(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150594
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】自転車道つき道路のスリット側溝敷設方法
(51)【国際特許分類】
E01C 11/22 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
E01C11/22 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-85585(P2013-85585)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-206028(P2014-206028A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年8月29日
【審判番号】不服2016-2682(P2016-2682/J1)
【審判請求日】2016年2月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391013416
【氏名又は名称】ゴトウコンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀佳
【合議体】
【審判長】
小野 忠悦
【審判官】
住田 秀弘
【審判官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−107232(JP,A)
【文献】
特開2001−234506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
「(請求項1)
歩道と車道の間に自転車道が設けられ、歩道と自転車道との間には歩道と自転車道とを分岐する縁石が敷設された自転車道つき道路につき、
スリット側溝を敷設して前記自転車道つき道路を形成する自転車道つき道路のスリット側溝敷設方法であり、
前記スリット側溝は、断面縦長の略長方形状をなし、全体としては直方体状をなし、内部には長手方向に向かって略円柱状の排水路が設けられ、該スリット側溝には、内部に設けられた排水路と上壁面外側とを連通させるスリットが設けられると共に、該スリットが設けられた断面縦長の略長方形状をなし、全体としては直方体状をなすスリット側溝の上壁面箇所には、前記上壁表面より上方に向かい凸状に突出させたスリットつき凸条が設けられ、
前記スリット側溝は、歩道と自転車道の境界部下方に埋設され、境界部表面には、前記スリットつき凸条の上面が自転車道路面の表面と面一となって露出するよう敷設され、
前記自転車の大きさは、自転車本体から張り出すペダルの張り出し長さが500mm以内の大きさの自転車であり、
前記縁石は、根入れ(埋め込み深さ)により15cm乃至25cmくらいの高さになるJIS規格の縁石であり、該縁石が、前記スリット側溝における凸状に突出するスリット凸条の幅方向一方側の凹み部に載置できて、前記スリット側溝と前記縁石とがJIS規格の縁石敷設に対応できるものとされ、かつ自転車道を走行する自転車が、自転車道路面の表面と面一となって露出するよう敷設された前記スリットつき凸条の上面に乗り上げる前に、前記自転車のペダルが縁石に当たる位置及び高さの縁石としてなり、
スリットつき凸条における凸条上面の露出する幅の長さは、前記大きさの自転車の自転車本体から張り出すペダルが、前記縁石に当たるため、自転車の車輪が、スリットつき凸条の露出する凸条上面に乗り上げるおそれがなく、前記自転車が滑ることがない幅の長さにしてある、スリット側溝を敷設する、
ことを特徴とする自転車道つき道路のスリット側溝敷設方法。」
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば歩道と車道との間に自転車通行用に設けられた自転車道つき道路の自転車道脇側に敷設されるスリット側溝の敷設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの状況変化に鑑み、エネルギー資源のエコ化が叫ばれており、そのため、化石燃料を消費しない自転車の利用が見直され、通勤あるいは通学などの脚としても頻繁に利用されるに至っている。
【0003】
しかし、自転車利用台数が増加するに伴い、自転車が原因となる接触事故も増加している。例えば、自転車が歩道を走行して歩行者に接触したり、あるいは車道を走行することにより、車両と接触したりすることなどが散見されている。また、歩道と車道の区別のない道路においては、歩道に代わって路側帯が設置されている道路があり、道路交通法上では、自転車は歩行者の通行を妨げないような速度と方法で、この路側帯を通行することができるように規定されているが、この場合にも歩行者と自転車との接触事故が報告されている。
【0004】
そこで、近年では歩道と車道との間に自転車道を設ける道路建設が多くなってきている。しかしながら、この自転車道つき道路においても、従来では自転車走行者に安全な走行が提供できるものではなかった。
【0005】
なぜなら、
図8から理解されるように、従来、自転車道の脇に暗渠型排水溝が埋設されると共に、その上部にはいわゆるL型街渠14が敷設される場合があるが、このL型街渠14は、エプロン幅が例えば、500mmと大きく、当該L型街渠14が設置されている自転車道3で自転車を走行させると、自転車が前記エプロン上のコンクリート面16を走行することがあり、この場合、エプロンがコンクリート面であるため、滑ってしまって自転車走行の安全性が損なわれるとの課題がある。
【0006】
また、集水、排水のために前記エプロンの下に集水桝が設置され、その上に金属製グレーチング15が設置してある箇所があり、この金属製グレーチング15上で自転車を走行することがあり、その場合には滑ってしまい自転車走行ができないとの課題があった。
【0007】
さらに、
図8に示すように、例えば、L型街渠14のエプロン部分は、集水した雨水が排水しやすいように、基端側に向かい下り勾配状に構成されている。従って、自転車道3のアスファルト面部分と前記コンクリート製L型街渠14のエプロン部分であるコンクリート面16とに段差が生じてしまい、この段差により自転車のハンドルを取られてしまうとの課題もあった。
【0008】
また、雨の日には、前記L型街渠14の上に水が流れる設計となっており、L型街渠14のエプロン部分は自転車の走行路としては使用できないとの課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−156974号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、本発明では、いわゆるL型街渠を使用せず、もってそのエプロン面において滑り自転車走行の安全性が損なわれることがなく、またL型街渠に敷設された金属製グレーチングも使用せず、もってその上で自転車を走行して滑ってしまい自転車走行ができないとの課題がなく、さらに、自転車道のアスファルト部分とコンクリート製L型街渠のエプロン部分との間に生じた段差がないので、この段差により自転車のハンドルを取られることがなく、雨の日においても、自転車の走行路として広くスペースを取ることができて安全に走行できる自転車道つき道路のスリット側溝敷設方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
歩道と車道の間に自転車道が設けられ、歩道と自転車道との間には歩道と自転車道とを分岐する縁石が敷設された自転車道つき道路につき、
スリット側溝を敷設して前記自転車道つき道路を形成する自転車道つき道路のスリット側溝敷設方法であり、
前記スリット側溝は、断面縦長の略長方形状をなし、全体としては直方体状をなし、内部には長手方向に向かって略円柱状の排水路が設けられ、該スリット側溝には、内部に設けられた排水路と上壁面外側とを連通させるスリットが設けられると共に、該スリットが設けられた断面縦長の略長方形状をなし、全体としては直方体状をなすスリット側溝の上壁面箇所には、前記上壁表面より上方に向かい凸状に突出させたスリットつき凸条が
設けられ、
前記スリット側溝は、歩道と自転車道の境界部下方に埋設され、境界部表面には、前記スリットつき凸条の上面が自転車道路面の表面と面一となって露出するよう敷設され、
前記自転車の大きさ
は、自転車本体から張り出すペダルの張り出し長さが500mm以内の大きさの自転車であり、
前記縁石は、根入れ(埋め込み深さ)により15cm乃至25cmくらいの高さになるJIS規格の縁石であり、該縁石が、前記スリット側溝における凸状に突出するスリット凸条の幅方向一方側の凹み部に載置できて、前記スリット側溝と前記縁石とがJIS規格の縁石敷設に対応できるものとされ、かつ自転車道を走行する自転車が、自転車道路面の表面と面一となって露出するよう敷設された前記スリットつき凸条の上面に乗り上げる前に、前記自転車のペダルが縁石に当たる位置及び高さの縁石としてなり、
スリットつき凸条における凸条上面の露出する幅の長さは、前記大きさの自転車の自転車本体から張り出すペダルが、前記縁石に当たるため、自転車の車輪が、スリットつき凸条の露出する凸条上面に乗り上げるおそれがなく、前記自転車が滑ることがない幅の長さにしてある、スリット側溝
を敷設する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明であれば、いわゆるL型街渠を使用せず、もってそのエプロン面において滑り自転車走行の安全性が損なわれることがなく、またL型街渠に敷設された金属製グレーチングも使用せず、もってその上で自転車を走行して滑ってしまい自転車走行ができないとの課題がなく、さらに、自転車道のアスファルト部分とコンクリート製L型街渠のエプロン部分との間に生じた段差が生じないので、この段差により自転車のハンドルを取られることがなく、雨の日においても、自転車の走行路として広くスペースを取ることができて安全に走行できるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による歩道と車道との間に自転車通行用に設けられた自転車道つき道路の構成を説明する構成説明図(その1)である。
【
図2】本発明による歩道と車道との間に自転車通行用に設けられた自転車道つき道路の構成を説明する構成説明図(その2)である。
【
図3】本発明による歩道と車道との間に自転車通行用に設けられた自転車道つき道路の構成を説明する構成説明図(その3)である。
【
図4】本発明によるスリット側溝の構成を説明する構成説明図(その1)である。
【
図5】本発明によるスリット側溝の構成を説明する構成説明図(その2)である。
【
図6】本発明によるスリット側溝の構成を説明する構成説明図(その3)である。
【
図7】本発明によるスリット側溝の構成を説明する構成説明図(その4)である。
【
図8】従来の歩道と車道との間に自転車通行用に設けられた自転車道つき道路の構成を説明する構成説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0015】
図1乃至
図7に本発明の実施例を示す。本発明は、歩道1と車道2の間に自転車道3が設けられた道路に係るものであり、当該道路に敷設するスリット側溝4の敷設方法に関する。
【0016】
まず、本発明で用いられるスリット側溝4の構成につき説明する。
図4、
図5から理解されるように、スリット側溝4は、断面が縦長の略長方形状をなし、全体としては直方体状をなして形成されている。そして、その内部には長手方向に向かって略円柱状の排水路5が設けられている。
【0017】
さらに、当該排水路5とスリット側溝4の上壁面7外側とを連通させる直線状のスリット6が設けられると共に、該直線状スリット6が設けられた上壁面7の箇所は、前記上壁面7より上方に向かい凸状に突出したスリットつき凸条8として構成されている。
【0018】
なお、排水路5と上壁面7とを連通させる直線状スリット6は、スリットつき凸状8の幅方向略中央位置に設けられており、また、スリットつき凸状8の長手方向に向かい不連続の状態にして設けられている。
【0019】
すなわち、
図6、
図7に示すようにスリットつき凸状8の長手方向において隣り合う直線状スリット6、6の端部間には前記直線状スリット6を塞ぐ様に連結部9が構成されている。そして、この連結部9はスリットつき凸条8の上面10より凹んで構成されて凹溝条となっており、前記スリットつき凸条8の耐久強度を確保すると共に、雨水などを排水路5にスムーズに導入させる流入路として機能するように構成してある(特に
図7参照)。
【0020】
ここで、当該連結部9はコンクリート製のスリット側溝4と一体に形成しても構わないし、別部材として構成し、それを直線状スリット6に嵌め込んで形成しても構わない。
【0021】
次に、このスリット側溝4の敷設方法につき説明する。
【0022】
前記スリット側溝4は、歩道1と車道2の間に自転車道3が設けられた道路において、歩道1と自転車道2の境界部下方に埋設されて敷設される。
【0023】
そして、当該スリット側溝4は、前記境界部表面に、前記スリットつき凸条8の上面10のみが露出するものとなり、またこの上面10が、自転車道2の路面の表面と面一となるように敷設されるのである。
【0024】
すなわち、
図1乃至
図3から理解される様に、凸状に突出するスリット凸条8の幅方向一方側の凹み部分には、歩道1と自転車道2とを分岐する縁石11が載置されて敷設される。
【0025】
なお、この縁石11は、通常JISで規格化されており、根入れ(埋込み深さ)により15cm乃至25cm位の高さになるよう設計されている。
【0026】
そして、本発明でのスリット側溝4は、JIS規格の縁石敷設に充分対応できる形状に設計されているのである。
【0027】
また、凸状に突出するスリット凸条8の幅方向他方側凹み部分には、自転車道2を構成すべく所定の厚さのアスファルト面12が敷設される。
【0028】
ここで、前記アスファルト面12が雨水を透過する排水性のアスファルト部材の場合は、透過した雨水を排水路5に導入する導入路13がスリット凸条8の他方側位置に設けられるが、
図2に示す様に、敷設されるアスファルト面12のアスファルト部材が透過性アスファルトでない場合は、前記導入路13を設けないスリット側溝4が用いられる。
【0029】
なお、
図2、
図3、
図4、
図6は、スリット凸条8がスリット側溝4の上面において、その幅方向略中央位置に設けられた実施例であるが、決してこの場合のみに限定されるものではなく、
図1、
図5、
図7に示すように、スリット凸条8がスリット側溝4の上面において、幅方向略中央位置ではなく、他方側へ寄せた状態のものでも構わないものである。
【0030】
以上のように形成された歩道1と車道2との間に自転車通行用に設けられた自転車道3つき道路では、たとえ自転車道3の幅が広くとれない場合であっても、縁石11の近傍位置まで自転車道3の路面とすることができる。従って、従来のL型街渠の場合のように、エプロン面を自転車が走行してスリップしたり、あるいは金属製グレーチング面を自転車が走行して走行してスリップしたりすることがない。
【0031】
しかも、スリット側溝4につき、自転車道脇側に露出状態となるのは、スリットつき凸条8の上面10のみであり、さらに、その露出する幅は、自転車本体から張り出すペダルの張り出し長さより短く形成されるものとなる。
【0032】
よって、走行中の自転車がスリットつき凸条8の上面10に乗り上げる前に、ペダルが縁石11に当たってしまい、もって自転車の車輪がスリットつき凸条8に乗り上げるおそれがなく、スリップすることもないのである。
【0033】
さらに、スリット凸条8に設けられた直線状スリット6が溜まった雨水などを従来のL型街渠の場合などよりスムーズに排水路5内に排水できることができる。
【0034】
また、自転車道つき道路の美的外観も煩雑性がなく、整理されていて美しいと言えるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 歩道
2 車道
3 自転車道
4 スリット側溝
5 排水路
6 直線状スリット
7 スリット側溝の上壁面
8 直線状スリット
9 連結部
10 スリットつき凸条の上面
11 縁石
12 自転車道のアスファルト面
13 導入路
14 L型街渠
15 金属製グレーチング
16 L型街渠のコンクリート面