【文献】
Xiangbo Meng, Dongsheng Geng, Jian Liu, Ruying Li and Xueliang Sun,Controllable synthesis of graphene-based titanium dioxide nanocomposites by atomic layer deposition,Nanotechnology,英国,IOP Publishing Ltd ,2011年 3月11日,Volume 22, Number 16,page 165602(10pp)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも2つの電極を含むスーパーキャパシタであって、各電極は、導電性の集電体と電気的に接触しており、前記電極は、離間しており、前記電極は、前記電極の間に介在し、かつ前記電極の各々と接触している電解質を有し、前記電極のうちの少なくとも1つは、多孔性炭素物質の複合体であり、前記多孔性炭素物質の複合体は、前記炭素物質上に堆積され、かつ前記炭素物質に化学的に直接結合された0.1nm〜20nmの連続した、コンフォーマルな膜の第1の金属酸化物と、前記第1の金属酸化物とは異なり、前記第1の金属酸化物の連続したコンフォーマルな膜上に堆積され、かつ前記第1の金属酸化物に化学的に結合された金属酸化物の擬似キャパシタ材料と、を有し、前記金属酸化物の擬似キャパシタ材料は、0.5nm〜25nmの厚さを有する連続した、コンフォーマルな膜の形態であり、前記複合体の重量の25〜95%を構成し、前記複合体は、少なくとも25m2/gの表面積を有する、スーパーキャパシタ。
少なくとも2つの電極を含むスーパーキャパシタであって、各電極は、導電性の集電体と電気的に接触しており、前記電極は、離間しており、前記電極は、前記電極の間に介在し、かつ前記電極の各々と接触している電解質を有し、前記電極のうちの少なくとも1つは、多孔性炭素物質の複合体であり、前記多孔性炭素物質の複合体は、前記炭素物質上に堆積され、かつ前記炭素物質に中間官能化層を介して化学的に結合された0.1nm〜20nmの連続した、コンフォーマルな膜の第1の金属酸化物と、前記第1の金属酸化物とは異なり、前記第1の金属酸化物の連続した、コンフォーマルな膜上に堆積され、かつ前記第1の金属酸化物に化学的に結合された金属酸化物の擬似キャパシタ材料と、を有し、前記金属酸化物の擬似キャパシタ材料は、0.5nm〜25nmの厚さを有する連続した、コンフォーマルな膜の形態であり、前記複合体の重量の25〜95%を構成し、前記複合体は、少なくとも25m2/gの表面積を有する、スーパーキャパシタ。
前記炭素物質は、活性炭、カーボンブラック、グラフェン、メソポーラスカーボン、炭素繊維、黒鉛粉末、配向性熱分解黒鉛、メソポーラスカーボン、多孔質黒鉛、黒鉛化炭素、グラッシーカーボン、カーボンエアロゲル、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのうちの1つ以上から選択される、請求項1または2に記載のスーパーキャパシタ。
前記遷移金属酸化物または酸化スズは、バナジウム、クロム、モリブデン、チタン、ルテニウム、スズ、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、又は銅の酸化物である、請求項3に記載のスーパーキャパシタ。
少なくとも2つの電極を含むスーパーキャパシタであって、各電極は、導電性の集電体と電気的に接触しており、前記電極は、離間しており、前記電極は、前記電極の間に介在し、かつ前記電極の各々と接触している電解質を有し、前記電極のうちの少なくとも1つは、多孔性炭素物質の複合体であり、前記多孔性炭素物質の複合体は、前記炭素物質上に堆積され、かつ前記炭素物質に直接的に又は中間官能化層を介して化学的に結合された0.1nm〜20nmの連続した、コンフォーマルな膜の第2、3、12、13、14、又は15族の金属酸化物と、前記第2、3、12、13、14、又は15族の金属酸化物の連続した、コンフォーマルな膜上に堆積され、かつ前記第2、3、12、13、14、又は15族の金属酸化物に化学的に結合された遷移金属酸化物又は酸化スズと、を有し、前記遷移金属酸化物又は酸化スズは、1nm〜25nmの厚さを有する連続した、コンフォーマルな膜の形態であり、前記複合体の重量の25〜95%を構成し、前記複合体は、少なくとも25m2/gの表面積を有する、スーパーキャパシタ。
第2、3、12、13、14、又は15族の金属酸化物の連続した、コンフォーマルな膜上に堆積される、前記遷移金属酸化物又は酸化スズの連続した、コンフォーマルな膜は、2nm〜20nmの厚さを有する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
第2、3、12、13、14、又は15族の金属酸化物の連続した、コンフォーマルな膜上に堆積される、前記遷移金属酸化物又は酸化スズの連続した、コンフォーマルな膜は、2nm〜12nmの厚さを有する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
前記多孔性炭素物質上に堆積される、前記第2、3、12、13、14、又は15族の金属酸化物の連続した、コンフォーマルな膜は、0.5nm〜5nmの厚さを有する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
中間官能化層が、前記多孔性炭素物質と前記第2、3、12、13、14、又は15族の金属酸化物の連続した、コンフォーマルな膜との間に、挿入される、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
前記炭素物質は、活性炭、カーボンブラック、グラフェン、メソポーラスカーボン、炭素繊維、黒鉛粉末、配向性熱分解黒鉛、多孔質黒鉛、黒鉛化炭素、グラッシーカーボン、カーボンエアロゲル、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブのうちの1つ以上から選択される、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
前記遷移金属酸化物又は酸化スズは、バナジウム、クロム、モリブデン、チタン、ルテニウム、スズ、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、又は銅の酸化物である、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
前記遷移金属酸化物又は酸化スズは、MOZ形態であり、ここで、Mは、原子価状態y、及びz≧y/2を有する遷移金属を示す、請求項18に記載のスーパーキャパシタ。
【背景技術】
【0002】
ウルトラキャパシタとしても知られるスーパーキャパシタは、従来のキャパシタと比較して非常に高い静電容量(及び故に非常に高いエネルギー密度)を有し、かつ電池に比べて非常に高い電力密度を有することを特徴とするエネルギー蓄積装置である。その高い静電容量及び高出力のおかげで、スーパーキャパシタは、幅広い用途において有効的なエネルギー蓄積及び電力供給装置であり得る。これらの用途は、家庭用電化製品、無線通信機器、電気自動車、及び燃料電池車の領域を含む。スーパーキャパシタは、急速なエネルギー放出及び/又は急速なエネルギー捕捉が必要とされる用途において特に有用である。従って、スーパーキャパシタは、電気自動車又はハイブリッド車において、加速をブーストしたり、制動エネルギーを捕捉する
ために使用される。
【0003】
スーパーキャパシタは、電気二重層キャパシタ(EDLC)型、疑似キャパシタ型、及びハイブリッド型として分類することができる。EDLCは、電極と電解質との間で電荷の移動なしに静電的に又は「非ファラデー的に(non−Faradaically)」電荷を蓄積する。EDLC型における電極は、例えば、非常に高い表面積の炭素電極であり、当該炭素電極は、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンエアロゲル、カーボンナノファイバー、グラフェン、及びこれらの材料のうちの1つ以上を含有する様々な複合体であり得る。これらの材料の静電容量は、それらの表面積に大きく依存する。
【0004】
EDLCは、一般に、電力密度は高いが、エネルギー密度は低い。一方、疑似キャパシタは、いくらかの電力密度を犠牲にして、EDLCよりも潜在的にはるかに高いエネルギー密度を有する。これらの現象の各々は、疑似キャパシタがエネルギーを蓄積及び放出するファラデー機構に関する。疑似キャパシタとして提案された材料の中には、様々な遷移金属酸化物(V
2O
5、RuO
2、MnO
2、TiO
2、及びNiOなど)、Ni(OH)
2、及びTiS
2、BeTe
3などのその他の遷移金属化合物、ならびにSnO
2など特定の他の金属酸化物がある。EDLCとは異なり、疑似キャパシタは、電極表面と電解質との間の電荷の移動を介して、エネルギーを蓄積及び放出する。この電荷移動機構は、EDLCの物理的な電荷蓄積機構よりも遅く、これが、結果として、より低い電力密度をもたらすことになる。擬似キャパシタ材料は、高い電気抵抗を有する傾向がある。これは、高電力静電容量及びサイクル性能にとって有害である。加えて、擬似キャパシタ材料が非常に高い表面積を有するように(これは、実際に行うことは困難である)製造されたときにのみ、高エネルギー密度を得ることができる。その結果、より導電性が高く、高表面積の基板中に擬似キャパシタ材料を分散、又は該基板上に擬似キャパシタ材料をコーティングしたナノコンポジットを形成するための試みがなされた。
【0005】
高表面積の疑似キャパシタを製造するという問題を克服するための方法として、またEDLCの高電力密度と擬似キャパシタの高エネルギー密度とを組み合わせる試みとして、ハイブリッドスーパーキャパシタが提案された。1つのアプローチでは、擬似キャパシタ材料のナノ粒子又はナノコーティングは、高表面積の炭素基板に塗布される。炭素基板は、非ファラデープロセスを介して静電容量を提供し、また擬似キャパシタ粒子のための導電性基板を提供する。例えば、Wang
et al.による「Dalton Trans.」(2011,40,6388)(グラフェン基板上のCeO2ナノ粒子)、及びGhosh et al.による「Adv.Funct.Mater.」(2011,21,2541−2547)(カーボン−ナノファイバー紙上の3−18nmのV2O5コーティング)。
【0006】
原子層堆積法(ALD)は、他の基板のうち、高アスペクト比の基板及びナノ粒子上にコンフォーマルな薄膜を堆積することが可能である薄膜堆積技術である。ALDプロセスは、膜厚に対して精密な制御を可能にし、ほとんどの場合、基板に化学的に結合した膜を
形成する。ALD技術は、TiO
2−グラフェン複合体を製造するために使用されてきた。Meng et al.,「Controllable synthesis of graphene−based titanium dioxide nanocomposites by atomic layer deposition」,Nanotechnology 22(2011)165602を参照のこと。Meng et al.は、堆積温度及び塗布された二酸化チタンの量(実行された反応サイクル数で表現される)により、塗布された二酸化チタンの構造が変化したことを発見した。二酸化チタンは、最初に、2〜3nmの粒子を形成する。より多くの反応サイクルが実行されるにつれて、粒子が成長し、最終的には連続膜を形成する。より低い堆積温度(150〜200℃)は、アモルファス膜を製造する傾向があり、一方、より高い堆積温度(200〜250℃)は、アナターゼ材料を
形成した。Mengは、複合体の電気化学的試験については何も記載していない。
【0007】
本発明は、少なくとも2つの電極を含むスーパーキャパシ
タであり、ここで、各電極は、導電性の集電体と電気的に接触しており、前記電極は、離間しており、前記電極は、前記電極の間に介在し、かつ前記電極の各々と接触している電解質を有し、前記電極のうちの少なくとも1つは、多孔性炭素物質の複合体であり、前記多孔性炭素物質の複合体は、原子層堆積プロセスによって、前記炭素物質上に堆積され、かつ前記炭素物質に化学的に結合された金属酸化物の擬似キャパシタ材料を有し、前記酸化物の擬似キャパシタ材料は、0.5〜20nmの粒子の形態又は0.5〜25nmの厚さを有する膜の形態であり、前記複合体の重量の25〜95%を構成し、前記複合体は、少なくとも25m
2/gの表面積を有する。
【0008】
具体的な実施形態では、本発明は、少なくとも2つの電極を含むスーパーキャパシタであり、ここで、各電極は、導電性の集電体と電気的に接触しており、前記電極は、離間しており、前記電極は、前記電極の間に介在し、かつ前記電極の各々と接触している電解質を有し、前記電極のうちの少なくとも1つは、多孔性炭素物質の複合体であり、前記多孔性炭素物質の複合体は、前記炭素物質上に堆積され、かつ前記炭素物質に直接的に又は中間官能化層を介して化学的に結合された0.1〜20nmの粒子又は0.1〜20nmの膜の第1の金属酸化物と、前記第1の金属酸化物とは異なり、前記第1の金属酸化物の粒子又は膜上に堆積され、かつ前記第1の金属酸化物に化学的に結合された金属酸化物の擬似キャパシタ材料とを有し、前記金属酸化物の擬似キャパシタ材料は、0.5〜20nmの粒子の形態又は0.5〜25nmの厚さを有する膜の形態であり、前記複合体の重量の25〜95%を構成し、前記複合体は、少なくとも25m
2/gの表面積を有する。
【0009】
スーパーキャパシタのすべての電極は、本明細書に記載される
ような複合体から形成されていることが好ましい。
【0010】
本発明のスーパーキャパシタは、高走査速度においてでさえ、優れた比容量を有することが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明のスーパーキャパシタ5の実施形態の断面図である。電極2の各々は、隣接する集電体1と電気的に接触している。集電体1の各々は、典型的には、電気回路(図示せず)と電気的に接続されている。電気回路は、充電サイクル中にスーパーキャパシタ5
の両端に電位を印加し、それによりエネルギーの蓄積に導き、エネルギーは、放電サイクル中に電気回路内に放出される。電極2は、互いに離間し、電解質3が電極2の間に介在しており、かつ電極2のそれぞれに接触している。図示の実施形態では、セパレータ4が電極2の間に介在している。セパレータ4は、電極2が互いに接触するのを防止するように機能し、それによって、短絡を防止する。他の方法で電極2が互いに電気的に接触することが制限されている場合には、セパレータ4を省略してもよい。
【0013】
図1に示す実施形態は、2つの電極及び2つの集電体のみを含むが、特定のスーパーキャパシタの設計においては、より多くの電極を含むことが可能である。ここでは、各々の電極は、集電体と電気的に接触しており、各々の電極は、隣接する電極から離間しており、電解質が隣接する各々の対の電極の間に介在しており、かつ当該隣接する各々の対の電極と接触している。必要であれば、セパレータは、隣接する各々の対の電極の間にも介在される。周知のように、特定のスーパーキャパシタの設計は、様々な積層及び螺旋巻き設計(spiral−wound design)を含む。
【0014】
集電体1は、金属等の導電性材料で作製される。金属のうち、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、金、白金等すべてが適している。
【0015】
電解質3は、スーパーキャパシタのための電荷貯蔵池(charge reservoir)を提供する材料である。電解質は、固体又は液体であり得る。電解質が液体である場合には、電解質は、電極材料の孔に入り、電荷蓄積のためのイオン電荷担体を提供する。
【0016】
スーパーキャパシタにおける液体電解質は、水系電解液、有機電解液、又はイオン液体である。水系電解液の例としては、硫酸水溶液、水酸化カリウム水溶液、及び水酸化ナトリウム溶液が挙げられる。
【0017】
動作電圧が約1ボルトを超えると予想されるときには、有機電解液が一般的には好ましい。有機電解液は、1つ以上の塩を溶解させた1つ以上の有機溶媒を含む。有機溶媒は、例えば、1つ以上の直鎖アルキルカーボネート、環状カーボネート、環状エステル、直鎖状エステル、環状エーテル、アルキルエーテル、ニトリル、スルホン、スルホラン、シロキサン、及びスルトンを含み得る。前述の種類のうちの任意の2つ以上の混合物を使用することができる。環状エステル、直鎖アルキルカーボネート、環状カーボネートは、好適な種類の非水溶媒である。好適な直鎖アルキルカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等を含む。好適な環状カーボネートは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等を含む。適切な環状エステルは、例えば、γ−ブチロラクトン、及びγ−バレロラクトンを含む。
【0018】
有機電解液中に溶解した塩は、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩といった第四級アンモニウム塩、
硫酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等
との様々なアルカリ金属塩のうちの任意のものであってもよい。
【0019】
高分子ゲル電解質もまた有用である。このような電解質の例としては、ポリウレタン−LiCF
3SO
3、ポリウレタン−過塩素酸リチウム、ポリビニルアルコール−KOH−H
2O、ポリ(アクリロニトリル)−リチウム塩、ポリ(アクリロニトリル)−第四級アンモニウム塩、及びポリ(エチレンオキシド)−グラフト化ポリ(メチル)メタクリレート−第四級アンモニウム塩を含む。さらに、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネートなどの他の化合物もまた、ポリマーマトリックス中に組み込むことができる。
【0020】
セパレータは、非導電性材料から好都合に構成される。動作条件の下で、セパレータは、電解液及び電解液の成分のいずれか
と反応性
または可溶性を有していてはならない。高分子セパレータが一般的には適している。セパレータを形成するのに適したポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。
【0021】
電解液は、セパレータ
を透過することができなければならない。このため、セパレータは、一般に多孔質であり、多孔質シート、不織布又は織布等の形態である、セパレータの空隙率は、一般的に20%以上であり、最大90%である。好ましい空隙率は、30〜75%である。孔は、一般的に0.5ミクロンより大きくなく、好ましくは最長寸法は0.05ミクロンまでである。セパレータは、典型的には、少なくとも1ミクロンの厚さであり、最大50ミクロンの厚さであってもよい。好ましい厚さは、5〜30ミクロンである。
【0022】
スーパーキャパシタの電極のうちの少なくとも1つは、多孔性炭素物質の複合体である。当該多孔性炭素物質の複合体には、金属酸化物の擬似キャパシタ材料が堆積され、化学的に結合されている。金属酸化物の擬似キャパシタ材料は、0.5〜20nmの粒子の形態又は0.5〜25nmの厚さを有する膜の形態であり、複合体の重量の25〜95%を構成する。複合体は、少なくとも25m
2/gの表面積を有する。
【0023】
特定の実施形態では、スーパーキャパシタの電極のうちの少なくとも1つは、多孔性炭素物質の複合体である。当該多孔性炭素物質の複合体は、炭素物質に直接的に又は中間官能化層(intermediate functionalizing layer)を介して化学的に結合された0.1〜20nmの粒子の形態又は0.1〜20nmの膜の形態で多孔性炭素物質の複合体に堆積した第1の金属酸化物と、第1の金属酸化物上に堆積され、当該第1の金属酸化物に化学的に結合された金属酸化物の擬似キャパシタ材料と、を有する。このような実施形態の金属酸化物の擬似キャパシタは、0.5〜20nmの粒子の形態又は0.5〜25nmの厚さを有する膜の形態であり、複合体の重量の25〜95%を構成する。このような実施形態の複合体は、少なくとも25m
2/gの表面積を有する。このような電極が
図9に概略的に示されている。
【0024】
図9において、電極60は、簡略化のため、
図9に孔のない平面部が図示されている多孔性炭素物質61を含む。第1の金属酸化物層63が多孔性炭素物質61の表面上に堆積される。図示の実施形態では、層63は、中間官能化層62を介して炭素物質61に化学的に結合されている。金属酸化物の擬似キャパシタ材料64は、第1の金属酸化物層63上に堆積され、第1の金属酸化物層63に化学的に結合されている。
【0025】
炭素物質は、例えば、活性炭、カーボンブラック、グラフェン、メソポーラスカーボン、炭素繊維、多孔質黒鉛、黒鉛化炭素、黒鉛粉末、配向性熱分解黒鉛、グラッシーカーボン、カーボンエアロゲル、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブなどであってもよい。炭素物質は、非酸化性雰囲気中における高温への暴露によって炭化されたポリマーであってもよいし、又は当該ポリマーを含んでもよい。このようなやり方で炭化することができるポリマーの例としては、例えば、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリアセナフタレン、ポリアクリル酸塩、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ−L−ラクチド、様々なポリイミド、ポリウレタン、ナイロン、ならびに、ポリ(アクリロニトリル−メチルアクリレート)、ポリ(アクリロニトリル−メチルメタクリレート)、ポリ(アクリロニトリル−イタコン酸−メチルアクリレート)、ポリ(アクリロニトリル−ビニルピリジン)、ポリ(アクリロニトリル−塩化ビニル)、及びポリ(アクリロニトリル−ビニルアセテート)などのポリアクリロニトリル共重合体が挙げられる。
【0026】
炭素物質は、多孔質である。それは、例えば、泡、織布、不織布、マット又は絡合した繊維、圧縮された微粉(圧縮されたナノファイバー、ナノチューブ、剥脱層状物質等を含む)の形態であってもよい。金属酸化物層の堆積の前に、炭素物質は、例えば、窒素吸着/脱着等温線法(BET吸着法など)によって測定されるように、少なくとも50m
2/gの表面積を有し得る。炭素物質は、少なくとも100m
2/g、好ましくは250m
2/gの表面積を有する。炭素物質は、最大約2600m
2/gの表面積(完全に剥離されたグラフェンの理論上の表面積)の表面積を有してもよいが、典型的には、実践において約1500m
2/g又は1000m
2/gを超えない。
【0027】
金属酸化物の擬似キャパシタ材料は、擬似静電容量を示す任意の金属酸化物であってもよい。金属酸化物の擬似キャパシタ材料は、例えば、第3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12族の金属又はスズの酸化物であってもよい。いくつかの実施形態における、この擬似キャパシタの金属酸化物は、遷移金属酸化物又は酸化スズである。いくつかの実施形態における金属は、元素の周期表の第4行目のメンバーである。第5及び6行目の酸化物を用いることができ
るが、これらは、はるかに重いので、これらの金属の酸化物が使用されるときには、比容量が著しく小さい。いくつかの実施形態における金属酸化物の擬似キャパシタ材料は、MO
Z形態をとり、ここで、Mは、原子価状態y、及びz≧y/2を有する金属を示す。特定の金属酸化物の例としては、例えば、バナジウム、クロム、モリブデン、チタン、ルテニウム、スズ、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び銅の酸化物が挙げられる。ニッケル−コバルト酸化物などの2つ以上の遷移金属の複合酸化物もまた有用である。
【0028】
金属酸化物の擬似キャパシタ材料は、0.5〜20nm、好ましくは1〜20nmの粒子の形態で、又は0.5〜25nm、好ましくは1〜25nmの厚さを有する膜の形態で存在する。粒子の形態の場合には、粒子は、より好ましくは1〜10nmの粒子、特に3〜10nmの粒子である。膜の形態の場合には、膜は、好ましくは2〜20nm、特に2〜12nmの厚さを有する。
【0029】
金属酸化物の擬似キャパシタ材料の堆積した粒子又は膜は、複合体の重量の25〜95%を構成する。より典型的な量は、複合体の重量の50〜75%である。
【0030】
第1の金属酸化物が存在するときには、当該第1の金属酸化物は、0.1〜20nmの粒子、好ましくは0.2nm以上の粒子の形態、又は0.1〜20nm、好ましくは0.2〜5nm、より好ましくは0.25〜1nmの厚さを有する膜の形態で炭素物質上に堆積される。この層は、好ましくは膜である。膜は、好ましくは、連続的かつコンフォーマルである。第1の金属酸化物は、好ましくは、後述するように、原子層堆積プロセスにより堆積し得るものである。第1の金属酸化物は、金属酸化物の擬似キャパシタ材料とは異なり、又は疑似キャパシタ材料自体であってもなくてもよい。第1の金属酸化物は、好ましくは、第2、3、12、13、14、又は15族の金属酸化物である。金属は、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Zn、Cd、Hg、Al、Ga,In、Ge,Sn、Pb、Sb、又はBiであってもよい。32以下の原子量を有する金属の酸化物が好ましい。なぜなら、より重い金属は、電極の重量を著しく増加させ、それによって、比容量を減らすからである。いくつかの実施形態では、この酸化物は、典型的には、M
1O
Z形態をとり、ここで、M
1は、原子価状態y、及びz≧y/2を有する第2、3、12、13、14、又は15族の金属を示す。アルミニウムが最も好ましい金属である。
【0031】
第1の金属酸化物は、炭素物質上に堆積され、炭素物質に直接的に又は中間官能化層を介して化学的に結合され得る。いくつかの場合において、炭素物質自体は、その表面において第1の金属酸化物に結合するために十分な反応性基を欠いていてもよい。グラフェンは、例えば、それらの縁部又は欠陥において反応性基をしばしば有するが、平坦な表面上において反応性基を欠く剥離シートからなる。反応性基の欠如は、結果的に、第1の金属酸化物層の不規則なもしくは不完全な堆積又は結合をもたらしかねない。このような場合には、炭素物質と第1の金属酸化物層との間に中間官能化層を堆積してもよい。中間官能化層は、結合層(tie layer)として及び/又は単に炭素物質の表面に導入された官能基の層として理解することができる。中間官能化層は、炭素物質及び第1の金属酸化物層への化学結合を形成する。
【0032】
中間官能化層は、それゆえ、わずか0.05nmの厚さを有する単原子層ほど小さくなり得る。中間官能化層は、20nmの厚さであってもよいが、好ましくは5nmの厚さを超えず、より好ましくは1nm又は0.5nmの厚さを超えない。
【0033】
複合体は、窒素吸着/脱着等温線法(BET吸着法など)によって測定されるように、少なくとも25m
2/gの表面積を有する。グラム当たりの表面積は、一般的に出発炭素物質よりも、複合体の方がはるかに小さい。なぜなら、金属酸化物の擬似キャパシタ材料の重量が追加されるからである。故に、複合体の表面積は、典型的には、200m
2/gを超えず、より典型的には25〜100m
2/gである。しかしながら、孔のサイズ及び孔の容積は、出発炭素物質のものからほとんど変化しない傾向がある。複合体は、典型的には、出発炭素物質に典型的である開口
しそして相互接続された孔を有する。
図2及び
図2Aは、例示的なものである。
図2において、複合体20は、孔22を含有する部分的に剥離したグラフェンシート21を含む。
図2及び
図2Aの金属酸化物の擬似キャパシタ材料は、
図2Aの高倍率図において見て分かるように、3〜15nmの粒子23の形態で堆積される。
【0034】
金属酸化物の擬似キャパシタ材料の粒子又は膜は、原子層堆積プロセスによって堆積される。原子層堆積プロセスでは、層は、2つ以上の気相反応物質の反応において堆積される。気相反応物質は、別々に交互に炭素物質と接触する。気相反応物質は、プロセスの状況下で
は、それ
ら自体とは反応することができない。各反応物
質は、基板の表面において反応し、各々が順番に堆積される材料の単層を形成する。過剰量の反応物
質は、次の反応物
質を導入する前に除去される。反応副生成
物も同様に、
薬剤(reagent)の連続導入の合間に除去される。この手順は、反応が気相内ではなく、基板の表面において起こることを確実にする。
【0035】
過剰な反応物
質を除去することをさらに助けるために、典型的には、反応物
質を交互に供給する合間にパージガスが導入される。一般的にパージガスと同じであるが、必ずしもパージガスと同じではない(いつも同じ時とは限らない)キャリアガスが、各反応物が導入されている間に導入される。キャリアガスは、いくつかの機能を実行し得る。当該機能は、(1)過剰な反応物
質及び反応副生成物の除去を促進することと、(2)反応ゾーンを通って反応物
質を分配することにより、すべての基板表面を反応物
質に露出させることを助けることと、(3)電極粒子にコーティングを行う場合には、すべての粒子表面が反応物
質に暴露されるように粒状基板を流動化することと、を含む。パージガスは、
原子層堆積法(ALD)反応物
質及び堆積されたコーティングと望ましくないようには反応せず、また、金属粒子の表面における互いの反応を妨害しない。
【0036】
(2
薬剤ALD反応スキームにおける)反応物質を導入する典型的なパターンは、次のとおりである。
1.
オプションとして、パージ/流動化ガスを導入する。
2.第1の
薬剤、又はキャリアガスと第1の
薬剤との混合物を導入する。
3.パージ/流動化ガスを導入し、及び/又は過剰量の第1の
薬剤ならびに反応副産物を除去するために高真空
にする。
4.第2の
薬剤、又はキャリアガスと第2の
薬剤との混合物を導入する。
5.パージ/流動化ガスを導入し、及び/又は過剰量の第2の
薬剤ならびに反応副産物を除去するために高真空
にする。
6.所望のコーティングの厚さが得られるまで工程2〜5を繰り返す。
このプロセスは、1つの反応サイクル内に任意の数の
薬剤を含むように適合可能である。
【0037】
反応条件は、主に、2つの基準を満たすように選択される。第1の基準は、
薬剤が反応
条件下で気体であることである。故に、反応物
質が揮発するように温度及び圧力条件が選択される。第2の基準は、反応性
基準である。気相
薬剤(又は、反応開始時に、最初に導入された
薬剤と粒子表面との)間で所望の反応が商業的に妥当な速度で起こるように条件、特に温度が選択される。
【0038】
反応の温度は、250〜1000Kの範囲であってよいが、
好ましくは500Kよりも高くない。好ましい温度範囲は、273から473Kである。基板は、膜を堆積するために使用される温度において熱的に安定しているべきであり、故に、いくつかの場合において、動作温度は、特定の基板に関連して選択されてもよい。
【0040】
反応の進行
は、例えばフーリエ変換赤外分光法、オージェ電子分光法、水晶振動子マイクロバランス法、及び質量分析法などの技術を用いてモニターすることができる。
【0041】
このような原子層堆積技術は、反応サイクルあたり約0.01〜0.6nmまでの厚さの堆積物の形成を可能にし、故に、堆積物の厚さに対して非常に精密な制御の手段を提供する。反応は、自己限定的であり、所望の厚さが達成されるまで、堆積される材料のさらなる層を連続して堆積するように反応を繰り返すことができる。
【0042】
最初の2,3回の反応サイクル中に、
薬剤の一方または他方が、炭素物質の表面上の官能基と反応して、炭素物質への化学結合を形成する。特定の炭素物質(グラフェン、単層カーボンナノチューブ、及び多層カーボンナノチューブなど)は、プレート境界又は欠陥においてのみ反応性部位と接触する。このため、第1の金属酸化物を堆積する前に、炭素物質上に中間官能化層を導入することが望ましい場合がある。これを達成する1つの方法は、NO
2及び第2、3、12、13、14、又は15族の金属
を含有
する前駆体を
薬剤として使用して1つ以上のALDサイクルを行うことによって、表面反応性基(surface reactive group)を導入することである。このプロセスは、炭素質基板の表面上に反応性亜硝酸基を導入することができ、
その上で炭素質基板上に第1の金属酸化物を堆積することができる。
NO2及びアルミニウム前駆体を用いるこのような適切なプロセスは、一般的に、Farmer et al.による「Atomic layer deposition on suspended single−walled carbon nanotubes via gas−phase non−covalent functionalization」(Nano Letters 2006(6)699−703)に記載されている。これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
第1の金属酸化物及び金属酸化物の擬似キャパシタ材料の堆積の各々は、以下のようにバイナリー(AB)反応シーケンス(binary reaction sequence)を用いて行うことができる。アスタリスク(*)は、粒子又はコーティングの表面に存在する原子を示し、Zは、酸素又は窒素を表す。M
1は、金属の原子であり、Xは、置換可能な求核性基である。以下に示す反応は平衡ではなく、表面反応(すなわち、層間反応
または層内反応ではない)を示すことのみを意図している。
表面−Z−H
*+M
1X
n → M−Z−M
1X
*+HX (A1)
表面−Z−M
1X
*+H
2O → M−Z−M
1OH
*+HX (B1)
反応A1において、
薬剤M
1Xnは、表面において1つ以上の表面
*−Z−H基と反応して、−M
1−X形態を有する新たな表面基を作成する。M
1は、1つ以上のZ原子を介して炭素物質の表面に結合される。−
M1−X基は、1つ以上のヒドロキシル基を再生するために、反応B1において水と反応することができる部位を表す。反応B1に形成されたヒドロキシル基は、反応A1及びB1を繰り返すことができる(毎回M
1原子の新たな層を追加する)官能基として機能することができる。いくつかの場合において、ヒドロキシル基は、水として取り除くことが可能であり、それによって、層内又は層間のM
1−O−M
1結合を形成する。所望の場合には、例えば、高温及び/又は減圧圧力
におけるアニーリングによってこの縮合反応を促進することができる。
【0044】
式A1及びB1によって記載された一般的なタイプのバイナリー反応は、J.W.Klaus et al.,「Atomic Layer Controlled Growth of SiO
2 Films Using Binary Reaction Sequence Chemistry」(Appl.Phys.Lett.70,1092(1997))、及びO.Sheh et al.,「Atomic Layer Growth of SiO
2 on Si(100)and H
2O using a Binary Reaction Sequence」(Surface Science 334,135(1995))、A.C.Dillon et al.,「Surface Chemistry of Al
2O
3 Deposition using Al(CH
3)
3 and H
2O in a Binary reaction Sequence」(Surface Science 322,230(1995))、A.W.Ott et al.,「Al
2O
3 Thin Film Growth on Si(100)Using Binary Reaction Sequence Chemistry」(Thin Solid Films 292,135(1997))、Meng et al.,「Controllable synthesis of graphene−based titanium dioxide nanocomposites by atomic layer deposition」(Nanotechnology 22(2011)165602)、Tsapatsis et al.(1991)Ind.Eng.Chem.Res.30:2152−2159、及びLin et al.,(1992),AIChE Journal 38:445−454においてより詳細に記載されている。
【0045】
原子層堆積プロセスの結果は、複合電極材料であり、ここでは、金属酸化物の擬似キャパシタ材料が多孔性炭素物質上に、又は以前に堆積された第1の金属酸化物層の上に堆積され、それに化学的に結合される。これらの層(すなわち、金属酸化物の擬似キャパシタ材料及び第1の金属酸化物)は、典型的には、外側表面上に堆積するだけでなく、マクロ孔内にも堆積し、より重要なことには、メソ細孔内にも堆積する。このため、
堆積された層は、炭素物質の三次元構造の全体にわたって堆積される傾向がある。
【0046】
いくつかの場合において、ALDプロセスは、最初の反応サイクルにわたって、堆積された第1の金属酸化物の単離された「島」を形成する傾向があるかもしれない。「島」は、反応サイクルを繰り返すことによって、より大きなサイズに成長することができ、最終的には連続膜を形成するように融合する。このような島が形成される場合、ALDプロセスは、連続膜が生成される前に中止されてもよく、それによって、0.5〜20nm、好ましくは1〜20nm、特に1〜10nmの金属酸化物粒子を形成する。しかしながら、第1の金属酸化物の連続膜を形成することが好ましい。粒子が最初に形成される場合には、膜は、通常、より多くのALD反応サイクルを実行することによって形成される。炭素質基板が十分な表面官能基を含有する(又は中間官能化層が塗布される)場合には、第1の金属酸化物は、高度に均一な態様で堆積する傾向があり、最初の2、3回の反応サイクル後に連続膜を形成する。
【0047】
同様に、いくつかの場合では、最初に、金属酸化物の擬似キャパシタ材料が、単離された「島」形態で炭素物質上又は第1金属酸化物層上に堆積されてもよい。そのような場合には、連続膜が形成されるまでALDプロセスを繰り返すことができ、又は小粒子の形態の金属酸化物の擬似キャパシタ材料を残すようにALDプロセスを中止してもよい。
【0048】
結果として得られた複合体は、任意の簡便なやり方で電極に形成することができる。複合体が粉末の形態である場合には、スラリーを形成するために、複合体は、1つ以上の結合剤材料、
オプションとしてカーボンブラックなどの1つ
の導電材料、及び水、低級アルコール等の溶媒又は分散剤と都合よく組み合わせることができる。当該スラリーは、電流導体に塗布され、乾燥される。複合体は、マット、布、フェルト等であってよく(又はマット、布、フェルト等に形成されてもよく)、マット、布、フェルト等は、その後、任意の簡便な方法で集電体に取り付けられる。所望の場合には、例えば最大200℃の温度で、結果として得られた電極に乾燥を施してもよい。乾燥工程は真空下で行ってもよい。
【0049】
電極の形状に炭素物質を
組立て、その後、原子層堆積法によって金属酸化物を堆積することによって複合体を形成することも可能である。これは、集電体に炭素物質を取り付ける前又後に行うことができる。
【0050】
複合体は、電極に形成される前又は後に、(例えば、空気又は他の酸素含有ガスと接触させるなどによって)酸素に曝してもよい。酸素への暴露は、金属酸化物の擬似キャパシタ材料の堆積した粒子又は膜の表面における酸化状態を増大させることができ、これにより、電極の静電容量を増加させることができる
【0051】
複合電極は、
炭素物質
それ自体よりも著しく大きい比容量を有する。これは、堆積した金属酸化物の擬似キャパシタ材料が複合体の静電容量に寄与していることを示す。
複合電極の比容量の値は、金属酸化物擬似キャパシタ材料の負荷、存在する特定の金属酸化物擬似キャパシタ材料、粒径及び/又は膜厚、基板として使用される特定の炭素物質、などの様々な要因に依存して、大きく変動するが、複合電極の比容量は、しばしば70F/gを超える。
【0052】
本発明の特定の利点は、優れた比容量値が150mV/s
まで、またはそれ以上の走査速度で見られることである。高い走査速度での比容量値は、比容量値がしばしば
適応される高い充/放電
速度における材料の性能の良い指標である。例えば、スーパーキャパシタは車両用電源システムにおいて重要であり、
そこではスーパーキャパシタは、高電力密度を有するので、
しばしば加速をブーストし
、または一時的に高負荷(丘を登るなど)下で追加の電力を提供する
ために使用される。このような用途において、本発明で見られる高い放電
速度での高い比容量は、大きな利点であり得る。同様に、これらの車両用スーパーキャパシタは、制動からエネルギーを捕捉するようにしばしば使用される;このエネルギーは、断続的に、大量に、かつ短期間、利用可能である。そのため、このエネルギーを効果的に捕捉するために高い充電
速度での高比容量が必要とされる。
【0053】
本発明のスーパーキャパシタは、自動車や他の車両におけるエネルギー供給/捕捉装置として;及び、幅広い電気及び電子機器の電力供給/蓄積装置として有用である。それらは、電動工具、コードレス電話、携帯電話、コンピュータ、パーソナルコンピューティングデバイス、携帯型電子ゲームプレーヤー、懐中電灯、電気シェーバーなどの再充電可能な製品のための充電器において特に有用である。
【0054】
以下の実施例は本発明を説明するために提供されるが、本発明の範囲を限定するものではない。特に断らない限り、全ての
比率(part)及び百分率は重量基準である。
【0055】
<実施例1〜4>
濃縮されたH
2SO
4(115mL)とNaNO
3(2.5g)との混合物に黒鉛粉末(5g)を添加し、氷浴中で撹拌する。KMnO
4(15g)を添加し、混合物を35℃で30分間撹拌する。230mLの脱イオン水をゆっくり
と添加し、混合物の温度を15分間で98℃まで上昇させる。3mLの3%過酸化水素と355mLの脱イオン水との混合物を添加する。固体物質を遠心分離によって液体から回収し、過剰な脱イオン水、20vol%のHCl及びエタノールで洗浄する。洗浄処理を3回繰り返す。結果として得られた黄褐色のグラフェン酸化物粉末を12時間40℃の真空下で乾燥させる。200mgの粉末を一端が封止された石英管のるつぼに入れる(loaded)。管をアルゴンでパージし、次いでゴム栓で封止する。密封した管を予熱した1050℃のオーブン内に入れ、そこで30秒間保持して、膨張したグラフェン粉末を生成する。
【0056】
粉末のサンプルを、12時間150℃の真空下で加熱する。その後、
処理した粉末の表面積をQuantachrome AUTOSORB−1装置を用いて測定する。グラフェンの表面積は、467m
2/gである。
【0057】
X線回折
が、グラフェン粉末の別のサンプルに対して、PAN分析的X線回折システム(PAN analytical x−ray diffraction system)を使用して行
われる。約24°(2θ)における小さく広いピークは、剥離したグラフェンシートの幾分無秩序な層の重なりを示す。
【0058】
実施例1の電極
は、回転反応器内においてALDによってこのグラフェン材料の一部の上にTiO
xを堆積することによって調製
される。気相反応物質は、TiCl
4及び水である。各反応サイクルは、以下の工程からなる:i)1.0TorrになるようにTiCl
4を投与;ii)反応生成物及び過剰なTiCl
4の除去;iii)1.0TorrになるようにH
2Oを投与;及びiv)反応生成物及び過剰な水の除去。これらの工程の各々は、180℃で行われる。50回の反応サイクルが行われる。
【0059】
実施例2の電極は、100回の反応サイクルが行われる以外は同様のやり方で行われる。200kVの動作電圧のJEOL JEM−2010機器を用いて、実施例2において
透過型電子顕微鏡(TEM)画像を得た。2つの倍率
レベルの画像が、
図2及び2Aをそれぞれ形成する。
【0060】
実施例1及び2のX線回折研究の各々は、結晶化アナターゼTiOを
指し示す回折ピークを示す。このTiOxの存在はまた、X線元素分析及びX線光電子分光法(XPS)によって確認される。XPSスペクトルは、
530.6、532及び533.3eVのエネルギーに対応するピークを含み、
それらはTi−O、C−O及びH−O結合にそれぞれ割り当てられており、
そしてそれらはグラフェンとTiOx粒子との間の共有化学結合の形成を示す。この化学結合は、グラフェンネットワーク全体にわたって、及びグラフェンとTiOx粒子との間で、高速な電子輸送を促進し得る。
その化学結合はまた、複合体の化学的安定性を高めるはずである。
【0061】
走査型電子顕微鏡(SEM)及びTEMによる分析は、グラフェン表面ならびにグラフェンのマクロ細孔内にTiOx粒子が
配置されており、
このことが、グラフェン上への
TiOx粒子の3次元分布に
つながることを示している。マクロ細孔内に粒子を
配置する能力は、ALD法に特有であると考えられ
ている。実施例1の粒径は、約6nmであり;実施例2の粒径は、約10nmである。
【0062】
実施例1及び2の表面積は
上記のように測定
され、それぞれ120m
2/g、48m
2/gであることが分かった。単位重量当たりの表面積の減少は、
主にTiOxの堆積によるサンプルの質量増加に起因する。実施例1及び2の
細孔径分布は、体積
パーセント(細孔幅の全細孔体積に対する比)に基づいて、類似している。これは、TiOx粒子が細孔構造を有意にブロックしていないことを示す。
【0063】
電極は、実施例1及び実施例2の各々のグラフェンから、スラリーを形成するため
の少量のエタノールの存在下で活性物質、カーボンブラック、及びポリテトラフルオロエタンを80:10:10の割合で混合することによって
調製
される。混合物は30分間超音波処理され、次いで円形ニッケル発泡体(1.6cm
2)の集電体上に
ペーストされる。次いで、サンプルは80℃で一晩乾燥され、20MPaで圧縮される。
様々な電極が、
実施例1及び実施例2の各々
のグラフェンから様々な質量負荷
において作製される。
【0064】
電極の電気化学的特性が、Priceton Applied ResearchからのVersaSTAT4ポテンショスタットを使用して、1MのKOH溶液中で−0.05Vから0.5Vまでの電圧範囲で飽和カロメル電極に対してサイクリックボルタンメトリーによって評価
される。10mV/sから150mV/sまで走査速度を変化させる。グラフェン電極は、0.85mg/cm
2のグラフェン負荷(graphene loading)を有する。実施例1及び2の物質を保持する電極は、0.7mg/cm
2のTiO
x負荷を有する。比容量を計算し、結果を
図3にグラフで示す。
図3に見られるように、実施例1及び2の比容量は各々、いずれの走査速度において
もグラフェン電極の比容量よりもはるかに大きい。重要なことは、実施例1及び2の各々は、150mV/sの走査速度においてでさえ、約40F/gの比容量を示す。
【0065】
図4は、グラフェン電極と、実施例1及び実施例2の電極とを比較するナイキストプロットである。各々の場合において、曲線のほぼ垂直形状は、理想的なキャパシタのものに
一致する。複合電極(実施例1及び2)の曲線は、グラフェンの曲線に重なる。これは、複合電極がグラフェンの良好なインピーダンスを維持することを示す。
【0066】
2つのさらなる電極(実施例3及び4)
が、実施例2の複合体を使用して、同じやり方で作製
される。
それぞれのニッケル集電体に対する実施例2の材料の負荷は、それぞれ、1.56と3.22mg/cm
2である。これらの電極の各々の電気化学的性能は、
上述のように決定される。結果を
図5(走査速度の関数としての比容量)及び
図6(ナイキストプロット)に示す;
両方の場合とも、実施例2の結果
が比較のために繰り返
されている。
【0067】
図5に見られるように、比容量は、10mV/sの走査速度において実施例2〜4のすべてについて非常に似ている。実施例3及び4は、より高い走査速度においてわずかに低い静電容量を示す。
図6は、より大きいTiO
x負荷で
も、インピーダンスが
有意に変化しないことを示す。
【0068】
実施例2の電極は、その静電容量を維持する能力を評価するために、2A/gで1000サイクルされる。結果を
図8にグラフで示す。見て分かるように、この電極は、1000サイクル後に、その初期静電容量の87.5%を保持する。この性能は、他のTiO
x複合電極について報告されたよりも
有意に良好である。
<実施例5>
【0069】
グラッシーカーボン基板上における酸化マンガンの成長を確認する
ために、以下に記載するように、100サイクル
のMnO
Xで正方形のグラッシーカーボン(Alfa Aesar)
がコーティング
され、
そして様々なスパッタリング時間後にX線光電子分光法(XPS)を用いて
検査される。XPSスペクトルは、厚さ約70ÅのMnO
X層の堆積、又は約0.7Å/ALD反応サイクルの堆積速度をはっきりと示す。
MnOX層は、離散粒子ではなくむしろ連続膜の形態をとる。
【0070】
厚さが1mmのグラッシーカーボン基板を0.1±0.01cm
2の断面積の正方形に切断する。
図7に示すような電極が、これらの正方形のグラッシーカーボンから作製される。正方形のグラッシーカーボン基板73の底面はテープ75で覆われる。導電性エポキシ層72を用いて正方形のグラッシーカーボン基板73にワイヤ71が接着され、電気絶縁性エポキシ層74を用いて底面を除く
組立体のすべての面がコーティングされる。その後、テープ75が除去される。
【0071】
これらの電極は、その後、200℃の粘性流動反応器(viscous flow reactor)内で原子層堆積法(ALD)を使用して、酸化マンガン(MnOX)をコーティング
される。酸化マンガン(MnO
X)は、ビス(エチルシクロペンタジエニル)マンガン(B(ECP)Mn))及び水を前駆体とする。
堆積
は、a:b:c:dが1:60:1:60のタイミングシーケンスからなるサイクルで行われる。ここで、aは、B(ECP)Mnの投与の長さであり、bは、窒素パージの長さであり、cは、水の投与の長さ、dは、窒素パージの長さであり、すべて秒単位である。B(ECP)Mn及び水の投与は
共に、ベース圧より約100mtorr高
い。25、50、100サイクル(実施例5A、5B及び5C)の酸化マンガンALDによ
るグラッシーカーボン電極が
作製される。
【0072】
電解質
に接触する電極ワイヤの一部
および及び
底面を除く電極のすべての面
が、マニキュアでコーティング
され、硬化される。その後、
製造した電極のサイクリックボルタンメトリーが、0.1MのNa
2SO
4電解液中で、アルゴンによる連続パージ下で、白金対電極及びAg/AgCl参照電極を用いて行
なわれた。
サイクリックボルタモグラムが、0(比較サンプルA)、25、50、及び100ALDサイクルのMnO
Xを有する電極に対して、400mV/secの走査速度で連続して3回測定される。静電容量が単位面積の関数として計算され、MnO
Xの単位質量が計算される。
結果は、表1に示す通りである。
【0074】
このデータは、MnO
X膜の最適な厚さが17Å〜70Åの間であり得ることを示唆する。
<実施例6〜9>
【0075】
実施例6の電極
が、回転反応器
での原子層堆積法により、約467m
2/gの表面積を有するグラフェン上にNO
2/アルミニウム中間層を堆積することによって調製
された。調製は、Cavanagh et al.(Nanotechnology 20(2009)255609)
に記載の一般的な方法を用い、NO
2及びトリメチルアルミニウムを
薬剤として使用した。この中間層は、0.5nm未満の厚さである。その後、トリメチルアルミニウム及び水を前駆体として使用してALDによって、厚さ約0.5nmのアルミナ層が
適用される。TiO
x膜が回転反応器
でのALDにより、アルミナ層の上に堆積
される。気相反応物質は、TiCl
4及び水である。各反応サイクルは、以下の工程からなる:i)
TiCl4を1.0Torrになるように投与;ii)反応生成物及び過剰なTiCl
4の除去;iii)
H2Oを1.0Torrになるように投与;及びiv)反応生成物及び過剰な水の除去。これらの工程の各々を180℃で行う。実施例6については、25回の反応サイクルを行う。実施例7については、50回の反応サイクルを行う。実施例6のTiO
x膜厚は、約5nmであり;実施例7のTiO
x膜厚は、約10nmである。
【0076】
実施例7について、走査電子
顕微鏡(SEM)画像を得る。SEM画像は、
図10を形成する。
図10に見られるように、SEM画像は、連続的かつ高度にコンフォーマルなTiO
x膜が、メソ細孔内においてでさえ、グラフェンのすべての露出した表面上に形成されたことを示す。
【0077】
実施例6及び7のX線回折の研究の各々は、TiO
xが、アモルファス層として堆積したことを示す。TiO
xのこの存在はまた、X線光電子分光法(XPS)によって確認される。
【0078】
実施例6及び7の表面積を上記のように測定し、それぞれ、131.5m
2/g及び91.4m
2/gであることが分かった。単位重量あたりの表面積の減少
(グラフェンに対して)は、アルミナ及びTiO
x層の堆積によるサンプルの質量増加に主に起因する。SEM画像は、塗布された膜が細孔構造を有意にブロックしていないことを示す。
【0079】
実施例6、及び実施例7の各々
のグラフェンからの電極
は、スラリーを形成する
ための少量のエタノールの存在下で、活性物質、カーボンブラック、及びポリテトラフルオロ
エチレンを80:10:10の割合で混合
することによって調製
される。混合物を30分間超音波処理し、次いで円形ニッケル発泡体(1.6cm
2)の集電体上に
ペーストされる。次いで、サンプルを80℃で一晩乾燥させ、20MPaで圧縮する。
様々な電極が、
実施例6、及び実施例7のグラフェンの各々から様々な質量負荷
で作製
される。
【0080】
電極の電気化学的特性
は、Priceton Applied ResearchからのVersaSTAT4ポテンショスタットを使用して、1MのKOH溶液中で−0.05Vから0.45Vまでの電圧範囲での、飽和カロメル電極に対
する定電流充電/放電によって評価される。電流密度を1A/gから10A/gまで変化させる。全ての電極の質量負荷を1mg/cm
2から2mg/cm
2の間で制御する。比容量を計算し;結果を
図11にグラフで示す。
図11において、白丸44は、指定した電流密度における実施例6の比容量値を示し;白三角42は、同じ電流密度における実施例7の比容量値を示す。比較のために、未処理のグラフェンから作製された電極の電気化学的特性を同じやり方で測定する。この結果を白四角47によって
図11に示す。
図11に見られるように、実施例6及び7の比容量の各々は、いずれの電流密度においてグラフェン電極の比容量よりもはるかに大きい。実施例7の比容量値は、実施例6の場合よりもはるかに大きい。
【0081】
実施例6及び7について記載するような一般的なやり方で、8nmの単層カーボンナノチューブを中間官能化層、アルミナ層、及びTiOxでコーティングする。25回のTiO
x ALD反応サイクルを用いて実施例8を形成し、50回のTiO
x ALD反応サイクルを用いて実施例9を形成する。出発ナノチューブ、実施例8、及び実施例9の表面積は、それぞれ、412m
2/g、50m
2/g、29m
2/gである。コーティングしたナノチューブと、比較のためにコーティング
していないナノチューブとを使用して、3つのさらなる電極を同様のやり方で作製する。これらの電極の各々の電気化学的性能は、これまでとおりに決定される。結果を
図11に示す。
図11において、黒四角45は、示した電流密度における、コーティングしていないナノチューブの比容量値を示し、一方、実施例8及び9の比容量値を、それぞれ、黒丸43及び黒三角41によって示す。実施例8及び9の各々の比容量値は、対照よりも高く;実施例9の比容量値は、実施例8の比容量値よりも
有意に高い。
【0082】
さらに比較として、
1つの電極が、70重量%の32nmのTiO2ナノ粒子と、20重量%のカーボンブラックと、10重量%のポリテトラフルオロエチレンとを
前述の一般的なやり方で組み合わせることによって作製される。比容量は、これまでとおり測定され、結果を
図11の菱形46で示す。見て分かるように、グラフェンに化学的に結合していないTiO2ナノ粒子を含むことは、コーティングしていないグラフェンと比較しても比容量の損失をもたらす。
【0083】
実施例10の電極は、その静電容量を維持する能力を評価するために、2A/gで1000サイクルされる。結果を
図12に白丸50で示す。見て分かるように、この電極は、1000サイクル後に、その初期静電容量のすべてを実質的に保持する。この性能は、(黒丸51で示すように)コーティングしていないナノチューブのそれに匹敵する(ただ、コーティングしていないナノチューブは、はるかに低い初期比容量を有する)。