【課題を解決するための手段】
【0007】
〔構成1〕 上記目的を達成するための本発明のバイオマスの処理方法は、界面活性剤を含む菌体廃液をメタン発酵してバイオガスを得るメタン発酵工程を有するバイオマスの処理方法であって、前記メタン発酵工程を行う前に、菌体廃液を酸発酵する酸発酵工程を有するとともに、菌体廃液にカルシウム塩を添加して界面活性剤を凝集させる凝集工程を有し、
前記メタン発酵工程を行う前に、前記メタン発酵工程におけるpHを6.8〜8に維持するように前記酸発酵工程における酸発酵条件または前記凝集工程における凝集条件を制御し、前記菌体廃液は、微生物に産生させたポリヒドロキシ酪酸を含む懸濁液を高圧細胞破砕操作し、界面活性剤を加えて精製・分離した際に発生した菌体廃液であり、前記界面活性剤は、ナトリウム基を含む陰イオン界面活性剤であることを特徴とする。
【0008】
〔作用効果1〕
菌体廃液をメタン発酵工程にそのまま供すると、界面活性剤がメタン発酵工程に供給されてしまうので、これを凝集工程により凝集させることで、メタン発酵工程が良好に進行するものと考えられる。しかし、ここで、単に凝集工程を経た排水をメタン発酵工程に供すると、メタン発酵工程において一旦凝集した界面活性剤が再溶解して、やはり、メタン発酵が阻害されるおそれがある。
【0009】
つまり、界面活性剤にカルシウムを添加すると2RCOONa + Ca
2+ → (RCOO)2Ca + 2Na
+の反応からいわゆる金属石鹸が生成され、界面活性剤としての効果を消失する。ただし、その後酸発酵によりpHが低下すると、(RCOO)2Ca →2RCOONa + Ca
2+の逆反応がおき再溶解した界面活性剤が菌体活性を阻害する。
【0010】
そこで、本発明者らが鋭意研究したところ、前記メタン発酵工程の前段階で酸発酵工程を行っておくだけで、界面活性剤の再溶解を抑制し、良好にメタン発酵が行えることを新たに見出した。つまり、メタン発酵工程の前に、凝集工程および酸発酵工程を行えば、一旦凝集した界面活性剤を、液相に遊離させない状態で、メタン発酵処理が行えるので、菌体廃液を効率よくメタン発酵処理できるようになった。
【0011】
なお、凝集工程と、酸発酵工程とは先後いずれを優先して行ってもよく、いずれの場合であっても、界面活性剤の再溶解が起きない条件でメタン発酵を行えることがわかっている。
また、メタン発酵すべき対象としては界面活性剤として陰イオン界面活性剤を含有している場合にカルシウム塩による凝集工程が効果的に行えるとともに、メタン発酵工程が良好に行える。
また、メタン発酵工程におけるpHを6.8〜8としているため、界面活性剤の再溶解が防げるとともに、メタン発酵工程における発酵阻害も発生しない条件とすることができる。
【0012】
〔構成2〕
ここで、
前記菌体廃液を酸発酵工程、凝集工程、メタン発酵工程の順に処理することができる。
【0013】
〔作用効果2〕
酸発酵工程ののち、凝集工程を行うと、界面活性剤が溶解状態で酸発酵されるが、酸発酵後に発生した、メタン発酵不能な凝集沈殿物をまとめて沈殿除去できるので、後続のメタン発酵効率をより高めることができるものと考えられる。
【0014】
〔構成3〕
また、前記酸発酵工程において生成した有機酸を回収する酸回収工程を行ってもよい。
【0015】
〔作用効果3〕
なお、酸発酵工程を行った後に凝集工程を行う場合や、菌体廃液自体の液性によって酸の生成効率が高いような場合、前記酸発酵工程で生成した有機酸を回収する酸回収工程を行うことにより、後続のメタン発酵工程における液性を適切に維持しやすくなるとともに、回収された有機酸を有効利用できるようになる。
【0016】
〔構成4〕
上記構成において、前記酸回収工程で回収された有機酸を、
前記メタン発酵工程で
前記菌体廃液とともにメタン発酵処理することもできる。
【0017】
〔作用効果4〕
酸回収工程で回収された有機酸は、前記メタン発酵工程において、メタン発酵の妨げにならない範囲でメタン発酵処理することができ、単に廃棄物となってしまう酸であっても、有効にメタンに変換することができる。また、一旦酸を回収してメタン発酵を行うこととすれば、前記メタン発酵工程の行われる液性を好適に制御しやすくなる。
【0018】
〔構成5〕
また、前記凝集工程において、
前記菌体廃液中のカルシウム塩が
前記界面活性剤のナトリウム基に対し、0.1倍〜100倍となるようにカルシウム塩を添加してもよい。
【0019】
〔作用効果5〕
カルシウム塩は上記反応より、界面活性剤に対して過剰量存在する必要があり、また、多すぎても有効に働かず、コスト高になるため、菌体廃液中の界面活性剤のナトリウム基に対しカルシウム塩が0.1倍量〜100倍量となるようにカルシウム塩を添加してあれば、好適な凝集条件を維持できることになる。
【0022】
〔構成
6〕
前記カルシウム塩が塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムのうちの一つまたは、二つ以上を含んでもよい。
【0023】
〔作用効果
6〕
前記カルシウム塩は、水に溶けてカルシウムイオンを供給するものであれば、汎用されているものが適用でき、複数混合されていてもよい。
【0026】
〔構成
7〕
前記陰イオン界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、およびステアリル硫酸ナトリウムのうちの一つまたは、二つ以上を含むことができる。
【0027】
〔作用効果
7〕
菌体廃液中の陰イオン界面活性剤としては、菌体廃液に一般的に含まれるものをあげることができる。なかでも、汎用的でありメタン発酵工程に悪影響を与えやすいドデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、およびステアリル硫酸ナトリウムのうちの一つまたは、二つ以上を含むものであれば、凝集工程を行った際のメタン発酵工程に対する改善効果が高く、好ましいといえる。
【0028】
〔構成
8〕
また、上記目的を達成するためのバイオマスの処理装置の特徴構成は、微生物に産生させたポリヒドロキシ酪酸を含む懸濁液を高圧細胞破砕操作し、ナトリウム基を含む陰イオン界面活性剤を加えて精製・分離した際に発生した当該陰イオン界面活性剤を含む菌体廃液を供給する供給部を備え、前記菌体廃液を酸発酵する酸発酵槽を備えるとともに、
菌体廃液にカルシウム塩を添加するカルシウム塩添加部を設け、前記酸発酵槽および前記カルシウム塩添加部を経ることで菌体廃液のpHを6.8〜8に維持してメタン発酵するUASB反応槽を備えた点にある。
【0029】
〔作用効果
8〕
供給部から供給される菌体廃液は、酸発酵槽において酸発酵する酸発酵工程を行った後、メタン発酵工程を行うことによって、菌体廃液をメタン発酵して処理済排水とすることができる。このとき、菌体廃液にカルシウム塩を添加するカルシウム塩添加部を設けてあるから、菌体廃液中に含まれる界面活性剤をあらかじめ凝集させる凝集工程を行うことができ、上述のバイオマス処理方法を実行できるようになる。
また、メタン発酵工程におけるpHを6.8〜8としているため、界面活性剤の再溶解が防げるとともに、メタン発酵工程における発酵阻害も発生しない条件とすることができる。
【0030】
〔構成
9〕
前記カルシウム塩添加部が、前記酸発酵槽と前記UASB反応槽との間に設けてあってもよい。
【0031】
〔作用効果
9〕
前記酸発酵槽と前記UASB反応槽との間にカルシウム塩添加部を設けてあれば、酸発行工程後、凝集工程を行い、その後メタン発酵工程を進行できるようになる。これにより、メタン発酵工程で不必要な成分を効率よく除去することができる。
【0032】
〔構成
10〕
また、前記酸発酵槽から発生した有機酸を回収する酸回収部を設けてもよい。
【0033】
〔作用効果
10〕
酸回収部を設けてあれば、上述のバイオマス処理方法における酸回収工程を行うことができ、後続のメタン発酵工程における液性を適切に維持しやすくなるとともに、回収された有機酸を有効利用できるようになる。また、前記メタン発酵工程の行われる液性を好適に制御しやすくなる。