(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
面状に広がりを有する基材上に、第1電極層、有機発光層、及び第2電極層が積層された積層体を有する断面構造を備え、前記基材を平面視したときに、発光領域と、発光領域への給電に寄与する給電領域を有する有機EL装置において、
前記給電領域は、陽極又は陰極の一方を担う外側給電領域と、前記外側給電領域と異なる極を担う内側給電領域からなり、
前記外側給電領域は、発光領域の外側を囲むように位置するものであって、かつ、発光領域の全周囲の90パーセント以上100パーセント以下の部分を囲んでおり、
前記発光領域は、前記内側給電領域の周りを囲むように位置するものであり、
前記内側給電領域は、前記第1電極層の一部であって、かつ他の第1電極層から物理的に切り離された第1分離層を有し、
第1導電部材を有し、
前記第1導電部材は、平面視したときに前記内側給電領域の全部を覆い、さらに前記発光領域に跨がって配されており、
前記第1導電部材は、前記内側給電領域で第1分離層と電気的に接続されており、
前記第1導電部材は、平面視したときに前記内側給電領域からずれた位置で外部電源と電気的に接続された第1電極端子と接続可能であり、
点灯時に、前記第1電極端子から前記内側給電領域の第1分離層を経由して、有機発光層に給電されるものであり、
前記外側給電領域及び内側給電領域は、点灯時に非発光状態になることを特徴とする有機EL装置。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、有機EL装置1の上下の位置関係は、
図1の姿勢を基準に説明する。また、図面は、理解を容易にするために全体的に実際の大きさ(長さ、幅、厚さ)に比べて極端に記載している。
【0029】
本実施形態の有機EL装置1は、主に照明装置として使用される有機EL装置であり、特に浴室照明として好適に使用可能な有機EL装置である。
本実施形態の有機EL装置1は、
図1,
図2のように円盤状の基板2(基材)上に有機EL素子10(積層体)を積層し、その上から無機封止層7(封止層)を積層して、封止している。さらに無機封止層7の上に、導電性基材20を載置し、軟質接着層8、外側硬質接着層11、並びに,内側硬質接着層12で接着させたものである。
有機EL素子10は、
図3のように透光性を有した基板2側から順に第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6が積層されたものである。
本実施形態の有機EL装置では、基板2側から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション方式を採用している。
【0030】
そして、本実施形態の有機EL装置1は、
図4のように基板2を平面視したときに、その面内において、発光領域30と、給電領域31とを有している。
発光領域30は、
図2のように第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6の重畳部位に当たる領域であり、基板2の周方向に連続した円環状の領域である。すなわち、発光領域30は、点灯時において、
図5のように実際に発光する領域である
給電領域31は、発光領域30への給電する際に、陽極機能を担う外側給電領域33と、陰極機能を担う内側給電領域32から形成されている。外側給電領域33は、
図2のように発光領域30内の第1電極層3と電気的に接続されており、内側給電領域32は、発光領域30内の第2電極層6と電気的に接続されている。
有機EL装置1は、
図4のように基板2を平面視したときに、基板2の中央に内側給電領域32が位置しており、内側給電領域32の周りを囲むように環状の発光領域30が位置しており、発光領域30の周りを囲むように環状の外側給電領域33が位置している。
内側給電領域32の直径は、基板2の直径の1/100以上1/10以下であることが好ましい。外側給電領域33の幅は、基板2の直径の1/100以上1/10以下であることが好ましい。
【0031】
そして、本実施形態の有機EL装置1は、点灯時には、
図5のように発光領域30が発光し、上記したように発光領域30の周囲の大部分を囲む外側給電領域33から発光領域30を経由して内側給電領域32に電気が流れるため、発光領域30は、
図6のように周方向に均等に電流が流れ込んで発光することに特徴を有している。なお、ここでいう「大部分」とは、発光領域の全周囲の90パーセント以上100パーセント以下の部分であり、発光領域の全周囲の95パーセント以上100パーセント以下の部分であることが好ましく、発光領域の全周囲の98パーセント以上100パーセント以下の部分であることが特に好ましい。本実施形態では、外側給電領域33は、発光領域の全周囲(100パーセント)を囲んでいる
【0032】
このことを踏まえて、以下、有機EL装置1の詳細な構造について説明し、有機EL装置1の各層構成については後述する。
上記したように、有機EL装置1は、基板2上に有機EL素子10の大部分が積層されており、有機EL素子10を覆うように無機封止層7(封止層)を積層しており、
図2にように深さの異なる複数の溝によって、複数に区切られている。
具体的には、有機EL装置1は、
図3,
図4のように基板2の中心側から順に部分的に第1電極層3を除去した第1電極分離溝21と、部分的に第2電極層6と機能層5の双方を除去した領域分離溝23と、部分的に機能層5を除去した電極接続溝22と、部分的に第2電極層6を除去した第2電極分離溝24と、を有しており、これらの溝によって複数の区画に分離されている。
【0033】
各溝について詳説すると、第1電極分離溝21は、
図3,
図4のように基板2上に積層された第1電極層3を分離する溝であって、内側給電領域32と発光領域30に分離する溝である。
第1電極分離溝21は、
図3のように基板2の中央を中心として円環状に形成されており、内側(中心側)に島状の第1電極層3(以下、第1分離層15ともいう)が形成されている。
また、第1電極分離溝21内には、
図2のように発光領域30と内側給電領域32に跨った機能層5の一部が進入しており、機能層5は第1電極分離溝21の底部で基板2と直接接触している。すなわち、発光領域30内の第1電極層3と内側給電領域32の第1電極層3(第1分離層15)を機能層5によって電気的に切り離している。つまり、第1分離層15は、他の第1電極層3と物理的にも切り離されている。
【0034】
領域分離溝23は、
図2,
図4のように機能層5と第2電極層6の双方を複数の領域に分離する溝であって、発光領域30と外側給電領域33に分離する溝である。
領域分離溝23は、第1電極分離溝21の外側であって、基板2の中央を中心として円環状に形成されており、第1電極分離溝21と同心円上に形成されている。
【0035】
また、領域分離溝23内には、
図2のように発光領域30と外側給電領域33に跨った無機封止層7の一部が進入しており、無機封止層7は領域分離溝23の底部で発光領域30と外側給電領域33に跨った第1電極層3と直接接触している。すなわち、発光領域30の第2電極層6と外側給電領域33の第2電極層6(以下、外側電極層17ともいう)を無機封止層7によって電気的に切り離している。つまり、外側電極層17は、発光領域30の第2電極層6と物理的にも切り離されている。
【0036】
電極接続溝22は、
図2,
図3のように機能層5のみを複数の領域分離する溝であって、外側給電領域33内の第1電極層3と外側給電領域33の第2電極層6(外側電極層17)を直接的に接続する溝である。
電極接続溝22は、
図4のように領域分離溝23の外側であって、基板2の中央を中心として円環状に形成されており、領域分離溝23と同心円上に形成されている。
【0037】
また、電極接続溝22内には、
図2のように外側電極層17の一部が進入しており、無機封止層7は電極接続溝22の底部で発光領域30と外側給電領域33に跨った第1電極層3と直接接触している。すなわち、発光領域30の第1電極層3と外側電極層17は電気的に接続されている。つまり、電極接続溝22に進入した外側電極層17は、第1電極層3への電気伝導を補助する補助電極として機能する。
【0038】
電極接続溝22は、
図4のように周方向に基板2の縁と平行に延びており、外側電極層17と発光領域30と外側給電領域33に跨った第1電極層3との接触する部位を同電位にすることが可能となっている。
電極接続溝22の溝幅は、30μm以上80μm以下であり、40μm以上70μm以下であることが好ましく、45μm以上60μm以下であることが特に好ましい。
【0039】
第2電極分離溝24は、
図2,
図3のように第2電極層6を複数の領域に分離する溝であって、発光領域30から連続する第2電極層6を複数の領域に分離する溝である。
第2電極分離溝24は、第1電極分離溝21の内側であって、基板2の中央を中心として円環状に形成されており、第1電極分離溝21と同心円上に形成されている。
【0040】
また、第2電極分離溝24内には、
図2のように無機封止層7の一部が進入しており、無機封止層7は第2電極分離溝24の底部で第1分離層15と直接接触している。すなわち、発光領域30から連続する第2電極層6の一部を切り離して、第1分離層15を経由する導電経路を形成している。具体的には、第2電極層6と内側電極層16を無機封止層7によって電気的に切り離すことによって、発光領域30から連続する第2電極層6から第1分離層15を経由して第1分離層15の中央に積層する第2電極層6(内側電極層16)に繋がる導電経路を形成している。
【0041】
以上のように、有機EL装置1は、内側(基板2の中心側)から順に、環状の第2電極分離溝24、第1電極分離溝21、領域分離溝23、電極接続溝22が同心円状に形成されている。
【0042】
また、有機EL装置1は、内側給電領域32において、
図2,
図3のように第1電極層3(第1分離層15)上に直接第2電極層6(内側電極層16)が積層されている。第1分離層15の端部では、
図2のように発光領域30の機能層5がオーバーラップしている。
さらに当該機能層5の被覆部位を覆い被さるように第1分離層15の一部にかけて第2電極層6の一部が積層している。さらに、当該第2電極層6の被覆部位を覆い被さるように第1分離層15及び内側電極層16にかけて無機封止層7が積層している。
【0043】
有機EL装置1は、上記したように無機封止層7上に導電性基材20が載置されており、軟質接着層8、外側硬質接着層11、並びに,内側硬質接着層12で接着されている。
軟質接着層8は、
図7のように、板状又はシート状の接着材によって形成されるものであり、導電性基材20と無機封止層7を接着するものである。軟質接着層8は、少なくとも発光領域30の大部分を覆っており、発光領域30の全面を覆っていることが好ましい。
【0044】
外側硬質接着層11は、
図7のように流動性を有した接着材が硬化することによって形成されるものであり、基板2と導電性基材20を接着するものである。外側硬質接着層11は、
図2のように、基板2の外周縁に沿って設けられており、有機EL素子10の内外方向の端面を覆うように形成されている。すなわち、外側硬質接着層11は、有機EL素子10の各層間の隙間に基板2の外側から水等が進入することを防止するものである。
【0045】
内側硬質接着層12は、
図7のように流動性を有した接着材が硬化することによって形成されるものであり、内側電極層16と導電性基材20を接着し、かつ、導電性基材20の第2導電フィルム28の一部を挿入可能な空間を形成するものである。内側硬質接着層12は、無機封止層7の内外方向の端面を覆うように円筒状に形成されている。
【0046】
導電性基材20は、
図7,
図8,
図9のように第1導電フィルム26(第1導電部材)と、絶縁フィルム27(絶縁部材)と、第2導電フィルム28(第2導電部材)がこの順に重ね合わされて形成されている。
導電性基材20の一方の面(基板2と逆側)には、
図7,
図9のように第1導電フィルム26が露出した部位が存在する。具体的には、導電性基材20は、絶縁フィルム27と第2導電フィルム28とを貫通した第1給電穴35を有している。すなわち、第1給電穴35は、
図2のように第1導電フィルム26を底部とした有底穴である。
【0047】
また、第1給電穴35の内壁には、
図2のように封止接着層36があり、封止接着層36は導電性基材20の積層方向に水等の進入を防止する防湿壁として機能している。すなわち、絶縁フィルム27と第2導電フィルム28は露出しておらず、第1導電フィルム26と絶縁フィルム27との重なり部位、絶縁フィルム27と第2導電フィルム28との重なり部位がともに封止接着層36によって被覆されている。
換言すると、第1給電穴35に沿った円筒状の穴が形成されており、当該穴の内部を経由して第1導電フィルム26と外部電源端子40の第1電極端子38(
図1参照)を接続可能となっている。封止接着層36は、流動性を有した接着材が硬化することによって形成されるものである。
第1給電穴35は、
図1,
図9のように基板2の中心からずれた位置に設けられている。具体的には、発光領域30の天地方向の投影面上に形成されている。
また、導電性基材20の天面には、第2導電フィルム28が露出しており、第2導電フィルム28と外部電源端子40の第2電極端子39(
図1参照)を接続可能となっている。
【0048】
導電性基材20の他方の面(基板2側)には、
図8のように第2導電フィルム28が露出した部位が存在する。具体的には、導電性基材20は、第1導電フィルム26と絶縁フィルム27とを貫通した第2給電穴37を有している。すなわち、第2給電穴37は、
図2のように第2導電フィルム28を底部(
図2では天面)とした有底穴である。
また、
図1のように有機EL装置1を組み立てた場合において、第2給電穴37の内壁は、内側硬質接着層12で被覆されており、内側硬質接着層12は導電性基材20の重なり方向に水等の進入を防止する防湿壁として機能している。すなわち、第2給電穴37に沿った円筒状の穴が形成されており、当該穴の内部を経由して第2導電フィルム28と内側電極層16が接触可能となっている。なお、
図2等では、作図の関係上、極端に描写しているため、第2導電フィルム28の一部が突起となっているように見えるが、実際には第1導電フィルム26や第2導電フィルム28は、平滑な部材である。
【0049】
続いて、有機EL装置1の各層構成について説明する。
【0050】
基板2は、透光性及び絶縁性を有したものである。基板2の材質については特に限定されるものではなく、例えば、フレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板などから適宜選択され用いられる。特にガラス基板や透明なフィルム基板は透明性や加工性の良さの点から好適である。
基板2は、面状に広がりをもっている。具体的には、正多角形又は円形をしており、円形であることが好ましい。本実施形態では、円形状のガラス基板を採用している。
【0051】
第1電極層3の素材は、透明であって、導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性酸化物などが採用される。機能層5内の発光層から発生した光を効果的に取り出せる点では、透明性が高いITOあるいはIZOが特に好ましい。本実施形態では、ITOを採用している。
【0052】
機能層5は、第1電極層3と第2電極層6との間に設けられ、少なくとも一つの発光層を有している層である。機能層5は、主に有機化合物からなる複数の層から構成されている。この機能層5は、一般的な有機EL装置に用いられている低分子系色素材料や、共役系高分子材料などの公知のもので形成することができる。また、この機能層5は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの複数の層からなる積層多層構造であってもよい。
【0053】
また、これらの機能層5を構成する層は、真空蒸着法やスパッタ法、CVD法、ディッピング法、ロールコート法(印刷法)、スピンコート法、バーコート法、スプレー法、ダイコート法、フローコート法など適宜公知の方法によって成膜できる。
【0054】
第2電極層6の材料は、特に限定されるものではなく、例えば銀(Ag)やアルミニウム(Al)などの金属が挙げられる。本実施形態の第2電極層6は、Alで形成されている。また、これらの材料はスパッタ法又は真空蒸着法によって堆積されることが好ましい。
また、第2電極層6の電気伝導率及び熱伝導率は、第1電極層3よりも大きい。言い換えると、第2電極層6は、第1電極層3よりも電気伝導性及び熱伝導性が高い。
【0055】
無機封止層7の材質は、絶縁性及び封止性を有していれば、特に限定されるものではないが、酸素、炭素、窒素の中から選ばれた1種類以上の元素と、ケイ素元素とからなるシリコン合金により形成されていることが好ましく、Si−O、Si−N、Si−H、N−H等の結合を含む窒化珪素や酸化珪素、及び両者の中間固溶体である酸窒化珪素であることが特に好ましい。
また、無機封止層7は、所定の条件で有機EL素子10と離反する方向に圧縮応力が発生する層であることが好ましい。
ここでいう「所定の条件」とは、有機EL素子10の熱膨張などに起因して発生する押圧力を受けた場合などである。
【0056】
そして、本実施形態では、多層構造の無機封止層を使用している。
具体的には、無機封止層7は、
図2のように有機EL素子10側から乾式法によって形成される第1無機封止層47と、湿式法によって形成される第2無機封止層48がこの順に積層されて形成されている。
【0057】
第1無機封止層47は、化学気相蒸着によって形成される層であり、さらに詳細にはシランガスやアンモニアガス等を原料としてプラズマCVD法で成膜される層である。第1無機封止層47は、後述するように有機EL装置1の製造工程において、水分含量が少ない雰囲気下で、有機EL素子10の形成工程に連続して成膜できるため、空気や水蒸気に晒さずに成膜でき、使用直後の初期ダークスポットの発生を低減することができる。
【0058】
第2無機封止層48は、液体状又はゲル状の原料を塗布した後、化学反応を介して成膜される層である。第2無機封止層48は、より詳細には、緻密性を有したシリカを素材としている。また、第2無機封止層48はポリシラザン誘導体を原料とするのが好ましい。ポリシラザン誘導体を用いてシリカ転化によって第2無機封止層48を成膜した場合、シリカ転化時に重量増加を生じ、体積収縮が小さい。また、シリカ膜転化時(固化時)に樹脂の耐え得る温度で十分にしかもクラックを生じ難くすることができるという利点を有する。
なお、ここでいうポリシラザン誘導体は、珪素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO
2、Si
3N
4、及び両者の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体ポリマーである。また、このポリシラザン誘導体は、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体も含む。
ポリシラザン誘導体の中でも特に側鎖が全て水素であるペルヒドロポリシラザンや、珪素と結合する水素部分が一部メチル基に置換された誘導体が好ましい。
【0059】
また、このポリシラザン誘導体は、有機溶媒に溶解した溶液状態で塗布し使用することが好ましい。この溶解する有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。
【0060】
第2無機封止層48は、第1無機封止層47とは異なる材料を封止層として積層したものであり、相互の欠陥を補完することにより、封止性能を高め、経時的な新たなダークスポットの発生を防止したり、発生したダークスポットの拡大化を抑制したりすることができる。
【0061】
また、無機封止層7の成膜位置は、
図2のように少なくとも第2電極分離溝24の内側から領域分離溝23の外側まで成膜されている。すなわち、無機封止層7は、内側給電領域32から発光領域30を超えて外側給電領域33まで至っている。
【0062】
無機封止層7の平均厚みは、1μmから10μmであることが好ましく、2μmから5μmであることがより好ましい。
無機封止層7の一部を担う第1無機封止層47の厚みは、1μmから5μmであることが好ましく、1μmから2μmであることがより好ましい。
また、無機封止層7の一部を担う第2無機封止層48の厚みは、好ましくは1μmから5μmであることが好ましく、1μmから3μmであることがより好ましい。
【0063】
軟質接着層8に目を移すと、軟質接着層8は、柔軟性を有し、所定の条件によって塑性変形又は弾性変形する層である。本実施形態では、軟質接着層8は、無機封止層7の圧縮応力などを受けた場合に、その応力にほとんど逆らわずに、塑性変形可能となっている。
JIS K 6253に準じた軟質接着層8のショア硬さは、ショア硬さがA30以上A70以下であり、A40以上A65以下であることが好ましく、A45以上A63以下であることがより好ましい。
軟質接着層8のショア硬さがA70より大きい場合、軟質接着層8の剛性が大きすぎて、膨らみや衝撃が十分吸収できない。また、導電性基材20として例えばフィルム等の剛性が低いものを採用する際に、軟質接着層8のショア硬さがA30より小さい場合には、導電性基材20の形状を維持できない。
軟質接着層8の曲げ弾性率は、3MPa以上、30MPa以下であることが好ましく、3MPa以上、25Pa以下であることがより好ましく、3.9MPa以上23MPa以下であることが特に好ましい。
【0064】
軟質接着層8の具体的な材質としては、アクリルゴム(ACM)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、シリコーンゴム(Q)、ブチルゴム(IIR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料が使用できるが、一定の水蒸気バリア性を有し、安価に入手可能である点から、アクリルゴム系樹脂、エチレンプロピレンゴム系樹脂、シリコーンゴム系樹脂、及びブチルゴム系樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましく、その中でもフィルムとして入手が容易な、ブチルゴム系樹脂がより好ましい。
また、軟質接着層8は、接着性を有しており、複数部材を互いに接着可能となっている。本実施形態の軟質接着層8は、上記したようにシート状又は板状の部材であり、表面に粘着性加工を施されている。
【0065】
外側硬質接着層11、内側硬質接着層12、封止接着層36は、いずれも軟質接着層8よりも剛性が高く硬い材料となっている。
具体的には、外側硬質接着層11、内側硬質接着層12、封止接着層36は、いずれも、JIS K 6253に準じたショア硬さ(及び対応する曲げ弾性率の概算値)は、ショアA80以上、即ち、ショアD30以上(25MPa以上)であることが好ましく、より高信頼性の有機EL装置とする観点からショアD55以上(250MPa以上)、ショアD95以下(6000MPa以下)とすることがより好ましく、ショアD80以上(1500MPa以上)、ショアD90以下(4000MPa以下)とすることがさらに好ましい。
【0066】
また、外側硬質接着層11、内側硬質接着層12、封止接着層36は、いずれも防水性及び接着性(粘着性)を有しており、複数部材を互いに接着可能となっている。具体的には、本実施形態の外側硬質接着層11、内側硬質接着層12、封止接着層36は、いずれも溶液又はゲル状の流動体を固化して形成されるものである。
外側硬質接着層11、内側硬質接着層12、封止接着層36の具体的な材質としては、例えば、エポキシ樹脂などが採用できる。なお、本実施形態の外側硬質接着層11、内側硬質接着層12、封止接着層36では、いずれもエポキシ樹脂(エポキシ接着材)を採用している。
【0067】
導電性基材20は、防湿性及び導電性を有した板状又はシート状の部材であり、電流の導電経路を備えた基材である。すなわち、導電性基材20は、有機EL素子10への給電部材として機能する部材である。
導電性基材20は、上記したように箔状の絶縁フィルム27の両面を箔状の第1導電フィルム26及び箔状の第2導電フィルム28で覆ったものである。
絶縁フィルム27の表面は、第1導電フィルム26及び第2導電フィルム28によってあらかじめラミネート加工されていてもよい。
【0068】
導電性基材20の平均厚みは2μm以上200μm以下とすることが好ましく、5μm以上100μm以下とすることがより好ましく、20μm以上60μm以下とすることが特に好ましい。
第1導電フィルム26と絶縁フィルム27と第2導電フィルム28のそれぞれの厚みは、上記した導電性基材20の平均厚みの範囲内であれば、特に限定されない。
第1導電フィルム26と第2導電フィルム28の厚みの組み合わせとしては、例えば、2μm〜20μmの厚みの第1導電フィルム26と、10μm〜100μmの厚みの第2導電フィルム28を併用することが可能である。
また、導電性基材20(第1導電フィルム26と絶縁フィルム27と第2導電フィルム28)のトータル厚みが、この範囲(2μm以上200μm以下)であればよいため、複数の絶縁部材等を介在させて3以上の導電部材から構成することもでき、1つの導電部材から構成することもできる。
【0069】
第1導電フィルム26及び第2導電フィルム28の材質は、均熱性又は放熱性と、水蒸気バリア性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、銅やアルミニウム、ステンレスなどが採用でき、その中でもアルミニウムで形成されていることが好ましい。また、アルミニウムは、耐腐食性があり、伝熱性が高いので伝熱機能が高く、かつ、水分の透過性が低いので封止機能も高い。そのため、本実施形態では第1導電フィルム26及び第2導電フィルム28としてアルミニウムを採用している。
【0070】
絶縁フィルム27の材質は、絶縁性を有していれば特に限定されるものではないが、封止性が高い観点からポリエチレンテレフタレート(PET)とポリ塩化ビニリデン(PVDC)とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちいずれかであることが好ましい。
絶縁フィルム27の平均厚みは、5μmから100μmであり、10μmから50μmであることが好ましい。
【0071】
本実施形態では、導電性基材20は、
図2のように少なくとも発光領域30を覆っており、さらに、内側給電領域32及び外側給電領域33の一部又は全部を覆っている。本実施形態では、導電性基材20は、
図2のように基板2全面に敷設されている。
そのため、導電性基材20は、第1導電フィルム26及び第2導電フィルム28の均熱機能によって発光領域30全体の熱を均等にすることができ、発光領域30内の有機EL素子10の輝度ムラを防止することができる。また、導電性基材20は、内側給電領域32及び外側給電領域33(給電領域31)まで延在しているため、外部と、発光領域30内の有機EL素子10との距離を遠くすることができ、発光領域30内の有機EL素子10内への水等の進入を効果的に防止することができる。
【0072】
次に、本実施形態に係る有機EL装置1の製造方法について説明する。
有機EL装置1は、図示しない真空蒸着装置及びCVD装置によって成膜し、図示しないパターニング装置、本実施形態では、レーザースクライブ装置を使用してパターニングを行い、製造される。
【0073】
まず、有機EL素子10を積層する有機EL素子形成工程を行う。
具体的には、まず、スパッタ法やCVD法によって基板2の大部分に第1電極層3を成膜する(
図10(a))。
このとき、本実施形態では、基板2の外周縁の近傍には、第1電極層3を積層していない。
【0074】
その後、第1電極層3が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって第1電極分離溝21を形成する(
図10(a)から
図10(b))。
このとき、第1電極分離溝21は、第1電極層3の外周と平行に形成されており、基板2の中心と同心円弧上に形成されている。第1電極分離溝21は、有機EL装置1が形成された際に内側給電領域32と発光領域30との境界部位(
図4参照)に形成されており、第1分離層15が形成されている。
【0075】
次に、内側給電領域32の一部をマスクで隠し、真空蒸着装置によって、この基板に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを順次積層し、機能層5を成膜する(
図10(b)から
図10(c))。
このとき、第1電極分離溝21内に機能層5が積層されて満たされる。なお、基板2の外周縁の近傍には、機能層5を積層していない。
また、基板の中心近傍では、第1分離層15の一部が露出している。
【0076】
その後、機能層5が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって電極接続溝22を形成する(
図10(c)から
図10(d))。
このとき、電極接続溝22は、基板2の中心と同心円弧上に形成されている。電極接続溝22は、有機EL装置1が形成された際に外側給電領域33に形成されている。
【0077】
その後、機能層5が成膜された基板に対して、真空蒸着装置によってほぼ全面に第2電極層6を成膜する(
図10(d)から
図10(e))。
このとき、第1分離層15上に第2電極層6が接触した状態で固着し、第1分離層15と第2電極層6(内側電極層16)が電気的に接続される。
また、電極接続溝22内に第2電極層6が積層されて満たされる。
【0078】
その後、第2電極層6が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、領域分離溝23及び第2電極分離溝24を形成する(
図10(e)から
図10(f))。
このとき、領域分離溝23及び第2電極分離溝24は、第1電極分離溝21と平行に形成されており、いずれも同心円弧上に形成されている。
領域分離溝23は、第1電極分離溝21の外側に形成されており、電極接続溝22の内側に形成されている。領域分離溝23は、有機EL装置1が形成された際に外側給電領域33と発光領域30との境界部位に形成されており、第2電極分離溝24は、内側給電領域32内に形成されている。
以上が、有機EL素子形成工程である。
【0079】
続いて、無機封止層7を形成する無機封止層積層工程を行う。
まず、基板の一部をマスクで覆い、CVD装置によって、第1無機封止層47を成膜する(
図10(f)から
図10(g))。
このとき、第1無機封止層47は、少なくとも発光領域30内の第2電極層6を覆っており、さらに、領域分離溝23及び第2電極分離溝24の部材厚方向の投影面上まで延びている。すなわち、領域分離溝23及び第2電極分離溝24内に、第1無機封止層47が積層されて満たされる。そのため、封止機能を十分に確保することができる。
【0080】
その後、第1無機封止層47を成膜したCVD装置から取り出して、第2無機封止層48の原料を塗布し、第2無機封止層48を形成し、無機封止層7が形成される(
図10(g)から
図10(h))。
このとき、第1無機封止層47上の全面を第2無機封止層48が覆っている。
このようにして、第1無機封止層47上に第2無機封止層48が積層されて無機封止層7が形成される。
【0081】
続いて、上記した手順によって形成された無機封止層7に導電性基材20を接着する導電性基材接着工程を行う。
導電性基材接着工程では、軟質接着層8を形成するとともに、無機封止層7に導電性基材20を接着する。
具体的には、
図7のように無機封止層7上に軟質接着層8を真空ラミネーターで貼り合わせて、内側硬質接着層12及び外側硬質接着層11の原料をディスペンサーによって塗布する。そして、第1導電フィルム26、絶縁フィルム27、第2導電フィルム28を取り付けていき、絶縁フィルム27と第2導電フィルム28によって形成された第1給電穴35に封止接着層36の原料をディスペンサーによって塗布する。
このとき、第1導電フィルム26は、外側電極層17と電気的に接続されており、第2導電フィルム28は、第2給電穴37を通過して内側電極層16と電気的に接続されている。
【0082】
このようにして導電性基材接着工程を終了し、有機EL装置1が完成する。
【0083】
最後に、有機EL装置1に外部電源端子40を接続して有機EL装置1を点灯させた場合の電流の流れについて説明する。なお、ここでは、外部電源端子40の第1電極端子38は正極となっており、第2電極端子39は負極となっている。
上記したように有機EL装置1は内外に向けて電流が流れて発光領域30が発光する。具体的には、
図11のように外部電源端子40を有機EL装置1に接続した場合、外部電源端子40の第1電極端子38から供給された電流は、導電性基材20の第1導電フィルム26を伝わり、外側電極層17に至る。また、外側電極層17に至った電流は、電極接続溝22を通過して第1電極層3に伝わり、発光領域30内で機能層5が発光する。機能層5を通過した電流は、第2電極層6に伝わり、第1分離層15に至る。第1分離層15に至った電流は、内側電極層16に伝わり、導電性基材20の第2給電穴37を通過して第2導電フィルム28に至り、外部電源端子40の第2電極端子39に戻る。
このように、有機EL装置1は、
図6のような周方向に無数の内外の導電経路を有しており、導電経路に電流が流れることによって発光領域30全体が発光する。そのため、有機EL装置1は、輝度ムラがなく、均一に発光することが可能である。
【0084】
本実施形態の有機EL装置1によれば、無機封止層7と導電性基材20と各接着層によって封止されているため、封止機能が高い。そのため、たとえ浴室照明として使用した場合であっても、水等が進入せず、短絡しない。
【0085】
続いて、第2実施形態の有機EL装置60について説明する。なお、第1実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
【0086】
第2実施形態の有機EL装置60の基本構造は、第1実施形態の有機EL装置1とほぼ同じである。第2実施形態の有機EL装置60の導電性基材70は、第1実施形態の有機EL装置1の導電性基材20と形状が異なる。具体的には、導電性基材70は、第2給電穴37が設けられていない。
また、有機EL装置60は、無機封止層7上に導電性基材70が載置されており、軟質接着層8、外側硬質接着層11、並びに,内側硬質接着層12に加えて、さらに第2封止接着層61で接着されている。
【0087】
第2封止接着層61は、流動性を有した接着材が硬化することによって形成されるものであり、外側電極層17と導電性基材70を接着するものである。第2封止接着層61は、無機封止層7の外側縁に沿って設けられており、有機EL素子10と無機封止層7と軟質接着層8の界面を覆うように形成されている。すなわち、第2封止接着層61は、有機EL素子10と無機封止層7と軟質接着層8の各層間の隙間に水等が進入することを防止するものである。
第2封止接着層61は、導電性基材接着工程において、内側硬質接着層12とほぼ同時に形成される。
【0088】
第1導電フィルム26は、内側硬質接着層12によって形成された空間内を通過して、内側電極層16と接触しており、第1導電フィルム26と内側電極層16は電気的に接続されている。
第2導電フィルム28は、基板2の縁近傍で、外側電極層17と接触しており、第2導電フィルム28と外側電極層17は電気的に接続されている。
【0089】
続いて、有機EL装置60に外部電源端子40を接続して有機EL装置1を点灯させた場合の電流の流れについて説明する。なお、ここでは、外部電源端子40の第1電極端子38は負極となっており、第2電極端子39は正極となっている。
図13のように外部電源端子40を有機EL装置60に接続した場合、外部電源端子40の第2電極端子39から供給された電流は、導電性基材70の第2導電フィルム28を伝わり、外側電極層17に至る。また、外側電極層17に至った電流は、電極接続溝22を通過して第1電極層3に伝わり、発光領域30内で機能層5が発光する。機能層5を通過した電流は、第2電極層6に伝わり、第1分離層15に至る。第1分離層15に至った電流は、内側電極層16に伝わり、導電性基材70の第1導電フィルム26に至り、外部電源端子40の第1電極端子38に戻る。
このように、有機EL装置60は、有機EL装置1と同様、
図6のような周方向に無数の内外の導電経路を有しており、導電経路に電流が流れることによって発光領域30全体が発光する。そのため、輝度ムラがなく、均一に発光することが可能である。
【0090】
また、第2実施形態の有機EL装置60であれば、第2給電穴37が設けられていないため、水等の進入経路が少なく、封止性が高い。
【0091】
続いて、第3実施形態の有機EL装置80について説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
【0092】
第3実施形態の有機EL装置80は、第1実施形態の有機EL装置1と同様、円盤状の基板2(基材)上に有機EL素子10(積層体)を積層し、その上から無機封止層7(封止層)を積層して、封止したものである。そして、有機EL装置80は、無機封止層7の上に、導電性基材90を載置し、外側導電性粘着層81と内側導電性粘着層82で接着させたものである。
本実施形態の無機封止層7には、第2電極層6が露出した接続開口91が形成されている。接続開口91は、基板2の中央に設けられている。
外側導電性粘着層81は、粘着性と導電性を有した部位であり、第1電極層3と導電性基材90を接着するものである。外側導電性粘着層81は、
図14のように、基板2の外周縁に沿って設けられている。
内側導電性粘着層82は、粘着性と導電性を有した部位であり、第2電極層6と導電性基材90を接着し、かつ、導電性基材90と第2電極層6との間に形成される空間を埋めるものである。
導電性基材90は、第1実施形態の導電性基材20の第1給電穴35が設けられていない。また、導電性基材90は、第2給電穴37の内壁に絶縁フィルム27が被覆している。すなわち、第2給電穴37の内壁の表面には、第1導電フィルム26は露出していない。
【0093】
本実施形態の有機EL装置80は、基板2を平面視したときに、その面内において、
図14のように発光領域83と、内側給電領域84と、外側給電領域85を有している。
発光領域83は、第1実施形態の有機EL装置1の発光領域30に対応する領域である。発光領域83は、第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6の重畳部位に当たる領域であって、内側給電領域84以外の領域である。発光領域83は、基板2の周方向に連続した円環状の領域である。
内側給電領域84は、第1実施形態の有機EL装置1の内側給電領域32に対応する領域である。内側給電領域84は、内側導電性粘着層82の部材厚方向の投影面上に位置する領域であって、発光領域83と同様、第1電極層3と、機能層5と、第2電極層6の重畳部位に当たる領域である。
外側給電領域85は、第1実施形態の有機EL装置1の外側給電領域33に対応する領域である。外側給電領域85は、発光領域83及び内側給電領域84以外の領域である。
【0094】
有機EL装置80は、第1実施形態の有機EL装置1と同様、基板2を平面視したときに、基板2の中央に内側給電領域84が位置しており、内側給電領域84の周りを囲むように環状の発光領域83が位置しており、発光領域83の周りを囲むように環状の外側給電領域85が位置している。
【0095】
有機EL装置80を組み立てた場合において、
図14のように内側給電領域84に位置する第2給電穴37の内部には、内側導電性粘着層82が充填されている。すなわち、第2給電穴37の内部には、第2給電穴37の内壁に沿った略円柱状の内側導電性粘着層82が形成されており、当該内側導電性粘着層82は無機封止層7の接続開口91を通過して第2電極層6と第2導電フィルム28を繋いでいる。すなわち、第2電極層6と第2導電フィルム28は、内側導電性粘着層82を介して電気的に接続されている。
【0096】
一方、外側給電領域85では、第1電極層3と第1導電フィルム26が外側導電性粘着層81によって接着されており、第1電極層3と第1導電フィルム26は、外側導電性粘着層81を介して電気的に接続されている。
このように、有機EL装置80は、内側導電性粘着層82及び外側導電性粘着層81を介して有機EL素子10に給電する導電経路を形成されており、この導電経路は、周方向に無数に形成されている。これらの導電経路に電流が流れることによって発光領域83及び内側給電領域84の機能層5全体が発光する。そのため、有機EL装置80は、輝度ムラがなく、均一に発光することが可能である。
【0097】
内側導電性粘着層82及び外側導電性粘着層81は、粘着性、柔軟性、並びに導電性を有する層である。
JIS K 6253に準じた内側導電性粘着層82及び外側導電性粘着層81のショア硬さは、ショア硬さがA30以上A70以下であり、A40以上A65以下であることが好ましく、A45以上A63以下であることがより好ましい。
内側導電性粘着層82及び外側導電性粘着層81の曲げ弾性率は、3MPa以上、30MPa以下であることが好ましく、3MPa以上、25Pa以下であることがより好ましく、3.9MPa以上23MPa以下であることが特に好ましい。
内側導電性粘着層82及び外側導電性粘着層81の具体的な材質としては、異方性導電膜(ACF)、アクリル系導電性粘着剤、シリコーン系導電性粘着剤、及び導電性接着剤からなる群から選ばれる1種以上のものが好ましい。
前記アクリル系導電性粘着剤としては、必要に応じてイオン導電性高分子を添加した、アクリル系粘着剤に、導電性付与材料を混合して製造したものが好ましい。
この導電性付与材料としては、カーボン繊維、カーボン微粒子、樹脂の微粒子に金属を被覆したもの、並びに、ニッケル、銀、及び銅からなる群から選ばれる1種以上の金属微粒子、からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記シリコーン系導電性粘着剤は、必要に応じてイオン導電性高分子を添加した、シリコーンをベース樹脂とし、前記導電性付与材料を混合して製造したものであり、耐熱性を高める観点から好ましい。
前記導電性接着剤は、ポリマー中に銀やニッケル等の金属微粒子を含有させたものであり、銀微粒子を含有するタイプでは銅製の部材を腐食させるという不具合が発生する場合もあるが、変性シリコーンをベース材料とした導電性接着剤は銀微粒子を含有するタイプであっても銅製の部材を腐食させず、かつ、高性能であるので好ましい。
【0098】
本実施形態の有機EL装置80によれば、第1実施形態の有機EL装置1と異なり、発光領域83だけではなく、内側給電領域84も発光できるため、有機EL装置80の大部分を発光させることが可能であり、発光面積が大きい。
【0099】
続いて、第4実施形態の有機EL装置100について説明する。なお、第1〜3実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
【0100】
第4実施形態の有機EL装置100は、第1実施形態の有機EL装置1と同様、
図15のように円盤状の基板2(基材)上に有機EL素子10(積層体)を積層し、その上から無機封止層7(封止層)を積層して、封止したものである。
そして、有機EL装置100は、無機封止層7の上に、導電性基材110を載置し、軟質接着層8と外側導電性粘着層81と内側導電性粘着層82で接着させたものである。
本実施形態の無機封止層7には、第3実施形態の無機封止層7と同様、第2電極層6が露出した接続開口91が形成されている。接続開口91は、基板2の中央に設けられている。
【0101】
本実施形態の外側導電性粘着層81は、第1実施形態の外側硬質接着層11と同様、基板2の外周縁に沿って設けられている。
本実施形態の内側導電性粘着層82は、第2電極層6と導電性基材110の第1導電フィルム26を接着し、かつ、導電性基材110と第2電極層6との間に形成される空間を埋めるものである。
【0102】
導電性基材110は、導電性基材110の中心近傍に第1給電穴101を有している。
第1給電穴101は、絶縁フィルム27に形成された絶縁穴102と、第2導電フィルム28に形成された第2導電穴103によって形成される穴であり、絶縁穴102の内壁を介して段状に連続している。第1給電穴101は、内側給電領域84に位置しており、第1給電穴101に外部電源端子40の第1電極端子38を接続することによって、導電性基材110に給電可能となっている。
【0103】
本実施形態の有機EL装置100は、第3実施形態の有機EL装置1と同様、基板2を平面視したときに、その面内において、発光領域83と、内側給電領域84と、外側給電領域85を有している。
【0104】
図15のように有機EL装置100の組み立てた場合において、発光領域83内では、無機封止層7と第1導電フィルム26との間には、軟質接着層8が介在している。
【0105】
内側給電領域84では、内側導電性粘着層82が無機封止層7の接続開口91を通過して第2電極層6と第1導電フィルム26を繋いでいる。すなわち、第2電極層6と第1導電フィルム26は、内側導電性粘着層82を介して電気的に接続されている。
【0106】
一方、外側給電領域85では、絶縁フィルム27の外側で第1電極層3と第2導電フィルム28が外側導電性粘着層81によって接着されており、第1電極層3と第2導電フィルム28は、外側導電性粘着層81を介して電気的に接続されている。
このように、有機EL装置100は、内側導電性粘着層82及び外側導電性粘着層81を介して有機EL素子10に給電する導電経路を形成されており、この導電経路は、周方向に無数に形成されている。これらの導電経路に電流が流れることによって発光領域83及び内側給電領域84の機能層5全体が発光する。そのため、輝度ムラがなく、均一に発光することが可能である。
【0107】
上記した第4実施形態では、第2電極層6と第1導電フィルム26との接続に内側導電性粘着層82を介して電気的に接続していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の部材によって接続してもよい。例えば、導電性を有した導電層を介在させることで、電気的に接続してもよい。
【0108】
上記した第3,4実施形態では、発光領域83及び内側給電領域84の双方が発光する構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発光領域83及び外側給電領域85の双方を発光させてもよいし、発光領域83と内側給電領域84と外側給電領域85のすべて(全面)を発光させてもよい。
【0109】
上記した実施形態では、基板2として円形状のガラス基板を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく楕円形状であってもよい。
【0110】
上記した実施形態では、内側電極層と外側電極層として有機EL素子10内の第2電極層6の一部を使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内側電極層と外側電極層として別の物質を使用してもよい。特に、内側電極層と外側電極層は、アルミニウム、銀、ニッケル、モリブデンの中から選ばれる少なくとも1種以上の金属から形成されているが好ましい。
【0111】
上記した実施形態では、外側給電領域33が陽極機能を担い、内側給電領域32が陰極機能を担うものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、外側給電領域33と内側給電領域32とで担う極が異なればよい。すなわち、外側給電領域33が陰極機能を担い、内側給電領域32が陽極機能を担うものであってもよい。