特許第6150600号(P6150600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150600
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】オフセット印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20170612BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B41F33/00 210
   B41M1/06
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-94964(P2013-94964)
(22)【出願日】2013年4月30日
(65)【公開番号】特開2013-230684(P2013-230684A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】10 2012 008 666.0
(32)【優先日】2012年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ハウク
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ブック
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−344246(JP,A)
【文献】 特開2004−025521(JP,A)
【文献】 特開2011−073447(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0079160(US,A1)
【文献】 特開昭56−021860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 33/00
B41M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷インキから成る網点(5)を、印刷画像に対応してゴム胴(2)の表面に形成し、且つ前記ゴム胴(2)の長手方向軸線を中心とした1回転中に、被印刷材料(15)に転移させ、
該被印刷材料(15)における印刷のハーフトーンバリューを、網点の大きさを変えることにより所望の程度に調整するオフセット印刷方法において、
網点の大きさを、網点形成装置(4)と前記ゴム胴(2)との間の相対ずれ(16)により、所望の寸法だけ増大させることを特徴とする、オフセット印刷方法。
【請求項2】
前記網点(5)が、版胴(1)の着色された版(4)により、前記ゴム胴(2)の表面(6)に形成されるオフセット印刷機において、前記ゴム胴(2)の1回転中に、前記版(4)の表面と前記ゴム胴(2)の表面とを互いに相対移動させることにより、網点の大きさを増大させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記版胴(1)を、前記ゴム胴(2)及び圧胴(3)の駆動装置(10)とは関係無く、個別駆動装置(9)によって回転させる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
各1つの溝(7,8)を有する版胴(1)及びゴム胴(2)を使用する場合、前記溝(7,8)が対向しているときに、各回転毎に前記相対ずれ(16)を前記胴(1,2)間に生ぜしめる、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記版胴(1)が整数回回転してから、前記相対ずれ(16)を周期的に繰り返し生ぜしめる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記網点(5)が、版胴(1)の着色された版(4)により、前記ゴム胴(2)の表面(6)に形成されるオフセット印刷機において、前記相対ずれ(16)を、前記2つの胴(1,2)の一方の軸方向のずれにより生ぜしめる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
網点の大きさを、枚葉紙(15)の長さにわたって変化するように増大させる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記相対ずれ(16)の方向を、前記ゴム胴(2)の各回転毎に変えるのに対して、前記相対ずれ(16)の値は一定に保つ、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷インキから成る網点を、印刷画像に対応してゴム胴の表面に形成し、且つ前記ゴム胴の長手方向軸線を中心とした1回転中に、被印刷材料に転移させ、該被印刷材料における印刷のハーフトーンバリュー(網点面積率)を、網点の大きさを変えることにより所望の程度に調整するオフセット印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷において得られる印刷の品質は、主として重なり合って印刷される複数の分色画像の層厚さと網点の大きさとに依存している。インキ層厚さの制御又は調整は、インキ調量部材によって、印刷ゾーンの着色時に行われる。ドイツ連邦共和国特許出願公開第4413735号明細書から、印刷に関与する胴の印圧調節を変更し、場合によっては付加的に印刷インキ及び/又は湿し媒体の温度、湿し媒体の量又は湿し媒体添加物の含有量を変えることにより、網点の大きさを印刷時に制御又は調整することが公知である。網点の形状及び大きさは、印刷におけるトーンバリュー及び色の再現に影響を及ぼす。
【0003】
印刷中、被印刷材料は、複数のドラム及び胴によって印刷機を通されて運ばれる。従来のオフセット印刷機では、版胴とゴム胴が圧胴と共に、1つの歯車伝動装置によって駆動される。印刷インキを伝達する胴間の有効周は理想的ではないので、印刷画像にずれやダブリが生じ、このことは印刷方向及び印刷方向に対して横方向の網点歪みにより現れる。被印刷材料及び印刷インキを搬送する部材が適宜剛性に構成されると、不都合な網点歪みは減少され得る。更に、ずれ又はダブリを減少させるために、能動的な振動減衰措置を講じることができる。複数の胴の個別駆動装置を備えた機械の場合は、隣の胴に対する正しい有効周を測定技術的に監視且つ制御することができる。ドイツ連邦共和国特許出願公開第10246072号明細書に記載の印刷方法では、オフセット印刷機の複数の版胴を、個別駆動装置によって駆動する。印刷長さを制御するために、モータ制御により、1回転する間に周期的に、版胴を隣合うゴム胴とは異なる速度で作動させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4413735号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10246072号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、印刷品質の改良を可能にするオフセット印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明では、網点の大きさを、網点形成装置と前記ゴム胴との間の相対ずれにより、所望の寸法だけ増大させるようにした。
【0007】
有利な構成は従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、網点形成装置と、ゴム胴の表面との間の相対ずれを、意図的に生ぜしめることにより、印刷における網点の大きさを制御又は調整する。版の着色により版胴に網点が形成される場合、版の表面とゴム胴の表面との間に相対ずれを生ぜしめる。この場合、有利には、版胴を1つの個別駆動装置により駆動する。この方法は、網点がデジタル式で版胴に形成されるオフセット印刷機にも適用可能である。例えば、網点はインキジェット装置によって版胴の表面に形成され得る。
【0009】
前記方法は、1つの印刷ユニットによる1つの分色画像の印刷において、印刷前又は印刷中に、トーンバリューの増加を調節する又は変化させることを可能にする。網点の大きさを意図的に増大させることにより、ハーフトーン(網点)の着色をフルトーン(ベタトーン)の着色とは無関係に調節することができる。この方法の適用によって、層厚さの制御の他に、印刷における色の再現に影響を及ぼす別の自由度が得られる。
【0010】
版胴の直接駆動装置を備えたオフセット印刷機では、それぞれ対応配置されたゴム胴の角度位置に対する版胴の角度位置を制御することにより、各回転毎に印刷画像が、版から各ゴム胴の表面に正しく見当合わせされて転移される。前記方法では、版胴の表面と、対応配置されたゴム胴との間の相対ずれに基づいて、意図的にダブリ効果が引き起こされるので、ハーフトーンのトーンバリュー増加が生じる。印刷画像におけるフルトーンは、ほぼ影響を及ぼされないままである。直径が同じ版胴とゴム胴の、回転毎の周方向若しくは印刷方向でのずれは、有利には周期的であることが望ましく、これにより、ダブリシャドーは1つの網点を中心として常に同じ濃さとなり且つ網点の目標位置に関して方向を変更することになる。本刷りでは、一様に増加された網点階調が印刷画像に現れる。例えばハーフトーン値が40%で、60line/cmの中間トーンでは、表面間に10μmのずれが生ぜしめられ、この場合、120μmの点直径では、約3%のトーンバリュー増加が得られる。
【0011】
1つの溝を有する複数の胴を、周におけるずれの値だけ相対的にずらして回転させることは、有利には溝が対向位置している場合に行われることが望ましい。これにより、印刷画像全体がずらされて転移される、つまり、トーンバリュー増加が印刷フォーマット全体にわたって等しくなる。
【0012】
印刷におけるトーンバリュー増加が印刷長さにわたって異なって生じる場合、例えば枚葉印刷において、枚葉紙後縁部の領域のトーンバリュー増加が、枚葉紙前縁部の領域におけるよりも高い場合は、適合を介して枚葉紙後縁部及び枚葉紙前縁部におけるトーンバリュー増加を、それぞれ異なる強さで調節することができる。
【0013】
前記方法では、所望のトーンバリュー増加が達成される。印刷時に使用される版若しくは刷版は、低下されたハーフトーンバリューで形成される。意図的に生ぜしめられる網点拡大により、ハーフトーンバリューは目標値に達する。
【0014】
前記方法の実施に関して、版における網点の形状は、円形でなくてもよい。例えば、印刷画像において円形の網点が所望されている場合は、版上の網点が、印刷方向に対して横方向に見て楕円形に形成されていてよい。意図的に行われる印刷方向での網点拡大により、印刷においてはダブリシャドーに基づいて、ほぼ円形の網点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】4色オフセット印刷機の1つの印刷ユニットの一部を示した図である。
図2】版胴とゴム胴との間の相対ずれに関する線図である。
図3】網点の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0017】
図1には、オフセット印刷機の1つの印刷ユニットの版胴1、ゴム胴2及び圧胴3が示されている。版胴1は、印刷インキを受け取る複数の網点5(図3)により画像が形成された版4を支持している。図3では、網点5は円形である。本発明による方法は、あらゆる任意の網点形状で実施可能である。ゴム胴2は、ゴムブランケット6を支持している。両方の胴1,2は、各1つの溝7,8を有しており、溝7内には版4のための緊締装置が配置されており、溝8内にはゴムブランケット6のための緊締装置が配置されている。全ての胴1〜3は、同一の直径を有していて、印刷時には、それぞれ隣り合う胴1〜3と転動接触している。版胴1は、電動モータ9により直接に駆動されている。ゴム胴2及び圧胴3は、主要駆動モータ10により歯車伝動装置を介して駆動されている。印刷中、胴1〜3は、その軸線を中心として矢印11の方向に回転する。モータ9,10と、胴1,2の回転位置を検出する回転センサ12,13とは、制御ユニット14に接続している。
【0018】
印刷中、網点5はインキ装置によって着色される。インキ分裂により、網点5の印刷インキがゴムブランケット6の表面に転移される。枚葉紙15がゴム胴2と圧胴3との間のギャップ内で加圧されながら案内されると、網点5の印刷インキはインキ分裂により、枚葉紙15の表面に転移される。枚葉紙15の表面には1つの分色画像が生ぜしめられる。4色印刷の場合、印刷ユニットは4重に存在している。全ての印刷ユニットにおいて、各版胴1は対応配置されたゴム胴2若しくは圧胴3とは無関係に、独立して駆動されている。
【0019】
上で述べた装置を用いて、本発明による方法を以下のように実施することができる。
【0020】
露光装置における版4の製造時には、所定の直径Dを有する網点5が形成されており、版4におけるハーフトーンバリューは、枚葉紙15上の1つの分色画像において目標とされる値よりも低い。制御ユニット14に入力装置を介して、枚葉紙15において目標とされるハーフトーンバリューを得るために必要な、トーンバリュー増加分ΔTWZが入力される。
【0021】
トーンバリュー増加は、胴1〜3が1回転する毎に、モータ9によって版4の表面とゴムブランケット6の表面との間に相対ずれ16が生ぜしめられることにより達成される。図2の線図は、溝7,8が対向して位置している場合に、胴1,2間に相対ずれ16が生ぜしめられることを示している。図示の実施形態では、相対ずれ16は±10μmである。版4の表面とゴムブランケット6の表面とが互いに重なり合って転動する回転角度範囲17において、相対ずれ16はその都度一定に+10μm若しくは−10μmで保持される。溝7,8が対向して位置している回転角度範囲18では、相対ずれ16がモータ9によって+10μmから−10μmに切り替えられるか、若しくは−10μmから+10μmに切り替えられる。このためにモータ9は制御ユニット14によって制御され、これにより、版胴1はゴム胴2に対して僅かに先行して若しくは遅れて回転することになる。制御ユニット14では、回転センサ12,13の信号が連続的に処理されて、モータ9用の調整信号が発生される。
【0022】
図3.1〜図3.3には、相対ずれ16により生じる1つの網点5の拡大が示されている。図3.1に示した網点5は、印刷方向19で見て網点5の後方に位置するダブリシャドー20により拡大されている。前記溝範囲18内で相対ずれ16が切り替えられると、図3.2に示したように、網点5は版胴1の先行回転における網点位置に対して、印刷方向19で見て20μmだけずらされて位置することになる。網点5は、印刷方向19で見て網点5の前方に位置するダブリシャドー21により拡大されている。図3.3には、相対ずれ16が溝範囲18内で再び20μmだけ戻された状態が示されている。図3.1について説明したのと同様に、ダブリシャドー20による網点5の拡大が生ぜしめられている。
【0023】
ダブリシャドー20,21は、それぞれゴム胴2の先行回転時においてゴムブランケット6に残された網点5の残留インキから生じるものである。相対ずれ16の切替えは、胴1,2が1回転する度に行われるので、目標値ΔTWZとして制御ユニット14に入力された所望のトーンバリュー増加分に相応する網点5の拡大が得られ続ける。
【符号の説明】
【0024】
1 版胴、 2 ゴム胴、 3 圧胴、 4 版、 5 網点、 6 ゴムブランケット、 7,8 溝、 9 電動モータ、 10 主駆動モータ、 11 矢印、 12,13 回転センサ、 14 制御ユニット、 15 枚葉紙、 16 相対ずれ、 17,18 回転角度範囲、 19 印刷方向、 20,21 ダブリシャドー
図1
図2
図3