(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記p型の半導体及び前記n型の半導体は、SiとGeからなる合金であり、前記Siの重量比が75〜85%、前記Geの重量比が15〜25%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
熱源を囲む構造物の壁として積み重ねて用いられ、pn接合部が前記壁の内面側に配置され、前記pn接合部側と反対側の端面に設けられるとともに前記熱電変換素子間を直列に接続する金属板が前記壁の外面側に配置されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る熱電変換素子について、以下図面を参照して説明する。本実施の形態の熱電変換素子は、熱源を囲む構造物である例えば、焼却炉、金属溶解炉、溶融炉等の壁に用いることができる。
【0019】
熱電変換素子1は、
図1に示すように、p型半導体
層11と、n型半導体
層12と、p型半導体
層11とn型半導体
層12とにより挟持された絶縁層13とを有し、p型半導体
層11とn型半導体
層12とをpn接合して構成される。p型半導体
層11とn型半導体
層12の境界はpn接合部14を構成する。熱電変換素子1の形状は角型で直方体形状であり、熱源を囲む構造物の壁として用いるのに積層可能な形状になっている。pn接合部14は、直方体形状の熱電変換素子1の短手方向の面側に形成されている。
【0020】
絶縁層13は、耐火煉瓦の成分の層であり、シリコン酸化物(SiO
2)及びアルミニウム酸化物(Al
2O
3)を主成分とし、鉄酸化物(Fe
2O
3)及びチタン酸化物(TiO
2)のうち少なくとも1種が添加された耐火煉瓦の粉末から形成される。
【0021】
絶縁層13に用いられる主な耐火煉瓦材料について、それぞれの耐火度と対応する代表的な組成及び軟化温度を表1に示す。表1において、耐火煉瓦材料の耐火度はゼーゲルコーンによる測定方法を用いて示し(SK32〜SK40)、組成は重量パーセントで示す。
【0023】
p型半導体
層11は、上記の耐火煉瓦の粉末に、p型にドープされ粉末化したゲルマニウム及びシリコンのうち少なくとも1種からなるp型の半導体の粉末を15〜70体積%混合した粉末から形成される。
即ち、p型半導体層11は、p型の半導体を15〜70体積%混合した耐火煉瓦層からなる。また、n型半導体
層12は、上記の耐火煉瓦の粉末に、n型にドープされ粉末化したゲルマニウム及びシリコンのうち少なくとも1種からなるn型の半導体の粉末を15〜70体積%混合した粉末から形成される。
即ち、n型半導体層12は、n型の半導体を15〜70体積%混合した耐火煉瓦層からなる。
【0024】
p型半導体
層11におけるp型の半導体の粉末の添加量、または、n型半導体
層12におけるn型の半導体の粉末の添加量は、15体積%より少ないと、p型半導体
層11またはn型半導体
層12の電気抵抗が大きくなって導電性を失ってしまい、70体積%より多いと、p型半導体
層11またはn型半導体
層12と絶縁層13の組成の違いによる熱膨張率の差が大きくなり、例えば焼却炉に用いられた場合には炉の高温・低温のヒートサイクルにより熱電変換素子1に亀裂などの劣化が生じてしまう。したがって、p型半導体
層11におけるp型の半導体の粉末の添加量、または、n型半導体
層12におけるn型の半導体の粉末の添加量は、15〜70体積%の量とするのが適切であり、良好な熱電変換素子を得ることができる。
【0025】
また、絶縁層13は、シリコン酸化物(SiO
2)を主成分とし、アルミニウム酸化物(Al
2O
3)、ホウ素酸化物(B
2O
3)及び亜鉛酸化物(ZnO)のうち少なくとも1種が添加された、高軟化点を有する耐熱ガラス材料の粉末から形成されるようにしてもよい。さらに、この耐熱ガラス材料の粉末に、MgO、アルカリ土類金属の酸化物であるCaO、SrO及びBaOのうち少なくとも1種、または、軟化点が少し低下するがアルカリ金属の酸化物であるLi
2O、Na
2O及びK
2O等のうち少なくとも1種を添加するようにしてもよい。
【0026】
絶縁層13を上記の耐熱ガラス材料の粉末から形成するようにした場合には、p型半導体
層11は、上記の耐熱ガラス材料の粉末に、p型にドープされ粉末化したゲルマニウム及びシリコンのうち少なくとも1種からなるp型の半導体の粉末を15〜70体積%混合した粉末から形成される。
即ち、p型半導体層11は、p型の半導体を15〜70体積%混合した耐熱ガラス層からなる。また、n型半導体
層12は、上記の耐熱ガラス材料の粉末に、n型にドープされ粉末化したゲルマニウム及びシリコンのうち少なくとも1種からなるn型の半導体の粉末を15〜70体積%混合した粉末から形成される。
即ち、n型半導体層12は、n型の半導体を15〜70体積%混合した耐熱ガラス層からなる。
【0027】
なお、p型半導体
層11、n型半導体
層12及び絶縁層13の材料として上記の耐熱ガラス材料の粉末を用いる場合にも、p型半導体
層11におけるp型の半導体の粉末の添加量、または、n型半導体
層12におけるn型の半導体の粉末の添加量を15〜70体積%の量とするのが適切であり、良好な熱電変換素子を得ることができるが、その理由は上記の耐火煉瓦の粉末を用いる場合と同様である。
【0028】
p型の半導体の粉末として、p型にドープされ粉末化したシリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)からなる合金の粉末を用いるようにしてもよく、Siの重量比を75〜85%、Geの重量比を15〜25%とするとよい。また、n型の半導体の粉末として、n型にドープされ粉末化したシリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)からなる合金の粉末を用いるようにしてもよく、Siの重量比を75〜85%、Geの重量比を15〜25%とするとよい。
【0029】
SiとGeからなる合金は、どのような組成でも混ざり合う全率固溶体を形成し、電気抵抗、熱伝導、熱起電力等の物理的特性は組成変化に対して連続的に変化する。p型半導体
層11またはn型半導体
層12は、Siが重量比で75〜85%、Geが重量比で15〜25%とする合金の粉末材料を用いて形成すれば、熱電材料として性能指数が大きくなる。
【0030】
次に、熱電変換素子1を形成する方法について説明する。熱電変換素子1の形成には
図2及び
図3に示す金型2が用いられる。この金型2は、上方が開口した角形の箱状の基体21と仕切部材22とを備えている。仕切部材22は、仕切板22aと仕切枠22bとを有する。
【0031】
仕切部材22を上方から基体21の短手方向中央に差し込むことにより、
図3に示すように、基体21内の空間が3つの領域A〜Cに区画される。仕切枠22bにより構成される領域Aは領域B及び領域Cに挟まれて配置される。仕切板22aは領域Bと領域Cとを仕切る。
【0032】
領域Aには耐火煉瓦の粉末が充填され、領域Bには耐火煉瓦の粉末とn型の半導体の粉末を均一に混合した粉末が充填され、領域Cには耐火煉瓦の粉末とp型の半導体の粉末を均一に混合した粉末が充填される。
【0033】
それぞれの粉末の領域A〜Cへの充填が完了した後に、仕切部材22を基体21から引き抜く。この後、金型2の上部から粉末に所定の圧力を加えて固める。そして、加圧成形した粉末を耐火煉瓦の作製温度で加熱すると、
図1に示した角型の熱電変換素子1が完成する。すなわち、熱電変換素子1を作製する焼成工程で、pn接合部14、導通部であるp型半導体
層11及びn型半導体
層12、および、絶縁層13を一挙に容易に形成することができる。また、耐熱ガラス材料を用いる場合にも同様な方法で熱電変換素子1を形成することができる。
【0034】
耐火煉瓦の粉末または耐熱ガラス材料の粉末を用いて形成された角形の熱電変換素子1は、熱電変換素子として発電をする役割を果たすだけではなく、熱源を囲む構造物の壁としての役割を果たすことができる。
【0035】
熱電変換素子1を熱源を囲む構造物の壁に用いた場合の一例を
図4に示す。複数の直方体形状の熱電変換素子1は、各熱電変換素子1間を接続しかつ絶縁するための耐火モルタル15を介在させて、短手方向の面が表側に配置される小口積みで積み重ねられる。なお、熱電変換素子1を横方向に接続させることももちろん可能であり、その場合にも耐火モルタル15が用いられる。
【0036】
上下に耐火モルタル15を介して重なり合う一方の熱電変換素子1のp型半導体
層11と他方の熱電変換素子1のn型半導体
層12は金属板16により連結され、金属板16により各熱電変換素子1は直列に接続される。
【0037】
熱電変換素子1のpn接合部14側が壁の内面側に配置され、熱源からの大量の熱エネルギーを受ける高温側となる。pn接合部14側と反対側の端面に設けられた金属板16側は壁の外面側に配置され低温側となる。熱電変換素子1は、高温側と低温側の温度差により発電する。熱電変換効率を向上させるために、低温側となる金属板16側に向けて図示しない送風機から送風することにより強制冷却するようにしてもよいし、金属板16側に図示しない注水器から冷却水を注水して強制冷却するようにしてもよい。
【0038】
次に、上記の実施の形態の変形例について
図5〜
図7を参照して説明する。なお、
図5及び
図7において、上記の実施の形態とほぼ同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。熱電変換素子10は、積み重ね可能な角形で直方体形状である。熱電変換素子10は、長手方向に上記の実施の形態とほぼ同様な構成の熱電変換素子1が第2の絶縁層17を介して並設されて構成されている。なお、並設された熱電変換素子1は、pn接合部14が熱電変換素子10の長手方向の面側に形成されている。第2の絶縁層17は、上述の絶縁層(第1の絶縁層)13と同様の材料である耐火煉瓦の粉末または耐熱ガラス材料の粉末により形成される。
【0039】
次に、熱電変換素子10を形成する方法について説明する。熱電変換素子10の形成には、
図6に示す金型20が用いられる。この金型20は、上方が開口した角形の箱状の基体23と仕切部材24とを備えている。仕切部材24は4つの仕切枠24aを有する。
【0040】
仕切部材24を上方から基体23に差し込むことにより、基体23内の空間が、各熱電変換素子1を構成するp型半導体
層11、n型半導体
層12、第1の絶縁層13、および、第2の絶縁層17の材料である粉末がそれぞれ充填される領域に区画される。
【0041】
その後は、上記の実施の形態と同様に、材料である粉末を金型20の各領域に充填し、仕切部材24を基体23から引き抜き、金型20の上部から粉末に所定の圧力を加えて固めて、加圧成形した粉末を耐火煉瓦または耐熱ガラス材料の作製温度で加熱する。これにより
図5に示した熱電変換素子10が完成する。
【0042】
熱電変換素子10を熱源を囲む構造物の壁に用いた場合の一例を
図7に示す。複数の直方体形状の熱電変換素子10は、各熱電変換素子10間を接続しかつ絶縁するための耐火モルタル15を介在させて、長手方向の面が表側に配置される長手積みで積み重ねられる。また、熱電変換素子10は横方向に接続させることも可能であり、その場合にも耐火モルタル15が用いられる。
【0043】
熱電変換素子10を構成する一方の熱電変換素子1のp型半導体
層11と他方の熱電変換素子1のn型半導体
層12との間、および、横方向に接続した隣り合う熱電変換素子10の一方の熱電変換素子10のp型半導体
層11と他方の熱電変換素子10のn型半導体
層12との間は、金属板18により連結され、金属板18により各熱電変換素子10間は直列に接続される。
【0044】
熱電変換素子10を構成する各熱電変換素子1のpn接合部14側が壁の内面側に配置され、熱源からの大量の熱エネルギーを受ける高温側となる。pn接合部14側と反対側の端面に設けられた金属板18側は壁の外面側に配置され低温側となる。熱電変換素子10は、高温側と低温側の温度差により発電する。熱電変換効率を向上させるために、金属板18側を送風または注水により強制冷却してもよいのは上記の実施の形態と同様である。
【0045】
このように本実施の形態の熱電変換素子では、
耐火煉瓦層または耐熱ガラス層により構成するようにしたので、熱源を囲む構造物の壁材そのものとして利用することができ、従来のように高温・低温のヒートサイクル時に熱膨張率の差によって生じる応力により亀裂が生じるようなことがなく、良好な熱電変換効率を維持することができる。加えて、本実施の形態の熱電変換素子では、形状が角形であるようにしたので、積み重ねが可能であり、壁材として用いやすい。
【0046】
また、本実施の形態の熱電変換素子では、金型2,20を用いることにより容易に形成することができるので、製造に特に大きな設備は必要とせず、製造コストを低減することができる。
【0047】
また、本実施の形態の熱電変換素子では、熱源から熱エネルギーを受ける面積が大きいので、高い熱電変換効率を得ることができる。
【0048】
太陽電池は太陽が出ている間しか発電できないが、本実施の形態の熱電変換素子では昼夜にかかわらず発電できる。また、本実施の形態の熱電変換素子は、作製価格が太陽電池より安く、ほぼメンテナンスフリーでもあり、本格的に大量に使われれば電力コストの節約に大いに寄与できる。また、本実施の形態の熱電変換素子では、太陽電池と同様に電力を得るのに炭酸ガスが発生せず、大気汚染を引き起こすことがない。
【0049】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では角形の熱電変換素子について説明したが、形状は角型である必要は必ずしもない。所望の形状に応じた金型を用いれば、所望の形状の熱電変換素子を形成することができる。
【0050】
また、本発明において、p型半導体
層11、n型半導体
層12、第1の絶縁層13または第2の絶縁層17を気泡を分散させて形成することにより、熱電変換素子の断熱性を向上させるようにしてもよい。
【0051】
また、本発明の熱電変換素子は、熱源を囲む構造物であればどのような構造物にも適用することができ、焼却炉、金属溶解炉、溶融炉等には限定されず、例えば、工場、高レベル核廃棄物を冷却する施設などにも用いることができる。
【0052】
また、上記実施の形態では、2つの並設された熱電変換素子1を有する熱電変換素子10について説明したが、3つ以上の熱電変換素子1を有するようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、表1において絶縁層13などに用いられる主な耐火煉瓦材料の組成について示したが、これらの組成はあくまでも例示であり、これらの組成を多少変化させても耐火性能は変わらず、耐火煉瓦材料として用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
熱電変換素子1を作製するのに、絶縁層13の材料としてSK36の耐火煉瓦の粉末を用いた。p型半導体
層11の材料としては、SK36の耐火煉瓦の粉末にp型シリコン結晶の粉末を体積比率で40体積%添加して均一に混合した粉末を用いた。このp型シリコン結晶の粉末にはシリコンにホウ素0.3原子%を添加して溶解し粉砕したものを用いた。n型半導体
層12の材料としては、SK36の耐火煉瓦の粉末にn型シリコン結晶の粉末を体積比率で40体積%添加して均一に混合した粉末を用いた。このn型シリコン結晶の粉末にはシリコンにリン0.3原子%を添加して溶解し粉砕したものを用いた。
【0056】
上述の各材料を金型2に充填して、加圧して固化した後に耐火煉瓦の作製温度である1200℃程度で加熱することで、
図1に示した構造の熱電変換素子1を作製した。熱電変換素子1を作製する焼成工程で、pn接合部14、導通部であるp型半導体
層11及びn型半導体
層12、絶縁層13を一挙に形成することができた。作製した熱電変換素子1の構造は、従来と比較して熱エネルギーを受ける面積が大きく、良好な熱電変換効率を得ることができた。また、作製した熱電変換素子1は、耐火煉瓦と同様の強度を有しており、構造物の壁材として利用することができた。
【0057】
[実施例2]
実施例1の熱電変換素子1を50個作製し、耐火モルタルを用いて直列に接続した。この結果、pn接合部14側の高温側と金属板16側の低温側との温度差が800℃である場合には、20Vの起電力を得ることが出来た。熱電変換素子1は高温側に金属板(金属電極)を有さないことにより、熱による高温側の劣化を防げることがわかった。また、p型半導体
層11、n型半導体
層12および絶縁層13間の熱膨張率の差による劣化は生じなかった。
【0058】
[実施例3]
熱電変換素子1を作製するのに、絶縁層13の材料として、耐熱ガラス材料の粉末であり、シリコン酸化物、ホウ素酸化物などを成分とするASF102X(旭硝子株式会社製)を用いた。この耐熱ガラス材料の粉末は850℃程度に加熱すると透明なガラスになる。
【0059】
p型半導体
層11の材料としては、上述の耐熱ガラス材料の粉末に体積比率45%のp型シリコン結晶の粉末と5%のp型ゲルマニウム結晶の粉末を添加して均一に混合した粉末を用いた。このp型シリコン結晶の粉末にはシリコンにホウ素0.2原子%を添加して溶解し粉砕したものを用いた。また、p型ゲルマニウム結晶の粉末にはゲルマニウムにホウ素0.2原子%を添加して溶解し粉砕したものを用いた。
【0060】
n型半導体
層12の材料としては、上述の耐熱ガラス材料の粉末に体積比率45%のn型シリコン結晶の粉末と5%のn型ゲルマニウム結晶の粉末を添加して均一に混合した粉末を用いた。このn型シリコン結晶の粉末にはシリコンにリン0.2原子%を添加して溶解し粉砕したものを用いた。また、n型ゲルマニウム結晶の粉末にはゲルマニウムにリン0.2原子%を添加して溶解し粉砕したものを用いた。
【0061】
このような材料により作製した熱電変換素子1は、実施例1及び実施例2で作製した耐火煉瓦の粉末を用いて作製した熱電変換素子1と熱電特性はほとんど変わらなかった。
【0062】
実施例3においても、p型半導体
層11、n型半導体
層12および絶縁層13間の熱膨張率の差による劣化は生じなかった。
【0063】
[実施例4]
図5に示した熱電変換素子10を作製するのに、第1の絶縁層13及び第2の絶縁層17として、熱的な特性の安定しているシリコン酸化物(SiO
2)にアルミニウム酸化物(Al
2O
3)及びマグネシウム酸化物(MgO)が添加された耐熱ガラス材料の粉末を用いた。
【0064】
p型半導体
層11の材料としては、ホウ素を0.2原子%添加した重量比で80%のSiと20%のGeからなる合金の粉末と、上述の耐熱ガラス材料の粉末を体積比1:1で混合した粉末を用いた。n型半導体
層12の材料としては、リンを0.2原子%添加した重量比で80%のSiと20%のGeからなる合金の粉末と、上述の耐熱ガラス材料の粉末を体積比1:1で混合した粉末を用いた。
【0065】
上述の各材料を金型20に充填して、加圧して固化した後に1250℃で1時間程度加熱することで、
図5に示した構造の熱電変換素子10を作製した。
【0066】
なお、p型半導体
層11及びn型半導体
層12の材料は、耐熱ガラス材料の粉末に、重量比で80%のSiと20%のGeからなる合金の粉末を15〜70体積%の範囲で混合する材料とすることが望ましい。この合金の粉末が15体積%より少ないと、熱電変換素子において導電性を失ってしまう。この合金の粉末が70体積%を超えると、熱電変換素子10を構成するp型半導体
層11、n型半導体
層12、第1の絶縁層13及び第2の絶縁層17の各境界面は同じ成分のガラスが溶け合って強固なものになっても、熱膨張率の差から発生する応力によりヒートサイクルに耐えられなくなってしまう。
【0067】
この熱電変換素子10全体の寸法を65mm×114mm×230mmとし、中央の第2の絶縁層17の寸法は65mm×114mm×15mmとした。第1の絶縁層13の寸法を65mm×84mm×15mmとし、pn接合部14の面の寸法は65mm×30mmとした。このように作製した熱電変換素子10の低温側の両端のp極とn極の電極間の電気抵抗は0.01Ωとなった。
【0068】
この熱電変換素子10の1個につき配置された2個の熱電変換素子1について、高温側を750℃とし、低温側を100℃として650℃の温度差を与え、両端のp極とn極の電極間の起電力を測定したところ0.3Vの起電力が得られた。また、この熱電変換素子10を10個作製し、これらを直列に連結し、外部抵抗として0.01Ωの外部抵抗を接続することにより約150Wの電力を得ることができた。
【0069】
[実施例5]
実施例4において耐熱ガラス材料の粉末の代わりに、重量比が13%のシリコン酸化物(SiO
2)、85%のアルミニウム酸化物(Al
2O
3)、2%の鉄酸化物(Fe
2O
3)の混合物からなる耐火煉瓦の粉末を用いて熱電変換素子10を作製した。
【0070】
実施例4と同様に熱電変換素子10全体の寸法を65mm×114mm×230mmとし、10個の熱電変換素子10を金属溶解炉の側壁に配置し、熔解炉の廃熱を利用した発電を行った。熔解炉の発熱は1100℃を越え、高温側と低温側との温度差が1000℃程度と大きくなるので発電出力も大きくなり、0.01Ωの外部抵抗を接続することにより約200Wの電力を得ることができた。
【0071】
[実施例6]
実施例2、実施例4及び実施例5において、低温側の金属板16,18側を送風機による送風により強制冷却すると発電出力が5〜10%向上する結果が得られた。また、金属板16,18側に注水器により冷却水を流して強制冷却を行うと更に発電出力が向上し、8〜15%向上する結果が得られた。