(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のチップ抵抗器を外部電気回路基板に実装し、電圧を印可したところ、抵抗体自身が発する熱を効率良く放散できずに、抵抗体の電気抵抗値が一定しない場合があった。そして、一定の電気抵抗値が得られないことにより、チップ抵抗器としての信頼性が損なわれてしまうことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記した事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、小型低背化しつつ、電圧印可時に抵抗体が発する熱を効率良く放散することができるチップ抵抗器を提供することにある。そして、当該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ねたところ、第1表面電極と第2表面電極間の中央付近の抵抗体の温度が最も高く、第1表面電極及び第2表面電極の近傍付近の抵抗体の温度が中央付近より低いという知見を得て、抵抗体が発する熱は主に表面電極を介して放散されることをつきとめた。そこで、本発明者らはさらに鋭意検討を重ね本発明に至った。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のチップ抵抗器は、表面に凹部が形成されるセラミック基板と、前記凹部に充填される抵抗体と、前記抵抗体と電気的に接続するとともに、前記抵抗体の両端部に対向して当接される一対の電極である第1表面電極及び第2表面電極と、を備えるチップ抵抗器であって、前記セラミック基板を前記表面側から平面視した場合、前記凹部は、前記第1表面電極の一部と少なくとも一部が重なる第1凹部領域と、前記第2表面電極の一部と少なくとも一部が重なる第2凹部領域と、前記第1表面電極と前記第2表面電極の対向方向に所定幅で伸びて、前記第1凹部領域と前記第2凹部領域とを連結する
第3凹部領域と、を有し、前記第1凹部領域と前記第2凹部領域の幅は、前記第3凹部領域の前記所定幅よりも広いことを特徴とする。
【0010】
このようなチップ抵抗器では、セラミック基板の表面側から平面視した場合に、第1表面電極及び第2表面電極と重なる第1凹部領域及び第2凹部領域を、第1表面電極と第2表面電極との間に設けられる第3凹部領域より幅広くしている。そのため、凹部に充填される抵抗体と電極との接触面積が従来と比較して広くなり、電極に熱を放散し易くなる。すなわち、本発明のチップ抵抗器は、第1凹部領域及び第2凹部領域を幅広くして、表面電極と抵抗体との接触面積を増大させることにより、熱の放散経路をより広く確保することで、抵抗体が発する熱を効率良く放散させている。
従って、本発明のチップ抵抗器によれば、小型低背化しつつ、電圧印可時に抵抗体が発する熱を効率良く放散することができる。
【0011】
また、前記セラミック基板を前記表面側から平面視した場合、前記第1表面電極と重ならない前記第1凹部領域が、前記第1表面電極と前記第3凹部領域との間に在り、前記第2表面電極と重ならない前記第2凹部領域が、前記第2表面電極と前記第3凹部領域との間に在ることが好ましい。
【0012】
このようなチップ抵抗器によれば、第1表面電極と第3凹部領域との間、及び第2表面電極と第3凹部領域との間に、第3凹部領域より幅広い凹部領域があることにより、表面電極と抵抗体との接触部分に対して熱の放散経路をより広く確保できる。そのため、抵抗体が発する熱が表面電極と抵抗体との接触部分を介して放散される前に、予めその接触部分に熱をより多く放散させることで、より効率良く放散することができる。
【0013】
前記セラミック基板の裏面に、前記第1表面電極と電気的に接続する第1裏面電極と、前記第2表面電極と電気的に接続する第2裏面電極と、をさらに備え、前記セラミック基板を前記表面側から平面視した場合、前記第1裏面電極と前記第2裏面電極の形成領域は前記抵抗体の形成領域と重なることが好ましい。
【0014】
このようにチップ抵抗器によれば、抵抗体の直下に第1裏面電極及び第2裏面電極を形成することで、第1表面電極及び第2表面電極を介してだけではなく、抵抗体が発する熱を第1裏面電極及び第2裏面電極にも効率良く放散することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型低背化しつつ、電圧印可時に抵抗体が発する熱を効率良く放散するチップ抵抗器を提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るチップ抵抗器の実施形態について
図1〜5を参照して詳細に説明する。各図中、同一または相当する部材または要素には、同一の符号を付して説明する。尚、実施形態の理解を容易にするために、
図1、
図4においては、保護層を示していない。
【0018】
以下に、本発明の第1実施形態について詳細に説明する。
図1は、第1実施形態をセラミック基板の表面側から平面視した時の様子を示す図である。
図2は、
図1における凹部2を示す図である。
図3は、
図1におけるチップ抵抗器の、A−A´による断面図である。
【0019】
<チップ抵抗器について>
このチップ抵抗器11は、凹部2を有するセラミック基板1と、凹部2に充填された抵抗体3と、第1表面電極4a及び第2表面電極4bと、第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bと、第1側面電極6a及び第2側面電極6bと、保護層7とを、主な構成要素として備える。
【0020】
<セラミック基板1について>
セラミック基板1は、平板状であり、後記する抵抗体3や保護層7が形成される表面と、表面と対向する裏面を有する。さらに、対向する一対の短側面と、対向する一対の長側面とを有する。そして、セラミック基板1の中央部には、厚み方向に窪む凹部2を有する。
【0021】
<凹部2について>
凹部2は、
図1及び
図2のように、セラミック基板1の表面側から平面視した場合、第1凹部領域2aと第2凹部領域2bと第3凹部領域2cとから構成される。
【0022】
また、
図3のように、凹部2の横断面形状は、略T字形状である。各凹部領域の底面は、セラミック基板1の表面に略平行な平面である。そして、第1凹部領域2aと第2凹部領域2bの深さは、第3凹部領域の深さより浅くなっている。尚、深さとは、各凹部領域の底面からセラミック基板1の表面までの距離のことである。また、各凹部領域の側面は、セラミック基板1の表面に向かって広がる傾斜面になっている。
【0023】
また、本実施形態では、各凹部領域の側面は傾斜面であるが、セラミック基板1の表面に対して垂直な平面になっていても良い。
【0024】
<第1凹部領域2aについて>
第1凹部領域2aは、第1表面電極4aと重なる部分を含む領域であって、後記する第3凹部領域2cより幅が広い領域のことである。また、第1凹部領域2aは、第3凹部領域2cから第1表面電極4a側の凹部2の端部に向かって漸次広がる第1漸開領域2aAと、第1漸開領域2aAから凹部2の端部に向かってセラミック基板1の長辺方向と平行に伸びる第1平行領域2aBと、から構成される。そして、
図2のように、第1平行領域2aBの一部は第1表面電極4aと重なっており、第1漸開領域2aAは第3凹部領域2cと第1平行領域2aBの間に配置される。尚、本実施形態においては、幅とはセラミック基板1の短辺方向の長さのことである。
【0025】
また、第1漸開領域2aAは、セラミック基板1の表面側から平面視した場合、階段状でもよいし、又は設けなくてもよい。
【0026】
<第2凹部領域2bについて>
第2凹部領域2bは、第2表面電極4bと重なる部分を含む領域であって、後記する第3凹部領域2cより幅が広い領域のことである。また、第2凹部領域2bは、第3凹部領域2cから第2表面電極4b側の凹部2の端部に向かって漸次広がる第2漸開領域2bAと、第2漸開領域2bAから凹部2の端部に向かってセラミック基板1の長辺方向と平行に伸びる第2平行領域2bBとから構成される。そして、
図2のように、第2平行領域2bBの一部は第2表面電極4bと重なっており、第2漸開領域2bAは第3凹部領域3cと第2平行領域2bBの間に配置される。尚、本実施形態においては、幅とはセラミック基板1の短辺方向の長さのことである。
【0027】
また、第2漸開領域2bAは、セラミック基板1の表面側から平面視した場合、階段状でもよいし、又は設けなくてもよい。
【0028】
<第3凹部領域2cについて>
第3凹部領域2cは、第1凹部領域2aと第2凹部領域2bとを連結する領域であって、セラミック基板1の長辺方向(第1表面電極4aと第2表面電極4bとが対向する方向)と平行に所定の幅で伸びる領域である。
【0029】
<抵抗体3について>
抵抗体3は、凹部2に充填して形成される。そのため、抵抗体3は、
図1のように、セラミック基板1の表面側から平面視した形状は、凹部2と略同一の形状となる。また、抵抗体3の横断面の形状は、
図3のように、凹部2と略同一の形状となる。
【0030】
図3のように、第1凹部領域2a及び第2凹部領域2bに形成された抵抗体3の厚みは、第3凹部領域2cに形成された抵抗体3の厚みよりも薄い。そのため、第3凹部領域に形成された抵抗体3の断面積(セラミック基板1の短側面と平行な面で切断した断面積)と、第1凹部領域2a及び第2凹部領域2bに形成された抵抗体3の断面積との差が、各凹部領域の深さが同一である場合と比較して、減少している。尚、本実施形態では、各凹部領域に形成される抵抗体3の断面積が略一定となるように、各凹部領域の深さを設定している。
【0031】
<第1表面電極4a及び第2表面電極4bについて>
金属を主成分とする材料で構成される一対の電極である、第1表面電極4a及び第2表面電極4bは、抵抗体3のセラミック基板1の長辺方向の両端部のそれぞれに対向して当接される。具体的には、第1表面電極4aは、セラミック基板1の表面から第1凹部領域2aの側面及び底面の一部に配置される。また、第2表面電極4bは、セラミック基板1の表面から第2凹部領域2bの側面及び底面の一部に配置される。すなわち、本実施形態の場合、表面電極の一部は、セラミック基板1と抵抗体3に挟まれた状態で配置されている。
【0032】
また、第1表面電極4a及び第2表面電極4bの幅は、第3凹部領域2cの幅より広く形成されている。
尚、第1表面電極4a及び第2表面電極4bと、抵抗体3との接触面積を大きくするために、第1表面電極4a及び第2表面電極4bの幅と、凹部2の第1平行領域2aB及び第2平行領域2bBの幅とは、近似していることが好ましい。
【0033】
<第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bについて>
金属を主成分とする材料で構成される第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bは、セラミック基板1の裏面に離間して配置される。そして、第1裏面電極5aは第1表面電極4aと同極であり、第2裏面電極5bは第2表面電極4bと同極である。これら同極の電極同士は、後記する側面電極によって電気的に接続される。
【0034】
また、セラミック基板1の表面側から平面視した場合、第1裏面電極5aの形成領域は第1凹部領域2aの形成領域と重なり、第2裏面電極5bの形成領域は第2凹部領域2bと重なっている。
【0035】
<第1側面電極6a及び第2側面電極6bについて>
金属を主成分とする材料で構成される第1側面電極6aは、セラミック基板1の第1表面電極4a側の短側面に形成され、第1表面電極4aと同極の第1裏面電極5aとを連結し、電気的に接続する。
金属を主成分とする材料で構成される第2側面電極6bは、セラミック基板1の第2表面電極4b側の短側面に形成され、第2表面電極4bと同極の第2裏面電極5bとを連結し、電気的に接続する。
【0036】
<保護層について>
絶縁膜からなる保護層7は、抵抗体3を保護するため、抵抗体3を覆うように形成される。保護層7を構成する絶縁膜は、ガラスや樹脂等の材料から構成される。
【0037】
これまでに説明した各電極は、抵抗体3が発する熱の放散経路となるため、熱伝導性が高い金属材料で構成することが好ましい。
【0038】
第1実施形態によれば、第1表面電極4aと第2表面電極4b間の中央付近の抵抗体3が発する熱は、漸次幅広くなる抵抗体3に沿って抵抗体3の中心部から端部に向かって伝わる。そして、面積が増大した表面電極4a,4bと抵抗体3との接触部分より、効率良く熱を放散することができる。
【0039】
また、第1実施形態によれば、抵抗体3と、第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bとの距離が、従来例(
図7参照)と比べて短くなる。よって、抵抗体3の下部(セラミック基板1の裏面側に位置する部分)が発する熱を、第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bを介して効率良く放散することができる。
【0040】
また、第1実施形態によれば、セラミック基板1の短側面と平行な面で切断した抵抗体3の断面積が略一定となるため、抵抗体3の全体において温度の偏りがなくなる。よって、抵抗値のブレが減少し、チップ抵抗器としての信頼性が向上する。
【0041】
以上のように、第1実施形によれば、小型低背化しつつ、電力印可時に抵抗体が発する熱を効率良く放散することができるチップ抵抗器を提供することができる。
【0042】
次に、本発明のチップ抵抗器の製造例について説明する。
【0043】
まず、アルミナを主成分とするセラミックグリーンシートを、プレス成型により凹部を形成した後、約1600℃で焼成して、セラミック基板を得る。
【0044】
次に、セラミック基板の表面の所定位置にAg−Pdを主成分とするペーストをスクリーン印刷する。そして、セラミック基板の裏面の所定位置に、Ag−Pdを主成分とするペーストをスクリーン印刷する。その後、約850℃で焼成して、第1表面電極と第2表面電極と第1裏面電極と第2裏面電極を形成する。
また、Ag−Pdペーストに限定されず、例えばAgペーストを用いてもよい。
【0045】
次に、凹部に、酸化ルテニウムを主成分とする抵抗体ペーストをスクリーン印刷にて充填させた後、約850℃で焼成して、抵抗体を形成する。必要に応じて、抵抗体のレーザートリミングを行い、抵抗値を修正する。
【0046】
次に、抵抗体上に、ガラスを主成分とするガラスペーストをスクリーン印刷した後、約650℃で焼成して、保護層を形成する。
【0047】
以上の処理は多数個取りの基板の一括処理であるが、次に短冊状に分割する加工を行う。分割後、露出したセラミック基板側面に、スパッタリングによりNi・Crを主成分とする側面電極を形成する。
【0048】
そして、チップ単体に分割する加工を行う。これにより、チップ抵抗器を得る。
【0049】
以下に、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態をセラミック基板の表面側から平面視した時の様子を示す図である。
図5は、
図4におけるチップ抵抗器の、B−B´による断面図である。
【0050】
第2実施形態のチップ抵抗器11は、第1の実施形態のチップ抵抗器11において、第1凹部領域2aの第1漸開領域2aA及び第2凹部領域2bの第2漸開領域2bAを無くし、凹部2の各凹部領域の深さを同一にしたものである。
【0051】
そして、
図4のように、第1凹部領域2aは第1表面電極4aと全て重なり、第2凹部領域2bは第2表面電極4bと全て重なる。言い換えると、第3凹部領域2cの一部が、第1表面電極4a及び第2表面電極4bと重なる。このため、第1表面電極4aと第2表面電極4bの間に形成される抵抗体3の断面積(セラミック基板1の短側面と平行な面で切断した断面積)は、略一定となる。
【0052】
第2実施形態によれば、従来例(
図6参照)と比べ、抵抗体3と、第1表面電極4a及び第2表面電極4bとの接触面積が増大するため、抵抗体3から第1表面電極4a及び第2表面電極4bへと効率良く熱を放散することができる。
【0053】
また、第2実施形態によれば、抵抗体3と、第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bとの距離が、従来例(
図7参照)と比べて短くなる。よって、抵抗体3の下部(セラミック基板1の裏面側に位置する部分)が発する熱を、第1裏面電極5a及び第2裏面電極5bを介して、効率良く放散することができる。
【0054】
また、第2実施形態によれば、第1表面電極4aと第2表面電極4bの間に形成される抵抗体3の断面積が一定となるため、抵抗体3の全体において温度の偏りがなくなる。よって、抵抗値のブレが減少し、チップ抵抗器としての信頼性が向上する。
【0055】
以上のように、第2実施形態によれば、小型低背化しつつ、電力印可時に抵抗体が発する熱を効率良く放散することができるチップ抵抗器を提供することができる。
【0056】
これまで説明した実施形態において、第1表面電極4a、第2表面電極4bの一部がセラミック基板1と抵抗体3に挟まれた状態で、セラミック基板1の表面から第1凹部2の側面及び底面の一部に配置された。本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1表面電極4a、第2表面電極4bは、セラミック基板1の表面と凹部2に充填された抵抗体3とを跨ぐ状態で、セラミック基板1の表面から抵抗体の表面に配置されてもよい。
【0057】
本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。