(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、(B)水不溶性アクリル酸系ポリマーを、0.8重量部以上1.5重量部以下含有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(A)水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、(C)陰イオン性界面活性剤を、0.09重量部以上含有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
(B)水不溶性アクリル酸系ポリマーがアクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子に、(A)水不溶性セルロースエーテル、(B)水不溶性アクリル酸系ポリマー、(C)陰イオン性界面活性剤及び(D)ポリソルベートを含有するコーティング成分を被覆して得られた顆粒を打錠することにより、口腔内速崩壊性錠剤を製造する方法であり、
(A)と(B)の合計重量が不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子1重量部に対し0.25重量部以上である、口腔内速崩壊性錠剤の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の解決しようとする課題は、不快な官能的性質を有する薬物を含有する口腔内速崩壊性錠剤であって、服用時に感じる官能的性質を低減することにある。さらに、高いpH環境においても、放出遅延を生じない口腔内速崩壊性錠剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子の外側に、2種類のポリマー及び2種類の界面活性剤を含有する皮膜を、特定の量だけコーティングすることで、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである
〔1〕不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子の外側に(A)〜(D)の成分を含有する皮膜を有する薬物含有顆粒、
を含有する口腔内速崩壊性錠剤であり、
(A)と(B)の合計重量が、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子1重量部に対し、0.25重量部以上であることを特徴とする、口腔内速崩壊性錠剤。
(A)水不溶性セルロースエーテル
(B)水不溶性アクリル酸系ポリマー
(C)陰イオン性界面活性剤
(D)非イオン性界面活性剤
〔2〕(A)と(B)の合計重量が、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子1重量部に対し、0.25重量部以上0.50重量部以下であることを特徴とする薬物含有顆粒、を含有する〔1〕に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
〔3〕(C)陰イオン性界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである、〔1〕又は〔2〕に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
〔4〕(D)非イオン性界面活性剤がポリソルベートである〔1〕乃至〔3〕のいずれか一項に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
〔5〕(A)水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、(B)水不溶性アクリル酸系ポリマーを、0.8重量部以上1.5重量部以下含有する〔1〕乃至〔4〕のいずれか一項に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
〔6〕(A)水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、(C)陰イオン性界面活性剤を、0.09重量部以上含有する、〔1〕乃至〔5〕のいずれか一項に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
〔7〕(B)水不溶性アクリル酸系ポリマーがアクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーである、〔1〕乃至〔6〕のいずれか一項に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
〔8〕(A)水不溶性セルロースエーテルがエチルセルロースである、〔1〕乃至〔7〕のいずれか一項に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
〔9〕不快な官能的性質を有する薬物1g又は1mLを溶かすに要する水の量が6mL未満である、〔1〕乃至〔8〕のいずれか一項に記載の口腔内速崩壊性錠剤。
〔10〕不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子に、(A)水不溶性セルロースエーテル、(B)水不溶性アクリル酸系ポリマー、(C)陰イオン性界面活性剤及び(D)ポリソルベートを含有するコーティング成分を被覆して得られた顆粒を打錠することにより、口腔内速崩壊性錠剤を製造する方法であり、
(A)と(B)の合計重量が不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子1重量部に対し0.25重量部以上である、口腔内速崩壊性錠剤の製造方法。
〔11〕前記製造方法中に、前記顆粒又は前記口腔内速崩壊性錠剤を加温する工程を含む、〔10〕に記載の製造方法。
〔12〕不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子の外側に(A)〜(D)の成分を含有する皮膜を有する薬物含有顆粒であり、
(A)と(B)の合計重量が、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子1重量部に対し、0.25重量部以上であることを特徴とする、薬物含有顆粒。
(A)水不溶性セルロースエーテル
(B)水不溶性アクリル酸系ポリマー
(C)陰イオン性界面活性剤
(D)非イオン性界面活性剤
【発明の効果】
【0011】
本発明により、不快な官能的性質を有する薬物を含有する口腔内速崩壊性錠剤を服用した際に感じる官能的性質を低減でき、且つ、患者の胃内pHが高い場合でも、放出遅延を生じない口腔内速崩壊性錠剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本件明細書において、不快な官能的性質とは、苦味、えぐ味、渋み、酸味、辛味若しくは痺れ感等の不快な味、又は不快な臭い等が挙げられる。
【0014】
本件明細書において不快な官能的性質を有する薬物とは、通常医薬活性成分として用いられるものであれば特に制限されない。かかる医薬活性成分としては、塩酸インジセトロン、塩酸メクロフェノキサート、クロラムフェニコール、アミノフィリン、エリスロマイシン、ジョサマイシン、ホパテン酸カルシウム、フェノバビタール、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、塩酸プロプラノロール、フルフェナム酸、ジギトキシン、テオフィリン、塩酸プロメタジン、塩酸キニーネ、スルピリン、イブプロフェン、塩酸チクロピジン、塩化ベルベリン、ジギトキシン、スルピリン、塩酸アゼラスチン、塩酸エチレフリン、塩酸ジルチアゼム、塩酸プロプラノロール、クロラムフェニコール、アミノフィリン、エリスロマイシン、フェノバルビタール、パントテン酸カルシウム、塩酸インデロキサジン、塩酸アミノグアニジン及びイミダフェナシン等が挙げられる。
【0015】
一般に、水に溶けやすい薬物は不快な官能的性質を示しやすく、そのマスキングには高度な技術を要する。本件明細書に記載の口腔内速崩壊性錠剤は、水に溶けやすい、さらには水に極めて溶けやすい薬物を用いた場合でも、不快な官能的性質を十分にマスキングすることができる点で有用である。本発明の不快な官能的性質を有する薬物は1種又は2種以上を配合して使用してもよい。本発明の不快な官能的性質を有する薬物の量は、治療上必要とされる用量であれば特に制限されない。
【0016】
本件明細書において溶解性を示す用語は、第16改正日本薬局方通則に拠る。すなわち、医薬品を100号(150μm)ふるいを通過する細末とした後、溶媒中に入れ、20±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶ける度合いを、溶質1g又は1mLを溶かすに要する溶媒量で表したものをいう。例えば、「水に溶けやすい」とは、溶質1g又は1mLを溶かすに要する水の量が、1mL以上10mL未満であること、「水に極めて溶けやすい」とは、溶質1g又は1mLを溶かすに要する水の量が、1mL未満であることを意味する。水に溶けやすい薬物の例として、塩酸インジセトロンが挙げられる。
【0017】
本件発明は、「不快な官能的性質を有する薬物」が、当該薬物1g又は1mLを溶かすに要する水の量が10mL未満、さらに好ましくは6mL未満である薬物を用いた場合でも、不快な官能的性質を十分にマスキングすることができる点で有用である。
【0018】
本明細書において、「薬物を含有する粒子」とは、薬物を含有する粒状物を意味し、例えば造粒物、コーティング顆粒、粉砕物等が挙げられるが、特に制限しない。当該粒子は、口腔内で錠剤が崩壊し、薬物含有顆粒へと分散した際に感じる口腔内でのざらつき感や、当該顆粒の口腔内への残留を改善する点で、平均粒子径が50μm以上500μm以下であること、さらに好ましくは70μm以上350μm以下、特に好ましくは70μm以上250μm以下であることが好ましい。ここでいう平均粒子径とは、ふるい分け法にて算出した平均粒子径を意味する。
【0019】
本件明細書において、水不溶性セルロースエーテルとは、エチルセルロース、アセチルセルロース、エチルメチルセルロース、エチルプロピルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロース、ベンジルセルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。好ましくは、アセチルセルロース又はエチルセルロースが挙げられ、さらに好ましくはエチルセルロースが挙げられる。
【0020】
本件明細書において水不溶性アクリル酸系ポリマーとは、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマー(例えば、商品名:オイドラギットRS100、オイドラギットRSPO、オイドラギットRL100、オイドラギットRLPO、EVONIK社製)、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチルコポリマー分散液(商品名:オイドラギットNE30、EVONIK社製)等の水不溶性アクリル酸系共重合体が挙げられる。このうち、好ましくは、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチルコポリマーが挙げられる。水不溶性アクリル酸系ポリマーの含有量は、放出遅延の改善という点で、水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、好ましくは0.5重量部以上であり、より好ましくは0.5重量部以上5重量部以下であり、さらに好ましくは0.8重量部以上5重量部以下であり、特に好ましくは0.8重量部以上2重量部以下、より好ましくは0.8重量部以上1.5重量部以下である。
【0021】
不快な官能的性質を抑えるという点で、使用する水不溶性セルロースエーテルと水不溶性アクリル酸系ポリマーの合計重量は、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子1重量部に対し、0.25重量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.25重量部以上1.0重量部以下、さらに好ましくは0.25重量部以上0.50重量部以下、特に好ましくは0.27重量部以上0.42重量部以下が挙げられる。
【0022】
本件明細書において陰イオン性界面活性剤とは陰イオン性の親水基を持つ界面活性剤であり、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸アルキル塩、高級脂肪酸塩、又はアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0023】
通常、水不溶性セルロースエーテルや水不溶性アクリル酸系ポリマー等の種類の違う複数のポリマーを単純に混合しても、安定な混合物として存在せず、相分離構造をとるが、本件発明では、両ポリマーに加え、さらに陰イオン性界面活性剤を配合することにより、両ポリマー間に相互作用し、相分離構造を安定化することを見出した。さらに、得られたポリマー混合物は、一種類のポリマーでは得られない新しい溶出特性を発揮することを見出した。
【0024】
陰イオン性界面活性剤のうち、より好ましくは、硫酸アルキル塩が挙げられ、さらに好ましくはラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。陰イオン性界面活性剤の含有量は、水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上0.5重量部以下、さらに好ましくは0.09重量部以上0.5重量部以下、特に好ましくは0.09重量部以上0.30重量部以下である。
【0025】
本明細書において、非イオン性界面活性剤とは、水に溶解してもイオンに解離しない界面活性剤を意味する。例えば、ショ糖脂肪酸エステル又はポリソルベートが挙げられ、より好ましくはポリソルベートが挙げられる。非イオン性界面活性剤のうち、特にポリソルベートは可塑剤としても働き、皮膜成分に加えることにより、水不溶性セルロースエーテル及び水不溶性アクリル酸系ポリマーに柔軟性を与える。これにより、得られた薬物含有顆粒は、衝撃や外圧に強くなり、打錠の圧力で薬物含有顆粒の皮膜が壊れることを防止することができる。
【0026】
本明細書において、ポリソルベートとは、ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシド20モルを付加させた親水性の非イオン性界面活性剤を意味する。脂肪酸に応じて、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート65(ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)等の種類が存在するが、ポリソルベート65又はポリソルベート80が好ましい。そのうち、特に好ましいものとしてポリソルベート80が挙げられる。
【0027】
非イオン性界面活性剤の含有量は、水不溶性セルロースエーテル1重量部に対し、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上0.5重量部以下、さらに好ましくは0.09重量部以上0.5重量部以下、特に好ましくは0.09重量部以上0.25重量部以下である。
【0028】
本件明細書において口腔内速崩壊性錠剤とは、口腔内で唾液の存在下、咀嚼無しに約90秒、好ましくは約60秒、更に好ましくは40秒より短い時間で崩壊する固形医薬製剤を意味する。
【0029】
不快な官能的性質を抑えるためには、口腔内速崩壊性錠剤を口腔に含んでから崩壊するまでの間、薬物の溶出を抑える必要がある。口腔内は弱塩基性であることから、第16改正日本薬局方崩壊試験法(パドル法)で試験を行い、第二液(pH6.8)の溶出率1分値が5%以下である場合に、不快な官能的性質を抑えることができる口腔内速崩壊性錠剤であると判断した。一般に、水に溶けやすい薬物、さらには水に極めて溶けやすい薬物は、服用時に、不快な官能的性質を与えやすい。本件発明は、水に非常に溶けやすい薬物を使用した場合でも、不快な官能的性質を感じない口腔内速崩壊性錠剤を提供するものであるため、当該値を5%と低く設定している。
【0030】
また、医薬品製剤は単独で服用するのみならず、他の医薬品製剤と同時に服用する場合もあり得る。他の医薬品製剤がムコダイン等の酸性の医薬品であった場合、服用時に口腔内のpHが一時的に低下するが、この場合でも不快な官能的性質を抑えられる製剤が望ましい。
【0031】
実際、現在までに、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE等の胃溶性高分子を用いて味マスクをした製剤が存在するが、酸性の医薬品と同時に服用すると、苦味が出現することが知られている。このため、当該製剤が酸性の医薬品と同時に処方された場合には、同時に服用しない、さらには服用と服用の間にはうがいを行う等の注意が必要となり患者負担が生じている。
【0032】
上記の点を改善するため、本件発明においては、第16改正日本薬局方崩壊試験法(パドル法)で試験を行い、第一液(pH1.2)の溶出率1分値が10%以下であることが好ましい。
【0033】
また、口腔内で崩壊後、胃内に移行した後は、速やかに溶出し薬効を発揮する必要がある。このため、パドル法で試験を行った場合、第一液(pH1.2)の溶出率30分値が80%以上である製剤が好ましい。
【0034】
さらに、胃内のpHが1.2以上である低胃酸の患者が服用した場合でも、溶出が極端に遅くならないように、第二液(pH6.8)の溶出率の30分値が65%以上である製剤が好ましい。
【0035】
本件明細書における口腔内速崩壊性錠剤は、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子と、(A)水不溶性セルロースエーテル、(B)水不溶性アクリル酸系ポリマー(C)陰イオン性界面活性剤及び(D)非イオン性界面活性剤を含有する皮膜の間に、中間皮膜を有していてもよい。中間皮膜に使用される添加剤としては、水溶性ポリマーや帯電防止剤、可塑剤が挙げられるが特に制限されない。中間皮膜の使用量は、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子1重量部に対し、好ましくは0.05重量部以上0.5重量部以下、より好ましくは0.1重量部以上0.3重量部以下、特に好ましくは0.1重量部以上0.15重量部以下であることが好ましい。
【0036】
不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子の表面に中間皮膜を施すことにより、粒子表面の凹凸が滑らかな粒子が得られる。得られた粒子の上に、さらに前記(A)〜(D)を含有する皮膜を施すことにより、より効果的に不快な官能的性質のマスキング効果を発揮する。特に、不快な官能的性質を有する薬物として、水に溶けやすい、さらには水に極めて溶けやすい薬物を使用した場合は、水に溶け難い薬物に比べ、患者が服用時に苦味等の不快な官能的性質を感じやすいため、中間皮膜を使用することが好ましい。
【0037】
本明細書において、水溶性ポリマーとは、親水性の置換基を有し、水溶性を示すポリマーであり、親水性置換基として、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アミノ基、オキシメチレン基又はオキシエチレン基等、更にカルボキシル基、スルホン酸基若しくはホスホン酸基等の酸性基、又はこれら酸性基のアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩等を挙げることができる。水溶性ポリマーの例として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉誘導体、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(アミノ酸)、ポリカルボキシレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオール、エポキシ樹脂、尿素樹脂若しくはフェノール樹脂、又はこれらの誘導体若しくは組合せが挙げられる。より好ましくはヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、さらに好ましくはヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0038】
本明細書において、帯電防止剤の例としては、タルク、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸又はステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩等、が挙げられる。
【0039】
本明細書において、可塑剤の例としては、ポリソルベート類、トリアセチン、フタル酸ジエチル、マクロゴール類又はクエン酸トリエチル類が挙げられる。
【0040】
本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、必要により医薬品製剤の製造に使用可能な賦形剤、崩壊剤又は結合剤を配合してもよい。配合される賦形剤、崩壊剤又は結合剤は、医薬品製剤の製造に使用可能なものであれば特に限定はなく、例えば、医薬品添加物事典[日本医薬品添加剤協会、薬事日報社(2007年)]に記載されているものを適宜使用できる。
【0041】
賦形剤の例としては、乳糖や、ブドウ糖等の糖類、D−ソルビトールや、D−マンニトール等の糖アルコール類、結晶セルロース等のセルロース類、部分アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン類等を好適に挙げることができる。より好ましくは糖アルコール類又は結晶セルロース、さらに好ましくはD−マンニトール又は結晶セルロースが挙げられる。
【0042】
特に薬物を含有する粒子内に使用される賦形剤としては、コーティング中の粒子同士の付着が抑制でき、表面の滑らかな粒子ができるという点で、水への溶解度の低い賦形剤の使用が好ましい。水への溶解度の低い賦形剤の例として、結晶セルロースが挙げられ、特に好ましくは結晶セルロース(粒)が挙げられる。
本明細書において、「水への溶解度の低い賦形剤」とは「水に溶けにくい賦形剤」「水に極めて溶けにくい賦形剤」又は「水にほとんど溶けない賦形剤」を意味し、「水に溶けにくい」「水に極めて溶けにくい」及び「水にほとんど溶けない」の用語は、第16改正日本薬局方通則に拠る。
【0043】
崩壊剤の例としては、カルボキシメチルセルロースカルシウムや、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等どのセルロース類、デンプン類又はクロスポビドンが挙げられるが、速やかな崩壊性及び飲用のし易さ(口当たりのよさ)の点から低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はクロスポビドンを使用することが好ましい。崩壊剤の配合量は、錠剤中1〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは2〜6質量%である。
【0044】
結合剤の例としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン等が挙げられるが、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0045】
本発明の口腔内速崩壊性錠剤は、必要により医薬品製剤の製造に使用可能な添加物を配合することができる。具体的には、医薬品添加物事典[日本医薬品添加剤協会、薬事日報社(2007年)]に記載されているものを使用でき、例えば、滑沢剤としてステアリン酸及びその金属塩類、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、並びにショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。このうち、より好ましくはステアリン酸金属塩又は含水二酸化ケイ素、さらに好ましくはステアリン酸マグネシウム又は含水二酸化ケイ素が挙げられる。滑沢剤は1又は2以上の滑沢剤を組み合わせることができる。甘味剤として糖類、糖アルコール類、アスパルテーム、サッカリン及びその塩類、グリチルリチン酸及びその塩類、ステビア、並びにアセスルファムカリウム等、嬌味剤としてクエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸及びフマル酸等、着色剤として三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カラメル、リボフラビン及びアルミニウムレーキ等、香料としてメントール及びオレンジ油等が挙げられる。
【0046】
本発明の口腔内速崩壊性錠剤を、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子とは別に崩壊剤を添加して製造する場合、V字型混合機や、ダイヤモンドミキサー、ドラムミキサー等の装置において混合し、次いで圧縮成形されて調製される。
【0047】
圧縮成形は、例えば、ロータリー打錠機等の打錠機で好適に行うことができる。但し、本発明の口腔内速崩壊性錠剤の形状は、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定はされない。例えば、中抜き、多角形及び凹型等の特殊な形状にすることができる。また、錠剤の舌の上での接触面積を増やし、口腔内水分を迅速に錠剤内部へ浸透させ、口腔内速崩壊性を高めるために、錠厚を薄く、錠径を大きくした扁平状の錠剤に成形することもできる。圧縮成形における圧力は、例えば、300〜2000kg、好ましくは、600〜1000kgが好適であり、室温、60%RHにて行うことができる。
【0048】
本発明の口腔内崩壊性錠剤は、第二液での溶出率(1分値)を抑え、不快な官能的性質を抑える目的で、製造工程中に加温工程を含むことができる。加温工程は、不快な官能的性質を有する薬物を含有する粒子の外側に、(A)水不溶性セルロースエーテル、(B)水不溶性アクリル酸系ポリマー、(C)陰イオン性界面活性剤及び(D)非イオン性界面活性剤を含有する皮膜を有する薬物含有顆粒を生成した後に行い、加温工程の例として、薬物含有顆粒のキュアリング工程や、錠剤成型後の錠剤の加温保存工程が挙げられる。キュアリング工程には、比較的高温で短時間かけて行うキュアリング工程(以下、「高温短時間キュアリング工程」と記載する)と、比較的低温で長時間かけて行うキュアリング工程(以下「低温長時間キュアリング工程」と記載する)に分けられる。
【0049】
加温の条件は、高温短時間キュアリング工程の場合は、40℃以上、さらに好ましくは50℃以上100℃以下、より好ましくは65℃以上85℃以下が挙げられる。低温長時間キュアリング工程又は加温保存工程の場合は、30℃以上、さらに好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上45℃以下が挙げられる。加温に賦する時間は、高温短時間キュアリング工程の場合は、15分以上、さらに好ましくは30分以上120分以下、より好ましくは30分以上90分以下が挙げられる。また、低温長時間キュアリング工程又は加温保存工程の場合は、2時間以上、さらに好ましくは12時間以上7日以下、より好ましくは12時間以上3日以下が挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0050】
1.結晶セルロース(粒)(旭化成ケミカルズ)商品名:セルフィアCP-102
2.ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達)商品名:HPC-SSL
3.水酸化ナトリウム(関東化学)商品名:水酸化ナトリウム
4.タルク(松村産業)商品名:クラウンタルク
5.エチルセルロース(ダウケミカル)商品名:ETHOCEL STANDARD 4 PREMIUM
6.アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(エボニック)商品名:オイドラギットRL100、オイドラギットRSPO
7.ポリソルベート 80(関東化学)商品名:Tween80
8.ラウリル硫酸ナトリウム(メルク)商品名:Dodecyl sulfate sodium salt
9.D-マンニトール(ロケット、三菱フードテック)商品名:PEARITOL、球形マンニット
10.結晶セルロース・無水ケイ酸(木村産業)商品名:Prosolv SMCC 90
11.クロスポビドン(BASF)商品名:コリドンCL-F
12.含水二酸化ケイ素(DSLジャパン)商品名:カープレックス#67
13.ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業)商品名:ステアリン酸マグネシウム植物性
【0051】
<溶出率の測定方法>
薬物の溶出率[%]は富山産業(株)製、自動溶出試験機NTR−6100Aを用い、回転バスケット法(100rpm)にて測定した。試験液は第十六改正日本薬局方 溶出性<6.10>の溶出試験 第一液及び第二液900mLを用いた。測定は3回行い、その平均値をとった。
(実施例1)
インジセトロン塩酸塩48g、ヒドロキシプロピルセルロース6g、水酸化ナトリウム6gを精製水226.9g、エタノール372.6gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)240gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしインジセトロン塩酸塩含有顆粒を得た。別に、ヒドロキシプロピルセルロース16g、タルク8gを精製水97.1g、エタノール145.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒200gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングしアンダーコーティング顆粒を得た。
別に、エチルセルロース5g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRL100)5g、ポリソルベート80 1g、ラウリル硫酸ナトリウム1gを精製水15.4g、エタノール139.2gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒25gを微小量流動層(ダルトン製)に仕込み、ボトムスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として82.88mg中にインジセトロン塩酸塩を8mg含有するコーティング顆粒を得た。得られたコーティング顆粒の溶出率の結果を
図1に示す。
さらに、このコーティング顆粒82.88mg、D-マンニトール170.4mg、結晶セルロース・無水ケイ酸30mg、クロスポビドン12mg、含水二酸化ケイ素0.6mg、ステアリン酸マグネシウム3mg、アスパルテーム1mg及びl−メントール0.2mgを加え混合後、打錠機を用いて1錠あたりインジセトロン塩酸塩8mgを含む約300mgの錠剤を製した。得られた錠剤は硬度5.5kg、口腔内崩壊時間16秒を示した。得られた錠剤の溶出率の結果を
図8に示す。
(実施例2)
インジセトロン塩酸塩48g、ヒドロキシプロピルセルロース6g、水酸化ナトリウム6gを精製水226.9g、エタノール372.6gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)240gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしインジセトロン塩酸塩含有顆粒を得た。別に、ヒドロキシプロピルセルロース16g、タルク8gを精製水97.1g、エタノール145.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒200gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングしアンダーコーティング顆粒を得た。
別に、エチルセルロース5g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRSPO)5g、ポリソルベート80 1g、ラウリル硫酸ナトリウム1gを精製水15.4g、エタノール139.2gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒25gを微小量流動層(ダルトン製)に仕込み、ボトムスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として82.88mg中にインジセトロン塩酸塩を8mg含有するコーティング顆粒を得た。得られたコーティング顆粒の溶出率の結果を
図2に示す。
(実施例3)
インジセトロン塩酸塩48g、ヒドロキシプロピルセルロース6g、水酸化ナトリウム6gを精製水226.9g、エタノール372.6gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)240gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしインジセトロン塩酸塩含有顆粒を得た。別に、ヒドロキシプロピルセルロース16g、タルク8gを精製水97.1g、エタノール145.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒200gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングしアンダーコーティング顆粒を得た。
別に、エチルセルロース3.75g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRSPO)3.75g、ポリソルベート80 0.375g、ラウリル硫酸ナトリウム0.375gを精製水11.7g、エタノール105gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒25gを微小量流動層(ダルトン製)に仕込み、ボトムスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として74.48mg中にインジセトロン塩酸塩を8mg含有するコーティング顆粒を得た。得られたコーティング顆粒の溶出率の結果を
図3に示す。
(比較例1)
インジセトロン塩酸塩48g、ヒドロキシプロピルセルロース6g、水酸化ナトリウム6gを精製水226.9g、エタノール372.6gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)240gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしインジセトロン塩酸塩含有顆粒を得た。別に、ヒドロキシプロピルセルロース16g、タルク8gを精製水97.1g、エタノール145.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒200gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングしアンダーコーティング顆粒を得た。
別に、エチルセルロース2.5g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRL100)2.5g、ポリソルベート80 0.5g、ラウリル硫酸ナトリウム 0.5gを精製水7.7g、エタノール69.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒25gを微小量流動層(ダルトン製)に仕込み、ボトムスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として69.44mg中にインジセトロン塩酸塩を8mg含有するコーティング顆粒を得た。得られたコーティング顆粒の溶出率の結果を
図4に示す。
(比較例2)
インジセトロン塩酸塩48g、ヒドロキシプロピルセルロース6g、水酸化ナトリウム6gを精製水226.9g、エタノール372.6gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)240gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしインジセトロン塩酸塩含有顆粒を得た。別に、ヒドロキシプロピルセルロース16g、タルク8gを精製水97.1g、エタノール145.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒200gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングしアンダーコーティング顆粒を得た。
別に、エチルセルロース2.5g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRSPO)2.5g、ポリソルベート80 0.5g、ラウリル硫酸ナトリウム 0.5gを精製水7.7g、エタノール69.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒25gを微小量流動層(ダルトン製)に仕込み、ボトムスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として69.44mg中にインジセトロン塩酸塩を8mg含有するコーティング顆粒を得た。得られたコーティング顆粒の溶出率の結果を
図5に示す。
(比較例3)
インジセトロン塩酸塩48g、ヒドロキシプロピルセルロース6g、水酸化ナトリウム6gを精製水226.9g、エタノール372.6gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)240gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしインジセトロン塩酸塩含有顆粒を得た。別に、ヒドロキシプロピルセルロース16g、タルク8gを精製水97.1g、エタノール145.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒200gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングしアンダーコーティング顆粒を得た。
別に、エチルセルロース 2.5g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRSPO) 2.5g、ポリソルベート80 0.25g、ラウリル硫酸ナトリウム 0.25gを精製水7.7g、エタノール69.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒25gを微小量流動層(ダルトン製)に仕込み、ボトムスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として68.32mg中にインジセトロン塩酸塩を8mg含有するコーティング顆粒を得た。得られたコーティング顆粒の溶出率の結果を
図6に示す。
(比較例4)
インジセトロン塩酸塩48g、ヒドロキシプロピルセルロース6g、水酸化ナトリウム6gを精製水226.9g、エタノール372.6gの混液に溶解した。結晶セルロース(粒)240gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、トップスプレー法にてこの溶液をコーティングしインジセトロン塩酸塩含有顆粒を得た。別に、ヒドロキシプロピルセルロース16g、タルク8gを精製水97.1g、エタノール145.6gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒200gを流動層造粒機(ダルトン製、ニューマルメライザー NQ-160)に仕込み、サイドスプレー法にてこの溶液をコーティングしアンダーコーティング顆粒を得た。
別に、エチルセルロース5g、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(オイドラギットRL100)5g、ポリソルベート80 1gを精製水15.6g、エタノール140.1gの混液に溶解した。インジセトロン塩酸塩含有顆粒25gを微小量流動層(ダルトン製)に仕込み、ボトムスプレー法にてこの溶液をコーティングし、理論値として80.64mg中にインジセトロン塩酸塩を8mg含有するコーティング顆粒を得た。得られたコーティング顆粒の溶出率の結果を
図7に示す。
【0052】
表1に、実施例1〜3及び比較例1〜4で得られたコーティング顆粒の処方内容と、溶出試験の結果を纏めた。表中の「ポリマーコート率」とは、水不溶性セルロースエーテルであるエチルセルロース(A)と、水不溶性アクリル酸系ポリマーであるオイドラギット(B1又はB2)の合計重量を、薬物含粒顆粒の重量(X)で除したものである。
【0054】
ポリマーコート率が0.2である比較例1〜3は、第二液(pH6.8)の溶出率(1分値)が10%を超えており、不快な官能的性質を抑えることはできていない。その一方で、ポリマーコート率が0.3又は0.4である実施例1〜3では、同値が4〜5%と高度にマスキングされていることが分かる。
【0055】
さらに、実施例1〜3では、第一液(pH1.2)の溶出率(1分値)も、6%以下であり、酸性の医薬品と同時に服用した場合でも、マスキング効果を維持できることが分かる。また、第一液(pH1.2)の溶出率(30分値)は、80%以上であり、口腔内で崩壊後、胃内に移行した後は、速やかに溶出し薬効を発揮する。さらに第二液(pH6.8)の溶出率(30分値)が65%以上であり、低胃酸の患者が服用した場合でも、溶出が極端に遅くならない製剤である。
比較例4は、ラウリル硫酸ナトリウムを使用していない顆粒である(ポリマーコート率は0.4)。この場合、第二液(pH6.8)の溶出率(1分値)は23%と高く、不快な官能的性質を抑えることはできていない。ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤が第二液(pH6.8)の溶出率(1分値)を抑え、マスキング効果に寄与していることが分かる。
【0056】
実施例1の錠剤の溶出率の結果を
図8に示す。実施例1の錠剤を40℃で1箇月保存後の溶出率の結果を
図9に示す。
【0057】
実施例1のコーティング顆粒(
図1)、実施例1の錠剤(
図8)、実施例1の錠剤を40℃で一箇月保存したもの(
図9)について、溶出率を表2に纏めた。
【0059】
コーティング顆粒を打錠し口腔内崩壊性錠剤としたことによる溶出率への影響はほとんど認められず、コーティング顆粒と口腔内崩壊性錠剤のプロファイルは類似していた。また、口腔内崩壊性錠剤を加温条件で保存することにより、第二液での溶出率(1分値)が1%と、非常に高度にマスキングされている製剤が得られた。なお、当該製剤(40℃1箇月保存後)の溶出率は、第一液(pH1.2)の溶出率30分値が80%以上であり、口腔内で崩壊後、胃内に移行した後は、速やかに溶出し薬効を発揮する。さらに、第二液(pH6.8)の溶出率の30分値が65%以上であり、低胃酸の患者が服用した場合でも溶出が極端にならず、服用が可能な製剤である。