特許第6150354号(P6150354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6150354ヘスペリジン含有茶飲料組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150354
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】ヘスペリジン含有茶飲料組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20170612BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   A23F3/16
   A23L2/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-131586(P2015-131586)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-12069(P2017-12069A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2016年2月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(72)【発明者】
【氏名】坂田 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】藤井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀典
(72)【発明者】
【氏名】相澤 治
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−077051(JP,A)
【文献】 特開2013−013392(JP,A)
【文献】 特開2012−017322(JP,A)
【文献】 特開2005−269978(JP,A)
【文献】 特開2009−296951(JP,A)
【文献】 特開2009−173585(JP,A)
【文献】 特開2001−128620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 − 2/84
A23F 3/00 − 5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/FROSTI/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
αグルコシルヘスペリジンを含有する茶飲料組成物の製造方法であって、前記αグルコシルヘスペリジンの水溶液を70〜130℃で10秒〜20分間加熱する加熱工程を含む滋味調整工程を備えることで、特定の臭気成分を除去する臭気除去工程と、前記臭気除去工程後に前記αグルコシルヘスペリジン水溶液を飲料液及び/又は茶抽出濃縮液に添加し、更に前記滋味調整工程により得られるヘスペリジン水溶液中の滋味成分と、飲料液中の呈味成分の比率を調整する呈味調整工程とを含むことを特徴とする茶飲料組成物の製造方法。
【請求項2】
前記滋味調整工程が、更にαグルコシルヘスペリジン水溶液のpHを調整するpH調整工程と、αグルコシルヘスペリジン水溶液を吸着濾過する濾過工程とを含むことを特徴とする請求項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
【請求項3】
前記pH調整工程において、pHが4.0〜7.0に調整されることを特徴とする請求項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
【請求項4】
前記濾過工程における吸着剤が活性炭であることを特徴とする請求項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
【請求項5】
前記滋味成分がビニルグアヤコール及びアニスアルデヒドであって、更に前記アニスアルデヒドに対するビニルグアヤコールの比率(ビニルグアヤコール/アニスアルデヒド)が0.1〜30.0に調整されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
【請求項6】
前記茶飲料組成物が緑茶飲料であって、前記呈味調整工程が、飲料中の糖類及び甘味アミノ酸からなる呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)を0.70〜15.00に調整する工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
【請求項7】
前記茶飲料組成物が麦茶飲料であって、前記呈味調整工程が、飲料中の糖類及びデンプンからなる呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)を0.03〜4.00に調整工程であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
【請求項8】
前記茶飲料組成物がインスタント緑茶であって、前記呈味調整工程が、前記インスタント緑茶中の糖類及び甘味アミノ酸からなる呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)を0.70〜15.00に調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
【請求項9】
前記茶飲料組成物がインスタント麦茶であって、前記呈味調整工程が、前記インスタント麦茶中の糖類及びデンプンからなる呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)を0.03〜4.00に調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
【請求項10】
αグルコシルヘスペリジンを含有する茶飲料組成物の風味改善方法であって、前記αグルコシルヘスペリジンの水溶液を70〜130℃で10秒〜20分間加熱する加熱工程を含む滋味調整工程を備えることで、特定の臭気成分を除去する臭気除去工程と、前記臭気除去工程後に前記αグルコシルヘスペリジン水溶液を飲料液及び/又は茶抽出濃縮液に添加し、更に前記滋味調整工程により得られるヘスペリジン水溶液中の滋味成分と、飲料液中の呈味成分の比率を調整する呈味調整工程とを含むことを特徴とする茶飲料組成物の風味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶飲料組成物の製造方法にかかり、特にヘスペリジンを含有する茶飲料組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりから、生理活性機能を有する様々な成分が飲食品に利用されており、例えば特定保健食品をはじめとする、生理活性機能を備えた多くの製品が市場に流通し、消費者にも広く認知されている。また、今後の機能性表示制度の施行に伴い、より一層生理活性機能への関心が高まり、これに対応する製品も増加するものと考えられる。
【0003】
特定保健用食品は勿論、新たに施行される機能性表示制度に対応する飲料の場合も、特定の成分が生理活性機能を十分に発揮しうる為、推奨される摂取量が定められている。
このため、該特定成分を以下に容易に摂取できるよう、飲料の種類を選択し、その呈味性を調整することは、飲料各メーカーにとっても非常に重要な検討課題となっている。一般的に生理活性物質は動植物由来の成分が多いことから、飲用には不向きな臭気や呈味を有しているものが多い。従って、ベースとなる飲料の味に影響を与えることなく、この臭気等を低減させる、若しくは感知されないようにマスキングすることは、技術的に大きな困難を伴う。
本願発明で用いられる生理活性機能成分であって、血中中性脂肪の分解等の生理活性作用を有するグルコシルヘスペリジンは、既知の物質であるものの、提供される製剤は特有の薬品臭を強く有し、継続して所定量以上を摂取することは困難であった。
そのため、現在までに上市されている、これら生理活性物質を含有する飲料は果汁や香料などを配合し、その特有の臭気をマスキングしたものや、呈味をマスキングするために炭酸飲料の形態とするものがほとんどである。しかし、RTD(Ready to Drink)形態の飲料として、甘味が強い清涼飲料や炭酸飲料は毎日所定量摂取するのは非常に困難を伴い、その香味も生理活性物質を含有しない通常の清涼飲料や炭酸飲料と比較すると決して満足のいくものではなかった。
【0004】
一方で、日常で飲用機会の多い飲料としては、水やRTD(Ready to Drink)形態の飲料としての緑茶や麦茶といった止渇性飲料が挙げられる。これら茶飲料組成物は止渇性飲料であるがゆえに、日常的に高頻度で飲用されており、極めて容易且つ自然に、毎日所定量を摂取することができる。従って、水や茶飲料組成物のような止渇性飲料にグルコシルヘスペリジン等の生理活性物質を添加することで、飲用シーン、性別及び年齢を問わず、生理活性成分を無理なく摂取することが可能となる。しかしながら、前述の通り、生理活性物質、特にグルコシルヘスペリジンには特有の臭気があり、繊細な香味を備えた茶飲料組成物に添加した場合、香味に影響を与えることなくその臭気をマスキングすることが困難であった。
【0005】
緑茶飲料や麦茶飲料等の茶飲料組成物の香味は非常にデリケートであることから、生理活性物質の臭気を抑制しながらも、十分な飲み応えと余韻を感じることができるように、一定の香気を確保しつつも、好適な呈味バランスとなるように香味を設計することは、技術的ハードルが極めて高かった。
【0006】
グルコシルヘスペリジンを添加した茶飲料組成物の香味について、現在までに様々な試みが提案されている。
例えば、特許文献1には、「カテキン類を含有する容器詰飲料であって、(A)非重合体カテキン類 0.05〜0.5質量%、及び(B)酵素処理ヘスペリジン 0.001〜1.0質量%、及び(H)カフェインを含有し、含有重量比[(A)/(F)]が0.2〜1.0、[(B)/(F)]が0.001〜0.5、[(H)/(A)]が0.0001〜0.104であり、かつ非重合体カテキン類の非エピ体率が5〜20質量%である容器詰飲料」に係る発明が開示されている。
特許文献1に係る発明は、前記構成を有することで、非重合体カテキン類を高濃度で含む容器詰緑茶飲料であっても、ガレート型カテキン類由来の苦味が抑制され、長期の保存に優れた容器詰緑茶飲料を提供しうる。
【0007】
また、例えば特許文献2には、水溶性ヘスペリジンを0.005〜0.015重量% 含み、さらにトレハロースを1〜 3重量% 含有することを特徴とするヘスペリジン含有飲料が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献1に係わる発明は、非重合カテキンを高濃度で含む緑茶飲料であって、毎日所定量を摂取するのは困難なものであり、また生理活性物質であるヘスペリジンの生理活性機能及びヘスペリジン自体が有する特有の臭気のマスキングを解決課題として研究されたものではない。また、特許文献2に係る発明は、ヘスペリジンの臭気のマスキングのためにトレハロース又はニゲロオリゴ糖を添加しており、繊細な香味を備えた茶飲料組成物についてはそのまま適用することは不可能であった。
従って、本願発明のように、グルコシルヘスペリジンの臭気が抑制され、且つ飲み応えと一定の香気を感じることができる止渇性飲料を実現するためには、上記特許文献に関わる発明ではいずれも不可能であった。
また、前記特許文献以外においては、係る特性を有する飲料を開発するという技術課題について認識されておらず、本技術課題を解決するための方法についての具体的な知見、及びこれを評価するための指標は、当業者の間でもこれまで提案されていなかった。
更に、ヘスペリジンを添加した後のマスキング、即ち他の成分を以ってヘスペリジンの臭気を感知できなくすることについての知見は上記特許文献においてもある程度開示されているものの、添加前の状態でヘスペリジンの臭気自体を減少させるといった工程を備えた茶飲料組成物の製法については、現在までに全く提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−055905号公報
【特許文献2】特開2006−67946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特に日常的に飲用されており、毎日所定量を摂取することが比較的容易な止渇性飲料において、ヘスペリジンの添加による臭気を抑制した茶飲料組成物の製造方法並びに茶飲料組成物の臭気除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者らは、ヘスペリジン特有の臭気を効果的に抑制する方法について鋭意研究した結果、茶飲料組成物の製造過程において、茶飲料液に添加する前のヘスペリジンの水溶液を所定温度で加熱して、特定の臭気成分を除去する臭気除去工程を含むことによって、ヘスペリジンの異臭の要因となる成分のみが除去され、茶飲料組成物に添加した場合に、茶飲料組成物の滋味を向上しうる成分、所謂滋味成分のみを選択的に飲料に反映させることができることを見出した。
また、茶飲料液に添加した後、後発的に異臭が発生して場合もこれを効果的に抑制し、更に良好な香味を味わえる茶飲料組成物が得られることを見出した。
【0012】
すなわち本願発明は以下のような構成からなる。
(1)ヘスペリジンを含有する茶飲料組成物の製造方法であって、前記ヘスペリジンの水溶液を所定温度で加熱して、特定の臭気成分を除去する臭気除去工程と、前記臭気除去工程後に前記ヘスペリジン水溶液を添加する工程を含むことを特徴とする茶飲料組成物の製造方法。
(2)前記臭気除去工程は、前記ヘスペリジン水溶液を70〜130℃で10秒〜20分間加熱する加熱工程を含む滋味調整工程を備えることを特徴とする(1)の茶飲料組成物の製造方法。
(3)更に前記滋味調整工程により得られるヘスペリジン水溶液中の滋味成分と、飲料液中の呈味成分の比率を調整する呈味調整工程とを含むことを特徴とする(2)の茶飲料組成物の製造方法。
(4)前記滋味調整工程が、更にヘスペリジン水溶液のpHを調整するpH調整工程と、ヘスペリジン水溶液を吸着濾過する濾過工程とを含むことを特徴とする(2)又は(3)の茶飲料組成物の製造方法。
(5)前記pH調整工程において、pHが4.0〜7.0に調整されることを特徴とする(4)の茶飲料組成物の製造方法。
(6)前記濾過工程における吸着剤が活性炭であることを特徴とする(4)の茶飲料組成物の製造方法。
(7)前記滋味成分がビニルグアヤコール及びアニスアルデヒドであって、更に前記アニスアルデヒドに対するビニルグアヤコールの比率(ビニルグアヤコール/アニスアルデヒド)が0.1〜30.0に調整されることを特徴とする(2)〜(6)のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
(8)前記茶飲料組成物が緑茶飲料であって、前記呈味調整工程が、飲料中の糖類及び甘味アミノ酸からなる呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)を0.70〜15.00に調整する工程であることを特徴とする(3)〜(7)のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
(9)前記茶飲料組成物が麦茶飲料であって、前記呈味調整工程が、飲料中の糖類及びデンプンからなる呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)を0.03〜4.00に調整工程であることを特徴とする(3)〜(7)のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
(10)前記茶飲料組成物がインスタント緑茶であって、前記呈味調整工程が、前記インスタント緑茶中の糖類及び甘味アミノ酸からなる呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)を0.70〜15.00に調整することを特徴とする(3)〜(7)のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
(11)前記茶飲料組成物がインスタント麦茶であって、前記呈味調整工程が、前記インスタント麦茶中の糖類及びデンプンからなる呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)を0.03〜4.00に調整することを特徴とする(3)〜(7)のいずれか1項に記載の茶飲料組成物の製造方法。
(12)(1)〜(11)のいずれか1項に記載の方法により製造される茶飲料組成物。
(13)ヘスペリジンを含有する茶飲料組成物の風味改善方法であって、前記ヘスペリジンの水溶液を所定温度で加熱して、特定の臭気成分を除去する臭気除去工程と、前記臭気除去工程後に前記ヘスペリジン水溶液を添加する工程を含むことを特徴とする茶飲料組成物の風味改善方法。
(14)茶飲料組成物に添加するためのヘスペリジンの臭気除去方法であって、ヘスペリジンの水溶液をpH4.0〜7.0に調整するpH調整工程と、前記ヘスペリジン水溶液を70〜130℃に加熱する加熱工程と、前記pH調整工程と前記加熱工程により発生した特定の臭気成分を吸着濾過する濾過工程とを備えることを特徴とする茶飲料組成物に添加するためのヘスペリジンの臭気除去方法。
【発明の効果】
【0013】
本願発明は前記の構成を具備することにより、生理活性物質であるヘスペリジンに起因する臭気のマスクキングが、より効果的に発揮され、生理活性物質特有の臭気を効率的に抑制し、更に良好な香味を味わえる茶飲料組成物の製造方法並びに茶飲料組成物の臭気除去方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る茶飲料組成物を実施する為の形態について、以下具体的に詳述するが、本発明の技術的範囲から逸脱しない限りにおいて、以下に示す実施形態以外の公知手法を適宜選択することも可能である。
【0015】
(茶飲料組成物)
本発明における茶飲料組成物とは、茶飲料全般を指し、緑茶、麦茶、紅茶、ブレンド等の茶葉を抽出して得られた抽出液を主たる原料としたものであれば、その形態は特に限定されない。例えば、緑茶飲料や麦茶飲料といったRTDの容器詰飲料や、インスタント緑茶やインスタント麦茶といった簡便性の高いインスタント茶等が挙げられる。
【0016】
(茶飲料組成物の製造方法)
本発明における茶飲料組成物の製造方法は、緑茶や麦茶等の茶葉を抽出して得られた抽出液を主たる原料とし、容器に充填してなる飲料又は包装してなるインスタント茶の製造方法である。
容器に充填してなる飲料又は包装してなるインスタント茶、例えば原料茶葉を抽出して得られた抽出液のみからなる液体、或いは、当該抽出液を濃縮又は希釈した液体、或いは異なる濃度、若しくは異なる種別の茶葉から抽出液した抽出液どうしを所定割合で混合した液体、及びこれら前記何れかの液体に添加物を加えた液体等の形態等を例示することができる。
なお、主たる原料とは、少なくとも配合割合が50%以上であることを示している。
【0017】
(臭気除去工程)
本発明における臭気除去工程とは、可溶化処理された水溶性ヘスペリジン特有の薬品臭の要因となる成分のみが除去され、茶飲料組成物に添加した場合に、茶飲料組成物の滋味を向上しうる成分、所謂滋味成分のみ残存させる方法である。本発明の臭気除去方法によって、水や繊細な香味を有する茶飲料組成物等の止渇性飲料に添加するのに最適なヘスペリジンを得ることができる。なお、本発明の臭気除去工程は、pH調整工程、加熱工程及び濾過工程からなる滋味調整工程を備えることを特徴とする。
【0018】
(インスタント茶)
インスタント茶とは、乾燥状態の粉末であり、適量のお湯又は水を注いで溶解させることで茶として飲用することができる食品を意味する。急須を用いるなどの手間を省いて茶を飲用することができるものあり、一般的には、お湯等を注ぎ飲用できる状態にした液体のものもインスタント茶と表現することがある。
また、本発明におけるインスタント茶とは、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されないが、例えば、緑茶、麦茶、ほうじ茶、紅茶等が挙げられる。また、インスタント茶は定法に従った製造工程によって製造され、例えば、茶葉を水で抽出し、必要に応じて清澄化処理を施し、濃縮して茶抽出液或いは茶抽出液の濃縮液を得て、更に必要に応じてpH調整および殺菌した後、乾燥させ、造粒を施してインスタント茶を製造する。また、pH調整の前に、抗酸化物質を溶解してなる溶液や粉末茶等の茶原料を加えても良い。
前記臭気除去工程によって、ヘスペリジンの臭気が抑制され、繊細な香味を有する茶に適した滋味成分が残存したヘスペリジン水溶液を、茶抽出液及び/又は該茶抽出液の濃縮液等に混合することで良好な香味のインスタント茶が得られる。また、茶抽出液及び/又は該茶抽出液の濃縮液等にヘスペリジンを混合するタイミングとしては特に限定されないが、生産性、成分調整の容易さの観点からpH調整の直前に混合されるが好ましい。なお、本発明におけるインスタント茶の各成分値は1.7gのインスタント粉末を150mlの湯に溶かした際の値である。
【0019】
(ヘスペリジン)
本発明におけるヘスペリジンとは、主に柑橘類から抽出精製したヘスペリジンを酵素反応によって処理し、溶解度を高めた水溶性ヘスペリジンである。ヘスペリジンの可溶化処理は、特許第3060227号公報に記載されているように、ヘスペリジン1重量部およびデキストリン(DE20)6重量部に水5,000重量部を加えて加熱、溶解し、これにバチルス・ステアロサーモフィルス(B acillusstearothermophilus)由来のシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(株式会社林原生物化学研究所販売)をデキストリングラム当たり20単位加え、pH6.0、70℃に維持して18時間反応させ、ヘスペリジンの約70%をα−グリコシルヘスペリジンに転換し、その後、加熱失活させ、α−グリコシルヘスペリジンとともに未反応ヘスペリジンを含有する反応液を濾過し、濾液を多孔性合成吸着剤、商品名ダイヤイオンHP−10(三菱化成工業株式会社販売) を充填したカラムにSV2で通液し、このカラムを水で洗浄した後、50V/V%エタノールを通液し、この溶出液を濃縮して溶媒を溜去し、粉末化することによって行うことができる。このような、可溶化処理された水溶性ヘスペリジンには、例えば東洋精糖株式会社から販売されているα−Gヘスペリジンを用いることができる。また、茶飲料組成物に添加する場合、ヘスペリジン量としては40〜6000ppmに調整される。この範囲とすることでヘスペリジンの生理活性機能を付与するとともに、過度なヘスペリジン特有の臭気を防ぐことができる。好ましくは150〜3000ppmであり、より好ましくは150〜2900ppmである。なお、本発明におけるヘスペリジン量は、臭気除去工程乃至滋味調整工程によって処理され、臭気が除去され、滋味を残存させたヘスペリジンの量である。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料である場合、ヘスペリジンの臭気及び滋味と緑茶の香味バランスの観点から、400〜1000ppmが好ましく、500〜850ppmがより好ましい。また、茶飲料組成物がインスタント緑茶である場合、ヘスペリジンの臭気及び滋味と緑茶の香味バランスの観点から、800〜6000ppmが好ましく、1300〜3500ppmがより好ましい。また、茶飲料組成物が麦茶飲料である場合、ヘスペリジンの臭気及び滋味と麦茶の香味バランスから、100〜1000ppmが好ましく、150〜600ppmが最も好ましい。更に、茶飲料組成物がインスタント麦茶である場合、ヘスペリジンの臭気及び滋味と麦茶の香味バランスから、40〜2000ppmが好ましく、400〜1900ppmが最も好ましい。
また、本発明におけるヘスペリジン水溶液とは上記ヘスペリジンを水乃至お湯に溶解させたものである。なお、本発明に添加されるヘスペリジンは柑橘類由来ではあるが、その果実種は特に限定されず、例えばみかん、ダイダイ、レモン、ライム、グレープフルーツ等が挙げられる。これは果実種によってヘスペリジン特有の臭気の強弱や性質が異なっていても、本発明の製造方法によって効果的な臭気除去効果及び滋味調整効果が期待できるからである。更に、本発明はヘスペリジンを溶解し、水溶液の状態として処理するが、これは、粉末状、スラリー状のヘスペリジン組成物と比較して、生産性や加熱臭等の品質劣化の抑制の観点から好ましい。
なお、ヘスペリジンは当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフ法)を用いた分析方法が挙げられる。
【0020】
(pH調整工程)
本発明におけるpH調整工程において、ヘスペリジン水溶液のpHは4.0〜7.0に調整することが望ましい。この範囲とすることで、加熱工程及び吸着濾過工程により、効果的にヘスペリジンの臭気を取り除き、更に繊細な香味を有する茶飲料組成物に適した滋味成分を選択的に残すことができることができるからである。かかる観点から、好ましくは4.8〜6.8であり、より好ましくは5.0〜6.5であり、特に好ましくは5.2〜6.2であり、最も好ましくは5.5〜6.0である。なおpHは、アスコルビン酸やその塩、クエン酸、重炭酸ナトリウムや炭酸カリウムを添加することによって調整できる。
【0021】
(加熱工程)
本発明の加熱工程とは、pH調整後のヘスペリジン水溶液を70〜130℃で10秒〜20分間加熱する工程である。加熱温度及び加熱時間をこの範囲とすることで、吸着濾過工程で効果的にヘスペリジンの臭気を取り除き、更に繊細な香味を有する茶飲料組成物に適した滋味成分を選択的に残すことができることができるからである。かかる観点から、好ましくは75〜125℃で30秒〜18分間であり、より好ましくは78〜120℃で1〜16分間であり、特に好ましくは80〜110℃で5〜15分間であり、最も好ましくは85℃〜95℃で8〜12分間である。加熱方法としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されないが、インキュベーション、プレートやシェルチューブによる間接加熱、スチームによる直接加熱等が挙げられる。
【0022】
(吸着濾過工程)
本発明の吸着濾過工程は、ヘスペリジン水溶液中からヘスペリジンの臭気を吸着、除去し、且つ繊細な香味を有する茶飲料組成物に適した滋味成分を選択的に残存させることを目的とする工程である。効果的に臭気を取り除き、滋味成分を残存させる観点から、ヘスペリジン水溶液のpH調整工程及び過熱工程の後に行われることが好ましい。本発明の吸着濾過は、限外濾過、微細濾過、精密濾過、逆浸透膜濾過、電気透析、生物機能性膜などの膜濾過、濾滓濾過などを挙げることができるが、生産性と臭気除去及び滋味成分調整の観点から、多孔質媒体を用いた吸着濾過によって調整することが好ましい。また、本発明の吸着濾過に用いる吸着剤は、活性白土、酸性白土、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、珪藻土、樹脂等が挙げられる。これらの吸着剤の1種又は複数を適宜組み合わせて使用することも可能であるが、一部又はすべてが活性炭であることが好ましい。また、活性炭を吸着剤として吸着濾過をする以外にも、多孔質媒体をヘスペリジン水溶液に10秒〜20分間、より具体的には1〜10分間接触させ、ヘスペリジンの臭気を吸着し、滋味成分を残存させた後、吸着濾過等により多孔質媒体を取り除くバッチ式の方法も挙げられる。例えば反応槽に蓄えたpH調整及び加熱工程を経たヘスペリジン水溶液に活性炭等を添加し、反応後に濾滓濾過等により活性炭ごと除去する方法である。
【0023】
活性炭等の吸着剤は、一般的に樹状に枝分かれした細孔を有し、幹部を構成する比較的大径の細孔(マクロ孔)と、それから枝分かれ状の伸びた微細孔(メソ孔)と、更にその微細孔から伸びた超微細孔(ミクロ孔)から構成されている。微細孔のサイズに応じて、孔径が50nmを超えるものをマクロ孔、2nmを超え50nm以下のものをメソ孔、2nm以下のものをミクロ孔と呼んでいる。本発明において使用可能な吸着剤は、直径2nm以下のミクロ孔、直径2〜50nmのメソ孔及び直径50nm以上のマクロ孔などの細孔を有するものが適しており、活性炭、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、樹脂等が使用可能である。これらの吸着剤の1又は複数を適宜組み合わせて使用することも可能であるが、好ましくは活性炭である。本発明において、ヘスペリジン水溶液中からヘスペリジンの臭気を吸着、除去し、且つ繊細な香味を有する茶飲料組成物に適した滋味成分を選択的に残存させるためには、吸着剤が特殊な細孔の構造を有している必要がある。特に濾過液の通路となるマクロ径と吸着の場となるミクロ径の容積比を一定の比率に調整することが好ましい。
【0024】
本発明に使用される吸着剤は、吸着剤のマクロ孔容積1.0cc/g以下であるものが適しており、好ましくは0.1〜0.8cc/g、より好ましくは0.2〜0.6cc/g、特に好ましくは0.25〜0.5cc/gのものであって、ミクロ孔容積に対するマクロ孔容積の比率(マクロ孔容積/ミクロ孔容積)が0.1〜12.0であるものが好ましく、より好ましくは0.2〜10.0であり、特に好ましくは0.3〜5.0である。この範囲の吸着剤とすることで、ヘスペリジン水溶液中からヘスペリジンの臭気を効果的に吸着し、滋味成分を残存させることができるからである。
【0025】
また、前記吸着剤のミクロ孔容積に対するメソ孔容積の比率(メソ孔容積/ミクロ孔容積)が0.1〜20.0であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜10.0であり、特に好ましくは0.1〜5.0である。この範囲とすることで更にヘスペリジンの臭気を効率的に除去可能である。
本発明にはミクロ孔容積が1.0cc/g未満であり、好ましくは0.05〜0.9cc/gであり、より好ましくは0.1〜0.8cc/gであり、特に好ましくは0.4〜0.8cc/gであって、更にメソ孔容積が0.05〜0.6cc/g、好ましくは0.1〜0.45cc/g、より好ましくは0.2〜0.4cc/gの吸着剤が適している。これらの孔は、気体吸着法や水銀圧入法などの公知の測定法により測定可能である。また、これらの孔の比率は、特定の処理をすることにより調整可能である。例えば活性炭は、やし殻やおがくず、石炭、フェノール樹脂などから製造され、高温下で蒸し焼きする炭化工程後に更に高温下で水蒸気などと反応させる賦活工程がある。この賦活の条件を調整することにより、細孔容積・比率調整が可能となる。また、シリカゲルでは、通常の球状シリカゲルをリン酸に含浸し、高温下で加熱処理することにより、細孔容積・比率調整が可能である。更に細孔容積が測定された吸着剤を2種類以上組み合わせることで、最適な容積・比率は自由に選択でき、使用することができる。
【0026】
本願発明における吸着剤の使用量は、質量基準で茶葉重量に対し(吸着剤/茶葉比)0.01〜1、好ましくは0.05〜0.6、より好ましくは0.1〜0.5、特に好ましくは0.2〜0.4の比率で用いると、効率的なヘスペリジンの臭気除去及び滋味成分の残存が可能となる。
【0027】
また、吸着剤は、使用前に前処理を行うことが好ましい。前処理を実施することにより、吸着処理を最適条件下で実施することが可能となる。前処理は以下の工程を含む。まず、吸着剤を予め水で十分に膨潤させてスラリー状にした後使用する。乾燥した状態では内部に空気が残存することになり、吸着効率が低下してしまうからである。カラム使用時は、カラム内に吸着剤を充填後、カラム内に水を流すことにより、活性炭表面の微粉等を洗浄でき、カラム内に残存する空気を抜くことができる。
【0028】
(滋味調整工程)
本発明の滋味調整工程とは、上記pH調整工程、加熱工程及び吸着濾過工程を組み合わせた一連の工程であって、ヘスペリジン水溶液の臭気を除去し、茶飲料組成物に適した滋味成分のみを残存させる工程である。滋味調整工程は、pH調整工程、加熱工程、吸着濾過工程の順序で行われることが重要であるが、各工程の処理の回数は特に限定されず、例えば各工程を2回ずつ実施しても良いし、吸着濾過工程のみ2回実施しても良い。本発明のヘスペリジン水溶液の滋味調整効果を得るためには、最低でも上記の順序で各工程を1回ずつ実施することが好ましい。
更に、前記滋味調整工程を経たヘスペリジン水溶液を、飲料液及び/又は茶抽出濃縮液等に混合することでヘスペリジンの臭気が除去され、繊細な香味を有する茶飲料組成物に適した滋味成分を向上させた茶飲料組成物とすることができる。また、茶飲料液に混合するタイミングとしては特に限定されず、例えば、茶飲料液の抽出工程、濾過工程、調合工程等が挙げられる。本発明においては、生産性、成分調整の容易さの観点から調合工程での混合が好ましい。
【0029】
(滋味成分)
本発明における滋味成分とは、下記分析方法によって、分析・測定されるヘスペリジンに含有されるビニルグアヤコール及び/又はアニスアルデヒドである。また、本発明の滋味調整工程においては、ヘスペリジン特有の薬品臭であるビニルグアヤコールを除去又は低減し、鮮度感を感じる芳香であるアニスアルデヒドを残存させることによって、繊細な香味を有する茶飲料組成物にも最適な滋味及び鮮度香を有するヘスペリジン水溶液とすることができる。更に本発明の滋味調整工程後のヘスペリジン水溶液における滋味成分のアニスアルデヒドに対するビニルグアヤコールの比率(ビニルグアヤコール/アニスアルデヒド)が0.1〜30.0に調整されることが好ましい。この範囲とすることで、ヘスペリジン水溶液の臭気を感じにくく、且つ繊細な香味を有する茶飲料組成物において良好な滋味を得ることができ、香味の厚みが向上する。かかる観点から、好ましくは0.2〜20.0であり、より好ましくは0.3〜10.0であり、特に好ましくは0.5〜5.0であり、最も好ましくは0.7〜2.0である。
【0030】
また、ヘスペリジン由来の滋味成分であるビニルグアヤコール及びアニスアルデヒドはGC/MS法によって測定することができ、加熱脱着装置にはゲステル社TDU、CIS−4を、GC/MSはアジレントテクノロジー社5975Cを用いて行った。詳細としては、サンプル100μLを入れた10mLのヘッドスペースバイヤルを80℃で加温し、100mL/minの窒素気流下で30分間、香気成分をTenaxTAに捕集した。捕集した香気成分は以下の条件で加熱脱着し、GC/MSにて分析を行った。

脱着温度:30℃−720℃/min−280℃(4min)
注入温度:20℃−12℃/sec−280℃
カラム:DB−WAX 30m×0.25μm×0.25nm
キャリアーガス:ヘリウム1.5mL/min
オーブン温度:40℃−10℃/min−240℃(4min)
検出:EIモード、MSイオン源:230℃、四重極:150℃

また、本発明におけるビニルグアヤコール及びアニスアルデヒドは質量m/z135を用いて算出し、以下の数式で算出される保持指標(リテンションインデックス;RI)、すなわち対象とする成分の保持時間(Ts)の前後に溶出する2種のn−パラフィンの保持時間(Tn、Tn+1)との相対値において、RI2025付近の成分をアニスアルデヒド、RI2225付近の成分をビニルグアヤコールとした。
RI=((Ts)−(Tn))/((Tn+1)−(Tn))×100+100n

Ts:対象成分の保持時間、Tn、Tn+1:n−パラフィンの保持時間、n:炭素数
【0031】
(総滋味成分)
本発明における総滋味成分とは、滋味成分が調整されたヘスペリジンに加え、カフェイン及びガレート型カテキン類、又はミネラル類であり、90〜7000ppmに調整される。滋味成分が調整されたヘスペリジンに加え、茶由来の滋味成分も調整することで、ヘスペリジン水溶液の臭気を感じにくく、且つ繊細な香味を有する茶飲料組成物において良好な滋味を得ることができ、爽快味や濃度感(コク)が向上する。かかる観点から、好ましくは100〜6000ppmであり、より好ましくは150〜5500ppmであり、特に好ましくは170〜4000ppmであり、最も好ましくは200〜3500ppmである。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料である場合、前記総滋味成分の中でも特に、滋味成分が調整されたヘスペリジン、カフェイン及びガレート型カテキンの調整が効果的であり、100〜1800ppmに調整されることが好ましい。この範囲とすることで緑茶飲料においてヘスペリジン水溶液の臭気を感じにくく、且つ繊細な香味を有する緑茶飲料において良好な爽快味や濃度感(コク)を得ることができる。かかる観点から、より好ましくは400〜1600ppmであり、特に好ましくは500〜1350ppmであり、最も好ましくは700〜1200ppmである。また、茶飲料組成物がインスタント緑茶である場合、滋味成分が調整されたヘスペリジン、カフェイン及びガレート型カテキンからなる総滋味成分は900〜7000ppmに調整されることが好ましく、1400〜5500ppmがより好ましく、1900〜4000ppmが特に好ましく、2700〜3500ppmが最も好ましい。
また、茶飲料組成物が麦茶飲料である場合、前記総滋味成分の中でも特に滋味成分が調整されたヘスペリジン及びミネラル類の調整が滋味に効果的であり、90〜1200ppmに調整されることが好ましい。この範囲とすることで麦茶飲料においてヘスペリジン水溶液の臭気を感じにくく、且つ繊細な香味を有する麦茶飲料において良好な爽快味や濃度感(コク)を得ることができる。かかる観点から、より好ましくは150〜1000ppmであり、特に好ましくは170〜800ppmであり、最も好ましくは200〜600ppmである。また、茶飲料組成物がインスタント麦茶である場合、滋味成分が調整されたヘスペリジン及びミネラル類からなる総滋味成分は100〜2100ppmに調整されることが好ましく、400〜2000ppmがより好ましく、500〜1900ppmが特に好ましく、600〜1800ppmが最も好ましい。
【0032】
(糖類)
本発明における糖類とは単糖及び二糖の総量である。単糖は、一般式C(HO)で表される炭水化物であり、加水分解によりそれ以上簡単な糖にならないものであり、本発明でいう単糖は、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)を示すものである。また、二糖とは一般式C11(HO)11で表される炭水化物であり、加水分解により単糖を生じるものであり、スクロース(蔗糖)、セロビオース、マルトース(麦芽糖)である。本発明の茶飲料組成物における糖類の濃度は1〜1600ppmに調整される。飲料の糖類の濃度が1ppmを下回ると飲料における甘味と濃度感が弱くなり、がすっきりとした印象となってしまい好ましくなく、1600ppmを上回ると爽快感と不自然な甘味となり好ましくないからである。かかる観点から、2〜1400ppmであるのがより好ましく、3〜1000ppmであるのが特に好ましく、4〜900ppmであるのが最も好ましい。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料である場合、糖類の濃度は、100〜400ppmであるのが好ましい。この範囲とすることで緑茶飲料のほのかな甘味と濃度感が良好となり、滋味成分とのバランスも良好となるからである。かかる観点から、120〜300ppmであるのがより好ましく、150〜270ppmであるのが特に好ましく、180〜250ppmであるのが最も好ましい。また、茶飲料組成物がインスタント緑茶である場合、糖類の濃度は、300〜1600ppmであるのが好ましい。この範囲とすることで緑茶飲料のほのかな甘味と濃度感が良好となり、滋味成分とのバランスも良好となるからである。かかる観点から、350〜1400ppmであるのがより好ましく、380〜1000ppmであるのが特に好ましく、400〜900ppmであるのが最も好ましい。
更に、茶飲料組成物が麦茶飲料である場合、糖類の濃度は、1〜310ppm含有されることが好ましい。この範囲とすることで、麦茶飲料の甘味と濃度感が良好となり、滋味成分とのバランスも良好になるからである。かかる観点より、2〜240ppmであることがより好ましく、3〜100ppmであることが特に好ましく、4〜50ppmであることが最も好ましい。また、茶飲料組成物がインスタント麦茶である場合、糖類の濃度は、100〜600ppm含有されることが好ましい。この範囲とすることで、麦茶飲料の甘味と濃度感が良好となり、滋味成分とのバランスも良好になるからである。かかる観点より、200〜500ppmであることがより好ましく、220〜400ppmであることが特に好ましく、250〜350ppmであることが最も好ましい。
なお、糖類は当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えばHPLC糖分析装置によって測定することができる。
【0033】
更に、本発明の茶飲料組成物の単糖の濃度は、1.0〜400ppmであるのが好ましく、飲料の単糖の濃度が1.0ppmを下回ると飲料におけるほのかな甘味が不足してしまう点で好ましくなく、400ppmを上回ると不自然な甘味となってしまう点で好ましくないからである。かかる観点から、1.5〜300ppmであるのがより好ましく、2.0〜280ppmであるのが特に好ましく、3.0〜200ppmであるのが最も好ましい。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料である場合、単糖の濃度は1.0〜100ppm含有されることが好ましく、この範囲とすることで、緑茶飲料におけるほのかな甘味と飲みやすさが良好となる。かかる観点から、1.5〜80ppmであることがより好ましく、2.0〜60ppmであることが特に好ましく、2.0〜30ppmであることが最も好ましい。また、茶飲料組成物がインスタント緑茶である場合、単糖の濃度は100〜300ppm含有されることが好ましく、120〜280ppmであることがより好ましく、150〜250ppmであることが特に好ましく、100〜200ppmであることが最も好ましい。
更に、茶飲料組成物が麦茶飲料である場合、単糖の濃度は1.0〜70ppm含有されることが好ましく、この範囲とすることで、麦茶飲料における甘味が良好となるからである。かかる観点から、1.5〜60ppmであることがより好ましく、2.0〜30ppmであることが特に好ましく、3.0〜10ppmであることが最も好ましい。
また、茶飲料組成物がインスタント麦茶である場合、単糖の濃度は50〜200ppm含有されることが好ましく、この範囲とすることで、麦茶飲料における甘味が良好となるからである。かかる観点から、60〜160ppmであることがより好ましく、65〜150ppmであることが特に好ましく、70〜130ppmであることが最も好ましい。
【0034】
更に、本発明の茶飲料組成物の二糖の濃度は、0.5〜800ppmであることが望ましい。飲料の二糖の濃度が0.5ppmを下回ると茶飲料組成物における濃度感が不足してしまい800ppmを上回ると飲料における爽快味が不足してしまう。かかる観点から、0.6〜350ppmが好ましく、0.8〜750ppmがより好ましく、1.0〜700ppmが特に好ましく、1.2〜650ppmが最も好ましい。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料である場合、二糖の濃度は50〜400ppm含有されることが好ましい。この範囲とすることで、緑茶飲料における濃度感や爽快感が良好となる。かかる観点から、100〜350ppmであることがより好ましく、120〜300ppmであることが特に好ましく、150〜270ppmであることが最も好ましい。また、茶飲料組成物がインスタント緑茶である場合、二糖の濃度は200〜800ppm含有されることが好ましい。この範囲とすることで、緑茶飲料における濃度感や爽快感が良好となる。かかる観点から、250〜750ppmであることがより好ましく、280〜700ppmであることが特に好ましく、300〜650ppmであることが最も好ましい。
更に、茶飲料組成物が麦茶飲料である場合、二糖の濃度は0.5〜240ppm含有されることが好ましい。この範囲とすることで、麦茶飲料における濃度感が良好となるからである。かかる観点から、0.8〜180ppmであることがより好ましく、1.0〜80ppmであることが特に好ましく、1.2〜20ppmであることが最も好ましい。
また、茶飲料組成物がインスタント麦茶である場合、二糖の濃度は100〜400ppm含有されることが好ましい。この範囲とすることで、麦茶飲料における濃度感が良好となるからである。かかる観点から、150〜330ppmであることがより好ましく、160〜310ppmであることが特に好ましく、180〜240ppmであることが最も好ましい。
【0035】
(糖類の濃度調整方法)
糖類濃度や糖類比率を前記範囲に調整するには、例えば特許第4843118号が記載するように、茶葉の乾燥(火入れ)加工や抽出を適宜条件にして調整することができる。例えば、茶葉の乾燥(火入れ)加工を強くすると糖類は分解されて減少し、また、高温で長時間抽出すると糖類は分解されて減少する。しかるに、茶葉の乾燥(火入れ)条件と、抽出条件により、糖類濃度や糖類比率を調整することができる。
この際、糖類を添加して調整することも可能であるが、緑茶飲料本来の香味バランスが崩れるおそれがあるため、糖を添加することなく、例えば茶抽出液を得るための条件を調整したり、複数の異なる茶抽出液の混合割合を調整したり、茶抽出物や茶精製物を添加することにより調整するなどの方法が好ましい。
【0036】
(甘味アミノ酸)
本発明における甘味アミノ酸はアラニン、セリン、グルタミン、テアニンの総量であって、0〜650ppmに調整されることが望ましい。650ppmを上回ると厚みが強くなりすぎ、後味がすっきりとせず、口に残ってしまう。かかる観点から、0〜250ppmが好ましく、0〜200ppmがより好ましく、0〜100ppmが特に好ましく、0〜80ppmが最も好ましい。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料又はインスタント緑茶である場合、緑茶の甘味や旨みを感じ、良好な厚みとなることから5〜650ppmに調整されることが好ましく、10〜200ppmがより好ましく、15〜100ppmが特に好ましく、20〜80ppmが最も好ましい。
また、茶飲料組成物が麦茶飲料又はインスタント麦茶である場合、0〜100ppmに調整しても良く、0〜50ppmであるとより好ましい。
なお、各アミノ酸量の測定は、当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えばAllianceシステム(Waters株式会社製)を用いて、HPLC法(蛍光検出)に基づいて各種アミノ酸の含有量を求めることができる。
【0037】
(デンプン)
本発明におけるデンプンは、一般式C6(H2O)6で表される炭水化物であって、デンプンの濃度は、0〜3000ppmであるのが好ましく、3000ppmを上回ると後味が重たくなり好ましくない。かかる観点から、0〜2800ppmであるのがより好ましく、0〜2600ppmであるのが特に好ましく、0〜2400ppmであるのが最も好ましい。
特に、茶飲料組成物が麦茶飲料又はインスタント麦茶である場合、デンプンの濃度は、厚み及び滋味成分とのバランスのため、300〜3000ppmであることが好ましく、700〜2800ppmであることがより好ましく、1000〜2600ppmであることが特に好ましく、1400〜2400ppmであることが最も好ましい。
また、茶飲料組成物が麦茶飲料又はインスタント麦茶である場合、0〜100ppmに調整しても良く、0〜50ppmであるとより好ましい。
なお、デンプン量は当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、ヨウ素比色法や市販のキット等が挙げられる。
【0038】
(呈味成分)
本発明における呈味成分は糖類及び甘味アミノ酸、もしくは糖類及びデンプンであって、100〜3000ppmに調整される。100ppmを下回ると飲料における味わいが弱くなり、薄い印象となってしまい、また滋味成分とのバランスも悪くなってしまう。3000ppmを上回ると濃度感が不自然に強くなり、繊細な味わいを損なってしまい、滋味成分とのバランスも悪くなってしまう。かかる観点から、好ましくは120〜2900ppmであり、より好ましくは350〜2800ppmであり、特に好ましくは400〜2450ppmであり、最も好ましくは500〜2700ppmである。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料である場合、前記呈味成分の中でも特に糖類及び甘味アミノ酸の調整が呈味において効果的であり、100〜950ppmに調整されることが好ましい。この範囲とすることで緑茶飲料における香りと濃度感が良好となり、滋味成分とのバランスも良好となる。かかる観点から、より好ましくは120〜400ppmであり、特に好ましくは140〜380ppmであり、最も好ましくは150〜350ppmである。また、茶飲料組成物がインスタント緑茶である場合、前記呈味成分の中でも特に糖類及び甘味アミノ酸の調整が呈味において効果的であり、350〜1600ppmに調整されることが好ましく、より好ましくは400〜1400ppmであり、特に好ましくは450〜1000ppmであり、最も好ましくは500〜850ppmである。
また、茶飲料組成物が麦茶飲料である場合、前記呈味成分の群の中でも特に糖類及びデンプンの調整が呈味に効果的であり、300〜2900ppmに調整されることが好ましい。この範囲とすることで麦茶飲料における甘味と濃度感が良好となり、滋味成分とのバランスも良好となる。かかる観点から、より好ましくは700〜2700ppmであり、特に好ましくは1000〜2500ppmであり、最も好ましくは1400〜2400ppmである。
更に、茶飲料組成物が麦茶飲料又はインスタント麦茶である場合、前記呈味成分の群の中でも特に糖類及びデンプンの調整が呈味に効果的であり、500〜3000ppmに調整されることが好ましい。この範囲とすることで麦茶飲料における甘味と濃度感が良好となり、滋味成分とのバランスも良好となる。かかる観点から、より好ましくは1000〜2900ppmであり、特に好ましくは1400〜2800ppmであり、最も好ましくは1700〜2700ppmである。
【0039】
(カテキン類)
本発明におけるカテキン類とは、非エピ体カテキン類であるカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート、並びにエピ体カテキン類であるエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートをあわせた8種の総量である。
本発明の茶飲料組成物におけるカテキン類の濃度は、0〜800ppmに調整される。800ppmを上回るとカテキン由来の渋味が強くなり、更には、滋味成分も過剰となり日常的に所定量の飲用が困難となってしまう。かかる観点から、好ましくは0〜490pmであり、より好ましくは0〜400ppmであり、特に好ましくは0〜350ppmあり、最も好ましくは0〜300ppmである。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料又はインスタント緑茶である場合、カテキン類の濃度は、50〜700ppmに調整されると良い。この範囲とすることで緑茶飲料において、より効果的に渋味と呈味及び滋味からなる香味のバランスが良好となる。かかる観点から、より好ましくは80〜450ppmであり、特に好ましくは100〜400ppmであり、最も好ましくは150〜300ppmである。
また、茶飲料組成物が麦茶飲料又はインスタント麦茶である場合、カテキン類の濃度が100ppm未満であることが好ましく、実質含有しないことがより好ましい。
なお、カテキン類の濃度を前記範囲に調整するには、茶葉の抽出工程によって調整したり、カテキン類を含有しない原料又は少ない原料を混合したり、茶葉を熱湯に浸漬させたりして茶葉中のカテキンを溶出させ、その茶葉を用いて茶抽出液を作製し、これら茶抽出液どうしを混合して調整すればよい。また、カテキン類を高濃度に含む茶抽出物を添加したり、抽出液に活性炭や白土等の吸着剤を作用させてカテキン類を吸着除去してもよい。なお、カテキン類濃度は当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフ法)を用いた分析方法が挙げられる。
【0040】
(ガレート型カテキン類)
更に、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなるガレート型カテキン類はカテキン類の中でも特に渋味を強く感じる成分であり、本発明の茶飲料組成物においては0〜500ppm含有することを特徴とする。この範囲とすることで、適度な渋味となり、飲料に滋味成分と共に含まれていても良好な香味となる。かかる観点から、好ましくは0〜350であり、より好ましくは0〜300ppmであり、特に好ましくは0〜250ppmであり、最も好ましくは0〜200ppmである。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料又はインスタント緑茶である場合、ガレート型カテキン類は、30〜600ppmに調整されると良い。この範囲とすることで渋味及び滋味のバランスが良好となるからである。かかる観点から、より好ましくは40〜500ppmであり、特に好ましくは50〜400ppmであり、最も好ましくは100〜300ppmである。
また、麦茶飲料及びインスタント麦茶には香味の観点から、ガレート型カテキン類の含有量は100ppm未満であることが好ましく、実質含有されないことがより好ましい。
【0041】
(ミネラル類)
本発明におけるミネラル類とは、マグネシウム、カルシウム及びカリウムの総量であり、30〜850ppmに調整されることが好ましい。30ppmを下回ると、後味の濃度感が弱くなり、薄い印象となってしまい、850ppmを上回ると後味の苦味が強く、繊細な香味を有する茶飲料組成物に適さない味となってしまうからである。かかる観点から、35〜650ppmがより好ましく、40〜200ppmが特に好ましく、45〜130ppmが最も好ましい。
特に、茶飲料組成物が麦茶飲料又はインスタント麦茶である場合、麦茶の後味の甘味を感じやすくするために30〜850ppmに調整されることが好ましく、35〜650ppmがより好ましく40〜200ppmが特に好ましく45〜120ppmが最も好ましい。
また、茶飲料組成物が緑茶飲料又はインスタント緑茶である場合、30〜250ppmに調整されることが好ましく、35〜200ppmがより好ましく、40〜150ppmが特に好ましく、45〜130ppmが最も好ましい。なお、ミネラル類は当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフ法)を用いた分析方法が挙げられる。
【0042】
また、本発明の茶飲料組成物においては、酒石酸法によるポリフェノールの含有量が0〜1000ppmであることが好ましく、0〜860ppmであることが特に好ましい。この範囲とすることで、後味のコクとキレが良好となるからである。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料又はインスタント緑茶である場合、ポリフェノール含有量が50〜900ppmであることが好ましく、100〜600ppmであることがより好ましく、150〜450ppmであることが特に好ましく。200から400ppmであることが最も好ましい。
また、麦茶飲料及びインスタント麦茶には香味の観点から、ポリフェノールの含有量は100ppm未満であることが好ましく、実質含有されないことがより好ましい。
なお、ポリフェノールは当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、タンニン酸を標準物質としたフォーリンデニス法が挙げられる。
【0043】
(カフェイン濃度)
本発明の茶飲料組成物におけるカフェイン濃度は、0〜300ppmに調整される。300ppmを上回るとカフェイン由来の苦味が強くなり、滋味成分が際立ち飲料に適さないものとなってしまう。かかる観点から、好ましくは0〜280ppm未満であり、より好ましくは0〜250ppm未満であり、特に好ましくは0〜200ppm未満あり、最も好ましくは0〜150ppm未満である。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料又はインスタント緑茶である場合、カフェイン濃度は10〜300ppmに調整されると良い。この範囲とすることで緑茶飲料において、苦味と呈味及び滋味からなる香味のバランスも良好となる。かかる観点から、より好ましくは20〜250ppmであり、特に好ましくは30〜200ppmであり、最も好ましくは40〜150ppmである。
また、麦茶飲料及びインスタント麦茶は香味の観点から、カフェイン濃度は100ppm未満であることが好ましく、実質含有されないことがより好ましい。
なお、カフェイン濃度を前記範囲に調整するには、カフェインを含有しない原料又は少ない原料を混合したり、茶葉に熱湯を吹き付けたり、茶葉を熱湯に浸漬させたりして茶葉中のカフェインを溶出させ、その茶葉を用いて茶抽出液を作製し、これら茶抽出液どうしを混合して調整すればよい。また、抽出液に活性炭や白土等の吸着剤を作用させてカフェインを吸着除去してもよい。なお、カフェイン濃度は当業者に公知の手法により算出及び/又は測定することができる。例えば、HPLC(高速液体クロマトグラフ法)を用いた分析方法が挙げられる。
【0044】
また、本発明におけるカフェイン濃度に対するカテキン濃度の比率(カテキン濃度/カフェイン濃度)は、0〜10.0に調整され、好ましくは0〜8.0であり、より好ましくは0〜6.0であり、特に好ましくは0〜5.0であり、最も好ましくは0〜4.0である。この範囲とすることで、飲料における渋味と苦味のバランスが良好となり、適度なキレのある渋味となり、舌に残る嫌な苦味を感じにくくなる。更に、呈味成分及び滋味成分とのバランスも良好となる。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料又はインスタント緑茶である場合、好ましくは0.1〜10.0であり、より好ましくは0.5〜8.0であり、特に好ましくは1.0〜6.0であり、最も好ましくは2.0〜4.5である。この範囲とすることで、緑茶飲料において、特に渋味と苦味のバランスが良好となり、適度なキレのある渋味となり、呈味成分及び滋味成分との香味バランスが良好となる。
また、茶飲料組成物が麦茶飲料又はインスタント麦茶である場合、好ましくは0〜1.0であり、より好ましくは0である。この範囲とすることで、麦茶飲料又はインスタント麦茶において渋味及び苦味を感じにくく、呈味成分及び滋味成分との香味バランスが良好となる。
【0045】
(総滋味成分/呈味成分)
本発明の呈味調整工程における呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)は0.03〜15.00に調整される。0.03を下回ると滋味と呈味のバランスが損なわれてしまい、十分な濃度感や香りを感じにくくなる。また、15.0を上回ると総滋味成分由来の濃度感が強くなり、香味とのバランスが損なわれてしまい、茶飲料組成物で求められている自然な香味が損なわれる。かかる観点から、呈味成分対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)は好ましくは0.05〜11.00であり、より好ましくは0.06〜9.00であり、特に好ましくは0.10〜8.50あり、最も好ましくは0.20〜7.00である。
特に、茶飲料組成物が緑茶飲料である場合、糖類及び甘味アミノ酸からなる呈味成分と、滋味成分が調整されたヘスペリジン、カフェイン及びガレート型カテキンからなる総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が0.70〜13.00に調整されることが好ましい。この範囲とすることで緑茶飲料において、より効果的にヘスペリジンの臭気のマスキング効果が得られ、呈味と滋味からなる濃度感と香りのバランスも良好となる。かかる観点から、より好ましくは1.20〜9.00であり、特に好ましくは1.40〜8.00であり、最も好ましくは1.50〜6.00である。
また、茶飲料組成物がインスタント緑茶である場合、糖類及び甘味アミノ酸からなる呈味成分と、滋味成分が調整されたヘスペリジン、カフェイン及びガレート型カテキンからなる総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が0.90〜15.00に調整されることが好ましい。この範囲とすることでインスタント緑茶において、より効果的にヘスペリジンの臭気のマスキング効果が得られ、呈味と滋味からなる濃度感と香りのバランスも良好となる。かかる観点から、より好ましくは1.00〜11.50であり、特に好ましくは1.50〜10.00であり、最も好ましくは2.00〜9.00である。
更に、茶飲料組成物が麦茶飲料である場合、糖類及びデンプンからなる呈味成分と、滋味成分が調整されたヘスペリジン及びミネラル類からなる総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が0.03〜4.00に調整されることが好ましい。この範囲とすることで麦茶飲料において、より効果的にヘスペリジンの臭気のマスキング効果が得られ、呈味と滋味からなる濃度感と香りのバランスも良好となる。かかる観点から、より好ましくは0.08〜2.00であり、特に好ましくは0.09〜1.40であり、最も好ましくは0.10〜0.50である。
また、茶飲料組成物がインスタント麦茶である場合、糖類及びデンプンからなる呈味成分と、滋味成分が調整されたヘスペリジン及びミネラル類からなる総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が0.03〜4.00に調整されることが好ましく、より好ましくは0.05〜3.00であり、特に好ましくは0.15〜2.00であり、最も好ましくは0.20〜1.00である。
【0046】
(原料茶葉)
本発明における茶飲料組成物の原料茶葉は、本発明の効果を損なわない限り、その種類を特に制限するものではない。
例えば、不発酵茶、いわゆる緑茶としては、蒸し茶、煎茶、玉露、抹茶、番茶、玉緑茶、釜炒り茶、中国緑茶などが挙げられ、半発酵茶、いわゆる烏龍茶としては、鉄観音、色種、水仙、黄金桂が挙げられ、発酵茶、いわゆる紅茶としては、ダージリン、ウバ、キーモン、アッサム、ニルギリ、ヌワラエリア、ディンブラ、インドネシア(ジャワ)、ケニアなどが挙げられる。また、穀物原料としては、大麦、加工麦、はと麦、玄米、発芽玄米、麦芽、そば及びトウモロコシなどが挙げられる。
なお、本実施形態係る原料茶葉は、2種類以上をブレンドしたものであっても良く、玄米等の穀物類、ジャスミン花、その他のハーブ等のフレーバー類を添加したものでもよい。
【0047】
(抽出工程)
茶葉の抽出は、例えば常法に従ってニーダー又はドリッパーと呼ばれる抽出装置を用いて、原料茶葉に対して5〜100倍量、10〜100℃の水で約1分〜90分間、必要に応じて1回〜複数回攪拌して、常圧か、または適宜加圧・負圧下で行う。適度な香味と、液色変化防止の観点から言えば、10〜100℃であり、好ましくは20〜99℃であり、さらに好ましくは25〜97℃、特に好ましくは30〜95℃の抽出温度で抽出を行うのが好ましい。但し、抽出方法及び抽出条件等を特に限定するものではなく、例えば加圧を行うこともできる。
抽出に用いる水は、市水、井水、純水、硬水、軟水、イオン交換水、天然水、脱気水等が挙げられるが、これらのうちイオン交換水又は脱気水を用いるのが好ましく、特に脱気水を用いるのが好ましい。脱気水を用いることで、乳含有容器詰飲料の常温又は加温による品質の劣化や色調変化をより効果的に抑制することができる。なお、脱気水を用いる場合、飲用に適した水の一部又は全てを脱気水とすることができる。また、その外にもアスコルビン酸含有水溶液及びpH調製水等を使用することができ、抽出用液にアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。
【0048】
(pH)
本発明における茶飲料組成物の製品pHは5.1〜7.8に調整される。pHが5.1を下回ると苦味や渋味が目立ってしまい、7.8を上回ると水っぽい印象となってしまうからである。かかる観点から、好ましくは5.5〜7.5であり、より好ましくは5.8〜7.2であり、特に好ましくは6.0〜7.1である。
また、茶飲料組成物が緑茶飲料またはインスタント緑茶である場合、好ましいpHは5.5〜7.0であり、より好ましいpHは5.7〜6.8であり、特に好ましいpHは6.0〜6.6である。
また、茶飲料組成物が麦茶飲料またはインスタント麦茶である場合、好ましいpHは6.0〜7.8であり、より好ましいpHは6.1〜7.5であり、特に好ましいpHは6.2〜7.2である。なお、pHを上記範囲に調整するには、例えば、アスコルビン酸やクエン酸、炭酸カリウムや重曹等のpH調整剤の添加量を調整すればよい。
【0049】
(各成分の測定方法)
前記した糖類、アミノ酸、カテキン類及びカフェインの濃度は、高速液体クロマトグラム(HPLC)などを用い、検量線法などによって測定することができる。
【0050】
(容器)
本発明の茶飲料組成物が容器詰飲料である場合、茶飲料組成物を充填する容器は、特に限定されるものではなく、例えばプラスチック製ボトル(所謂ペットボトル)、スチール、アルミなどの金属缶、ビン、紙容器などを用いることができ、特に、ペットボトルなどの透明容器等を好ましく用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、前記実施形態に基づき、本発明の実施例を説明するが、本願発明の技術的範囲を逸脱しない限りにおいて、適宜形態の変更を行うことができる。
【0052】
<試験例1>
下記の市販の各原料を使用し、試作品を作成した。
(ヘスペリジン水溶液)
ヘスペリジン製剤(林原社製)8.8gを表1の条件にてpHを調整した純水440mlにミキサーを用いて分散し、ヘスペリジン水溶液とした。その後、表1の条件にてヘスペリジン臭気除去工程を実施し、緑茶飲料液に各ヘスペリジン水溶液を添加した。なお、pHは堀場製作所F−52型・卓上pHメーターにて品温20度にて測定した。また、実施例8は加熱工程と濾過工程の順序を逆に行ったものである。
【0053】
(緑茶飲料)
茶葉(やぶきた種、静岡産一番茶、荒茶)を回転ドラム型火入機にて395℃6分間火入加工し、その茶葉50gを90℃の湯2000mlで5分間抽出した。抽出液を冷却し、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加した。なお、この緑茶飲料液を実施例1〜15及び比較例1の計16水準分抽出した。そして、表1に記載の各条件の臭気除去工程を実施したヘスペリジン水溶液をそれぞれ120ml添加し、8000mlにメスアップしてから、それぞれをUHT殺菌機(社製)で135.5℃、30秒ホールディングで殺菌し、プレート内で85℃に冷却してから透明プラスチック容器(PETボトル)に充填し、直ちに20℃まで冷却することにより、実施例1〜15及び比較例1の緑茶飲料を得た。
【0054】
(加熱工程)
ヘスペリジン水溶液を、加熱プレートを用いて表1の条件に加熱した。測定温度が表1の各条件に達した時点から加熱時間として時間を測定した。
【0055】
(濾過工程)
活性炭(クラレコールGW−H32/60、クラレケミカル社製)をヘスペリジン水溶液に17.6g添加し、5分間攪拌した後、目開き63μmのナイロンメッシュにて濾過し、水溶液のみを回収した。
【0056】
表1に従い調整、測定した実施例サンプル並びに比較例サンプルについて、以下のとおり官能評価を行った。
【0057】
<官能評価>
官能評価は5℃で1週間保管後のサンプルについて、8人のパネラーが以下の評価方法に基づいて実施し、最も多かった評価を採用した。なお、それぞれの官能評価における評価項目は以下の通りである。
残存する滋味成分:
◎:滋味と鮮度香が適度に感じられ、極めて良好
○:滋味と鮮度香が感じられ、良好
△:滋味と鮮度香がやや感じられるが、あまりよくない
×:滋味と鮮度香をあまり感じない、問題あり
ヘスペリジンの臭気:
◎:ヘスペリジン特有の薬品臭をあまり感じない、極めて良好
○:ヘスペリジン特有の薬品臭は少し感じるが、不快ではなく、良好
△:ヘスペリジン特有の薬品臭をやや感じる、あまりよくない
×:ヘスペリジン特有の薬品臭を感じる、問題あり
【0058】
【表1】
【0059】
加熱工程を含む臭気除去工程を実施した実施例1〜15は、ヘスペリジンの臭気が低減されており、滋味及び鮮度香を感じるものであった。また、70〜130℃で10秒〜20分間の加熱工程、pH4.0〜7.0のpH調整工程及び吸着濾過工程を実施した実施例1〜7はヘスペリジンの臭気がより低減されており、滋味成分の香味も良好であった。とりわけ、85〜95℃の加熱工程、pH5.5〜6.0のpH調整工程及び吸着濾過工程を実施した実施例1は、ヘスペリジンの臭気が特に低減され、且つ滋味を適度に感じるものであり、極めて良好であった。また、実施例10及び実施例12はヘスペリジンの臭気は特に低減されていたが、過剰な過熱温度又は過熱時間により、滋味及び鮮度香も抜けてしまい、弱い印象であった。
【0060】
<試験例2>
また、表2に示すとおりの割合にて混合した緑茶抽出液に、実施例1のヘスペリジン水溶液を添加し、緑茶調合液とし、実施例16〜24を得た。また、各実施例を下記方法により調整・測定した結果を合わせて表2に示す。なお、充填時のpHの調整は上述の通り、アスコルビン酸類又は重炭酸ナトリウムなどを添加することにより調整した。
【0061】
(緑茶原料A、緑茶抽出液A及び緑茶調合液A)
茶葉(やぶきた種、静岡県産一番茶深蒸し、荒茶)48gを90℃の湯1920mlで5分間抽出した。抽出液を冷却した後、吸着剤(シンワフーズケミカル(株)「ダイバガン」(ポリビニルポリピロリドン))16gを添加し3分間攪拌した後、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、緑茶抽出液Aを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を120ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Aを得た。
【0062】
(緑茶原料B、緑茶抽出液B及び緑茶調合液B)
茶葉(やぶきた種、鹿児島産秋冬番茶、荒茶)を回転ドラム型火入機にて395℃8分間火入加工し、その茶葉52gを95℃の湯2080mlで7分間抽出した。抽出液を冷却し、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、茶抽出物((株)伊藤園「テアフラン90S」(ガレート型を主体とするカテキン混合物)を4.8g添加し、緑茶抽出液Bを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を440ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Bを得た。
【0063】
(緑茶原料C、緑茶抽出液C及び緑茶調合液C)
茶葉(やぶきた種、静岡県産一番茶深蒸し、荒茶)48gを90℃の湯1920mlで5分間抽出した。抽出液を冷却し、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、テアニン製剤(太陽化学(株)「サンテアニン」)を6.0g添加し、緑茶抽出液Cを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を440ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Cを得た。
【0064】
(緑茶原料D、緑茶抽出液D及び緑茶調合液D)
茶葉(やぶきた種、鹿児島産秋冬番茶、荒茶)を回転ドラム型火入機にて395℃8分間火入加工し、その茶葉52gを95℃の湯2080mlで7分間抽出した。抽出液を冷却し、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、緑茶抽出液Dを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を880ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Dを得た。
【0065】
(緑茶原料E、緑茶抽出液E及び緑茶調合液E)
茶葉(やぶきた種、静岡県産二番茶浅蒸し、荒茶)を回転ドラム型火入機にて180℃10分間火入加工し、その茶葉48gを30℃の湯1920mlで6分間抽出した。 抽出液を冷却し、遠心分離機(ウエストファリア社製SA1連続遠心分離機)を用いて流速480L/hr、回転数10000rpm、遠心沈降面積(Σ)1000mで処理し、ビタミンCを3.2g添加し、pHが6.3になるよう重曹を添加し、緑茶抽出液Eを得た。更に、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を440ml添加し、8000mlにメスアップして緑茶調合液Eを得た。
【0066】
前記緑茶調合液A〜Eを表2に記載の割合で混合し、得られた混合緑茶調合液をそれぞれUHT殺菌機(社製)で135.5℃、30秒ホールディングで殺菌し、プレート内で85℃に冷却してから透明プラスチック容器(PETボトル)に充填し、直ちに20℃まで冷却することにより、実施例16〜24の緑茶飲料を得た。
【0067】
本試験において測定する成分の分析方法は以下のとおりである。
【0068】
<Bx>
光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α−Bev)を用いて、糖度を測定した。
【0069】
<pH>
各実施例をサンプリングし、堀場製作所F−52型・卓上pHメーターにて品温20℃にて測定した。
【0070】
<ヘスペリジン>
HPLCを用い、検量線法よって定量して測定した。
【0071】
<カフェイン>
HPLCを用い、検量線法よって定量して測定した。
【0072】
<カテキン類>
HPLCを用い、検量線法よって定量して測定した。
【0073】
<アミノ酸>
サンプルを適量はかりとり、蒸留水に懸濁後、フィルター濾過し、Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて、HPLC法(蛍光検出)に基づいて各種アミノ酸の含有量を求めた。
【0074】
<糖類>
HPLC糖分析装置を用い、検量線法により定量して測定した。
【0075】
<官能評価>
官能評価は5℃で1週間保管後のサンプルについて、5℃又は25℃の飲用温度で8人のパネラーが以下の評価方法に基づいて実施し、最も多かった評価を採用した。なお、それぞれの官能評価における評価項目は以下の通りである。
含み香:
◎:口に含んだときの香りの広がりが強く、極めて良好
○:口に含んだときの香りの広がりがあり、良好
△:口に含んだときの香りの広がりを少し感じる、あまりよくない
×:口に含んだときの香りの広がりが弱く、問題あり
香りの余韻:
◎:香りの余韻が適度に感じられ、極めて良好
○:香りの余韻がやや感じられ、良好
△:香りの余韻が弱く、あまりよくない
×:香りの余韻をほとんど感じない、問題あり
爽快味:
◎:爽快味が適度に感じられ、極めて良好
○:爽快味がやや感じられ、良好
△:爽快味が弱く、あまりよくない
×:爽快味をほとんど感じない、問題あり
濃度感コク:
◎:全体的に濃度感及びコクが適度に感じられ、極めて良好
○:濃度感とコクがやや感じられ、良好
△:濃度感とコクをあまり感じない、あまりよくない
×:濃度感とコクをほとんど感じない、問題あり
【0076】
【表2】
【0077】
実施例1のヘスペリジン水溶液を添加した実施例16〜24の緑茶飲料は、ヘスペリジンの臭気が目立たず、滋味を感じるものであった。また、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が1.2〜9.0である実施例16〜20の緑茶飲料は5℃及び25℃での飲用において、ヘスペリジンの臭気をあまり感じず、滋味と呈味のバランスが良好であり、緑茶飲料全体の香味としても良好であった。とりわけ、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が2.0〜4.5である実施例16は、5℃及び25℃での飲用において最適な濃度感(コク)を有し、極めて良好な香味であり、冷えた状態でも常温の状態でも、良好な香味であった。
【0078】
<試験例3>
また、緑茶抽出液A〜Eにデキストリンを添加し、濃縮することでインスタント緑茶原液とし、このインスタント緑茶原料を表3に記載の割合で混合し、得られた混合インスタント緑茶原液をそれぞれ殺菌及び噴霧乾燥することでインスタント緑茶を作成した。また、インスタント緑茶を試験例2と同様の成分分析及び官能評価を実施した結果を表3に示す。なお、表3に記載の実施例25〜33のインスタント緑茶は各1.7gを150mlの熱湯に溶かした後、成分分析及び官能評価を行った。
【0079】
(インスタント緑茶原液A)
試験例2で得られた緑茶抽出液Aと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液470mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント緑茶用原液Aを得た。
【0080】
(インスタント緑茶原液B)
試験2で得られた緑茶抽出液Bと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液2230mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント緑茶用原液Bを得た。
【0081】
(インスタント緑茶原液C)
試験2で得られた緑茶抽出液Cと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液710mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント緑茶用原液Cを得た。
【0082】
(インスタント緑茶原液D)
試験2で得られた緑茶抽出液Dと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液2530mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント緑茶用原液Dを得た。
【0083】
(インスタント緑茶原液E)
試験2で得られた緑茶抽出液Eと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液1760mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント緑茶用原液Eを得た。
【0084】
前記インスタント緑茶原液A〜Eを表3に記載の割合で混合し、得られた混合インスタント緑茶原液に表3に記載の量のデキストリンを添加し、それぞれ95℃、10秒間加熱殺菌した後、90℃のチャンバー内で噴霧乾燥し、実施例25〜33のインスタント緑茶を得た。また、前記インスタント緑茶は1杯(150ml)当り1.7gを溶解することで、最適な飲用濃度となることから、成分分析及び官能評価は前記条件により溶解したインスタント緑茶溶解液で行った。なお、本試験例では混合インスタント緑茶原液を噴霧乾燥したが、それぞれのインスタント緑茶原液を噴霧乾燥した後、粉体混合してインスタント緑茶を作成しても構わない。
【0085】
【表3】
【0086】
実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を添加した実施例25〜33のインスタント緑茶は、ヘスペリジンの臭気が低減され、滋味を感じるものであった。また、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が1.0〜10.0である実施例25〜29のインスタント緑茶は飲用において良好な香味を有していた。とりわけ、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が3.0〜6.0である実施例25は、最適な濃度感(コク)と爽快味を有し、極めて良好な香味であった。
【0087】
<試験例4>
また、実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を表4に示すとおりの割合にて混合した麦茶抽出液に添加し、実施例34〜42を得た。また、各実施例を下記方法により測定した結果を合わせて表2に示す。なお、充填時のpHの調整は上述の通り、アスコルビン酸類又は重炭酸ナトリウムなどを添加することにより調整した。
【0088】
(麦茶原料A、麦茶抽出液A及び麦茶調合液A)
六条大麦500gを排気温度230℃にて小型熱風焙煎機に投入し、5分後品温205℃にて排出し、麦茶原料Aを製造した。この麦のL値は43.5であった。麦茶原料A200gを97℃の湯4000mlで60分間抽出した。得られた抽出原液をステンレスメッシュ(20メッシュ、80メッシュ、235メッシュ)で濾過し、25℃に冷却した後、ビタミンCを2.4g添加し、pHが6.6になるよう重曹を添加し、麦芽エキス(オリエンタル酵母工業(株)「モルトエースO」)を2.4g添加し、麦茶抽出液Aを得た。更に、上記麦茶抽出液Aと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液6mlを混合し、8000mlにメスアップし麦茶調合液Aを得た。
【0089】
(麦茶原料B及び麦茶抽出液B及び麦茶調合液B)
六条大麦500gを排気温度230℃にて小型熱風焙煎機に投入し、7分後品温230℃にて排出し、麦茶原料Bを製造した。この麦のL値は31.5であった。麦茶原料B200gを97℃の湯4000mlで20分間抽出した。得られた抽出原液をステンレスメッシュ(20メッシュ、80メッシュ、235メッシュ)で濾過し、25℃に冷却した後、ビタミンCを13.5g添加し、炭酸カリウムを10.4g添加し、pHが6.6になるよう重曹を添加し、麦茶抽出液Bを得た。更に、上記麦茶抽出液Bと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液220mlを混合し、8000mlにメスアップし麦茶調合液Bを得た。
【0090】
(麦茶原料C及び麦茶抽出液C及び麦茶調合液C)
六条大麦500gを排気温度230℃にて小型熱風焙煎機に投入し、5分後品温205℃にて排出し、麦茶原料Cを製造した。この麦のL値は43.5であった。麦茶原料C200gを97℃の湯4000mlで60分間抽出した。得られた抽出原液をステンレスメッシュ(20メッシュ、80メッシュ、235メッシュ)で濾過し、25℃に冷却した後、ビタミンCを2.4g添加し、pHが6.6になるよう重曹を添加し、麦芽エキス(オリエンタル酵母工業(株)「モルトエースO」)を6g添加し、麦茶抽出液Cを得た。更に、上記麦茶抽出液Cと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液47mlを混合し、8000mlにメスアップし麦茶調合液Cを得た。
【0091】
(麦茶原料D及び麦茶抽出液D及び麦茶調合液D)
六条大麦500gを排気温度230℃にて小型熱風焙煎機に投入し、7分後品温230℃にて排出し、原料麦Bを製造した。この麦のL値は31.5であった。麦茶原料B200gを97℃の湯4000mlで20分間抽出した。得られた抽出原液をステンレスメッシュ(20メッシュ、80メッシュ、235メッシュ)で濾過し、25℃に冷却した後、ビタミンCを2.4g添加し、pHが6.6になるよう重曹を添加し、麦茶抽出液Dを得た。更に、上記麦茶抽出液Dと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液645mlを混合し、8000mlにメスアップし麦茶調合液Dを得た。
【0092】
(麦茶原料E及び麦茶抽出液E及び麦茶調合液E)
六条大麦500gを排気温度230℃にて小型熱風焙煎機に投入し、5分後品温205℃にて排出し、麦茶原料Eを製造した。この麦のL値は43.5であった。麦茶原料E200gを97℃の湯4000mlで60分間抽出した。得られた抽出原液をステンレスメッシュ(20メッシュ、80メッシュ、235メッシュ)で濾過し、25℃に冷却した後、ビタミンCを2.4g添加し、pHが6.6になるよう重曹を添加し、麦茶抽出液Eを得た。更に、上記麦茶抽出液Eと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液220mlを混合し、8000mlにメスアップし麦茶飲料Eを得た。
【0093】
前記麦茶調合液A〜Eを表4に記載の割合で混合し、得られた混合麦茶調合液をそれぞれUHT殺菌機(社製)で136.5℃、30秒ホールディングで殺菌し、プレート内で35℃に冷却してから透明プラスチック容器(PETボトル)に充填し、実施例34〜42の麦茶飲料を得た。
【0094】
本試験において測定する成分の分析方法は以下のとおりである。なお、前記試験例と共通の分析項目においては同様の方法で分析・測定を実施した。
【0095】
<デンプン量>
試料溶液10gに対し、エタノールを10g加え、遠心分離(8000g〜10000g、20分)処理を行い、上澄を廃棄した。残渣に再び蒸留水を適宜加え、3分間加熱糊化を行い、グルコアミラーゼ(「AMYLOGLUCOSIDASE、Megazyme」日本バイオコン株式会社製)を加えて37℃にて2時間保温後、20mLに定容し、濾紙(「ADVANTEC No.5B」東洋濾紙株式会社製)にて濾過した。この濾液について、市販のグルコース定量用キット(例えば、「グルコースCII−テストワコー」和光純薬株式会社製)を用いてグルコース量を求め、グルコース量から試料に含まれるデンプン量を算出した。
【0096】
<ミネラル類>
試料用液をサンプリングし、1%塩酸で抽出し、ろ過した。その濾液を定容し、原子吸光法により測定した。
【0097】
<官能評価>
官能評価は5℃で1週間保管後のサンプルについて、5℃又は25℃の飲用温度で8人のパネラーが以下の評価方法に基づいて実施し、最も多かった評価を採用した。なお、それぞれの官能評価における評価項目は以下の通りである。
鼻に抜ける香り:
◎:鼻に抜ける香りが強く、極めて良好
○:鼻に抜ける香りがあり、良好
△:鼻に抜ける香りが少し弱く、あまりよくない
×:鼻に抜ける香りが弱く、問題あり
後味に感じる香り:
◎:後味に感じる香りが適度に感じられ、極めて良好
○:後味に感じる香りがやや感じられ、良好
△:後味に感じる香りが弱く、あまりよくない
×:後味に感じる香りをほとんど感じない、問題あり
喉越し:
◎:喉越しが適度に感じられ、極めて良好
○:喉越しがやや感じられ、良好
△:喉越しが弱く、あまりよくない
×:喉越しをほとんど感じない、問題あり
甘味・苦味のバランス:
◎:適度な甘味と苦味のバランスを有し、極めて良好
○:甘味と苦味のバランスがややあり、良好
△:甘味か苦味のどちらかがやや弱く、あまりよくない
×:甘味か苦味のどちらかが弱く、問題あり
【0098】
【表4】
【0099】
実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液を添加した実施例34〜42の麦茶飲料は、ヘスペリジンの臭気が目立たず、滋味を感じるものであった。また、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が0.09〜1.40である実施例34〜42の麦茶飲料は5℃及び25℃での飲用において良好な香味を有していた。とりわけ、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が0.10〜0.50である実施例34は、5℃及び25℃での飲用において、適度な甘味・苦味のバランスを有し、極めて良好な香味であり、冷えた状態でも常温の状態でも、良好な香味であった。
【0100】
<試験例5>
また、麦茶抽出液A〜Eにデキストリンを添加し、濃縮することでインスタント麦茶原液とし、このインスタント麦茶原料を表5に記載の割合で混合し、得られた混合インスタント麦茶原液をそれぞれ殺菌及び噴霧乾燥することでインスタント麦茶を作成した。また、インスタント麦茶を試験例4と同様の成分分析及び官能評価を実施した結果を表5に示す。なお、表5に記載の実施例43〜51のインスタント麦茶は各1.7gを150mlの熱湯に溶かした後、成分分析及び官能評価を行った。
【0101】
(インスタント麦茶原液A)
試験例4で得られた麦茶抽出液Aと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液30mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント麦茶用原液Aを得た。
【0102】
(インスタント麦茶原液B)
試験例4で得られた麦茶抽出液Bと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液645mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント麦茶用原液Bを得た。
【0103】
(インスタント麦茶原液C)
試験例4で得られた麦茶抽出液Cと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液120mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント麦茶用原液Cを得た。
【0104】
(インスタント麦茶原液D)
試験例4で得られた麦茶抽出液Dと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液1180mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント麦茶用原液Dを得た。
【0105】
(インスタント麦茶原液E)
試験例4で得られた麦茶抽出液Eと実施例1に記載の条件で臭気除去工程を行ったヘスペリジン水溶液845mlを混合し、8000mlにメスアップしインスタント麦茶用原液Eを得た。
【0106】
前記インスタント麦茶原液A〜Eを表5に記載の割合で混合し、得られた混合インスタント麦茶原液に表5に記載の量のデキストリンを添加し、それぞれ115℃、50秒間加熱殺菌した後、90℃のチャンバー内で噴霧乾燥し、実施例43〜51のインスタント麦茶を得た。また、前記インスタント麦茶は1杯(150ml)当り1.7gを溶解することで、最適な飲用濃度となることから、成分分析及び官能評価は前記条件により溶解したインスタント麦茶溶解液で行った。なお、本試験例では混合インスタント麦茶原液を噴霧乾燥したが、それぞれのインスタント緑茶原液を噴霧乾燥した後、粉体混合して混合インスタント麦茶を作成しても構わない。
【0107】
<官能評価>
官能評価は5℃で1週間保管後のサンプルについて、5℃又は25℃の飲用温度で8人のパネラーが以下の評価方法に基づいて実施し、最も多かった評価を採用した。なお、それぞれの官能評価における評価項目は以下の通りである。
鼻に抜ける香り:
◎:鼻に抜ける香りが強く、極めて良好
○:鼻に抜ける香りがあり、良好
△:鼻に抜ける香りが少し弱く、あまりよくない
×:鼻に抜ける香りが弱く、問題あり
後味に感じる香り:
◎:後味に感じる香りが適度に感じられ、極めて良好
○:後味に感じる香りがやや感じられ、良好
△:後味に感じる香りが弱く、あまりよくない
×:後味に感じる香りをほとんど感じない、問題あり
喉越し:
◎:喉越しが適度に感じられ、極めて良好
○:喉越しがやや感じられ、良好
△:喉越しが弱く、あまりよくない
×:喉越しをほとんど感じない、問題あり
甘味・苦味のバランス:
◎:適度な甘味と苦味のバランスを有し、極めて良好
○:甘味と苦味のバランスがややあり、良好
△:甘味か苦味のどちらかがやや弱く、あまりよくない
×:甘味か苦味のどちらかが弱く、問題あり
【0108】
【表5】
【0109】
実施例43〜51のインスタント麦茶は、ヘスペリジンの臭気が目立たず、滋味を感じるものであった。また、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が0.15〜2.00である実施例43〜47のインスタント麦茶は良好な香味を有していた。とりわけ、呈味成分に対する総滋味成分の比率(総滋味成分/呈味成分)が0.20〜1.00である実施例43は、適度な甘味・苦味のバランスを有し、極めて良好な香味であった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、特に日常的に飲用されており、毎日所定量を摂取することが比較的容易な止渇性飲料において、ヘスペリジンの添加による臭気を抑制した茶飲料組成物の製造方法並びに茶飲料組成物の臭気除去方法に利用することができる。