【文献】
市原清志,患者データを用いるQCの実際,臨床検査,1997年 4月15日,Vol. 41, No. 4,pp. 399-413
【文献】
J.O. Westgard,Design and assessment of average of normals (AOS) patient data algorithms to maximize run lengths for automatic process control,Clinical Chemistry,1996年,Vol. 42, No. 10,pp. 1683-1688
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特定のステージは、前記特定の疾患を有する複数の被験者の間において、前記所定の測定項目についての測定値のばらつきが、他のステージに比べて少ないステージである、請求項7に記載の検体分析装置。
被験者から採取された検体を少なくとも1つの測定項目について測定する測定部を含む検体分析装置の前記測定部の異常に関する異常情報を出力する異常検知装置であって、
前記測定部による検体の測定によって得られた測定結果を取得する取得部と、前記取得部によって取得された測定結果を記憶する記憶部と、表示部と、制御部と、を備え、
前記制御部は、前記取得部によって取得された測定結果のうち、特定の疾患を有する被験者から採取された検体についての測定結果である疾患測定結果における特定測定項目についての測定値を突発値除外範囲と比較し、前記測定値が前記突発値除外範囲内の場合に、前記測定値を異常検知用測定値として前記記憶部に記憶させるように構成されており、
前記特定測定項目は、前記特定の疾患を有する被験者の測定結果が、健常時における測定結果と同様の値を示す測定項目であり、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された複数の異常検知用測定値から統計的に値を導き出し、導き出された値を管理範囲と比較し、導き出された値が前記管理範囲外の場合に、前記測定部の異常に関する異常情報を前記表示部に表示させるように構成されている、異常検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
[検体分析装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る検体分析装置の外観を示す斜視図である。本実施の形態に係る検体分析装置1は、血液検体に含まれる白血球、赤血球、血小板等を検出し、各血球を計数する多項目血球分析装置である。
図1に示すように、検体分析装置1は、測定ユニット2と、測定ユニット2の前面側に配置された検体搬送ユニット4と、測定ユニット2及び検体搬送ユニット4を制御可能な情報処理ユニット5とを備えている。
【0035】
被験者(患者)から採取された末梢血である血液検体は、検体容器(採血管)に収容される。複数の検体容器がサンプルラックLに保持され、このサンプルラックLが検体搬送ユニット4により搬送されて、血液検体が測定ユニット2へ供給される。
【0036】
<測定ユニットの構成>
測定ユニットの構成について説明する。
図2は、測定ユニットの構成を示すブロック図である。
図2に示すように、測定ユニット2は、検体である血液を検体容器(採血管)Tから吸引する検体吸引部21と、検体吸引部21により吸引した血液から測定に用いられる測定試料を調製する試料調製部22と、試料調製部22により調製された測定試料から血球を検出する検出部23とを有している。また、測定ユニット2は、検体搬送ユニット4のラック搬送部43によって搬送されたサンプルラックLに収容された検体容器Tを測定ユニット2の内部に取り込むための取込口(
図1参照)と、サンプルラックLから検体容器Tを測定ユニット2の内部に取り込み、検体吸引部21による吸引位置まで検体容器Tを搬送する検体容器搬送部25とをさらに有している。
【0037】
図2に示すように、検体吸引部21は、吸引管211を有している。また、検体吸引部21はシリンジポンプを備えている。吸引管211は、鉛直方向に移動可能であり、下方に移動されることにより、吸引位置まで搬送された検体容器T内の血液を吸引するように構成されている。
【0038】
試料調製部22は、複数の反応チャンバ(図示せず)を備えている。また、試料調製部22は、RBC(赤血球)及びPLT(血小板)検出用の試薬(希釈液)を収容した試薬容器、HGB(ヘモグロビン)検出用の試薬を収容した試薬容器、白血球分類(DIFF)用の試薬を収容した試薬容器等の複数の試薬容器に接続されており、染色試薬、溶血剤、及び希釈液等の試薬を反応チャンバに供給することが可能である。試料調製部22は、検体吸引部21の吸引管とも接続されており、吸引管により吸引された血液検体を反応チャンバに供給することが可能である。かかる試料調製部22は、反応チャンバ内で検体と試薬とを混合撹拌し、検出部23による測定用の試料(測定試料)を調製する。
【0039】
検出部23は、RBC(赤血球)検出及びPLT(血小板)検出をシースフローDC検出法により行うことが可能である。このシースフローDC検出法によるRBC及びPLTの検出においては、検体と希釈液とが混合された測定試料の測定が行われ、これにより得られた測定データを情報処理ユニット5が解析処理することによりRBC及びPLTの数値データの取得が行われる。また、検出部23は、HGB(ヘモグロビン)検出をSLS−ヘモグロビン法により行うことが可能であり、WBC(白血球)、NEUT(好中球)、LYMPH(リンパ球)、EO(好酸球)、BASO(好塩基球)、及びMONO(単球)の検出(白血球5分類)を、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により行うことが可能であるように構成されている。白血球5分類においては、検体と、白血球5分類用染色試薬と、溶血剤と、希釈液とが混合された測定試料の測定が行われ、これにより得られた測定データを情報処理ユニット5が解析処理することによりNEUT、LYMPH、EO、BASO、MONO、及びWBCの数値データの取得が行われる。
【0040】
上記の検出部23は、図示しないフローセルを有しており、フローセルに測定試料を送り込むことでフローセル中に液流を発生させ、フローセル内を通過する液流に含まれる血球に半導体レーザ光を照射して、前方散乱光、側方散乱光及び側方蛍光を検出する構成である。
【0041】
光散乱は、血球のような粒子が光の進行方向に障害物として存在し、光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさ又は材質に関する情報を得ることができる。特に、前方散乱光からは、粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることができる。また、側方散乱光からは、粒子内部の情報を得ることができる。血球粒子にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度及び顆粒の量)に依存する。したがって、側方散乱光強度のこの特性を利用することで、白血球の分類の測定及びその他の測定を行うことができる。
【0042】
染色された血球のような蛍光物質に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光を発する。蛍光の強度はよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する情報を得ることができる。したがって、(側方)蛍光強度の差によって、白血球の分類の測定及びその他の測定を行うことができる。
【0043】
検体容器搬送部25は、検体容器Tを把持可能なハンド部25aを備えており、ハンド部25aを上下方向及び前後方向(Y方向)に移動させることにより、検体ラックLに収容された検体容器Tをハンド部25aにより把持し、検体ラックLから抜き出す。また、検体容器搬送部25は、検体容器Tを挿入可能な穴部を有する検体容器セット部25bを備えている。この検体容器セット部25bに検体容器Tがセットされ、検体容器セット部25bが移動することで測定ユニット2の内部に取り込まれる。
【0044】
検体容器セット部25bは、検体吸引部21による吸引位置へ移動可能である。検体容器セット部25bが吸引位置へ移動したときには、検体吸引部21により、セットされた検体容器Tから検体が吸引される。
【0045】
<情報処理ユニットの構成>
次に、情報処理ユニット5の構成について説明する。情報処理ユニット5は、測定ユニット2から出力された測定データを解析し、検体の分析結果を生成し、その分析結果を表示することができる。
【0046】
情報処理ユニット5は、コンピュータにより構成されている。
図3は、情報処理ユニット5の構成を示すブロック図である。情報処理ユニット5は、コンピュータ5aによって実現される。
図3に示すように、コンピュータ5aは、本体51と、表示部52と、入力部53とを備えている。本体51は、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hを備えており、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hは、バス51jによって接続されている。
【0047】
読出装置51eは、コンピュータを情報処理ユニット5として機能させるためのコンピュータプログラム54aを可搬型記録媒体54から読み出し、当該コンピュータプログラム54aをハードディスク51dにインストールすることが可能である。
【0048】
入出力インタフェース51fは、例えばUSB,IEEE1394,又はRS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース51fには、キーボード及びマウスからなる入力部53が接続されており、ユーザが当該入力部53を使用することにより、コンピュータ5aにデータを入力することが可能である。また、入出力インタフェース51fは、通信ケーブルを介して測定ユニット2及び検体搬送ユニット4に接続可能である。これにより、情報処理ユニット5は、測定ユニット2及び検体搬送ユニット4のそれぞれを制御可能となっている。
【0049】
[検体分析装置の異常検知動作]
以下、本実施の形態に係る検体分析装置1の動作について説明する。
【0050】
疾患には、上述した測定項目の中の一部について、健常時からの測定結果の変動が少ないものがある。即ち、特定の疾患を有する被験者の測定結果が、健常時における測定結果と同様の値を示す測定項目がある。例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)を含むHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症では、白血球(WBC)の数が減少する場合があるため、HIV感染症患者のWBC値は、健常時からの変動が大きい。しかしながら、赤血球(RBC)の数にはこのような影響が認められず、HIV感染症患者のRBC値は健常時からの変動がWBC値に比べて小さい。つまり、HIV感染症患者のRBC値は、健常時と概ね変わらない。また、HIV感染症では、患者間のWBC値のバラツキが大きくなるが、患者間でのRBC値のバラツキは少ない(健常者と同程度)。また、デング熱におけるRBC値及びWBC値でも、健常時からの測定値の変動が少ない。検体分析装置1は、このような疾患の性質を利用し、特定の疾患を有する被験者から採取された検体を測定した結果を用いて異常検知を実施する。本実施の形態では、HIV感染症患者のRBC測定結果を利用して、検体分析装置1のRBC測定についての異常検知を実施する場合について説明する。
【0051】
図4は、本実施の形態に係る検体分析装置1による異常検知動作の手順を示すフローチャートである。まず、被験者から採取された検体が検体分析装置1によって測定され、RBC値を含む測定結果が得られる(ステップS101)。
【0052】
具体的には、検体の測定は以下のようにして行われる。情報処理ユニット5が測定ユニット2を制御することにより、測定ユニット2が検体容器を内部に取り込み、当該検体容器から検体を吸引し、予め与えられた測定オーダにおいて指定された測定項目用の測定試料を調製し、検体を測定する。この結果得られた測定データは、測定ユニット2から情報処理ユニット5に与えられ、情報処理ユニットにより解析されて、検体の測定結果が生成される。
【0053】
得られた測定結果は、検体分析装置1の表示部52に表示される(ステップS102)。このとき、CPU51aは、測定結果とともに、当該検体がHIV感染症に罹患している被験者の検体であるかを問い合わせる疾患指定ダイアログを表示部52に表示させる。
【0054】
図5は、疾患指定ダイアログを示す図である。疾患指定ダイアログD1には、「この検体の被験者はHIV感染症に罹患していますか?」のメッセージと、2つのボタンC11、C12とが含まれている。ボタンC11、C12は、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)オブジェクトであるボタンコントロールであり、入力部53の操作によって選択することが可能である。ボタンC11には、「はい」の文字が含まれており、ユーザはボタンC11を選択することで、当該検体をHIV感染症患者の検体として指定することが可能である。また、ボタンC12には、「いいえ」の文字が含まれており、ユーザはボタンC12を選択することで、当該検体をHIV感染症患者の検体として指定しないことが可能である。
【0055】
本実施の形態では、上記のような疾患指定ダイアログD1により、HIV感染症患者の検体をユーザに指定させ、CPU51aが、このユーザの入力により測定結果の中からHIV感染症患者の測定結果を選択する。
【0056】
CPU51aは、ボタンC11及びC12の何れが選択されたかを判断する(ステップS103)。ボタンC12が選択された場合、即ち、その検体がHIV感染症患者の検体として指定されなかった場合には(ステップS103においてNO)、CPU51aは、ステップS101に処理を戻し、次の検体の測定を実行する。
【0057】
他方、ボタンC11が選択された場合、即ち、その検体がHIV感染症患者の検体として指定された場合には(ステップS103においてYES)、CPU51aは、前記測定結果に含まれるRBC値と所定の突発値除外範囲とを比較して、RBC値が突発値除外範囲に収まっているか否かを判別する(ステップS104)。
【0058】
突発値除外範囲は、HIV感染症患者のRBC値に対応して設けられており、HIV感染症患者のRBC値であればその中に収まるであろうことが期待される数値範囲である。つまり、RBC値が突発値除外範囲から外れている場合には、その検体の被験者はHIV感染症以外の疾患を有しており、そのためにRBC値が標準的なHIV感染症患者のRBC値から大きく外れてしまっていることが疑われる。この場合、被験者がHIV感染症とHIV感染症以外の疾患の両方に罹患していることが考えられる。
【0059】
RBC値が突発値除外範囲を外れている場合には(ステップS104においてNO)、CPU51aは、当該測定結果を異常検知に利用する対象に入れることなく、ステップS101に処理を戻し、次の検体の測定を実行する。
【0060】
他方、RBC値が突発値除外範囲に収まっている場合には(ステップS104においてYES)、CPU51aは、この測定結果を異常検知に利用する対象として、ハードディスク51dに記憶する(ステップS105)。このようにすることで、検体の測定結果の中から異常検知に使用する測定結果が選択される。
【0061】
次に、CPU51aは、ハードディスク51dに記憶された異常検知に利用する測定結果の数が、予め定められたデータ数(例えば、20)に達したか否かを判別する(ステップS106)。ハードディスク51dに記憶された異常検知用の測定結果の数が上記データ数に達していない場合には(ステップS106においてNO)、CPU51aは、ステップS101に処理を戻し、次の検体の測定を実行する。
【0062】
他方、ハードディスク51dに記憶された異常検知用の測定結果の数が上記データ数に達した場合には(ステップS106においてYES)、CPU51aは、ハードディスク51dから、異常検知用の測定結果のRBC値を読み出し、平均値を計算し(ステップS107)、この平均値をハードディスク51dに異常検知履歴データとして記憶させる(ステップS108)。
【0063】
さらにCPU51aは、RBC値の平均値(以下、「RBC平均値」という。)を所定の管理範囲と比較する(ステップS109)。この管理範囲は、RBC平均値がその中に入っていれば、検体分析装置1の装置状態及び試薬が正常にRBC測定が可能なものであることを保証するものである。かかる管理範囲は、過去に検体分析装置1において測定されたRBC値の平均値±2SD(標準偏差)のように、統計的手法で与えられるものであってもよいし、ユーザによって予め定められていてもよい。
【0064】
RBC平均値が管理範囲内に収まっている場合には(ステップS109においてYES)、CPU51aは、RBC平均値による管理画面を表示部52に表示させる(ステップS110)。
図6は、管理画面を示す図である。
図6に示すように、管理画面D2は、管理範囲の中心を示す線TL、上限を示す線UL、同下限を示す線LL、今回のRBC平均値及び過去のRBC平均値が示された管理グラフGを含む。ユーザは、検体分析装置1の表示部52を確認することにより、検体分析装置1において正常にRBC測定が可能であることが保証されたことを知ることができる。その後、CPU51aは、ステップS101に処理を戻し、次の検体の測定を実行する。
【0065】
他方、RBC平均値が管理範囲から外れている場合には(ステップS109においてNO)、CPU51aは、エラー情報を表示部52に表示させ(ステップS111)、ユーザに少なくとも装置及び試薬のいずれかで異常が発生したこと、即ち、検体分析装置1において正常にRBC測定が可能であることが保証されないことを通知して、処理を終了する。
【0066】
上記の如く構成したことにより、共通の疾患(HIV感染症)を有する複数の被験者のRBC値を利用して、検体分析装置1のRBC測定についての異常検知を行うことが可能となる。このため、精度管理試料及び健常者の検体(正常検体)をRBC測定についての異常検知のために必要としない。
【0067】
また、HIV感染症患者において、RBC値はWBC値に比べて健常時からの測定値の変動が少ない項目であるので、安定した値を取りやすく、かかるRBCを利用することで高精度に異常検知を行うことが可能となる。
【0068】
なお、本実施の形態においては、HIV感染症患者のみのRBC値を利用して、検体分析装置のRBC測定についての異常検知を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。上記したように、RBC値は健常時からの測定値の変動が少ないため、RBC測定についての異常検知を、HIV感染症患者及び健常者のRBC値を利用して行なってもよい。この場合、上記の実施の形態において、疾患指定ダイアログD1に代えて、HIV感染症患者の検体及び健常者の検体を指定するためのダイアログ(図示せず。)を表示するとともに、異常検知用の測定結果として、複数のHIV感染症患者のRBC値及び複数の健常者のRBC値を記憶して利用すればよい。
【0069】
また、マラリア感染症患者のRBC値においても健常時からの測定値の変動が少ないため、RBC測定についての異常検知を、HIV感染症患者及びマラリア感染症患者のRBC値を利用して行なってもよいし、さらには、HIV感染症患者、マラリア感染症患者、及び健常者のRBC値を利用して行なってもよい。
【0070】
なお、本実施の形態においては、HIV感染症患者のRBC値を利用して、検体分析装置のRBC測定についての異常検知を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。デング熱患者のRBC値及びWBC値もまた、健常時からの変動が他の測定項目に比べて少ないため、デング熱患者のRBC値又はWBC値を利用して、検体分析装置のRBC値又はWBC値についての異常検知を行う構成とすることも可能である。
【0071】
また、ユーザにHIV感染症患者の測定結果を指定させる構成としたので、異常検知に利用できるHIV感染症患者の測定結果を確実に選択することが可能となる。ユーザは、検体分析装置1による測定結果だけでなく、免疫検査、生化学検査等の他の検査結果、及び問診結果等を確認することで、HIV感染症患者を正確に選択することができる。
【0072】
(実施の形態2)
[検体分析装置の構成]
本実施の形態に係る検体分析装置は、試料調製部22に、マラリア検出用の試薬を収容した試薬容器がさらに取り付けられており、この試薬容器が反応チャンバに接続されている。吸引管により吸引された血液検体及びマラリア検出用の試薬が反応チャンバに供給され、反応チャンバ内でこれらが混合撹拌されて、マラリア検出用の測定試料が調製される。
【0073】
検出部23は、マラリア原虫の検出を、半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により行うことが可能であるように構成されている。マラリア原虫の検出においては、検体と、マラリア検出用染色試薬と、溶血剤と、希釈液とが混合された測定試料の測定が行われ、これにより得られた測定データを情報処理ユニット5が解析処理することによりマラリア原虫の数及びRBC数等の数値データの取得が行われる。具体的には、上記測定用試料においては、溶血剤の作用によって検体中の赤血球が溶血し、赤血球内に寄生しているマラリア原虫が液中に遊離している。この測定試料をフローセルに流し、そのフローセル中を流れる測定用試料にレーザ光を照射する。レーザ光を照射された測定用試料から発せられる前方散乱光及び側方散乱光を受光素子により受光・光電変換して電気信号として検出し、検出した電気信号を解析することにより検体中のマラリア原虫を検出して計数する。上記したマラリア原虫の検出方法としては、例えば、特開2005−333868号公報に記載の方法を使用できる。
【0074】
本実施の形態に係る検体分析装置のその他の構成は、実施の形態1に係る検体分析装置1の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
[検体分析装置の動作]
本実施の形態では、検体分析装置が検体の測定結果に基づいて被験者がマラリア感染症に罹患しているか否かを推定し、被験者がマラリア感染症に罹患していると推定された場合に、その測定結果を検体分析装置によって自動的に選択し、選択された測定結果を利用して、検体分析装置のRBC測定についての異常検知を実施する。マラリア感染症患者のRBC値は、健常時からの変動がWBC値及びPLT値に比べて小さい。つまり、マラリア感染症患者のRBC値は、健常時と概ね変わらない。また、マラリア感染症患者間のWBC値及びPLT値のバラツキは大きくなるが、患者間でのRBC値のバラツキは少ない(健常者と同程度)。このため、マラリア感染症患者のRBC値を利用することで、検体分析装置のRBC測定についての異常検知を精度よく行うことができる。
【0076】
図7は、本実施の形態に係る検体分析装置による異常検知動作の手順を示すフローチャートである。まず、被験者から採取された検体が検体分析装置1によって測定され、マラリア原虫数、RBC値等を含む測定結果が得られる(ステップS201)。また、この測定結果には、情報処理ユニット5によるマラリア感染症に関する推定結果が含まれている。つまり、測定データの解析処理において、情報処理装置5のCPU51aは、マラリア原虫数に基づいて、被験者がマラリア感染症に罹患しているか否かを推定する。この推定処理では、測定結果に含まれるマラリア原虫数が所定数以上である場合に、被験者がマラリア感染症に罹患していると推定され、マラリア原虫数が所定数未満である場合に、被験者がマラリア感染症に罹患していないと推定される。被験者がマラリア感染症に罹患していると推定された場合には、マラリア感染症への罹患が疑われることを示すマラリア感染推定情報が、測定結果に付加される。
【0077】
上記のようにして得られた測定結果は、検体分析装置1の表示部52に表示される(ステップS202)。CPU51aは、マラリア感染推定情報が測定結果に含まれているか否かを判別する(ステップS203)。マラリア感染推定情報が測定結果に含まれていない場合には(ステップS203においてNO)、CPU51aは、ステップS201に処理を戻し、次の検体の測定を実行する。
【0078】
他方、マラリア感染推定情報が測定結果に含まれている場合、即ち、その検体がマラリア感染症患者の検体として推定された場合には(ステップS203においてYES)、CPU51aは、前記測定結果に含まれるRBC値と所定の突発値除外範囲とを比較して、RBC値が突発値除外範囲に収まっているか否かを判別する(ステップS204)。
【0079】
突発値除外範囲は、マラリア感染症患者のRBCの値に対応して設けられており、マラリア感染症患者のRBC値であればその中に収まるであろうことが期待される数値範囲である。つまり、RBC値が突発値除外範囲から外れている場合には、その検体の被験者はマラリア感染症以外の疾患を有しており、そのためにRBC値が標準的なマラリア感染症患者のRBC値から大きく外れてしまっていることが疑われる。この場合、被験者がマラリア感染症とマラリア感染症以外の疾患の両方に罹患していることが考えられる。
【0080】
RBC値が突発値除外範囲を外れている場合には(ステップS204においてNO)、CPU51aは、当該測定結果を異常検知に利用する対象に入れることなく、ステップS201に処理を戻し、次の検体の測定を実行する。
【0081】
他方、RBC値が突発値除外範囲に収まっている場合には(ステップS204においてYES)、CPU51aは、この測定結果を異常検知に利用する対象として、ハードディスク51dに記憶する(ステップS205)。このようにすることで、検体の測定結果の中から異常検知に使用する測定結果が選択される。
【0082】
上記のように選択した測定結果に含まれるRBC値を用いて、情報処理ユニット5のCPU51aは、検体分析装置のRBC測定についての異常検知を実行する。ステップS206乃至211の処理は、実施の形態1において説明したステップS106乃至111と同様であるので、その説明を省略する。
【0083】
上記の如く構成したことにより、共通の疾患(マラリア感染症)を有する複数の被験者のRBC値を利用して、検体分析装置のRBC測定についての異常検知を行うことが可能となる。このため、精度管理試料及び健常者の検体(正常検体)をRBC測定についての異常検知のために必要としない。
【0084】
また、検体分析装置において自動的にマラリア感染症に罹患していることを推定する構成としたため、ユーザがマラリア感染症であるか否かを判断して、判断結果を検体分析装置に入力しなくても、異常検知に利用するマラリア感染症患者の測定結果を自動的に選択することが可能となる。
【0085】
(実施の形態3)
[検体分析装置の構成]
本実施の形態に係る検体分析装置の構成は、実施の形態1に係る検体分析装置1の構成と同様であるので、同一構成要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
[検体分析装置の動作]
疾患には、上述した測定項目の中の一部について、疾患のステージ毎に異なる傾向を示すものがある。例えば、HIV感染症では、PLT値が健常時に比して減少傾向を示すが、ステージ毎にその程度が異なっている。つまり、ステージ1(最初期のステージ)においてはPLT値が健常時に比して減少傾向を示すものの、その程度は小さく、ステージ1患者間でのPLT値のバラツキも比較的少ない。ステージが進行するとともに、PLT値の減少傾向が大きくなり、同一ステージの患者間でのPLT値のバラツキも大きくなる。終末期であるステージ4では、PLT値の減少傾向が最も大きく、ステージ4患者間でのPLT値のバラツキは最大となる。本実施の形態に係る検体分析装置は、このような疾患の性質を利用し、特定の疾患の特定のステージの被験者から採取された検体を測定した結果を用いて異常検知を実施する。本実施の形態では、ステージ1のHIV感染症患者のPLT値を利用して、検体分析装置のPLT測定についての異常検知を実施する場合について説明する。
【0087】
図8は、本実施の形態に係る検体分析装置による異常検知動作の手順を示すフローチャートである。まず、被験者から採取された検体が検体分析装置1によって測定され、PLT値を含む測定結果が得られる(ステップS301)。
【0088】
得られた測定結果は、検体分析装置1の表示部52に表示される(ステップS302)。CPU51aは、測定結果とともに、当該検体がHIV感染症のステージ1患者の検体であるかを問い合わせる疾患ステージ指定ダイアログを表示部52に表示させる。
【0089】
図9は、疾患ステージ指定ダイアログを示す図である。疾患ステージ指定ダイアログD3には、「この検体の被験者はHIV感染症のステージ1の患者ですか?」のメッセージと、2つのボタンC31、C32とが含まれている。ボタンC31、C32は、GUIオブジェクトであるボタンコントロールであり、入力部53の操作によって選択することが可能である。ボタンC31には、「はい」の文字が含まれており、ユーザはボタンC31を選択することで、当該検体をHIV感染症のステージ1患者の検体として指定することが可能である。また、ボタンC32には、「いいえ」の文字が含まれており、ユーザはボタンC32を選択することで、当該検体をHIV感染症のステージ1患者の検体として指定しないことが可能である。
【0090】
本実施の形態では、上記のような疾患ステージ指定ダイアログD3により、HIV感染症のステージ1患者の検体をユーザに指定させ、CPU51aが、このユーザの入力により測定結果の中からHIV感染症のステージ1患者の測定結果を選択する。
【0091】
CPU51aは、ボタンC31及びC32の何れが選択されたかを判断する(ステップS303)。ボタンC32が選択された場合、即ち、その検体がHIV感染症のステージ1患者の検体として指定されなかった場合には(ステップS303においてNO)、CPU51aは、ステップS301に処理を戻し、次の検体の測定を実行する。
【0092】
他方、ボタンC31が選択された場合、即ち、その検体がHIV感染症のステージ1患者の検体として指定された場合には(ステップS303においてYES)、CPU51aは、前記測定結果に含まれるPLT値と所定の突発値除外範囲とを比較して、PLT値が突発値除外範囲に収まっているか否かを判別する(ステップS304)。
【0093】
突発値除外範囲は、HIV感染症のステージ1患者のPLTの値に対応して設けられており、HIV感染症のステージ1患者のPLT値であればその中に収まるであろうことが期待される数値範囲である。つまり、PLT値が突発値除外範囲から外れている場合には、その検体の被験者はHIV感染症以外の疾患又はHIV感染症のステージ2乃至4の何れかを有しており、そのためにPLT値が標準的なHIV感染症のステージ1患者のPLT値から大きく外れてしまっていることが疑われる。
【0094】
PLT値が突発値除外範囲を外れている場合には(ステップS304においてNO)、CPU51aは、当該測定結果を異常検知に利用する対象に入れることなく、ステップS301に処理を戻し、次の検体の測定を実行する。
【0095】
他方、PLT値が突発値除外範囲に収まっている場合には(ステップS304においてYES)、CPU51aは、この測定結果を異常検知に利用する対象として、ハードディスク51dに記憶する(ステップS305)。このようにすることで、検体の測定結果の中から異常検知に使用する測定結果が選択される。
【0096】
上記のように選択した測定結果に含まれるPLT値を用いて、情報処理ユニット5のCPU51aは、検体分析装置のPLT測定についての異常検知を実行する。ステップS306乃至311の処理は、RBC値に代えてPLT値を使用する他は、実施の形態1において説明したステップS106乃至111と同様であるので、その説明を省略する。
【0097】
上記の如く構成したことにより、共通のステージの疾患を有する複数の被験者のPLT値を利用して、検体分析装置のPLT測定についての異常検知を行うことが可能となる。このため、精度管理試料及び健常者の検体(正常検体)をPLT測定についての異常検知のために必要としない。
【0098】
なお、本実施の形態においては、HIV感染症のステージ1患者のPLT値を利用して、検体分析装置のPLT測定についての異常検知を行なう構成について述べたが、これに限定されるものではない。マラリア感染症患者のPLT値、HGB値、及びヘマトクリット値は、健常時に比して減少傾向を示すが、病期毎にその程度及び患者間での数値のばらつきが異なっている。また、結核患者のWBC値は、健常時よりも増加する傾向を示すものの、病期毎にその程度及び患者間での数値のばらつきが異なっている。さらに、デング熱患者のPLT値についても、健常時よりも減少する傾向を示すものの、病期毎にその程度及び患者間でも数値のばらつきが異なっている。このため、健常時からの変動程度が小さく、数値のバラツキの比較的少ない病期における、マラリア感染症患者のPLT値、HGB値、RBC値、及びヘマトクリット値、結核患者のWBC値、並びにデング熱患者のPLT値を利用して、検体分析装置のHGB値、RBC値、及びヘマトクリット値、WBC値、並びにPLT値についての異常検知を行なう構成とすることも可能である。
【0099】
(実施の形態4)
本実施の形態は、複数の検体分析装置と、検体分析装置を管理する異常検知装置とを備える検体分析システムに関する。
【0100】
[検体分析システムの構成]
図10は、本実施の形態に係る検体分析システムの構成を示す模式図である。
図10に示すように、検体分析システム400は、複数の検体分析装置1,1,…と、異常検知装置410とを備えている。検体分析装置1,1,…及び異常検知装置410は、同一の医療施設(病院、検査センター等)に設置されている。検体分析装置1,1,…と異常検知装置410とは、LAN等の通信ネットワーク420を介して、互いにデータ通信可能に接続されている。
【0101】
検体分析装置1の構成は、実施の形態1に係る検体分析装置1の構成と同様であるので、その説明を省略する。
【0102】
異常検知装置410の構成について説明する。
図11は、異常検知装置410の構成を示すブロック図である。
【0103】
異常検知装置410は、コンピュータ410aによって実現される。
図11に示すように、コンピュータ410aは、本体411と、表示部412と、入力部413とを備えている。本体411は、CPU411a、ROM411b、RAM411c、ハードディスク411d、読出装置411e、入出力インタフェース411f、通信インタフェース411g、及び画像出力インタフェース411hを備えており、CPU411a、ROM411b、RAM411c、ハードディスク411d、読出装置411e、入出力インタフェース411f、通信インタフェース411g、及び画像出力インタフェース411hは、バス411jによって接続されている。
【0104】
読出装置411eは、コンピュータを異常検知装置410として機能させるためのコンピュータプログラム414aを可搬型記録媒体414から読み出し、当該コンピュータプログラム414aをハードディスク411dにインストールすることが可能である。
【0105】
[検体分析システムの動作]
次に、本実施の形態に係る検体分析システムの動作について説明する。
【0106】
本実施の形態に係る検体分析システムは、各検体分析装置によって測定された特定の疾患を有する被験者の検体についての測定結果を利用して、検体分析装置の異常検知(内部精度管理)を実施する。
【0107】
図12は、本実施の形態に係る異常検知装置410における異常検知動作を示すフローチャートである。まず、被験者から採取された検体が検体分析装置1によって測定され、RBC値を含む測定結果が得られる。検体分析装置1のCPU51aは、通信インタフェース51gを介して、測定結果を異常検知装置410へ送信する。
【0108】
異常検知装置410は、検体分析装置1から送信された測定結果を受信する(ステップS401)。異常検知装置410のCPU411aは、受信した測定結果を、表示部412に表示させる(ステップS402)。このとき、CPU411aは、測定結果とともに、当該検体がHIV感染症に罹患している被験者の検体であるかを問い合わせる疾患指定ダイアログを表示部52に表示させる。なお、この疾患指定ダイアログは、実施の形態1において説明した疾患指定ダイアログD1と同様であるので、その説明を省略する。
【0109】
CPU411aは、ボタンC11及びC12の何れが選択されたかを判断する(ステップS403)。ボタンC12が選択された場合、即ち、その検体がHIV感染症患者の検体として指定されなかった場合には(ステップS403においてNO)、CPU411aは、ステップS401に処理を戻し、次の測定結果の受信を待機する。
【0110】
他方、ボタンC11が選択された場合、即ち、その検体がHIV感染症患者の検体として指定された場合には(ステップS403においてYES)、CPU411aは、前記測定結果に含まれるRBC値と所定の突発値除外範囲とを比較して、RBC値が突発値除外範囲に収まっているか否かを判別する(ステップS404)。この突発値除外範囲は、実施の形態1において説明したものと同様であるので、その説明を省略する。
【0111】
RBC値が突発値除外範囲を外れている場合には(ステップS404においてNO)、CPU411aは、当該測定結果を異常検知に利用する対象に入れることなく、ステップS401に処理を戻し、次の測定結果の受信を待機する。
【0112】
他方、RBC値が突発値除外範囲に収まっている場合には(ステップS104においてYES)、CPU411aは、この測定結果を当該検体分析装置1(つまり、この測定結果の送信元の検体分析装置1)の異常検知に利用する対象として、ハードディスク411dに記憶する(ステップS405)。このようにすることで、検体の測定結果の中から異常検知に使用する測定結果が選択される。
【0113】
次に、CPU411aは、ハードディスク411dに記憶された同一の検体分析装置の異常検知に利用する測定結果の数が、予め定められたデータ数(例えば、20)に達したか否かを判別する(ステップS406)。ハードディスク411dに記憶された同一の検体分析装置の異常検知用の測定結果の数が上記したデータ数に達していない場合には(ステップS406においてNO)、CPU411aは、ステップS401に処理を戻し、次の測定結果の受信を待機する。
【0114】
他方、ハードディスク411dに記憶された同一の検体分析装置1の異常検知用の測定結果の数が上記したデータ数に達した場合には(ステップS406においてYES)、CPU411aは、ハードディスク411dから、同一の検体分析装置1の異常検知用の測定結果のRBC値を読み出し、平均値を計算し(ステップS407)、ハードディスク411dに、検体分析装置1(つまり、上記の測定結果の送信元の検体分析装置1)の異常検知履歴データとして記憶させる(ステップS408)。
【0115】
さらにCPU411aは、RBC値の平均値(以下、「RBC平均値」という。)を所定の管理範囲と比較する(ステップS408)。この管理範囲は、RBC平均値がその中に入っていれば、検体分析装置1の装置状態及び試薬が正常にRBC測定が可能なものであることを保証するものである。かかる管理範囲は、過去にこの医療施設内の検体分析装置1,1,…において測定されたRBC値の平均値±2SD(標準偏差)のように、統計的手法で与えられるものであって、この医療施設の内部精度管理用の管理範囲である。なお、管理範囲を、ユーザによって予め設定する構成とすることも可能である。
【0116】
RBC平均値が管理範囲内に収まっている場合には(ステップS408においてYES)、CPU411aは、管理グラフを含む管理画面を表示部412に表示させるとともに、管理グラフを示す管理結果情報を、上述した測定結果の送信元の検体分析装置1へと送信する(ステップS409)。検体分析装置1では、管理結果情報が受信されると、管理グラフを含む管理画面が表示部52に出力される。なお、管理画面については、実施の形態1において説明した管理画面D2と同様であるので、その説明を省略する。ユーザは、異常検知装置410の表示部412又は検体分析装置1の表示部52を確認することにより、検体分析装置1において正常にRBC測定が可能であることが保証されたことを知ることができる。その後、CPU411aは、ステップS401に処理を戻し、次の測定結果の受信を待機する。
【0117】
他方、RBC平均値が管理範囲から外れている場合には(ステップS408においてNO)、CPU411aは、エラー情報を表示部412に表示させるとともに、上述した測定結果の送信元の検体分析装置1へと送信する(ステップS410)。検体分析装置1では、エラー情報が受信されると、同情報が表示部52に出力される。ユーザは、異常検知装置410の表示部412又は検体分析装置1の表示部52を確認することにより、少なくとも装置状態及び試薬のいずれかに異常が発生したこと、即ち、検体分析装置1において正常にRBC測定が可能であることが保証されないことを知ることができる。ステップS409の処理の後、CPU411aは、処理を終了する。
【0118】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態1乃至4においては、特定の疾患を有する被験者の測定結果を選択した後に、測定結果と突発値上下範囲とを比較し、特定の疾患以外の疾患を有する被験者の測定結果を、異常検知用の測定結果から除外する構成について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、ユーザが特定の疾患を有する被験者の測定結果を指定するときに、特定の疾患と共に他の疾患を有する疑いがあると判断される被験者の測定結果を指定せず、特定の疾患のみを有すると判断される被験者の測定結果だけを指定するようにすれば、測定結果を突発値除外範囲と比較することなく、指定された測定結果をそのまま異常検知用の測定結果として選択するようにしてもよい。
【0119】
また、上述した実施の形態1乃至4においては、異常検知に利用する測定結果を選択するために、突発値除外範囲と比較する測定項目(実施の形態1ではRBC値)と、異常検知を行う測定項目(実施の形態1ではRBC値)とが同一の場合について説明したが、これに限定されるものではない。デング熱患者では、赤血球数及び白血球数の両方において健常時から測定値の変動が少ないので、例えば、異常検知に利用する測定結果を選択するために、突発値除外範囲と比較する測定項目をWBC値とし、異常検知を行う測定項目をRBC値とするなど、両測定項目を異ならせることも可能である。
【0120】
また、上述した実施の形態4においては、検体分析装置の異常検知として、医療施設における検体分析装置の内部精度管理を実施する構成について述べたが、これに限定されるものではない。異常検知装置を他の医療施設の検体分析装置ともデータ通信可能に接続し、複数の医療施設による検体分析装置の異常検知(外部精度管理)を実施する構成とすることも可能である。
【0121】
また、上述した実施の形態1乃至4においては、検体分析装置1を多項目血球分析装置としたが、これに限定されるものではなく、種々の検体分析装置に本発明を適用することができる。例えば、尿分析装置のような他の検体分析装置に、本発明を適用することが可能である。
【0122】
また、上述した実施の形態1乃至4においては、特定の疾患(例えば、HIV感染症)を有する被験者から得られた特定の測定項目(例えば、RBC値)の測定結果のみを利用して、検体分析装置のRBC測定についての異常検知を行なったが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、被験者の測定結果を種々の疾患毎に記憶しておき、そのうちの一の疾患の測定結果が所定のデータ数に達したときに、当該一の疾患に対応する複数の測定結果を用いて、異常検知を行なってもよい。
【0123】
この場合、情報処理ユニットのCPUは、例えば、当該一の疾患がHIV感染症である場合には、異常検知対象の測定項目としてRBC値を設定し、当該一の疾患がデング熱である場合には、異常検知対象の測定項目としてRBC値及びWBC値を設定するというように、当該一の疾患に応じて、異常検知の対象となる測定項目及び測定項目数を自動的に変更して設定することが好ましい。
【0124】
さらに、情報処理ユニットのCPUは、当該一の疾患がHIV感染症である場合には、HIV感染症患者のRBC値に対応する所定の管理範囲を設定し、当該一の疾患がマラリア感染症である場合には、マラリア感染症患者RBC値に対応する所定の管理範囲を設定するというように、当該一の疾患に応じて、所定の管理範囲を自動的に変更して設定することが好ましい。なお、この場合、上記した所定の管理範囲は、ハードディスク等の記憶装置に予め記憶されていることが好ましい。
【0125】
また、上述した実施の形態1乃至4においては、所定の管理範囲との比較対象として、RBC値等の複数の測定値の平均値を使用したが、本発明はそのような実施の形態に限定されない。例えば、複数の測定値の中央値、最頻値、及び、複数の測定値のうち最高値と最低値を除外して残った測定値の平均値等、複数の測定値から統計的に導き出される値であればよい。