(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記肩部には、前記線材の横方向に突出した部分の端部から前記横方向に対して直角方向に第2補強部が延設されていることを特徴とする請求項5に記載のプレスフィット端子。
前記肩部と前記プレスフィット部との間には、前記肩部と前記プレスフィット部が繋がれる繋ぎ部が前記肩部及び前記プレスフィット部と一体に形成されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のプレスフィット端子。
【背景技術】
【0002】
近年、基板等のスルーホールへ接続する場合に、はんだ付けを行わずに弾性力により接続されるプレスフィット部を備えたプレスフィット端子等が普及している。このプレスフィット端子は基板との接続に半田付けを行わないため、基板との接続を容易に行うことができると共に、プレスフィット端子の着脱を繰り返し行うことができる。
【0003】
また、プレスフィット端子には、圧延した板材をプレス機で打ち抜いて形成されるものと、線材を用いて連続して形成されるものとがある。そして、線材から形成したプレスフィット端子は、線材の製造時の圧延方向がプレスフィット端子の長手方向に沿っているので、板材から形成したものと比べて基板への圧入時により高い押圧力に耐えられるため、プレスフィット端子の損傷を抑制することができるようになる。
【0004】
このような線材からプレスフィット端子を製造したものとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。下記特許文献1に記載のプレスフィットピンは、電気コンタクト用のワイヤ材料製のプレスフィットピンであって、前記プレスフィットピンの前記材料から一体品で形成された少なくとも1個の肩部を具備するものである。
【0005】
下記特許文献1に開示されているプレスフィットピンによれば、圧入工具によって肩部上を容易に支持することができ、プレスフィットピンの先端側を圧入工具によって支持しなくても済むという利点を有し、また、プレスフィットピンの先端側を損傷することがなく、より容易に力を圧入工具からプレスフィットピンに対して縦方向に伝達することができるとされている。
【0006】
また、プレスフィット端子は、基板に形成されたスルーホールに圧入されるプレスフィット部が形成されている。このプレスフィット部は、スルーホールに圧入される際に、弾性変形され、この弾性力により抜け止めされて接続される。このとき、プレスフィット部の弾性力が弱いと、十分な保持力を得ることができず、基板との接続が不確実となり、導通不良等の不具合が生じるおそれがある。一方、保持力を高くするためにプレスフィット部を大きくすると、圧入の際に基板が破損するおそれがある。そのため、プレスフィット部をあまり大きくせずに、十分な保持力が得られるようにする必要がある。
【0007】
上記特許文献2には、保持力を高めたプレスフィット端子の発明が開示されている。上記特許文献2に開示されたプレスフィット端子の発明では、プレスフィット端子の開口部を成形するに際し、互いに対向する断面台形状のパンチおよびダイによって弾性当接部の撓み方向と直交する厚み方向の両側から中心部へ向かうに従い細幅となる台形状の凹部を対向してプレス成形し、次いで凹部によって細幅の薄肉とされた底部をプレスによって打ち抜くことで、弾性当接部の撓みに必要最小限の細幅のスリットを形成するとしている。下記特許文献2に開示されたプレスフィット端子の発明によれば、このスリットが細幅となることで弾性当接部の撓み方向の高さ寸法を十分に確保できるため弾性当接部の反力を高めることができるとしている。また、一般にニードルアイ形状のプレスフィット端子において、弾性当接部の撓み方向の厚みを確保することで、断面二次モーメントが大きくなり、弾性当接部の反力が強められ、スルーホールに対する保持力が高められるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2に開示されたプレスフィット端子の発明は、板体を打ち抜いて製造したものである。一方、上記特許文献1に開示されたプレスフィットピンのように線材で製造する場合、板体を打ち抜いて製造するものに比べ、加工される部分の材料に限りがあるため、上記特許文献2に開示されたプレスフィット端子と同じように製造することは困難である。また、上記特許文献1のプレスフィットピンは、線材で形成されているが、プレスフィット部分の保持力に関しては記載されていない。
【0010】
本発明は、このような従来技術が抱える課題を解決するためになされたもので、線材で形成されるプレスフィット端子のプレスフィット部の保持力を高めるために限られた材料で形成することができるプレスフィット部を有するプレスフィット端子及びこのプレスフィット端子を用いたコネクタ並びにプレスフィット端子連続体、プレスフィット端子連続体巻き付け体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様のプレスフィット端子は、所定長さの線材からなるプレスフィット端子であって、
前記線材には、一端に基板に挿入される先端部と、他端に相手方端子と接続される接続部と、前記線材の前記先端部側に前記基板に形成されたスルーホールに圧入されるプレスフィット部が形成され、
前記プレスフィット部は、中央部分に前記線材の軸方向に沿った縦長な孔が形成されており、
前記孔の内周面には、前記孔の内側に向かって延設された延設部が形成され、前記延設部の端部には、所定高さの立設部が前記線材の軸方向に対して交わる方向に形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、第2の態様のプレスフィット端子は、第1の態様のプレスフィット端子において、前記プレスフィット部は、前記内周面の厚さが前記孔の内側へ向かうにつれて薄くなるように形成されており、
前記内周面の内側の厚さが薄く形成された端部に前記延設部及び前記立設部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、第3の態様のプレスフィット端子は、第1又は第2の態様のプレスフィット端子において、前記プレスフィット部の前記接続部側に肩部が形成されており、
前記肩部は、治具で押圧可能な大きさで形成された肩部端部が前記プレスフィット部の前記接続部側に隣接して設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、第4の態様のプレスフィット端子は、第3の態様のプレスフィット端子において、前記肩部には、前記線材の軸方向に沿った第1補強部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、第5の態様のプレスフィット端子は、第4の態様のプレスフィット端子において、前記第1補強部は、前記線材の軸方向に沿って凸状に延設されて形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、第6の態様のプレスフィット端子は、第5の態様のプレスフィット端子において、前記肩部には、前記線材の横方向に突出した部分の端部から前記横方向に対して直角方向に第2補強部が延設されていることを特徴とする。
【0017】
また、第7の態様のプレスフィット端子は、第3〜第6のいずれかの態様のプレスフィット端子において、前記肩部と前記プレスフィット部との間には、前記肩部と前記プレスフィット部が繋がれる繋ぎ部が前記肩部及び前記プレスフィット部と一体に形成されていることを特徴とする
【0018】
また、第8の態様のプレスフィット端子は、第7の態様のプレスフィット端子において、前記第1補強部は、前記肩部から前記繋ぎ部に亘って形成されていることを特徴とする。
【0019】
また、第9の態様のプレスフィット端子は、第1〜第8のいずれかの態様のプレスフィット端子において、前記先端部及び前記接続部には、端部に向かうにつれて細くなるようにテーパーが形成されており、
前記先端部の端部の端面及び前記接続部の端部の端面は、ねじり切られた断面を有することを特徴とする。
【0020】
第10の態様のコネクタは、絶縁性材料で形成され、複数の開口を有するハウジングを有するコネクタであって、
第1〜第9のいずれかの態様のプレスフィット端子が前記複数の開口に装着されたことを特徴とする。
【0021】
第11の態様のプレスフィット端子連続体は、第1〜第
8のいずれかの態様のプレスフィット端子が線材に連続して形成されており、
一の前記プレスフィット端子の前記先端部と他の前記プレスフィット端子の前記接続部とが各々連結されていることを特徴とする。
【0022】
第12の態様のプレスフィット端子連続体巻き付け体は、第11の態様のプレスフィット端子連続体が、円状に巻かれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
第1の態様のプレスフィット端子によれば、線材のような限られた材料であっても、プレスフィット部の断面積を大きく形成することができ、高い保持力を有するプレスフィット部を形成することができる。
【0024】
また、第2の態様のプレスフィット端子によれば、線材の材料を効率よく用いて、プレスフィット部を形成することができるようになる。
【0025】
また、第3の態様のプレスフィット端子によれば、プレスフィット端子に肩部が設けられ、この肩部はプレスフィット端子と隣接して形成されているので、冶具を押し当てる肩部と圧入される基板面間の距離を短くすることができ、スルーホールの中心軸上を沿う様にプレスフィット端子を挿入することが可能となり、基板ダメージ及びコンタクト破損を防ぎ、安定した挿入力・保持力を得ることができる。また、治具からの押圧力をプレスフィット端子の肩部が無駄なく受けることができ、基板への挿入を円滑に行うことができる。また、肩部端部がプレスフィット部と隣接して形成されるため、肩部端部と基板面との距離をより近づけることができ、プレスフィット端子を基板に挿入する時に、より精度良く基板穴の中心軸に沿うように真っ直ぐ挿入可能となり、挿入の確実性及び安定性が向上すると共に、基板に対する端子保持力も確保できるようになる。
【0026】
第4の態様のプレスフィット端子によれば、肩部の軸方向にかかる力に対して強化することができ、冶具で押圧されたときに肩部の変形や破損を抑制することはできる。
【0027】
また、第5の態様のプレスフィット端子によれば、肩部を形成した線材の材料を効率よく使用して強固な第1補強部を形成することができるようになる。
【0028】
第6の態様のプレスフィット端子によれば、第2補強部が形成されることで、肩部自体を強化することができると共に、治具に押圧される範囲をより広く確保でき、プレスフィット端子の基板への挿入の確実性及び安定性を向上させることができる。
【0029】
第7の態様のプレスフィット端子によれば、肩部とプレスフィット部との間に繋ぎ部が一体に形成されることで、プレスフィット部と肩部との間の部分を線材にそれぞれ形成するよりも、強度を高めることができる。また、プレスフィット部と肩部とをより隣接して形成し一体化させることができるため、肩部が押圧されたとき肩部とプレスフィット部の間の部分の変形を抑制し、強固にすることができる。なお、繋ぎ部の太さは、繋ぎ部の断面積をSとし、線材の断面積Aとしたとき、繋ぎ部の断面積SはA≧S≧0.9Aの範囲で形成されることが好ましい。このようにすることで、繋ぎ部の太さを線材と同じか又は略同じ断面積の太さで形成することができるので、繋ぎ部をより強固に形成することができる。
【0030】
また、第8の態様のプレスフィット端子によれば、肩部と繋ぎ部とを繋ぐ部分を強固に形成することができるため、より座屈等を抑制することができる。
【0031】
また、第9の態様のプレスフィット端子によれば、線材の状態から単体に分断されるときプレスフィット端子をねじることで切断するため、プレスフィット端子の先端部の端部及び接続部の端部は、ねじり切られた渦状の断面となり、剪断による切断のようなバリの発生を抑制することができる。
【0032】
第10の態様のコネクタによれば、第1〜第9のいずれかの態様のプレスフィット端子の効果を奏するコネクタを得ることができる。
【0033】
第11の態様のプレスフィット端子連続体によれば、第1〜
8のいずれかの態様の効果を奏するプレスフィット端子を連続して形成したプレスフィット端子連続体を得ることができる。なお、先端部及び接続部が連結される部分に向かうにつれて細くなるようにテーパーを形成し、連結される部分が最も細くなるように形成することで、プレスフィット端子連続体からプレスフィット端子に分断するためにねじり切る際に、この連結した部分で分断しやすくなると共に、よりバリの発生を抑制することができる。
【0034】
第12の態様のプレスフィット端子連続体巻き付け体によれば、長尺のプレスフィット端子連続体を巻き付け体とすることで、運搬や保管が容易となり、また、効率よく行うことができるようになる。なお、プレスフィット端子連続体巻き付け体を形成するときに、芯となるロールやボビン等の筒状部材に巻きつけるようにすることもできる。このようにすることでプレスフィット端子連続体巻き付け体の運搬や保管がより容易となり、また、効率よく作業を行うことができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのプレスフィット端子及びこれを用いたコネクタ並びにプレスフィット端子連続体、プレスフィット端子連続体巻き付け体を例示するものであって、本発明をこれに特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
【0037】
[実施形態1]
図1〜
図4を参照して、本発明の実施形態に係るプレスフィット端子を説明する。本発明の実施形態1に係るプレスフィット端子(以下、「PF端子」という)10は、長尺の線材11Aに一定の間隔でプレス加工等によりPF端子の形状を施し(
図8A及び
図8B参照)、その後、所定の長さの線材11に分断することで単体のPF端子が形成される。このPF端子10は、線材11の一端に基板に挿入される先端部12と、他端に相手方の端子と接続される接続部13が形成されている。また、線材11の先端部12側には基板に圧入されるプレスフィット部(以下、「PF部」という)14が形成され、このPF部14の上部、すなわち接続部13が形成される側にはPF部14と隣接して肩部16が形成されている。
【0038】
なお、線材11は、ステンレススチール、鉄−ニッケル合金、銅や銅合金等を圧延して引き伸ばし、メッキ加工を施して長尺の線材11A(
図8A及び
図8B参照)を形成したのち、所定の長さに分断したものである。なお、長尺の線材を形成したときにPF端子の形状が連続して形成される(
図8A及び
図8B参照)。そして、PF端子10を線材で形成することで、板材からプレス加工により形成されるものに比べ、軸方向の力に強いプレスフィット端子となり、圧入時の押圧力により先端部が損傷することが抑制される。また、実施形態のPF端子は、その断面が方形の角を面取りした形状をしているが(
図3A参照)、これに限らず、断面が、円形、楕円形、矩形等の線材を形成できる形状であればよい。以下、PF端子の構造について説明する。
【0039】
先端部12は、PF端子10が基板等のスルーホールに装着される際に、PF端子10を所定のスルーホールに確実に導くための部分である。そのため、先端部12はスルーホールに挿入しやすいようにテーパー12aが設けられ先細になっている。
【0040】
接続部13は、相手方の端子と接続する部分である。そのため、相手方の端子のあわせ任意の形状に形成することができる。実施形態の接続部13は、先端部12と同様に先細になるようにテーパー13aが設けられている。
【0041】
なお、先端部12及び接続部13の端部の端面は、渦状の切断面35となっている(
図8E参照)。これは、長尺な線材11Aに連続して形成されたプレスフィット端子を分断するとき、分断される側のプレスフィット端子を線材側のプレスフィット端子に対して回転させ、ねじり切るようにして分断するため、このような渦状に形成されるものである(
図8C及び
図8D参照)。そのため、剪断するときのようなバリの発生を抑制することができる。
【0042】
また、先端部12及び接続部13には、導通性を高めるために、金メッキを設けるようにしてもよい。このとき、金メッキは、先端部12及び接続部13の両方に設けてもよく、また、いずれか一方に設けるようにしてもよい。
【0043】
PF部14は、
図2Aに示すように、線材11の先端部12側に形成されており、線材11の中央部分に縦長な孔15が形成されている。PF部14は、この孔15の側面方向に対称に突出して線材11の幅より幅広に形成されている。また、PF部14の厚さは、スルーホールに圧入される側面部分14aが線材の厚さと略同じ厚さに形成されている。また、PF部14の側面部分14aは孔15に向かうにつれて薄くなるように形成されている。この孔15が形成されることで、PF部14の弾性変形が可能となる。なお、このPF部14は後述する肩部と隣接するように形成される。
【0044】
また、
図2Bに示すように、PB部14の孔15の内周面15aには、孔15の内側に向かって突出した延設部14bが形成されている。そして、この延設部14bの端部には、孔15を囲うように所定高さ立設した立設部14cが一体に形成されている。この立設部14cは、孔15の両面側に線材11の軸方向に対して垂直方向に立設して形成されている。
【0045】
また、PF部14は、
図2Bに示すように孔15へ向かうにつれて薄くなるように形成されている。そして、孔15の内周面15aの薄く形成された端部から延設された延設部14bが形成され、さらにその先端に立設部14cが形成されている。なお、立設部14cの高さは、PF部14の側面部分14aの厚さに収まる程度で形成されることが好ましい。また、立設部の厚さは任意に形成することができる。
【0046】
なお、PF部14の内周面15aは、孔15の内側に向かって薄く形成されているが、これに限らず、孔の内周面が平坦に形成されていてもよい。そして、この場合、平坦に形成された孔の内周面から延設部及び立設部が形成されるようになる。
【0047】
このように、PF部14の孔15に立設部14cが形成されることで、PF部14の断面積が大きくなり、断面二次モーメントも大きくなるため、スルーホールに圧入させたときの保持力を高めることができるようになる。また、
図2Cに示すように、PF部14の軸方向の孔15の端部は、線材11からより多くの材料を寄せることができるため、PF部14の外側部分と立設部14cとの間は、他の部分と比べて厚く形成することができる。このようにすることで、この部分の断面積が大きくなり、断面二次モーメントも大きくなることで、高い保持力を得ることができる。
【0048】
なお、立設部14cの幅を厚くすることで、断面積が大きくなり保持力も大きくなるが、その分の材料をPF部14の側面部分14a等から持ってくる必要があるため、PF部14全体の断面積を考慮した幅にすることが好ましい。
【0049】
また、PF部14の横への広がりは、挿入される基板に形成されたスルーホールの径により調整することができ、PF部14の広がりは、スルーホールの径より大きくなるようにされる。このようにすることで、PF端子が基板に挿入されたとき、基板のスルーホールから受ける圧力によりPF部が弾性変形され、弾性変形による弾性力によりPF部がスルーホールに固定及び接続される。
【0050】
なお、PF部14を形成する際には、単にPF部14に孔15を形成するだけではなく、線材の厚さと略同じ厚さでPF部の外面を形成し、PF部の孔へ向かうにつれて薄くするように形成することで、孔を大きく形成せずに高い強度のPF部を効率よく形成することができる。
【0051】
また、PF部14を合金化することもでき、PF部14を合金化することでスルーホールへの挿入時にメッキの剥がれを抑制することができる。なお、この合金化は、PF部14にレーザーを照射することで行うことができる。
【0052】
次に、肩部16について説明する。肩部16は、PF部14が横方向に突出した方向と同一の方向に線材11の軸線に対して対称に突出して形成されている。この肩部16は、PF端子10を基板に圧入する際に治具等から押圧力を受ける部分であり、上述したPF部14と隣接して形成されている。また、肩部16には治具等で押圧される肩部端部17が設けられ、肩部端部17は、この冶具等で押圧可能な大きさ(面積)で形成されている。また、この肩部16は、PF部14と隣接して形成されているため、従来に比べて、PF部14と肩部とが隣接して形成されることで、冶具に押圧される肩部端部17と基板面との距離がより近くなる。
【0053】
このように、肩部16はPF端子10と隣接して形成されているので、冶具を押し当てる肩部と圧入される基板面間の距離を短くすることができ、基板穴の中心軸上を沿う様にプレスフィット端子を挿入することが可能となり、精度良く基板穴の中心軸に沿うように真っ直ぐ挿入可能となり、挿入の確実性及び安定性が向上すると共に、基板に対する端子保持力も十分に確保できるようになる。
【0054】
また、肩部16の形状は、肩部端部17の幅Lが最も広く、この幅Lを少し延ばし、肩部16のPF部14と最も隣接する箇所が狭められているような略五角形状に形成されている。この肩部16の形成には線材11をプレスして横方向に広げるようにするため、肩部16には、線材11の断面よりも薄く広がる圧延部20が形成される。しかし、圧延部20のみでは肩部16の強度が保てないので、必要な強度を得るために肩部16には第1補強部18及び第2補強部19が一体に形成されている。
【0055】
この第1補強部18は、肩部16の中央部分に線材11の軸方向に沿って凸状のリブで形成されている。このように肩部16に線材11の軸方向に沿った第1補強部18が形成されていることで、肩部16の軸方向にかかる力に対して強化することができる。この第1補強部18は、後述する繋ぎ部22に亘って形成されている(
図3B参照)。また、第2補強部19は、肩部16の横方向に突出した圧延部20の端部となる部分を、この横方向に対して直角方向に延設して形成される。すなわち、断面形状が「T」字状になるように形成されている。このように、第2補強部19が形成されていることにより、肩部自体を強化することができると共に、治具等に押圧される範囲をより広く確保できるようになる。
【0056】
また、圧延部20は、肩部16の形状が狭められる方向に向かうように傾斜20aが形成されている。すなわち、横方向への突出が小さくなり、圧延部20の厚みが増しているようになっている。具体的には、切断位置の異なる
図4Bと
図4Cとを比較すると、
図4Bの横方向への突出している幅W1と
図4Cの同様の部分の幅W2は、W1<W2となっている。また、
図4Bの第1補強部の幅X1と
図4Cの同様の部分の幅X2は、X1>X2となっている。また、
図4Bの第2補強部の幅L1と
図4Cの同様の部分の幅L2は、L1>L2となっている。
【0057】
このとき、第2補強部19は、肩部16の外面21の形状に沿って形成されているため、肩部はより強固に形成されるようになる。すなわち、肩部16の肩部端部17に受けた押圧力をPF端子10の軸方向に伝えるため、この肩部16の狭まる部分には大きな力が加わり変形しやすくなるが、第1補強部18及び第2補強部19が形成されているため強固となり、破壊や損傷を抑制することができる。
【0058】
また、PF部14と肩部16との間には繋ぎ部22が形成されている。この繋ぎ部22はPF部14と肩部16と共に一体に形成されており、肩部16の狭まる部分に続く肩部16及びPF部14を繋ぐ部分となる。この繋ぎ部22は、繋ぎ部22の断面積が線材11の断面積と同じか又は略同じとなるように形成されることにより、高い強度が得られる。具体的には繋ぎ部の断面積をSとし、線材11の断面積Aとしたとき、繋ぎ部22の断面積SはA≧S≧0.9Aの範囲であることが好ましい。また、繋ぎ部22は、PF部14と肩部16と一体に形成されることにより、別々に形成されるよりも高い強度が得られ、また、PF部14と肩部16をより隣接して形成することができるようになり、肩部16と基板面との距離を近くすることができる。
【0059】
このように、肩部16に第1補強部18及び第2補強部19が形成されることにより、PF端子10の基板への挿入の確実性及び安定性を向上させることができ、また、冶具で押圧されたときに肩部の変形や破損を抑制することができる。さらに、繋ぎ部22には肩部16に形成された第1補強部18が延設されて形成されている。このように、肩部16と繋ぎ部22とを繋ぐ部分に渡って第1補強部18が形成されることで、よい強固に形成することができ、座屈等を抑制することができるようになる。また、肩部とプレスフィット部の間に肩部とプレスフィット部より狭めた繋ぎ部を形成することで、プレスフィット部の繋ぎ部側を狭めることができるので、肩部の幅から直接プレスフィット部を形成する場合に比べ、プレスフィット部が十分な弾性力を得ることができるようになる。
【0060】
なお、PF端子の肩部の形状は、実施形態で説明した略五角形状に限られず、肩部端部に冶具等で押圧される大きさを有し、この肩部端部の幅より、PF部と最も隣接する箇所の幅が狭いような形状であればよく、例えば、三角形状、あるいは、曲線で形成された半円形状や半楕円形状、さらに、肩部端部より突出した部分を有するような、六角形状やひょうたん型の形状等、又はこれらに近似する形状で形成することができる。このような形状であっても、第1補強部や第2補強部等を形成したり、PF部と肩部の間に繋ぎ部を形成したりすることもでき、上述したような発明の効果を奏することができる。
【0061】
また、PF端子10の接続部13側には圧入部23が形成されている。この圧入部23は、ハウジング等に圧入し、抜け止めとする部分である。そのため、圧入部23は使用されるハウジング等に合わせて任意の大きさや形状で形成することができる。
【0062】
次に、
図5を参照して、実施形態のPF端子の基板への装着について説明する。まず、PF端子10を基板29に装着するために、基板29に形成されたスルーホール30に対応するようにPF端子10を配置する(
図5A参照)。そして、PF端子10の先端部12をスルーホール30に合わせ挿入し、スルーホール30にPF部14が当接するまで行う(
図5B参照)。なお、PF部14はスルーホール30の径よりも大きく形成されているので、PF部14をスルーホール30に挿入するにはPF部14が変形させるような大きな押圧力を必要とする。そのため、治具24を用いてPF端子10を押圧し挿入をするが、この時、PF端子10に形成された肩部16に治具24を当てて押圧し、PF部14が変形されスルーホール30に圧入される。
【0063】
この圧入を所定の位置になるまで行い、PF部14が変形したことによる弾性力により固定及び接続される(
図5C参照)。このとき、PF部14の孔15の周囲には立設された立設部14cが形成されていることで、PF部14の断面積が大きくなり(
図2A参照)、断面二次モーメントも大きくなるため、高い保持力を得ることができるようになる。なお、
図5では、PF端子10が一本の場合を説明したが、複数のPF端子を複数のスルーホールへ接続することもできる。その場合、PF端子を一本ずつ接続させることもできるし、複数本を一度に行うこともできる。
【0064】
[応用例1]
次に、実施形態のPF端子の使用態様の応用例1として、PF端子10を使用したコネクタ27について説明する。まず、
図6Aに示すように、直線状に形成されたPF端子の中央部分を略直角に屈曲させたPF端子10Bを複数本用意する。用意した複数本のPF端子10Bが装着されるように同様に複数の貫通孔28aが形成された合成樹脂製のハウジング28を用意し、このハウジング28の貫通孔28aに複数本のPF端子10Bを接続部13側か所定のところまで挿入する(
図6B参照)。
【0065】
このとき、PF端子10Bの接続部13側に形成された圧入部23がハウジング28の貫通孔28aに圧入されることで、抜け止めがなされる。このハウジング28への挿入は、一本ずつ行うこともできるし、複数本を同時に行うこともできる。以上で、PF端子10Bを備えたコネクタ27の組み立てが完了する。このようにすることで、実施形態にかかるPF端子を備えたコネクタを形成することができる。なお、PF端子が装着されるハウジングは様々な形状とすることができ、コネクタの使用態様にあわせ選択することができるので、汎用性の高いコネクタを得ることができる。
【0066】
次に、完成したコネクタ27を基板29に接続する。
図6Cに示すように、コネクタ27に装着した複数のPF端子10Bの数に対応する複数のスルーホール30が形成された基板29にコネクタ27を合わせ、それぞれのPF端子10Bの先端部12を各スルーホール30に挿入させる。そして、治具等を用いて、スルーホール30にPF端子10のPF部14を圧入させ、この圧入を所定の位置間で行うことで基板29へのコネクタ27の接続が完了する(
図6D参照)。
【0067】
[応用例2]
また、他のPF端子10の使用態様の応用例2を説明する。応用例2として、まず、複数本の実施形態と同じPF端子10を基板29のスルーホール30に接続させる。この接続は、複数本のPF端子10を基板29に形成された複数のスルーホール30に合わせ配置させる(
図7A参照)。そして、複数のPF端子10を冶具等を用いてスルーホール30に圧入させ接続を行う(
図7B参照)。このとき、応用例2では、PF端子10は直線状のものを使用しているが、屈曲させたものを使用してもよい。また、PF端子10を基板29に接続させた状態をユニット31として流通させることもできる。
【0068】
次に、このPF端子10を基板29に接続させたユニット31に、ハウジング28Aを装着させる(
図7C参照)。このハウジング28Aの装着は、PF端子10の接続部13をハウジング28に形成された貫通孔(不図示)に挿入し、圧入部23を圧入させることで行われる(
図7D参照)。このようにして、PF端子10とハウジング28の装着が行われる。このようにすることで、PF端子を幅広く使用することができる
【0069】
[実施形態2]
次に、実施形態2として、実施形態1で説明したPF端子10が線材に連続して形成されたプレスフィット端子連続体(以下、PF端子連続体という)32について説明する。なお、実施形態1のPF端子と共通する構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0070】
PF端子連続体32は、
図8A及び
図8Bに示すように、実施形態1のPF端子10が長尺な線材11Aに連続して形成された状態のものであり、上述したような実施形態1のPF端子10を単体に分断する前段階の状態のものである。
【0071】
このとき、PF端子連続体32は、一のPF端子10の先端部12と他のPF端子10の接続部13のそれぞれの端部が連結された一本の線状部材として形成されている。なお、この先端部12と接続部13が連結した部分が連結部25となり、この連結部25は、先端部12と接続部13とに形成されたテーパー12a、13aの部分が連結されることにより、中央部分が最も谷の部分26となっている。また、この最も谷の部分26がPF端子10を個々に分断する際にねじり切られる部分となる。ねじり切るように分断することで、切断面に剪断したときのようなバリの発生を抑制することができる(
図8C〜
図8E参照)。このように実施形態1で説明したPF端子10を形成した1本の線材のPF端子連続体32を形成することで、複数のPF端子10が搬送や運搬、搬入等を行うとき、取り扱いやすくなる。
【0072】
なお、PF端子連続体32は、
図9A及び
図9Bに示すように比較的大きな径の円形に巻回した、PF端子連続体巻き付け体33としたり、また、
図9C及び
図9Dに示すように、PF端子連続体32を芯となるロールやボビン等の筒状部材34に巻き付けたPF端子連続体巻き付け体33Aとしたりすることで、より取り扱いやすくなる。また、このPF端子連続体32を基板やハウジングに連続して圧入するための圧入装置に取り付ける際、このボビン等を圧入装置にセットするようにすることもできる。さらに、このボビン等にPF端子連続体を巻回したPF端子連続体巻き付け体33Aの状態で運搬や販売をすることもできる。