特許第6150418号(P6150418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6150418情報表示装置、魚群探知機及び情報表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150418
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】情報表示装置、魚群探知機及び情報表示方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20170612BHJP
   G01S 7/10 20060101ALI20170612BHJP
   G06T 17/05 20110101ALI20170612BHJP
【FI】
   G09B29/00 A
   G01S7/10
   G06T17/05
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-103656(P2012-103656)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-231844(P2013-231844A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】久保田 有吾
(72)【発明者】
【氏名】前野 仁
(72)【発明者】
【氏名】今坂 尚志
【審査官】 奈良田 新一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−033541(JP,A)
【文献】 特開平01−163687(JP,A)
【文献】 特開平03−251782(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0048777(US,A1)
【文献】 特開平09−244528(JP,A)
【文献】 特開2003−287424(JP,A)
【文献】 特開平05−181412(JP,A)
【文献】 特開昭55−033695(JP,A)
【文献】 特開2007−072233(JP,A)
【文献】 特開2010−175871(JP,A)
【文献】 特開2002−005672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00−29/14
G01C 21/00−21/36
G01S 7/00−7/42,13/00−13/95,15/96
G09G 5/00−5/42
G06T 17/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域と、前記第1領域と同じ表示基準位置を有しかつ前記第1領域に連続する領域である第2領域と、を画面内に表示する表示部と、
前記第1領域と前記第2領域とに異なる縮尺を設定し、自機の周辺の情報である周辺情報を、当該周辺情報の位置と対応させて前記第1領域と前記第2領域に表示する制御を行う制御部と、
を備え
前記第2領域は、前記表示基準位置から遠ざかるに従って縮尺が小さくなり、
前記周辺情報には、探知された物標であって、絶対位置が変化する物標であって、かつ、縮尺に応じて大きさが変化する情報が含まれ、前記制御部は、当該情報を前記第2領域に表示する場合は、画面に表示される大きさが、前記第1領域に表示する場合と同じとなるように表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報表示装置であって、
前記第1領域の縮尺が一定であることを特徴とする情報表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報表示装置であって、
前記第1領域は、所定位置を中心とする円領域であり、前記第2領域は、前記第1領域の外側に連続する領域であることを特徴とする情報表示装置。
【請求項4】
請求項に記載の情報表示装置であって、
前記第1領域は、自機の位置を中心とする円領域であり、前記第2領域は、前記第1領域の外側に連続する領域であることを特徴とする情報表示装置。
【請求項5】
請求項1からまでの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記制御部は、予め定められた表示条件に基づいて、前記第1領域及び前記第2領域に前記周辺情報を表示するか否かを決定することを特徴とする情報表示装置。
【請求項6】
請求項1からまでの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記制御部は、前記周辺情報、自機又は画面の中央からの距離を示す線、及び領域の外枠のうち少なくとも1つの表示形態が前記第1領域と前記第2領域とで異なることを特徴とする情報表示装置。
【請求項7】
請求項1からまでの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
前記第1領域と前記第2領域との境界位置を変更可能であることを特徴とする情報表示装置。
【請求項8】
請求項1からまでの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
移動体に搭載され、
前記制御部は、前記移動体の前記周辺情報を前記第1領域及び前記第2領域に表示することを特徴とする情報表示装置。
【請求項9】
請求項1からまでの何れか一項に記載の情報表示装置であって、
レーダアンテナと接続され、
前記第1領域及び前記第2領域には、レーダエコーが表示されることを特徴とする情報表示装置。
【請求項10】
自機の周辺の情報である周辺情報を取得する情報取得工程と、
表示部の画面内に配置された第1領域と、前記表示部の画面内に配置され、前記第1領域と同じ表示基準位置を有しかつ前記第1領域に連続する領域である第2領域と、に異なる縮尺を設定する縮尺設定工程と、
前記縮尺設定工程で設定した縮尺で、前記周辺情報を当該周辺情報の位置と対応させて前記第1領域と前記第2領域に表示する情報表示工程と、
を含み、
前記第2領域は、前記表示基準位置から遠ざかるに従って縮尺が小さくなり、
前記周辺情報には、探知された物標であって、絶対位置が変化する物標であって、かつ、縮尺に応じて大きさが変化する情報が含まれ、前記情報表示工程では、当該情報を前記第2領域に表示する場合は、画面に表示される大きさが、前記第1領域に表示する場合と同じとなるように表示することを特徴とする情報表示方法。
【請求項11】
請求項10に記載の情報表示方法であって、
前記第1領域の縮尺が一定であることを特徴とする情報表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主要には、2つの表示領域を有する情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示すような船舶用レーダ装置において、自船の周辺の物標を示す映像(レーダ映像)を表示可能であるとともに、このレーダ映像の縮尺を変更可能な構成が知られている。縮尺を大きくすると、自船の近傍の狭い範囲のレーダ映像しか表示されないが、物標を示すエコーの詳細な位置と形状を把握することができる。一方、縮尺を小さくすると、広い範囲のレーダ映像を表示することができるが、エコーの位置と形状を詳細に知ることが困難になる。
【0003】
そのため、上記の構成の船舶用レーダ装置では、状況に応じて縮尺を変更する必要がある。これは、船舶用レーダ装置に限られず、地上に設置されるレーダ装置や車両用ナビゲーション装置等でも同様である。
【0004】
また、特許文献1が開示する構成は状況に応じて縮尺の変更が必要であるのに対して、特許文献2は、自動で縮尺を変更可能な船舶用ナビゲーション装置を開示する。この船舶用ナビゲーション装置は、ルート(航路)の設定が可能である。設定したルート及び自船の位置は、船舶用ナビゲーション装置が備えるディスプレイに表示される。そして、設定したルートから自船が離れた場合に縮尺が自動的に小さくなるように構成されている。これにより、手動で縮尺を変更することなく、常に自船及びルートをディスプレイに表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−105954号公報
【特許文献2】特開平9−229710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の構成は、自船がルートからズレた際には縮尺の変更を手動で行う必要はないが、例えば自船の近傍の詳細な海図を参照する場合には手動で縮尺を大きくする必要がある。そして、縮尺を大きくした状態では、設定したルートが参照できなかったり、自船の遠くの港等が参照できなかったりする。従って、特許文献2の構成であっても、頻繁に縮尺を変更しなければならない場合がある。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、所定の地点(例えば自移動体の位置)の近傍の詳細な情報と当該地点の遠方の情報とを同時に表示可能な情報表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の情報表示装置が提供される。即ち、この情報表示装置は、表示部と、制御部と、を備える。前記表示部は、第1領域と、前記第1領域と同じ表示基準位置を有しかつ前記第1領域に連続する領域である第2領域と、を画面内に表示する。前記制御部は、前記第1領域と前記第2領域とに異なる縮尺を設定し、自機の周辺の情報である周辺情報を、当該周辺情報の位置と対応させて前記第1領域と前記第2領域に表示する制御を行う。前記第2領域は、前記表示基準位置から遠ざかるに従って縮尺が小さくなる。前記周辺情報には、探知された物標であって、絶対位置が変化する物標であって、かつ、縮尺に応じて大きさが変化する情報が含まれ、前記制御部は、当該情報を前記第2領域に表示する場合は、画面に表示される大きさが、前記第1領域に表示する場合と同じとなるように表示する
【0010】
これにより、第1領域と第2領域とで縮尺が異なるため、縮尺が大きい方の領域では狭い範囲について周辺情報の詳細な位置を表示することができ、縮尺が小さい方の領域では広い範囲について周辺情報の大体の位置を表示することができる。従って、ユーザの利用形態に即した形で周辺情報を表示することができる。また、縮尺を頻繁に変更することなく、必要な情報を表示することができる。また、第2領域を上記の縮尺にすることで、表示基準位置から遠ざかるに従って縮尺が小さくなるので、表示基準位置から相当に遠い周辺情報であっても大体の位置を表示することができる。また、上記の周辺情報を縮尺が小さい領域に表示する際に、周辺情報が小さ過ぎてユーザが確認できなくなることを防止できる。
【0011】
前記の情報表示装置においては、前記第1領域は、所定位置を中心とする円領域であり、前記第2領域は、前記第1領域の外側に連続する領域であることが好ましい。
【0012】
これにより、第1領域が円領域なので、所定の位置から等距離にある箇所が第1領域となる。そのため、所定の位置の周囲と他の部分とで重要度を異ならせて探知を行うことができる。
【0013】
前記の情報表示装置においては、前記第1領域は、自機の位置を中心とする円領域であり、前記第2領域は、前記第1領域の外側に連続する領域であることが好ましい。
【0014】
これにより、自機の周囲と他の部分とで重要度を異ならせて探知を行うことができる。
【0015】
前記の情報表示装置においては、前記第1領域と前記第2領域は、それぞれ縮尺が一定であることが好ましい。
【0016】
これにより、縮尺が一定であるので周辺情報の位置を直感的に把握することができる。
【0017】
前記の情報表示装置においては、前記第1領域の縮尺は、前記第2領域の縮尺よりも大きいことが好ましい。
【0018】
これにより、例えば、表示基準位置から近い範囲の周辺情報を詳細に表示しつつ、表示基準位置から遠い範囲の周辺情報をある程度の水準で表示することができる。
【0019】
前記の情報表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1領域は、縮尺が一定である。前記第2領域は、前記表示基準位置から遠ざかるに従って縮尺が小さくなる。
【0020】
これにより、表示基準位置から遠ざかるに従って縮尺が小さくなるので、表示基準位置から相当に遠い周辺情報であっても大体の位置を表示することができる。
【0021】
前記の情報表示装置においては、前記周辺情報には、探知された物標であって、かつ、縮尺に応じて大きさが変化する情報が含まれ、当該情報を前記第2領域に表示する場合は、拡大して表示することが好ましい。
【0022】
これにより、この種の周辺情報(レーダエコーや地図等)を縮尺が小さい領域に表示する際に、周辺情報が小さ過ぎてユーザが確認できなくなることを防止できる。
【0023】
前記の情報表示装置においては、前記制御部は、予め定められた表示条件に基づいて、前記第1領域及び前記第2領域に前記周辺情報を表示するか否かを決定することが好ましい。
【0024】
これにより、ユーザにとって必要な周辺情報のみが表示されるように表示条件を設定することで、表示される表示対象の数を減らして、表示を見易くすることができる。
【0025】
前記の情報表示装置においては、前記制御部は、前記周辺情報、自機又は画面の中央からの距離を示す線、及び領域の外枠のうち少なくとも1つの表示形態が前記第1領域と前記第2領域とで異なることが好ましい。
【0026】
これにより、ユーザは、画面上のどの部分が第1領域又は第2領域であるかを視覚的にかつ即座に判別することができる。
【0027】
前記の情報表示装置においては、前記第1領域と前記第2領域との境界位置を変更可能であることが好ましい。
【0028】
これにより、ユーザの利用形態に即した形で周辺情報を表示することができる。
【0029】
前記の情報表示装置においては、移動体に搭載され、前記制御部は、前記移動体の前記周辺情報を前記第1領域及び前記第2領域に表示することが好ましい。
【0030】
これにより、少なくとも2種類の縮尺で移動体の周辺情報を表示することができるので、ユーザは、縮尺を頻繁に変更することなく移動体を移動させることができる。例えば、第1領域の縮尺を大きくして自移動体の近傍に存在する他の移動体等の位置を詳細に把握しつつ、目的地等の大体の位置を把握することができる。
【0031】
前記の情報表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1領域に表示する前記周辺情報には、地図が含まれる。前記第2領域に表示する前記周辺情報には、他の移動体、移動時の目印となるランドマーク、及びユーザに登録されたポイントのうち少なくとも1つが含まれ、当該周辺情報をマークによって表示する。
【0032】
これにより、画面の中央に地図を表示しつつ、その周りに様々なマークを表示することができる。従って、ユーザは、ランドマーク等の大体の位置を常に参照しながら移動体を移動させることができる。
【0033】
前記の情報表示装置においては、前記第2領域に表示する周辺情報には、更に地図が含まれることが好ましい。
【0034】
これにより、第2領域において地図上にどのような情報があるかを表示することができるので、表示基準位置から遠い箇所についてもより詳細な情報を表示することができる。
【0035】
前記の情報表示装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、レーダアンテナと接続される。前記第1領域及び前記第2領域には、レーダエコーが表示される。
【0036】
これにより、重要な範囲(例えば自機の近傍)では詳細なレーダエコーを表示しつつ、重要度が低い範囲では距離方向に圧縮した形で広範囲のレーダエコーを表示することができる。従って、縮尺の変更を頻繁に行うことなく必要な情報を重要度に応じた形で表示することができる。
【0037】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の情報表示装置が提供される。即ち、この情報表示装置は、表示部と、制御部と、を備える。前記表示部は、自機の周辺の情報である周辺情報を画面内に表示する。前記制御部は、前記画面内において、外側へ向かうに従って縮尺が小さくなるように設定し、前記周辺情報を、当該周辺情報の位置と対応させて前記画面内に表示する制御を行う。前記周辺情報には、探知された物標であって、かつ、絶対位置が変化する物標が含まれている。
【0038】
これにより、画面の中央に近づくに従って周辺情報をより詳細に表示することが可能な情報表示装置が実現できる。
【0039】
本発明の第3の観点によれば、以下の情報表示方法が提供される。即ち、この情報表示方法は、情報取得工程と、縮尺設定工程と、情報表示工程と、を含む。前記情報取得工程では、自機の周辺の情報である周辺情報を取得する。前記縮尺設定工程では、表示部の画面内に配置された第1領域と、前記表示部の画面内に配置され、前記第1領域と同じ表示基準位置を有しかつ前記第1領域に連続する領域である第2領域と、に異なる縮尺を設定する。前記情報表示工程では、前記縮尺設定工程で設定した縮尺で、前記周辺情報を当該周辺情報の位置と対応させて前記第1領域と前記第2領域に表示する。前記周辺情報には、探知された物標であって、かつ、絶対位置が変化する物標が含まれている。前記第2領域は、前記表示基準位置から遠ざかるに従って縮尺が小さくなる。前記周辺情報には、探知された物標であって、絶対位置が変化する物標であって、かつ、縮尺に応じて大きさが変化する情報が含まれ、前記情報表示工程では、当該情報を前記第2領域に表示する場合は、画面に表示される大きさが、前記第1領域に表示する場合と同じとなるように表示する
【0040】
これにより、ユーザの利用形態に即した形で周辺情報を表示することができる。また、縮尺を頻繁に変更することなく、必要な情報を表示することができる。また、第2領域を上記の縮尺にすることで、表示基準位置から遠ざかるに従って縮尺が小さくなるので、表示基準位置から相当に遠い周辺情報であっても大体の位置を表示することができる。また、上記の周辺情報を縮尺が小さい領域に表示する際に、周辺情報が小さ過ぎてユーザが確認できなくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置のブロック図。
図2】表示部に表示される画面の一例を示す図。
図3】表示内容を変更したときの画面を示す図。
図4】表示条件の例を示す表。
図5】第1変形例に係る表示部に表示される画面を示す図。
図6】第2変形例に係る表示部に表示される画面を示す図。
図7】魚群探知機に本発明を適用したときに表示部に表示される画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る船舶用レーダ装置1のブロック図である。図2は、表示部35に表示される画面の一例を示す図である。
【0043】
図1に示すように、本実施形態の船舶用レーダ装置1は、レーダアンテナ11と、レーダ指示器(情報表示装置)12と、を備えている。
【0044】
船舶用レーダ装置1は、パルスレーダ装置として構成されており、レーダアンテナ11は、指向性の強いパルス状電波の送信を行い、当該パルス状電波が物標に反射して戻ってきた反射波(エコー)を受信するように構成されている。また、レーダアンテナ11は、水平面内で回転しながら、電波の送受信を繰り返し行うように構成されている。以上の構成で、水平面内を、自船を中心として360°にわたってスキャンすることができる。
【0045】
なお、このパルスレーダに代えて、CW(continuous wave)レーダやパルスドップラーレーダを用いても良い。また、レーダアンテナを回転させない構成のレーダ装置を用いても良い。例えば、全周方向にアンテナ素子を有する構成のレーダ装置や、前方等の特定の方向のみを探知するレーダ装置等は、レーダアンテナを回転させる必要がない。
【0046】
レーダアンテナ11が受信した信号は、図略の受信回路でA/D変換等を行ってデジタルのデータに変換され、レーダ指示器12へ出力される。
【0047】
レーダ指示器12は、スイープメモリ31と、TT情報算出部32と、制御部34と、表示部35と、操作部36と、他船情報記憶部37と、海図情報記憶部38と、表示条件記憶部39と、を備える。また、レーダ指示器12には、前記レーダアンテナ11の他に、GPS受信機21と、AIS受信機22と、が接続されている。
【0048】
レーダアンテナ11が出力したデータは、スイープメモリ31に入力される。スイープメモリ31は、レーダアンテナ11の1回転分のデータを記憶可能である。レーダアンテナ11の1回転分のデータは、自船を中心として水平面内を360°にわたってスキャンしたデータであるので、自船周辺の物標の様子(自船に対する物標の相対位置)を示す2次元画像(レーダ映像)がスイープメモリ31に記憶されることになる。
【0049】
制御部34は、各種のプログラムを実行するCPUと、表示部35にレーダ映像を表示するためのプログラム等が記憶されるROMと、を主要な構成として備えている。
【0050】
表示部35は、液晶ディスプレイ等で構成されており、制御部34が作成したレーダ映像等を画面内に表示することができる。レーダ映像は、図2に示すように、船舶や島の輪郭を示すエコー61から構成されている。
【0051】
また、表示部35は、図2に示すように円形の表示領域70を有している。表示領域70の中心部には、自船の位置を示す自船マーク60が表示されている。制御部34は、自船の周辺の情報(周辺情報)、具体的には、レーダ映像、海図、後述のTT情報及びAIS情報等を、この表示領域70に表示する制御を行う。
【0052】
また、表示領域70は、第1領域(内側領域)71と、第1領域71の外側に連続する(外側を覆うように配置される)領域である第2領域(外側領域)72と、から構成されている。図2の例では、第1領域71は、自船の位置を基準とした半径3kmの円領域であり、1km毎にレンジリング71aが表示されている。レンジリング71aとは、自船又は画面の中央からの距離を示す線である。また、第1領域71は縮尺が一定である。
【0053】
第2領域72は、自船の位置を基準とした半径3kmから8kmまでの円領域であり、1km毎にレンジリング72aが表示されている。このように、第1領域71と第2領域72とは、同じ表示基準位置(自船の位置)を有しており、当該表示基準位置からの距離に応じて領域が定められている。なお、表示基準位置は、自船の位置に限られず、画面の中央等であっても良い。第2領域72は、縮尺が一定であるが、第1領域71よりも縮尺が小さいため、レンジリング72aの間隔が狭くなっている。この構成により、自船の近傍の状況を詳細に表示しつつ、自船から遠い範囲についてもある程度情報を表示することができる。
【0054】
また、本実施形態では、第2領域72の輪郭(枠部)が太線になっており、第1領域71と第2領域72との境界が視覚的に明確な構成である。更には、レンジリング71aが実線であるのに対し、レンジリング72aが破線であるので、レンジリングによっても第1領域71か第2領域72かが容易に判別できる。これにより、ユーザは、第1領域71と第2領域72とを視覚的かつ即座に判別することができる。
【0055】
TT情報算出部32は、TT(Target Tracking、目標追尾)機能を実現するためのものである。このTT(又はARPA)機能は公知であるので詳細な説明は省略するが、スイープメモリ31に記憶されたデータに基づいて物標の位置を自動的に検出・捕捉するとともに、時間推移に基づいて当該物標の移動を追尾することにより速度ベクトルを推定するものである。なお、TTで得られる物標の情報は、自船に対する相対的な情報である。従って、TT情報算出部32は、物標の相対位置(自船からの距離及び自船から見た方位)、及び、自船に対する物標の相対的な速さ等の情報を算出することができる。TT情報算出部32が算出したTT情報は、他船情報記憶部37へ出力される。
【0056】
また船舶用レーダ装置1には、AIS受信機22が接続されている。AIS受信機22は、他船に搭載されるAIS(Automatic Identification System、船舶自動識別装置)が出力するAIS情報を受信している。このAIS信号には、当該他船の位置、船速、及び針路等の情報が含まれている。AIS信号に含まれる他船の情報は、地球基準の絶対的な情報である。なお、以下の説明では、地球基準の絶対的な位置(経度及び緯度)を絶対位置と称する。AIS受信機22が他船から受信したAIS情報は、他船情報記憶部37へ出力される。
【0057】
他船情報記憶部37は、上記のようにして得られたAIS情報及びTT情報を記憶している。制御部34は、他船情報記憶部37からAIS情報及びTT情報を取得して、表示部35に表示する(図3のTTシンボル65及びAISシンボル66を参照)。なお、AIS信号には他船の絶対位置しか含まれていないが、制御部34は、GPS受信機21から得られる自船の絶対位置を利用することにより、AIS信号が示す他船の相対位置を算出する。
【0058】
海図情報記憶部38は、電子海図を記憶している。この電子海図には、陸地の位置等に加え、航海のために必要な情報、具体的には、ランドマーク、水深、底質、海岸地形、海底危険物等が含まれている。ランドマークとは、移動時の目印となるものである。航海時におけるランドマークの具体例としては、灯台、港、山、島、及び航路ブイ(浮標)等がある。なお、本発明においてランドマークとは、陸上に配置された目印だけでなく、上記航路ブイ等のように海上に配置された目印も含む概念とする。制御部34は、自船の周りの地形やランドマーク等を表示部35に表示する(図2の陸地や浮標記号62、灯台記号63等を参照)。
【0059】
なお、本明細書において「地図」とは、地球(地表)の一部又は全部を縮小して表した図を示し、陸地を主として記された図のみを示すものではない。従って、本明細書における「地図」には、航空機の航行のための情報が記された航空図や、船舶の航行のための情報が記された海図等も含まれる。
【0060】
表示条件記憶部39は、表示条件を記憶する。表示条件とは、第2領域72にシンボル等が多数配置されて見にくくなるのを防止するために設定されるものであり、当該条件を満たした表示対象のみが第2領域72に表示される。なお、本実施形態では第2領域72にのみ表示条件を設定しているが、第1領域71にも第2領域72と同一又は異なる表示条件を設定しても良い。
【0061】
図4は、この表示条件の一例を示している。この例では、図4(a)から図4(c)に示すように、「距離」、「方位」、「速度」が表示条件として設定されている。
【0062】
「距離」は、自船からの距離に応じて表示する対象の表示/非表示を定める項目である。また、この距離は、表示する対象の種類に応じて異なる値を設定可能である。これにより、例えば港については、遠方にあっても第2領域72に表示する一方、遠方の他船については第2領域72に表示しないこと等が可能となる。また、第2領域72の縮尺に応じて自動的にこの距離が変更される構成であっても良い。
【0063】
「方位」は、表示する対象が位置する方向に応じて当該対象の表示/非表示を定める項目である。この方向についても、表示する対象の種類に応じて異なる値を設定可能である。これにより、例えば港については、自船の後方に位置する場合は表示しない一方で、他船については自船の後方に位置していても表示すること等が可能となる。
【0064】
「速度」は、他船の速度に応じて当該他船の表示/非表示を定める項目である。これにより、例えば高速の船舶のみ表示することで、注目すべき船舶のみを表示することができる。なお、「距離」、「方位」、「速度」はユーザによって値の変更が可能であっても良い。また、表示条件は、上記で説明した例に限られず、任意の条件を設定することができる。
【0065】
以上のように、制御部34は、スイープメモリ31、他船情報記憶部37、及び海図情報記憶部38等から周辺情報を取得して(取得工程)、前述のように第1領域71と第2領域72とで縮尺を変更しつつ(縮尺設定工程)、取得した周辺情報を表示部35に表示する(情報表示工程)。
【0066】
また、ユーザは、操作部36を構成するトラックボールやキー等を操作することで、表示領域70の表示形態を設定したり、表示領域70に表示する内容(表示内容)を設定したりすることができる。
【0067】
表示形態の設定としては、ユーザは、所定のメニュー画面を出した後に縮尺を入力する等して、第1領域71又は第2領域72の縮尺を変更することができる。また、ユーザは、第1領域71と第2領域72との境界線をドラッグ等して、この境界線の位置も適宜変更することができる。
【0068】
表示内容の設定としては、例えば、ユーザは、第1領域71及び第2領域72にどの周辺情報を表示するかを個別に設定可能である。また、ユーザは、船舶を、エコー61として表示するか、TTシンボル65又はAISシンボル66として表示するか、両方を重畳して表示するか、を設定可能である。
【0069】
図2に示す例では、第1領域71及び第2領域72の両方にエコー及びチャートを表示する設定である。また、船舶をエコー61として表示する設定である。なお、地形やエコー61は、縮尺に応じて大きさが変化する情報であるため、第1領域71と第2領域72とで表示される形状が異なる。具体的には、第2領域72に表示される地形やエコー61は、第1領域71の地形やエコー61と比較して、径方向に圧縮して表示される。
【0070】
図3に示す例では、第1領域71にエコー及びチャートを表示しつつ、第2領域72にはマークを表示する設定である。また、船舶をTTシンボル65又はAISシンボル66として表示する設定である。従って、図3に示す例では、チャートの灯台記号63に代えて、灯台の位置を示すマークである灯台マーク64が表示されている。なお、図3に示す例において、第2領域72に更にチャートを表示しても良い。
【0071】
以上に説明したように、レーダ指示器12は、表示部35と、制御部34と、を備える。表示部35は、第1領域71と、当該第1領域71の外側を覆うように配置される第2領域72と、を画面内に表示する。制御部34は、第1領域71と第2領域72とに異なる縮尺を設定し、自船の周辺の情報である周辺情報を、当該周辺情報の位置と対応させて第1領域71と第2領域72に表示する制御を行う。なお、本実施形態では、第1領域71及び第2領域72は縮尺が一定であり、第1領域71の縮尺の方が大きい。
【0072】
これにより、縮尺が一定であるので周辺情報の位置を直感的に把握することができる。また、第1領域71の縮尺が第2領域72よりも大きいので、自船から近い範囲の周辺情報を詳細に表示しつつ、自船から遠い範囲の周辺情報をある程度の水準で表示することができる。
【0073】
次に、上記実施形態の第1変形例を説明する。図5は、第1変形例に係る表示部に表示される画面を示す図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0074】
第1変形例では、第2領域72の縮尺が一定ではなく変化する構成である。具体的には、第2領域72は、第1領域71から遠ざかるに従って縮尺が小さくなる構成である。第1変形例では、対数関数を利用して縮尺の変化を設定している。そのため、第1変形例では、第2領域72の外枠部は自船から100kmの距離を示すが、第2領域72の中央部は、自船から10kmの距離を示している。なお、第1変形例では、上記実施形態のように所定の距離毎にレンジリング72aを引くと線が多数重なって視認性が低下するため、画面上におけるレンジリング72aの間隔が一定となるように、当該レンジリング72aを引く構成である。
【0075】
次に、上記実施形態の第2変形例を説明する。図6は、第2変形例に係る表示部に表示される画面を示す図である。
【0076】
第2変形例では、表示領域70は、第1領域71と第2領域72とに分かれていない。表示領域70は、縮尺が一定ではなく、画面の中央(即ち自船の位置)から外側へ向かうに従って縮尺が小さくなるように設定されている。この場合においても、第1変形例と同様に対数関数を利用して縮尺の変化を設定することができる。
【0077】
なお、第2変形例では、第1変形例と異なり、所定の距離(5km)毎にレンジリング70aを引く構成である。従って、縮尺の小さい外側部分においては、レンジリング70a同士の間隔が短くなる。
【0078】
また、上記実施形態では、距離方向に圧縮されたエコー61(図2)を表示した。しかし、同様の方法を第2変形例に適用すると、第2変形例の外側部分は縮尺がかなり小さいため、距離方向に相当に圧縮されてしまい、エコー61を見過ごすことが考えられる。従って、第2変形例では、エコー61の拡大処理を行い、縮尺に関係なくエコー61が同じ大きさとなるようにして表示する。
【0079】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0080】
なお、第1領域71と第2領域72とで表示形態を変える方法は上記に限られず、例えば第2領域72に表示される周辺情報(エコー61や灯台マーク64等)を第1領域71に表示される周辺情報よりも薄く表示する構成であっても良い。また、第1領域71と第2領域72との背景に異なる色又は明るさを設定しても良い。
【0081】
表示領域70は円形に限られず、例えば矩形とすることができる。その場合、第1領域71及び第2領域72も矩形とすることができる。また、円形の第1領域71の周りに矩形の第2領域72を配置する等、第1領域71及び第2領域72の形状も任意に変更することができる。
【0082】
上記実施形態では、画面の中央と自船の位置とが一致する構成だが、一致しない構成であっても良い。例えば、自船の前方を後方よりも詳しく表示させるために、画面の中央からやや下方に自船の位置を設定しても良い。
【0083】
第1領域71の縮尺が第2領域72の縮尺よりも小さい構成であっても良い。また、第1領域71の縮尺は一定でなくても良い。更には、第1領域71及び第2領域72の縮尺を変動させる構成は対数関数に限られず、適宜の関数等を用いることができる。
【0084】
周辺情報としてユーザ登録ポイントを用いることもできる。ユーザ登録ポイントとは、ユーザによって登録された位置(例えば魚が良く釣れた位置等)のことである。ユーザは、操作部36を操作することにより、例えば現在の自船の位置をユーザ登録ポイントとして登録することができる。制御部34は、ユーザ登録ポイントの作成の指示を受けた場合、GPS受信機21から取得した現在の自船の絶対位置と、ユーザ登録ポイントを示すアイコンと、を記憶する。そして、制御部34は、このアイコンを、第1領域71又は第2領域72に表示する。
【0085】
本発明は、船舶用レーダ装置に限られず、灯台等に設置され、移動体の位置等を監視するレーダ装置であっても良い。また、レーダ装置以外にも、プロッタ装置、スキャニングソナー、魚群探知機等の他の舶用機器に適用することができる。なお、魚群探知機には、縦軸が深度を表し横軸が時間を表す画面が表示されるが、このような画面にも本発明を適用することができる。具体的に説明すると、本発明を適用した魚群探知機には、例えば図7に示す画面が表示される。図7では、海面から水深20mまでを第1領域71とし、それ以降を第2領域72として、第1領域71と第2領域72とで縮尺を異ならせている。このように、本発明を適用した魚群探知機は、所定の領域(例えば海底付近や所望の魚がいる深度)だけ通常の縮尺で表示し、その他の領域を圧縮して表示することができる。
【0086】
本発明の情報表示装置が搭載される移動体は船舶に限られず、例えば、航空機、自動車等に搭載される構成であっても良い。例えば自動車に搭載される場合、上記実施形態と同様に、自機を含む水平面内の物標等を表示する方法を用いることができる。また、航空機に搭載される場合、上記実施形態の表示方法以外にも、例えば自機の前方の物標等について、縦軸が高度を表し横軸が距離を表すような表示方法を用いることもできる。なお、この表示方法では縦軸及び横軸は、ともに距離情報(所定位置からの距離だけでなく、深度及び高度も含む情報)を表している。従って、この表示方法では、縦軸(高度)と横軸(距離)の何れかに境界を定めて第1領域と第2領域とを設定することができる。例えば、縦軸に境界を設定する場合、所定の高度以上と未満で領域を分けることができる。一方、横軸に境界を設定する場合、所定の距離以上と未満で領域を分けることができる。
【0087】
上述した例で示したように、情報表示装置は、座標軸の少なくとも1つが距離情報を表していれば、他の座標軸は任意の情報を表示する構成であっても良い。また、情報表示装置は、情報を2次元的に表示する構成に限られず、情報を3次元的に表示する構成(座標軸が3つある構成、例えば方位に加え高度(深度)を表示する構成)であっても良い。
【符号の説明】
【0088】
1 船舶用レーダ装置
12 レーダ指示器(情報表示装置)
31 スイープメモリ
32 TT情報算出部
34 制御部
35 表示部
36 操作部
37 他船情報記憶部
38 海図情報記憶部
39 表示条件記憶部
70 表示領域
71 第1領域
72 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7