特許第6150404号(P6150404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ハウシス・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6150404-透明導電性フィルム 図000004
  • 特許6150404-透明導電性フィルム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150404
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/04 20060101AFI20170612BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20170612BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170612BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20170612BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20170612BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20170612BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20170612BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20170612BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20170612BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   C09D133/04
   C09D201/02
   C09D7/12
   H01B5/14 A
   G02B1/111
   G02B1/14
   G06F3/041 495
   G06F3/041 490
   B32B27/30 A
   B32B7/02 103
   B32B27/18 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-529650(P2015-529650)
(86)(22)【出願日】2013年1月8日
(65)【公表番号】特表2015-535859(P2015-535859A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】KR2013000116
(87)【国際公開番号】WO2014035018
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年12月24日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0097120
(32)【優先日】2012年9月3日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ジンキ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ウォンクク
(72)【発明者】
【氏名】リュウ・ムソン
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ジヨン
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−028872(JP,A)
【文献】 特開2013−241515(JP,A)
【文献】 特開2013−010864(JP,A)
【文献】 特開2012−184349(JP,A)
【文献】 特開2009−133880(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/138946(WO,A1)
【文献】 特開2003−080624(JP,A)
【文献】 特開2011−098563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00
C09D 101/00−201/10
H01B 5/00−5/16
G06F 3/033−3/039
B32B 1/00−43/00
G02B 1/10−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材、高屈折層、低屈折層及び導電層の積層構造であり、
前記高屈折層は、アクリレート樹脂、フルオレン誘導体樹脂及び金属酸化物粒子を含むコーティング用組成物で形成されており、
前記コーティング用組成物は、総固形分100重量部に対して、前記アクリレート樹脂13重量部〜20重量部、前記フルオレン誘導体樹脂18重量部〜31重量部及び前記金属酸化物粒子45重量部〜65重量部を含み、
前記金属酸化物粒子の平均粒子直径が1nm〜30nmであり、
前記高屈折層及び前記低屈折層の合算厚さは25nm〜250nmであり、
前記高屈折層の屈折率は1.6〜1.8である、透明導電性フィルム
【請求項2】
前記アクリレート樹脂または前記フルオレン誘導体樹脂は光硬化型樹脂である、請求項1に記載の透明導電性フィルム
【請求項3】
前記フルオレン誘導体樹脂は、フルオレン、フルオレノン、2―アセトアミドフルオレン、2―アセチルフルオレン、2―アセトアミノフルオレン、9―ブロモフルオレン、9―ブロモ―9―フェニルフルオレン、2,7―ジアミノフルオレン、2,7―ジ(アセトアミド)フルオレン、2,7―ジアセチルフルオレン、9,9―ビス[4―(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス(3、4―ジカルボキシフェニル)フルオレンアンハイドライド、9,9―ビス(3―メチル―4―ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9―ビス(4―ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9―ビス(4―アミノフェニル)フルオレン、9,9―ビス(4―ヒドロキシ―3―メチルフェニル)フルオレン、9,9―ビス[4―(2―アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス[4―(2―ヒドロキシ―3―アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス(4―ヒドロキシフェニル)フルオレン、2―プロペン酸、1,1’―[9H―フルオレン―9―イリデンビス[4,1―フェニレンオキシ(2―ヒドロキシ―3,1―プロパンチル)]]エステル及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つである、請求項1に記載の透明導電性フィルム
【請求項4】
前記金属酸化物粒子は、TiO2、ZrO2、Al23、SnO2、ITO(indium―tin oxide)、Sb25、Nb23、Y23、SiO2及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つである、請求項1に記載の透明導電性フィルム
【請求項5】
前記コーティング用組成物は、光開始剤をさらに含む、請求項1に記載の透明導電性フィルム
【請求項6】
総固形分100重量部に対して、前記光開始剤は1重量部〜15重量部含む、請求項に記載の透明導電性フィルム
【請求項7】
前記高屈折層の厚さは20nm〜150nmである、請求項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記低屈折層の厚さは5nm〜100nmである、請求項に記載の透明導電性フィルム。
【請求項9】
前記透明基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレンビニルアルコール(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つを含む単一または積層フィルムである、請求項に記載の透明伝導性フィルム。
【請求項10】
前記導電層は、ITO(Indium Tin Oxide)またはFTO(Fluorine―doped Tin Oxide)を含む、請求項に記載の透明伝導性フィルム。
【請求項11】
前記透明基材の一面または両面にハードコーティング層をさらに含む、請求項に記載の透明伝導性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルには、位置検出の方法に応じて光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などがある。抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性フィルムと、透明導電体層が付着したガラスとがスペーサーを介して対向・配置されており、透明導電性フィルムに電流を流し、透明導電体層が付いたガラスにおける電圧を計測する構造になっている。一方、静電容量方式のタッチパネルは、基材上に透明導電層を有することを基本的構成とし、可動部分がないことが特徴であり、高耐久性及び高透過率を有するので、車載用途などにおいて適用されている。
【0003】
前記タッチパネルに適用される透明導電性フィルムは、通常、透明なフィルム基材の一方面に、前記フィルム基材側からアンダーコート層及び導電層が順次形成されているが、日本特許公開公報第2003―197035号(特許文献1)では、基材フィルムと導電層との間にアンダーコーティング層が形成された透明導電性フィルムを開示している。
【0004】
しかし、前記アンダーコーティング層は、屈折率が異なる2つの層で構成されているものであって、基材フィルム側に厚さが600Åである高屈折率の酸化亜鉛―酸化スズ系の膜を配置し、導電層側に厚さが450Åである低屈折率の酸化ケイ素の膜を配置した構成を開示しているだけで、高屈折層の具体的なコーティング用組成物に対しては記載されていないので、高い屈折率の調節及び耐久性を同時に確保するための高屈折コーティング用組成物に対する研究が継続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003―197035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
参考となる発明の一具現例は、フルオレン誘導体樹脂を含むことによって、高い屈折率の確保が可能であると同時に、透明伝導性フィルムの物性維持が可能な高屈折コーティング用組成物を提供する。
【0007】
本発明の具現例は、光学特性の調節が容易であり、パターン視認性を減少させ、硬度などの物性が確保された透過率に優れた透明導電性フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一具現例において、透明基材、高屈折層、低屈折層及び導電層の積層構造であり、前記高屈折層は、アクリレート樹脂、フルオレン誘導体樹脂及び金属酸化物粒子を含むコーティング用組成物で形成されており、前記コーティング用組成物は、総固形分100重量部に対して、前記アクリレート樹脂13重量部〜20重量部、前記フルオレン誘導体樹脂18重量部〜31重量部及び前記金属酸化物粒子45重量部〜65重量部を含み、前記金属酸化物粒子の平均粒子直径が1nm〜30nmであり、前記高屈折層及び前記低屈折層の合算厚さは25nm〜250nmであり、前記高屈折層の屈折率は1.6〜1.8である、透明導電性フィルムを提供する。
【0009】
【0010】
前記フルオレン誘導体樹脂は、フルオレン、フルオレノン、2―アセトアミドフルオレン、2―アセチルフルオレン、2―アセトアミノフルオレン、9―ブロモフルオレン、9―ブロモ―9―フェニルフルオレン、2,7―ジアミノフルオレン、2,7―ジ(アセトアミド)フルオレン、2,7―ジアセチルフルオレン、9,9―ビス[4―(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)フルオレンアンハイドライド、9,9―ビス(3―メチル―4―ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9―ビス(4―ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9―ビス(4―アミノフェニル)フルオレン、9,9―ビス(4―ヒドロキシ―3―メチルフェニル)フルオレン、9,9―ビス[4―(2―アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス[4―(2―ヒドロキシ―3―アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス(4―ヒドロキシフェニル)フルオレン、2―プロペン酸、1,1’―[9H―フルオレン―9―イリデンビス[4,1―フェニレンオキシ(2―ヒドロキシ―3,1―プロパンチル)]]エステル及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つであってもよい。
【0011】
前記金属酸化物粒子は、TiO2、ZrO2、Al23、SnO2、ITO(indium―tin oxide)、Sb25、Nb23、Y23、SiO2及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つであってもよい。
【0012】
【0013】
前記高屈折層コーティング用組成物は、光開始剤をさらに含んでもよい。
【0014】
総固形分100重量部に対して、前記光開始剤は、約1重量部〜約15重量部含んでもよい。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
前記高屈折層の厚さは、約20nm〜約150nmであってもよい。
【0019】
前記低屈折層の厚さは、約5nm〜約100nmであってもよい。
【0020】
前記透明基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレンビニルアルコール(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つを含む単一または積層フィルムであってもよい。
【0021】
前記導電層は、ITO(Indium Tin Oxide)またはFTO(Fluorine―doped Tin Oxide)を含んでもよい。
【0022】
前記透明基材の一面または両面にハードコーティング層をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0023】
前記高屈折コーティング層組成物を含む高屈折層の屈折率範囲をより広げ、導電層が蒸着された透明導電性フィルムの光学特性の調節を容易にすることができる。
【0024】
また、前記透明導電性フィルムの鉛筆硬度、耐溶剤性などの物性及びガスバリア特性などを確保することができ、優れた透過率を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例に係る透明伝導性フィルムの断面を概略的に示した図である。
図2】本発明の他の一実施例に係る透明伝導性フィルムの断面を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の具現例を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は、後述する請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。
【0027】
本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似する構成要素に対しては同一の参照符号を付する。
【0028】
図面において、多くの層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。そして、図面において、説明の便宜上、一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。
【0029】
以下で、基材の「上部(または下部)」または基材の「上(または下)」に任意の構成が形成されることは、任意の構成が前記基材の上面(または下面)に接して形成されることを意味するだけでなく、前記基材と基材上に(または下に)形成された任意の構成との間に他の構成を含まないことに限定しない。
【0030】
(高屈折層コーティング用組成物)
本発明の一具現例において、アクリレート樹脂、フルオレン誘導体樹脂及び金属酸化物粒子を含む高屈折層コーティング用組成物を提供する。
【0031】
通常、高屈折層コーティング用組成物の製造時、屈折率の調節のために、ZrO2、TiO2などの金属酸化物ナノ粒子、屈折率が約1.49〜約1.53であるアクリル系モノマー及び紫外線硬化型反応性オリゴマーを使用していた。しかし、前記金属酸化物ナノ粒子の含量のみで高屈折層コーティング用組成物の屈折率を調節する場合、高屈折層コーティング用組成物の硬化率が減少することによって高屈折層の物性が低下し、高屈折層の物性を確保することに困難があった。
【0032】
そこで、前記高屈折層コーティング用組成物は、金属酸化物粒子と同時にフルオレン誘導体樹脂を含むことによって、金属酸化物粒子の含量を減少させるにもかかわらず、高屈折層コーティング用組成物の高い屈折率の確保と同時に、向上した物理的特性の確保が可能である。
【0033】
前記高屈折層コーティング用組成物は、アクリレート樹脂を含んでもよく、前記アクリレート樹脂は光硬化型であってもよい。また、前記高屈折層コーティング用組成物は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線によって硬化し、耐久性及び高温・高湿の外部環境に対する耐性を付与し、さらに、屈折率を調節する目的で使用されてもよい。
【0034】
このとき、前記アクリレートとして、アルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコール(メタ)アクリレート、カルボキシル基及び不飽和二重結合含有(メタ)アクリル系化合物、水酸基含有(メタ)アクリル系化合物、窒素含有(メタ)アクリル系化合物などを含んでもよい。また、前記アクリレートとして、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどのアクリル系オリゴマーを含んでもよい。
【0035】
具体的に、前記アクリレート樹脂は、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、トリメタノールプロパントリアクリレート、1,6―ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、テトラエチレングリコールアクリレート、ヘキサエチレングリコールアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、2―エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルジアクリレート、ビスフェノールAエポキシアクリレート、エチレンオキサイド付加ビスフェノールAジアクリレート、2―フェノキシエチルアクリレート及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つであってもよい。
【0036】
より具体的に、前記アクリレート樹脂は、高屈折層コーティング用組成物の総固形分100重量部に対して約1重量部〜約50重量部含んでもよい。前記アクリレート樹脂は、約1重量部未満で含む場合は、組成物の鉛筆硬度及び密着性が確保されないおそれがあり、約50重量部を超えて含む場合は、屈折率の向上が難しく、金属酸化物粒子の含量を調節することによって屈折率を高めるにもかかわらず、コーティング用組成物の物性確保が難しくなり得る。そのため、アクリレート樹脂を前記範囲に維持しながら含むことによって、屈折率を調節すると同時に、物性を確保できるという利点を容易に具現することができる。
【0037】
前記高屈折層コーティング用組成物は、フルオレン誘導体樹脂を含んでもよく、前記フルオレン誘導体樹脂は、光硬化型樹脂であってもよい。前記フルオレン誘導体樹脂は、芳香族炭化水素であるフルオレンを中心に誘導された化合物を含むものであって、有機物の低い屈折率を向上させ、耐熱性、基材接着性、無機物との相溶性を高めるために使用される。また、前記フルオレン誘導体樹脂は、分子構造的に高い密度の低い溶解性を解決し、金属酸化物粒子表面と化学的に結合できるようにヒドロキシグループを含んでもよい。
【0038】
具体的に、前記フルオレン誘導体樹脂は、フルオレン、フルオレノン、2―アセトアミドフルオレン、2―アセチルフルオレン、2―アセトアミノフルオレン、9―ブロモフルオレン、9―ブロモ―9―フェニルフルオレン、2,7―ジアミノ―フルオレン、2,7―ジ(アセトアミド)フルオレン、2,7―ジアセチルフルオレン、9,9―ビス[4―(2―ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)フルオレンアンハイドライド、9,9―ビス(3―メチル―4―ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9―ビス(4―ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9―ビス(4―アミノフェニル)フルオレン、9,9―ビス(4―ヒドロキシ―3―メチルフェニル)フルオレン、9,9―ビス[4―(2―アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス[4―(2―ヒドロキシ―3―アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9―ビス(4―ヒドロキシフェニル)フルオレン、2―プロペン酸、1,1’―[9H―フルオレン―9―イリデンビス[4,1―フェニレンオキシ(2―ヒドロキシ―3,1―プロパンチル)]]エステル及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つであってもよい。
【0039】
より具体的に、前記フルオレン誘導体樹脂は、高屈折層コーティング用組成物の総固形分100重量部に対して約1重量部〜約50重量部含んでもよい。前記フルオレン誘導体樹脂を約1重量部未満で含む場合は、組成物が高い屈折率を維持することができなく、これにより、金属酸化物粒子を過量に含むようになるおそれがある。また、前記フルオレン誘導体樹脂を約50重量部を超えて含む場合は、高屈折層の鉛筆硬度の確保に困難があるので、前記範囲を維持することによって、屈折率調節及び物性確保の面で長所を有することができる。
【0040】
前記高屈折層コーティング用組成物は、金属酸化物粒子を含んでもよい。金属酸化物粒子は、金属元素及び酸素元素のみからなる化合物を粒子状に示したものであって、導電性を示すことができるが、前記高屈折層コーティング用組成物は、金属酸化物粒子を含むにもかかわらず、導電性を帯びていない。
【0041】
このとき、前記金属酸化物粒子は、TiO2、ZrO2、Al23、SnO2、ITO(indium―tin oxide)、Sb25、Nb23、Y23、SiO2及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つであってもよい。
【0042】
具体的に、前記金属酸化物粒子は、高屈折層コーティング用組成物の総固形分100重量部に対して約5重量部〜約80重量部含んでもよい。前記金属酸化物粒子は、約5重量部未満で含む場合は屈折率が低くなるおそれがあり、約80重量部を超えて含む場合は組成物の物性確保が難しくなり得る。そのため、前記金属酸化物粒子と共に上述したフルオレン誘導体樹脂を含むことによって、高屈折率及び物理的特性に優れるようになる。
【0043】
前記金属酸化物粒子の平均粒子直径は、約1nm〜約100nm、具体的には約1nm〜約30nmであってもよい。平均粒子直径は、いくつかの粒子の直径を測定することによって算定された平均値であって、前記金属酸化物粒子の平均粒子直径が前記範囲を逸脱する場合は、これを含む高屈折層の表面照度が高くなり、光の散乱によってヘイズが増加し得る。そのため、前記の金属酸化物粒子の平均粒子直径範囲を維持することによって、光学特性に優れた高屈折層を容易に具現することができる。
【0044】
前記高屈折層コーティング用組成物は、アクリレート樹脂、フルオレン誘導体樹脂及び金属酸化物粒子以外に、光開始剤をさらに含んでもよい。前記光開始剤は、光硬化反応が起こり、高屈折層コーティング用組成物が形成されるようにするために使用される。具体的に、前記光開始剤は、総固形分100重量部に対して約1重量部〜約15重量部含むことによって、光硬化反応を促進することができる。
【0045】
前記光開始剤としては、1―ヒドロキシ―シクロヘキシル―フェノール―ケトン、2―メチル―1[4―(メチルチオ)フェニル]―2―モルホリノプロパン―1―オン、ベンジルジメチルケトン、1―(4―ドデシルフェニル)―2―ヒドロキシ―2―メチルプロパン―1―オン、2―ヒドロキシ―2―メチル―1―フェニルプロパン―1―オン、1―(4―イソプロピルフェニル)―2―ヒドロキシ―2―メチルプロパン―1―オン、ベンゾフェノン、2,2―ジメトキシ―2―フェニルアセトフェノン、2,2―ジエトキシ―2―フェニルアセトフェノン、2―ヒドロキシ―2―メチル―1―プロパン―1―オン、4,4’―ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2―メチルアントラキノン、2―エチルアントラキノン、2―メチルチオキサントン、2―エチルオキサントン、2,4―ジメチルチオキサントン、2,4―ジエチルオキサントン及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つを使用してもよい。
【0046】
(透明導電性フィルム)
本発明の更に他の具現例において、アクリレート樹脂、フルオレン誘導体樹脂及び金属酸化物粒子を含む高屈折層コーティング用組成物を用いて形成された高屈折層を含む透明導電性フィルムを提供する。
【0047】
図1は、本発明の一実施例に係る透明伝導性フィルムの断面を概略的に示した図である。図1を参照すると、前記透明導電性フィルム10は、透明基材1、ハードコーティング層2、高屈折層3、低屈折層4及び導電層5の積層構造である。
【0048】
透明基材1は、透明性及び強度に優れたフィルムを含んでもよい。具体的に、前記透明基材1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、エチレンビニルアルコール(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれたいずれか一つを含む単一または積層フィルムの形態になってもよい。
【0049】
前記高屈折層3及び低屈折層4は、透明基材1と導電層5との間に絶縁特性及び透過度を向上させる役割をするが、このとき、高屈折層は、上述した高屈折層コーティング用組成物を用いて形成されてもよい。
【0050】
前記高屈折層の屈折率は、約1.6〜約1.8であってもよい。前記高屈折層の形成にアクリレート樹脂、フルオレン誘導体樹脂及び金属酸化物粒子を含む高屈折層コーティング用組成物を用いた結果、屈折率を約1.6〜約1.8に調節でき、透明伝導性フィルムの全体的な視認性及び全光線透過率が向上し得る。
【0051】
前記高屈折層3の厚さは、約20nm〜約150nmで、前記低屈折層4の厚さは、約5nm〜約100nmであってもよい。例えば、前記高屈折層3及び低屈折層4の合算厚さは、約25nm〜約250nmになってもよく、前記高屈折層3及び低屈折層4の合算厚さが約25nm未満である場合は、厚さが過度に薄く形成され、透過率及び視認性の向上効果が不十分になるおそれがあり、前記高屈折層3及び低屈折層4の合算厚さが約250nmを超える場合、例えば、低屈折層4の厚さが約100nmを超える場合は、各層の応力が激しくなり、クラック及びカールが発生し得る。
【0052】
前記導電層5は、前記低屈折層4の上部に形成されるものであって、ITO(Indium Tin Oxide)またはFTO(Fluorine―doped Tin Oxide)を含んでもよい。
【0053】
図2は、本発明の他の一実施例に係る透明伝導性フィルムの断面を概略的に示したものであって、図2では、透明基材1の下部にハードコーティング層2がさらに形成されている。ハードコーティング層2は、表面硬度を向上させる役割をし、アクリル系化合物などのハードコーティングの形成のために用いられるものであればいずれも制限なく利用可能である。
【0054】
前記ハードコーティング層2は、図1に示すように、透明基材1の一面のみに形成されてもよいが、図2に示すように、透明基材1の両面に形成されてもよい。
【実施例】
【0055】
以下では、本発明の具体的な各実施例を提示する。ただし、下記に記載した各実施例は、本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎなく、これによって本発明が制限されることはない。
【0056】
<製造例>
(製造例1―高屈折層コーティング用組成物)
紫外線硬化型アクリレート樹脂、紫外線硬化型フルオレン誘導体樹脂及び金属酸化物ナノ粒子を下記の表1に記載した構成及び含量で含むことによって、高屈折層コーティング用組成物を製造した。
【0057】
【表1】
*フルオレン誘導体:9,9―Bis[4―(2―Acryloyloxyethoxy)phenyl]fluorine
【0058】
(製造例2―ハードコーティング層組成物)
総固形分100重量部に対して、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20重量部、HX―920UV 60重量部(Kyoeisha)、シリカ微粒子15重量部(商品名XBA―ST、日産化学)、光重合開始剤Irgacure―184 5重量部(Ciba社)を混合し、これを希釈溶剤であるメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分45%のハードコーティング層組成物(屈折率1.52)を製造した。
【0059】
(製造例3―低屈折層コーティング用組成物)
テトラ―エトキシオルソシリケート(Tetra―ethoxy ortho silicate)、水及びエチルアルコールを1:2:2で混合し、これに硝酸0.1mol溶液を投入して24時間反応させ、屈折率1.43のゾルを合成した。合成されたゾルをメチルエチルケトン(MEK)で希釈し、固形分5%の低屈折層コーティング用組成物を製造した。
【0060】
<実施例及び比較例>
(実施例1)
製造例2で製造したハードコーティング層組成物を、メイヤーバー(Meyer bar)を用いて125μmのPETフィルム上に乾燥膜の厚さが1.5μmになるように塗布し、180Wの高圧水銀灯で300mJの紫外線を照射して硬化させることによってフィルムを製作した。前記の製作したフィルムの反対面に前記と同一の方法で製造例2で製造したハードコーティング層組成物を乾燥膜の厚さが1.5μmになるように塗布して硬化させ、両面にハードコーティング層を含むフィルムを製作した。
【0061】
その後、両面にハードコーティング層を含むフィルムの一面に、製造例1―1で製造された高屈折層コーティング用組成物を乾燥膜の厚さが50nmになるように塗布し、180Wの高圧水銀灯で300mJの紫外線を照射して硬化させることによって高屈折層を形成した。その後、前記高屈折層に、製造例3で製造された低屈折層コーティング液組成物を乾燥膜の厚さが20nmになるように塗布し、150℃のオーブンで1分間硬化させることによって低屈折層を形成した。このとき、インジウム:スズ=95:5のITOターゲットを用いて低屈折層に膜厚20nmのITO層を形成し、透明導電性フィルムを製作した。
【0062】
(実施例2)
高屈折層コーティング用組成物を製造例1―2に適用し、高屈折層の厚さが45nmになるようにコーティングしたこと以外は、前記実施例1と同一の方法で透明導電性フィルムを製作した。
【0063】
(実施例3)
高屈折層コーティング用組成物を製造例1―3に適用し、高屈折層の厚さが40nmになるようにコーティングしたこと以外は、前記実施例1と同一の方法で透明導電性フィルムを製作した。
【0064】
(比較例1)
高屈折層コーティング用組成物を製造例1―4に適用し、高屈折層の厚さを50nmにしてコーティングしたこと以外は、前記実施例1と同一の方法で透明導電性フィルムを製作した。
【0065】
(比較例2)
高屈折層コーティング用組成物を製造例1―5に適用し、高屈折層の厚さが50nmになるようにコーティングしたこと以外は、前記実施例1と同一の方法で透明導電性フィルムを製作した。
【0066】
(比較例3)
高屈折層コーティング用組成物を製造例1―6に適用し、高屈折層の厚さが45nmになるようにコーティングしたこと以外は、前記実施例1と同一の方法で透明導電性フィルムを製作した。
【0067】
<測定結果>―透明導電性フィルムの物理的特性
前記実施例及び比較例の透明導電性フィルムを用いて下記の各物性を測定し、その結果を下記の表2に記載した。
【0068】
1)屈折率:プリズムカプラ(Prism coupler)を用いて532nm、632.8nm、830nmのレーザーで各波長での屈折率を測定し、コーシープロット(caushy plot)を通じて550nmでの屈折率を得た。
2)鉛筆硬度:JIS K 5600―5―4に準じて測定した。
3)密着性:コーティング層の表面をカッターを用いて1mmの間隔及び10mm×10mm(横×縦)の碁盤の目状にカットし、セロハンテープ(Nichiban社)を用いて剥離試験をした。同一の部位に対してテープを用いて3回剥離試験をし、評価後、密着している数字を/100で表記した。
4)透過率、透過b*/反射b*:CM―5(Konica minolta社)を用いて全光線透過率及び透過b*/反射b*値を測定した。
5)エッチング(Etching)評価:ITO層に、正四角形がパターン化されているマスクを用いて感光性樹脂を塗布、乾燥・硬化した後、25℃で5%の塩酸水溶液に1分間浸漬し、ITO層のエッチング評価を実施した。
6)エッチング前/後の反射率差(ΔR)の測定及びパターン隠蔽力の確認:エッチング前/後にCM―5を用いて反射率を測定することによって反射率差を求め、肉眼を通じてパターン隠蔽力を確認した。
【0069】
【表2】
測定結果 ◎:非常に優秀、○:優秀、△:普通、X:悪い
【0070】
測定結果を通じて、実施例1〜3の透明導電性フィルムの場合、優れた硬度、透過率及び視認性を有することが分かった。具体的に、フルオレン誘導体を含まない製造例1―4のコーティング用組成物によって形成された高屈折層を含む比較例1の透明導電性フィルムの場合、高屈折層の屈折率が低く測定され、また、透過率及びエッチング前/後の反射率の差が実施例1〜3に比べて高く測定され、パターン隠蔽力も悪いことから、透明導電性フィルムとしての光学的性質に優れていないことが分かった。
【0071】
フルオレン誘導体を含まない製造例1―5のコーティング用組成物によって形成された高屈折層を含む比較例2の透明導電性フィルムの場合、高屈折層の屈折率が実施例1と類似し、光学特性及びパターン隠蔽力には優れるが、鉛筆硬度及び密着性において物理的特性が確保されないことが分かった。
【0072】
また、フルオレン誘導体は含むが、紫外線硬化型アクリレートを含有していない製造例1―6のコーティング用組成物によって形成された高屈折層を含む比較例3の透明導電性フィルムの場合、フルオレン誘導体を含むことによって高屈折層の屈折率はある程度高く測定されたが、鉛筆硬度及び密着性においては普通以下の評価であり、透明伝導性フィルムとしての適用が難しいことを確認した。
【0073】
結果的に、紫外線硬化型アクリレート樹脂、紫外線硬化型フルオレン誘導体樹脂及び金属酸化物ナノ粒子を同時に含む高屈折層コーティング用組成物によって形成された高屈折層は、1.6〜1.8の屈折率を示すことができ、これを含む透明伝導性フィルムは、硬度、透過率、視認性などの優れた光学特性及び物理的特性を同時に確保することが分かった。
図1
図2