特許第6150443号(P6150443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6150443タイヤトレッドの溝内に可撓性壁を製作する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150443
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】タイヤトレッドの溝内に可撓性壁を製作する方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/68 20060101AFI20170612BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20170612BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B29D30/68
   B29C33/02
   B29C35/02
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-514411(P2015-514411)
(86)(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公表番号】特表2015-523239(P2015-523239A)
(43)【公表日】2015年8月13日
(86)【国際出願番号】EP2013060082
(87)【国際公開番号】WO2013178473
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】1255038
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ピアロ フレデリック
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−510919(JP,A)
【文献】 特開2007−290538(JP,A)
【文献】 特開2003−165310(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/089107(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
B60C 11/00−11/24
B29C 33/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムコンパウンドで作られたタイヤ(T)のトレッドを製作する方法であって、前記トレッドは、トレッド表面(1)と、底壁(PF1,PF2)及び前記底壁から前記トレッド表面に向かって延びる2つの側壁(PL1,PL)を有する少なくとも一つの溝(L1,L3)と、液体が流れると撓むことができるように前記溝内に設けられた少なくとも1つの可撓性壁(P1,P3)とを有し、前記方法は、
‐少なくとも1本の溝(L1,L3)及び前記側壁(PL1,PL3)の高さに等しい高さの少なくとも1つの連結要素(2)を備えた前記トレッドを成形するステップを含み、前記連結要素は、前記溝の長手方向軸線に対して横方向に前記溝(L1,L3)内に配置され、これにより、加硫後、前記連結要素(2)は、前記側壁(PL1,PL3)を前記底壁(PF1,PF3)に前記底壁から所与の深さにわたって連結するようになっており、
‐前記連結要素(2)を前記溝の前記側壁(PL1,PL3)の各々とのその接合部(3)のところで切断して前記可撓性壁(P1,P3)が得られるようにするステップを含む、方法。
【請求項2】
前記切断は、前記溝の前記側壁(PL1,PL3)に当たった状態で載っている切断ツール(5,6;12)を用いて実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記切断ツール(12)は、前記側壁(PL1,PL3)に沿って案内する案内装置(10)に固定されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記切断ツールは、切断ナイフである、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
前記切断ツールは、ホットナイフである、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
前記切断ツールは、回転円形ブレード(5,6)である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
前記回転円形ブレードは、5000〜30000rpmの速度で回転駆動される、請求項記載の方法。
【請求項8】
前記溝(L1,L3)は、円周方向であり、前記方法は、前記トレッドを有する前記タイヤを回転させる装置に該タイヤを取り付ける追加のステップを含む、請求項1〜のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項9】
前記切断は、レーザ切断装置(20)を用いて実施される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記切断は、ウォータージェット切断装置(30)を用いて実施される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記連結要素(2)のうちの1つを前記溝(L1,L3)の前記側壁(PL1,PL3)に連結する2つの接合部(3)は、一緒に切断される、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項12】
切断後に得られるスリットは、0.5mm未満の厚さを有する、請求項1〜11のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のうちいずれか一に記載の方法を実施するために用いられるタイヤモールドであって、前記モールドは、ベース(41)及び少なくとも1つの成形リブ(42,42′,42″)を含む少なくとも1つのライナ要素(40)を有し、前記取り付けリブは、前記連結要素(2)の厚さに実質的に等しい厚さの横方向切欠き(43,43′,43″)によって中断され、前記切欠きは、前記取り付けリブを通って真っ直ぐに延び、前記タイヤモールドは、各々がベース及び少なくとも1つの取り付けリブを含む少なくとも2つの隣接のライナ要素を有し、第1のライナ要素の前記取り付けリブ(42,42′,42″)のうちの少なくとも1つは、前記取り付けリブ(42,42′,42″)の外側の側方フェース(44,44′,44″)のうちの1つと該外側の側方フェースと対向していて、第2のライナ要素の前記取り付けリブの一部をなす外側の側方フェースとの間に前記横方向切欠き(43,43′,43″)を形成するよう前記取り付けリブのベース(41)の幅よりも小さい幅を有する、タイヤモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造分野に関し、特にタイヤのためのトレッドの製作に関する。
【0002】
特に、本発明は、タイヤトレッドパターンの溝内に配置される可撓性壁の製作に関する。
【背景技術】
【0003】
トレッドパターン中の溝は、タイヤが濡れた又は水浸しの路面上を走行しているときに水を排出すると共に除去するために設けられている。これら溝は、これら溝によって空気が音波を発生させる圧力の影響を受けて蓄積するゾーンが構成される限り、走行ノイズ現象のうちのいくらかを生じさせる。溝は、円周方向及び軸方向に設けられ、これらのレイアウト、寸法及び本数は、タイヤトレッドパターン設計者によって綿密に研究されている。
【0004】
タイヤ走行ノイズのレベルを減少させると同時に排水性能を維持するため、先行技術から慣例として、薄い可撓性の壁を溝の方向に対して横の方向に配置することが知られている。可撓性メンブレン又は可撓性フラップとも呼ばれるこれらの壁は、溝のうちの1つから横方向に延びており、これら壁は、音波の伝播を遮断するためにタイヤが乾いた路面上を走行しているときに溝を閉じるこれらの初期形状を維持すると共に排水溝に入った水を除去することができるようにするためにタイヤが濡れた路面上を走行しているときに撓み、かくして溝を開くことができる特定の特徴を有している。
【0005】
仏国特許第2,715,819号明細書、英国特許第2,450,723号明細書又は欧州特許第908,330号明細書は、これら可撓性壁の種々の形態を記載している。
【0006】
最もありふれた実施形態は、加硫ステップ後にタイヤの脱型を邪魔するアンダーカットが設けられていないことに鑑みて、溝の底壁から延びる可撓性フラップ又は壁であることが分かっている。フラップの壁は、このフラップが開き位置から閉じ位置に移っているときにこのフラップが溝の壁へのその取り付け箇所回りに回動することができるようにする1本又は2本以上の半径方向スリットを有している。かかる可撓性壁又はフラップの厚さは、乗用車に取り付けられるタイヤについては0.2mm〜2mmの幅がある。
【0007】
実際、かかる可撓性フラップを備えたタイヤを成形するようになったモールド(型)は、フラップの形状及び寸法を有する閉鎖キャビティを有し、かかるキャビティは、排水溝を成形するようになった成形リブ内に作られる。
【0008】
しかしながら、所要の精度を備えたこれらキャビティを作ることは、特に一般に石膏で作られた消耗可能なモールド上への溶融材料の注ぎ出しを含むモールド製作技術が用いられる場合、多大な困難を伴い、かかるモールド製作技術では、構成要素がほっそりとしているので構成要素が過度に脆弱になる。
【0009】
仏国特許出願公開第2946915(A1)号明細書で提案されている解決策は、溝の方向に直角に位置決めされると共にライナ要素の成形リブ内に配置された切断留保部を有するインサートを作ることである。これらは満足のゆく程度に働くが、それにもかかわらず、成形によって、これらフラップの厚さよりも更に細いスリットだけ溝の側壁から隔てられた僅かな厚さの可撓性フラップを得ることが困難であることが判明しており、これは、主としてゴムが極めて幅の狭い隙間中に流れ込む問題に起因している。さらに、傾斜した壁を有する可撓性フラップを脱型することは、困難であり、フラップを引き裂くというリスクを伴う。その上、スリットが一般に0.1〜0.2mmの距離だけ溝の側壁から隔てられているので、インサートの製造及び取り付けに課される公差は、非常に厳しいことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】仏国特許第2,715,819号明細書
【特許文献2】英国特許第2,450,723号明細書
【特許文献3】欧州特許第908,330号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第2946915(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、これら欠点のうちの少なくとも幾つかを解決し、タイヤのための可撓性壁を製作する改良方法及び良好な品質の可撓性壁を経済的に得ることができるようにするこの方法の実施手段を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これら目的は、ゴムコンパウンドで作られたタイヤのトレッドを製作する方法であって、トレッドは、トレッド表面と、底壁及び底壁からトレッド表面に向かって延びる2つの側壁と、液体が流れると撓むことができるような仕方で溝内に設けられた少なくとも1つの可撓性壁とを有し、この方法は、
‐少なくとも1本の溝及び側壁の厚さに等しい厚さの少なくとも1つの連結要素を備えたトレッドを成形するステップを含み、連結要素は、その長手方向軸線に対して横方向に溝内に配置され、加硫後、連結要素は、側壁を底壁に底壁から所与の深さにわたって連結するようになっており、
‐連結要素を溝の側壁の各々とのその接合部のところで切断して可撓性壁が得られるようにするステップを含むことを特徴とする方法によって達成される。
【0013】
このように、第1の製造ステップにおいて、トレッドを成形して硬化させ、次に、第2の製造ステップ又は段階の際に、適当な手段を用いてトレッドの側壁を切断することによって連結要素を作ることが容易に可能であり、この場合、上述の欠点を招く必要はない。具体的に言えば、溝を成形しているときにそれと同時にこれら溝に取り付けられた数個の連結要素を成形し、次に連結要素を溝の側壁に連結している連結部を側部のところで離脱させることが容易である。これにより、製造するのが簡単であり且つ頑丈なモールドを用いることができ、成形を容易にし、しかも裂けなく明確に規定された形状のものであり、かくして乾いた路面上で溝を良好に閉じ、そして濡れた路面上においてこれらのベース回りに良好に撓むのに適した可撓性の壁を得るという利点が提供される。この方法は、溝のベースに対して傾けられた側壁を有する溝内にかかる可撓性の壁を作るのに好適である。というのは、溝の側壁との接合部のところでの連結要素の分離を連結部切断ステップを用いるだけで実施できるからであり、他方、脱型時点においての分離は、このようにして得られた可撓性壁を引き裂く恐れを伴うからである。
【0014】
好ましくは、切断は、溝の側壁に当たった状態で載っている切断ツールを用いて実施される。かかる切断ツールは、溝の側壁に当たった状態で載っており、かかる側壁は、中実であり、したがって連結用要素よりも剛性が高く、溝を側部のところで良好に開くことができると同時にこのようにして作られた可撓性壁の縁部のところにきれいな切れ目が得られる。
【0015】
有利には、切断ツールは、側壁に沿う案内を提供する案内装置に固定される。これにより、同じ溝の全ての要素について切断ツールを連結要素の接合部の切断前及び切断中に迅速に位置決めすることができる。
【0016】
好ましくは、切断ツールは、切断ナイフである。それにより、溝の連結要素と側壁との連結部を材料の除去なしで切断することができ、かくして走行ノイズの減衰にとって良好な有効性が得られるよう乾いた路面上での溝の良好な閉鎖状態が得られる。
【0017】
本発明の変形実施形態では、切断ツールは、ホットナイフである。かかるナイフは、通電されるとジュール効果によって加熱され、それにより溝の可撓性壁を側壁に連結しているゴム連結部を迅速に切断することができる。
【0018】
本発明の別の変形実施形態では、切断ツールは、異形ツールである。それにより、得られた可撓性壁の接合部を所与の輪郭形状、一般に溝の側壁の輪郭形状に合わせて切断することができる。
【0019】
本発明の更に別の変形実施形態では、切断ツールは、回転円形ブレードである。かかる回転円形ブレードにより、連結要素の接合部を迅速に切断することができる。
【0020】
好ましくは、回転円形ブレードは、5000〜30000rpmの速度で回転駆動される。
【0021】
有利には、溝は、円周方向であり、上記方法は、トレッドを有するタイヤを回転させる装置に該タイヤを取り付ける追加のステップを含む。回転させるタイヤに高い剛性を与えるためにかかるタイヤが好ましくは前もってインフレートされている状態で、かかる回転は、連結要素を迅速に切断ツールの先に至らせることができることを意味しており、かかる回転は、生産性の向上という課題に取り組んでいる。好ましくは、タイヤの回転速度は、0.1〜10rpmである。
【0022】
本発明の更に別の変形実施形態では、切断は、レーザ切断装置を用いて実施される。かかるレーザ切断装置は、連結要素と側壁との接合部のところで側壁の接線に沿って動かされる集束レーザービームを用いる。この装置は、高品質の切断状態が得られるようにするために焦点を容易に位置決めしたり制御したりすることができるという利点を有する。
【0023】
本発明の追加の変形実施形態では、切断は、ウォータージェット切断装置を用いて実施される。かかる切断装置により、ウォータージェットを集束させる線をかじ取りしてウォータージェットが溝の側壁及び溝の底壁の接線をできるだけ厳密にたどることができるようにする場合、きれいで且つ高品質の切れ目を作ることができる。
【0024】
有利には、連結要素のうちの1つを溝の側壁に連結する接合部は、一緒に切断される。かくして、溝の側壁の剛性に鑑みて、2つの切断ツールが同時に作動することができ、それにより時間を節約すると共に良好な品質の切り口を備えた可撓性壁を得ることができる。
【0025】
好ましくは、切断後に得られるスリットは、0.5mm未満、好ましくは0.2mm未満の厚さを有する。可撓性壁の縁を溝の側壁から隔てるスリットの厚さは、切断ツールを用いた場合にゼロとは言わないまでも極めて薄く、かくして、溝をこのようにして得られた可撓性壁によって良好に閉じることができる。
【0026】
有利には、可撓性壁の幅(e)は、0.2mm〜2mmである。かかる可撓性壁により、乗用車用タイヤの走行ノイズの良好な減衰状態を得ることができる。
【0027】
本発明の目的は又、本発明の方法を実施するために用いられるタイヤモールドであって、モールドは、ベース及び少なくとも1つの成形リブを含む少なくとも1つのライナ要素を有し、取り付けリブは、連結要素の厚さに実質的に等しい厚さの横方向切欠きによって中断され、切欠きは、取り付けリブを通って真っ直ぐに延び、タイヤモールドは、各々がベース及び少なくとも1つの取り付けリブを含む少なくとも2つの隣接のライナ要素を有し、第1のライナ要素の取り付けリブのうちの少なくとも1つは、取り付けリブの外側の側方フェースのうちの1つとこの外側の側方フェースと対向していて、第2のライナ要素の取り付けリブの一部をなす外側の側方フェースとの間に横方向切欠きを形成するよう取り付けリブのベースの幅よりも小さい幅を有することを特徴とするタイヤモールドを用いて達成される。
【0028】
かかるモールドは、特にライナ要素の成形リブ(成形リブは、溝トレッド中に成形するために用いられるモールドの隆起部分を意味している)を横切って真っ直ぐに切欠きを作ることによって製造が容易であるという利点を提供し、切欠きは、リブのベースまでずっと下方に延びている。
【0029】
加うるに、かかる切欠きを2つの隣り合うライナ要素相互間に配置することによって、本発明の連結要素は、有利には、成形によって製作でき、かかる連結要素は、たった1つのライナ要素の成形リブの幅を変えることにより又は2つの隣り合うライナ要素の成形リブの幅を変えることによって2つのライナ要素相互間の接合部のところに得られる。このことは、かかるモールドを有利なコストで更に迅速に製作することができると同時に、成形リブは、これらの幅についてそれほど甘くない製造公差をもたらすことができる。
【0030】
以下の説明は、図1図9bによって裏付けされている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】円周方向溝内に配置された可撓性壁を有するタイヤの部分略図である。
図2a】本発明による可撓性壁の製作ステップを示す断面図である。
図2b】本発明による可撓性壁の製作ステップを示す上から見た図である。
図3】本発明による可撓性壁の製作ステップを示す図である。
図4】本発明による可撓性壁の製作中におけるタイヤのトレッドに対する切断ツールの位置決め状態の一例を示す図である。
図5】本発明を実施するために用いられるタイヤモールドの一部をなすライナ要素の一例の斜視図である。
図6】可撓性壁を切断するよう溝のうちの1つの中に配置された切断要素を有するタイヤの部分略図である。
図7図6の切断装置の斜視図である。
図8a】タイヤ及びレーザービーム切断装置の概略斜視図である。
図8b】半径方向断面で見たレーザービームによる可撓性壁の切断状態を示す図である。
図8c】斜視図で見たレーザービームによる可撓性壁の切断状態を示す図である。
図9a】タイヤ及びウォータージェット切断装置の概略斜視図である。
図9b】可撓性壁に対するウォータージェットの位置を示す半径方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に示されているタイヤTの部分は、トレッドの円周方向に延びる複数本の溝L1,L2,L3,L4を有している。一例として、これら溝のうちの2つの溝L1,L3は、可撓性の壁P1,P3を備えている。これら壁は、溝L1,L3の底壁PF1,PF3にしっかりと関節連結されており、これら壁は、溝L3の可撓性壁Pの上方に記載されている両方向の矢印によって示された方向でこの連結部周りに交互に傾いている。可撓性壁P1,P3は、溝L1又はL3の底部からトレッド表面1まで延び、従って、これら可撓性壁は、溝L1,L3の高さに等しい高さを有している(ただし、変形形態では、溝の高さよりも低い高さの可撓性壁を考慮することができる)。
【0033】
図2a及び図2bは、溝L1と同時に成形することによって得られた厚さ(e)の接合又は連結要素2を有する溝L1を示している。連結要素2は、溝L1の長手方向軸線に対して横に配置されており、この連結要素は、溝L1の側壁PL1及び底壁PF1の各々との接合部3を有している。
【0034】
図3は、先の図の連結要素2を側壁PL1に連結している接合部3のところでこの連結要素2を切断した後に得られた可撓性の壁P1を示している。可撓性壁P1は、かくして、2つの切欠き4によって側壁PL1から隔てられると同時にそのベースが溝L1の底壁PF1に連結されている。切欠き(d)は、用いられる切断ツールに応じて潜在的に0mmから0.5mmの範囲にわたる小さな深さのものであり、これら切欠きは、底壁PF1まで延びている。作動中、このようにして得られた可撓性壁は、乾いた路面上では垂直初期位置(図3に見える)のままであって溝を閉じており、タイヤが濡れた路面上を走行しているとき、かかる可撓性壁は、そのベース周りに撓んで溝を開き、それにより水をこの溝から排出することができる。
【0035】
図4は、タイヤT内の連結要素2の側壁との接合部を切断するためのツールの位置決めの例示の一実施形態及び実施例を示している。この実施例では、切断ツール5,6は、円形ブレードであり、これら円形ブレードは、これら円形ブレードをこれらの中心軸線7,8回りに回転させる回転駆動手段(図示せず)を有している。回転円形ブレード5,6は、溝の深さよりも大きな半径を有し、これら回転円形ブレードは、この溝の側壁の接線の方向に切れ目を入れるよう位置決めされ、これらのカッタは、溝L1の側壁PL1に当たった状態で載り、それと同時に、溝の底壁中に切り込まないように配慮されている。
【0036】
図4の溝L3の付近に示されたツールは、ツールのうちの一方が溝の上方で傾斜位置にある状態で、切断のために接近している位置で示されており、その結果、その切れ刃が溝の側壁に平行であり、他方のツールは、溝の底部中に下降させた位置で示されている。同じ切断ツール5,6は、溝L1内の作業位置で示されている。
【0037】
溝L1〜L4が円周方向である場合、タイヤTは、このタイヤを高い剛性が得られるようインフレートさせるために同時に用いることができる装置に取り付けられた状態で、有利にはその中心軸線回りに回転する。一例を挙げると、タイヤは、0.1〜10rpmの速度で回転する場合があり、円形ブレードは、5000〜30000rpmの速度で回転する場合がある。
【0038】
図6は、本発明の可撓性壁の別の実施形態を示しており、この実施形態では、切断装置10がタイヤTの一部分の溝L3内に配置されている。切断装置10は、図7でより明確に見え、この切断装置は、溝L3の幅よりも小さい幅のフレーム11を有し、その結果、フレーム11は、この溝内で先に進むことができるようになっている。フレーム11は、その頂部の近くに、溝L3の底壁に平行なスペーサ13を有している。スペーサ13は、2つのナイフ12のその前方端部のところで支持し、次に、切断装置10を溝L3内で先に押すための2つのプッシュローラ15を支持しており、これらは、2つの案内ローラ14に横付け状態で位置している。切断装置10を静止タイヤの溝内で先に進めることができ又は先の実施例の場合のように、回転させ、好ましくはインフレートさせたタイヤの溝内で先に進めることができる。
【0039】
ナイフ12は、スペーサ13から溝の底部に向かって突き出ており、これらナイフは、これらの切れ刃12aが溝の側壁に平行であるように配置されている。ナイフ12は、三角形の形(図7のナイフの下方部分に示されているように)の断面12sを有し、頂点は、切断装置10が溝に沿って移動する方向で見て前方に差し向けられている。
【0040】
各案内ローラ14は、スペーサ13の平面に垂直なその垂直軸線回りに自由に回転するよう設けられており、かくして、ナイフ12を側壁に対して案内する。ローラ14の直径及びその位置決め状態は、各ローラが側壁との接触時にその軸線回りに自由に回転することができるよう選択される。弾性補償システムも又、切断装置が溝に沿って動いているときにローラを押してこれを一方又は両方の側壁に接触させるために設けられるのが良い。
【0041】
切断装置11は、押圧ローラ15を更に有し、これら押圧ローラは各々、スペーサ13の平面に平行な軸線回りに自由に回転する。押圧ローラ15は、溝の底部に圧接し、それにより切断装置11を先に進めることができ、側壁との接合部がいったん切断されると可撓性壁Pを溝の底部に向かって押すことができる。
【0042】
切断装置11の変形実施形態では、切断ナイフ12に代えて加熱状態のナイフ(図示せず)が用いられており、これら加熱状態のナイフは、電力を供給する源に接続されることによってジュール効果により熱を生じさせ、これら加熱状態のナイフは、サーモスタットにより調節される。この場合、加熱部分は、約0.5mmの厚さを有する一定断面のブレードであり、これらブレードは、抵抗材料で作られ又は直径約0.5mmの抵抗ワイヤである。
【0043】
本発明の別の例示の実施形態では、図8a〜図8cで良好に見えるように、側壁PL3への連結要素2の接合部3は、レーザ切断装置20を用いて切断される。かかる装置は、未集束レーザービーム21を第1の電気測定ミラー22に向かって送るレーザ源(図示せず)を有している。ミラー22は、受け取ったビームの方向を第2の電気測定ミラー23の方へ変え、これを第2の電気測定ミラー23の方へ送り、この第2の測定ミラーは、このビームを集束レンズ24に伝達する。入射ビームの直径及び焦点距離の設定は、連結要素2の接合部3の切断後に結果として得られるスリットの厚さを定め、このスリットの幅(d)は、約0.1mmである。レーザービーム切断装置20は、制御ユニット(3次元数値制御型の)を更に有し、この制御ユニットは、参照後、集束レーザービーム25の焦点26を連結要素2と溝L3の側壁PL3の接合部3に沿ってかじ取りすることができる。レーザービーム25は、側壁PL3に沿って接線方向に案内され、溝L3の底壁の平面に対して傾けられている(鋭角をなして)。かくして、焦点が切断されるべき接合部3のところに位置するよう焦点距離を選択することによって、そしてレーザービーム25の焦点26を溝の側壁PL3に沿って正確にかじ取りすることによって、接合部3の正確できれいな且つ迅速な切断及びかくして正確な寸法の可撓性壁が得られる。
【0044】
本発明の別の例示の実施形態では、図9a及び図9bで良好に見えるように、連結要素2と側壁PL3の接合部3は、ウォータージェット切断装置30を用いて切断される。ウォータージェット32の焦線33のたどる経路は、切断されるべき接合部3に沿って3次元でプログラム可能である。ウォータージェット32の焦線33は、側壁の接線にできるだけ近い方向で側壁PL3に沿って且つ溝の底壁の接線に沿って案内される。ウォータージェット切断装置30は、小さな直径、例えば直径0.2mm未満の集束ノズル31を有し、この集束ノズルは、切断されるべき接合部のできるだけ近くに配置される。ウォータージェット32の圧力、ノズルの直径及び焦線33の経路を制御することにより、近くのゾーン中への切欠き又は切れ目なしで接合部3の正確且つ迅速な切断状態を得ることができる。かくして、図9bで最も良く見えるように、ウォータージェットの焦線は、切断ゾーンを出ると、ウォータージェットが脱焦して材料から外れ、それによりその切断作用を接合部3に制限し、近くのゾーンの切断を阻止するようなものである。側壁に対して理想的な向きを達成することが困難な大径ノズルの場合、溝の底部を傷つけることを回避するために、溝の底壁に達する直前に切断を停止させる。用いられるウォータージェットは、研磨剤を含まず、連結要素2は、ゴムコンパウンドであり、溝の側壁とのその接合部は、切断するのが容易である。
【0045】
先の実施例の場合と同様、接合部3がレーザービーム切断装置20又はウォータージェット切断装置30により切断されている間、タイヤを回転させ、好ましくはインフレートさせるのが良い。
【0046】
図5は、本発明の方法を実施するために用いられるタイヤモールドの一部をなすライナ要素40を示している。多数のライナ要素が互いに並置された状態で円周方向に配置されており、これらライナ要素は、タイヤトレッドのための成形キャビティを形成するようになっている。ライナ要素40は、ベース41を有し、このベースの上面44は、トレッド表面1を成形し、多数の成形リブ42,42′,42″がこの上面から突き出ている。成形リブ42,42′,42″は、トレッド内に溝を、例えば図1の溝L1,L2,L3の成形を可能にする。本発明によれば、成形リブ42,42′,42″は、多数の横方向切欠き43,43′,43″(理解されるように、これらは、成形リブの長手方向に垂直である)によってこれら成形リブの幅上の所定の箇所のところで中断されている。かかる切欠きにより、溝の側壁と連結状態にある連結要素3の成形が可能である。
【0047】
図5に示されている実施例では、ライナ要素40の成形リブ42,42′,42″は、成形リブ42,42′,42″の外側の側方フェース44,44′,44″のうちの1つとこれと対向して位置していて隣接のライナ要素の成形リブの一部をなす外側の側方フェースとの間に上述の横方向切欠き43,43′,43″を形成するようライナ要素のベース41の幅よりも小さい幅を有している。このように、横方向切欠き43,43′,43″は、有利には、成形リブ42,42′,42″の端部のところに作られ、これら横方向切欠きは、成形内へのライナ要素の取り付けを保証する一方で、2つの隣り合うライナ要素の成形リブ相互間に存在する可能性のある隙間を包囲し、これにより、加硫後にばりが存在するのを阻止することができる。
【0048】
本発明の他の変形形態及び他の変形実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく想到できる。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b