(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動規制手段が、前記環状空間内で前記防火措置材を受止め支持可能な受止め部と、当該受止め部の複数箇所から延出された前記貫通孔の開口縁に係止可能な脚部とを備えた支持金具をさらに備えている請求項1から3のいずれか一項に記載の貫通孔防火措置構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の貫通孔防火措置構造では、耐火構造体の貫通孔の内周面と長尺体の外側面との間の環状空間内に巻回された耐火積層体が圧縮状態で充填されているため、地震等の外力に起因して長尺体に長手方向(引抜き側又は押込み側)への移動力が作用したとき、この長尺体の移動に連れてこれに接触している耐火積層体の内層側部位が貫通孔の外方側に引き摺り出され、特に、耐火積層体が2回以上巻回されている場合では、耐火積層体全体が竹の子状に引き出されるため、耐火構造体の貫通孔の内周面と長尺体の外側面との間での耐火閉塞機能が低下又は喪失する可能性があった。
【0005】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、地震等の外力に起因して長尺体に引抜き側への移動力が作用しても、環状空間内に充填された防火措置材の当初の充填状態を極力維持して、防火措置材による所期の耐火閉塞機能を発揮させることのできる貫通孔防火措置構造及びそれに有効に用いられる移動規制部材を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による第1の特徴構成は、耐火構造体の貫通孔の内周面とこれに挿通された長尺体の外側面との間の環状空間内に、防火措置材を充填してある貫通孔防火措置構造であって、
前記環状空間内の防火措置材の長尺体長手方向での移動を拘束阻止する移動規制手段が設けられている点にある。
【0007】
上記構成によれば、耐火構造体の貫通孔の内周面と長尺体の外側面との間の環状空間内に充填されている防火措置材の長尺体長手方向での移動を移動規制手段で拘束阻止しているので、地震等の外力に起因して長尺体に長手方向での移動力が作用したとき、この長尺体の移動に伴ってそれに接触している防火措置材の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを阻止することができる。
【0008】
したがって、地震等の外力に起因して長尺体にそれの長手方向の移動力が作用しても、環状空間内に充填された防火措置材の当初の充填状態を維持し易くなり、防火措置材による所期の耐火閉塞機能を発揮させることができる。
【0009】
本発明による第2の特徴構成は、前記移動規制手段には、前記防火措置材における前記貫通孔の開口側の端面に対して前記貫通孔の径方向に沿う又は略沿う姿勢で当接することにより、当該防火措置材の貫通孔外方側への移動を当接阻止する前記耐火構造体側に固定可能な移動規制部材が備えられている点にある。
【0010】
上記構成によれば、地震等の外力に起因して長尺体に長手方向での移動力が作用したとき、この長尺体の移動に伴ってそれに接触している防火措置材の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを移動規制手段で阻止するにあたって、この移動規制手段に備えられている移動規制部材を前記耐火構造体側に固定して、貫通孔の径方向に沿う又は略沿う姿勢で防火措置材における貫通孔の開口側の端面に当て付けるが故に、例えば、貫通孔の内径よりも大きな円盤状の移動規制部材を設ける場合に比して、防火措置材の端面に対して貫通孔の開口縁側から長尺体の外側面までの範囲において少ない材料で簡単、確実に当て付けることができるとともに、長尺体を挿通させるための孔加工等も不要化できる。
【0011】
したがって、防火措置材による所期の耐火閉塞機能を確実に発揮させるための移動規制手段の施工性の容易化と構造の簡素化、施工コストの低廉化を促進することができる。
【0012】
本発明による第3の特徴構成は、前記移動規制手段には、前記防火措置材における前記貫通孔の開口側の端面に対して前記貫通孔を略横断する姿勢で当接することにより、当該防火措置材の貫通孔外方側への移動を当接阻止する前記耐火構造体側に固定可能な移動規制部材が備えられている点にある。
【0013】
上記構成によれば、地震等の外力に起因して長尺体に長手方向での移動力が作用したとき、この長尺体の移動に伴ってそれに接触している防火措置材の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを移動規制手段で阻止するにあたって、この移動規制手段に備えられている移動規制部材を耐火構造体側に固定して、貫通孔を略横断する姿勢で防火措置材における貫通孔の開口側の端面に当て付けるが故に、例えば、貫通孔の内径よりも大きな円盤状の移動規制部材を設ける場合に比して、防火措置材の端面に対して貫通孔を略横断する程度の少ない材料で簡単、確実、頑丈に当て付けることができるとともに、長尺体を挿通させるための孔加工等も不要化できる。
【0014】
したがって、防火措置材による所期の耐火閉塞機能を確実に発揮させるための移動規制手段の施工性の容易化と構造の簡素化、施工コストの低廉化を促進することができる。
【0015】
本発明による第4の特徴構成は、前記移動規制手段には、前記防火措置材における前記貫通孔の開口側の端面に対して前記貫通孔を略横断する姿勢で当接することにより、当該防火措置材の貫通孔外方側への移動を当接阻止する前記耐火構造体側に掛け止め可能な線状部材が備えられている点にある。
【0016】
上記構成によれば、地震等の外力に起因して長尺体に長手方向での移動力が作用したとき、この長尺体の移動に伴ってそれに接触している防火措置材の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを移動規制手段で阻止するにあたって、この移動規制手段に備えられている線状部材を耐火構造体側に掛け止めて、貫通孔を略横断する姿勢で防火措置材における貫通孔の開口側の端面に当て付けるが故に、例えば、貫通孔の内径よりも大きな円盤状の移動規制部材を設ける場合に比して、防火措置材の端面に対して貫通孔を略横断する程度の少ない材料で簡単、確実に、かつ、長尺体の挿通状況に応じた形態で当て付けることができるとともに、長尺体を挿通させるための孔加工等も不要化できる。
【0017】
したがって、防火措置材による所期の耐火閉塞機能を確実に発揮させるための移動規制手段の施工性の容易化と構造の簡素化、施工コストの低廉化を促進することができる。
【0018】
本発明による第5の特徴構成は、前記移動規制手段には、前記環状空間内で前記防火措置材を受止め支持可能な受止め部と、当該受止め部の複数箇所から延出された前記貫通孔の開口縁に係止可能な脚部とを備えた支持金具が備えられている点にある。
【0019】
上記構成によれば、地震等の外力に起因して長尺体に長手方向での移動力が作用したとき、この長尺体の移動に伴ってそれに接触している防火措置材の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを移動規制手段で阻止するにあたって、この移動規制手段に備えられている支持金具及び防火措置材を貫通孔の一方の開口側から組み付けることができるばかりでなく、地震等の外力に起因して長尺体に作用する長手方向での移動力が、耐火構造体の貫通孔に対する長尺体の押し込み側への移動力である場合には、この長尺体の押し込み側への移動に伴ってそれに接触している防火措置材が同じ方向に引き摺り出されることを、環状空間内に位置する支持金具の受止め部にて抑制することができる。
【0020】
したがって、受止め部及び脚部を備えた支持金具を移動規制手段に備えさせることにより、施工性の容易化を図りながら移動規制手段を構造面、コスト面で有利に構成することができる。
【0021】
尚、本発明においては、上述の第1〜第5の特徴構成の全てを同時に組み合わせて実施することが可能であり、また、上述の第1〜第5の特徴構成を適宜選択して組み合わせて実施することも可能である。
【0022】
本発明による第6の特徴構成は、前記移動規制部材には、前記防火措置材に対して前記貫通孔の一方の開口側から突き刺し可能な突刺し部が設けられ、この突刺し部の先端側には、防火措置材に係止して少なくとも前記貫通孔の他方の開口側への移動を阻止する係止部が形成されている点にある。
【0023】
上記構成によれば、貫通孔の内周面と長尺体の外側面との間の環状空間内に充填される防火措置材に対して、移動規制部材の突刺し部を貫通孔の一方の開口側から突き刺し、この突刺し部の先端側に形成されている係止部を防火措置材に係止させる。
この状態で地震等の外力に起因して長尺体にそれの長手方向の移動力が作用しても、貫通孔の一方の開口側においては、移動規制部材によって引き出し側への引き摺り出しを阻止することができ、且つ、貫通孔の他方の開口側においては、移動規制部材の突刺し部に形成されている係止部の係止作用により、防火措置材の少なくとも押込み側への引き摺り出しを阻止することができる。
【0024】
したがって、防火措置材に対して移動規制部材の突刺し部を貫通孔の一方の開口側から突き刺すだけで、防火措置材の引き出し側及び押込み側への引き摺り出し移動を阻止することができるから、例えば、移動規制部材が単なる板又は紐、或いは針金から構成されている場合に比して施工の効率化を図ることができる。
【0025】
本発明による第7の特徴構成は、前記防火措置材が、前記環状空間内に孔径方向で複層状態に充填されているとともに、前記移動規制手段には、前記耐火材の層間の合わせ面同士を接着する接着手段と、前記防火措置材の外層側部分における前記貫通孔の一方の開口側の端面に当接する前記耐火構造体側に固定可能な移動規制部材とが備えられている点にある。
【0026】
上記構成によれば、移動規制手段に備えられている接着手段により、環状空間内に孔径方向で複層状態に充填される耐火材の層間の合わせ面同士を接着するとともに、移動規制手段に備えられている移動規制部材を耐火構造体側に固定して、防火措置材の外層側部分における貫通孔の開口側の端面に当て付けることにより、地震等の外力に起因して長尺体に長手方向での移動力が作用したとき、この長尺体の移動に伴ってそれに接触している防火措置材の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを、接着手段による層間接着作用と移動規制部材の外層側での接当阻止作用との協働で阻止することができる。
【0027】
したがって、例えば、貫通孔の内径よりも大きな円盤状の移動規制部材を設ける場合に比して、防火措置材による所期の耐火閉塞機能を確実に発揮させるための移動規制手段の施工性の容易化と構造の簡素化、施工コストの低廉化を促進することができる。
【0028】
本発明による第8の特徴構成は、前記第6の特徴構成の貫通孔防火措置構造に用いられる前記移動規制部材であって、前記防火措置材に対して前記貫通孔の一方の開口側から突き刺し可能な突刺し部が設けられ、この突刺し部の先端側には、防火措置材に係止して少なくとも前記貫通孔の他方の開口側への移動を阻止する係止部が形成されている点にある。
【0029】
上記構成によれば、貫通孔の内周面と長尺体の外側面との間の環状空間内に充填される防火措置材に対して、移動規制部材の突刺し部を貫通孔の一方の開口側から突き刺し、この突刺し部の先端側に形成されている係止部を防火措置材に係止させる。
この状態で地震等の外力に起因して長尺体にそれの長手方向の移動力が作用しても、貫通孔の一方の開口側においては、移動規制部材によって引き出し側への引き摺り出しを阻止することができ、且つ、貫通孔の他方の開口側においては、移動規制部材の突刺し部に形成されている係止部の係止作用により、防火措置材の少なくとも押込み側への引き摺り出しを阻止することができる。
【0030】
したがって、防火措置材に対して移動規制部材の突刺し部を貫通孔の一方の開口側から突き刺すだけで、防火措置材の引き出し側及び押込み側への引き摺り出し移動を阻止することができるから、例えば、移動規制部材が単なる板又は紐、或いは針金から構成されている場合に比して施工の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
図1〜
図4は貫通孔防火措置構造を示し、耐火構造体(防火区画体)の一例である鉄筋コンクリート製の床スラブ1に形成された貫通孔2の内周面2aとこれに挿通されたケーブルや空調配管等のケーブル・配管類(長尺体の一例)3の外側面との間の環状空間S内に、防火措置材の一例で、帯状に連続する複数の袋体4a〜4c内に防火材4dを収容してなる可撓性の帯状耐火材4をケーブル・配管類3に螺旋状に巻回した状態で充填するとともに、前記環状空間S内に装填されている帯状耐火材4のケーブル・配管類3の長手方向(長尺体長手方向)における引き出し側及び押込み側への移動を拘束阻止する移動規制手段Aが設けられている。
【0033】
移動規制手段Aには、環状空間S内で帯状耐火材4の外層耐火材部分4Aの下端面4fを受止め支持可能な円環状で、且つ、その環状方向の一箇所を切断して開閉可能な自由端5aを形成してある受止め部5、及び、当該受止め部5の複数箇所(当該実施形態では4箇所)から一体的に折り曲げ形成されて貫通孔2の一方(上方)の開口周縁に係止可能な脚部6とを備えた金属製(例えば、溶融亜鉛メッキ鋼板)の支持金具A1と、貫通孔2の一方の開口側(以下、上方開口側と記載する)において帯状耐火材4の貫通孔2の外方側への移動を当接阻止する状態で床スラブ1に固定可能な移動規制部材A2とが備えられている。
【0034】
帯状耐火材4の各袋体4a〜4cは、透光性のシート材(例えば、透光性不織布の内面にポリエチレンフィルムをラミネートしたシート材など)を長筒状にして帯状体を形成し、この長筒状の帯状体における両端部及び長手方向中間部の設定区画部位を幅方向に沿って細幅状に熱融着することにより区画形成されている。
【0035】
また、各袋体4a〜4cに収容される防火材4dは、耐熱性を備えるとともに火災の熱で膨張する熱膨張性を備えるものにしてあり、例えば、熱膨張性材である未焼成バーミキュライト粉末を含有させたロックウールの偏平直方体形状の成形体などを防火材4dとして各袋体4a〜4cに収容してある。
【0036】
袋体4a〜4cは、ケーブル・配管類3の全周を少なくとも一重巻きにするのに足りる長さの1つ長尺袋体4aと、その長尺袋体4aよりも短い隣り合う2つの短尺袋体4b,4cとからなり、帯状耐火材4の装着長さに応じて各袋体4a〜4cを設定区画部位の熱融着部分においてハサミやカッター等で切断分離可能に構成されている。
【0037】
支持金具A1の受止め部5のうち、これの両自由端5aと径方向で対向する一箇所を含む環状方向の複数箇所(当該実施形態では合計7箇所)には、当該受止め部5を縮拡径させるための塑性変形可能な脆弱部5b,5cが形成されているとともに、前記受止め部5の両自由端5aからこれに最も近接位置する両脚部6までの自由端部の外周縁5d、換言すれば、前記受止め部5を設定最小外径にまで縮径させたときにおける当該受止め部5の両自由端部の重合代に相当する範囲若しくはそれに近い範囲の外周縁5dが、両自由端5a側ほど小径となるテーパー状又はそれに近い形状に形成されている。
【0038】
受止め部5は、床スラブ1に形成される貫通孔2の設定標準内径よりも少し小なる外径と、ケーブル・配管類3を挿通するための挿通孔の設定標準内径よりも少し大なる内径とをもって円周方向の一箇所が切断された略円環状の受止め板に形成され、この円環状受止め板の上面5eが、環状空間S内に巻回状態で充填される帯状耐火材4の載置支持面を構成すると同時に、地震等に起因するケーブル・配管類3の押し込み側(下方側)への移動に伴ってそれに接触している帯状耐火材4の内層側部位が同じ方向(下方側)に引き摺り出されることを阻止する拘束面に構成されている。
【0039】
支持金具A1の脚部6は、受止め部5の外周縁から略直角に折り曲げられて形成された連結板部6aと、これの先端から外方に略直角に折り曲げて形成された貫通孔2の開口周縁に係止可能な係止部6bとから構成されているとともに、各係止部6bには、固定手段の一例であるコンクリートネジ7などを用いて床スラブ1の上面1aに固定可能な取付け孔6cが形成されている。
【0040】
移動規制部材A2は、
図1〜
図3に示すように、帯状耐火材4における貫通孔2の上方開口側の上端面4eに対して貫通孔2の径方向に沿う又は略沿う姿勢で当接する金属製又は樹脂製等の板状の第1移動規制部材10から構成されているとともに、この第1移動規制部材10の基端部には、固定手段の一例であるコンクリートネジ7などを用いて床スラブ1の上面1aに片持ち固定するための第1取付け部である第1取付け孔10aが形成されている。
【0041】
第1移動規制部材10は、それの第1取付け孔10aをコンクリートネジ7で床スラブ1に片持ち固定した状態において、環状空間S内に巻回状態で充填される帯状耐火材4の外層耐火材部分4A及び内層耐火材部分4Bの各上端面4eに亘って当接し、且つ、ケーブル・配管類3には接触しない長さに構成されている。
【0042】
第1移動規制部材10は、貫通孔2の内径よりも小なる幅W1に構成されている。
【0043】
また、この第1移動規制部材10における帯状耐火材4の外層耐火材部分4Aと内層耐火材部分4Bとの層間相当位置には、この帯状耐火材4の層間位置Pに対して貫通孔2の上方開口側から貫通状態で突き刺し可能な板状の突刺し部11が設けられているとともに、この突刺し部11の先端部には、帯状耐火材4における貫通孔2の他方(下方)の開口側(以下、下方開口側と記載する)の下端面4fのうち、突刺し位置よりも孔径方向内方側の内層耐火材部分4Bの下端面4fに係合して、貫通孔2の下方開口側への移動を阻止する係止部12が形成されている。
【0044】
突刺し部11は、第1移動規制部材10よりも小なる幅で、且つ、第1移動規制部材10の先端側に偏倚した中間部位において側面視で略変形T状に折り曲げ形成されているとともに、係止部12は、突刺し部11の先端部において側面視で略しの字状に折り曲げ形成された一対の係止爪12aから構成されている。
【0045】
次に、上述の如く構成された貫通孔防火措置構造の施工方法を説明する。
[1]
図4(a)に示すように、支持金具A1の受止め部5を、それの両自由端5aと径方向で対向する脆弱部5bを略支点として開き操作し、
図4(b)に示すように、受止め部5の両自由端5a間の開口を通して床スラブ1の貫通孔2に挿通されているケーブル・配管類3に外装したのち、この外装された支持金具A1の受止め部5を、それの両自由端5a同士が当接又は近接する状態に脆弱部5bを略支点として閉じ操作する。
この支持金具A1をそれの各脚部6の係止部6bが貫通孔2の上方側開口縁に当接する状態にまで押し込む。
【0046】
[2]
図4(b)(c)に示すように、床スラブ1の貫通孔2から上方に突出しているケーブル・配管類3に、貫通孔2の内周面2aとケーブル・配管類3の外側面との間の環状空間Sを閉塞可能な長さの帯状耐火材4を貫通孔2の孔径方向に層状となる状態で複数回(当該実施形態では2回)巻回し、床スラブ1の貫通孔2に装着されている支持金具A1内に挿入する。
【0047】
このとき、巻回された帯状耐火材4を環状空間Sに装填した状態において、この帯状耐火材4の巻き付け体中や巻き付け体と貫通孔2の内面との間などに小隙間が残存している場合には、長さ調整で切断分離された短尺袋体4b,4cや別途用意してある小袋状の耐火材9を巻いた状態で小隙間に充填して貫通孔2の閉塞を完全にする。
【0048】
[3]
図4(d)、
図1に示すように、帯状耐火材4の外層耐火材部分4Aと内層耐火材部分4Bとの層間位置Pに、第1移動規制部材10の突刺し部11を貫通孔2の上方開口側から貫通状態で突き刺し、帯状耐火材4の下端面4fより下方に突出する係止部12の係止爪12aを突刺し位置よりも孔径方向内方側の内層耐火材部分4Bの下端面4fに係止させる。
【0049】
[4]
図1、
図2に示すように、支持金具A1の各脚部6を、取付け手段の一例であるコンクリートネジ7で床スラブ1の上面に固定するとともに、第1移動規制部材10を取付け手段の一例であるコンクリートネジ7で床スラブ1の上面1aに片持ち固定する。
【0050】
そして、上述の施工方法で構築された貫通孔防火措置構造において、地震等の外力に起因してケーブル・配管類3に作用する長手方向での移動力が、床スラブ1の貫通孔2に対する押し込み側(下方側)への移動力である場合には、このケーブル・配管類3の押し込み側への移動に伴ってそれに接触している帯状耐火材4の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを、環状空間S内の帯状耐火材4の外層耐火材部分4Aの下端面4fに当接している支持金具A1の受止め部5と、環状空間S内の帯状耐火材4の内層耐火材部分4Bの下端面4fに係合している第1移動規制部材10の係止部12とにより阻止することができる。
【0051】
また、地震等の外力に起因してケーブル・配管類3に作用する長手方向での移動力が、耐火構造体の貫通孔に対するケーブル・配管類3の引き出し側(上方側)への移動力である場合には、このケーブル・配管類3の引き出し側への移動に伴ってそれに接触している帯状耐火材4の内層側部位が同じ方向(上方側)である床スラブ1の貫通孔2の外方側に引き摺り出されることを、環状空間S内の帯状耐火材4の外層耐火材部分4A及び内層耐火材部分4Bの各上端面4eに対して孔径方向に沿う又は略沿う姿勢で当て付けて床スラブ1の上面1aに片持ち固定されている第1移動規制部材10にて阻止することができる。
【0052】
したがって、地震等の外力に起因してケーブル・配管類3に長手方向での移動力が作用しても、環状空間S内に充填された帯状耐火材4の当初の充填状態を維持して、帯状耐火材4による所期の耐火閉塞機能を確実に発揮させることができ、しかも、受止め部5及び脚部6を備えた支持金具A1と第1移動規制部材10との組み合わせにより、施工性の容易化を図りながら移動規制手段Aを構造面、コスト面で有利に構成することができる。
【0053】
尚、第1移動規制部材10の第1取付け孔10aを、支持金具A1の脚部6の取付け孔6cとコンクリートネジ7で共締め固定可能に構成してもよい。
【0054】
当該第1実施形態では、第1移動規制部材10の突刺し部11の長さを、帯状耐火材4の層間位置Pを貫通する長さよりも大に、換言すれば、帯状耐火材4の幅Wよりも大に形成して、突刺し部11の先端に形成された係止部12を帯状耐火材4の内層耐火材部分4Bの下端面4fに係合させるように構成したが、この第1移動規制部材10の突刺し部11の長さを、帯状耐火材4の幅Wよりも小に形成して、突刺し部11の先端に形成された係止部12を帯状耐火材4の内層耐火材部分4Bの中間部位に食い込み状態で係合させてもよい。
【0055】
また、帯状耐火材4を3回巻きしてある場合には、帯状耐火材4の外層耐火材部分と中層耐火材部分との層間位置、及び、中層耐火材部分と内層耐火材部分との層間位置の各々に、第1移動規制部材10の突刺し部11を貫通孔2の上方開口側から貫通状態で突き刺し、帯状耐火材4の下端面4fより下方に突出する係止部12の係止爪12aを突刺し位置よりも孔径方向内方側の中層耐火材部分の下端面及び内層耐火材部分の下端面に係止させることになる。
【0056】
さらに、帯状耐火材4を3回巻きしてある場合において、第1移動規制部材10に、帯状耐火材4の外層耐火材部分と中層耐火材部分との層間位置、及び、中層耐火材部分と内層耐火材部分との層間位置に対して貫通孔2の上方開口側から突き刺し可能な二つ(4回巻き以上の場合は三つ以上)の突刺し部11を形成してもよい。
【0057】
当該第1実施形態では、第1移動規制部材10の突刺し部11の先端部に形成された係止部12を、帯状耐火材4の下端面4fにおける突刺し位置よりも孔径方向内方側の耐火材部分の端面に係合させたが、この係止部12を、突刺し位置よりも孔径方向外方側の耐火材部分の端面に係合させてもよく、さらに、この係止部12を、突刺し位置における孔径方向の内外両側の耐火材部分の端面に亘って係合させてもよい。
【0058】
当該第1実施形態では、二つの第1移動規制部材10を孔径方向で相対向する状態で配置したが、帯状耐火材4のケーブル・配管類3側の巻き付け開始部位又はその近傍であれば、一つの第1移動規制部材10でもケーブル・配管類3の引き摺り出しを阻止することが可能である。
【0059】
当該第1実施形態では、第1移動規制部材10の突刺し部11の先端部に係止部12を形成したが、この係止部12を先端から中間側に偏位した部位に形成してもよい。
さらに、突刺し部11の長手方向の複数個所に係止部12を形成してもよい。
【0060】
当該第1実施形態では、帯状に構成された可撓性の耐火材4をケーブル・配管類3に螺旋状に巻回することで、この耐火材4を環状空間S内に孔径方向で複層状態に充填したが、ブロック状の多数の耐火材4をケーブル・配管類3の周方向及び径方向に配置することにより、この耐火材4を環状空間S内に孔径方向で複層状態に充填してもよい。
【0061】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態では、貫通孔2の内周面2aとケーブル・配管類3の外側面との間の環状空間Sを閉塞可能な長さの帯状耐火材4を複数回巻き(2回巻き)してある貫通孔防火措置構造について説明したが、
図5、
図6に示すように、帯状耐火材4を1回巻きしてある貫通孔防火措置構造の場合には、ケーブル・配管類3の押し込み側への移動に伴ってそれに接触している帯状耐火材4の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを、環状空間S内の帯状耐火材4の下端面4fに当接している支持金具A1の受止め部5で確実に阻止することができるので、前記係止部12が存在しない第1移動規制部材10を用いる。
【0062】
この第2実施形態の第1移動規制部材10には、巻回されている帯状耐火材4の外周面と貫通孔2の内周面2aとの間に対して貫通孔2の上方開口側から突き刺し可能な板状の突刺し部11が設けられている。
【0063】
この第1移動規制部材10の突刺し部11は貫通孔2の径方向での位置決め及び仮保持させる上で便利であるが、このような位置決め及び仮保持機能を必要としない場合には、突刺し部11の存在しない板状又は棒状等の第1移動規制部材10を用いることになる。
【0064】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0065】
〔第3実施形態〕
図8、
図9は、貫通孔2の内周面2aとケーブル・配管類3の外側面との間の環状空間Sを閉塞可能な長さの帯状耐火材4を複数回巻き(2回巻き)してある貫通孔防火措置構造に適用される移動規制手段Aの別実施形態を示す。
【0066】
この第3実施形態の移動規制手段Aは、環状空間S内で帯状耐火材4を受止め支持可能な受止め部5及び当該受止め部5の複数箇所に設けられた貫通孔2の一方の開口縁に係止可能な脚部6を備えた金属製の支持金具A1と、貫通孔2の一方の開口側において帯状耐火材4の貫通孔2の外方側への移動を阻止する金属製又は樹脂製等の移動規制部材A2、及び、巻回される帯状耐火材4の螺旋状の合わせ面同士を接着する接着手段13とから構成されている。
【0067】
前記移動規制部材A2は、巻回されている帯状耐火材4における貫通孔2の上方開口側の上端面に対して貫通孔2の径方向に沿う又は略沿う姿勢で当接する板状又は棒状等の第1移動規制部材10から構成されているとともに、この第1移動規制部材10の基端部には、固定手段の一例であるコンクリートネジ7などを用いて床スラブ1の上面1aに固定するための第1取付け部である第1取付け孔10aが形成されている。
【0068】
接着手段13は、帯状耐火材4の外側面に貼り付けられる両面テープから構成され、この両面テープの剥離紙を剥離しながらケーブル・配管類3の外側面に巻付ける。
【0069】
第1移動規制部材10の第1取付け孔10aは、支持金具A1の脚部6の取付け孔6cとコンクリートネジ7で共締め固定可能に構成されている。
【0070】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0071】
〔第4実施形態〕
図10、
図11は、貫通孔2の内周面2aとケーブル・配管類3の外側面との間の環状空間Sを閉塞可能な長さの帯状耐火材4を複数回巻き(2回巻き)してある貫通孔防火措置構造に適用される移動規制手段Aの別実施形態を示す。
【0072】
この第4実施形態の移動規制手段Aは、環状空間S内で帯状耐火材4を受止め支持可能な受止め部5及び当該受止め部5の複数箇所に設けられた貫通孔2の一方の開口縁に係止可能な脚部6を備えた支持金具A1と、貫通孔2の一方の開口側において帯状耐火材4の貫通孔2の外方側への移動を阻止する移動規制部材A2とから構成されている。
【0073】
移動規制部材A2は、耐火構造体(防火区画体)である床スラブ1側に固定される付属部材、つまり、貫通孔2の一方(上方)の開口側において支持金具A1の複数の脚部6に対して、貫通孔2を横断する状態で、且つ、貫通孔2に挿通されているケーブル・配管類3の径方向外方側を迂回する状態で脱着可能に掛け止められる変形可能な針金又は被覆針金等の線状部材8から構成されている。
【0074】
この線状部材8としては、支持金具A1の複数の脚部6にわたって巻付け固定した状態において、地震等に起因するケーブル・配管類3の引き出し側(上方側)への移動に伴って当該ケーブル・配管類3に接触している帯状耐火材4の内層側部位が同じ方向(上方側)に引き摺り出されることを確実に接当阻止可能な強度に設定されている。
【0075】
施工時には、支持金具A1の脚部6のうち、孔径方向で相対向する一組の脚部6における連結板部6aと係止部6bとの屈曲部位に、針金又は被覆針金等の線状部材8を、支持金具A1内に巻回装着されている帯状耐火材4の上端面4e側において、貫通孔2を横断する状態で、且つ、貫通孔2に挿通されているケーブル・配管類3の径方向外方側を迂回する状態で括り付ける。
【0076】
そして、地震等の外力に起因してケーブル・配管類3に作用する長手方向での移動力が、床スラブ1の貫通孔2に対する押し込み側(下方側)への移動力である場合には、このケーブル・配管類3の押し込み側への移動に伴って当該ケーブル・配管類3に接触している帯状耐火材4の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを、環状空間S内に位置する支持金具A1の受止め部5の上面5eをもって構成される拘束面にて阻止することができる。
【0077】
また、地震等の外力に起因してケーブル・配管類3に作用する長手方向での移動力が、耐火構造体の貫通孔2に対するケーブル・配管類3の引き出し側(上方側)への移動力である場合には、このケーブル・配管類3の引き出し側への移動に伴って当該ケーブル・配管類3に接触している帯状耐火材4の内層側部位が同じ方向(上方側)である床スラブ1の貫通孔2の外方側に引き摺り出されることを、貫通孔2の一方の開口側において支持金具A1の複数の脚部6に括り付けられた線状部材8によって阻止することができる。
【0078】
したがって、地震等の外力に起因してケーブル・配管類3に長手方向での移動力が作用しても、環状空間S内に充填された帯状耐火材4の当初の充填状態を維持して、帯状耐火材4による所期の耐火閉塞機能を確実に発揮させることができ、しかも、受止め部5及び脚部6を備えた支持金具A1と線状部材8との組み合わせにより、施工性の容易化を図りながら移動規制手段Aを構造面、コスト面で有利に構成することができる。
【0079】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0080】
また、当該第4実施形態では、支持金具A1の4本の脚部6のうち、孔径方向で相対向する一組の脚部6に亘って線状部材8を括り付けたが、3本又は4本の脚部6に線状部材8を括り付けて、地震等に起因するケーブル・配管類3の引き出し側への移動に伴って当該ケーブル・配管類3に接触している帯状耐火材4の内層側部位が同じ方向に引き摺り出されることを阻止してもよい。
【0081】
さらに、支持金具A1の受止め部5による拘束機能を強化するために、この受止め部5又は脚部6に、針金又は被覆針金等の線状部材8を、支持金具A1内に巻回装着されている帯状耐火材4の下端面4f側において、貫通孔2を横断する状態で、且つ、貫通孔2に挿通されているケーブル・配管類3の径方向外方側を迂回する状態で括り付けてもよい。
【0082】
〔第5実施形態〕
図12は、貫通孔2の内周面2aとケーブル・配管類3の外側面との間の環状空間Sを閉塞可能な長さの帯状耐火材4を複数回巻き(2回巻き)してある貫通孔防火措置構造に適用される移動規制手段Aの別実施形態を示す。
【0083】
この第5実施形態の移動規制手段Aの移動規制部材A2は、帯状耐火材4における貫通孔2の一方の開口側の上端面4eに対して当該貫通孔2を略横断する姿勢で、且つ、貫通孔2に挿通されているケーブル・配管類3の径方向外方側を迂回する状態で中間部を弧状に屈曲させてある金属製又は樹脂製等の第2移動規制部材14から構成されている。
【0084】
この第2移動規制部材14の両端部には、固定手段の一例であるコンクリートネジ7などを用いて床スラブ1の上面1aに両持ち固定するための第2取付け部である第2取付け孔14aが形成されている。
【0085】
第2移動規制部材14の両第2取付け孔14aは、支持金具A1の脚部6のうち、貫通孔2の孔径方向で相対向する脚部6の取付け孔6cとコンクリートネジ7で共締め固定可能に構成されている。
【0086】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
また、前記第2移動規制部材14の両端部を、支持金具A1の脚部6に対して係合可能に構成してもよい。
【0087】
さらに、第2移動規制部材14に、第1実施形態で説明した係止部12を備えた突刺し部11を設けて実施してもよい。
【0088】
〔第6実施形態〕
図13は、貫通孔2の内周面2aとケーブル・配管類3の外側面との間の環状空間Sを閉塞可能な長さの帯状耐火材4を複数回巻き(2回巻き)してある貫通孔防火措置構造に適用される移動規制手段Aの別実施形態を示す。
【0089】
この第6実施形態の移動規制手段Aの移動規制部材A2は、巻回されている帯状耐火材4における貫通孔2の上方開口側の上端面4eに対して貫通孔2の径方向に沿う又は略沿う姿勢で当接する金属製又は樹脂製等の板状の第1移動規制部材10から構成されているとともに、この第1移動規制部材10の基端部には、固定手段の一例であるコンクリートネジ7などを用いて床スラブ1の上面に固定するための第1取付け部である第1取付け長孔10bが形成されている。
【0090】
第1移動規制部材10は、第1取付け長孔10bの範囲内で貫通孔2の孔径方向での突出量を調整可能に構成されている。移動規制部材とコンクリートネジ7で共締め固定可能に構成されている。
【0091】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0092】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、防火措置材を、帯状に連続する複数の袋体4a〜4c内に防火材4dを収容してなる可撓性の帯状耐火材4から構成して、ケーブル・配管類3に巻回させるように構成したが、防火措置材を、耐火材を主体とする耐火ブロック又はこの耐火ブロックを袋体に収容してなる袋入耐火ブロック、或いは、熱膨張性耐火材を主体とする熱膨張性耐火シートの一つ又は複数から構成して、貫通孔2の内周面2aとケーブル・配管類3の外側面との間の環状空間S内に孔径方向に多層状に充填してもよい。
防火措置材としては、従来から存在する種々の形態・耐火成分のものを使用することができる。
【0093】
(2)上述の実施形態では、床スラブ1の貫通孔防火措置構造について説明したが、耐火構造体(防火区画体)としては、鉄筋コンクリート製又はALCパネル製(補強鉄筋を配置した軽量のコンクリートパネル)の壁であってもよい。
【0094】
(3)上述の第4実施形態では、貫通孔2の一方(上方)の開口側において帯状耐火材4の貫通孔2外方側への移動を阻止する移動規制部材A2を、針金又は被覆針金等の線状部材8から構成したが、この線状部材8を紐や鎖などから構成してもよい。
【0095】
(4)上述の実施例では、前記移動規制手段Aを、受止め部5及び脚部6とを備えた支持金具A1と移動規制部材A2との組み合わせから構成したが、支持金具A1としては、環状空間S内で帯状耐火材等の防火措置材4を受止め支持することのできるものであれば、如何なる構造のものを使用してもよい。
さらに、このような支持金具A1を使用せず、複数の移動規制部材A2だけで前記環状空間S内の帯状耐火材等の防火措置材4の長尺体長手方向での移動を拘束阻止するように構成してもよい。