステップ(又は工程)と
を含む、ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を形成させるための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1で製造した5種類の物質についての液体状態13C NMRスペクトル(125MHz)を示す。
図2図1に示すスペクトルの関連部分についての、経時的な相対強度の変化を示す。
図3】ZIF−8出発物質のX線回折パターン(上)、実施例1で回収された固体生成物のX線回折パターン(中間)、および単結晶データ(Proc.Nat.Acad.Sci.,U.S.A.,2006(103),10186−10191,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−7のスティックパターン(stick pattern)(下)を重ねたものである。
図4】実施例2における合成された時の状態のEMM−19生成物のX線回折パターン(上)および合成された時の状態のZIF−7のX線回折パターン(下)を重ねたものである。
図5】実施例3で測定された、活性ZIF−7および活性EMM−19についての固体状態マジック角回転13C NMR(125MHz)ピークを示す。
図6】実施例4で製造した合成された時の状態のZIF−22のX線回折パターン(上)、アセトニトリル交換ZIF−22のX線回折パターン(中間)、および活性ZIF−22のX線回折パターン(下)、ならびに単結晶データ(Nat.Mater.,2007(6),501−596,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−22のスティックパターンを重ねたものである。
図7】ZIF−7、ZIF−22、およびEMM−19(2つの異なる実験)についてのCO吸着/脱着等温線、ならびにZIF−7およびEMM−19についてのN吸着/脱着等温線を示す。
図8】ZIF−8出発物質のX線回折パターン(上)、実施例6の生成物のX線回折パターン(中間)、および単結晶データ(Nat.Mater.,2007(6),501−596,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−23のスティックパターン(下)を重ねたものである。
図9】実施例2の合成された時の状態のEMM−19のX線回折パターン(上)、実施例7の生成物のX線回折パターン(中間)、および単結晶データ(Proc.Nat.Acad.Sci.,U.S.A.,2006(103),10186−10191,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−8のスティックパターン(下)を重ねたものである。
図10】実施例8の生成物のX線回折パターン(上)、および単結晶データ(Proc.Nat.Acad.Sci.,U.S.A.,2006(103),10186−10191,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−8のスティックパターン(下)を重ねたものである。
図11】実施例9の生成物のX線回折パターン(上)、および単結晶データ(Proc.Nat.Acad.Sci.,U.S.A.,2006(103),10186−10191,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−8のスティックパターン(下)を重ねたものである。
図12】実施例10の生成物のX線回折パターン(上)、および単結晶データ(Proc.Nat.Acad.Sci.,U.S.A.,2006(103),10186−10191,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−7のスティックパターン(下)を重ねたものである。
図13】実施例10の活性生成物の固体状態13C NMRスペクトル(上)および活性ZIF−7の固体状態13C NMRスペクトル(下)を重ねたものある。
図14】実施例11の生成物のX線回折パターン(上)、および単結晶データ(Nat.Mater.,2007(6),501−596,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−23のスティックパターン(下)を重ねたものである。
図15】Materials Data JADE 9ソフトウェアを用いて実施例11の生成物のX線回折パターンを指数付けした結果を示す。
図16】実施例12における反応1の生成物のX線回折パターン(上)、および単結晶データ(Proc.Nat.Acad.Sci.,U.S.A.,2006(103),10186−10191,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−8のスティックパターン(下)を重ねたものである。
図17】実施例12における反応2の生成物のX線回折パターン(上)、および単結晶データ(Nat.Mater.,2007(6),501−596,Yaghi et al.)に基づいて計算されたZIF−23のスティックパターン(下)を重ねたものである。
図18】実施例11の生成物のX線回折パターン(上)および実施例12における反応3の生成物のX線回折パターン(下)を重ねたものである。
図19】実施例2の合成された時の状態のEMM−19のX線回折パターン(上)、実施例13の生成物のX線回折パターン(中間)、および紅亜鉛鉱(ZnO)の計算されたスティックパターン(下)を重ねたものである。
図20】実施例4における合成された時の状態のZIF−22のX線回折パターン(上)、実施例14の生成物のX線回折パターン(中間)、および実施例2における合成された時の状態のEMM−19のX線回折パターン(下)を重ねたものである。
図21】実施例19の生成物のX線回折パターン(中間);実施例2の手順に従って作られた生成物のX線回折パターン(上);および平均粒径が10nm以下である酸化亜鉛ナノ粉末(Strem Chemicalsのもの)のX線回折パターン(下)を重ねたものである。
図22】実施例22の生成物のX線回折パターン(中間);実施例2の手順に従って作られた生成物のX線回折パターン(上);および平均粒径が約20nmである酸化亜鉛(Alfa Aesarのもの)のX線回折パターン(下)を重ねたものである。
図23】実施例23の生成物のX線回折パターン(中間);実施例2の手順に従って作られた生成物のX線回折パターン(上);および平均粒径が約67nmである酸化亜鉛(Alfa Aesarのもの)のX線回折パターン(下)を重ねたものである。
図24】実施例26の生成物のX線回折パターン(中間);実施例2の手順に従って作られた生成物のX線回折パターン(上);および平均粒径が約200nm〜約500nmの範囲にある酸化亜鉛(Aldrichのもの)のX線回折パターン(下)を重ねたものである。
図25】ZIF−7、ZIF−22、EMM−19、およびEMM−19−STAR(3種類の異なる試料)(実施例36〜38)についてのCO吸着/脱着等温線、ならびにZIF−7、EMM−19、およびEMM−19−STAR(実施例37)についてのN吸着/脱着等温線を示す。
図26】実施例34〜38の生成物のX線回折パターン(下から上)を重ねたものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態の詳細な説明)
当該技術分野においてゼオライトイミダゾレート骨格(ZIF)組成物として知られているある特定の多孔質結晶物質を製造するための別の方法を、本明細書に開示する。こうしたZIF物質は、一般構造M−IM−M[ここで、MおよびMは同一または異なる金属を含み、IMはイミダゾレートまたは置換イミダゾレート連結部分である]を含む四面体骨格を有するものとして説明できる。「イミダゾレート」という用語は、本明細書のIM、IM、およびIMを表すのに使用するが、本発明による方法の様々な段階で、関連するIM/IMa/IMbは、反応順序における特定時点でのイミダゾール(中性電荷)であってもよいという点が注目される。とは言え、こうした成分が「イミダゾレート」という用語を用いて表されていても、それは単に便宜のため、また統一のためであって、それらが電荷を有する/電荷を非局在化している状況およびそれらが中性である状況の両方を包含することを理解すべきである。本明細書に記載の方法では、MおよびMの源及び/または連結部分(IM)の源は、少なくとも部分的に(例えば、液状媒体(溶媒/溶媒系)中のスラリーのような)固体形態であってよいが、従来のZIF合成技法では、通常は、反応物の溶媒和/溶液が必要とされる。本明細書でEMM−19およびEMM−19と呼ばれている新規のZIF物質、およびEMM−19及び/またはEMM−19を用いて気体(二酸化炭素など)を収着及び/または分離する方法も、本明細書に開示されている。
【0021】
本明細書に開示されている本発明の態様に関して関係のある教示について本明細書で具体的に言及されている刊行物はすべて、本明細書で引用された要素に対する特殊性ととともに、その全体を援用する。
【0022】
A.序論
文献に開示されているZIF物質の典型的な合成経路を、方式(又はスキーム)1として以下に要約する。その中で、Mは、遷移金属(典型的には、Zn、Co、Feなどの二価陽イオンの形)で、金属塩出発物質(典型的には、合成溶媒中に可溶性である)中に存在するものであり、IMは、イミダゾレートまたは置換イミダゾレートリンカーであり、H−IMは、IMの対応する中性分子(すなわち、IMのプロトン化された形)であり、MおよびMは、原子価の異なる2種類の金属であり、Mは、典型的には、金属塩出発物質(典型的には合成溶媒中に可溶性である)に存在する一価陽イオン(Li、Cu、Agなど)であり、さらにMは、典型的には、全体で−1電荷を有する陰イオン分子錯体であるテトラキス(1−イミダゾリル)メタレート中に存在する、三価の金属(B3+、Al3+、Ga3+など)である。こうした合成経路を本明細書では「従来法」と呼ぶ。
【化2】
【0023】
本明細書ではZIF合成の代替経路を説明する。この代替経路は、遷移金属反応物及び/またはイミダゾレート反応物が、溶媒中に、比較的不溶性の形態(固体形態など)で存在することに基づいている。この代替経路の一例は、以下の方式2に示すように、既存のZIF物質中のIMリンカーを交換することに基づいており、その方式の中で、ZIFは遷移金属の比較的不溶性の源であり、ZIFは生成物であり、Mは典型的には二価の遷移金属であり、さらにMおよびMは、典型的にはそれぞれ一価金属および三価金属である。こうした代替経路を本明細書では「交換法」と呼ぶ。
【化3】
上記の方式(又はスキーム)2に示すH−IMは、全体または一部を、IMの他の源(IMの塩など)で置き換えることができることを理解すべきである。
【0024】
既存のZIFを比較的不溶性の出発物質として用いることにより、交換法は、ZIFを合成するための従来法の本質的な制限のいくつかを克服できる可能性がある。例えば、従来法では、官能基をIMリンカーに組み込むと、それらの部分間に相互作用が生じうるし、それゆえに特定のオリゴマー構造体が反応混合物中に形成されうる。そのことにより、ZIF生成物の骨格型が制限されうる。しかし、そのような制限は、そのような官能基化リンカーの交換によって、所望の骨格型を有するあらかじめ形成されたZIFに入れることにより回避されうる。上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、従来合成では、金属イオンへの配位に関与する置換基を有する官能基化IMリンカーを使用すると、ZIF骨格の形成に必要な配位パターンが乱されうる。その結果、非多孔質骨格構造体が生じるかまたはばらばらの分子錯体さえ生じうる。しかし、理論に縛られることはないが、そのような官能基化リンカーが、交換によって、あらかじめ形成されたZIF構造体に入れられると、配位官能基の妨害が大きく減少すると予想されるであろう。さらに、上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、ZIF形成の反応速度および熱力学的現象を制御する重要な因子でありうるH−IMの脱プロトン化は、交換法では、ZIF出発物質内のIMリンカーを賢明に選択することにより、好都合なことに調整できる。さらにまた、上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、従来法では、比較的可溶性の成分を使用すると、ある特定の(平衡)骨格構造体が形成されうるが、一方、ある特定の反応物の利用しやすさを制限すると、いろいろな(非平衡)骨格構造体を得られるようにすることができる。それにより(任意選択的に、時には好ましいことに)望ましくかつ/または予想外の特性が得られる。
【0025】
ZIF合成の従来法における本質的制限の1つの具体例は、前述の‘‘ ゼオライトAイミダゾレート骨格(Zeolite A Imidazolate Frameworks)’’,Nature Materials,Vol.6,2007,pp.501−6,by Yaghi et al.中に見出される。その記事は、従来の3つのZIF合成(方式3)(それぞれ、プリン、5−アザベンゾイミダゾール、および4−アザベンゾイミダゾールを有機リンカーとして使用)に関する系統的研究について報告している。リンカー/金属のモル比(5〜10)、金属濃度(0.05〜0.2mol/L)、金属源(硝酸亜鉛および硝酸コバルト)、結晶化温度(65℃〜150℃)、結晶化時間(1〜3日間)、および塩基の添加(メタノール中にジメチルアミンを2mol/L含む溶液)を含め広い合成条件範囲(synthesis space)を研究した後、著者らは、4−アザベンゾイミダゾールリンカーを使用した系では常に骨格型DIA(ダイヤモンドの省略形)を有する非多孔質ZIFが生じるが、プリンおよび5−アザベンゾイミダゾールリンカーを用いた系では常に骨格型LTA(Linde型Aの省略形)を有する多孔質ZIF物質が作り出されることに気付いた。その結果は、Yaghi等による最近の包括的総説で裏付けられた(‘‘ ゼオライトイミダゾレート骨格の合成、構造、および二酸化炭素捕捉特性(Synthesis,Structure,and Carbon Dioxide Capture Properties of Zeolitic Imidazolate Frameworks)’’ ,Accounts of Chemical Research,Vol,43,2010,pp.58−67の表1を参照)。Nature Materials 2007の記事では、その著者らは、結晶学的データに基づいて、その発見を、プリンおよび5−アザベンゾイミダゾールの5位および6位のC−N結合の極性から生じる好ましい分子間相互作用(方式4)および4−アザベンゾイミダゾールにおけるその欠落による結果であるとした。そのような引力相互作用が、骨格型LTAの極めて重要な構築単位である二重4環(double 4−ring)(D4R)を安定化するという理論が立てられた。こうした刊行物すべてが、溶媒媒体中に比較的可溶性であるイミダゾレートおよび金属源(金属硝酸塩など)が反応物として利用された状況を説明している。たとえ可溶性配合物を用いても信頼性のある有用なZIF物質を得るのは困難であるため、溶媒媒体中に比較的不溶性である金属源及び/またはイミダゾレート源の研究はほとんど行われなかったと思われる。
【化4】
【化5】
【0026】
本明細書に示されているように、交換法を用いることにより、D4R単位の形成を回避し、5−アザベンゾイミダゾールを用いて、従来法で得られる骨格型とは異なる骨格型(「非平衡」骨格)(すなわち、LTAではなく、骨格型SOD(ソーダライトの省略形)を有する新規のZIF物質を合成することが可能となりうる。その骨格型は、βケージが、D4R単位で結合されるのではなく4環を直接共有することで結合される骨格型である。具体的には、この非平衡骨格型の一例は、5−アザベンゾイミダゾールの交換により、よく知られている市販のZIF−8物質(骨格型SODを有するZn(2−メチルイミダゾレート))に入れることにより得られる。本明細書に開示されている新規の組成物(すなわち、非平衡骨格型SODを有するZn(5−アザベンゾイミダゾレート))は、本明細書ではEMM−19と呼ぶ。
【0027】
さらに、ある条件下では、比較的不溶性の反応物を反応させて、比較的可溶性の反応物を用いて作られた骨格型とは骨格型が(それぞれの物質の化学組成が普通は同一であるとしても)まったく異なるZIF物質を生じさせることができることも、予想外に見出された。例えば、硝酸亜鉛および5−アザベンゾイミダゾールは、N,N−ジメチルホルムアミドとトリエチルアミンとを一緒にしたものの中で溶かした形で反応させて、(平衡)骨格型LTAを有するZn(5−アザベンゾイミダゾレート)(すなわち、ZIF−22。例えば、以下の実施例4を参照)を形成させることができるが、ある特定粒径の比較的不溶性の酸化亜鉛は、N,N−ジメチルホルムアミド中の5−アザベンゾイミダゾールと混ぜ合わせて、非平衡骨格型SODを有するZn(5−アザベンゾイミダゾレート)(すなわち、EMM−19。例えば、以下の実施例13、16〜24、26、および28を参照)を生じさせることができる。溶媒/溶媒系/反応媒質中に(本明細書において使用される)「比較的不溶性」の反応物は、反応媒質中の実質的に目に見える微粒子の外観(例えば、スラリーのように見える)を示すと理解されるべきであり、かつ/または反応条件において溶媒/溶媒系/反応媒質中で50%未満の溶解度(例えば、約60%未満の溶解度、約70%未満の溶解度、約75%未満の溶解度、約80%未満の溶解度、約85%未満の溶解度、約90%未満の溶解度、または約95%未満の溶解度)を有すると理解すべきである。本明細書で使用される個々の反応物は、例えば、反応条件において適度な撹拌(例えば、約10〜40rpm)を約1時間行った後に、各反応物の50重量%未満が個別に溶媒/溶媒系/反応媒質に溶解する場合、あるいはその逆に、反応条件において適度な撹拌(例えば、約10〜40rpm)を約1時間行った後に、各反応物の少なくとも50重量%が、溶媒/溶媒系/反応媒質中に溶けないままである場合、50%未満が可溶であると定義される。
【0028】
EMM−19は、望ましい気体吸着特性を示すことが見出された。気体の保存および分離にZIFを使用することは、Yaghiとその共同研究者等によるPCT刊行物(国際公開第2008/140788号公報(名称「多成分気体の吸着気体分離(Adsorptive Gas Separation of Multi−Component Gases)」)およびReyes,Niおよびその共同研究者等による一連の刊行物(米国特許出願公開第2009/0211440号明細書(名称「ゼオライトイミダゾレート骨格物質を利用した炭化水素からの水素の分離(Separation of Hydrogen from Hydrocarbons Utilizing Zeolitic Imidazolate Framework Materials」;米国特許出願公開第2009/0211441号明細書(名称「ゼオライトイミダゾレート骨格物質を利用したメタンからの二酸化炭素の分離(Separation of Carbon Dioxide from Methane Utilizing Zeolitic Imidazolate Framework Materials)」;米国特許出願公開第2009/0214407号明細書(名称「ゼオライトイミダゾレート骨格物質を利用した窒素からの二酸化炭素の分離(Separation of Carbon Dioxide from Nitrogen Utilizing Zeolitic Imidazolate Framework Materials」);および米国特許出願公開第2009/0216059号明細書(名称「ゼオライトイミダゾレート骨格物質を利用した高炭素数炭化水素からのメタンの分離(Separation of Methane from Higher Carbon Number Hydrocarbons Utilizing Zeolitic Imidazolate Framework Materials」)に記録されている。Reyes,Ni,およびその共同研究者等による研究に開示されているもっとも印象的な例は、骨格型SODを有するZIF−7(Zn(ベンゾイミダゾレート)の1つ)の室温でのCO吸着等温線に見ることができる。等温線はヒステリシス形状を有し、60kPa(0.6atm)の低いCO分圧から始まる吸着枝の急激な上昇を特徴としている。これは、好ましい骨格とCOとの相互作用によって引き起こされる構造転移を示し、これによりZIF−7はCOを分離するための有望な物質となる。我々はこのほど、基本的なヘテロ原子(窒素など)をZIF−7のリンカーに組み込むことにより(例えば、ベンゾイミダゾレートを5−アザベンゾイミダゾレートと交換してEMM−19を作り出すことにより)、骨格とCOとの相互作用を増大させることができ、好ましいCO吸着のためのしきい分圧をさらに減少させることができることを見いだした。
【0029】
B.リンカー交換ZIF合成法
本明細書に記載する交換法のステップでは、第1ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を用意するかまたは選択することができる。第1ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物(ZIF)は、第1有機リンカー構成成分(IM)を有することができる。未反応種または不純物は、第2有機リンカー構成成分(IM)と交換する前に、好ましくは、合成された時の形態のZIFから除去することができる。こうした未反応種または不純物は、適切な技法(例えば、洗浄および乾燥を伴うもの)によって除去してよい。例えば、合成された時の形態のZIFは、好適な溶媒(DMFなど)で洗浄し、その後、メタノール、アセトニトリルなどで溶媒交換し、溶媒をデカントし、乾燥させる(例えば、真空下において約250℃で)ことができる。未反応種または不純物が十分に(実質的に)除去された第1ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物は、民間製造業者から購入することができる。
【0030】
この方法の別のステップでは、第2有機リンカー構成成分(IM)を含む液体組成物を用意することができる。第2有機リンカー構成成分は、液体組成物中に、例えば、イミダゾレート型リンカー構成成分のプロトン化形態の形で、及び/またはイミダゾレート型リンカー構成成分の塩の形で存在してよい。イミダゾレート型リンカー構成成分のこのプロトン化形態を、本明細書ではH−IMと呼ぶ。第2有機リンカー構成成分(IM)は、多くの実施形態で、第1有機リンカー構成成分(IM)とは異なりうる。IMは、有利には、IM中にない官能基を含むことができる。
【0031】
液体組成物は、溶媒中に第2有機リンカー構成成分(IM)を含んでいる溶液を含みうる。溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1,3−ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシドまたはDMSO)、ホスホルアミド(例えば、ヘキサメチルホスホルアミド)、アセトニトリル(MeCN)、トリエチルアミン(TEA)、またはこれらの組合せなどの極性有機溶媒であってよい。あるいはまた、厳密に有機ではないが、アンモニア水およびエタノール混合物などの水性溶媒を、リンカー構成成分の溶媒として使用できる。
【0032】
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの極性有機化合物が、本明細書では溶媒として提案されているが、本発明による方法に役立ち、かつ/または本発明による生成物を作るのに役立つ溶媒(または溶媒系)は、少なくとも、反応が適当な速度で(または適当な反応時間にわたって)生じるようにさせるのに必要な程度まで、反応物を溶媒和させかつ/または可溶化することができるべきであることを理解すべきである。それらはまた、典型的には操作/反応条件で(任意選択ではあるが、好ましくは標準温度および圧力においても)実質的に液相中に存在することができる。さらに、ある特定のZIFを合成する場合、溶媒系は、(例えば、溶媒の一成分が十分に塩基性でない場合(ただし、これに限定されない))反応が進行するようにするために、ブレンステッドまたはルイス塩基(水素受容体)成分を含んでいる必要がありうる。そのブレンステッドまたはルイス塩基成分が、単一溶媒分子自体の一部を含むか、または水素受容体官能基を有する別個の成分を含むかは、必ずしも決定的に重要ではない。溶媒/溶媒系のこうした側面は、「従来の」(ソルボサーマルなど)合成ならびに本明細書に詳述しているリンカー交換合成法にも同様に適用できることをさらに理解すべきである。というのは、前述の側面は、一般的にはZIF及び/またはMOF合成反応に有利に関わりうるからである。
【0033】
ある特定の実施形態では、本発明において特に有用な溶媒(及び/または溶媒系)は、上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、比較的高い蒸気圧及び/または比較的低い沸点を示しうる。例えば、一部のそのような実施形態では、比較的高い蒸気圧は、約20℃で少なくとも2.5kPa、例えば、約20℃で少なくとも約3.0kPa、約20℃で少なくとも約3.5kPa、約20℃で少なくとも約4.0kPa、約20℃で少なくとも約4.5kPa、約20℃で少なくとも約5.0kPa、約20℃で少なくとも約5.5kPa、約20℃で少なくとも約6.0kPa、約20℃で少なくとも約6.5kPa、約20℃で少なくとも約7.0kPa、約20℃で少なくとも約7.5kPa、約20℃で少なくとも約8.0kPa、約20℃で少なくとも約8.5kPa、約20℃で少なくとも約9.0kPa、または約20℃で少なくとも約9.5kPaに相当しうる。任意選択的に、蒸気圧の上限が必要でありかつ/または望ましい場合、比較的高い蒸気圧は、約20℃で約30kPa以下、例えば、約20℃で約25kPa以下、約20℃で約20kPa以下、約20℃で約15kPa以下、または約20℃で約10kPa以下でありうる。上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、一部のそのような実施形態では、比較的低い沸点は、99℃以下、例えば、約98℃以下、約96℃以下、約95℃以下、約93℃以下、約91℃以下、約90℃以下、約88℃以下、約86℃以下、約85℃以下、約83℃以下、約81℃以下、または約80℃以下に相当しうる。任意選択的に、沸点の下限が必要でありかつ/または望ましい場合(好ましくは、溶媒は、液相中にあるようにするため、周囲温度より上の沸点を有することができる)、比較的低い沸点は、少なくとも約25℃、例えば、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、少なくとも約40℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃、少なくとも約70℃、少なくとも約75℃、または少なくとも約80℃でありうる。比較的低い沸点および比較的高い蒸気圧の両方を有するそのような溶媒系の非限定例の一つに、アセトニトリルとトリエチルアミンとの混合物がある。
【0034】
この方法の別のステップでは、第1ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物(ZIF)を、IMを含む液体組成物と接触させることができる。この接触は、(1)第1ZIF、(2)溶媒、および(3)IM源(H−IMなど)を任意の順序で混ぜ合わせることにより、行わせることができる。例えば、ZIFおよびH−IMを最初に混ぜ合わせ、それから溶媒をその混ぜ合わせたものに加えて、H−IMを含む液体組成物の形成およびこの組成物とZIFとの接触を同時に行わせることができる。都合の良い実施形態では、IM源を最初に溶媒に溶かし、得られた溶液をZIFに加えるか、またはZIFを溶液に加えることができる。
【0035】
第1ZIF(ZIF)中の第1有機リンカー(IM)と、ZIFと液体混合物(IMを含む)とを接触させるかまたは一緒にした混合物中のIMとのモル比は、0.1〜20、例えば、0.1〜15、0.1〜10、0.1〜7、0.1〜5、0.1〜3、0.1〜2、0.1〜1.5、0.2〜20、0.2〜15、0.2〜10、0.2〜7、0.2〜5、0.2〜3、0.2〜2、0.2〜1.5、0.3〜20、0.3〜15、0.3〜10、0.3〜7、0.3〜5、0.3〜3、0.3〜2、0.3〜1.5、0.5〜20、0.5〜15、0.5〜10、0.5〜7、0.5〜5、0.5〜3、0.5〜2、0.5〜1.5、0.8〜20、0.8〜15、0.8〜10、0.8〜7、0.8〜5、0.8〜3、0.8〜2、0.8〜1.5、1〜20、1〜15、1〜10、1〜7、1〜5、1〜3、1〜2、1〜1.5、1.5〜20、1.5〜15、1.5〜10、1.5〜7、1.5〜5、1.5〜3、1.5〜2、2〜20、2〜15、2〜10、2〜7、2〜5、または2〜3であってよい。IMをIMで完全に交換、または実質的に完全に交換(例えば、少なくとも90%)することが望ましい場合、IMとH−IMとのモル比は、有利には、少なくとも1、例えば、少なくとも1.2、少なくとも1.5、または少なくとも2であってよい。
【0036】
ZIFと、IMを含む液体組成物とを一緒にした混合物を、少なくとも部分的にIMをIMと交換するのに十分な条件下に維持し、それによってZIFからZIFへの少なくとも部分的な交換を効率的に行うことができる。接触は、少なくとも部分的な交換を達成するのに十分な時間にわたって行わせることができ、例えば、少なくとも1時間から10日間もの間、1時間〜7日間、1時間〜5日間、1時間〜3日間、2時間〜10日間、2時間〜7日間、2時間〜5日間、2時間〜3日間、4時間〜10日間、4時間〜7日間、4時間〜5日間、4時間〜3日間、8時間〜10日間、8時間〜7日間、8時間〜5日間、8時間〜3日間、12時間〜10日間、12時間〜7日間、12時間〜5日間、12時間〜3日間、18時間〜10日間、18時間〜7日間、18時間〜5日間、18時間〜3日間、24時間〜10日間、24時間〜7日間、24時間〜5日間、または24時間〜3日間行わせることができる。ZIFと、IMを含む液体組成物とを一緒にした混合物の温度は、例えば、約−78℃(ドライアイス浴温)〜溶媒の沸点(N,N−ジメチルホルムアミドの標準沸点は約153℃である)の温度、約0℃(氷水浴温)〜溶媒の沸点より少なくとも10℃低い温度、または約15℃〜溶媒の沸点より少なくとも15℃低い温度(あるいは約100℃)の範囲であってよい。接触を圧力容器内で行う場合、温度は溶媒の沸点を超えてもよい。例えば、接触は、室温またはそれ以上(約18℃〜約200℃または約75℃〜約150℃)で実施してよい。IMをIMで完全に交換するかまたは実質的に完全に(例えば、90%以上)交換することが望まれるある特定の実施形態では、接触時間を20時間〜72時間にし、接触温度を130℃〜150℃にしてよい。
【0037】
IMとの交換によってZIFを交換してZIFを形成させた後、ZIFを回収し、必要または所望であれば(例えば、ZIFの孔隙から分子を除去するために)処理することができる。この処理は、例えば、米国特許出願公開第2007/0202038号明細書および米国特許出願公開第2009/0211440明細書に記載されているソルボサーマル法で製造された合成された時の形態のZIFを活性化するための技法を含みうる。例えば、回収したZIFをDMFで洗浄し、アセトニトリルで溶媒交換し(例えば、約3日間のうちに3回交換)、乾燥させる(例えば、真空下において約200℃で約3時間)ことができる。次いで、乾燥生成物をアセトニトリルに(例えば、約75℃で約24時間)浸し、その後、新鮮なアセトニトリルで最終洗浄して、アセトニトリル交換生成物を得ることができる。最後に、アセトニトリル交換生成物を、真空(例えば、約10ミリトル未満)下に約70℃で約10〜18時間置いて、活性形態のZIFを得ることができる。
【0038】
およびMは、米国特許出願公開第2007/0202038号明細書でZIFに関して記載されている1種または複数種の遷移金属であってよい。そのような遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Lr、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rg、およびUubを挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0039】
およびMは、これらに加えて、またはこれらの代わりに他の金属を含んでもよい。例えば、米国特許出願公開第2010/0307336号明細書に記載されているように、Mは第1原子価を有する金属であってよく、Mは前記第1原子価とは異なる第2原子価を有する金属であってよい。
【0040】
そのような実施形態の1つでは、Mは、一価金属陽イオンであってよく、それには、Li、Na、K、Cs、Rb、Cu、Ag、及び/またはAuが含まれる(例えば、Li、Cu、及び/またはAgを含むかまたはそうしたものであり、特に、Liを含むかこれである)。上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、そのような実施形態では、Mは、三価元素陽イオンであってよく、それには、B3+、Al3+、Ga3+、In3+、Fe3+、Cr3+、Sc3+、Y3+、及び/またはLa3+(Laは任意のランタニド金属)が含まれる(例えば、B3+、Al3+、及び/またはGa3+が含まれ、特にB3+が含まれる)。
【0041】
ある特定の実施形態では、MおよびMは両方とも同じであってもよい。MおよびMがどちらも同じである場合、それらは有利には、遷移金属(例えばZn)を含むか、またはそれであってよい。
【0042】
本明細書に記載のゼオライトイミダゾレート骨格物質(例えば、ZIFおよびZIF)は、IV、V、VI、またはそれらの任意の組合せ:
【化6】
[式中、A、A、A、およびAはそれぞれ独立に、C、N、P、およびBからなる元素群から選択することができ、A、A、およびAのそれぞれはCまたはNであってよく;R〜Rは、その対応するA〜AがCを含む場合、それぞれが存在することができ;R、R、及び/またはRは、有利には、隣接するMまたはMを(実質的に)妨害しない立体障害を引き起こさない基を含み;RおよびR(ならびに、存在する場合にはR、R、R、及び/またはRも)は、それぞれ個別に水素、アルキル、ハロ、シアノ、またはニトロであってよく;MおよびMは、同一または異なる金属陽イオンを含んでよく;さらにR10〜R12は、その対応するA〜AがCを含む場合には個別に存在することができ、その場合、存在しているR10〜R12の1つまたは複数が任意選択的に(ただし、有利には)電子吸引基であってよい]
からなる群から選択される構造体を含む四面体骨格を有しうる。
【0043】
1つの実施形態では、R、R、およびRの各々は、水素、メチル、エチル、ニトロ、ホルミル、ハロ、およびシアノの各基から独立に選択することができる。
【0044】
10、R11、およびR12のそれぞれの好適な電子吸引基としては、ニトロ、シアノ、フルオロ、およびクロロの各基を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0045】
特定の実施形態の例によれば、第1ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物は、式IVの構造体を含むことができ、第2ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物は式Vの構造体を含むことができる。
【0046】
本明細書に記載のゼオライトイミダゾレート骨格物質のファミリーメンバーの例には、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XVIII、およびこれらの組合せからなる群から選択される構造体が含まれうる:
【化7】
【化8】
【化9】
【0047】
上記の式のイミダゾレート連結部分は、例えば、Yaghiおよびその共同研究者等によって、とりわけ以下の刊行物で報告されている従来のZIF合成にうまく使用されてきた:‘‘ ゼオライトイミダゾレート骨格の例外的な化学的安定性および熱安定性(Exceptional Chemical and Thermal Stability of Zeolitic Imidazolate Frameworks)’’,Proceedings of the National Academy of Sciences of U.S.A.,Vol.103,2006,pp.10186−91;‘‘ ゼオライトイミダゾレート骨格(Zeolite A Imidazolate Frameworks)’’,Nature Materials,Vol.6,2007,pp.501−6;‘‘ ゼオライトイミダゾレート骨格の高処理量の合成およびCO捕捉への応用(High−Throughput Synthesis of Zeolitic Imidazolate Frameworks and Application to CO Capture)’’,Science,Vol.319,2008,pp.939−43;‘‘ 選択的二酸化炭素貯蔵体としてのゼオライトイミダゾレート骨格中の膨大なケージ(Colossal Cages in Zeolitic Imidazolate Frameworks as Selective Carbon Dioxide Reservoirs)’’,Nature,Vol.453,2008,pp.207−12;および‘‘ 分子としての結晶:合成後のゼオライトイミダゾレート骨格の共有結合官能基化(Crystalsas Molecules:Postsynthesis Covalent Functionalization of Zeolitic Imidazolate Frameworks)’’,Journal of the American Chemical Society,Vol.130,2008,pp.12626−7。
【0048】
本明細書に記載された交換法の特定実施形態の例によれば、第1ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物は、式:VII、VIII、IX、X、XIおよび/またはXIIの構造体(例えば、式:VIIIの構造体)を含むことができ、第2ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物は、式:XIII、XIV、XV、XVI、XVIIおよび/またはXVIIIの構造体(例えば、式:XIII、XIV、XVおよび/またはXVIの構造体、または式XVの構造体)を含むことができる。
【0049】
C.固体金属酸化物(比較的不溶性の反応物)合成法
本明細書に記載のリンカー交換法は、反応媒質に比較的不溶性である反応物を用いてZIF物質を形成させる一例であることに注目すべきである。リンカー交換の場合、金属源は、典型的には反応媒質に比較的不溶性である第1ZIF(つまりZIF)であってよく、それは実施可能なものである。とは言え、金属の比較的不溶性の源の別の例として、金属酸化物などの無機金属化合物を挙げることができる。一般に、以下の方式3は、「従来」合成法の金属酸化物類似法(本明細書では「固体金属酸化物」法と呼ぶ)を示し、その中で、Mは、典型的には、上述したような二価の遷移金属であり、MおよびMは、典型的には、それぞれ上述したような一価および三価の金属であり、IMは、イミダゾレートまたは置換イミダゾレートであり、H−IMはIMの対応する中性分子(すなわち、プロトン化された形のIM)である。
【化10】
【0050】
固体金属酸化物法の驚くべき側面の一つは、ZIF物質が、非平衡骨格型(すなわち、比較的可溶性の反応物が関係する従来の合成法によって得られるものとは異なり、かつ/または標準/予想合成条件下において比較的可溶性の反応物で従来合成法を用いて得られるものとは異なる骨格型)と一致する化学組成を有しうるという点でありうる。有利には、非平衡骨格型では、得られたZIF生成物が、更なる用途に使用でき、かつ/またはもっと経済的な用途に使用できるようになりうる。しかし、場合によっては、固体金属酸化物法は、化学組成と骨格型とを確実に一致させるのに利用できる唯一の反応方式でありうるので、それは、そうした理由で望ましいものでありうる。他の場合には、固体金属酸化物法は、例えば、従来(比較的可溶性の)合成法及び/またはリンカー交換法と比べて、化学組成と骨格型とを確実に一致させるより効率的な(または最も効率的な)反応方式でありうる。
【0051】
しかしながら、たとえ固体金属酸化物方式の生成物が、平衡骨格型(すなわち、標準/予想合成条件下において比較的可溶性の反応物による従来合成法を用いて得ることのできる/得られたものと類似または同一の骨格型)を有するとしても、固体金属酸化物法は、有利には、リンカー交換方式よりも比較的きれいでありうるので、依然として有利でありうると考えられる。確かに、固体金属酸化物方式では、無機酸化物は2つの陽子を吸収して、反応時に副生成物として水のみを生じ、この反応の間に、更なるイミダゾレート副生成物(方式2に示されている)も金属塩対イオン副生成物(方式1に示されていない)も不純物として形成されない。さらに、水副生成物がいっそう環境に優しいこと、また金属酸化物反応物がどこにでもあることは、この方式が、他の2つの方式よりも商業規模への拡大にとっていっそう有利であろうことを示唆するものとなりうる。
【0052】
具体的には、ZIFの固体金属酸化物合成法は、以下のステップを含むことができる:(a)反応媒質中にイミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)の源を含む液体組成物を用意するステップ;(b)金属MおよびM(ここで、MおよびMは同一または異なる金属陽イオンを含む)の源を用意するステップであって、その金属源の少なくとも1種が、反応媒質中および液体組成物中に比較的不溶性である金属酸化物である、金属源を用意するステップ;および(c)一般構造M−IM−Mを含む四面体骨格を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を製造するのに十分な条件下で、液体組成物を金属源と接触させるステップ。有利な実施形態では、生成物であるゼオライトイミダゾレート骨格の組成物の骨格型は、実質的に可溶性のM、MおよびIMの源を、同じ(あるいは異なる)反応媒質中で結晶化させてゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を製造する場合に得られる骨格型とは異なっていてよい。
【0053】
この固体金属酸化物合成法は、「比較的不溶性の反応物」合成法にさらに一般化することができ、それは以下のステップを含みうる:(a)反応媒質、イミダゾレートまたは置換イミダゾレート反応物(IM)の源、および金属MおよびMの反応物源を混合して合成混合物を形成させるステップであって、MおよびMが同一または異なる金属陽イオンを含み、その反応物の少なくとも1種が反応媒質自体および合成混合物に比較的不溶性である、混合ステップ;および(b)少なくとも1種の比較的不溶性の反応物を有する合成混合物を、一般構造M−IM−Mを含む四面体骨格を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を形成させるのに十分な条件下に維持するステップ。ここでも、有利な実施形態では、生成物であるゼオライトイミダゾレート骨格の組成物の骨格型は、実質的に可溶性のM、MおよびIMの源を、同じ(あるいは異なる)反応媒質中で結晶化させてゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を製造する場合に得られる骨格型とは異なっていてよい。
【0054】
反応媒質としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1,3−ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシドまたはDMSO)、ホスホルアミド(例えば、ヘキサメチルホスホルアミド)、アセトニトリル(MeCN)、トリエチルアミン(TEA)、またはこれらの組合せなどの極性有機溶媒を挙げることができるが、これらに限定されない。あるいはまた、厳密な有機ではないが、アンモニア水およびエタノール混合物などの水性溶媒を溶媒/液体媒体として使用できる。
【0055】
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などの極性有機化合物が本明細書では溶媒として提案されているが、本発明による方法に役立ち、かつ/または本発明による生成物を作るのに役立つ溶媒(または溶媒系)は、少なくとも、反応が適当な速度で(または適当な反応時間にわたって)生じるようにさせるのに必要な程度まで、反応物を溶媒和させかつ/または可溶化することができるべきであることを理解すべきである。それらはまた、典型的には操作/反応条件で(任意選択ではあるが、好ましくは標準温度および圧力でも)実質的に液相中に存在することができる。さらに、ある特定のZIFを合成する場合、溶媒系は、(例えば、溶媒の1成分が十分に塩基性でない場合(ただし、これに限定されない))反応が進行するようにするために、ブレンステッドまたはルイス塩基(水素受容体)成分を含んでいる必要がありうる。そのブレンステッドまたはルイス塩基成分が、単一溶媒分子自体の一部を含むか、または水素受容体官能基を有する別個の成分を含むかは、必ずしも決定的に重要ではない。ZIF合成の溶媒(溶媒系)のこうした側面は、「従来の」(ソルボサーマルなど)合成、ならびに本明細書に詳述したリンカー交換合成法にも同様に当てはまりうることをさらに理解すべきである。
【0056】
ある特定の実施形態では、本発明において特に有用な溶媒(及び/または溶媒系)は、上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、比較的高い蒸気圧及び/または比較的低い沸点を示しうる。明確にするため、どんな反応が起こるよりも前の(したがって、任意の反応生成物または副生成物(水など)が存在するようになる前の)こうした特性を、溶媒(及び/または溶媒系)に関連して定義しておく。例えば、一部のそのような実施形態では、比較的高い蒸気圧は、約20℃で少なくとも1.0kPa、例えば、約20℃で少なくとも1.5kPa、約20℃で少なくとも2.0kPa、約20℃で少なくとも2.5kPa、約20℃で少なくとも約3.0kPa、約20℃で少なくとも約3.5kPa、約20℃で少なくとも約4.0kPa、約20℃で少なくとも約4.5kPa、約20℃で少なくとも約5.0kPa、約20℃で少なくとも約5.5kPa、約20℃で少なくとも約6.0kPa、約20℃で少なくとも約6.5kPa、約20℃で少なくとも約7.0kPa、約20℃で少なくとも約7.5kPa、約20℃で少なくとも約8.0kPa、約20℃で少なくとも約8.5kPa、約20℃で少なくとも約9.0kPa、または約20℃で少なくとも約9.5kPaに相当しうる。任意選択的に、蒸気圧の上限が必要であり、かつ/または望ましい場合、比較的高い蒸気圧は、約20℃で約30kPa以下、例えば、約20℃で約25kPa以下、約20℃で約20kPa以下、約20℃で約15kPa以下、または約20℃で約10kPa以下でありうる。上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、一部のそのような実施形態では、比較的低い沸点は、約140℃以下、例えば、約130℃以下、約120℃以下、約110℃以下、約105℃以下、約100℃以下、99℃以下、約98℃以下、約96℃以下、約95℃以下、約93℃以下、約91℃以下、約90℃以下、約88℃以下、約86℃以下、約85℃以下、約83℃以下、約81℃以下、または約80℃以下に相当しうる。任意選択的に、沸点の下限が必要であり、かつ/または望ましい場合(好ましくは、溶媒は、液相中にあるようにするため、周囲温度より高い沸点を有することができる)、比較的低い沸点は、少なくとも約25℃、例えば、少なくとも約30℃、少なくとも約35℃、少なくとも約40℃、少なくとも約45℃、少なくとも約50℃、少なくとも約55℃、少なくとも約60℃、少なくとも約65℃、少なくとも約70℃、少なくとも約75℃、または少なくとも約80℃でありうる。比較的低い沸点および比較的高い蒸気圧の両方を有するそのような溶媒系の非限定例の1つに、アセトニトリルとトリエチルアミンとの混合物がある。
【0057】
およびMがどちらも(同じものであるにしても、異なるものであるにしても)二価の金属である場合、それらは各々有利には、周期律表の2族の金属、遷移金属、または希土類金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Lr、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rg、およびUubからなる群から選択される)(Znなど)を含むことができる。Mが一価の金属であり、Mが三価の金属である場合、Mは、周期律表の1族の金属または一価の遷移金属(例えば、Li、Na、K、Cs、Rb、Cu、Ag、またはAu;Li、Cu、またはAgなど;またはLiなど)を含むことができ、Mは、周期律表の13族の金属または三価の遷移金属(例えば、B、Al、Ga、In、Fe、Cr、Sc、Y、またはLa;B、Al、またはGaなど;Bなど)を含むことができる。
【0058】
そのような金属の源は、有利には、少なくともリンカー交換法および固体金属酸化物法において、任意選択的に(ただし、好ましくは)比較的不溶性の反応物法においても、反応媒質に比較的不溶性の少なくとも1種の反応物にすることができる。比較的不溶性の金属源の例は、反応媒質の性質によって(時には、大きく)異なりうるし、典型的には無機でありうるし(ただし、必ずしもそうである必要ではない)、またその例として、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、窒化物、リン化物、硫化物、ハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、及び/またはヨウ化物など)など、またはこれらの組合せを挙げることができるが、決してそれらに限定されない。明らかに、1つの好ましい実施形態では、金属の源は酸化物を含みうる。
【0059】
金属源が比較的不溶性であることは、ZIF物質をまずまずの収量で合成できること、ZIF物質を本当にうまく合成できること、及び/または、許容できるレベル及び/または許容できるタイプの不純物を有するZIF物質を得ることができることを必ずしも意味しない。というのは、他の因子が存在しうるからである。実際、すべての比較的不溶性の金属酸化物反応物が、ZIF物質を本当に(またはまずまずの純度で)形成するという目標を達成しうるわけではない。例えば、本発明による合成法により、有利には、望ましいZIF物質のモル純度が許容可能でありうるZIF含有固体生成物を得ることができ、そのようなモル純度は、50%を超える純度(すなわち、50%未満の不純物)、例えば、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、または実質的に純粋(すなわち、統計学的に有意な検出可能不純物を含まない))を意味しうる。固体金属酸化物法では、例えば、金属がZnである場合、比較的不溶性の酸化亜鉛反応物の粒径及び/または粒径分布は、生成物中に任意の所望のZIF物質を得ることができるかどうか、および/または生成物中の望ましいZIF物質の純度を許容可能なものにできるかどうかに大きく影響しうる。したがって、実施形態によっては、比較的不溶性の反応物の平均(中央)粒径は、5ミクロン未満、例えば、3ミクロン未満、2ミクロン未満、1ミクロン未満、750nm未満、600nm未満、500nm未満、400nm未満、300nm未満、250nm未満、200nm未満、150nm未満、100nm未満、75nm未満、50nm未満、40nm未満、30nm未満、25nm未満、20nm未満、15nm未満、または10nm未満でありうる。上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、実施形態によっては、比較的不溶性の反応物の粒径分布は、粒径が少なくとも10ミクロン(例えば、少なくとも7ミクロン、少なくとも5ミクロン、少なくとも4ミクロン、少なくとも3ミクロン、少なくとも2ミクロン、少なくとも1ミクロン、少なくとも750nm、少なくとも600nm、少なくとも500nm、少なくとも400nm、少なくとも300nm、少なくとも250nm、または少なくとも200nm)である粒子が、5%以下(例えば、粒子が3%以下または粒子が1%以下)であるようにすることができる。
【0060】
イミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)の源は、本明細書に開示された構造体の1つまたは複数を含みうるか、それらから本質的になるか、あるいはその1つまたは複数でありうる。開示されている構造体には、例えば、構造体I〜XVIIIの1つまたは複数(または構造体IV〜XVIIIの1つまたは複数)、または特に5−アザベンゾイミダゾレートが含まれるが、これらに限定されない。リンカー交換法および固体金属酸化物法では、IM源は、典型的にはH−IMであってよく、これは、典型的には反応媒質中に(完全に、実質的に、または比較的)可溶性であってもよい。とは言え、こうした方法では、IM源は、むしろ任意選択に反応媒質中に比較的不溶性である。さらに、比較的不溶性の反応物の方法では一般に、IM源は、反応媒質中に(完全に、実質的に、または比較的)可溶性であるかまたは比較的不溶性であってよい。ここでもまた、H−IMが例示的なIM源でありうるが、必ずしも唯一の可能なIM源であるわけではない。
【0061】
本発明によるZIFの非従来的合成法では、ZIF物質を形成させるのに十分な条件は、少なくとも部分的な反応を助けることができ、望ましい程度に/ほどほどに高いZIF純度が達成されるようにすることができ、かつ/または望ましい程度に/ほどほどに低い不純物レベルが達成されるようにすることができる(その不純物レベルは、特に、本明細書に記載した用途などある特定のさらなる用途における、望ましくない、かつ/または汚染を引き起こす、ある特定タイプの不純物のレベルである)。そのような十分な条件としては、少なくとも1時間から10日間もの接触/結晶化時間、例えば、1時間〜7日間、1時間〜5日間、1時間〜3日間、2時間〜10日間、2時間〜7日間、2時間〜5日間、2時間〜3日間、4時間〜10日間、4時間〜7日間、4時間〜5日間、4時間〜3日間、8時間〜10日間、8時間〜7日間、8時間〜5日間、8時間〜3日間、12時間〜10日間、12時間〜7日間、12時間〜5日間、12時間〜3日間、18時間〜10日間、18時間〜7日間、18時間〜5日間、18時間〜3日間、24時間〜10日間、24時間〜7日間、24時間〜5日間、または24時間〜3日間;約−78℃(ドライアイス浴温)から反応媒質の沸点までの温度(接触/結晶化が圧力容器で行われる場合、温度は、大気圧において反応媒質の沸点を超えてもよい)、例えば、約0℃(氷水浴温)〜溶媒の沸点より少なくとも10℃低い温度、または約15℃〜溶媒の沸点より少なくとも15℃低い温度(あるいはまた〜約100℃)、約15℃〜約300℃、約15℃〜約250℃、約15℃〜約200℃、約15℃〜約150℃、約15℃〜約100℃、約15℃〜約80℃、約15℃〜約75℃、約15℃〜約70℃、約15℃〜約65℃、約15℃〜約60℃、約15℃〜約50℃、約25℃〜約300℃、約25℃〜約250℃、約25℃〜約200℃、約25℃〜約150℃、約25℃〜約100℃、約25℃〜約80℃、約25℃〜約75℃、約25℃〜約70℃、約25℃〜約65℃、約25℃〜約60℃、約25℃〜約50℃、約35℃〜約300℃、約35℃〜約250℃、約35℃〜約200℃、約35℃〜約150℃、約35℃〜約100℃、約35℃〜約80℃、約35℃〜約75℃、約35℃〜約70℃、約35℃〜約65℃、約35℃〜約60℃、約35℃〜約50℃、約50℃〜約300℃、約50℃〜約250℃、約50℃〜約200℃、約50℃〜約150℃、約50℃〜約100℃、約50℃〜約80℃、約50℃〜約75℃、または約50℃〜約70℃など;および約1kPaa〜約10MPaaの反応圧力、例えば、約1kPaa〜約5MPaa、約1kPaa〜約2MPaa、約1kPaa〜約1MPaa、約1kPaa〜約500kPaa、約1kPaa〜約300kPaa、約1kPaa〜約200kPaa、約10kPaa〜約100kPaa、約10kPaa〜約10MPaa、約10kPaa〜約5MPaa、約10kPaa〜約2MPaa、約10kPaa〜約1MPaa、約10kPaa〜約500kPaa、約10kPaa〜約300kPaa、約10kPaa〜約200kPaa、約10kPaa〜約100kPaa、約90kPaa〜約10MPaa、約90kPaa〜約5MPaa、約90kPaa〜約2MPaa、約90kPaa〜約1MPaa、約90kPaa〜約500kPaa、約90kPaa〜約300kPaa、約90kPaa〜約200kPaa、約100kPaa〜約10MPaa、約100kPaa〜約5MPaa、約100kPaa〜約2MPaa、約100kPaa〜約1MPaa、約100kPaa〜約500kPaa、約100kPaa〜約300kPaa、約100kPaa〜約200kPaa、または約100kPaa〜約150kPaaを挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0062】
上記の方法にしたがって作られた生成物であるZIF物質は、平衡型または非平衡骨格型を有することができ、それには、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAG、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CRB、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DIA、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、FRL、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWV、IWW、JBW、KFI、LAU、LCS、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、POZ、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SIV、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZNI、およびZON(例えば、CRB、DFT、CAG、SOD、MER、RHO、ANA、LTA、DIA、ZNI、GME、LCS、FRL、GIS、POZ、MOZ、およびこれらの組合せからなる群から選択される)が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0063】
D.ZIF構造体および用途
本明細書に開示されているゼオライトイミダゾレート骨格物質は、任意の型の四面体骨格構造体を有していてよい。ゼオライトイミダゾレート骨格物質の骨格型は、本明細書では、ゼオライトの文献で用いられているものと類似の仕方で3つの大文字からなるコードで表す。3つの小文字記号の方式は、金属−有機骨格(MOF)、メタ有機多面体(MOP)、ゼオライトイミダゾレート骨格(ZIF)、および共有結合−有機骨格(COF)の骨格型を表すために、O’KeeffeおよびYaghiによって導入されたことを指摘しなければならない。後者に関する一般的情報は、例えば、O’KeeffeおよびYaghi等による刊行物である‘‘ 網状化学:網の発生および分類ならびに骨組みの設計のための基本(Reticular Chemistry:Ocurrence and Taxonomy of Nets and Grammar for the Design of Frameworks’’,Accounts of Chemical Research,Vol.38,2005,pp.176−82、およびhttp://rcsr.anu.edu.au/home、the Reticular Chemistry Structure Resource(RCSR)ウェブサイトに見いだすことができる。統一性を保つため、この刊行物で使用される骨格型のコードはすべて大文字である。「骨格型」、「骨格構造」、「配置」、および「網」という概念は、関連する文献では基本的に同義的に使用されることにも注目される。本明細書に列挙されている方法および組成物は、多くの場合、ZIFのみに関連して(また時にはMOFにも関連して)述べられているが、本明細書のこうした方法および組成物に関する概念及び/またはステップは、無機結晶物質の他の有機付加物(MOF、MOP、COFなど)にも広く当てはまりうる(また、それゆえに同様に適用可能でありうる)ことが企図される。
【0064】
ZIFとしては、周知のゼオライト類およびその関連鉱物と同じ構造を有するそのような構造体、ならびにZIFの分野に固有の構造体、例えば、米国特許出願公開第2007/0202038号明細書および米国特許出願公開第2010/0307336号明細書に明らかにされているものを挙げることができ、それには、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAG、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CRB、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DIA、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、FRL、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWV、IWW、JBW、KFI、LAU、LCS、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、POZ、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SIV、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZNI、およびZONが含まれる。そのような構造体として、CRB、DFT、CAG、SOD、MER、RHO、ANA、LTA、DIA、ZNI、GME、LCS、FRL、GIS、POZ、MOZ、およびこれらの組合せからなる群から選択される四面体骨格型を挙げることができる。
【0065】
合成された時の形態の本多孔質結晶物質は一般に、四面体骨格内にゲスト種(典型的には溶媒分子及び/または鋳型分子)を含みうる。ゲスト種は、例えば、比較的低圧(50ミリトル未満など)において、任意選択的に(ただし、典型的には)約70℃〜約300℃の温度で真空引きにより、あるいは比較的小さい分子サイズの有機溶媒(例えば、アセトニトリル)と交換し、その後、前述のプロセスを用いるなどして真空引きをして除去することができる。ゲスト種を除去すると、様々な気体(二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、炭化水素、水素、窒素、酸素、希ガス、アンモニア、アミン、またはそれらの組合せなど)を吸着するのに使用できる内部細孔容積を増大させることができる。
【0066】
ZIF物質(例えば、本明細書に記載した非従来法で製造されたもの)が、EMM−19を含む場合、すなわち、SOD骨格型及び/または実験式Zn(5−アザベンゾイミダゾール)を有するように合成された場合、(例えば、DMF中で作られた)生成物の合成された時の状態のEMM−19部分は、本明細書の表1bに示すd間隔範囲および対応する相対ピーク強度範囲を有するXRDパターンを示しうる。こうした合成された時の状態の物質からゲスト分子が除去されると、生成物のアセトニトリル交換EMM−19部分は、本明細書の表1dに示すd間隔範囲および対応する相対ピーク強度範囲を有するXRDパターンを示しうる。
【0067】
細孔構造内に鋳型剤(templating agent)がまったく含まれていなくても、合成された時の状態のEMM−19のXRDパターンとアセトニトリル交換EMM−19のXRDパターンとの間にわずかな相違があるように思われるという点が注目される。ピークパターンは、XRDスペクトル全体にわたって比較的似ていると思われるが、それぞれのピークは、互いに対してシフトしているように思われた。この挙動に関しては他の可能な説明もあるが、物質はその(SOD)骨格型を保持したが、結晶単位格子の大きさが互いに対して相対的に変化したと仮定した。理論に縛られることはないが、DMFの比較的低い蒸気圧および比較的高い沸点のせいで、最大限の努力が払われたにもかかわらず、合成された時の状態のEMM−19物質は、XRDキャラクタリゼーションのための調製の際に真空の条件下においてさえ存続しうるいくらかの残留DMFを含みうると推測された。さらにまた、理論に縛られることはないが、存在する比較的高い蒸気圧及び/または比較的低い沸点の反応媒体は、(例えば、この場合だけでなく、合成された時の状態の生成物が、(例えば)MeCNだけを含むようにそのような反応媒体のみを用いてZIF物質を作るような場合にも、MeCNとの完全な溶媒交換によって)、XRDキャラクタリゼーションのための調製で用いられる条件などそれほど厳しくない(温度および圧力)条件下で、(かなり低い検出可能限度まで)実際に除去することができると考えられる。
【0068】
ZIF生成物のキャラクタリゼーションに対する反応物質の影響を強力に取り除こうとしていたとき、変化したEMM−19物質(依然として化学的にはZn(5−アザベンゾイミダゾール)であり、依然としてSOD骨格型を有する)がたまたま出来上がった。本明細書ではこれを「EMM−19」または「EMM−19−STAR」と呼ぶ。これは、大気分圧(および低大気圧の分圧)の範囲全体にわたってCO吸着がZIF−22よりも一桁増大し、特に低いCO分圧の吸着(例えば、約100kPa未満)が活性EMM−19物質よりも著しく増大した。このEMM−19物質は、活性EMM−19物質のXRDスペクトルにおいて、さらにもっとピークのシフトを示すようにも思われた。特に、EMM−19物質と活性EMM−19物質との間に差が生じた。EMM−19物質は、アセトニトリル交換EMM−19試料から実質的にすべてのMeCNを除去し、得られた試料をNガス下にかなりの期間(少なくとも10日間、例えば約26日間など)保存することによって実験的に得た。その期間の後、キャラクタリゼーションにおける差が認められた。
【0069】
ゼオライトイミダゾレート骨格物質(例えば、本明細書に記載した非従来法で製造したもの)で、SOD骨格型及び/または実験式Zn(5−アザベンゾイミダゾール)を有するものなどは、固有の二酸化炭素収着量を有しうる。例えば、28℃の温度を含む条件の下で、ゼオライトイミダゾレート骨格生成物物質は、(i)約75トルのCO分圧において、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.30ミリモルのCO(例えば、少なくとも0.35ミリモル/g、少なくとも0.40ミリモル/g、少なくとも0.45ミリモル/g、少なくとも0.50ミリモル/g、少なくとも0.55ミリモル/g、少なくとも0.60ミリモル/g、少なくとも0.65ミリモル/g、少なくとも0.70ミリモル/g、少なくとも0.75ミリモル/g、少なくとも0.80ミリモル/g、少なくとも0.85ミリモル/g、少なくとも0.90ミリモル/g、少なくとも0.95ミリモル/g、または少なくとも1.0ミリモル/g);(ii)約100トルのCO分圧において、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.35ミリモルのCO(例えば、少なくとも0.40ミリモル/g、少なくとも0.45ミリモル/g、少なくとも0.50ミリモル/g、少なくとも0.55ミリモル/g、少なくとも0.60ミリモル/g、少なくとも0.65ミリモル/g、少なくとも0.70ミリモル/g、少なくとも0.75ミリモル/g、少なくとも0.80ミリモル/g、少なくとも0.85ミリモル/g、少なくとも0.90ミリモル/g、少なくとも0.95ミリモル/g、少なくとも1.0ミリモル/g、少なくとも1.1ミリモル/g、少なくとも1.2ミリモル/g、または少なくとも1.3ミリモル/g);及び/または(iii)約200トルのCO分圧において、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.50ミリモルのCO(例えば、少なくとも0.55ミリモル/g、少なくとも0.60ミリモル/g、少なくとも0.65ミリモル/g、少なくとも0.70ミリモル/g、少なくとも0.75ミリモル/g、少なくとも0.80ミリモル/g、少なくとも0.85ミリモル/g、少なくとも0.90ミリモル/g、少なくとも0.95ミリモル/g、少なくとも1.0ミリモル/g、少なくとも1.1ミリモル/g、少なくとも1.2ミリモル/g、少なくとも1.3ミリモル/g、少なくとも1.4ミリモル/g、少なくとも1.5ミリモル/g、少なくとも1.6ミリモル/g、少なくとも1.7ミリモル/g、または少なくとも1.8ミリモル/g)を収着しうる。ここで挙げた比較的低い分圧では、COの収着量に必ずしも上限はないが、本発明によるゼオライトイミダゾレート骨格物質は、典型的には、最大5ミリモル/g(CO)まで収着できる。
【0070】
上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、28℃の温度を含む条件の下で、EMM−19ZIF生成物物質は、(i)約75トルのCO分圧において、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.60ミリモルのCO(例えば、0.65ミリモル/g、少なくとも0.70ミリモル/g、少なくとも0.75ミリモル/g、少なくとも0.80ミリモル/g、少なくとも0.85ミリモル/g、少なくとも0.90ミリモル/g、少なくとも0.95ミリモル/g、または少なくとも1.0ミリモル/g);(ii)約100トルのCO分圧において、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.75ミリモルのCO(例えば、少なくとも0.80ミリモル/g、少なくとも0.85ミリモル/g、少なくとも0.90ミリモル/g、少なくとも0.95ミリモル/g、少なくとも1.0ミリモル/g、少なくとも1.1ミリモル/g、少なくとも1.2ミリモル/g、または少なくとも1.3ミリモル/g);(iii)約150トルのCO分圧において、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも1.15ミリモルのCO(例えば、少なくとも1.2ミリモル/g、少なくとも1.3ミリモル/g、少なくとも1.4ミリモル/g、少なくとも1.5ミリモル/g、少なくとも1.6ミリモル/g、少なくとも1.7ミリモル/g、または少なくとも1.8ミリモル/g);及び/または(iv)約39トルのCO分圧において、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.35ミリモルのCO(例えば、少なくとも0.40ミリモル/g、少なくとも0.45ミリモル/g、少なくとも0.50ミリモル/g、少なくとも0.55ミリモル/g、少なくとも0.60ミリモル/g、少なくとも0.65ミリモル/g、少なくとも0.70ミリモル/g、少なくとも0.75ミリモル/g、少なくとも0.80ミリモル/g、または少なくとも0.85ミリモル/g)を収着しうる。ここで挙げた比較的低い分圧では、COの収着量に必ずしも上限はないが、EMM−19ZIF生成物物質は、典型的には、最大5ミリモル/g(CO)まで収着できる。
【0071】
さらに、例えば、本明細書で述べられている非従来法で作られるZIF物質(SOD骨格型及び/または実験式Zn(5−アザベンゾイミダゾール)を有するものなど)であって、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.30ミリモルの収着CO(例えば、少なくとも0.35ミリモル/g、少なくとも0.40ミリモル/g、少なくとも0.45ミリモル/g、少なくとも0.50ミリモル/g、少なくとも0.55ミリモル/g、少なくとも0.60ミリモル/g、少なくとも0.65ミリモル/g、少なくとも0.70ミリモル/g、少なくとも0.75ミリモル/g、少なくとも0.80ミリモル/g、少なくとも0.85ミリモル/g、少なくとも0.90ミリモル/g、少なくとも0.95ミリモル/g、少なくとも1.0ミリモル/g、少なくとも1.1ミリモル/g、少なくとも1.2ミリモル/g、少なくとも1.3ミリモル/g、少なくとも1.4ミリモル/g、少なくとも1.5ミリモル/g、少なくとも1.6ミリモル/g、少なくとも1.7ミリモル/g、少なくとも1.8ミリモル/g、少なくとも1.9ミリモル/g、少なくとも2.0ミリモル/g、少なくとも2.1ミリモル/g、少なくとも2.2ミリモル/g、少なくとも2.3ミリモル/g、少なくとも2.4ミリモル/g、または少なくとも2.5ミリモル/g)をさらに含むものも想定される。
【0072】
同様に、上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、本明細書のEMM−19ZIF生成物物質は、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.50ミリモルの収着CO(例えば、少なくとも0.55ミリモル/g、少なくとも0.60ミリモル/g、少なくとも0.65ミリモル/g、少なくとも0.70ミリモル/g、少なくとも0.75ミリモル/g、少なくとも0.80ミリモル/g、少なくとも0.85ミリモル/g、少なくとも0.90ミリモル/g、少なくとも0.95ミリモル/g、少なくとも1.0ミリモル/g、少なくとも1.1ミリモル/g、少なくとも1.2ミリモル/g、少なくとも1.3ミリモル/g、少なくとも1.4ミリモル/g、少なくとも1.5ミリモル/g、少なくとも1.6ミリモル/g、少なくとも1.7ミリモル/g、少なくとも1.8ミリモル/g、少なくとも1.9ミリモル/g、少なくとも2.0ミリモル/g、少なくとも2.1ミリモル/g、少なくとも2.2ミリモル/g、少なくとも2.3ミリモル/g、少なくとも2.4ミリモル/g、または少なくとも2.5ミリモル/g)をさらに含むことができる。
【0073】
E.更なる実施形態
上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、本発明は1つまたは複数の以下の実施形態を含みうる。
【0074】
実施形態1
SOD骨格型を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物であって、前記ゼオライトイミダゾレート骨格の構造体が、約28℃の温度において、
(i)約75トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.60ミリモルのCO
(ii)約100トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.75ミリモルのCO
(iii)約200トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも1.15ミリモルのCO、および/または
(iv)約39トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.35ミリモルのCO
を収着することができる、ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物。
【0075】
実施形態2
実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物であって、前記ゼオライトイミダゾレート骨格の構造体が、約28℃の温度において、
(i)約75トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.60ミリモルのCO
(ii)約100トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.75ミリモルのCO
(iii)約200トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも1.15ミリモルのCO、および/または
(iv)約39トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.35ミリモルのCO
を収着することができる、ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物。
【0076】
実施形態3
実験式:Zn(5−アザ−ベンゾイミダゾレート)を有し、SOD骨格型を示し、かつ表1b、表1d、表7b、表8bおよび表9bのいずれか1つに記載されたd間隔範囲および相対強度範囲で定義されるピークを有するX線回折パターンを示す、多孔質結晶物質(又は多孔質結晶材料)。
【0077】
実施形態4
気体を吸着する方法であって、前記気体(例えば、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンを含む)を、実施形態3に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、気体を吸着する方法。
【0078】
実施形態5
基体を流体流から分離する方法において、前記気体(例えば、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンを含む)を含む流体流から気体を分離する方法であって、前記流体流を実施形態3に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、気体を流体流から分離する方法。
【0079】
実施形態6
(a)合成混合物を生じさせるために、反応媒質と、イミダゾレートまたは置換イミダゾレート反応物(IM)の源と、金属MおよびMの反応物源とをともに混合するステップ(又は工程)であって、MおよびMが同一または異なる金属陽イオン(又は金属カチオン)を含み、その反応物の少なくとも1つが反応媒質自体および合成混合物中に比較的不溶性である、混合するステップ(又は工程)と、
(b)少なくとも1つの比較的不溶性の反応物を有する前記合成混合物を、一般構造:M−IM−Mを含む四面体骨格を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を形成させるのに十分な条件下で維持するステップ(又は工程)と、
(c)前記ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を、その単位格子体積を安定的に減少させるのに十分な条件下で処理するステップ(又は工程)と
を含む、ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を形成させるための方法。
【0080】
実施形態7
実質的に可溶性のM、MおよびIMの源を同じ反応媒質中で結晶化させることによりゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を製造した場合に得られる骨格型とは異なる骨格型を前記ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物の生成物(又は製品)が有する、実施形態6に記載の方法。
【0081】
実施形態8
前記ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物の生成物が、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAG、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CRB、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DIA、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、FRL、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWV、IWW、JBW、KFI、LAU、LCS、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、POZ、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SIV、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZNI、ZONおよびこれらの組合せからなる群から選択される骨格型であって、CRB、DFT、CAG、SOD、MER、RHO、ANA、LTA、DIA、ZNI、GME、LCS、FRL、GIS、POZ、MOZおよびこれらの組合せからなる群から選択されるものなど(例えば、SOD)を示す、実施形態6または実施形態7に記載の方法。
【0082】
実施形態9
前記反応媒質が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1,3−ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、スルホキシド、ホスホルアミド、アセトニトリル(MeCN)、トリエチルアミン(TEA)、水、アンモニア、エタノールまたはこれらの組合せを含む、実施形態6〜8のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態10
前記金属が、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Lr、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rg、Uubおよびこれらの組合せからなる群から選択される(例えば、Znである)、実施形態6〜9のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態11
前記イミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)が、IV、V、VIまたはそれらの任意の組合せ:
【化11】
[式中、A、A、AおよびAは、C、N、PおよびBからなる元素の群から選択され、A、AおよびAは、CまたはNのいずれかであってよく、R〜Rは、A〜AがCを含む場合に存在し、R、RまたはRは、隣接したMまたはMを妨害しない立体障害を引き起こさない基を含み、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれが個別に、水素、アルキル、ハロ、シアノまたはニトロであり、MおよびMは、同一または異なる金属陽イオンを含み、さらにR10、R11およびR12は、それぞれ個別に電子吸引基である]
からなる群から選択される、実施形態6〜10のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態12
前記イミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)が、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVIIおよび/またはXVIII:
【化12】
【化13】
【化14】
からなる群から選択され、例えば、式中において、前記イミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)は、式:XVの構造体を含む、実施形態11に記載の方法。
【0086】
実施形態13
前記十分な条件が、1時間〜10日間(例えば、12時間〜7日間)の接触/結晶化時間、約−78℃〜前記反応媒質の沸点(例えば、約15℃〜約150℃)の温度および約1kPaa〜約10MPaa(例えば、約100kPaa〜約10MPaa)の反応圧力を含む、実施形態6〜12のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態14
前記イミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)は、5−アザベンゾイミダゾレートであり、前記ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物は、SOD骨格型を有する、実施形態6〜13のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態15
前記処理ステップにとって十分な条件が、前記反応媒質を除去すること、および少なくとも1日間(例えば、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、少なくとも17日間、少なくとも20日間、少なくとも23日間、少なくとも26日間、または少なくとも30日間)、あるいは任意選択的に最大365日間までの連続期間にわたって、不活性ガスを導入することを含む、実施形態6〜14のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
これから本発明を、実施例および添付図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0090】
これから本発明を、実施例および添付図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0091】
実施例1〜15では、物質の合成に用いた薬品はすべて商業用等級であり、以下に示すもの以外は、Aldrichから購入した: 硝酸亜鉛・4水和物(EM Science、98.5%)、ベンゾイミダゾール(98%)、4−アザベンゾイミダゾール(99%)、5−アザベンゾイミダゾール(97%)、プリン(98%)、N,N−ジメチルホルムアミド(99.8%)、トリエチルアミン(99.5%)、アセトニトリル(99.5%)、クロロホルム(99.8%)、酸化亜鉛(99.999%)(購入後に走査型電子顕微鏡法で見積もった平均粒径は、約200nmから約500nmの間であり、粒径分布は、少なくとも約50nm〜約2ミクロンに及んでいた)。薬品はすべて、特に明記されていない限り、空気中で取り扱った。
【0092】
商標名がBasolite Z1200である活性形態(すなわち、溶媒分子が実質的に除去された)のZIF−8を、Aldrichから購入した。ZIF−7は、米国特許出願公開第2009/0211440号明細書に開示されている手順にしたがって合成し、活性化した。活性ZIF−8およびZIF−7はどちらも高度に疎水性の固体であると考えられ、それゆえに周囲条件下で保存し、空気中で取り扱った。ZIF−8は、実験式Zn(2−メチルイミダゾレート)および骨格型SODを有する物質である。ZIF−7は、実験式Zn(ベンゾイミダゾレート)および骨格型SODを有する物質である。どちらの物質も同じ骨格型であるが、骨格の対称性が異なるので、粉末X線回折によってそれらは比較的容易に区別されるはずである。
【0093】
実施例で使用した反応器は、PTFEライナーを有する約23mLまたは約45mLの酸分解法パー圧力容器(Parr Acid Digestion Bombs)であった。量の多い反応には、PTFEライナーとSeries 4843温度調節器とを備えたパー加圧反応器(Parr Pressure Reactor)(オートクレーブ)を使用した。
【0094】
粉末X線回折パターンは、Cu Kα放射線(約45kVおよび約40mAの管電圧および管電流)、約1/4°の固定発散スリット、および約3〜約50度の2θ範囲での約0.017°のステップサイズを用いて、ブラッグ−ブレンターノジオメトリー(Bragg−Brentano geometry)のX’celerator検出器を備えたPANalytical X’Pert回折計で測定した。すべてのデータ処理は、Materials Data JADE 9ソフトウェアを用いて実施した。
【0095】
定量13C MAS NMRスペクトルは、それぞれ13CおよびHの約125MHzおよび約500MHzのラーモア周波数に対応する約11.74Tの静磁場で操作されるVarian InfinityPlus−500(商標)大口径分光計を用いて得た。スペクトルの記録は、データ収集時に、約4マイクロ秒の90度パルス、約5mm(o.d.)回転子に充填した試料に対する約60〜120秒の繰り返しパルス遅延(repetition pulse delay)、約9.5kHzのマジック角速度での回転、およびHデカップリングを用いて行った。示されている化学シフトは、テトラメチルシラン(TMS、δ≒0ppm)を基準にしたものである。測定には活性ZIF試料を使用し、典型的な試料サイズは約75〜105mgであったが、約10mgという少量の試料でも容易に試験することができる。
【0096】
気体収着測定は、Quantachrome Autosorb−1(商標)自動気体収着アナライザーで実施した。この測定器では、気体/固体界面における収着(この場合、物理的な吸着および脱着)による圧力差を測定する。ある指定された温度において、かつその温度での気体の非理想補正係数(non−ideality correction factor)を用いて、計測器では、独自アルゴリズムを利用して、基本的な気体法則から、使用者が選択するそれぞれの圧力ごとに固体吸着剤に吸着される、またそれから脱着する気体の体積を計算する。気体の体積を、ミリモル(mmol)に変換し、吸着剤の重量に合わせてスケール調整して、吸着の一般的な単位(すなわち、ミリモル数(気体)をグラム数(吸着剤)で割ったもの、つまりミリモル/g)を得る。一定温度において、圧力に対して吸着量をプロットしたものは、特定の気体/固体界面の収着等温線を表しうる。最高約760トルまでの圧力について、約28℃で、単一成分気体吸着質のすべての等温線を測定した。各等温線の測定の前に、Autosorb−1(商標)の前処理ステーションで、比較的高真空(10ミリトル未満)において約65〜70℃で、約50〜100mgの活性ZIF物質の試料から約10〜18時間ガス抜きした。
【0097】
実施例1:ZIF−8(Zn(2−メチルイミダゾレート))の交換によるZIF−7(Zn(ベンゾイミダゾレート))の形成
約240mgのZIF−8、約415mgのベンゾイミダゾール、および約5mLのDMFを、NMR試料管中で十分に混合した。次いで、試料管に対して、以下に述べるようにして5つの加熱サイクルを実施した。第1サイクルでは、試料管を、約26℃(すなわち、およそ室温)の第1温度(T)の油浴中に入れた。試料温度が約26℃に達するのに十分な短い時間の後、試料をNMRプローブ中に挿入し、その同じ約26℃に維持した。その後の各サイクルでは、油浴を高温に維持し、試料を、以下に明記したようにもっと長い時間(例えば、18〜21時間の範囲)油浴中で加熱した。各サイクルにおいて、NMR試料管を、あらかじめ設定した温度(これは、第1サイクルの油浴の温度(例えば、(T))と同じである)にされているNMRプローブ中に挿入した。スピン速度≒0HzでのH NMRおよび13C NMRを各サイクルで記録した。油浴から同じ温度のNMRプローブへ移す時間は、各サイクルで10分未満になるようにした。NMRスペクトルを記録した後、試料管をNMRプローブから押出し、試料管を高温(例えば、第2サイクルの(T))の油浴に移すことにより、次のサイクルを開始した。NMRプローブから油浴へ移す時間は、各サイクルで4分未満であった。第1サイクルでは、油浴およびNMRプローブの温度(T)は約26℃であった。第2サイクルでは、油浴およびNMRプローブの温度(T)は約40℃であり、試料管を油浴で約18時間加熱した。第3サイクルでは、油浴およびNMRプローブの温度(T)は約60℃であり、試料管を油浴で約19時間加熱した。第4サイクルでは、油浴およびNMRプローブの温度(T)は約80℃であり、試料管を油浴で約21時間加熱した。第5サイクルでは、油浴およびNMRプローブの温度(T)は約100℃であり、試料管を油浴で約19時間加熱した。
【0098】
液体状態13C NMRスペクトル(125MHz)を図1に示し、スペクトルから得られた結果を図2に示す。図1では、最下部の線は、約26℃での第1サイクルのスペクトルを表し、最下部から2番目の線は約40℃での第2サイクルのスペクトルを表し、中間の線は約60℃での第3サイクルのスペクトルを表し、最上部の線から2番目の線は約80℃での第4サイクルのスペクトルを表し、最上部の線は約100℃での第5サイクルのスペクトルを表す。ある関連するスペクトル部分は、図1において陰付きの領域で強調されている。
【0099】
図2において、示されているように、スペクトルの関連部分で、強度が時間に応じて変化することが観察された。示されている強度は、1000カウントで任意設定された約30ppmのピークを基準にしたものである。図2では、第0日はサイクル1のスペクトルを表し、第1日はサイクル2のスペクトルを表し、第2日はサイクル3のスペクトルを表し、第3日はサイクル4のスペクトルを表し、第4日はサイクル5のスペクトルを表したものである。イミダゾレートリンカーの効率的な交換は、DMF溶媒からのベンゾイミダゾールの消失およびDMF溶媒中の2−メチルイミダゾールの出現によって分かるが、都合のよいことに、それは、それぞれ約115ppmおよび約138ppm(ベンゾイミダゾールに特有)、および約13ppm、約121〜122ppm、および約141ppm(2−メチルイミダゾールに特有)の信号によって知ることができる。
【0100】
サイクル5の後、新鮮なDMFで十分に洗浄して(約5mL×3)、固体生成物を回収した。図3に示す粉末X線回折パターンに示されているように、生成物はZIF−7を含むことが確認された。それは、実験式Zn(ベンゾイミダゾレート)および骨格型SODを有し、またいくらかの残留未変換ZIF−8(これもSOD骨格型を有する)も一緒に有する。
【0101】
実施例2:ZIF−8(Zn(2−メチルイミダゾレート))の交換によるEMM−19(Zn(5−アザベンゾイミダゾレート))の形成
約10mLのDMF中に約1.00gの5−アザベンゾイミダゾールを含む透明溶液をガラスバイアル内で調製し、その後、約100mgの固体ZIF−8に加えた。その固体ZIF−8は、約45mLのパー圧力容器(Parr bomb)のPTFEカップに前もって量り分けたものである。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約24時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存した。この生成物を、本明細書では、合成された時の状態のEMM−19と呼ぶ。
【0102】
図4は、EMM−19およびZIF−7(どちらも合成された時の状態の形態のもの)の粉末X線回折パターンを比較している。パターンが極めて一致していることは、これら2種類の物質が同じ骨格型(SOD)を有しているという結論を支持する。実験式Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)および骨格型SODを有するEMM−19は、新規物質組成物であると考えられる。文献に示されているように、5−アザベンゾイミダゾレートを用いて従来のソルボサーマル結晶化技法によってZIFを形成させる場合、得られるZIFは、骨格型LTAのみを示すことが知られている。表1a(左下)は、この実施例の手順にしたがって作った(例えば、DMF中で作った)合成された時の状態のEMM−19試料に関して、付随する正確な相対ピーク強度と共に、2θ(度)およびd間隔によって正確なXRDピーク最大値を詳しく示している。表1b(右下)は、合成された時の状態のEMM−19試料(例えば、DMF中で作ったもの)に関して、付随する相対ピーク強度の許容可能な範囲と共に、d間隔のみによるXRDピーク最大値の許容可能な範囲を詳しく示している。
【0103】
【表1】
【0104】
合成された時の状態のEMM−19は、米国特許出願公開第2009/0211440号明細書に開示されている合成された時の状態のZIF−7に関する方法と同じ方法を用いて活性化した。具体的には、(1)合成された時の状態のEMM−19の試料(約100mg)を、周囲温度(約20〜25℃)で約15mLのアセトニトリル中に浸し(約3日間の間に3回)、細孔に閉じ込められたDMF溶媒分子を部分的に交換し;(2)溶媒をデカントし、試料を真空下において約200℃で約3時間乾燥させ;(3)乾燥試料を約10mLのアセトニトリル中に約75℃で約24時間浸してから、新鮮なアセトニトリルで洗って、MeCN交換EMM−19を得;さらに(4)アセトニトリル交換試料を、約70℃で真空下(約10ミリトル未満)に約10時間置いて活性EMM−19を得た。表1c(左下)は、この実施例の手順にしたがって作ったMeCN交換EMM−19試料に関して、付随する正確な相対ピーク強度と共に、2θ(度)およびd間隔による正確なXRDピーク最大値を詳しく示している。表1d(右下)は、MeCN交換EMM−19試料に関して、付随する相対ピーク強度の許容可能な範囲と共に、d間隔のみによるXRDピーク最大値の許容可能な範囲を詳しく示している。
【0105】
【表2】
【0106】
活性EMM−19を周囲条件下で保存し、固体状態NMR(実施例3)、気体の吸着/脱着(実施例5)、および種添加合成(seeded synthesis)(実施例14)を含む以下に述べるさらなる実験に使用した。
【0107】
実施例3:ZIF−7およびEMM−19の固体状態13C MAS NMR
図5は、13Cマジック角回転(MAS)NMR(125MHz)で測定した場合の、実施例2の活性EMM−19生成物と活性ZIF−7との比較を示す。図5では、ZIF−7のスペクトルを一番下に示し、EMM−19のスペクトルを中間に示し、重ね合わせて拡大したスペクトルを一番上に示してある。図5の星印は、スピン側波帯(spinning sidebands)を示すと考えられる。
【0108】
図5は、5−アザベンゾイミダゾレートリンカーおよびベンゾイミダゾレートリンカーにそれぞれ対応する明確なピークを示しており、それらは、EMM−19の有機リンカー要素が確かに実質的に5−アザベンゾイミダゾレートであり、それゆえに、EMM−19の実験式がZn(5−アザベンゾイミダゾレート)であることを示しているという結論を支持していると考えられる。
【0109】
実施例4:ZIF−22の製造および活性化
ガラスバイアル内の、約20mLのDMF中に約232mgのZn(NO・4HOおよび約2gの5−アザベンゾイミダゾールを含んだ溶液に、マイクロピペットを用いて約244μLのトリエチルアミンを加えた。得られた混合物を超音波処理で実質的に均質化した後、それを約45mLのパー圧力容器のPTFEカップに移した。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約24時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存し、「合成された時の状態のZIF−22」というラベルを付けた。合成された時の状態のZIF−22の粉末X線回折パターンと、単結晶のX線結晶構造解析で求められたZIF−22の結晶構造に基づく計算されたパターンとが見事に一致していたので、生成物の純度が確認された(図6)。
【0110】
EMM−19およびZIF−7に関して確立された手順(実施例2)を用いて、合成された時の状態のZIF−22中に閉じ込められたDMF溶媒分子を、アセトニトリルと交換しようとしたが、その試みは失敗したことが判明した。このことは、アセトニトリル交換ZIF−22の粉末X線回折パターンが損なわれていたことから明らかになった(図6)。
【0111】
代わりに、合成された時の状態のZIF−22を、‘‘ ZIF−20の結晶合成、活性化および応用に対する洞察(Insight into the crystal synthesis,activation and application of ZIF−20)’’,RSC Advances,Vol.1,2011,pp.917−22 by Seoane et al.の記事に開示されている手順にしたがって活性化した(ZIF−20は、ZIF−22のプリン対応物である)。具体的には、(1)合成された時の状態のZIF−22試料(約110mg)を、真空ライン(到達最高真空度である約20ミリトル)において約70℃で約6時間乾燥させて、試料の外側表面のDMFおよびおそらく細孔内部のゆるく結合しているDMFを除去し;(2)乾燥試料をガラスバイアルへ移し、クロロホルム(約15mL×3)で十分に洗浄し、その後、約15mLのクロロホルム内で、電磁撹拌機を用い周囲温度で(約25℃)において約30時間連続撹拌し;(3)クロロホルム交換試料を、真空ライン(最高到達真空度の約20ミリトル)で約70℃において約10時間真空引きし、「活性ZIF−22」を得た。クロロホルム交換によって製造した活性ZIF−22試料は、元の結晶骨格構造を保持していた(図5)。
【0112】
実施例5:EMM−19、ZIF−7、およびZIF−22の吸着/脱着特性の比較
実施例2の活性EMM−19、実施例4の活性ZIF−22、および活性ZIF−7に関して、約28℃でCOおよびNの吸着/脱着等温線を測定した。EMM−19試料に関しては、2つの別個のCO等温線実験を2つの異なる圧力点から開始し、実施した。
【0113】
図7は、EMM−19、ZIF−7、およびZIF−22についてのCO等温線、およびEMM−19およびZIF−7についてのN等温線を比較しており、その中で、吸着枝(adsorption branches)には塗りつぶした記号を使用し、脱着枝(desorption branches)には塗りつぶしていない記号を使用している。図7は、ZIF−7で観察された場合と比較して、EMM−19は低いCO分圧で多くのCOを収着することを示していると思われる。さらに、図7は、ZIF−22の等温線が階段状のヒステリシスを示さなかったこと、さらにZIF−22が、約760トル(約1.1ミリモル/g)および約76トル(約0.18ミリモル/g)のCO分圧において、吸着能力が極めて低かった(測定した圧力範囲において、EMM−19の試料と比べた場合)ことを示していると思われる。
【0114】
図7はまた、EMM−19およびZIF−7のCO等温線に基づいた場合、どちらの物質も階段状のヒステリシスを示し、CO吸着量が約760トルで(すなわち、吸着枝の段状部分の後のほぼ平坦な領域で)約2.0〜2.2ミリモル/gであることを示しているが、段状部分の開始点が著しく異なっており、取込みしきい値のCO分圧がEMM−19の場合かなり低い圧力にシフトしている(ZIF−7の場合、約400トル、EMM−19の場合、約50トル未満)ことを示していると思われる。したがって、EMM−19は、比較的低いCO分圧領域で、ZIF−7よりも多くのCOを吸着すると思われた。
【0115】
理論に縛られることはないが、EMM−19に関して観察される低い分圧でのCO吸着の向上は、低圧の気体流からCOを分離するのにその物質が適していることを示すと考えられた(例えば、主は課題が、CO(少量成分)をN(主成分)から分離することでありうる、煙道気体流の炭素の捕捉である場合)。
【0116】
プロセスの方式は、少量成分(CO)の吸着量(adsorption loading)(ミリモル/g)と主成分(この場合、N)の吸着量(ミリモル/g)との比が、小さい状態で行われるように設計することができるが、ZIF物質におけるCO/Nの吸着量比は、実施形態によっては、少なくとも5(例えば、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、または少なくとも50)が好ましいものでありうる。必要とされる装置の大きさ、コスト、および操業費は、吸着量の比が高いと、著しく低くなる傾向がありうるので、分離プロセスは、吸着量の比が高くなる物質および条件を用いることにより、いっそう魅力的なものになりうる。吸着量比は、所与の圧力および温度の条件における特定の吸着質−吸着剤のペアの特性である(圧力および温度の「標準」条件は、特定成分の作業分圧およびZIF含有吸着剤に接触する供給流の作業温度条件で測定するか、あるいは単一成分試験条件(約301K(約28℃)および約106.6kPaa(約800トル)など)で測定することができる)。ZIF物質に関するCO/Nの吸着量比の他の詳細、および商業的分離プロセスの事情は、例えば、米国特許出願公開第2009/0214407号明細書に見いだすことができる。
【0117】
実施例6〜11:DMF中での他のリンカー交換反応
溶媒としてDMFを使用して、いろいろなZI開始物質(この場合、ZIF−8およびZIF−7)およびいろいろなイミダゾール出発物質(この場合、5−アザベンゾイミダゾール、4−アザベンゾイミダゾール、およびプリン)に関して、一連の更なるリンカー交換反応を、実施例6〜11として実施した。結果を以下の表2に要約する。
【0118】
実施例6:4−アザベンゾイミダゾールによるZIF−8の交換
ガラスバイアル内で、約5mLのDMF中に約500mgの4−アザベンゾイミダゾールを含む透明溶液を調製し、その後、約50mgの固体ZIF−8に加えた。その固体ZIF−8は、約45mLのパー圧力容器のPTFEカップに前もって量り分けたものである。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約24時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存した。
【0119】
図8に示す粉末X線回折パターンに示されているように、生成物は、ZIF−23(DIA)と少量の未反応ZIF−8(SOD)との混合物を含んでいるように思われた。
【0120】
実施例7:5−アザベンゾイミダゾールによるZIF−8の交換
ガラスバイアル内で、約15mLのDMF中に約200mgの5−アザベンゾイミダゾールを含む透明溶液を調製し、その後、約50mgの固体ZIF−8に加えた。その固体ZIF−8は、約45mLのパー圧力容器のPTFEカップに前もって量り分けたものである。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約24時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存した。
【0121】
図9に示す粉末X線回折パターンに示されているように、生成物は、EMM−19(SOD)と未反応のZIF−8(SOD)との混合物を含んでいるように思われた。
【0122】
実施例8:4−アザベンゾイミダゾールによるZIF−8の交換
ガラスバイアル内で、約15mLのDMF中に約200mgの4−アザベンゾイミダゾールを含む透明溶液を調製し、その後、約50mgの固体ZIF−8に加えた。その固体ZIF−8は、約45mLのパー圧力容器のPTFEカップに前もって量り分けたものである。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約24時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存した。
【0123】
図10に示す粉末X線回折パターンに示されているように、生成物は未反応のZIF−8(SOD)と思われる。
【0124】
実施例9:プリンによるZIF−8の交換
ガラスバイアル内で、約15mLのDMF中に約200mgのプリン含む透明溶液を調製し、その後、約50mgの固体ZIF−8に加えた。その固体ZIF−8は、約23mLのパー圧力容器のPTFEカップに前もって量り分けたものである。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約24時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存した。
【0125】
図11に示す粉末X線回折パターンに示されているように、生成物は、未反応のZIF−8(SOD)と不明な結晶相との混合物を含んでいるように思われた。未確認相に対応する回折ピーク(星印付き)はすべて、約13°より大きな2θ角にあると思われた。それは、典型的には小さな単位格子を表しうるもので、それゆえにおそらく濃密/非多孔質相の存在を表すと考えられる。
【0126】
実施例10:5−アザベンゾイミダゾールによるZIF−7の交換
ガラスバイアル内で、約10mLのDMF中に約1gの5−アザベンゾイミダゾールを含む透明溶液を調製し、その後、約100mgの活性固体ZIF−7に加えた。そのZIF−7は、約45mLのパー圧力容器のPTFEカップに前もって量り分けたものである。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約72時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存した。
【0127】
図12に示すように、合成された時の状態の生成物の粉末X線回折パターンは、ZIF−7(SOD)の粉末X線回折パターンと同一であると思われた。図13に示すように、活性生成物の固体状態13C NMRデータは、生成物が未反応のZIF−7であることを確証しているように思われた。
【0128】
実施例11:プリンによるZIF−7の交換
ガラスバイアル内で、約6.5mLのDMF中に約646mgのプリン含む透明溶液を調製し、その後、約65mgの固体活性ZIF−7に加えた。そのZIF−7は、約45mLのパー圧力容器のPTFEカップに前もって量り分けたものである。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約72時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存した。
【0129】
図14に示すように、生成物の粉末X線回折パターンは、ZIF−23(DIA)の粉末X線回折パターンと極めてよく似ていた。
【0130】
図15に示すように、生成物の粉末X線回折パターンは、Materials Data JADE 9ソフトウェアを用いて、斜方晶単位格子(空間群P2、a≒9.358Å、b≒10.154Å、c≒12.434Å、α≒β≒γ≒90°)に索引付したが、これは、‘‘ ゼオライト A イミダゾレート骨格(Zeolite A Imidazolate Frameworks)’’,Nature Materials,Vol.6,2007,pp.501−6 by Yaghi and co−workersの補足説明で報告されている、ZIF−23の粉末X線回折パターン(斜方晶、P2、a≒9.5477Å、b≒10.1461Å、c≒12.4459Å、α≒β≒γ≒90°)に極めて近いものだった。理論に縛られることはないが、生成物は、ZIF−23のプリン対応部分(すなわち、骨格型DIAのZn(プリネート(purinate)))を含んでいたと考えられる。
【0131】
【表3】
【0132】
実施例12:アセトニトリル中のZIF−8のリンカー交換反応
いろいろなイミダゾール出発物質(この場合、5−アザベンゾイミダゾール、4−アザベンゾイミダゾール、およびプリン)に関して、アセトニトリルを溶媒として用いたZIF−8の一連の3つの別個の交換反応を、以下に述べるようにして実施した。結果を以下の表3に要約する。
【0133】
約50mgのZIF−8と約200mgの5−アザベンゾイミダゾールとの固体混合物を、約20mLのガラスバイアルに入れた。約15mLのアセトニトリルをバイアルに加え、混合物を超音波処理で均質化した。その後、バイアルに蓋をし、反応1のラベルを付けた。5−アザベンゾイミダゾールの代わりに、それぞれ4−アザベンゾイミダゾール(反応2)およびプリン(反応3)を用いて、上述の手順を2回繰り返した。
【0134】
蓋をしたこれらの3つのバイアルを約300mLのオートクレーブ内に置いた。少量のアセトニトリルをオートクレーブに加えて、バイアル内部のアセトニトリル蒸気圧の平衡を保たせた。その後、オートクレーブを密閉し、約140℃で約48時間加熱した(約2℃/分のランプ速度)。オートクレーブを自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした後、3つの反応バイアルをそれから取り出した。各バイアルについて、母液をデカントし、固体生成物をアセトニトリル(約5mL×3)で十分に洗浄し、アセトニトリル中に保存した。
【0135】
図16に示す粉末X線回折パターンに示されているように、反応1の生成物は、未反応のZIF−8(SOD)を含んでいると思われた。
【0136】
図17に示す粉末X線回折パターンに示されているように、反応2の生成物は、ZIF−23(DIA)を含んでいると思われた。
【0137】
図18に示す粉末X線回折パターンに示されているように、反応3の生成物は、実施例11の粉末X線回折パターン(すなわち、骨格型DIAのZn(プリネート))と同じと思われた。
【0138】
【表4】
【0139】
実施例13:亜鉛源としてZnOを用いたDMF中でのソルボサーマル合成
ガラスバイアル内で、約5mLのDMF中に約500mgの5−アザベンゾイミダゾールを含む透明溶液を調製し、その後、約18mgの固体ZnOに加えた。その固体ZnOは、約45mLのパー圧力容器のPTFEカップに前もって量り分けたものである。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約24時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存した。
【0140】
図19に示す粉末X線回折パターンに示されているように、生成物は、EMM−19(SOD)と未反応のZnOとの混合物を含んでいるように思われた。
【0141】
実施例13の結果と実施例2の結果との比較を、以下の表4に示す。
【0142】
【表5】
【0143】
実施例14:EMM−19の種が添加されるDMF中でのソルボサーマル合成
ガラスバイアル内で、約10mLのDMF中に約1gの5−アザベンゾイミダゾールと約116mgのZn(NO・4HOとを含む溶液を調製し、その後、約5mgの活性固体EMM−19(実施例2にしたがって製造したもの)に加えた。そのEMM−19は、約23mLのパー圧力容器のPTFEカップに前もって量り分けたものである。次いで、パー圧力容器を密閉し、約140℃の等温オーブンで約24時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をDMF(約5mL×3)で十分に洗浄し、DMF中に保存した。
【0144】
図20に示す粉末X線回折パターンに示されるように、生成物は、ZIF−22(LTA)とEMM−19(SOD)との混合物を含んでいると思われた。このことは、一般的に観察されるLTA相の形成を防ぐ点で種添加が相対的に有効ではないことを示すように思われ、したがって、系の結晶化メカニズムにおいて根本的な変化がないことを確証しているように思われた。
【0145】
実施例14の結果と実施例2の結果との比較を、以下の表5に示す。
【0146】
【表6】
【0147】
実施例15:MeCNとTEAとの溶媒混合物中でのZIF−7の合成
約240mLのアセトニトリル中に約4.8g(約40ミリモル)のベンゾイミダゾールと約5.33g(約20ミリモル)のZn(NO・4HOとを含む混合物を、容器内で調製し、約20分間超音波処理した。その後、約5.66mL(約40ミリモル)のトリエチルアミン(ブレンステッド塩基)を加え、次いで対応する混合物をさらに約40分間超音波処理した。その後、溶液を酸分解法パー圧力容器に密閉し、等温オーブン内で約100℃において約48時間加熱した。反応後に、パー圧力容器をオーブンから取り出し、自然放冷させて周囲温度(約25℃)にした。その後、パー圧力容器を開いて、母液をデカントし、固体生成物をアセトニトリル(約90mL×3)で十分に洗浄し、アセトニトリルに沈めて保存した。生成物の乾燥スラリーの粉末X線回折(図示せず)は、それが確かにZIF−7であることを示した。更なる測定では、生成物はまた、BET表面積が約12.7m/gであることも示された(試料は約75℃で約3時間ガス抜きした)。生成物のCO吸着等温線も生成物に関して行い(これも図示していない)、DMF中で合成された標準ZIF−7生成物と比較的似た吸着、脱着、およびヒステリシス挙動が得られた。こうした試験結果は、ZIF−7(あるいはより一般的には、もしかするとすべてのZIFおよびMOF(またはZIFおよびMOFのあるサブセット))が、比較的低い沸点及び/または比較的高い蒸気圧(例えば、DMFより高く、おそらく水よりも高い)を有する溶媒(または溶媒混合物)を用いて、合成できることを示していると思われる。
【0148】
比較的低い沸点及び/または比較的高い蒸気圧の溶媒/溶媒混合物を合成媒体として使用できることが重要であることは、比較的厳密に溶媒除去/交換が繰り返し行われる条件の下でも、検出可能な微量の高沸点及び/または低蒸気圧の溶媒を除去するのが困難であることと関係する。例えば、DMF中で従来の合成によって作られ、DMF中に保存されたZIF−8の場合に、実験を行って、微量のDMFすべてをZIF−8試料から除去するのにどれほどの処理の厳密性が必要かを判定した。13C SS−MAS Bloch減衰NMRを使用して、各試料中のDMFの極微量分を検出することができた。アセトニトリルによる単一溶媒交換(周囲温度において約20ミリトル以下の減圧下でDMFの脱溶媒和を行ってから、過剰のMeCNで洗浄し、さらに周囲温度において約20ミリトル以下の減圧下で再び脱溶媒和を行う)は、DMFを除去する点で効果がなかった。実際、かなりのDMFがまだNMR手法で検出できることが見出された。ZIF−8/DMF試料を、約100℃の温度において約10ミリトル以下の減圧下で約2時間乾燥させても、またZIF−8/DMF試料を、約250℃の温度(その大気圧沸点よりほぼ100℃高い)で約10ミリトル以下の減圧下で約2時間乾燥させた場合でさえ、DMFはまだ検出可能であった。ZIF−8/DMF試料を、約250℃の温度において約10ミリトル以下の減圧下で一晩(約16時間)乾燥させたときにのみ、微量のDMFは検出されなかった(13C NMR技法で測定した場合)。この例示的なケースが示すように、そうした合成反応を、比較的低い沸点及び/または比較的高い蒸気圧を有する溶媒(または溶媒混合物)で行うことができるとしたら、かなりの費用、努力、時間および資源が節約されうる。
【0149】
実施例16〜33:固体ZnO反応物を用いてEMM−19を形成させようとする合成
比較的不溶性の酸化亜鉛および5−アザベンゾイミダゾールをDMF中で用いる一連の合成反応を、実施例16〜29の場合のように実施した。反応物と溶媒/媒体とのいろいろなモル比、ならびにいろいろな粒径(および粒径分布)を有するいろいろな酸化亜鉛源を試験した。結果を以下の表6に要約する。
【0150】
実施例16では、約1.8ミリモルの5−アザベンゾイミダゾールを、撹拌/超音波処理によって約230ミリモルのN,N−ジメチルホルムアミド中に溶かした。その後、平均粒径が10nm以下である約150mgの酸化亜鉛(約1.8ミリモル)ナノ粉末を含む約23mLのTeflon(商標)ライナーに、その溶液を加えた。その後、Teflon(商標)ライナーを酸分解法パー圧力容器内に封じ込め、等温オーブンで約140℃まで加熱し、約3日間(約40rpmで)タンブルした。室温(約20〜25℃)まで冷却した後すぐに、生成物を濾過し、固形分をDMF(約20mL)で洗浄し、任意選択的に、アセトニトリル(約20mL)で洗浄した。約100mLのアセトニトリルが入れられた約200mLの丸底フラスコに生成物を移し、約24時間撹拌した。溶媒を(濾過またはロータリーエバポレーターで)除去し、さらに約100mLのアセトニトリルを加え、混合物をさらに約24時間撹拌した。その溶媒洗浄/交換のプロセスをもう一度繰り返してアセトニトリル洗浄生成物を得た。乾燥試料を約200℃で約1時間かけてゆっくり加熱し、その最終温度に約3時間保ってから冷却して室温に戻すことにより、活性化を真空中で行った。固形分をパー圧力容器内で約30mLのアセトニトリルと混合し、撹拌せずに約75℃まで約24時間加熱した。固形分の濾過およびアセトニトリル(約20mL)による洗浄により、以下の表6に示すアセトニトリル交換生成物が得られた。
【0151】
実施例17〜25の製法の詳細は、実施例16の製法と似ているが、それぞれのZnOの量/詳細および成分モル比については、以下の表6に詳しく示す。実施例24では、等温加熱を、約3日間ではなく約7日間行ったこと以外は、実施例23と同じ製法を使用したことに注目すべきである。
【0152】
実施例26では、約21ミリモル(約2.5g)の5−アザベンゾイミダゾールを、超音波処理によって約290ミリモル(約25mL)のN,N−ジメチルホルムアミド中に溶かした。その後、溶液を、SEMから推定した平均粒径が約200〜500nmである、Aldrichからの約90mgの酸化亜鉛(約1.1ミリモル)(99.999%)を含むTeflon(商標)ライナーに加えた。その後、Teflon(商標)ライナーを酸分解法パー圧力容器内に封じ込め、等温オーブンで約140℃まで加熱し、約3日間(約40rpmで)タンブルした。室温(約20〜25℃)まで冷却した後すぐに、生成物を濾過し、固形分をDMF(約20mL)で洗浄し、任意選択的にアセトニトリル(約20mL)で洗浄して、合成された時の状態の生成物を得た。約100mLのアセトニトリルが入れられた約200mLの丸底フラスコに生成物を移し、約24時間撹拌した。溶媒を(濾過またはロータリーエバポレーターで)除去し、さらに約100mLのアセトニトリルを加え、混合物をさらに約24時間撹拌した。その溶媒洗浄/交換のプロセスをもう一度繰り返してアセトニトリル洗浄生成物を得た。乾燥試料を約200℃で約1時間かけてゆっくり加熱し、その最終温度に約3時間保ってから冷却して室温に戻すことにより、活性化を真空中で行った。固形分をパーオートクレーブ(Parr autoclave)内で約30mLのアセトニトリルと混合し、撹拌せずに約75℃まで約24時間加熱し、その後濾過し、アセトニトリル(約20mL)で固形分をさらに洗浄して、アセトニトリル交換生成物を得た。
【0153】
実施例27〜33の製法の詳細は、実施例26の製法と似ているが、それぞれのZnOの量/詳細および成分モル比については、以下の表6に詳しく示す。
【0154】
【表7】
【0155】
実施例16〜17および26では、ZnO副産物と思われるものがそれぞれ約25%、約23%、および約23%である、中程度に不純なEMM−19が得られた。実施例22〜24および28では、ZnO副産物と思われるほんの微量の不純物(それぞれ3%未満、約4%、約4%、および約6%)を含む比較的純粋なEMM−19が得られた。実施例18〜21および30〜33では、検出可能な副産物を含まない実質的に純粋なEMM−19生成物が得られた(XRD技法を用いて検出される微量の副産物に関しては、約3%がおおよその検出限界と考えられる)。実施例25では、ZnO不純生成物のみが得られ、実施例27および29では実質的に生成物は得られなかった。
【0156】
図21〜24は、リンカー交換法で作った実施例2のある特定のEMM−19含有生成物のXRDパターンを、固体金属酸化物法を用いて作ったこうした実施例の対応するEMM−19含有生成物および酸化亜鉛不溶性反応物源と比較している。固体金属酸化物生成物におけるEMM−19の相対純度は、リンカー交換生成物中に存在しないであろうどんな未反応ZnOとも区別されうる。これらの図により、表6のそれぞれの実施例のZnO含有量の定量化が可能となった。リンカー交換合成法は、それらのそれぞれの配合物がかなり異なっているにもかかわらず、比較的不溶性の反応物を用いた合成法と生成物純度がおおよそ似ていると思われたことは注目すべきである。さらに、図21〜24のこうした一番上のスペクトルを注意深く検査すると、比較的純粋なEMM−19生成物のXRDスペクトルが、中程度に不純なEMM−19生成物からピークがシフトしているように思われることに気付くであろう。理論に縛られることはないが、単純なピークシフトがあるということは、依然として結晶構造が比較的似ていることを示しうるが、EMM−19生成物の単位格子サイズが異なっていることに起因しうる(単位格子サイズが異なっているのは、単位格子内のひずみ(約90°から約108°ものねじれ角(α)など)のせいでありうる)。
【0157】
これらの実施例から、リンカー交換法では、実用的な純度の所望のZIF生成物を、IM成分と金属源との比率が比較的不溶性の反応物法を用いた場合よりも高い比率で、うまく/十分に作られるように思われると結論できる。また、金属酸化物物質はZIF反応物よりも非常に安価であるという点にも注目される。
【0158】
実施例34〜38:様々なEMM−19およびEMM−19物質の比較
実施例34では、EMM−19生成物を、本明細書の実施例2の一般的手順にしたがって再び製造した。
【0159】
実施例35では、実施例34のEMM−19生成物を、本明細書の実施例2に記載した一般的な活性化手順にしたがってアセトニトリルと溶媒交換し、アセトニトリル中に保存した。
【0160】
実施例36では、実施例35のアセトニトリル交換EMM−19生成物を濾過してアセトニトリルの大半を除去し、Nの下で約26日間保存した。こうして予想外にもEMM−19−STAR生成物が形成された。表7a(左下)は、実施例36にしたがったEMM−19−STAR(N、26日間)試料に関して、2θ(度)およびd間隔による正確なXRDピーク最大値を、付随する正確な相対ピーク強度と共に詳しく示している。表7b(右下)は、実施例36によるEMM−19−STAR(N、26日間)試料に関して、d間隔のみによるXRDピーク最大値の許容可能な範囲を、付随する相対ピーク強度の許容可能な範囲と共に詳しく示している。
【0161】
【表8】
【0162】
実施例37では、実施例36のEMM−19−STAR生成物を、本明細書の実施例2でEMM−19物質に関して詳述した活性化の一般的手順にしたがって熱アセトニトリルで活性化した。表8a(左下)は、実施例37によるEMM−19−STAR(MeCNによる再生)試料に関して、2θ(度)およびd間隔による正確なXRDピーク最大値を、付随する正確な相対ピーク強度と共に詳しく示している。表8b(右下)は、実施例37によるEMM−19−STAR(MeCNによる再生)試料に関して、d間隔のみによるXRDピーク最大値の許容可能な範囲を、付随する相対ピーク強度の許容可能な範囲と共に詳しく示している。
【0163】
【表9】
【0164】
実施例38では、実施例37の活性EMM−19−STAR物質を、アセトニトリルに沈めて11か月間保存し、保存EMM−19−STAR生成物を製造した。表9a(左下)は、実施例38によるEMM−19−STAR(MeCNで保存)試料に関して、2θ(度)およびd間隔による正確なXRDピーク最大値を、付随する正確な相対ピーク強度と共に詳しく示している。表9b(右下)は、実施例38によるEMM−19−STAR(MeCNで保存)試料に関して、d間隔のみによるXRDピーク最大値の許容可能な範囲を、付随する相対ピーク強度の許容可能な範囲と共に詳しく示している。
【0165】
【表10】
【0166】
実施例34〜38の5つの試料すべてのXRDパターンが、図25に、上から下まで任意の値だけ互いにずれてプロットされている。EMM−19およびEMM−19−STAR物質は両方ともSOD骨格型を有するが、これらの様々なXRDスペクトルは、互いにピークがシフトしているように思われる。理論に縛られることはないが、対応する骨格型の変化がないのに単純なピークシフトがあるということは、単位格子内のゆがみのせいであろう単位格子の大きさの変化に起因しうる。そのような単位格子の大きさの変化は、以下の表10に示されており、これによりR−3m(166)の空間群が作られる。
【0167】
【表11】
【0168】
SOD骨格は、普通は立方体であるが、これらの実施例34〜38の場合、立方単位格子は、極度にゆがんでいるように思われ、通常は直交する角度(α)が、90°から約106°〜約108°の間まで増大している。実施例34と比べると実施例35では、DMFがMeCNで交換されており、これにより単位格子体積が約5%収縮したと思われることは注目に値する。実施例35と比べると実施例36では、長期間にわたって(窒素雰囲気下で)でMeCNが除去されており、これにより単位格子体積がさらに約5%収縮したと思われることはさらに注目に値する。実施例37において、実施例36のZIFにMeCNを再充填すると、収縮のほんの約5%だけが戻るように思われたが、この約5%の体積増加が窒素での付加的な収縮の可逆性(以下に示すように、CO吸着等温線に対する作用が不可逆性であるため)を示すかどうかは明確ではない。MeCN中にMeCN充填ZIFをかなり長期間保存しても、単位格子パラメータには実質的な変化は観察されなかった(実施例38)。
【0169】
COおよびNの吸着/脱着等温線を図26に示す。実施例35の生成物(「EMM−19CO2」)は、V形状型のCO等温線を示していると思われ、これは重要なヒステリシス(実施例1のZIF−7生成物に見られるようなものなど)を示す急激なCO取込みを、低いCO分圧で示している。実施例36の生成物(「EMM−19−STAR(N、26日間)CO2」)は、実施例35のものとは著しく異なる形状を有するCO等温線を示していると思われる。この等温線は、基本的にヒステリシスがないと思われ、I型等温線に近い。飽和CO容量は実施例36よりも低いように思われるが、低分圧CO吸着は、大きいように思われる。またCO取込みでは、CO吸着曲線に急な変化はないので、どんな構造変化も伴っていないように思われる。実施例37の生成物(「EMM−19−STAR(再生)CO2」)は、そのI型形状を保持するCO等温線を示しているように思われ、また圧力範囲全体にわたって実施例36よりもCO取込み量がやや増大していることを示すように思われる。実施例38の生成物(「EMM−19−STAR(保存)CO」)は、そのI型形状を保持するCO等温線を示しているように思われ、また圧力範囲全体にわたって実施例37よりもCO取込み量がやや増大していることを示すように思われる。
【0170】
EMM−19−STAR物質は、特に、CO量が比較的少ない流れ(例えば、CO分圧が120トルより低いことを示す)のCCS(炭素の捕捉および保存)に関して注目される領域において、ZIF−7、ZIF−22、またさらにはEMM−19よりも低分圧CO吸着が非常に増大しているように思われる。EMM−19のV型に似たCO等温線から、EMM−19−STARのI型に似たCO等温線へのシフトの原因が何かは、完全には理解できない。
【0171】
とはいえ、理論に縛られることはないが、一部の化学部分(多分、水)が、ZIF細孔構造内に捕捉され、いくらか強力にZIFと結合しているということが起こりうる可能性がある。それは、グローブボックスでの取り扱い及び/または無水反応物/調製で、その微量分すべてを除去するために細心の注意を払わなかったためである。溶媒分子(DMF、MeCN)を取り除き、不活性環境中(窒素ガス雰囲気の下など)に十分長い期間保存すると、その部分が骨格から離れようとする推進力が起こり、そのため比較的非弾性的な結晶構造(EMM−19−STAR)(これは、比較的弾性的な結晶構造(EMM−19)に容易に戻ることのできない)に閉じ込められる可能性がある。上で述べたことに加えて、あるいは上で述べたこととは別に、中程度〜強力に相互作用する化学部分がZIF構造体内に存在しなければ、イミダゾレート成分が揺れ動くかまたは回転して、特定の安定した配置になることが可能になりうるか、あるいはそうなるように促進されうる。この単位格子ゆがみ現象は、多くのSOD骨格型物質及び/またはV型に似たCO等温線を示す多くのZIF/MOFに当てはまりうる可能性があるが、現在まで、この現象は、ZIF−7(SODも)にも他のZIF物質にも観察されていない。
【0172】
特定の実施形態を参照しながら本発明を説明し示してきたが、本発明は、本明細書に必ずしも示されていない変形形態にも役立つことを当業者なら理解するであろう。それゆえに、本発明の正確な範囲を定めるには、添付の特許請求の範囲のみを参照すべきである。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
SOD骨格型を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物であって、前記ゼオライトイミダゾレート骨格の構造体が、約28℃の温度において、
(i)約75トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.60ミリモルのCO
(ii)約100トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.75ミリモルのCO
(iii)約200トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも1.15ミリモルのCO、および/または
(iv)約39トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.35ミリモルのCO
を収着することができる、ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物。
(態様2)
実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物であって、前記ゼオライトイミダゾレート骨格の構造体が、約28℃の温度において、
(i)約75トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.60ミリモルのCO
(ii)約100トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.75ミリモルのCO
(iii)約200トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも1.15ミリモルのCO、および/または
(iv)約39トルのCO分圧で、ゼオライトイミダゾール骨格の組成物1グラム当たり少なくとも0.35ミリモルのCO
を収着することができる、ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物。
(態様3)
実験式:Zn(5−アザベンゾイミダゾレート)を有し、SOD骨格型を示し、かつ表1b、表1d、表7b、表8bおよび表9bのいずれか1つに記載されたd間隔範囲および相対強度範囲で定義されるピークを有するX線回折パターンを示す、多孔質結晶物質。
(態様4)
気体を吸着する方法であって、前記気体(例えば、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンを含む)を態様3に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、気体を吸着する方法。
(態様5)
気体を流体流から分離する方法において、前記気体(例えば、水素、窒素、酸素、希ガス、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫化水素、アンモニア、炭化水素またはアミンを含む)を含む流体流から気体を分離する方法であって、前記流体流を態様3に記載の前記多孔質結晶物質と接触させることを含む、気体を流体流から分離する方法。
(態様6)
(a)合成混合物を生じさせるために、反応媒質と、イミダゾレートまたは置換イミダゾレート反応物(IM)の源と、金属MおよびMの反応物源とをともに混合するステップであって、MおよびMが同一または異なる金属陽イオンを含み、その反応物の少なくとも1つが反応媒質自体および合成混合物中に比較的不溶性である、混合するステップと、
(b)少なくとも1つの比較的不溶性の反応物を有する前記合成混合物を、一般構造:M−IM−Mを含む四面体骨格を有するゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を形成させるのに十分な条件下で維持するステップと、
(c)前記ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を、その単位格子体積を安定的に減少させるのに十分な条件下で処理するステップと
を含む、ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を形成させるための方法。
(態様7)
実質的に可溶性のM、MおよびIMの源を同じ反応媒質中で結晶化させることによりゼオライトイミダゾレート骨格の組成物を製造した場合に得られる骨格型とは異なる骨格型を前記ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物の生成物が有する、態様6に記載の方法。
(態様8)
前記ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物の生成物が、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAG、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CRB、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DIA、DOH、DON、EAB、EDI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、FRL、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IHW、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWV、IWW、JBW、KFI、LAU、LCS、LEV、LIO、LIT、LOS、LOV、LTA、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、POZ、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SGT、SIV、SOD、SOS、SSY、STF、STI、STT、SZR、TER、THO、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOZ、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZNI、ZONおよびこれらの組合せからなる群から選択される骨格型であって、CRB、DFT、CAG、SOD、MER、RHO、ANA、LTA、DIA、ZNI、GME、LCS、FRL、GIS、POZ、MOZおよびこれらの組合せからなる群から選択されるものなど(例えば、SOD)を示す、態様6または態様7に記載の方法。
(態様9)
前記反応媒質が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、1,3−ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、スルホキシド、ホスホルアミド、アセトニトリル(MeCN)、トリエチルアミン(TEA)、水、アンモニア、エタノールまたはこれらの組合せを含む、態様6〜8のいずれか1項に記載の方法。
(態様10)
前記金属が、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Lr、Rf、Db、Sg、Bh、Hs、Mt、Ds、Rg、Uubおよびこれらの組合せからなる群から選択される(例えば、Znである)、態様6〜9のいずれか1項に記載の方法。
(態様11)
前記イミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)が、IV、V、VIまたはそれらの任意の組合せ:
【化101】
[式中、A、A、AおよびAは、C、N、PおよびBからなる元素の群から選択され、A、AおよびAは、CまたはNのいずれかであってよく、R〜Rは、A〜AがCを含む場合に存在し、R、RまたはRは、隣接したMまたはMを妨害しない立体障害を引き起こさない基を含み、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ別個に、水素、アルキル、ハロ、シアノまたはニトロであり、MおよびMは、同一または異なる金属陽イオンを含み、さらにR10、R11およびR12は、それぞれ別個に電子吸引基である]
からなる群から選択される、態様6〜10のいずれか1項に記載の方法。
(態様12)
前記イミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)が、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVIIおよび/またはXVIII:
【化102】
【化103】
【化104】
からなる群から選択され、例えば、式中において、前記イミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)は、式:XVの構造体を含む、態様11に記載の方法。
(態様13)
前記十分な条件が、1時間〜10日間(例えば、12時間〜7日間)の接触/結晶化時間、約−78℃〜前記反応媒質の沸点(例えば、約15℃〜約150℃)の温度および約1kPaa〜約10MPaa(例えば、約100kPaa〜約10MPaa)の反応圧力を含む、態様6〜12のいずれか1項に記載の方法。
(態様14)
前記イミダゾレートまたは置換イミダゾレート(IM)は、5−アザベンゾイミダゾレートであり、前記ゼオライトイミダゾレート骨格の組成物は、SOD骨格型を有する、態様6〜13のいずれか1項に記載の方法。
(態様15)
前記処理ステップにとって十分な条件が、前記反応媒質を除去すること、および少なくとも1日間(例えば、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも5日間、少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間、少なくとも17日間、少なくとも20日間、少なくとも23日間、少なくとも26日間、または少なくとも30日間)、あるいは任意選択的に最大365日間までの連続期間にわたって、不活性ガスを導入することを含む、態様6〜14のいずれか1項に記載の方法。

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