(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150476
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】外装材及び建物の外壁構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
E04B1/64 D
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-179687(P2012-179687)
(22)【出願日】2012年8月14日
(65)【公開番号】特開2014-37700(P2014-37700A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康之
(72)【発明者】
【氏名】千葉 陽輔
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−020736(JP,A)
【文献】
特開2002−096415(JP,A)
【文献】
実用新案登録第2594276(JP,Y2)
【文献】
実開平01−070915(JP,U)
【文献】
米国特許第03870553(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 − 1/90
E04F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ALCからなり、
外表面及び内表面には、防水塗膜層が形成され、
内表面の防水塗膜層の透湿抵抗が外表面の防水塗膜層の透湿抵抗よりも小さく、
前記内表面の防水塗膜層の透湿抵抗が、0.01〜0.02m2・s・Pa/μgに設定されている、外装材。
【請求項2】
請求項1に記載した外装材を外壁の最外部に有する、建物の外壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材及び建物の外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁構造において外装材として用いられるALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)パネルは、湿度を調整する調湿機能を有する。このALCパネルを建物の外壁として設置した際に建物内の調湿を行わせるため、ALCパネルの内表面には防水塗膜層を形成せずに、外表面にのみ防水塗膜層を形成するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−70915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、外表面にのみ防水塗膜層を形成した場合、建築工事中の降雨等により、ALCパネルの内側面の表層部分に水が浸透することがある。これにより、ALCパネルが変色して(濡れ色となる)悪印象を与えることがあった。
【0005】
特許文献1には、ALCパネル本体の表面全体を非透湿被膜で覆うことが提案されているが、これでは建物に設置した際のALCパネルの内側の調湿機能が発揮されなくなり、建物内部の湿度調整を適切に行うことができない。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、建築工事中の降雨等により水が外装材に浸透することを防止でき、なおかつ建物に設置した際の外装材の内側の調湿機能を確保できる外装材及び建物の外壁構造を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、ALCからなり、外表面及び内表面には、防水塗膜層が形成され、内表面の防水塗膜層の透湿抵抗が外表面の防水塗膜層の透湿抵抗よりも小さ
く、前記内表面の防水塗膜層の透湿抵抗が、0.01〜0.02m2・s・Pa/μgに設定されている、外装材である。
【0008】
本発明によれば、防水塗膜層が外表面と内表面に形成され、内表面の防水塗膜層の透湿抵抗が外表面の防水塗膜層の透湿抵抗よりも小さいので、建築工事中の降雨等により水が外装材内に浸透することを防止できる。また、建物に設置した際の外装材の内表面側の調湿機能を確保でき、建物内部の湿度調整を適切に行うことができる。
【0009】
別の観点による本発明は、上記外装材を外壁の最外部に有する、建物の外壁構造である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外装材に雨水等の水が浸透することがなく、外装材の変色を防止できる。また、内表面の防水塗膜層の透湿抵抗が低く抑えられているので、建物に設置した際の外装材の内側の調湿機能を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る外装材を外壁の最外部に有する建物の外壁構造1を示す断面図である。
【0013】
建物の外壁構造1は、外装材としてのALCパネル10と、ALCパネル10が固定される梁部11を有している。ALCパネル10は、ボルトなどにより梁部11に固定され、建物の外壁の最外部を構成している。ALCパネル10は、例えば75mm〜100mm程度の厚みを有している。
【0014】
ALCパネル10の外表面には、外側防水塗膜層20が形成されている。外側防水塗膜層20は、例えば合成樹脂エマルジョン系の複層仕上げ塗材からなる。外側防水塗膜層20は、例えば3層構造を有し、防水性を担保する下塗り層と、色彩や模様を付与する中間層と、耐久性を担う上塗り層を有し、塗膜厚を調整することにより、外側防水塗膜層20の透湿抵抗は、0.02〜0.03m
2・s・Pa/ugに設定されている。
【0015】
ALCパネル10の内表面には、内側防水塗膜層21が形成されている。内側防水塗膜層21は、例えば合成樹脂エマルジョン系の単層仕上げ塗材からなる。内側防水塗膜層21は、例えば下塗り層のみの1層構造を有し、塗膜厚を調整することにより、内側防水塗膜層21の透湿抵抗は、0.01〜0.02m
2・s・Pa/ugに設定されている。よって、内側防水塗膜層21の透湿抵抗は、外側防水塗膜層20の透湿抵抗よりも小さくなっている。
【0016】
本実施の形態によれば、防水塗膜層がALCパネル10の外表面と内表面に形成され、内側防水塗膜層21の透湿抵抗が外側防水塗膜層20の透湿抵抗よりも小さいので、建築工事中の降雨等より水がALCパネル10に浸透することが防止できる。また、建物に設置した際のALCパネル10の内側の調湿機能を確保できるので、建物内部側の湿度を適切に調整できる。
【0017】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0018】
例えば以上の実施の形態では、建物の外壁構造1が、梁部11に固定されたALCパネル10を有するものであったが、ACLパネル10を建物の外壁の最外部に有するものであれば、他の外壁構造にも本発明は適用できる。また、外装材は、パネル状である必要はなく、他の形状のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、建築工事中の降雨等により水が外装材に浸透することを防止し、なおかつ建物に設置した際の外装材の内側の調湿機能を確保する際に有用である。
【符号の説明】
【0020】
1 建物の外壁構造
10 ALCパネル
11 梁部
20 外側防水塗膜層
21 内側防水塗膜層