(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150401
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】歯垢観察器
(51)【国際特許分類】
A61B 1/24 20060101AFI20170612BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20170612BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20170612BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20170612BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
A61B1/24
A61B1/00 300D
G01N21/64 Z
A61B1/06 A
A61C19/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-217291(P2015-217291)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-86247(P2017-86247A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2015年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】510290131
【氏名又は名称】日商平野株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 野 昌 治
【審査官】
磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−505588(JP,A)
【文献】
特開2013−034569(JP,A)
【文献】
特開2005−069807(JP,A)
【文献】
特開2007−151782(JP,A)
【文献】
特開2007−167266(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0063998(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102028555(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
A61B 10/00
A61C 19/04
G01N 21/64
G02B 23/24−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の観察窓が設けられた箱型のハウジングと、
前記ハウジングの正面に設けられ、紫光を出す複数のLEDと、
前記LEDの前方側を覆い、380〜450nmの波長を通過させるバンドパスフィルタと、
前記ハウジングの観察窓にはめ込まれ、透過率の波形が、500nmの手前で透過率30%となるように立ち上げ、その後さらに上昇させて500nm以上の光を通過させるように立ち上げる2段階の立ち上がり部分を有するロングパスフィルタと、
前記ハウジングの上面に設けられ、前記LEDを点灯または滅灯させるオンオフスイッチと、
前記ハウジングの内部に設けられ、前記LEDに給電する電池と、
前記ハウジングの側面に設けられ、前記電池の充電を行なう充電口と、
が備えられることを特徴とする歯垢観察器。
【請求項2】
前記ハウジングの後面に拡大レンズが着脱可能に設けられることを特徴とする請求項1に記載の歯垢観察器。
【請求項3】
前記観察窓の歯の画像がカメラで撮像され、パソコンに送付されることを特徴とする請求項1に記載の歯垢観察器。
【請求項4】
前記電池には、充電装置に対する保護回路が設けられることを特徴とする請求項1に記載の歯垢観察器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯垢観察器に係り、より詳しくは、歯の表面に付着した歯垢を観察できるハンディータイプの歯垢観察器に関する。
【背景技術】
【0002】
歯垢はデンタルプラークとも呼ばれ、歯の表面に付着する白から黄白色の細菌の塊である。そして虫歯(う蝕)や歯周病を引き起こし、石灰化して歯石となる。歯の観察方法としてはQLF(Quantitative Light induced Fluorescence)法が知られる。紫光を歯に照射すると、脱灰のない正常な歯は、励起して黄緑色の光を出す。歯のエナメル質が溶け始めた脱灰部などは光の色が弱く黒っぽく見える。
【0003】
特許文献1には、小型で安全な家庭用の歯表面観察装置が示される。この装置は、LED(光源)、バンドパスフィルタ、透過フィルタ、カメラ、画像処理部、ディスプレイ等を備えており、家庭用としては大がかりなものである。そこで、カメラは携帯電話のカメラで代用し、画像処理部を備えない構成にすることが考えられる。また、PCに画像を送りつけて、PCで画像を解析したりすることが考えられる。LED光を受けて歯の表面から出る光は、歯垢であれば、オレンジ色〜赤色〜ピンク色に見える。虫歯であれば緑色〜茶色に見える。LEDやフィルタは、片手で持つ大きさにして、口をあけた状態で、外から歯を観察できる歯垢観察器が望まれる。しかも自分の歯が自分で観測できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−69807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、人体に有害な影響を与える可能性のある光を出さず、手に持つことができ、口をあけた状態で外から歯を観察できる歯垢観察器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による歯垢観察器は、矩形状の観察窓が設けられた箱型のハウジングと、前記ハウジングの正面に設けられ、紫光を出す複数のLEDと、前記LEDの前方側を覆い、380〜450nmの波長を通過させるバンドパスフィルタと、前記ハウジングの観察窓にはめ込まれ、
透過率の波形が、500nmの手前で透過率30%となるように立ち上げ、その後さらに上昇させて500nm以上の光を通過させるように立ち上げる2段階の立ち上がり部分を有するロングパスフィルタと、前記ハウジングの上面に設けられ、前記LEDを点灯または滅灯させるオンオフスイッチと、前記ハウジングの内部に設けられ、前記LEDに給電する電池と、前記ハウジングの側面に設けられ、前記電池の充電を行なう充電口と、が備
えられることを特徴とする。
【0008】
前記ハウジングの後面に拡大レンズが着脱可能に設けられることを特徴とする。
【0009】
前記観察窓の歯の画像がカメラで撮像され、パソコンに送付されることを特徴とする。
【0010】
前記電池には、充電装置に対する保護回路が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による歯垢観察器によれば、(1)紫光を出すLEDを使用し、LEDの380nmより短い波長の紫外光と、450nm以上の青色光が出ないようバンドパスフィルタを設けたので、照射光は、安全な380〜450nmの範囲内にある。(2)LED光が目などに向けられたとしても紫外光や青色光がバンドパスフィルタでカットされているので安全である。(3)電池内蔵の箱型のハウジングを採用し、矩形状の観察窓から歯を観察する形にしたので、手に持てる大きさにできる。(4)電池の充電口を設けたので電池の購入と電池交換の手間がない。(5)歯から出た光は、500nmより長い波長の光を透過させ、500nmより短い波長の光を遮断するロングパスフィルタを通して観察するので、紫外光や青色光が目に入ることがなく安全である。見えにくいとされる歯垢や口内細菌が出す代謝物質は、オレンジ色〜赤色〜ピンク色に見ることができる。なお、虫歯も緑色〜茶色に見ることができる。
【0012】
ロングパスフィルタの立ち上がり波形を2段階としたので、ロングパスフィルタ6を通過した後の光を観察する場合、光のホワイトバランスが改善され、鮮明に色が観察できる。
【0013】
拡大レンズを設けたので、小さな歯垢でも拡大して観察できる。
【0014】
観察窓の歯の画像をカメラで撮像し、パソコンに送付することができるので、例えば、歯のケアサービスを提供している歯科医に送り判定を仰ぐことができる。
【0015】
電池に保護回路を設けたので、充電の際に電池を過充電による破損から守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】本発明による歯垢観察器で歯を観察してもらう場合の説明図である。
【
図3】本発明による歯垢観察器で歯を自分で観察する場合の説明図である。
【
図6】バンドパスフィルタの波形を示すグラフである。
【
図7】ロングパスフィルタの波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明による歯垢観察器を詳しく説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明による歯垢観察器100の斜視図である。
図1は正面側から見た図である。歯垢観察器100は、中央に矩形状の観察窓4が設けられた箱型のハウジング5からなる。片手に持てる大きさで、寸法は、縦が約8cm、横が約17cm、厚さが約2cmである。なお、寸法はこれに限るものではない。ハウジング5の正面には、LEDの数はこれに限るものではないが5個のLED2が設けられる。LED2の波長は、中心波長が405nmで紫光を出すLEDである。波長の幅は、LEDの仕様にもよるが、380nmより短い波長や450nmより長い波長を含むことがある。5個のLED2は、ハウジング5の下部に設けたが、ハウジング5の上部にも設け、光量を増やして歯の観察を容易にしてもよい。LED2の前方側は、380〜450nmの波長を通過させるバンドパスフィルタ3で覆われている。これにより、照射光には、LED2の380nm以下の細胞に悪い影響を与える可能性のある紫外光、及び、目の網膜に悪い影響を与える可能性のある450〜480nmの青色光が含まれないようにできる。
【0019】
ハウジング5の観察窓4には、ロングパスフィルタ6が嵌め込んである。ロングパスフィルタ6は、500nmより長い波長の光を透過させ、500nmより短い波長の光を遮断する。500nmより短い波長の光を遮断するから、紫外光、それに紫や青の光をカットし、目に入らないようにできる。ハウジング5の上面には、LED2を点灯または滅灯させるオンオフスイッチ1が設けられる。ハウジング5の内部にはLED2に給電するバッテリーの電池14が設けられる。
【0020】
図2は、本発明による歯垢観察器100で歯を観察する場合の説明図である。この例は、子供の口内を母親が観察するような場合である。歯垢観察器100は、口11を開いた状態で歯を外から観察する。歯垢観察器100は、口11には挿入しないから衛生的である。歯垢8や虫歯8’は照射光に対して特性のある周波数を持った光を発する。この光を歯垢観察器100のロングパスフィルタ6を介して目16で観察する。歯垢8や口内細菌が出す代謝物質(酸など)はオレンジ色〜赤色〜ピンク色として観察できる。歯垢に対するケアを積極的に行なうことができる。虫歯8’の場合、緑色〜茶色として観察できる。なお、ハウジング5の側面には、電池14の充電を行なう充電口7が設けられる。給電ケーブルがないから、歯垢観察器100を手に持って口11の位置に合わせて自在に動かせる。
【0021】
図3は、本発明による歯垢観察器100で歯を自分で観察する場合の説明図である。歯垢観察器100のバンドパスフィルタ3を出た紫光である照射光は、歯垢8や虫歯8’にあたると励起され、特性のある周波数を持った光を発する。この光を歯垢観察器100のロングパスフィルタ6を介し、鏡18で反射させて、自分の目16で観察する。歯垢8や口内細菌が出す代謝物質はオレンジ色〜赤色〜ピンク色として観察できる。虫歯8’の場合、緑色〜茶色として観察できる。
【0022】
図4は、本発明による歯垢観察器100の回路図である。
図4の右側にはロングパスフィルタ6と目16を示す。LED2は5個が直列に接続され、電源制御素子13で電圧と電流が制御される。オンオフスイッチ1はオンでLED2が点灯し、オフでLED2が滅灯する。電池14は、充電口7に設けた充電端子12で充電できる。電池14は、リチウム電池とすることができる。
図4に示すように、電池14には、充電時、電池14が破損しないように保護回路19が設けられる。これによれば、過充電から電池14を守れる。LED2の光は、バンドパスフィルタ3を通過し歯垢8に照射される。歯垢8からの光は、500nmより長い波長を透過させるロングパスフィルタ6を介して目16に入る。500nmより短い波長の光は、ロングパスフィルタ6で遮断される。なお、ロングパスフィルタ6の後方には、拡大レンズ9が着脱可能に設けられる。
【0023】
図5は、拡大レンズ9の斜視図である。
図6に示すように、拡大レンズ9は、両側に固定棒17が設けられるので、
図2のフック10、10に係合させることができる。これにより、ロングパスフィルタ6の背面側に拡大レンズ9を着脱可能に装着できる。拡大レンズ9は、歯垢8や虫歯8’を拡大して観察できるので、歯垢や虫歯が小さくても観察しやすい。
【0024】
図6は、バンドパスフィルタ3の波形を示すグラフである。バンドパスフィルタ3は、380〜450nmの波長を通過させる。このため、LED2が紫外光例えば350nmを含むものであってもカットできる。同様に、例えば460nmの青色光もカットできる。
【0025】
図7は、ロングパスフィルタ6の波形を示すグラフである。(A)は、ロングパスフィルタ6は、矢印で示す約500nmより長い波長の光はすべて透過させ、矢印で示す波長より短い波長の光は遮断する。所定の波長より短い波長の光を遮断するから、紫外光、それに青色光をカットでき、目には入らないようにできる。歯垢8や口内細菌が出す代謝物質はオレンジ色〜赤色〜ピンク色で観察できる。また、虫歯8’の場合、緑色〜茶色で観察できる。(B)に示すように、波形の立ち上がりの部分に光を透過率約30%で通過させる段部を設け、2段階で立ちあげている。このようにすると、ロングパスフィルタ6を通過した後の光を観察する場合、光のホワイトバランスが改善され、鮮明に色が観察できる。
【0026】
近くに歯科医がなく、気軽に診察に行けない場合がある。そのような場合、歯垢観察器100のロングパスフィルタ6に見える画像を、携帯のカメラやハンディカメラなどで撮像し、歯のケアサービスを提供している歯科医にメールで送信し、判定を仰ぐことができる。最近では虫歯より歯垢に対する関心が高まっており、歯科医による対応が可能になる。パソコンに送ることで詳しく観察することもできる。もちろん初期の虫歯で判定が難しい場合も、同様に携帯電話のカメラで撮って、サービスを提供している最寄りの歯科医に送信し、判定を仰ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、小型で安全な家庭用の歯垢観察器として好適である。また、細胞に悪い影響を与える可能性のある紫外光及び目の網膜に悪い影響を与える可能性のある青色光を全く出さないので、家庭用としても歯科医用としても使用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 オンオフスイッチ
2 LED
3 バンドパスフィルタ
4 観察窓
5 ハウジング
6 ロングパスフィルタ
7 充電口
8 歯垢
8’ 虫歯
9 拡大レンズ
10 フック
11 口
12 充電端子
13 電源制御素子
14 電池
16 目
17 固定棒
18 鏡
19 保護回路
100 歯垢観察器