特許第6150552号(P6150552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6150552波形測定装置、電流測定装置および電力測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150552
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】波形測定装置、電流測定装置および電力測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/09 20060101AFI20170612BHJP
   G01R 22/06 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   G01R15/09
   G01R22/06 130K
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-33145(P2013-33145)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-163734(P2014-163734A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏企
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−116052(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/030518(WO,A1)
【文献】 特開2001−257592(JP,A)
【文献】 特開2000−321139(JP,A)
【文献】 特開平09−166491(JP,A)
【文献】 特開平04−131769(JP,A)
【文献】 特開平09−101327(JP,A)
【文献】 特開2005−315789(JP,A)
【文献】 特開昭54−020754(JP,A)
【文献】 特開2012−175687(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0234642(US,A1)
【文献】 米国特許第05008631(US,A)
【文献】 実開昭55−165275(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/09
G01R 22/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定レンジのうちの任意の1つの測定レンジにレンジ切替制御されると共に当該1つの測定レンジに対応した第1増幅率で、入力したアナログ信号を増幅して第1増幅信号として出力する第1増幅部と、
前記第1増幅信号を入力してサンプリングすることにより当該第1増幅信号の瞬時値を示す第1波形データを生成して出力する第1A/D変換部と、
入力した前記アナログ信号を前記第1増幅率よりも低い一定の第2増幅率で増幅して第2増幅信号として出力する第2増幅部と、
前記第2増幅信号を入力してサンプリングすることにより当該第2増幅信号の瞬時値を示す第2波形データを生成して出力する第2A/D変換部と、
前記第1波形データおよび前記第2波形データを入力すると共に当該2つの波形データのうちの選択された一方の波形データを出力する信号切替部と、
前記信号切替部から出力されている前記一方の波形データが前記第1波形データのときには、当該第1波形データと前記第1増幅率とに基づいて前記アナログ信号の瞬時値を算出し、前記一方の波形データが前記第2波形データのときには、当該第2波形データと前記第2増幅率とに基づいて前記アナログ信号の瞬時値を算出する処理部と、
前記第1波形データが予め規定されたレンジ切替条件を満たしたときに、前記第1増幅部に対して前記レンジ切替制御を実行して新たな前記測定レンジに切り替えるレンジ制御部と、
前記第1波形データおよび前記第2波形データのうちのいずれかを前記一方の波形データとして選択して前記信号切替部に対して出力させる信号切替処理を実行する信号切替制御部とを備え、
前記信号切替制御部は、前記信号切替処理の実行に際して、
前記第1波形データの絶対値と予め規定された切替閾値とを比較して、当該第1波形データの絶対値が当該切替閾値に達している期間、および当該切替閾値に達していた当該第1波形データの絶対値が当該切替閾値未満になった時点から当該切替閾値未満の状態が第1待機時間を継続するまでの期間には、前記第2波形データを前記一方の波形データの候補とし、前記2つの期間以外の期間には、当該第1波形データを前記一方の波形データの候補として選択する第1信号選択処理と、
前記レンジ制御部による前記レンジ切替制御の実行の開始の有無を検出して、当該レンジ切替制御の実行が開始されたときに前記第2波形データを前記一方の波形データの候補とし、当該レンジ切替制御の実行の開始後において新たなレンジ切替制御が開始されない状態が予め規定された第2待機時間を継続したときに前記第1波形データを前記一方の波形データの候補として選択する第2信号選択処理とを実行すると共に、
前記信号切替処理において、前記第1信号選択処理および前記第2信号選択処理のいずれかにおいて前記第2波形データを前記一方の波形データの候補として選択したときに、前記信号切替部に対して当該第2波形データを出力させ、前記第1信号選択処理および前記第2信号選択処理において前記第1波形データを前記一方の波形データの候補として共に選択したときに、当該信号切替部に対して前記第1波形データを出力させる波形測定装置。
【請求項2】
複数の測定レンジのうちの任意の1つの測定レンジにレンジ切替制御されると共に当該1つの測定レンジに対応した第1増幅率で、入力したアナログ信号を増幅して第1増幅信号として出力する第1増幅部と、
入力した前記アナログ信号を前記第1増幅率よりも低い一定の第2増幅率で増幅して第2増幅信号として出力する第2増幅部と、
前記第1増幅信号および前記第2増幅信号を入力すると共に当該2つの増幅信号を一定の切替周期で切り替えて交互に出力する第1信号切替部と、
前記第1信号切替部から交互に出力される前記第1増幅信号および前記第2増幅信号を前記切替周期に同期してサンプリングすることにより、当該第1増幅信号の瞬時値を示す第1波形データおよび当該第2増幅信号の瞬時値を示す第2波形データを交互に生成して出力するA/D変換部と、
前記A/D変換部からの出力を前記切替周期の2倍の周期のクロックに同期して保持および出力することにより、前記第1波形データを出力する第1保持部と、
前記A/D変換部からの出力を前記クロックに対して位相の反転したクロックに同期して保持および出力することにより、前記第2波形データを出力する第2保持部と、
前記第1保持部から出力される前記第1波形データおよび前記第2保持部から出力される前記第2波形データを入力すると共に当該2つの波形データのうちの選択された一方の波形データを出力する第2信号切替部と、
前記第2信号切替部から出力されている前記一方の波形データが前記第1波形データのときには、当該第1波形データと前記第1増幅率とに基づいて前記アナログ信号の瞬時値を算出し、前記一方の波形データが前記第2波形データのときには、当該第2波形データと前記第2増幅率とに基づいて前記アナログ信号の瞬時値を算出する処理部と、
前記第1波形データが予め規定されたレンジ切替条件を満たしたときに、前記第1増幅部に対して前記レンジ切替制御を実行して新たな前記測定レンジに切り替えるレンジ制御部と、
前記第1波形データおよび前記第2波形データのうちのいずれかを前記一方の波形データとして選択して前記第2信号切替部に対して出力させる信号切替処理を実行する信号切替制御部とを備え、
前記信号切替制御部は、前記信号切替処理の実行に際して、
前記第1波形データの絶対値と予め規定された切替閾値とを比較して、当該第1波形データの絶対値が当該切替閾値に達している期間、および当該切替閾値に達していた当該第1波形データの絶対値が当該切替閾値未満になった時点から当該切替閾値未満の状態が第1待機時間を継続するまでの期間には、前記第2波形データを前記一方の波形データの候補とし、前記2つの期間以外の期間には、当該第1波形データを前記一方の波形データの候補として選択する第1信号選択処理と、
前記レンジ制御部による前記レンジ切替制御の実行の開始の有無を検出して、当該レンジ切替制御の実行が開始されたときに前記第2波形データを前記一方の波形データの候補とし、当該レンジ切替制御の実行の開始後において新たなレンジ切替制御が開始されない状態が予め規定された第2待機時間を継続したときに前記第1波形データを前記一方の波形データの候補として選択する第2信号選択処理とを実行すると共に、
前記信号切替処理において、前記第1信号選択処理および前記第2信号選択処理のいずれかにおいて前記第2波形データを前記一方の波形データの候補として選択したときに、前記第2信号切替部に対して当該第2波形データを出力させ、前記第1信号選択処理および前記第2信号選択処理において前記第1波形データを前記一方の波形データの候補として共に選択したときに、当該第2信号切替部に対して前記第1波形データを出力させる波形測定装置。
【請求項3】
電路に流れる電流を検出すると共に前記アナログ信号に変換して出力する電流検出部、請求項1または2記載の波形測定装置、および記憶部を備え、
前記波形測定装置の前記処理部は、前記算出したアナログ信号の瞬時値に基づいて前記電流の電流値および当該電流値の積算値を算出して前記記憶部に記憶する電流測定装置。
【請求項4】
前記電路の電圧を測定する電圧測定装置と、請求項記載の電流測定装置と、前記電圧測定装置で測定された前記電圧の電圧値と前記電流測定装置で算出された前記電流の電流値とに基づいて、前記電路に供給されている電力値および当該電力値の積算値を算出する算出部とを備えている電力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力したアナログ信号の瞬時値に応じて測定レンジを自動的に切り替えつつこの瞬時値を測定する波形測定装置、この波形測定装置を備えてアナログ信号としての電流を測定する電流測定装置、およびこの電流測定装置を備えてこの電路に供給されている電力を測定する電力測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の波形測定装置として、下記の特許文献1に開示されたレンジ切り替え回路が知られている。このレンジ切り替え回路は、アンプを介してアナログ信号としての入力信号を入力すると共にその増幅率を変更することでレンジ切り替えする増幅回路と、この増幅回路からの出力をデジタル変換するA/D変換器と、このA/D変換器から出力されるデータを入力するデジタルシグナルプロセッサ(以下、DSPともいう)と、アナログ信号を直接入力してその出力をDSPに入力する補助A/D変換器と、増幅回路にレンジ切り替え信号を出力してレンジ切り替え動作を実行させるCPUとを備え、DSPは、アナログ信号がレンジオーバー状態(A/D変換器への入力が定格入力範囲をオーバーしている状態)の場合または増幅回路がレンジ切り替え作動中の場合には、補助A/D変換器からの出力を選択して信号処理するように構成されている。
【0003】
このレンジ切り替え回路では、補助A/D変換器の入力は、A/D変換器の定格入力範囲を超えない値に規定されており、また、補助A/D変換器は、増幅回路においてレンジの切り替えが行われても、その入力値が変化しないように増幅回路の前段部の信号を入力して、デジタル変換し、このデジタル信号をDSPに出力する。
【0004】
このレンジ切替回路を使用した波形測定装置によれば、DSPは、レンジ切り替え中やレンジオーバー状態のときには、補助A/D変換器からの出力を選択して信号処理することができるため、増幅回路を介した最適なレンジでの測定に比べて測定精度は落ちるものの、レンジ切り替えのときの波形に不連続やオーバーシュートやアンダーシュートが発生した信号を測定したり、レンジオーバー状態の不正確なデータを使用して測定したりするという不具合の発生を回避できることから、アナログ信号の瞬時値を継続してより正しく測定することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−196023号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の波形測定装置には、以下のような解決すべき課題が存在している。すなわち、この波形測定装置では、DSPは、レンジ切り替え中やレンジオーバー状態のときには、補助A/D変換器からの出力を使用して信号処理を実行し、レンジ切り替えが完了した後やレンジオーバー状態が解消された後には、レンジ切り替えを行う増幅回路を含む経路からの出力を直ちに使用して信号処理を実行している。この場合、レンジ切り替え回路に配設されたアンプ(レンジ切り替え回路の前段に配設されたアンプも同様)、およびA/D変換器は、入力しているアナログ信号の電圧が定格入力範囲を超えてオーバードライブ状態に移行したときには、その後にこのアナログ信号の電圧が定格入力範囲内に戻ってオーバードライブ状態から適正状態に回復したとしても、アンプではアナログ信号を正確に増幅し得る状態に、またA/D変換器ではアナログ信号を正確にデジタル変換し得る状態に移行するまでには一定のリカバリ時間(オーバードライブリカバリ時間)が必要になるという特性を有している。
【0007】
したがって、このようなリカバリ時間(オーバードライブリカバリ時間)を考慮しないで、レンジ切り替え中であるかやレンジオーバー状態であるかということのみを考慮してDSPへの信号を切り替えている上記の波形測定装置では、補助A/D変換器側からA/D変換器側に信号を切り替える動作を上記のリカバリ時間の経過前に実行することになるため、この波形測定装置には、アナログ信号の瞬時値を連続して正確に測定できない場合が生じている。
【0008】
本発明は、かかる課題を改善すべくなされたものであり、入力するアナログ信号を連続して正確に測定し得る波形測定装置、この波形測定装置を備えた電流測定装置、およびこの電流測定装置を備えた電力測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく請求項1記載の波形測定装置は、複数の測定レンジのうちの任意の1つの測定レンジにレンジ切替制御されると共に当該1つの測定レンジに対応した第1増幅率で、入力したアナログ信号を増幅して第1増幅信号として出力する第1増幅部と、前記第1増幅信号を入力してサンプリングすることにより当該第1増幅信号の瞬時値を示す第1波形データを生成して出力する第1A/D変換部と、入力した前記アナログ信号を前記第1増幅率よりも低い一定の第2増幅率で増幅して第2増幅信号として出力する第2増幅部と、前記第2増幅信号を入力してサンプリングすることにより当該第2増幅信号の瞬時値を示す第2波形データを生成して出力する第2A/D変換部と、前記第1波形データおよび前記第2波形データを入力すると共に当該2つの波形データのうちの選択された一方の波形データを出力する信号切替部と、前記信号切替部から出力されている前記一方の波形データが前記第1波形データのときには、当該第1波形データと前記第1増幅率とに基づいて前記アナログ信号の瞬時値を算出し、前記一方の波形データが前記第2波形データのときには、当該第2波形データと前記第2増幅率とに基づいて前記アナログ信号の瞬時値を算出する処理部と、前記第1波形データが予め規定されたレンジ切替条件を満たしたときに、前記第1増幅部に対して前記レンジ切替制御を実行して新たな前記測定レンジに切り替えるレンジ制御部と、前記第1波形データおよび前記第2波形データのうちのいずれかを前記一方の波形データとして選択して前記信号切替部に対して出力させる信号切替処理を実行する信号切替制御部とを備え、前記信号切替制御部は、前記信号切替処理の実行に際して、前記第1波形データの絶対値と予め規定された切替閾値とを比較して、当該第1波形データの絶対値が当該切替閾値に達している期間、および当該切替閾値に達していた当該第1波形データの絶対値が当該切替閾値未満になった時点から当該切替閾値未満の状態が第1待機時間を継続するまでの期間には、前記第2波形データを前記一方の波形データの候補とし、前記2つの期間以外の期間には、当該第1波形データを前記一方の波形データの候補として選択する第1信号選択処理と、前記レンジ制御部による前記レンジ切替制御の実行の開始の有無を検出して、当該レンジ切替制御の実行が開始されたときに前記第2波形データを前記一方の波形データの候補とし、当該レンジ切替制御の実行の開始後において新たなレンジ切替制御が開始されない状態が予め規定された第2待機時間を継続したときに前記第1波形データを前記一方の波形データの候補として選択する第2信号選択処理とを実行すると共に、前記信号切替処理において、前記第1信号選択処理および前記第2信号選択処理のいずれかにおいて前記第2波形データを前記一方の波形データの候補として選択したときに、前記信号切替部に対して当該第2波形データを出力させ、前記第1信号選択処理および前記第2信号選択処理において前記第1波形データを前記一方の波形データの候補として共に選択したときに、当該信号切替部に対して前記第1波形データを出力させる。
【0012】
また、請求項記載の波形測定装置は、複数の測定レンジのうちの任意の1つの測定レンジにレンジ切替制御されると共に当該1つの測定レンジに対応した第1増幅率で、入力したアナログ信号を増幅して第1増幅信号として出力する第1増幅部と、入力した前記アナログ信号を前記第1増幅率よりも低い一定の第2増幅率で増幅して第2増幅信号として出力する第2増幅部と、前記第1増幅信号および前記第2増幅信号を入力すると共に当該2つの増幅信号を一定の切替周期で切り替えて交互に出力する第1信号切替部と、前記第1信号切替部から交互に出力される前記第1増幅信号および前記第2増幅信号を前記切替周期に同期してサンプリングすることにより、当該第1増幅信号の瞬時値を示す第1波形データおよび当該第2増幅信号の瞬時値を示す第2波形データを交互に生成して出力するA/D変換部と、前記A/D変換部からの出力を前記切替周期の2倍の周期のクロックに同期して保持および出力することにより、前記第1波形データを出力する第1保持部と、前記A/D変換部からの出力を前記クロックに対して位相の反転したクロックに同期して保持および出力することにより、前記第2波形データを出力する第2保持部と、前記第1保持部から出力される前記第1波形データおよび前記第2保持部から出力される前記第2波形データを入力すると共に当該2つの波形データのうちの選択された一方の波形データを出力する第2信号切替部と、前記第2信号切替部から出力されている前記一方の波形データが前記第1波形データのときには、当該第1波形データと前記第1増幅率とに基づいて前記アナログ信号の瞬時値を算出し、前記一方の波形データが前記第2波形データのときには、当該第2波形データと前記第2増幅率とに基づいて前記アナログ信号の瞬時値を算出する処理部と、前記第1波形データが予め規定されたレンジ切替条件を満たしたときに、前記第1増幅部に対して前記レンジ切替制御を実行して新たな前記測定レンジに切り替えるレンジ制御部と、前記第1波形データおよび前記第2波形データのうちのいずれかを前記一方の波形データとして選択して前記第2信号切替部に対して出力させる信号切替処理を実行する信号切替制御部とを備え、前記信号切替制御部は、前記信号切替処理の実行に際して、前記第1波形データの絶対値と予め規定された切替閾値とを比較して、当該第1波形データの絶対値が当該切替閾値に達している期間、および当該切替閾値に達していた当該第1波形データの絶対値が当該切替閾値未満になった時点から当該切替閾値未満の状態が第1待機時間を継続するまでの期間には、前記第2波形データを前記一方の波形データの候補とし、前記2つの期間以外の期間には、当該第1波形データを前記一方の波形データの候補として選択する第1信号選択処理と、前記レンジ制御部による前記レンジ切替制御の実行の開始の有無を検出して、当該レンジ切替制御の実行が開始されたときに前記第2波形データを前記一方の波形データの候補とし、当該レンジ切替制御の実行の開始後において新たなレンジ切替制御が開始されない状態が予め規定された第2待機時間を継続したときに前記第1波形データを前記一方の波形データの候補として選択する第2信号選択処理とを実行すると共に、前記信号切替処理において、前記第1信号選択処理および前記第2信号選択処理のいずれかにおいて前記第2波形データを前記一方の波形データの候補として選択したときに、前記第2信号切替部に対して当該第2波形データを出力させ、前記第1信号選択処理および前記第2信号選択処理において前記第1波形データを前記一方の波形データの候補として共に選択したときに、当該第2信号切替部に対して前記第1波形データを出力させる。
【0013】
また、請求項記載の電流測定装置は、電路に流れる電流を検出すると共に前記アナログ信号に変換して出力する電流検出部、請求項1または2記載の波形測定装置、および記憶部を備え、前記波形測定装置の前記処理部は、前記算出したアナログ信号の瞬時値に基づいて前記電流の電流値および当該電流値の積算値を算出して前記記憶部に記憶する。
【0014】
また、請求項記載の電力測定装置は、前記電路の電圧を測定する電圧測定装置と、請求項記載の電流測定装置と、前記電圧測定装置で測定された前記電圧の電圧値と前記電流測定装置で算出された前記電流の電流値とに基づいて、前記電路に供給されている電力値および当該電力値の積算値を算出する算出部とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
請求項または記載の波形測定装置によれば、第1増幅部から出力される第1増幅信号についての第1波形データに基づいてアナログ信号の瞬時値を正確に算出することができない可能性があるとき、すなわち、第1波形データの絶対値が切替閾値に達している期間、切替閾値に達していた第1波形データの絶対値が切替閾値未満になった時点からこの切替閾値未満の状態が第1待機時間を継続するまでの期間、およびレンジ制御部による第1増幅部に対するレンジ切替制御が開始された後に(レンジ切替制御が開始された時点から)新たなレンジ切替制御が開始されない状態が第2待機時間を継続するまでの期間の3つの期間のうちのいずれかの期間には、処理部は、増幅率の一定な第2増幅部から出力される第2増幅信号についての第2波形データを使用してアナログ信号の瞬時値を正確に算出し、この3つの期間以外の期間には、レンジ制御部によって自動的に適切な測定レンジにレンジ切り替えされた第1増幅部から出力される第1増幅信号についての第1波形データを使用してアナログ信号の瞬時値を高い精度で算出することができる。つまり、この波形測定装置によれば、アナログ信号の瞬時値を連続して正確に算出することができるため、アナログ信号の波形を正確に測定することができる。
【0017】
請求項記載の電流測定装置によれば、電流検出部が電路に流れる電流を検出すると共に、この電流の電流値に応じて電圧値が変化するアナログ信号を上記の波形測定装置に出力することにより、波形測定装置においてこの電流の瞬時値を連続して正確に測定することができるため、この瞬時値に基づいて電流の電流値およびこの電流値の積算値を正確に測定することができる。
【0018】
請求項記載の電力測定装置によれば、算出部が、上記の電流測定装置によって正確に測定された電流の電流値と、電圧測定装置で測定された電路の電圧についての電圧値とに基づいて、電路に供給されている電力値およびこの電力値の積算値を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】波形測定装置1a、波形測定装置1aを備えた電流測定装置CMa、および電流測定装置CMaを備えた電力測定装置PMaの各構成を示す構成図である。
図2】第1信号選択処理50での動作を説明するためのフローチャートである。
図3】第2信号選択処理60での動作を説明するためのフローチャートである。
図4】信号切替処理70での動作を説明するためのフローチャートである。
図5】波形測定装置1b、波形測定装置1bを備えた電流測定装置CMb、および電流測定装置CMbを備えた電力測定装置PMbの各構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、波形測定装置、電流測定装置および電力測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0021】
最初に、電力測定装置PMaの構成について、図面を参照して説明する。
【0022】
電力測定装置PMaは、図1に示すように、測定対象の電路Lに流れる電流(一例として交流電流としての正弦波電流)Iの電流値を測定する電流測定装置CMaと、この電路Lの電圧(一例として交流電圧としての正弦波電圧)Vの電圧値を測定する電圧測定装置VMとを備え、電流測定装置CMaで測定された電流値および電圧測定装置VMで測定された電圧値に基づいて、予め規定された測定周期(電流Iや電圧Vの変動周期よりも十分に長い周期)毎の電力値P(電路Lに供給されている電力)を測定する。
【0023】
電流測定装置CMaは、図1に示すように、波形測定装置1a、電流検出部2、記憶部3および出力部4を備えている。電流検出部2は、電路Lに流れる電流Iを検出する(本例では正弦波電流を例に挙げて説明しているが、このような交流電流だけでなく、直流電流についても検出する)と共に、この電流Iの電流値に応じて電圧値が変化するアナログ信号Siを生成して波形測定装置1aに出力する。記憶部3は、一例として、ROMやRAMなどの半導体メモリで構成されている。出力部4は、一例として、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示器で構成されている。
【0024】
波形測定装置1aは、第1増幅部11(以下、「増幅部11」ともいう)、第1A/D変換部12(以下、「A/D変換部12」ともいう)、第2増幅部13(以下、「増幅部13」ともいう)、第2A/D変換部14(以下、「A/D変換部14」ともいう)、レンジ制御部15、信号切替部16、信号切替制御部17および処理部18を備えている。
【0025】
増幅部11は、例えば、増幅器と、この増幅器の増幅率(第1増幅率)を多段階に切り替えるための複数の帰還抵抗(いずれも図示せず)とを備えて測定レンジを切り替えるためのレンジ切替部として機能して、増幅器に接続される帰還抵抗を切り替えるレンジ切替制御がレンジ制御部15によって実行されることにより、互いの増幅率が異なる複数の測定レンジのうちの任意の1つの測定レンジ(レンジ制御部15から指定された測定レンジ)に切り替える。本例では一例として、増幅部11は、最も高増幅率の下限の測定レンジ(例えば、増幅率が50倍の1アンペアレンジ)、および最も低増幅率の上限の測定レンジ(例えば、増幅率が1倍の50アンペアレンジ)を含む複数の測定レンジを備えて、この複数の測定レンジのうちのレンジ制御部15から出力される後述のレンジ切替信号Sc1で指定された測定レンジに切り替える。また、増幅部11は、電流検出部2から出力されたアナログ信号Siを現在の測定レンジに対応した増幅率(第1増幅率)で増幅して第1増幅信号S1としてA/D変換部12に出力する。
【0026】
A/D変換部12は、A/D変換器を備えて構成されて、第1増幅信号S1を入力すると共に一定周期(電流Iや電圧Vの変動周期よりも十分に短い周期)のサンプリングクロックCKでサンプリングすることにより、第1増幅信号S1の瞬時値を示す第1波形データDi1を生成して出力する。
【0027】
増幅部13は、電流検出部2から出力されたアナログ信号Siを予め規定された一定の増幅率(第2増幅率)で増幅して第2増幅信号S2としてA/D変換部14に出力する。この場合、増幅部13の増幅率は、アナログ信号Siの瞬時値の絶対値が想定される最大値に達したとしても、このときに増幅部13から出力される第2増幅信号S2の瞬時値がA/D変換部14の定格入力範囲内に必ず収まる値(上記の第1増幅率よりも低い値)に予め設定されている。なお、増幅部13は、上記の増幅部11と同様にして、増幅率を多段階に切り替え可能に構成にすることもできるが、この構成を採用した場合には、複数の増幅率のうちの1つの増幅率(上記の条件を満たす増幅率)に予め切り替えられて、この増幅率を維持するように制御される。
【0028】
A/D変換部14は、A/D変換部12と同一に構成されて、第2増幅信号S2を入力すると共にサンプリングクロックCK(A/D変換部12と同じサンプリングクロックCK)でサンプリングすることにより、第2増幅信号S2の瞬時値を示す第2波形データDi2を生成して出力する。
【0029】
レンジ制御部15は、一例としてDSPなどで構成されて、第1波形データDi1が予め規定されたレンジ切替条件を満たしたか否かを一定の周期(レンジ更新周期)で判別しつつ、レンジ切替条件を満たしたと判別したときには、増幅部11に対してレンジ切替制御を実行して、新たな測定レンジに切り替える。
【0030】
一例として、レンジ制御部15は、第1波形データDi1に基づいて第1増幅信号S1の瞬時値の絶対値についての最大値を算出する最大値算出処理と、この最大値が予め規定されたレンジ切替範囲内に含まれるか否か(上記のレンジ切替条件を満たしたか否か)を判別するレンジ判別処理と、レンジ判別処理の結果に基づいて増幅部11に対してレンジ切替制御を実行するレンジ切替処理とを実行する。本例では一例として、測定レンジ毎に規定された上限閾値および下限閾値に基づいて、上限閾値以上の高レンジ切替範囲と、下限閾値以下の低レンジ切替範囲の2つの範囲がレンジ切替範囲として測定レンジ毎に規定されている。
【0031】
また、レンジ制御部15は、最大値算出処理、レンジ判別処理およびレンジ切替処理の一連の処理を上記した一定の周期毎(新たな周期の始期が到来する都度)に実行しつつ、レンジ判別処理の結果、直前の周期中での最大値が上記の低レンジ切替範囲内(最大値≦下限閾値)であると判別したときには、現在の測定レンジよりも低い測定レンジが存在する場合には、レンジ切替処理において、現在の測定レンジよりも1段低い測定レンジを指定するレンジ切替信号Sc1を出力することにより、増幅部11の測定レンジを新たな測定レンジに切り替えるレンジ切替制御を実行する。また、レンジ制御部15は、レンジ判別処理の結果、算出した最大値が上記の高レンジ切替範囲内(最大値≧上限閾値)であると判別したときには、現在の測定レンジよりも高い測定レンジが存在する場合には、レンジ切替処理において、現在の測定レンジよりも1段高い測定レンジを指定するレンジ切替信号Sc1を出力することにより、増幅部11の測定レンジを新たな測定レンジに切り替えるレンジ切替制御を実行する。
【0032】
一方、レンジ制御部15は、レンジ判別処理の結果、算出した最大値が上記の低レンジ切替範囲内であるが、現在の測定レンジよりも低い測定レンジが存在しない場合や、算出した最大値が上記の高レンジ切替範囲内であるが、現在の測定レンジよりも高い測定レンジが存在しない場合や、算出した最大値が上記のレンジ切替範囲外(下限閾値<最大値<上限閾値)である場合には、レンジ切替処理において、現在の測定レンジと同じ測定レンジを指定するレンジ切替信号Sc1を出力することにより、増幅部11の測定レンジを現在の測定レンジに維持する制御を実行する(つまり、新たな測定レンジに切り替えるレンジ切替制御は実行されない)。この波形測定装置1aでは、レンジ制御部15が上記の一連の処理を繰り返すことにより、複数の測定レンジのうちの最も適切な測定レンジに短時間で自動的に切り替えられる。
【0033】
なお、本例では、最大値算出処理において、第1波形データDi1に基づいて第1増幅信号S1の瞬時値の絶対値についての最大値を算出する構成を採用しているが、この瞬時値の絶対値についての最大値に代えて、第1波形データDi1に基づいて第1増幅信号S1の実効値についての最大値を算出する構成を採用して、この実効値の最大値がレンジ切替範囲内であるか否かに基づいて測定レンジを切り替えるようにすることもできる。さらには、上記した瞬時値の最大値と、上記した実効値の最大値とを共に算出して、これら2つの最大値がレンジ切替範囲内であるか否かを判別して、いずれか一方がレンジ切替範囲内のときに測定レンジを切り替えるようにすることもできる。
【0034】
信号切替部16は、マルチプレクサなどで構成されて、第1波形データDi1および第2波形データDi2を入力すると共に、信号切替制御部17から出力される切替信号Sc2で指定された一方の波形データ(第1波形データDi1および第2波形データDi2のいずれか一方)を選択して、アナログ信号Siの瞬時値を算出するための波形データDiとして処理部18に出力する。
【0035】
信号切替制御部17は、一例としてレンジ制御部15と共にDSPなどで構成されると共に、一例としてサンプリングクロックCKよりも十分に早い動作クロックで動作して、図2図4に示す第1信号選択処理50、第2信号選択処理60および信号切替処理70を並行(独立)して実行する。
【0036】
これらの処理50,60,70のうちの第1信号選択処理50では、信号切替制御部17は、入力した第1波形データDi1の状態に基づいて、第1信号選択処理50での波形データDiの候補を第1波形データDi1および第2波形データDi2のうちから選択する。また、第2信号選択処理60では、信号切替制御部17は、レンジ制御部15による増幅部11に対するレンジ切替制御が開始されたか否かをレンジ切替信号Sc1に基づいて判別して、この判別結果に基づいて、第2信号選択処理60での波形データDiの候補を第1波形データDi1および第2波形データDi2のうちから選択する。
【0037】
また、信号切替処理70では、信号切替制御部17は、第1信号選択処理50で選択した波形データDiの候補(選択の内容)と、第2信号選択処理60で選択した波形データDiの候補(選択の内容)とに基づいて、信号切替部16に対して波形データDiとして最終的に出力させる波形データを第1波形データDi1および第2波形データDi2のうちから1つ選択して、選択した波形データを指定する切替信号Sc2を信号切替部16に出力することで、信号切替部16に対する切替制御を実行する。なお、信号切替制御部17は、信号切替処理70の前処理として、第2波形データDi2を指定する切替信号Sc2を信号切替部16に出力することにより、信号切替部16に対して第2波形データDi2を波形データDiとして出力させる切替制御を実行する。
【0038】
処理部18は、例えばCPUなどで構成されて、波形測定装置1aを構成する1つの構成要素として機能して、アナログ信号Siの瞬時値を算出する第1瞬時値算出処理を実行する。また、処理部18は、電流測定装置CMaを構成する1つの構成要素として機能して、第1瞬時値算出処理で算出したアナログ信号Siの瞬時値に基づいて、電流Iの電流値(平均値や実効電流値(本例では一例として実効電流値Irms))および電流値の積算値を一定時間間隔(後述する測定周期)で測定(算出)する電流測定処理を実行する。
【0039】
また、処理部18は、電圧測定装置VMを構成する1つの構成要素として機能して、後述するアナログ信号Svの瞬時値を算出する第2瞬時値算出処理を実行すると共に、この算出したアナログ信号Svの瞬時値に基づいて、電圧Vの電圧値(平均値や実効電圧値(本例では一例として実効電圧値Vrms))を測定(算出)する電圧測定処理を上記の電流測定処理の実行に合わせて実行する。
【0040】
また、処理部18は、電力測定装置PMaを構成する1つの構成要素(算出部)として機能して、算出したアナログ信号Siの瞬時値Vsiおよびアナログ信号Svの瞬時値Vsvに基づいて、電力値Pおよび電力値Pの積算値を測定(算出)する電力測定処理を上記の電流測定処理の実行に合わせて実行する。また、処理部18は、測定した電流Iの電流値Irmsおよび電流値Irmsの積算値、電圧Vの電圧値Vrms、並びに電力値Pおよび電力値Pの積算値を出力部4に出力する出力処理を一定の測定周期で実行する。
【0041】
電圧測定装置VMは、図1に示すように、一例として、電圧検出部5、増幅部21、A/D変換部22、処理部18、記憶部3および出力部4を備えている。電圧検出部5は、電路Lの電圧Vを検出すると共に、この電圧Vの電圧値に応じて電圧値が変化するアナログ信号Svを生成して出力する。
【0042】
増幅部21は、一例として、電圧検出部5から出力されたアナログ信号Svを予め規定された一定の増幅率で増幅して第3増幅信号S3として出力する。この場合、増幅部21の増幅率は、アナログ信号Svの瞬時値の絶対値が想定される最大値に達したとしても、このときに増幅部21から出力される第3増幅信号S3の瞬時値がA/D変換部22の定格入力範囲内に必ず収まる値に予め設定されている。なお、増幅部21については、上記の増幅部11と同様にして、増幅率を多段階に切り替え可能な構成することもできる。
【0043】
A/D変換部22は、第3増幅信号S3を入力すると共にサンプリングクロックCK(一例として、A/D変換部12と同じサンプリングクロックCK)でサンプリングすることにより、第3増幅信号S3の瞬時値を示す第3波形データDi3を生成して出力する。
【0044】
次に、波形測定装置1a、電流測定装置CMaおよび電力測定装置PMaの動作について、図面を参照して説明する。なお、電流検出部2および電圧検出部5は電路Lに装着されているものとする。
【0045】
この状態において、電圧測定装置VMでは、電圧検出部5が電路Lの電圧Vを検出してアナログ信号Svを出力し、A/D変換部22がこのアナログ信号Svをサンプリングすることにより、第3波形データDi3を生成して出力する。
【0046】
一方、電流測定装置CMaでは、電流検出部2が、電路Lの電流Iを検出してアナログ信号Siを増幅部11および増幅部13に出力する。増幅部11は、入力しているアナログ信号Siを、レンジ切替信号Sc1で指定されている測定レンジに対応した増幅率で増幅して、第1増幅信号S1として出力し、A/D変換部12が、この第1増幅信号S1を第1波形データDi1に変換して信号切替部16、信号切替制御部17およびレンジ制御部15に出力する。増幅部13は、入力しているアナログ信号Siを、一定の増幅率で増幅して第2増幅信号S2として出力し、A/D変換部14が、この第2増幅信号S2を第2波形データDi2に変換して信号切替部16に出力する。
【0047】
信号切替制御部17は、まず、図2図4に示す第1信号選択処理50、第2信号選択処理60および信号切替処理70の前処理として、第2波形データDi2を指定する切替信号Sc2を、信号切替部16に出力する。これにより、信号切替部16は、各A/D変換部12,14から出力される各波形データDi1,Di2のうちの第2波形データDi2を選択して波形データDiとして処理部18に出力する。
【0048】
次いで、信号切替制御部17は、図2図4に示す第1信号選択処理50、第2信号選択処理60および信号切替処理70を並行して繰り返し実行して、各波形データDi1,Di2のうちの一方を指定する切替信号Sc2を出力することにより、この一方の波形データを信号切替部16から波形データDiとして出力させる切替制御を信号切替部16に対して実行する。
【0049】
具体的には、信号切替制御部17は、第1信号選択処理50では、まず、新たな第1波形データDi1を入力したときには、信号切替部16から波形データDiとして出力させる候補として第1波形データDi1を選択する(ステップ51)。
【0050】
次いで、信号切替制御部17は、この第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達しているか否かを判別する(ステップ52)。上記したように電流検出部2は、電流Iが本例のような正弦波電流のときにも、その電流Iを検出してアナログ信号Siを出力する。したがって、増幅部11から出力される第1増幅信号S1も交流信号になるときがあることから、A/D変換部12は、その定格入力範囲がゼロを中心として正側領域の電圧範囲と負側領域の電圧範囲とが等しい(上限値と下限値の電圧の絶対値が等しい)電圧範囲に規定されている。
【0051】
このような構成のA/D変換部12では、第1増幅信号S1のレベルが定格入力範囲外になったときには、出力される第1波形データDi1が上限値または下限値に達するため、この場合には第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出することができない。このため、本例では一例として、第1波形データDi1の絶対値の最大値(第1波形データDi1が上限値または下限値になったときの第1波形データDi1の絶対値)を切替閾値として規定して、信号切替制御部17は、第1波形データDi1の絶対値がこのように規定した切替閾値に達しているか否かを判別する。
【0052】
したがって、信号切替制御部17がこのステップ52において第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達していない(すなわち、第1増幅信号S1のレベルがA/D変換部12の上限値および下限値のいずれにも達していない)と判別したときには、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出し得る状態にある。この状態のときには、信号切替制御部17は、ステップ51に移行することにより、ステップ51,52を繰り返す。これにより、この状態のときには、信号切替制御部17は、第1信号選択処理50において第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択している状態にある。
【0053】
一方、信号切替制御部17がこのステップ52において第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している(すなわち、第1増幅信号S1のレベルがA/D変換部12の上限値および下限値のいずれかに達している)と判別したときには、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出し得ない状態にある。この状態のとき(第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している期間のとき)には、信号切替制御部17は、第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択し(ステップ53)、次いで、待機時間Tw1(予め規定された一定の時間。第1待機時間)の計測を開始する(ステップ54)。
【0054】
続いて、信号切替制御部17は、新たに入力される第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達しているか否かの判別を再開する(ステップ55)。信号切替制御部17がこのステップ55において第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達していると判別したとき(第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している期間のとき)には、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出し得ない状態にある。このため、信号切替制御部17は、ステップ53に移行することで、ステップ53,54,55を繰り返す。これにより、この状態のときには、信号切替制御部17は、第1信号選択処理50において第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択している状態にある。また、ステップ53,54,55を繰り返しているときには、信号切替制御部17は、ステップ53からステップ54に移行する都度、待機時間Tw1の計測を新たに開始する。
【0055】
一方、信号切替制御部17がステップ55において、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達していない(具体的には、切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった)と判別したときには、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出し得る状態になる。しかしながら、信号切替制御部17は、第2波形データDi2に代えて第1波形データDi1を波形データDiの候補として直ちに選択することはせずに、ステップ54において計測を開始した待機時間Tw1が経過したか否かを判別し(ステップ56)、待機時間Tw1が経過していないときには、ステップ55,56を繰り返すことにより、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達していない状態が待機時間Tw1以上継続したか否か(つまり、切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった時点からこの切替閾値未満の状態が待機時間Tw1を継続したか否か)を判別する。これにより、ステップ55,56を繰り返しているときには、信号切替制御部17は、第1信号選択処理50において第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択している状態にある。
【0056】
また、信号切替制御部17は、ステップ55,56を繰り返している状態のときにステップ55において第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達していると判別したときには、ステップ53に移行することで、第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択する状態を維持する。
【0057】
一方、信号切替制御部17は、ステップ55,56を繰り返し実行する状態を継続しているときに、ステップ56において待機時間Tw1が経過したと判別したとき(つまり、第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択している状態において、切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった時点から切替閾値未満の状態が待機時間Tw1を継続したとき)には、ステップ51に移行する。これにより、信号切替制御部17は、ステップ51,52を繰り返し実行する状態になるため、第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択している状態に移行する。
【0058】
上記の発明が解決しようとする課題で説明したように、A/D変換部12を構成するA/D変換器は、オーバードライブ状態に一旦移行したときには、その後にオーバードライブ状態から適正状態に回復したとしても、アナログ信号を正確にデジタル変換し得る状態に移行するまでには一定のリカバリ時間が必要になるという特性を有している。本例では、待機時間Tw1をこのリカバリ時間以上に規定する構成を採用することで、信号切替制御部17は、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達したときに、第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択することを開始し、その後、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している状態から達しない状態になったときに、この達しない状態が待機時間Tw1以上(つまり、A/D変換部12のリカバリ時間以上)継続したことを条件として、第2波形データDi2に代えて第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択する。
【0059】
これにより、信号切替制御部17は、新たな第1波形データDi1を入力する都度、この第1信号選択処理50を実行することで、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出することができないとき(第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している期間と、切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった時点からこの切替閾値未満の状態が待機時間Tw1を継続する(リカバリ時間以上継続する)までの期間には、第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択し、この2つの期間以外の期間には、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出することができることから、第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択することが可能になっている。
【0060】
また、信号切替制御部17は、上記した第1信号選択処理50と並行して実行する第2信号選択処理60では、まず、第1波形データDi1を入力したときには、信号切替部16から波形データDiとして出力させる候補として第1波形データDi1を選択する(ステップ61)。
【0061】
次いで、信号切替制御部17は、レンジ制御部15から出力されているレンジ切替信号Sc1に基づいて、レンジ制御部15が増幅部11の測定レンジを新たな測定レンジ(別の測定レンジ)に切り替えるレンジ切替制御を開始したか否かを判別する(ステップ62)。具体的には、信号切替制御部17は、一例として、サンプリングクロックCKの周期よりも十分に短い周期で、レンジ切替信号Sc1で指定されている測定レンジが変更されたか否かを判別して、変更されたときにはレンジ切替制御が開始されたと判別し、変更されていないときにはレンジ切替制御は開始されていないと判別する。
【0062】
信号切替制御部17は、ステップ62においてレンジ切替制御が開始されていないと判別したときには、ステップ61,62を繰り返す。これにより、この状態のときには、信号切替制御部17は、第2信号選択処理60において第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択している状態にある。
【0063】
一方、信号切替制御部17は、このステップ62においてレンジ切替制御が開始されたと判別したときには、第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択し(ステップ63)、次いで、待機時間Tw2(予め規定された一定の時間。第2待機時間)の計測を開始する(ステップ64)。
【0064】
続いて、信号切替制御部17は、上記したステップ62のときと同じ処理を実行することにより、レンジ制御部15がレンジ切替制御を開始したか否かの判別を再開する(ステップ65)。信号切替制御部17がこのステップ65においてレンジ切替制御が開始されたと判別したときには、上記した理由により、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出し得ない状態にある。このため、信号切替制御部17は、ステップ63に移行することで、ステップ63,64,65を繰り返す。これにより、この状態のときには、信号切替制御部17は、第2信号選択処理60において第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択している状態にある。また、ステップ63,64,65を繰り返しているときには、信号切替制御部17は、ステップ63からステップ64に移行する都度、待機時間Tw2の計測を新たに開始する。
【0065】
一方、信号切替制御部17は、ステップ65においてレンジ切替制御が新たに開始されていないと判別したときには、次いで、ステップ64において計測を開始した待機時間Tw2が経過したか否かを判別し(ステップ66)、待機時間Tw2が経過していないときには、ステップ65,66を繰り返す。信号切替制御部17は、ステップ65,66を繰り返し実行することにより、直近に行われたレンジ切替制御の開始から待機時間Tw2以上経過したか否か(レンジ切替制御の実行の開始後において新たなレンジ切替制御が開始されない状態が待機時間Tw2継続したか否か)を判別する。このようにステップ65,66を繰り返しているときには、信号切替制御部17は、第2信号選択処理60において第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択している状態にある。
【0066】
また、信号切替制御部17は、ステップ65,66を繰り返している状態のときに、ステップ65においてレンジ切替制御が新たに開始されたと判別したときには、ステップ63に移行することで、第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択する状態を維持する。
【0067】
一方、信号切替制御部17は、ステップ65,66を繰り返し実行する状態を継続しているとき(つまり、レンジ切替制御が新たに開始されていないとき)に、ステップ66において待機時間Tw2が経過したと判別したとき(つまり、直近に行われたレンジ切替制御の開始から待機時間Tw2以上経過したとき)には、ステップ61に移行する。これにより、信号切替制御部17は、ステップ61,62を繰り返し実行する状態になるため、第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択している状態に移行する。
【0068】
増幅部11が測定レンジを切り替えている時間(例えば、増幅部11を構成する増幅器に接続される現在の測定レンジに対応する帰還抵抗を切り離して、新たな測定レンジに対応する帰還抵抗に接続するまでに要する時間。以下、第1時間)中は、上記の背景技術で説明したように、増幅部11から出力される第1増幅信号S1の波形には、レンジ切替に伴う不連続部分(ギャップ)が発生する。また、増幅部11がレンジ切り替えを完了した後においても、第1増幅信号S1の波形には、異常状態(オーバーシュートやアンダーシュートなど)が発生する場合があり、第1増幅信号S1の波形が正常な状態に戻るまではある程度の時間(以下、第2時間)を要する。この第1時間および第2時間は、実験やシミュレーションによって予め求めることができる。
【0069】
本例では、待機時間Tw2をこのようにして求めた第1時間および第2時間の合計時間以上(合計時間よりも若干長い時間)に規定する構成を採用している。これにより、信号切替制御部17は、この第2信号選択処理60を繰り返し実行することで、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出することができないとき(レンジ切替制御が開始され、その後、新たなレンジ切替制御が行われない状態が待機時間Tw2(上記の第1時間および第2時間の合計時間以上)継続するまでの間)には、第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択し、それ以外のとき(つまり、レンジ切替制御の実行の開始後において新たなレンジ切替制御が開始されない状態が待機時間Tw2を継続した時点から次の新たなレンジ切替制御が開始されるまでの間)には、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値を正確に算出することができることから、第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択することが可能になっている。
【0070】
また、信号切替制御部17は、上記した第1信号選択処理50および第2信号選択処理60と並行して実行している信号切替処理70において、第1信号選択処理50での選択の内容(つまり、第1信号選択処理50において選択されている波形データDiの候補)が第1波形データDi1であるか、第2波形データDi2であるかを判別し(ステップ71)、この判別の結果が第2波形データDi2であるときには、信号切替部16に対して波形データDiとして最終的に出力させる波形データを第2波形データDi2に決定して、この第2波形データDi2を指定する切替信号Sc2を信号切替部16に出力する(ステップ72)。これにより、信号切替部16は、入力している第1波形データDi1および第2波形データDi2のうちの第2波形データDi2を波形データDiとして処理部18に出力する。
【0071】
一方、信号切替制御部17は、ステップ71での判別の結果が第1波形データDi1であるときには、第2信号選択処理60での選択の内容(つまり、第2信号選択処理60において選択されている波形データDiの候補)が第1波形データDi1であるか、第2波形データDi2であるかを判別し(ステップ73)、この判別の結果が第2波形データDi2であるときには、信号切替部16に対して波形データDiとして最終的に出力させる波形データを第2波形データDi2に決定して、この第2波形データDi2を指定する切替信号Sc2を信号切替部16に出力する(ステップ72)。これにより、信号切替部16は、入力している第1波形データDi1および第2波形データDi2のうちの第2波形データDi2を波形データDiとして処理部18に出力する。
【0072】
一方、信号切替制御部17は、ステップ73での判別の結果が第1波形データDi1であるときには、信号切替部16に対して波形データDiとして最終的に出力させる波形データを第1波形データDi1に決定して、この第1波形データDi1を指定する切替信号Sc2を信号切替部16に出力する(ステップ74)。これにより、信号切替部16は、入力している第1波形データDi1および第2波形データDi2のうちの第1波形データDi1を波形データDiとして処理部18に出力する。
【0073】
なお、この信号切替処理70では、上記のようにステップ71およびステップ73において、第1信号選択処理50での選択の内容が第1波形データDi1であるか第2波形データDi2であるかの判別と、第2信号選択処理60での選択の内容が第1波形データDi1であるか第2波形データDi2であるかの判別とをこの順で実行しているが、第2信号選択処理60での選択の内容の判別と、第1信号選択処理50での選択の内容の判別とをこの順で実行することもできる。
【0074】
これにより、信号切替制御部17は、第1信号選択処理50および第2信号選択処理60で選択された候補のいずれかが第2波形データDi2であるとき、すなわち、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している期間、切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった時点からこの切替閾値未満の状態が待機時間Tw1を継続するまでの期間、およびレンジ制御部15による増幅部11に対するレンジ切替制御が開始された後に(レンジ切替制御が開始された時点から)新たなレンジ切替制御が開始されない状態が待機時間Tw2を継続するまでの期間の3つの期間のうちのいずれかの期間には、信号切替部16に対して波形データDiとして第2波形データDi2を出力させ、この3つの期間以外の期間のとき(第1信号選択処理50および第2信号選択処理60で選択された候補が共に第1波形データDi1のとき)には、信号切替部16に対して波形データDiとして第1波形データDi1を出力させる。
【0075】
処理部18は、サンプリングクロックCKの周期で第1瞬時値算出処理を実行して、信号切替部16から出力されている波形データDiに基づいてアナログ信号Siの瞬時値Vsiを算出して、記憶部3に記憶させる。
【0076】
この第1瞬時値算出処理では、処理部18は、まず、切替信号Sc2に基づいて、信号切替部16から出力されている波形データDiが第1波形データDi1であるか第2波形データDi2であるかを判別する。次いで、処理部18は、第1波形データDi1であると判別したときには、レンジ切替信号Sc1に基づいて増幅部11での現在の測定レンジを特定すると共に、この測定レンジでの増幅率をアナログ信号Siの瞬時値を算出するための増幅率であると特定する。なお、処理部18は、第2波形データDi2であると判別したときには、増幅部13についての一定の増幅率をアナログ信号Siの瞬時値を算出するための増幅率であると特定する。最後に、処理部18は、特定した増幅率と、入力した波形データDiとに基づいて、アナログ信号Siの瞬時値Vsiを算出する。
【0077】
この第1瞬時値算出処理において、処理部18が第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値Vsiを算出したときには、この第1波形データDi1は、適切な測定レンジに切り替えられている増幅部11から出力されている第1増幅信号S1についての波形データとなっている。このため、アナログ信号Siの瞬時値Vsiは、高い精度で算出される。一方、処理部18が第2波形データDi2に基づいてアナログ信号Siの瞬時値Vsiを算出したときには、この第2波形データDi2は、A/D変換部12がオーバードライブ状態に至ったことに伴う影響や、増幅部11における測定レンジの切替えに伴う影響を受けないため、第1波形データDi1を使用した場合と比較して測定精度は劣るものの、アナログ信号Siの瞬時値Vsiを常に正確に測定することが可能になっている。
【0078】
また、処理部18は、サンプリングクロックCKの周期で第2瞬時値算出処理を実行して、A/D変換部22から出力されている第3波形データDi3に基づいてアナログ信号Svの瞬時値Vsvを算出して、記憶部3に記憶させる。この第2瞬時値算出処理では、処理部18は、増幅部21の増幅率と、入力した第3波形データDi3とに基づいて、アナログ信号Svの瞬時値Vsvを算出する。
【0079】
また、処理部18は、測定周期毎に電流測定処理を実行して、記憶部3に記憶されているアナログ信号Siについての例えば直近の1周期分の瞬時値Vsiに基づいて、電流Iの電流値(実効電流値)Irmsを測定(算出)して、記憶部3に記憶させる。また、処理部18は、電流測定処理において、電流値の積算値についても算出する。
【0080】
また、処理部18は、電流測定処理と共に電圧測定処理を実行して、記憶部3に記憶されているアナログ信号Svについての例えば直近の1周期分の瞬時値Vsvに基づいて、電圧Vの電圧値(実効電圧値)Vrmsを測定(算出)して、記憶部3に記憶させる。
【0081】
さらに、処理部18は、電流測定処理および電圧測定処理と共に電力測定処理を実行して、記憶部3に記憶されているアナログ信号Siについての例えば直近の1周期分の瞬時値Vsiとアナログ信号Svについての例えば直近の1周期分の瞬時値Vsvとに基づいて、周期T1毎の電力値Pを算出して、記憶部3に記憶させると共に出力部4に出力する。この電力測定処理では、処理部18は、瞬時値Vsiと瞬時値Vsvの乗算値をアナログ信号Siの1周期分について積分すると共に、この積分値をこの1周期の長さで除算することにより、電力値Pを算出する。また、この電力測定処理において、処理部18は電力値Pの積算値についても算出する。また、処理部18は、出力処理を実行して、測定した電流Iの電流値(実効電流値)Irmsおよび電流値Irmsの積算値、電圧Vの電圧値(実効電圧値)Vrms、並びに電力値Pおよび電力値Pの積算値を出力部4に出力する(本例では、出力部4は表示器で構成されているため、表示器の画面上に表示させる)。
【0082】
このように、この波形測定装置1aでは、信号切替制御部17が、第1波形データDi1および第2波形データDi2のうちのいずれかを波形データDiとして選択して信号切替部16に対して出力させる信号切替処理70を実行するに際して、第1波形データDi1の絶対値と切替閾値とを比較して、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している期間、および切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった時点から切替閾値未満の状態が待機時間Tw1を継続するまでの期間には、第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択し、この2つの期間以外の期間には第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択する第1信号選択処理50と、レンジ制御部15によるレンジ切替制御の実行の開始の有無を検出して、レンジ切替制御の実行が開始されたときには第2波形データDi2を波形データDiの候補とし、その後に新たなレンジ切替制御の実行が開始されない状態が待機時間Tw2を継続したとき(第2波形データDi2を波形データDiの候補としている状態において、新たなレンジ切替制御の実行が開始されない状態が待機時間Tw2以上継続したとき)には第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択する第2信号選択処理60とを実行しつつ、信号切替処理70を実行することにより、第1信号選択処理50および第2信号選択処理60のいずれかにおいて第2波形データDi2を波形データDiの候補として選択したときに、増幅部13から出力される第2波形データDi2を信号切替部16に対して出力させ、第1信号選択処理50および第2信号選択処理60のいずれにおいても第1波形データDi1を波形データDiの候補として選択したときには、増幅部11から出力される第1波形データDi1を信号切替部16に対して出力させる。
【0083】
したがって、この波形測定装置1aによれば、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値Vsiを正確に算出することができない可能性があるとき(A/D変換部12が第1増幅信号S1についての正確な第1波形データDi1を出力していない可能性のあるとき)、具体的には、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している期間、切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった時点からこの切替閾値未満の状態が待機時間Tw1を継続するまでの期間、およびレンジ制御部15による増幅部11に対するレンジ切替制御が開始された後に(レンジ切替制御が開始された時点から)新たなレンジ切替制御が開始されない状態が待機時間Tw2を継続するまでの期間の3つの期間のうちのいずれかの期間には、処理部18は、増幅率の一定な増幅部13から出力される第2増幅信号S2についての第2波形データDi2を使用してアナログ信号Siの瞬時値Vsiを正確に算出し、この3つの期間以外の期間には、レンジ制御部15によって自動的に適切な測定レンジにレンジ切り替えされた増幅部11から出力される第1増幅信号S1についての第1波形データDi1を使用してアナログ信号Siの瞬時値Vsiを高い精度で算出することができる。つまり、この波形測定装置1aによれば、アナログ信号Siの瞬時値Vsiに基づく測定レンジの自動切り替えを実行しつつ、アナログ信号Siの瞬時値Vsiを連続して正確に算出することができる。
【0084】
また、この波形測定装置1aを備えた電流測定装置CMaによれば、電流検出部2が、電路Lに流れる電流Iを検出すると共に、この電流Iの電流値に応じて電圧値が変化するアナログ信号Siを波形測定装置1aに出力することにより、波形測定装置1aにおいて電流Iの瞬時値を正確に測定することができるため、この瞬時値に基づいて電流Iの電流値(実効電流値Irms)および電流値の積算値を連続して正確に測定することができる。また、この電流測定装置CMaを備えた電力測定装置PMaによれば、電流測定装置CMaによって正確に測定された電流Iの電流値と、電圧測定装置VMによって測定された電圧Vの電圧値とに基づいて、電路Lに供給されている電力値Pおよびこの電力値Pの積算値を連続して正確に測定することができる。
【0085】
なお、上記の波形測定装置1aでは、増幅部11に対応させて1つのA/D変換部12を配設すると共に増幅部13に対応させて他の1つのA/D変換部14を配設する構成を採用しているが、図5に示す波形測定装置1bのように、増幅部11から出力される第1増幅信号S1と増幅部13から出力される第2増幅信号S2を一定の切替周期で切り替えて交互に出力する第1信号切替部としての信号切替部31を配設する構成を採用することで、A/D変換部を1つに削減することができる。以下、この波形測定装置1b、波形測定装置1bを有する電流測定装置CMb、および電流測定装置CMbを備えた電力測定装置PMbについて説明する。なお、波形測定装置1a、電流測定装置CMa、電圧測定装置VMおよび電力測定装置PMaと同一の構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0086】
最初に、電力測定装置PMbの構成について、図面を参照して説明する。
【0087】
電力測定装置PMbは、図5に示すように、電路Lに流れる電流Iの電流値を測定する電流測定装置CMbと、この電路Lの電圧Vの電圧値を測定する電圧測定装置VMとを備え、電流測定装置CMbで測定された電流値および電圧測定装置VMで測定された電圧値に基づいて、予め規定された測定周期毎の電力値Pを測定する。
【0088】
電流測定装置CMbは、図5に示すように、波形測定装置1b、電流検出部2、記憶部3および出力部4を備えている。本例では、波形測定装置1bは、増幅部11、増幅部13、第1信号切替部としての信号切替部31、A/D変換部32、第1保持部としてのフリップフロップ(本例では一例としてD型フリップフロップ)33、第2保持部としてのフリップフロップ(本例では一例としてD型フリップフロップ)34、レンジ制御部15、第2信号切替部としての信号切替部16、信号切替制御部17および処理部18を備えている。
【0089】
信号切替部31は、第1増幅信号S1および第2増幅信号S2を入力すると共にこの2つの増幅信号S1,S2を一定の切替周期(本例では、サンプリングクロックCKの周期)で切り替えて交互に出力する。A/D変換部32は、信号切替部31から交互に出力される第1増幅信号S1および第2増幅信号S2を上記の切替周期(本例では、サンプリングクロックCKの周期)に同期してサンプリングすることにより、第1増幅信号S1の瞬時値を示す第1波形データDi1および第2増幅信号S2の瞬時値を示す第2波形データDi2を交互に生成して出力する。
【0090】
フリップフロップ33は、A/D変換部32からの出力を上記の切替周期の2倍の周期のクロックCK2に同期して保持および出力することにより、第1波形データDi1のみを出力する。フリップフロップ34は、A/D変換部32からの出力をクロックCK2に対して位相の反転したクロックCK3(本例では、インバータ35によって反転させられたクロックCK2)に同期して保持および出力することにより、第2波形データDi2のみを出力する。
【0091】
信号切替部16は、フリップフロップ33から出力される第1波形データDi1およびフリップフロップ34から出力される第2波形データDi2を入力すると共にこの2つの波形データDi1,Di2のうちの選択された一方の波形データを波形データDiとして出力する。
【0092】
次に、波形測定装置1b、電流測定装置CMbおよび電力測定装置PMbの動作について、図面を参照して説明する。なお、波形測定装置1bでは、波形測定装置1aと相違する上記の信号切替部31、A/D変換部32およびフリップフロップ33,34を備えた構成に基づいて、フリップフロップ33が、波形測定装置1aのA/D変換部12から出力される第1波形データDi1に相当する第1波形データDi1をクロックCK2に同期して出力し、フリップフロップ34が、波形測定装置1aのA/D変換部14から出力される第2波形データDi2に相当する第2波形データDi2をクロックCK3に同期して出力するという点と、処理部18が、各フリップフロップ33,34から出力される各波形データDi1,Di2の周期に合わせて、クロックCK2(またはクロックCK3)の周期で第1瞬時値算出処理を実行して、アナログ信号Siの瞬時値Vsiを算出する点とを除き、波形測定装置1aと同じ他の構成要素(増幅部11、増幅部13、レンジ制御部15、信号切替部16、信号切替制御部17および処理部18)は、波形測定装置1aの対応する構成要素と同様に動作する。
【0093】
したがって、この波形測定装置1bによっても、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値Vsiを正確に算出することができない可能性があるとき(A/D変換部12が第1増幅信号S1についての正確な第1波形データDi1を出力していない可能性のあるとき)、具体的には、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している期間、切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった時点からこの切替閾値未満の状態が待機時間Tw1を継続するまでの期間、およびレンジ制御部15による増幅部11に対するレンジ切替制御が開始された後に(レンジ切替制御が開始された時点から)新たなレンジ切替制御が開始されない状態が待機時間Tw2を継続するまでの期間の3つの期間のうちのいずれかの期間には、処理部18は、増幅率の一定な増幅部13から出力される第2増幅信号S2についての第2波形データDi2を使用してアナログ信号Siの瞬時値Vsiを正確に算出し、この3つの期間以外の期間のときには、レンジ制御部15によって自動的に適切な測定レンジにレンジ切り替えされた増幅部11から出力される第1増幅信号S1についての第1波形データDi1を使用してアナログ信号Siの瞬時値Vsiを高い精度で算出することができる。つまり、この波形測定装置1bによっても、アナログ信号Siの瞬時値Vsiに基づく測定レンジの自動切り替えを実行しつつ、アナログ信号Siの瞬時値Vsiを連続して正確に算出することができる。
【0094】
また、この波形測定装置1bを備えた電流測定装置CMbによれば、電流検出部2が、電路Lに流れる電流Iを検出すると共に、この電流Iの電流値に応じて電圧値が変化するアナログ信号Siを波形測定装置1bに出力することにより、電流Iの瞬時値を正確に測定することができるため、この瞬時値に基づいて電流Iの電流値(実効電流値Irms)および電流値の積算値を連続して正確に測定することができる。また、この電流測定装置CMbを備えた電力測定装置PMbによれば、電流測定装置CMbによって正確に測定された電流Iの電流値と、電圧測定装置VMによって測定された電圧Vの電圧値とに基づいて、電路Lに供給されている電力値Pおよびこの電力値Pの積算値を連続して正確に測定することができる。
【0095】
また、上記の波形測定装置1a,1bでは、レンジ制御部15が第1波形データDi1に基づいて増幅部11に対するレンジ切替制御を自動的に実行する構成を採用しているが、この構成に代えて、オペレータによるマニュアル操作でレンジ切替制御を実行する構成を採用することもできる。この構成を採用した波形測定装置1a,1bでは、レンジ制御部15は、オペレータから指定(設定)された測定レンジ(増幅部13の増幅率よりも高い増幅率になる測定レンジ)に増幅部11の測定レンジを固定する。これにより、この波形測定装置1a,1bの信号切替制御部17は、第2信号選択処理60は実行せずに、第1信号選択処理50および信号切替処理70のみを実行する構成にする。
【0096】
なお、この構成のときには、信号切替制御部17は、信号切替処理70では、ステップ73での処理が不要になるため、ステップ71,72,74を実行する。この場合の信号切替制御部17での処理は、第1信号選択処理50に信号切替処理70での処理を加えて1つの信号切替処理として、第2波形データDi2を候補として選択しているとき(つまり、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している期間、および切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった時点からこの切替閾値未満の状態が待機時間Tw1を継続するまでの期間のとき)には、信号切替部16に対してこの第2波形データDi2を波形データDiとして出力させ、第1波形データDi1を候補として選択しているとき(上記の2つの期間以外の期間のとき)には、信号切替部16に対してこの第1波形データDi1を波形データDiとして出力させる。
【0097】
したがって、この構成を採用した波形測定装置1a,1bによれば、第1波形データDi1に基づいてアナログ信号Siの瞬時値Vsiを正確に算出することができない可能性があるとき(A/D変換部12が第1増幅信号S1についての正確な第1波形データDi1を出力していない可能性のあるとき)、具体的には、第1波形データDi1の絶対値が切替閾値に達している期間、および切替閾値に達していた第1波形データDi1の絶対値が切替閾値未満になった時点からこの切替閾値未満の状態が待機時間Tw1を継続するまでの期間のときは、処理部18は、増幅率の一定な(増幅率の低い)増幅部13から出力される第2増幅信号S2についての第2波形データDi2を使用してアナログ信号Siの瞬時値Vsiを正確に算出し、この2つの期間以外の期間のときには、オペレータから指定された測定レンジ(増幅率の高い測定レンジ)にレンジ切り替えされた増幅部11から出力される第1増幅信号S1についての第1波形データDi1を使用してアナログ信号Siの瞬時値Vsiを高い精度で算出することができる。つまり、この構成を採用した波形測定装置1a,1bによれば、アナログ信号Siの瞬時値を連続して正確に算出することができる。
【0098】
また、この構成を採用した波形測定装置1aを備えた電流測定装置CMaまたはこの構成を採用した波形測定装置1bを備えた電流測定装置CMbによれば、電流検出部2が、電路Lに流れる電流Iを検出すると共に、この電流Iの電流値に応じて電圧値が変化するアナログ信号Siを波形測定装置1a,1bに出力することにより、波形測定装置1a,1bにおいて電流Iの瞬時値を正確に測定することができるため、この瞬時値に基づいて電流Iの電流値(実効電流値Irms)および電流値の積算値を連続して正確に測定することができる。また、この電流測定装置CMaを備えた電力測定装置PMaまたはこの電流測定装置CMbを備えた電力測定装置PMbによれば、電流測定装置CMa,CMbによって正確に測定された電流Iの電流値と、電圧測定装置VMによって測定された電圧Vの電圧値とに基づいて、電路Lに供給されている電力値Pおよびその電力値Pの積算値を連続して正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0099】
1a,1b 波形測定装置
2 電流検出部
11,13 増幅部
12,14,32 A/D変換部
15 レンジ制御部
16,31 信号切替部
17 信号切替制御部
18 処理部
33,34 フリップフロップ
CMa,CMb 電流測定装置
PMa,PMb 電力測定装置
図1
図2
図3
図4
図5