(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
粉体製品を取り扱う上で、粒度をそろえると非常に高付加価値となる。
【0003】
例えば、パーライトの原料について説明する。パーライトは、真珠岩,黒曜石,松脂岩と呼ばれる流紋岩原料を加熱し発泡させたものであり、発泡により生じた空壁により軽量(低密度)であるという特徴を有する。
【0004】
このとき、非常に小さい粒径の原料が混じっていると、小粒径原料は加熱しても発砲しないおそれがある。未発泡粒子は空壁がなく高密度であり、未発泡粒子が混在していると、断熱材や軽量化材としてのパーライトの品質が低下する。したがって、非常に小さい粒径の原料を予め除去しておくことが好ましい。
【0005】
また、粒径の異なる原料が混在していると、製品であるパーライトの偏析がおこり,均一な品質が得られない。
【0006】
すなわち、原料の粒径を調整することで、高品質のパーライトを製造できる。
【0007】
この様な粉体の製造方法には、化学反応で目的とする粒度を反応条件でコントロールする方法の他、粒径の大きな対象物を粉砕して、目的とする粒度とする方法がある。
【0008】
粉砕すると広い粒度分布となり、粒径の揃った粉体を製造するのは非常に困難である。上記の例では、非常に小さい粒径の原料が混じる。
【0009】
粒度調整が必要な場合、粉砕後に分級する。
【0010】
一般的な分級では、機械式篩いによる分級、気流による分級、流動層による分級(特許文献1)がある。
【0011】
機械式篩いは、篩目を通過する粒子径に基づく分級をおこなうものである。微粉(100μm以下)の分級には,網に振動子を取り付けた超音波振動ふるいがある。
【0012】
ふるいにエアを通じさせるエアーシーブによる分級では、10μmの分級が可能である。
【0013】
気流による分級では、サイクロンやセパレータ等の装置を使用する。
【0014】
流動層による分級では、終末速度の差を利用して分級する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
篩いによる分級では、目詰まりの問題がある。超音波振動やエアにより改善されるものの、完全に解消できない。
【0017】
また、分級効率が悪く、実験室等での使用には適しているが、製品の大量生産には適していない。
【0018】
気流分級による分級では、装置が大がかりな割には分級量が少ない。また、高速回転させるローターが必要になるなど、装置が複雑で高価なとなる。
【0019】
流動層による分級では、粉体粒径が小さい(例えば5mm以下)、特に平均粒径50μmを下回るような粉体では流動化が困難となり、分級できない。
【0020】
本発明は上記課題を解決するものであり、簡便な装置により、効率よく、50μm以下の粒子を精度よく分級する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決する本発明は、粒径5mm以下の粒子を任意の境界粒径で分級する分級方法であって、分級容器下部から鉛直上方向への噴流化ガスを供給し、該分級容器内部に噴流層を形成し、前記分級容器上部から境界粒径以下の粒子を回収し、前記分級容器下部から境界粒径を超える粒子を回収する。
【0022】
流動層による分級では、粒径5mm以下、特に50μm以下の粒子を分級することができなかった。噴流層による分級では、粒径5mm以下、特に50μm以下の粒子を分級することができる。
【0023】
噴流層による分級では、目詰まり等の問題は生じず、篩試験装置に比べて、大量の処理ができ、分級効率がよい。また、気流分級の装置に比べ簡便である。
【0024】
本発明の分級方法では、好ましくは、前記分級容器側面に沿って下方向の噴流化補助ガスを供給し、噴流層の循環を補助する。
【0025】
更に好ましくは、上方向噴流化ガス供給量と下方向補助ガス供給量の割合は、8:2〜2:8の範囲である。
【0026】
これにより、効率よく噴流層を形成でき、その結果、分級精度が向上する。
【0027】
本発明の分級方法では、好ましくは、前記噴流の流速が、前記境界粒径の終末速度以上である。
【0028】
これにより、境界粒径以下の粒子と境界粒径超の粒子とに精度よく分級できる。なお、噴流の流速とは、噴流化ガス供給における流速である。噴流化補助ガスを供給する場合は、両者の合計による流速である。
【0029】
更に好ましくは、前記噴流の流速が、前記境界粒径の終末速度の2.0倍以下であり、より好ましくは、1.5倍以下である。
【0030】
これにより、歩留まりを維持できる。
【0031】
本発明の分級装置は、粒径5mm以下の粒子を任意の境界粒径で分級する装置であって、分級容器と、前記分級容器下部から鉛直上方向への噴流化ガスを供給する噴流化ガス供給手段と、前記分級容器上部から境界粒径以下の粒子を回収する第1回収手段と、前記分級容器下部から境界粒径を超える粒子を回収する第2回収手段とを備える。
【0032】
本発明の分級装置は、好ましくは、前記分級容器側面に沿って下方向の噴流化補助ガスを供給する噴流化補助ガス供給手段を更に備える。
【0033】
本発明の分級装置において、前記分級容器の下部は、下方から上方に広がるような錐状である。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、50μm以下の粒子を精度よく分級することができる。また、本発明の装置は簡便であり、かつ、効率よく分級できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〜構成〜
図1は本実施形態に係る分級装置の構成を示す図である。
【0037】
本実施形態に係る分級装置は、分級容器10と、噴流化ガス供給装置20と、粗粉回収装置(第2回収手段)30と、微粉回収装置(第1回収手段)40と、噴流化補助ガス供給装置50とを備えている。分級容器10には、噴流化ガス供給口12と、粗粉回収口13と、微粉回収口14と、噴流化補助ガス供給口15と、邪魔板16が設けられている。
【0038】
分級容器10の下部は、下方から上方に広がるような円錐状であり、これにより効率よく噴流層を形成する。さらに、胴部は円筒であり、上部は下方から上方に狭まるような円錐状である。
【0039】
噴流化ガス供給口12は分級容器10の下部に設けられ、噴流化ガス供給装置20と連続している。噴流化ガス供給口12には開閉バルブが設けられ、開閉バルブを開くと噴流化ガスが供給され、開閉バルブを閉じると噴流化ガスの供給は遮断される。噴流化ガス供給装置20は任意量の噴流化ガスを供給できるように制御される。
【0040】
粗粉回収口13は分級容器10の下部に設けられ、粗粉回収装置30と連続している。粗粉回収口13には開閉バルブが設けられ、開閉バルブを開くと粗粉が回収され、開閉バルブを閉じると粗粉回収は停止される。
【0041】
微粉回収口14は分級容器10の上部に設けられ、微粉回収装置40と連続している。微粉回収装置40は集塵機と開閉バルブを有する。
【0042】
噴流化補助ガス供給口15は、分級容器10の胴部側面に周方向均等に複数(例えば3〜6か所)設けられている。粗粉最大積載高さより若干高い位置であることが好ましい。噴流化補助ガス供給装置50と連続している。噴流化補助ガス供給装置50は任意量の噴流化補助ガスを供給できるように制御される。噴流化補助ガスは、噴流の循環を補助する。
【0043】
邪魔板16は、分級容器10の上部であって、微粉回収口14の手前に設けられる。これにより、境界粒径超の粒子が微粉として回収されるのを防止する。
【0044】
〜基本原理〜
密度一定の前提のもと、分級容器内では、粒径ごとに終末速度が求められる。終末速度とは、進行方向に加速する力と逆方向の抵抗力がつり合うときの速度である。粒子は噴流により加速するが、一度終末速度に達すると、その後は、速度は変化せず一定になる。
【0045】
境界粒径に対応する終末速度以上の流速の噴流層を分級容器内に形成すると、境界粒径以下の粒径の粒子は噴流の噴流部(後述)とともに上昇し、微粉回収口14から回収される。一方、境界粒径を超える粒径の粒子は噴流の循環部(後述)とともに下降し、粗粉回収口13から回収される。
【0046】
すなわち、噴流速度を制御することにより、境界粒径での分級ができる。噴流速度は噴流化ガス供給装置20および噴流化補助ガス供給装置50からの単位時間当たりのガス供給量により制御できる。
【0047】
〜噴流層と流動層の相違〜
図2に噴流層と流動層の概念図を示す。噴流層および流動層とも、容器下方からガス供給し、粒子を運動させる点では一致する。
【0048】
一方、流動層が粉体層全体に均一なガス吹込みを行って層内を攪拌するのに対し、噴流層は単孔からのジェット流でプラグフローを形成し粒子を循環させる。一般に、噴流層の上昇流の速度は、流動層の上昇流の速度に比べて、極めて大きい(例えば10倍)。
【0049】
すなわち、噴流層は、上昇流である噴流部と下降流である循環部とから構成される。分級容器10においては、噴流化ガス供給口12からのガス供給により噴流部が形成され、分級容器10側面に循環部が形成される。
【0050】
なお、噴流化ガス供給口12からのガス供給のみでも噴流層を形成できるが、噴流化補助ガス供給口15からのガス供給により、循環部を補助することで、より効率よく噴流層を形成できる。
【0051】
〜分級試験〜
直径400mm、高さ370mmの分級容器10を含む分級装置を製作し、境界粒径を15μmとして分級試験を行った。本原料は平均粒径48μmの真珠岩原料を使用した。本原料の15μm篩の通過分は14.3質量%である(15μm超は85.7質量%)。
【0052】
本装置において、境界粒径15μmの終末速度はおよそ0.08m/sである。流速0.08m/sの噴流を有する噴流部(たとえば、噴流化ガス供給口12出口周辺)を形成するためには、約600l/min相当のガスを供給する。
【0054】
実施例として、噴流化ガス供給口12から400l/minのガスを供給するケース(A1)、噴流化ガス供給口12から600l/minのガスを供給するケース(A2)、噴流化ガス供給口12から400l/minのガスを供給し、噴流化補助ガス供給口15から200l/minのガスを供給する(計600l/min)ケース(A3)、噴流化ガス供給口12から600l/minのガスを供給し、噴流化補助ガス供給口15から200l/minのガスを供給する(計800l/min)ケース(A4)、噴流化ガス供給口12から800l/minのガスを供給し、噴流化補助ガス供給口15から200l/minのガスを供給する(計1000l/min)ケース(A5)について、分級試験を行った。
【0055】
粗粉回収装置30には粗粉が回収され、微粉回収装置40には微粉が回収される。なお、噴流層を用いる分級では、系外への飛散および系内の堆積により回収不能分が発生する。粗粉として回収された質量および微粉として回収された質量の合計を全体回収率(a)として表示する。さらに、回収不能分を除いた、粗粉回収(b)と微粉回収(c)の割合を表示する。
【0056】
分級精度を確認するため、粗粉として回収された粒子(b)に対し、ふるい分け試験を行った。粒径15μm超(d)と粒径15μm以下(e)の割合を表示する。なお、真珠岩をパーライトの原料とする場合、粒径15μm以下の割合(e)が0%に近い程、高品質な半製品ということができる。参考として、分級前の全体質量に対する粒径15μm超(a*b*d)と粒径15μm以下(a*b*e)の割合を表示する。
【0057】
比較例として、下部に分散板を設置した直径400mm、高さ1000mmの円柱状の流動層分級装置による分級を実施した。下方から100l/minのガスを供給する(A6)。なお、流動層である比較例では、平均粒径48μmの本原料では、チャネリングをおこし、流動化しないため、分級できなかった。すなわち、本原料の15μm篩の通過分14.3質量%に対し、分級後の粒径15μm以下の割合(e)は13.8質量%であり、分級前と同レベルである。
【0059】
終末速度に相当する600l/min相当のガスを噴流化ガス供給口12から供給するケース(A2)を基準例とした。ケース(A2)と比較例(A6)を比較すると、分級後の粒径15μm以下の割合(e)が4.1質量%であり、3割程度(7割減)になり、分級効果を奏する。
【0060】
一方、流速が終末速度未満となる、噴流化ガス供給口12から400l/minのガスを供給するケース(A1)の分級後の粒径15μm以下の割合(e)は11.0質量%であり、基準例(A2)と比較すると、充分な分級効果は得られない。すなわち、充分な分級効果を得るためには、噴流の流速が境界粒径の終末速度以上であることが好ましい。ただし、比較例(A6)と比較すると、2割程度減となり、若干の分級効果は認められる。
【0061】
ケース(A3)では、噴流化ガス供給口12から400l/minのガスを供給し、噴流化補助ガス供給口15から200l/minのガスを供給する。合計のガス供給量は600l/minであり、基準例(A2)と同量である。分級後の粒径15μm以下の割合(e)は3.6質量%であり、基準例(A2)と比較すると、1割程度減となり、同レベル以上の分級効果が得られる。すなわち、流化補助ガス供給装置50より、分級容器10側面に沿って下方向の噴流化補助ガスを供給し、噴流層の循環を補助することが好ましい。基準例(A2)以上の分級効果が得られるケース(A3)を好適例とした。
【0062】
ケース(A4)では、噴流化ガス供給口12から600l/minのガスを供給し、噴流化補助ガス供給口15から200l/minのガスを供給する。合計のガス供給量は800l/minであり、噴流の流速は基準例(A2)(=終末速度)の1.3倍程度増加する。分級後の粒径15μm以下の割合(e)は0.8質量%であり、基準例(A2)と比較すると、2割程度(8割減)になる。精度は篩分け試験と比較しても遜色なく、格段の分級効果が得られる。基準例(A2)と比較して格段の分級効果が得られるケース(A4)を最適例とした。
【0063】
ケース(A5)では、噴流化ガス供給口12から800l/minのガスを供給し、噴流化補助ガス供給口15から200l/minのガスを供給する。合計のガス供給量は1000l/minであり、噴流の流速は基準例(A2)(=終末速度)の1.6倍程度増加する。分級後の粒径15μm以下の割合(e)は0.2質量%であり、基準例(A2)と比較すると、5分程度(9割5分減)になる。噴流の流速が増加する程、更なる分級効果が得られる。
【0064】
ただし、微粉回収割合(c)をみると21.6質量%であり、本原料の15μm篩の通過分14.3質量%を大きく上回っている。この事は、本来、粗粉として回収すべき、粒径15μm超の粒子も、微粉として回収していることを意味する。言い換えると、15μmを超える境界粒径に設定されている。
【0065】
また、全体回収率(a)を見ても、唯一9割を下回っている。この事は、強い噴流により、粒子が系外へ飛散した可能性を示唆している。
【0066】
それらの結果、本原料の15μm超の粒子は85.7質量%に対し、ケース(A5)での全体質量に対する粒径15μm超の割合(a*b*d)は69.2質量%である。歩留まりは8割程度であり、他のケース(A1〜4)と比較すると、著しく低く、工業生産として適当でない。
【0067】
したがって、噴流の流速が境界粒径の終末速度の1.5倍以下であることが好ましい。
【0068】
なお、分級容器10の高さを高くすれば、歩留まりは改善する。しかし、分級容器10が著しく高くなれば、本発明の特徴である装置の簡素性が失われるため、好ましくない。したがって、分級容器10を若干高くすることを考慮しても、噴流の流速が境界粒径の終末速度の2.0倍以下であることが好ましい。
【0069】
〜補助流に関する検討〜
上記、基準例(A2)と好適例(A3)の比較において、噴流層の循環補助により、分級効果が向上することについて説明した。さらに、噴流化ガス供給口12からのガス供給量と噴流化補助ガス供給口15からのガス供給量の割合について検討した。なお、好適例(A3)の場合は、2:1(400:200)である。
【0070】
噴流化補助ガス供給口15からのガス供給量が2割未満(噴流化ガス供給口12からのガス供給量の割合が8割以上)になると、循環補助の効果が得られなくなることを確認した。一方、噴流化補助ガス供給口15からのガス供給量が8割超(噴流化ガス供給口12からのガス供給量の割合が8割以下)になると、吹き抜け(チャネリング)が発生することを確認した。
【0071】
したがって、噴流化ガス供給口12からのガス供給量と噴流化補助ガス供給口15からのガス供給量の割合は、8:2〜2:8の範囲であることが好ましい。
【0072】
〜効果〜
流動層による分級では50μm以下の粒子を分級することができなかった。本発明の
噴流層によれば、50μm以下の粒子を分級することができる。さらに、分級精度は、篩分け試験と同レベルである。
【0073】
本発明の分級装置では目詰まり等の問題は生じない。さらに、篩試験装置に比べて、大量の処理ができる。すなわち、分級効率がよい。また、気流分級の装置に比べ簡便である。
【0074】
〜変形例〜
本発明は、上記実施形態に限定されず、発明の技術思想の範囲内において、他の構成でもよい。
【0075】
分級容器10では、バッチ式を想定しており、原料供給手段が明示されていない。連続式を想定する場合、噴流化ガス供給口12から噴流化ガスとともに原料を供給してもよい。別途、原料供給口を設けて、ベルトコンベアより連続的に供給してもよい。
【0076】
連続式とすることにより、分級効率が更によくなる。
【0077】
分級容器10の下部は、下方から上方に広がるような円錐状であるが、角錐状でもよい。若干、効果が落ちるおそれがあるが、筒状でもよい。
【0078】
上記基準例(A2)と好適例(A3)の比較において、噴流層の循環補助について説明したが、循環補助がなくとも、一定の分級効果は期待できる。すなわち、噴流化補助ガス供給装置50および噴流化補助ガス供給口15はなくともよい。
【0079】
上記分級試験の結果より、噴流の流速が境界粒径の終末速度の1.0〜2.0倍程度であることが好ましく、1.0〜1.5倍程度であることがさらに好ましいが、この範囲外でも一定の分級効果は期待できる。
【0080】
上記分級試験では、粒径15μm以下を除去し、粒径15μm超の真珠岩を回収し、パーライトの原料とする、つまり粗粉回収を説明したが、微粉回収の用途にも適用できる。