特許第6150316号(P6150316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6150316
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】動物用磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170612BHJP
   G01R 33/32 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   A61B5/05 380
   G01N24/02 520Y
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-112207(P2016-112207)
(22)【出願日】2016年6月3日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129849
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克法
【審査官】 島田 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−085679(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/015678(WO,A1)
【文献】 特開2013−169359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Wiley Online Library
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物である被検体の少なくとも体位を含む被検体情報と少なくとも断面種類を含む撮像条件とを入力する入力手段と、前記撮像条件で核磁気共鳴信号を発生させると共に当該核磁気共鳴信号を検出する撮像手段と、前記撮像手段を制御する制御部と、前記検出された核磁気共鳴信号から画像を再構成する画像再構成処理部と、を備えた動物用磁気共鳴イメージング装置において、
前記画像再構成処理部は、前記被検体情報として指定された体位と前記撮像条件として指定された断面とに応じて、前記被検体の四足で立った姿勢における正面、後面、上面又は側面から見た場合に対応するように画像を回転させた再構成画像を作成することを特徴とした動物用磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記画像再構成処理部は、
前記被検体のトランスバース面と正面からの視点とが指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における正面からの視点において、画像の上が前記被検体の背側かつ画像の右が前記被検体の左となるように画像を回転させて再構成画像を作成し、
前記被検体のトランスバース面と後面からの視点とが指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における後面からの視点において、画像の上が前記被検体の背側かつ画像の右が前記被検体の右となるように画像を回転させて再構成画像を作成し、
前記被検体のサジタル面を指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における側面からの視点において画像の上が前記被検体の背側かつ画像の右が前記被検体の尾側となるように画像を回転させて再構成画像を作成し、
前記被検体のコロナル面を指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における上面からの視点において画像の上が前記被検体の頭側かつ画像の左が前記被検体の左となるように画像を回転させて再構成画像を作成する請求項1に記載の動物用磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記被検体の再構成画像と、被検体の四足で立った姿勢における方位とを表示する表示部を備え、
被検体の四足で立った姿勢における正面及び後面を表す方位は、頭及び尾で表され、
被検体の四足で立った姿勢における上面及び下面を表す方位は、背及び腹で表され、
被検体の四足で立った姿勢における左側面及び右側面を表す方位は、左及び右で表される、請求項1又は請求項2に記載の動物用磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に係り、特に動物用磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(以下、適宜MRイメージング装置という)において、撮像後に再構成される画像には、トランスバース面(Transverse plane、横断面)、サジタル面(Sagittal plane、矢状面)、コロナル面(Coronal plane、冠状面)の3種類の断面の断層画像がある。ここで、トランスバース面はアキシャル面(axial plane、体軸面)ともいう。また、トランスバース面の断層画像をトランスバース画像、サジタル面の断層画像をサジタル画像、コロナル面の断層画像をコロナル画像ともいう。
【0003】
従来、これらの断層画像は、例えば医用画像処理装置(例えば特許文献1)に表示され、診断に用いられる。特許文献1に記載された医用画像処理装置は、MRイメージング装置やX線CT装置等で得られた画像を表示する。
【0004】
図10(a)は、従来のMRイメージング装置でヒトを撮像する際の、トランスバース面及びサジタル面の断層画像の視点方向を示した模式図である。
トランスバース画像の視点方向T101は、頭頂から足先へ向かう視点(ヒトが立っている状態で上からの視点)、且つヒトが仰向けで寝た状態でヒトを見る視点方向である。
トランスバース画像の視点方向T102は、足先から頭頂へ向かう視点(ヒトが立っている状態で下からの視点)、且つヒトが仰向けで寝た状態でヒトを見る視点方向である。
サジタル画像の視点方向S101は、ヒトが立っている状態で左側面から右側面へ向かう視点(側面からの視点)でヒトを見る視点方向である。
【0005】
各視点で得られる断層画像の例を図10(b)〜図10(d)にそれぞれ示す。なお、これらの図面と、図11(b)、図12(b)〜(d)、図13(b)は、得られる断層画像に映る被検体の方位を分かり易く説明するために断層画像を漫画風に模式的に示す図である。
【0006】
視点方向T101で得られるヒトのトランスバース画像は、図10(b)に示すように、画像の上がヒトの前側、画像の下がヒトの後ろ側、画像の左がヒトの左側、画像の右がヒトの右側として表示される画像である。この視点方向T101の画像は、頭部の診断に主に利用される。
【0007】
視点方向T102で得られるヒトのトランスバース画像は、図10(c)に示すように、画像の上がヒトの前側、画像の下がヒトの後ろ側、画像の左がヒトの右側、画像の右がヒトの左側として表示される画像である。この視点方向T102の画像は、頭部以外の診断に主に利用される。なお、各視点方向で得られるトランスバース画像は、共に画像の上が目鼻腹などの前面で、画像の下が後頭部や背中などの後面となる配置であるが、画像の左右の配置が逆になっている。
【0008】
視点方向S101で得られるヒトのサジタル画像は、図10(d)に示すように、画像の上がヒトの頭側(頭頂側)、画像の下がヒトの足側、画像の左が、ヒトが立っている状態でヒトの前側、画像の右がヒトの後ろ側として表示される画像である。
【0009】
図11(a)は、MRイメージング装置でヒトを撮像する際の、コロナル面の断層画像の視点方向を示した図である。コロナル画像の視点方向C101は、ヒトが立っている状態で正面(前面)から後面へ向かう視点(正面からの視点)でヒトを見る視点方向である。視点方向C101で得られるヒトのコロナル画像は、図11(b)に示すように、画像の上がヒトの頭側(頭頂側)、画像の下がヒトの足側、画像の左がヒトの右側、画像の右がヒトの左側として表示される画像である。
【0010】
従来のMRイメージング装置は、ヒトの断面を撮像して表示する前提で構成されているので、収集したMR信号を用いて画像再構成により作成された断層画像は、ヒトが立った状態に対して、ヒトの断面が把握し易いように表示される。この従来のMRイメージング装置は、例えば動物病院等において動物の断面を撮像することに利用することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−137190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、例えば犬猫などの動物は、通常は四足で立ったり四足歩行したりする四足動物である。したがって、従来のMRイメージング装置で動物の断面を撮像すると、図12及び図13のように表示されることになる。
【0013】
図12(a)は、従来のMRイメージング装置で四足の動物を撮像する際のトランスバース面及びサジタル面の断層画像の視点方向を示した模式図である。
トランスバース画像の視点方向T201は、頭頂から尾へ向かう視点(四足の動物が2本足で立った状態で上からの視点)、且つ動物が仰向けで寝た状態で動物を見る視点方向である。
トランスバース画像の視点方向T202は、尾から頭頂へ向かう視点(四足の動物が2本足で立った状態で下からの視点)、且つ動物が仰向けで寝た状態で動物を見る視点方向である。
サジタル画像の視点方向S201は、四足の動物が2本足で立った状態で左側面から右側面へ向かう視点(側面からの視点)で動物を見る視点方向である。
【0014】
視点方向T201で得られる四足の動物のトランスバース画像は、図12(b)に示すように、画像の上が、四足の動物が2本足で立った状態における前側、つまり、四足の動物の腹側として表示される画像である。また、画像の下が、四足の動物が2本足で立った状態における後ろ側、つまり、四足の動物の背側として表示される画像である。さらに、画像の左が動物の左側、画像の右が動物の右側として表示される画像である。
【0015】
同様に、視点方向T202で得られる四足の動物のトランスバース画像は、図12(c)に示すように、画像の上が、四足の動物が2足で立った状態における前側、つまり、四足の動物の腹側として表示される画像である。また、画像の下が、四足の動物が2本足で立った状態における後ろ側、つまり、四足の動物の背側として表示される画像である。さらに、画像の左が動物の右側、画像の右が動物の左側として表示される画像である。
【0016】
視点方向S201で得られる四足の動物のサジタル画像は、図12(d)に示すように、画像の上が四足の動物の頭側(頭頂側)、画像の下が四足の動物の後足側すなわち四足の動物の尾側として表示される画像である。また、画像の左が、四足の動物が2本足で立った状態における前側、つまり、四足の動物の腹側として表示される画像である。さらに、画像の右が、四足の動物が2本足で立った状態における後ろ側、つまり、四足の動物の背側として表示される画像である。
【0017】
図13(a)は、従来のMRイメージング装置で四足の動物を撮像する際のコロナル面の断層画像の視点方向を示した模式図である。コロナル画像の視点方向C201は、四足の動物が2足で立った状態で正面(腹側)から後面(背側)へ向かう視点(正面からの視点)で動物を見る視点方向である。
【0018】
視点方向C201で得られる四足の動物のコロナル画像は、図13(b)に示すように、画像の上が四足の動物の頭側(頭頂側)、画像の下が四足の動物の後足側すなわち四足の動物の尾側として表示される画像である。また、画像の左が、四足の動物が2本足で立った状態における動物の右側、画像の右が、四足の動物が2本足で立った状態における動物の左側として表示される画像である。
【0019】
このように、四足の動物の断面を撮像して収集したMR信号を用いて画像再構成を行うと、四足の動物が、ヒトのように2本足で立った状態で、且つ仰向けで寝た状態として断層画像が作成される。そのため、結果として、四足の動物が、通常ではありえない2本足で立った状態での断層画像を表示することになり、断面の把握が難しい。
【0020】
また、犬猫などの動物が四足で立った状態は、ヒトと対比すると、うつ伏せの状態(伏臥位、腹臥位)と言える。そのため、ヒトを仰向けの状態(仰臥位、背臥位)の画像として表示するトランスバース画像においては、動物を被検体とした場合の断層画像では、画像の上下と、動物が通常の四足で立った状態の上下の向きとが逆になり、断面の把握が難しい。よって、従来のMRイメージング装置で動物の断面を撮像する場合、MRイメージング装置で得られた断層画像を上下反転したり、90度回転させたりして、断層画像を四足動物に適した向きに変更してから、例えば獣医が読影、診断しなければならず、そのような変更が面倒であった。
【0021】
そこで本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、動物が四足で立った状態における断面が把握し易い断層画像を再構成することができる動物用磁気共鳴イメージング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するため、本発明に係る動物用磁気共鳴イメージング装置は、動物である被検体の少なくとも体位を含む被検体情報と少なくとも断面種類を含む撮像条件とを入力する入力手段と、前記撮像条件で核磁気共鳴信号を発生させると共に当該核磁気共鳴信号を検出する撮像手段と、前記撮像手段を制御する制御部と、前記検出された核磁気共鳴信号から画像を再構成する画像再構成処理部と、を備えた動物用磁気共鳴イメージング装置において、前記画像再構成処理部が、前記被検体情報として指定された体位と前記撮像条件として指定された断面とに応じて、前記被検体の四足で立った姿勢における正面、後面、上面又は側面から見た場合に対応するように画像を回転させた再構成画像を作成することを特徴とする。
【0023】
かかる構成によれば、動物用磁気共鳴イメージング装置は、核磁気共鳴信号から画像を再構成する画像再構成処理部において、動物である被検体が四足で立った姿勢における正面、後面、上面又は側面から見た場合に対応する断層画像を作成する。よって、作成された再構成画像の向きを変更する手間が省け、作成された再構成画像を表示させれば、そのまま、動物が四足で立った状態における断面を容易に把握できる。
【0024】
また、本発明に係る動物用磁気共鳴イメージング装置は、前記画像再構成処理部が、前記被検体のトランスバース面と正面からの視点とが指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における正面からの視点において、画像の上が前記被検体の背側かつ画像の右が前記被検体の左となるように画像を回転させて再構成画像を作成し、前記被検体のトランスバース面と後面からの視点とが指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における後面からの視点において、画像の上が前記被検体の背側かつ画像の右が前記被検体の右となるように画像を回転させて再構成画像を作成し、前記被検体のサジタル面を指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における側面からの視点において画像の上が前記被検体の背側かつ画像の右が前記被検体の尾側となるように画像を回転させて再構成画像を作成し、前記被検体のコロナル面を指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における上面からの視点において画像の上が前記被検体の頭側かつ画像の左が前記被検体の左となるように画像を回転させて再構成画像を作成するようにしてもよい。
【0025】
かかる構成によれば、動物用磁気共鳴イメージング装置は、撮像条件として予め指定された断面の種類や視点の向きに応じて、動物が四足で立った状態に対応したトランスバース画像、サジタル画像及びコロナル画像を作成することができる。
【0026】
また、本発明に係る動物用磁気共鳴イメージング装置は、前記被検体の再構成画像と、被検体の四足で立った姿勢における方位とを表示する表示部を備え、被検体の四足で立った姿勢における正面及び後面を表す方位は、頭及び尾で表され、被検体の四足で立った姿勢における上面及び下面を表す方位は、背及び腹で表され、被検体の四足で立った姿勢における左側面及び右側面を表す方位は、左及び右で表されるようにしてもよい。
【0027】
かかる構成によれば、動物用磁気共鳴イメージング装置は、ヒトと対比すると、ヒトにとっての足で指定される方位を尾で表し、且つ、ヒトにとっての前後で指定される方位を腹及び背で表すことで、動物が四足で立った状態の方位を直感的に把握し易くなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の動物用磁気共鳴イメージング装置によれば、動物が四足で立った状態における断面が把握し易い断層画像を再構成することができる。したがって、画像の向きを変更する手間を省いて断層画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る動物用MRイメージング装置の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】(a)、(b)、(c)は図1の動物用MRイメージング装置に被検体情報として登録される被検体の体位の選択肢の例をそれぞれ示している。
図3】本発明の実施形態における被検体のトランスバース面及びコロナル面の断層画像を説明する図であって、(a)はそれぞれの視点方向、(b)はT1方向の画像、(c)はT2方向の画像、(c)はC1方向の画像を模式的に示している。
図4】本発明の実施形態における被検体のサジタル面の断層画像の説明図であって、(a)は視点方向、(b)はS1方向の画像を模式的に示している。
図5図1の動物用MRイメージング装置が画像再構成時に行う回転処理を模式的に示す説明図であって、(a)はトランスバース面における画像回転処理、(b)はサジタル面における画像回転処理、(c)はコロナル面における画像回転処理、をそれぞれ示している。
図6図1の動物用MRイメージング装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図7図6の画像再構成処理の流れを示すフローチャートである。
図8】被検体のサジタル画像の一例であって、(a)は従来技術によるもの、(b)は本発明によるものをそれぞれ示している。
図9】被検体のトランスバース画像の一例であって、(a)は従来技術によるもの、(b)は本発明によるものをそれぞれ示している。
図10】従来技術におけるヒトのトランスバース面及びサジタル面の断層画像を説明する図であって、(a)はそれぞれの視点方向、(b)はT101方向の画像、(c)はT102方向の画像、(c)はS101方向の画像を模式的に示している。
図11】従来技術におけるヒトのコロナル面の断層画像の説明図であって、(a)は視点方向、(b)はC101方向の画像を模式的に示している。
図12】従来技術における動物のトランスバース面及びサジタル面の断層画像を説明する図であって、(a)はそれぞれの視点方向、(b)はT201方向の画像、(c)はT202方向の画像、(c)はS201方向の画像を模式的に示している。
図13】従来技術における動物のコロナル面の断層画像の説明図であって、(a)は視点方向、(b)はC201方向の画像を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る動物用磁気共鳴イメージング装置である動物用MRイメージング装置について詳細に説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1に示すように、動物用MRイメージング装置1は、核磁気共鳴現象(NMR現象)を利用して、動物である被検体Aの断層画像を得るもので、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、送信系4と、受信系5と、制御部6と、信号処理部7とを備えている。ここでは、被検体Aは、例えば犬であるものとしている。
【0032】
静磁場発生系2は、図示しないテーブルに載置された被検体Aに静磁場を与えるものであり、静磁場発生部8を備えている。静磁場発生部8は、被検体Aの周りにその体軸方向又は体軸と直交する方向に強く均一な静磁場を発生させるものであり、被検体Aの周りのある広がりをもった空間に配置された磁石からなる。この磁石は、例えば永久磁石、又は常電導方式の磁石あるいは超電導方式の磁石である。ここで、静磁場発生部8が常電導方式あるいは超電導方式の磁石の場合、静磁場発生系2は、静磁場発生部8に電源を供給する静磁場電源を備える。
【0033】
傾斜磁場発生系3は、被検体Aに傾斜磁場を与えるものであり、傾斜磁場コイル10と、傾斜磁場電源11とを備えている。傾斜磁場コイル10は、X、Y、Zの三軸方向(周波数エンコード方向、位相エンコード方向及びスライス方向)に巻かれており、それぞれのコイルは傾斜磁場電源11に接続されている。
【0034】
傾斜磁場電源11は、制御部6からの命令に従って傾斜磁場コイル10を駆動するものである。これにより、傾斜磁場コイル10は、X、Y、Zの三軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzを被検体Aに印加するようになっている。傾斜磁場Gx、Gy、Gzを用い、スライス方向傾斜磁場、位相エンコード方向傾斜磁場、周波数エンコード方向傾斜磁場を印加する。スライス方向傾斜磁場の加え方により、被検体Aに対するスライス面を設定することができる。また、周波数エンコード方向の傾斜磁場及び位相エンコード方向の傾斜磁場によりNMR信号に空間的位置情報を付与することができる。
【0035】
送信系4は、被検体Aの生体組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴(NMR)を起こさせる高周波パルスを照射するものであり、高周波発生器12と、変調器13と、高周波アンプ14と、送信側高周波コイル15aとを備えている。
【0036】
高周波発生器12は、高周波パルスを発生する。変調器13は、高周波発生器12から出力された高周波パルスを制御部6の命令に従って変調する。高周波アンプ14は、変調された高周波パルスを増幅する。送信側高周波コイル15aは、被検体Aに近接して配置されており、増幅された高周波パルス(電磁波)を被検体Aに照射する。
【0037】
受信系5は、被検体Aの生体組織の原子核の磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するものであり、受信側高周波コイル15bと、増幅器16と、A/D変換器17と、検波器18とを備えている。
【0038】
受信側高周波コイル15bは、被検体Aに近接して配置されており、送信側高周波コイル15aから照射された電磁波である高周波パルスによる被検体Aからの応答の電磁波であるNMR信号を検出する。増幅器16は、検出されたNMR信号を増幅する。A/D変換器17は、増幅されたNMR信号をデジタル信号に変換する。検波器18は、送信系4の高周波発生器12と接続されており、デジタル変換されたNMR信号を直交位相検波し、制御部6からの命令によるタイミングでリサンプリングした二系列の収集データとする。この二系列の収集データの信号は、制御部6から信号処理部7に送られるようになっている。
【0039】
傾斜磁場発生系3の傾斜磁場コイル10と、送信系4の送信側高周波コイル15aと、受信系5の受信側高周波コイル15bとは、静磁場発生系2の静磁場発生部8の発生する静磁場の磁場空間内に設置されており、本発明における撮像手段9を構成している。
撮像手段9は、所定の撮像条件で被検体Aに核磁気共鳴信号(NMR信号)を発生させると共に当該核磁気共鳴信号を検出する。
【0040】
制御部6は、撮像手段9を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)の制御で動作する。制御部6は、高周波パルスと傾斜磁場を所定のパルスシーケンス(pulse sequence)で繰り返し印加してNMR信号を計測データとして収集する。この制御部6は、被検体Aの断層画像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系4、傾斜磁場発生系3、あるいは受信系5に送り、所定のパルスシーケンスで傾斜磁場及び高周波パルスを発生させるとともにNMR信号を検出し、所定のNMR信号が収集されるようにする。
【0041】
信号処理部7は、計算機19と、ディスプレイ(表示部)20と、記憶部21と、入力デバイス(入力手段)22とを備えている。計算機19は、例えば、一般的なコンピュータで実現することができ、CPUと、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、HDD(Hard Disk Drive)と、入力/出力インタフェースとを含んで構成されている。計算機19は、受信系5で検出されたNMR信号から画像を再構成してディスプレイ20に表示するようになっている。
【0042】
ディスプレイ20は、再構成された画像である断層画像を表示するものであり、このディスプレイ20は、例えば、液晶ディスプレイ等から構成される。再構成された画像は記憶部21に記憶されている。
【0043】
記憶部21は、断層画像等の画像データや各種データを記憶するものであり、例えば磁気ディスク、光ディスク、一般的な画像メモリ等から構成される。記憶部21は、再構成された画像と入力された撮像条件とを組み合わせて記憶する。この撮像条件は、入力デバイス22で入力される。
【0044】
入力デバイス22は、信号処理部7で行う処理や撮像条件など制御情報や被検体情報を入力するものであり、例えばキーボードやマウスあるいはタッチパネルと、条件設定に必要なGUI(Graphical User Interface)を表示する表示部などを備えている。
【0045】
この入力デバイス22を介して設定される撮像条件として、パルスシーケンスの選択や、撮像する断面の種類等が含まれる。装置を使用する使用者(以下、ユーザという)による撮像条件の設定は、予めプリセットされていた撮像条件の中から、入力デバイス22を用いて必要な撮像条件を選択し、必要に応じて変更を行う。ここで、撮像する断面として、トランスバース面、サジタル面、コロナル面の指定も含まれる。また、通常、トランスバース面の表示の仕方(視点方向)には、ユーザの好みがある。そのため、ユーザが、画像を正面からの視点で表示してほしいか、後面からの視点で表示してほしいか、入力デバイス22を用いて、ユーザの指示を事前に装置に設定しておくようにする。
【0046】
また、この入力デバイス22を介して設定される被検体情報は、例えば、被検体名、被検体ID、性別、生年月日、被検体の体位等が含まれる。ここで、被検体情報を登録するときの被検体の体位の項目については、被検体を載置するテーブル上での被検体の配置方法や、その配置を特定するための表記方法等に応じて、様々な選択肢を用意しておくことができる。
【0047】
例えば、図2(a)に示すように、頭先背臥位、頭先腹臥位、頭先右側臥位、頭先左側臥位、足先背臥位、足先腹臥位、足先右側臥位、足先左側臥位、の8種類から選択するようにしてもよい。この場合、動物用MRイメージング装置1の中に被検体を入れるときに、頭側を先に入れるのか、尾側を先に入れるのか、という情報と、例えばテーブル上で被検体がどのような体位で寝ているのかを示す情報(仰向けならば背臥位、うつ伏せならば腹臥位、右向きに寝ていれば右側臥位、左向きに寝ていれば左側臥位の4臥位の内のいずれかの情報)とを組み合わせることで、被検体の体位を特定することができる。
【0048】
同様に、図2(b)に示すように、ヘッドファースト背臥位、ヘッドファースト腹臥位、ヘッドファースト右側臥位、ヘッドファースト左側臥位、フットファースト背臥位、フットファースト腹臥位、フットファースト右側臥位、フットファースト左側臥位、の8種類から選択するようにしてもよい。
【0049】
また、被検体の体位の情報において、テーブル向きが装置に対して縦向きならば、前記したように頭側と尾側のいずれを先に入れるのかという情報が必要であるが、一方、テーブル向きが装置に対して横向きならば、頭側と尾側のどちらが右側でどちらが左側なのかという情報が必要になる。例えば、図2(c)に示すように、左頭・右足・背臥位、左頭・右足・腹臥位、左頭・右足・右側臥位、左頭・右足・左側臥位、左足・右頭・背臥位、左足・右頭・腹臥位、左足・右頭・右側臥位、左足・右頭・左側臥位、の8種類から選択するようにしてもよい。この場合、テーブル上の左右のいずれに被検体の頭側が配置されているかという情報と、テーブル上で被検体がどのような体位で寝ているのかという臥位の情報とを組み合わせることで、同様に被検体の体位を特定することができる。
【0050】
図1に戻って、説明を続ける。ここでは、計算機19は、画像再構成処理部23を備えている。画像再構成処理部23は、撮像手段9により検出されたNMR信号を用いて被検体の画像を作成する。再構成された画像は、その撮像条件と共に記憶部21に格納される。記憶部21に格納される断層画像は、従来のMRイメージング装置と同様に、医用画像の標準規格であるDICOM形式で保存される。なお、DICOM形式では、1つのファイルの中に、画像データの他に、ヘッダ情報として種々の情報を含んでいる。このヘッダには、被検体情報や、撮像する断面の種類を含む撮像条件等が含まれる。この画像再構成処理部23が行う画像再構成では、詳細には多くの処理があるが、代表的には、例えばフーリエ変換を行い、絶対値画像を作成する。
【0051】
本実施形態では、画像再構成処理部23は、被検体情報として指定された体位と撮像条件として指定された断面とに応じて、被検体の四足で立った姿勢における正面、後面、上面又は側面から見た場合に対応するように画像を回転させた再構成画像を作成する。なお、被検体の四足で立った姿勢や四足で立った状態とは、撮像時の被検体の姿勢を意味するものではない。撮像時には、腹臥位(うつ伏せ)に限らず、背臥位(仰向け)、右側臥位、左側臥位等で構わない。
この画像再構成処理部23は、撮像前に選択された被検体の体位の情報と、撮像条件の中の断面の種類の情報とを用いて、図3及び図4に示すように、犬猫などの四足の動物が四足で立った状態から見た動物の断面が把握しやすい画像の向きに画像を再構成する。
【0052】
図3(a)は、動物用MRイメージング装置1で犬猫等の被検体を撮像する際のトランスバース面及びコロナル面の断層画像の視点方向を示した模式図である。
トランスバース画像の視点方向T1は、四足の動物が四足で立った状態で、頭から尾へ向かう視点(正面からの視点)で動物を見る視点方向である。
トランスバース画像の視点方向T2は、四足の動物が四足で立った状態で、尾から頭へ向かう視点(後面からの視点)で動物を見る視点方向である。
コロナル画像の視点方向C1は、四足の動物が四足で立った状態で、背側(上面)から腹側(下面)へ向かう視点で動物を見る視点方向である。
【0053】
各視点で得られる断層画像の例を図3(b)〜図3(d)にそれぞれ示す。なお、これらの図面と、図4(b)は、得られる断層画像に映る被検体の方位を分かり易く説明するために断層画像を漫画風に模式的に示す図である。
【0054】
視点方向T1で得られる四足の動物のトランスバース画像は、図3(b)に示すように、画像の上が、四足の動物が四足で立った状態における上側、つまり、四足の動物の背側として表示される画像である。また、画像の下が、四足の動物が四足で立った状態における下側、つまり、四足の動物の腹側として表示される画像である。さらに、画像の左が動物の右側、画像の右が動物の左側として表示される画像である。
【0055】
同様に、視点方向T2で得られる四足の動物のトランスバース画像は、図3(c)に示すように、画像の上が、四足の動物が四足で立った状態における上側、つまり、四足の動物の背側として表示される画像である。また、画像の下が、四足の動物が四足で立った状態における下側、つまり、四足の動物の腹側として表示される画像である。さらに、画像の左が動物の左側、画像の右が動物の右側として表示される画像である。
【0056】
視点方向C1で得られる四足の動物のコロナル画像は、図3(d)に示すように、四足の動物が四足で立った状態で上面からの視点で、画像の上が四足の動物の頭側、画像の下が四足の動物の尾側として表示される画像である。また、画像の左が、四足の動物が四足で立った状態における動物の左側、画像の右が、四足の動物が四足で立った状態における動物の右側として表示される画像である。
【0057】
図4(a)は、動物用MRイメージング装置1で犬猫等の被検体を撮像する際のサジタル面の断層画像の視点方向を示した模式図である。サジタル画像の視点方向S1は、四足の動物が四足で立った状態で左側面から右側面へ向かう視点(側面からの視点)で動物を見る視点方向である。この視点方向S1で得られる四足の動物のサジタル画像は、図4(b)に示すように、画像の上が、四足の動物が四足で立った状態における上側、つまり、四足の動物の背側として表示される画像である。また、画像の下が、四足の動物が四足で立った状態における下側、つまり、四足の動物の腹側として表示される画像である。また、画像の左が、四足の動物の頭側、画像の右が四足の動物の尾側として表示される画像である。
【0058】
ここで、画像再構成処理部23が、画像を回転させる処理について図5を参照して説明する。図5に示す立方体は、被検体の3D画像を模式的に示している。立方体の各面に付したアルファベットの文字は、対応する画像方向を表示している。なお、従来、医用2D画像において、上下左右の方向を分かり易くするために、画像を表示する際、画像の左右上下に画像方向を表示している。従来の標識は、ヒトを撮像対象としているため、ヒトが2本足で立った状態で、Head(頭側)、Feet(足側)、Anterior(前側)、Posterior(後側)、Right(右側)、Left(左側)の6方向の頭文宇H、F、A、P、R、Lを用いており、図5では、それにならっている。図5(a)におけるHF方向は、ヒトにとっても動物にとっても体軸方向である。しかしながら、歩行時において、ヒトの正面(A)と動物の正面(H)とは異なり、ヒトの上面(H)と動物の上面(P)とは異なる。
【0059】
画像再構成処理部23は、図5(a)に示すように、被検体のトランスバース面と正面(H)からの視点V1とが指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における正面(H)からの視点V1において、画像の上が被検体の背側(P)かつ画像の右が被検体の左(L)となるように画像を回転させて再構成画像を作成する。詳細には、この場合、画像再構成処理部23は、従来技術で作成していたトランスバース画像と比べて、図5(a)に示すH面及びF面に直交するHF方向の軸周りに180度回転させた再構成画像を作成する。
【0060】
画像再構成処理部23は、図5(a)に示すように、被検体のトランスバース面と後面(F)からの視点V2とが指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における後面(F)からの視点V2において、画像の上が被検体の背側(P)かつ画像の右が被検体の右(R)となるように画像を回転させて再構成画像を作成する。詳細には、この場合、画像再構成処理部23は、従来技術で作成していたトランスバース画像と比べて、図5(a)に示すH面及びF面に直交するHF方向の軸周りに180度回転させた再構成画像を作成する。
【0061】
画像再構成処理部23は、図5(b)に示すように、被検体のサジタル面を指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における側面(L)からの視点VSにおいて画像の上が被検体の背側(P)かつ画像の右が被検体の尾側(F)となるように画像を回転させて再構成画像を作成する。詳細には、この場合、画像再構成処理部23は、視点VSから見たときに、従来技術で作成していたサジタル画像と比べて、図5(b)に示すL面及びR面に直交するLR方向の軸に対して反時計回りに90度回転させた再構成画像を作成する。
【0062】
画像再構成処理部23は、図5(c)に示すように、被検体のコロナル面を指定された場合、被検体の四足で立った姿勢における上面(P)からの視点において画像の上が被検体の頭側(H)かつ画像の左が被検体の左(L)となるように画像を回転させて再構成画像を作成する。詳細には、この場合、画像再構成処理部23は、従来技術で作成していたコロナル画像と比べて、図5(c)に示すH面及びF面に直交するHF方向の軸周りに180度回転させた再構成画像を作成する。言い換えると、固定した立方体を、従来技術では破線で示す視点VCから見てコロナル画像を作成していたが、画像再構成処理部23では実線で示す視点VCから見てコロナル画像を作成することに相当する。
【0063】
次に、動物用MRイメージング装置の動作について図6を参照(適宜、図1参照)して説明する。まず、事前に、動物用MRイメージング装置1に、被検体の体位等を含む被検体情報を登録する(ステップS11)。次に、動物用MRイメージング装置1に、パルスシーケンスの選択や、撮像する断面の種類等を含む撮像条件を設定する(ステップS12)。なお、撮像する断面(トランスバース面、サジタル面、コロナル面)として、トランスバース面を指定するときには視点方向の指定も含まれる。
【0064】
事前の処理を終えた後、動物用MRイメージング装置1は、前記撮像条件による撮像を開始する(ステップS13)。すなわち、制御部6は、静磁場発生系2と、傾斜磁場発生系3と、高周波発生器12を含む送信系4と、受信系5と、を制御して撮像を行う。これにより、受信系5の受信側高周波コイル15bは、被検体Aからの応答の電磁波であるNMR信号を検出する。そして、動物用MRイメージング装置1は、撮像によるNMR信号の収集が終わると撮像を終了する(ステップS14)。そして、動物用MRイメージング装置1の計算機19が備える画像再構成処理部23は、画像再構成処理を行う(ステップS15)。なお、画像再構成処理の詳細については後記する。そして、計算機19は、画像再構成が終わると、再構成された画像をディスプレイ20に表示する(ステップS16)。
【0065】
次に、画像再構成処理の流れについて図7を参照(適宜、図3及び図4参照)して説明する。画像再構成処理部23は、撮像手段9により検出されたNMR信号に対して、例えば、フーリエ変換を行い(ステップS21)、絶対値画像を作成する(ステップS22)。そして、画像再構成処理部23は、撮像を行ったときの撮像条件により、撮像した断面の種類を判別する(ステップS23)。例えば、断面がトランスバース面であると判別された場合、撮像条件により、正面からの視点と後面からの視点とのいずれの指定になっているかを判定する(ステップS24)。
【0066】
ステップS24で正面の指定であると判定した場合、画像再構成処理部23は、画像の上が被検体の背側、画像の下が被検体の腹側、画像の左は、被検体の右側、画像の右は、被検体の左側となるように画像を回転させて、図3(b)のような再構成画像を作成する(ステップS25)。
【0067】
ステップS24で後面の指定であると判定した場合、画像再構成処理部23は、画像の上が被検体の背側、画像の下が被検体の腹側、画像の左は、被検体の左側、画像の右は、被検体の右側となるように画像を回転させて、図3(c)のような再構成画像を作成する(ステップS26)。
【0068】
ステップS23で断面がサジタル面であると判別された場合、画像再構成処理部23は、画像の上が被検体の背側、画像の下が被検体の腹側、画像の左は、被検体の頭側、画像の右は、被検体の尾側となるように画像を回転させて、図4(b)のような再構成画像を作成する(ステップS27)。
【0069】
ステップS23で断面がコロナル面であると判別された場合、画像再構成処理部23は、画像の上が被検体の頭側、画像の下が被検体の尾側、画像の左は、被検体の左側、画像の右は、被検体の右側となるように画像を回転させて、図3(d)のような再構成画像を作成する(ステップS28)。
【0070】
第1実施形態に係る動物用MRイメージング装置1は、画像再構成処理部23において、動物である被検体が四足で立った姿勢における正面、後面、上面又は側面から見た場合に対応する断層画像を作成することができる。よって、例えば獣医が断層画像を読影、診断する際に、再構成画像の向きを変更する手間が省け、作成された再構成画像を表示させれば、そのまま、動物が四足で立った状態における断面を容易に把握することができる。
【0071】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る動物用MRイメージング装置は、断層画像を表示する際に、被検体の四足で立った姿勢における方位を表示する機能を追加した点が第1実施形態と相違する。第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0072】
前記したように、医用2D画像における従来の標識は、ヒトを撮像対象としているため、ヒトが2本足で立った状態で6方向の頭文宇H、F、A、P、R、Lを用いている。しかしながら、四足の動物では、例えば頭の反対側は足ではなく尾であり、ヒトにとっての前側や後側という標識は動物には当てはまらないため、四足の動物には適さない。そのため、第2実施形態に係る動物用MRイメージング装置1では、F(足側)は尾に変更し、A(前側)は腹に変更し、P(後側)は背に変更した。すなわち、第2実施形態に係る動物用MRイメージング装置1は、ディスプレイ20に再構成画像を表示する際に、被検体の四足で立った姿勢における正面及び後面を表す方位を、頭及び尾で表し、被検体の四足で立った姿勢における上面及び下面を表す方位を、背及び腹で表し、被検体の四足で立った姿勢における左側面及び右側面を表す方位を、左及び右で表す。
【0073】
本発明の実施例を図8(b)及び図9(b)に示す。また、比較例を図8(a)及び図9(a)に示す。図8(a)は、従来のMRイメージング装置で撮像して再構成して得られたサジタル画像の一例である。図8(b)は、第2実施形態に係る動物用MRイメージング装置1で撮像して再構成して得られたサジタル画像の一例である。図9(a)は、従来のMRイメージング装置で撮像して再構成して得られたトランスバース画像の一例である。図9(b)は、第2実施形態に係る動物用MRイメージング装置1で撮像して再構成して得られたトランスバース画像の一例である。
第2実施形態に係る動物用MRイメージング装置1によれば、四足の動物の画像とその向きを分かりやすく表示できる。
【0074】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。例えば、被検体として犬を図示したが、猫等他の四足動物でもよい。被検体は、通常四足歩行する動物であればよいが、例えば動物病院で診断可能な大きさまでの動物であることが好ましい。
【0075】
また、ディスプレイ20に断層画像と共に被検体の方位を表示する態様は、図示した日本語の言葉に限定されず、他の言語や略称で表記してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 動物用MRイメージング装置(動物用磁気共鳴イメージング装置)
2 静磁場発生系
3 傾斜磁場発生系
4 送信系
5 受信系
6 制御部
9 撮像手段
10 傾斜磁場コイル
15a 送信側高周波コイル
15b 信側高周波コイル
20 ディスプレイ(表示部)
22 入力デバイス(入力手段)
23 画像再構成処理部
A 被検体
【要約】
【課題】動物が四足で立った状態における断面が把握し易い断層画像を再構成することができる動物用磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】動物用MRイメージング装置1は、動物である被検体Aの少なくとも体位を含む被検体情報と少なくとも断面種類を含む撮像条件とを入力する入力デバイス22と、前記撮像条件で核磁気共鳴信号を発生させると共に当該核磁気共鳴信号を検出する撮像手段9と、撮像手段9を制御する制御部6と、検出された核磁気共鳴信号から画像を再構成する画像再構成処理部23と、を備え、画像再構成処理部23は、被検体情報として指定された体位と撮像条件として指定された断面とに応じて、被検体Aの四足で立った姿勢における正面、後面、上面又は側面から見た場合に対応するように画像を回転させた再構成画像を作成する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13