特許第6150328号(P6150328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150328
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】地盤改良工法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   E02D3/08
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-51702(P2013-51702)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-177797(P2014-177797A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】深田 久
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 修二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英次
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−121438(JP,A)
【文献】 特開平10−088560(JP,A)
【文献】 特開2011−157804(JP,A)
【文献】 特開2000−054364(JP,A)
【文献】 特開平8−144258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00−3/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機構を介して地中に貫入されたり引き抜かれる棒状部材と、前記棒状部材の下端に設けられた振動機と、ポンプ手段にて圧送可能となるよう処理された流動物を導いて前記振動機の下端側へ吐出するための供給管と、前記ポンプ手段で圧送されている前記流動物の圧力を検出する圧力計とを有し、
前記振動機により振動機周囲の原地盤部分を締固め度合が設定閾値になるまで締固めた後、前記昇降機構を介して1ピッチ分だけ前記棒状部材及び前記振動機の引き抜きを開始し、
同時に、前記原地盤部分が締固まることにより減少した体積分と同体積となるよう前記流動物を前記ポンプ手段及び供給管を介して前記締固めて周囲を圧縮した領域に前記振動機の下端から吐出し圧入すると共に、前記圧力計の検出値から地盤強度を満足したか否か判断する操作を、
所定深度から地表面側に向けて繰り返しながら、対象となる既設構造物に変位を与えることなく地盤を締固めることを特徴とする地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば砂質地盤の改良や液状化対策として、既設構造物が地盤改良領域にあったり接近している場合、地盤改良に伴う地盤の密度変化等に起因した対象となる既設構造物に変位を与えないようにした地盤改良工法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法のうち、例えば、液状化対策としては振動や衝撃を加えて地盤を締固めることによって安定化することが多い。この締固め工法には、特許文献1に例示されるごとく振動体を地盤に貫入させて振動させて締固める振動棒(バイブロロッド)工法、特許文献2に例示されるごとく締固めた砂杭を地中に造成して地盤を改良するSCP(サンドコンパクションパイル)工法、バイブロフロットと称されるバイブレータを内蔵した鋼管を先端ノズルから水を噴出させながら地中に貫入し、鋼管を振動させながら徐々に引き上げると共に周囲にできた間隙に砂利や砂などの材料を流し込むバイブロフローテーション工法等がある。
【0003】
以上のような締固め工法では、設計において、原地盤の改良率を定め、その改良率に相当する所定量の改良用材料を強制的に圧入し締固めることから、改良杭造成に伴う地盤の密度や体積変化等に起因し地盤に変位を生じ、引いては対象となる既設構造物にも変位を生じ易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−331832号公報
【特許文献2】特開2009−243057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記締固め工法において、従来の変位対策としては、例えば、対象となる既設構造物と地盤改良領域との間に変位を吸収する変位吸収孔を設ける方法等がある。しかしながら、その変位対策は、工費増となるだけではなく、根本的な解決策とはいえない。
【0006】
本発明者らは以上のような背景から、対象となる既設構造物の変位を抑える根本的な方法を検討し追求してきた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の目的は、地盤改良に伴う地盤の密度や体積変化等に起因した対象となる既設構造物の変位を簡易、かつ確実に抑えることができる地盤改良工法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の地盤改良工法は、図1図3を参照して具体的に特定すると、昇降機構4を介して地中に貫入されたり引き抜かれる棒状部材3と、前記棒状部材の下端に設けられた振動機2と、ポンプ手段7にて圧送可能となるよう処理された流動物を導いて前記振動機の下端へ吐出するための供給管37と、前記ポンプ手段7で圧送されている前記流動物の圧力を検出する圧力計8とを有し、前記振動機2により振動機周囲の原地盤部分を締固め度合が設定閾値になるまで締固めた後前記昇降機構を介して1ピッチ分だけ前記棒状部材及び前記振動機の引き抜きを開始し、同時に、前記原地盤部分が締固まることにより減少した体積分と同体積となるよう前記流動物を前記ポンプ手段7及び供給管37を介して前記締固めて周囲を圧縮した領域に前記振動機の下端から吐出し圧入すると共に、前記圧力計8の検出値から地盤強度を満足したか否か判断する操作を、所定深度から地表面側に向けて繰り返しながら、対象となる既設構造物に変位を与えることなく地盤を締固める構成である。
【0008】
以上の発明において、『流動物』としては、地盤の改良用としてポンプ手段により圧送されるよう流動化処理されていればよい。
【0009】
具体例としては、特願2010−101021号公報に記載された又はそれと類似の流動化剤と遅効性塑性化剤などを含有する流動化砂である。また、特開2000−8406号公報に記載された又はそれと類似の流動化処理土である。また、セメントミルクと砂等を混合したモルタル材、或いは特開平5−345313号公報に記載された又はそれと類似のモルタル材である。
【0010】
『振動機』としては、公知の横ないしは水平方向に振動する構成に限られず、例えば回転体の外周に周囲の原地盤部分を押圧する押圧用突起部などを有した構成でもよい。要は、振動機周囲の原地盤部分を締固めて図6(a)から同(b)のごとく間隙比を減少することで、締固め度合いないしは相対密度Drを上げることができる構成であればよい。駆動方式は、油圧或いは電動の何れでもよいが、油圧駆動の方が小型化したり低速回転でも大きな出力が得られ、振動周波数の範囲が広いことなどの点で好ましい。また、『ポンプ手段』としては、 前記流動化砂、流動化処理土、モルタル材などの流動物を安定に圧送できるものであればよい。好ましくは、流動物の性状に応じて最適状態で圧送されるよう調整可能な構成、例えばピストン方式の圧送ポンプが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明工法の原理を図6の模式図で説明すると、同(a)は原地盤部分の相対密度Drを分かり易くするため間隙比を示し、(b)は振動機を稼働して締固めた状態での間隙比を示している。この例では、振動機による締固めにより相対密度Drが45%から65%に高くなり、間隙比もその分だけ小さく図示されている。(c)は原地盤部分が振動機で締固まることによって、減少した体積分(同(b)の破線部分)と同体積となるよう流動物をポンプ手段により圧送した状態、つまり流動物が△eだけ圧入されその圧入効果(圧入による締固め効果と同じ)として、相対密度Drが65%から75%に高くなっている。換言すると、この例では、(b)の破線部分である振動による体積減少分と(c)の流動物圧入による体積増加量とが同等となっている。本発明工法では、以上のような原理により対象となる既設構造物の変位を確実にゼロないしは許容値以下に抑えることができる。
【0012】
すなわち、本発明工法では、例えば、改良目標である相対密度を振動機による締固め効果と流動物圧入による締固め効果とで充足させると共に、振動機による締固め効果と流動物圧入による締固め効果とにより全体の変位量をゼロないしは許容値以下とするものである。換言すると、本発明工法では、特に、対象となる既設構造物近傍の施工も効率よく行える点、振動機の稼働は地中のみで行われるため低振動・低騒音となる点、1回の引き抜き量を対象の地盤性状等に応じて最適に設定することで深度方向に均一な改良効果を精度良く実現し易い点、SCP工法等に比べて改良用材料としての流動物の使用量を低減できる点、等で優れている。
【0013】
なお、請求項1の発明工法では、圧力計の検出値から地盤強度を満足したか否か判断するため、例えば図6(c)に達して地盤強度を満たしたときにポンプ手段の圧送を停止する制御も容易となる。
【0014】
なお、図6(b)に達したことは油圧式振動機であれば油圧の値により、電動式振動機であれば電流値の値により確認可能となる。


【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明工法及び装置の全体構成を示した模式図である。
図2図1の振動機を拡大した模式図であり、(a)は正面図、(b)は一部を破断した構成図、(c)は下面図である。
図3】(a)は本発明工法を適用した施工例1を示す模式図、(b)は前記(a)のA部拡大図である。
図4図3の施工手順を説明するためのフローチャートである
図5】本発明工法を適用した施工例2の施工手順を説明するためのフローチャートである。
図6】(a)〜(c)は本発明工法の原理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の形態例を図面を参照して説明する。この説明では、地盤改良装置特徴を明らかにした後、それを用いた地盤改良工法特徴、その施工例として、図3及び図4に示した施工例1、図5に示した施工例2の順に述べる。なお、図面は細部を省略して模式的に示している。
【0017】
(装置特徴)図1及び2は本発明工法を施工するときに好適な地盤改良装置を模式的に示している。同図の地盤改良装置1は、振動機2を下端に連結したケーシング3、ケーシング3を上下動する昇降機構4、昇降機構4に保持されてケーシング3を回転する回転機構5、混合室60及びアジテータ部61等を有した流動化砂製造部6、アジテータ部61に収容された流動化砂を圧送するポンプ手段7、ケーシング3及び振動機2に配管された供給管37、ケーシング3の上端30に設けられたスイベル32、ポンプ手段7の出口と供給管37の上端とをスイベル32を介して接続している管路38、管路38に設けられてポンプ手段7で圧送されている流動化砂の圧力を検出す圧力計8等を備えている。
【0018】
ここで、まず、振動機2は、筒体20、偏心子23、油圧モータ26等から構成されている。筒体20は、ケーシングの下端31に対し一体的に回転可能、かつ、防振材35を介在した状態で360度振り子状に振動可能に連結されている。すなわち、筒体20は、上端側に首部等を介して設けられたフランジ21を有し、該フランジ21がケーシング3の下端側に設けられたフランジ33に対し防振材35などを介して連結支持されている。防振材35は、筒体20側の振動がケーシング3側に直に伝達されないよう減衰する部材である。符号Bは連結用のボルトである。
【0019】
筒体20内には、供給管37の下端側がケーシング3内を通って挿通されており、偏心子23がその供給管37に対し串差し状態に回動自在に枢支されている。また、筒体20内の上側には、複数(この例では3つ)の油圧モータ26が等間隔に配設されている。このうち、偏心子23は、筒形周囲の一部に設けた径大部23aと、上周囲に設けられたギア24とを有し、筒体20内に固設された支持ベアリング構成からなる上下の軸受け25により枢支されている。
【0020】
各油圧モータ26は、筒体20内にあって周囲等分する箇所に固定配置されると共に、前記した後述する油圧装置側の作動油を流す管路28が対応出入口に接続されている。また、各油圧モータ26は、出力軸に装着されたギア27を有し、ギア27が偏心子側のギア24と噛合することでモータ駆動により偏心子23を回動するようになっている。なお、筒体20の下端開口は蓋体22で閉鎖される。供給管37の下端はその蓋体22に設けられた中心孔に挿通される。筒体20の下端外周には、複数の掘削刃29が筒体下端より下方へ突出した状態に装着されている。
【0021】
昇降機構4は、走行式ベースマシン10により移動可能に起立された状態で柱状リーダー13の一側に沿ってラック・ピニオン機構等を介して上下動される。回転機構5は、昇降機構4でリーダー13に沿って昇降されると共に、振動機2を連結したケーシング3をモーター及び減速ギア機構等を介し正転・逆転する機構である。ベースマシン10は、運転室11の前方にリーダー13の下端側を位置決め保持し、運転室11の後方側に共に図示を省いた油圧装置及びウインチや電動機等を搭載している。運転室11には各種の施工用操作部や制御部が配設されている。リーダー13は延縮ロッド14等により支持されている。
【0022】
リーダー13は、下側に付設されてケーシング3の振れを規制する振止具15と、上側に付設されて管路38の上側を支えるガイド具16、及び不図示の油圧装置側に接続されている作動油用管路(導入路及び排出路)19の上側を支えるガイド具17とを有している。管路38の上端は、スイベル32等を介し供給管37の上端に接続されている。管路19の上端は、図示を省略しているが、スイベル32及びケーシング3内に配管されて図2(b)に示された管路28等を介し振動機側の油圧モーター26に接続されている。
【0023】
流動化砂製造部6は上側の混合室60と下側のアジテータ部61とに大別される。混合室60では、改良材として砂、水、流動化剤及び遅効性塑性化剤の混合操作により流動化砂が作られる。アジテータ部61ではその流動化砂の流動性が保たれるよう貯蔵する。この流動化砂は、砂の各粒子間を結合する流動化剤が伸びて網状を形成し、遅効性塑性化剤と水を把持した流動化状態であり、また、供給管37の下端開口より地盤側の密度の低い領域に吐出されると流動化状態から元の粒度の性状の砂に戻る。詳細は特開2010−121438号公報等を参照されたい。
【0024】
ポンプ手段7は、特に高い吸込み力、機密性、空気の吸込みを起こさず、流動化砂性状の変化を低く抑えられるものとして、圧送構造が油圧ピストンを利用したタイプが選択されている。ポンプ駆動は、運転室11に配置された制御部を介して自動制御されるようになっている。
【0025】
圧力計8は、ポンプ手段7で圧送されている流動化砂の圧力を検出して供給管37の下端開口より地盤側の密度の低い領域に吐出されるときの流動物の吐出圧力を測定可能にするものである。また、圧力計8は、施工時において、流動化砂の圧送時の圧力を検出し、その検出信号を運転室11の制御部に送信している。制御部では、その検出信号に基づいて流動物の吐出圧力として、設定吐出圧力になったときにポンプ手段7に駆動停止用の信号を送信するようになっている。なお、圧力計8としては、圧力と共に流量を検出する圧力流量計を使用すると、後述する1ピッチの引抜きでできる前記領域毎に流動化砂の充填量も知ることができる。
【0026】
(工法特徴)本発明の地盤改良工法は、以下の施工例1と2に基づいて特徴点を挙げると次の(ア)〜(ウ)となる。すなわち、(ア)概要的には、ケーシング等の棒状部材3を昇降機構4を介して地中の設計深さまで貫入した後、所定ピッチだけ引き抜く引抜工程と、該引抜工程にて前記棒状部材下方にできる密度の低い領域に改良用材料を送る供給工程とを繰り返し行うことにより所定長さの改良杭を造成するものである。(イ)材料及び装置的には、改良用材料としてポンプ手段7にて圧送可能となるよう処理された流動物を用いると共に、棒状部材3が下端に設けられた振動機2、及びポンプ手段7にて圧送されてくる前記流動物を導いて前記領域へ吐出する供給管37を有している。(ウ)施工手順的には、図6(b)の締固め効果を付与するため振動機2により振動機周囲の原地盤部分を締固め度合が設定閾値になるまで締固め、かつ、図6(c)の圧入効果を付与するため前記領域として前記締固めて周囲を圧縮した領域に設定吐出圧力になるまでポンプ手段7を介して圧送することにより、地盤改良に伴う地盤の密度変化等に起因した対象となる既設構造物の変位を与えることなく地盤を締固めるようにする。
【0027】
(施工例1)次に、以上の地盤改良工法を砂質地盤や液状化対策などに適用する施工例として、既設構造物が接近している対象施工領域を改良杭9の造成で地盤改良するときの手順ないしは要領を図3の模式図及び図4のフローチャートにより説明する。
【0028】
まず、施工設計では、予備試験等により上記した図6(a)に示した相対密度Drと間隙比が原地盤の深さに応じて求められ、また、同(b)に示した振動機2による締固め度合としての設定閾値と、同(c)に示したポンプ手段7で圧送される流動化砂の設定吐出圧力とが原地盤の深さに応じで設定される。具体例として、設定閾値は、振動機2による締固めないしは振動により対象の既設構造物に変位を生じ難くし、かつ、例えば同(b)の締固め効果を充足するに必要となる起振力(kg)の限界値ないしは必要最小限の値である。設定吐出圧力は、締固めた後、振動機2の引き抜きでできる密度の低い領域にポンプ手段7で圧送されてくる流動化砂の吐出圧力により対象の既設構造物に変位を生じ難くし、かつ、例えば同(c)の圧入効果を充足するに必要となる吐出圧力ないしは圧力計7で検出された圧力から推定される必要最小限の吐出圧力(MPa)の値である。
【0029】
また、上記運転室11の制御部には、ケーシング3の最大貫入深さ(深度)、1ピッチ分の引抜長さ、総ピッチ数、後述する設定閾値、設定吐出圧力などの値がプログラムに入力される。また、砂杭材料として上記流動化砂がアジテータ部61に用意される。なお、流動化砂は、流動化砂製造部6に限られずアジテータ車から供給することもある。
【0030】
施工に際しては、地盤改良装置1が施工箇所に移動されて位置決めされた後、ケーシング3及び振動機2が昇降機構4及び回転機構5を介して一体的に回転されながら地盤に貫入操作される(ステップST1)。この貫入は、不図示の深度計で振動機2の下端が設計深さに達したか否かを判断し(ステップST2)、設計深さに達した時点で貫入を終了する(ステップST3)。この貫入が終了されると、昇降機構4及び回転機構5が一時停止され、振動機2が稼動される(ステップST4)。制御部は、振動機周囲の原地盤部分の締固め度合いが設定閾値になったか否かを判断する(ステップST5)。
【0031】
そして、制御部は、設定閾値に達したと判断すると、昇降機構4を介して1ピッチ(例えば、20cm)分だけケーシング3及び振動機2の引抜きを開始するよう制御し、同時に、ポンプ手段7が稼動されて材料吐出開始つまり流動化砂が圧送されて引抜きに伴って振動機2の下方に形成される上記した領域として締固めて周囲を圧縮した領域に吐出するよう制御する(ステップST6)。
【0032】
そして、制御部は、引抜きが1ピッチ分に達したか否かを判断し(ステップST7)、引抜きが1ピッチに達したと判断されると、引抜きが自動停止つまり昇降機構4が停止ないしはアイドリング状態となる。また、制御部は、材料充填状態として、上記した領域として締固めて周囲を圧縮した領域に吐出される流動化砂の吐出圧力が設定吐出圧力に達したか否かを圧力計8から送られている検出信号に基づいて判断し(ステップST8)、吐出圧力が設定吐出圧力になったと判断すると、吐出自動停止つまりポンプ手段7が停止ないしは不図示の開閉バルブを閉状態に切り換える。
【0033】
そして、ステップST9では、総ピッチ数ないしは全ピッチ引抜完了したか否かが判断され、総ピッチ数に達するまでステップST5〜ST9が繰り返される。また、総ピッチ数に達すると、振動停止つまり振動機2が自動停止され、1本の砂杭造成が終了される。その後、地盤改良装置1は次の施工箇所に移動されて位置決めされた後、再び以上の操作が行われることになる。
【0034】
以上の地盤改良工法では、改良目標である相対密度(図6の例ではDr=75%)を振動機2による締固め効果(図6の例では相対密度Dr=(65−45)%)と流動化砂圧入による締固め効果(図6の例では相対密度Dr=(75−65)%)とで充足させる。その際は、振動機による体積圧縮量と流動物圧入による体積増加量とをほぼ同等にすることにより、全体の変位量を確実にゼロないしは許容値以下とすることができる。
【0035】
施工例1の利点としては、装置構造として簡易な点、対象となる既設構造物近傍の施工を効率よく経費を抑えて行える点、振動機2の稼働は地中のみで行われるため低振動・低騒音となる点、1回のピッチつまり引抜き量を対象の地盤性状等に応じて最適に設定することで深度方向に均一な改良効果を精度良く実現し易い点、SCP工法等に比べて改良用材料としての流動物の使用量を低減できる点、等が挙げられる。また、操作要領として、振動機2はステップST5でイエスと判断された段階で稼動停止してもよいが、この例のごとく引抜き時及び材料吐出時にも稼動しておくと、締固めに要する時間を短縮したり流動化砂の均一な吐出態様を得やすくなる。また、引抜き工程と供給工程とをほぼ同時ないしは連動(これには引抜き工程を開始後、t時間後に供給工程を開始する方法も含まれる)させるため効率施工となり施工時間を短縮できる。
【0036】
(施工例2)次に施工例2として、既設構造物が接近している対象施工領域を改良杭9の造成で地盤改良するときの手順ないしは要領を図5のフローチャートにより説明する。施工例2でも、段落0029〜0032の記載はそのまま当てはまるので説明を省く。
【0037】
この施工例2において、制御部は、ステップST4で振動機2が稼動を開始された後、振動機周囲の原地盤部分の締固め度合いが設定閾値になったか否かを判断する(ステップST5)。そして、制御部は、設定閾値に達したと判断すると、昇降機構4を介して1ピッチ(例えば、20cm)分だけケーシング3及び振動機2の引抜きを開始するよう制御(ステップST6)し、また、引抜きが1ピッチ分に達したか否かを判断し(ステップST7)、引抜きが1ピッチに達したと判断されると、引抜きが自動停止つまり昇降機構4が停止ないしはアイドリング状態となる。同時に、ポンプ手段7が稼動されて、材料吐出開始つまり流動化砂が圧送されて引抜きに伴って振動機2の下方に形成される上記した領域として締固めて周囲を圧縮した領域に吐出される(ステップST8)。
【0038】
そして、制御部は、材料充填状態として、締固めて周囲を圧縮した領域に吐出される流動化砂の吐出圧力が設定吐出圧力に達したか否かを圧力計8から送られている検出信号に基づいて判断し(ステップST9)、吐出圧力が設定吐出圧力になったと判断すると、吐出自動停止つまりポンプ手段7が停止ないしは不図示の開閉バルブを閉状態に切り換える。
【0039】
ステップST10では、総ピッチ数ないしは全ピッチ引抜完了したか否かが判断され、総ピッチ数に達するまでステップST5〜ST10が繰り返される。また、総ピッチ数に達すると、振動停止つまり振動機2が自動停止され、1本の砂杭造成が終了される。そして、地盤改良装置1は次の施工箇所に移動されて位置決めされた後、再び以上の操作が行われることになる。
【0040】
施工例2では、施工例1と同様に、装置構造として簡易な点、対象となる既設構造物近傍の施工を効率よく経費を抑えて行える点、振動機2の稼働は地中のみで行われるため低振動・低騒音となる点、1回のピッチつまり引抜き量を対象の地盤性状等に応じて最適に設定することで深度方向に均一な改良効果を精度良く実現し易い点、SCP工法等に比べて改良用材料としての流動物の使用量を低減できる点、等が挙げられる。また、操作要領として、振動機2はステップST5でイエスと判断された段階で稼動停止してもよいが、この例のごとく引抜き時及び材料吐出時にも稼動しておくと、締固めに要する時間を短縮したり流動化砂の均一な吐出態様を得やすくなる。
【0041】
なお、以上の装置構造と2つの施工例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項1で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。例えば、棒状部材及び供給管の変形例としては、ケーシング3をロッド構成とし、そのロッド外周に沿って材料を送る供給管37に対応する管を付設する構成である。
【0042】
また、施工例2において、ステップST4からステップST7の変形例としては、昇降機構4を介して1ピッチ分だけケーシング3及び振動機2の引抜きを開始し(ステップST6)、引抜きが1ピッチ分に達したか否かを判断し(ステップST7)、引抜きが1ピッチに達したと判断されると、ケーシング3及び振動機2を昇降機構4を介して再び貫入するステップを追加し、再貫入した後にステップST5からステップST7を繰り返すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…地盤改良装置
2…振動機(20は筒体、23は偏心子)
3…ケーシング(棒状部材)
4…昇降機構
5…回転機構
6…流動化砂製造部(61は貯槽であるアジテータ部)
7…ポンプ手段
8…圧力計
26…油圧モータ
37…供給管
28,38…管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6