(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150644
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】鋼索鉄道の線路導滑車
(51)【国際特許分類】
B61B 9/00 20060101AFI20170612BHJP
B61B 12/02 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
B61B9/00 A
B61B12/02 J
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-148675(P2013-148675)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-20500(P2015-20500A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 充良
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−266054(JP,A)
【文献】
特開昭51−002862(JP,A)
【文献】
実開昭49−135952(JP,U)
【文献】
実公昭45−007206(JP,Y1)
【文献】
実公昭57−039433(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 9/00
B61B 12/00 − 12/12
F16H 55/32 − 55/56
B66C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼索鉄道の線路湾曲部に配置されて索条を支承する線路導滑車であって、該線路導滑車は、固定したローラーピンに回転可能に支持される輪芯と、該輪芯の外周に外嵌されたゴムタイヤと、前記輪芯に固着して前記ゴムタイヤを両側方から挟持する下側フランジ及び該下側フランジよりも外径の大きな上側フランジと、該上側フランジの外周部に固着したガイドリングと、を備え、前記ゴムタイヤは硬質合成ゴムにより形成されており、前記ガイドリングは合成樹脂により形成されていることを特徴とする鋼索鉄道の線路導滑車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼索鉄道の線路に配置され、線路に沿って索条を支承して誘導するための線路導滑車に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼索鉄道は、索条の両端に車両を連結し、この索条を山頂に設置した滑車に巻き掛けて、滑車を回転駆動することにより車両を地上に敷設したレールに沿ってつるべ式に運行するようにしたものであって、その多くは、高所景勝地への観光や山頂にある神社仏閣への参拝のための登坂用交通機関として利用されている。
【0003】
図1は、ケーブルカーの概要を示した説明図である。図において、傾斜面に敷設されたレール10上には二台の車両11が配置され、このレール10に沿って山麓側停留場と山頂側停留場の間を往復走行する。各車両11は、一条の索条16の両端部にそれぞれ連結されており、索条16の中間部は山頂側に設けられた対動滑車12及び原動滑車13に巻き掛けられている。
【0004】
原動滑車13は、原動装置14の駆動部15により時計回転、または、反時計回転の両方向へ回転駆動され、これにより索条16が移動する。二台の車両11の位置関係は、一の車両11が山頂側の停留場に位置するときに他の車両11が山麓側の停留場に位置する関係にあり、索条16の移動とともに各車両11、11は、互いに逆方向に走行するいわゆるつるべ方式で運行される。
【0005】
線路中には、索条16を支承するために所定の間隔で線路導滑車17が配置されている(例えば、特許文献1(第1図)参照)。この線路導滑車17は、線路形状が平面方向に直線状の場合には垂直方向へ直立して回転するように設置され、線路形状が平面方向に湾曲する場合には、索条16の湾曲に対応して傾けて設置されている(例えば、特許文献2(第5図)参照)。また、現在運行に供されている鋼索鉄道は、大正時代末期から昭和時代初期にかけて建設された設備が多数であり、通常これらの設備においては、鉄鋼製の線路導滑車17(例えば、非特許文献1)が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−258854号公報
【特許文献2】特開平1−266054号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】JIS E 9202−1993(鋼索鉄道用線路導滑車)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように索条を鉄鋼製の線路導滑車で支承した場合には、鉄鋼どうしが接触するために索条の摩耗が早くなるとともに、騒音が大きいという問題があった。また、上記のような接触の問題により、耐食性に優れるメッキ仕様の索条を使用することができない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、鋼索鉄道の線路中の特に線路が平面方向へ湾曲する部分に配置される線路導滑車において、索条を好適に誘導するとともに、線路導滑車との接触による索条の摩耗や損傷を軽減することのできる鋼索鉄道の線路導滑車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、鋼索鉄道の線路湾曲部に配置されて索条を支承する線路導滑車であって、該線路導滑車は、固定したローラーピンに回転可能に支持される輪芯と、該輪芯の外周に外嵌されたゴムタイヤと、前記輪芯に固着して前記ゴムタイヤを両側方から挟持する下側フランジ及び該下側フランジよりも外径の大きな上側フランジと、該上側フランジの外周部に固着したガイドリングと、を備え、前記ゴムタイヤは硬質合成ゴムにより形成されており、前記ガイドリングは合成樹脂により形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硬質合成ゴム製のゴムタイヤにより索条を支承するため、接触により索条が摩耗することを軽減できる。また、索条が支承位置から離れた後、再び支承位置に復帰する場合に、索条に多少の振れがあっても支承位置まで索条を良好に誘導でき、またこの際に索条を誘導するガイドリングは合成樹脂製であるので、索条が損傷することを軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。
図2は、線路湾曲部の平面図、
図3は、線路湾曲部の正面図である。地上には2列のレール10が所定の間隔で平行に配置され、図の下側から上側に向けて右側へ湾曲して敷設されている。両レール10の間には、2本の索条16がレール10と略平行して延線されている。この索条16は、山頂側停留場の駆動装置に巻き掛けて折り返された一条の索条16であり、この索条16の両端には、それぞれ車両11(
図3参照)を連結し、車両11が互いに反対方向へ進行するように牽引する。両レール10間には、所定の間隔で線路導滑車17が配置され、索条16が所定の位置となるように誘導及び支承している。
図3に示すように、この箇所における線路導滑車17は、線路の湾曲外側方向へ傾斜して設置されている。
【0014】
図4は、線路導滑車17の正面断面図であり、
図5は、
図4におけるA−A矢視図である。線路中においてレール10の下に敷き並べられた前後の枕木(図示せず)の間には、支持ビーム18a、18bを掛け渡して個設し、この支持ビーム18a、18b上に、ローラーピン19の両端部を支持する軸受け20a、20bを固着している。ローラーピン19には、中央部に位置するスリーブ21と、この両脇に配置されるベアリング22とが外嵌され、さらにこのベアリング22の外側にベアリングカラー23とカラー24とが順次外嵌されている。ローラーピン19の両端には、軸受け20a、20bの内径より大きな外径で円盤状に形成された押さえ板25をボルト26で固着し、このボルト26を締め込むことによりローラーピン19に外嵌した各部材が密着してベアリング22が位置決めされている。
【0015】
ベアリング22の外輪には、輪芯27が外嵌されている。この輪芯27は、鉄鋼により形成されたものであってもよいが、アルミニウム等のより比重の小さな材料を採用すれば、軽量化の面でより好適である。輪芯27の内周側両側面には、ベアリング押さえ28をボルト29により固着している。このベアリング押さえ28は、ベアリングカラー23側にオイルシール30を備えるとともに、輪芯27の内周内側へ突出する部位が形成されており、この部位がベアリング22に当接して輪芯27の横方向の位置が固定されている。
【0016】
輪芯27の外周面にはゴムタイヤ31が外嵌され、このゴムタイヤ31を挟み込むように下側フランジ32と上側フランジ33がボルト34によって輪芯27に固着されている。上側フランジ33は、下側フランジ32に比して厚さを厚く、また外径を大きく形成されている。ゴムタイヤ31は硬質合成ゴムで形成されたものであって、この外周面は中央部付近が最小径となるように形成されており、断面形状において中央部付近が円弧形状に形成されるとともに、この円弧から下側フランジ32及び上側フランジ33の外周部へ傾斜して延びる溝形状に形成されており、この形状により索条16はゴムタイヤ31の中央部に誘導される。
【0017】
ゴムタイヤ31の上側フランジ33側の外周部は、外径が下側フランジ32の外径よりもやや大きな外径となる位置で寸断されており、この外周部の外側円周にはガイドリング35が取り付けられている。このガイドリング35は、ナイロン等の合成樹脂により形成されており、断面形状において内側の側面がゴムタイヤ31の溝の傾斜と連続するように傾斜した形状に形成されている。上側フランジ33の側面には、ガイドリング35の形状に合わせて凹状に溝36が形成されており、ガイドリング35はこの溝36に嵌合し、ボルト37により上側フランジ33に固着されている。また、ボルト37の位置には、上側フランジ33及びガイドリング35ともに座ぐり孔が形成されており、ボルト37及びナットが上側フランジ33及びガイドリング35の両側面から突出しないようになっている。ガイドリング35の内径は下側フランジ32の外径より大きいので、これを交換するにあたっては、ガイドリング35を下側フランジ32側から取り外すことができ、全体を分解することなく容易に交換することができる。
【0018】
図6は、索条16と線路導滑車17との位置関係図である。16bは車両11に索条16が連結されている位置であり、16aは車両11が離れた位置にあるときに線路導滑車17が索条16を支持する状態の位置である。
図6において運転時の状態を説明すると、まず、車両11が当該線路導滑車17の位置よりも山麓側に位置している場合には、索条16は16aの位置にあり線路導滑車17に支持されている。車両11が上昇してきてこの位置へ近づくと、索条16は斜め上方の16bの方向へと徐々に浮き上がり、車両11が線路導滑車17を通過するときに車両11との連結位置16bまで索条16が離れ、車両11が通過した後は索条16が無い状態となる。
【0019】
続いて、車両11が山頂方向から下降してきて線路導滑車17の位置に達すると、索条16が車両11との連結位置16bに位置し、この後、車両11が遠ざかるのにともなって、索条16は斜め下方の16aの位置まで徐々に下降し線路導滑車17に支持される。このときに、運行の状況によっては索条16に多少の振れを伴うことがあるが、上記したように上側フランジ33を大きな外径で構成しているので、このような場合であっても上側フランジ33及びガイドリング35によって、索条16を16a方向へ良好に誘導することができる。また、上側フランジ33の外周部に備えたガイドリング35は、合成樹脂により形成されているので、索条16がガイドリング35と接触しても索条16の損傷や摩耗は軽減される。
【符号の説明】
【0020】
10 レール
11 車両
12 対動滑車
13 原動滑車
14 原動装置
15 駆動部
16 索条
16a、16b 位置
17 線路導滑車
18a、18b 支持ビーム
19 ローラーピン
20a、20b 軸受け
21 スリーブ
22 ベアリング
23 ベアリングカラー
24 カラー
25 押さえ板
26 ボルト
27 輪芯
28 ベアリング押さえ
29 ボルト
30 オイルシール
31 ゴムタイヤ
32 下側フランジ
33 上側フランジ
34 ボルト
35 ガイドリング
36 溝
37 ボルト