特許第6150659号(P6150659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150659
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】屋根の劣化判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   G01N17/00
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-165188(P2013-165188)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-34735(P2015-34735A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清隆
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−133359(JP,A)
【文献】 特開2008−175647(JP,A)
【文献】 特開2010−032318(JP,A)
【文献】 特開2012−112940(JP,A)
【文献】 特開平08−313423(JP,A)
【文献】 特開平02−264843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
E04D 3/00
E04D 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野地板の劣化の程度を判定する屋根の劣化判定方法であって、
野地板の反発速度比を検出する検出工程と、
前記反発速度比から野地板の劣化の程度を判定する判定工程と、
を具備する屋根の劣化判定方法。
【請求項2】
前記野地板の反発速度比は、前記野地板を支持する垂木の際で検出する、
請求項1に記載の屋根の劣化判定方法。
【請求項3】
前記野地板の反発速度比は、前記野地板の端部を除く部分で検出する、
請求項1又は請求項2に記載の屋根の劣化判定方法。
【請求項4】
前記野地板の反発速度比は、前記野地板の複数個所で検出する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の屋根の劣化判定方法。
【請求項5】
前記判定工程は、
予め作成された前記野地板の反発速度比と釘の保持力との関係を示す第一マップを用いて、前記検出工程において検出された野地板の反発速度比から釘の保持力を判定する保持力判定工程を含む、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の屋根の劣化判定方法。
【請求項6】
前記判定工程は、
予め作成された通常の条件下における前記野地板の釘の保持力の経年劣化の様子を示す第二マップを用いて、屋根の実際の築年数及び前記保持力判定工程において判定された釘の保持力から、通常の条件下における前記野地板の劣化に対する実際の前記野地板の劣化の程度を判定する劣化比較工程を含む、
請求項5に記載の屋根の劣化判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根の劣化判定方法の技術に関し、より詳細には、屋根を構成する野地板の劣化の程度を判定する方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根の劣化判定方法の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、異なる時期に屋根の上方から撮影された当該屋根の画像を比較し、画素値の変化から屋根の劣化(錆の発生等)の程度を判定することができる。
しかし、特許文献1に記載の技術は、工場や倉庫等の鋼板やめっき鋼板を屋根材として用いている建築物には適用可能であるものの、その他の建築物には適用することが困難である。
【0004】
特に、図6に示すように、野地板101にルーフィング102を敷き、その上に瓦103を葺いた屋根(瓦葺きの屋根)では、以下で述べるように屋根の外観からはその劣化の程度を判定することは困難である。
【0005】
このような瓦葺きの屋根においては、ルーフィング102が劣化(硬化)して、瓦103を固定している釘104が刺された部分の防水性が低下すると、釘104を伝って雨水がルーフィング102と野地板101との間へと浸入する。当該雨水は、徐々に野地板101内へと浸入し、当該野地板101を劣化させる。このようにして野地板101が劣化した場合、野地板101の上方は瓦103によって覆われているため、屋根の外観(上方からの目視や撮影等)から野地板101の劣化の程度を判定することは困難である。
【0006】
また、小屋裏側(屋根の下方)から野地板を観察し、当該野地板に残った水の跡(水の浸入具合)から野地板の劣化の程度を判定する方法も考えられる。しかし、劣化がかなり進んだ状態で初めて野地板に水の跡が確認されるため、この方法では早期の劣化の程度の判定が困難である。そこで、小屋裏側から野地板の含水率を測定器具(含水率計)を用いて計測し、計測された含水率から劣化の程度を推定する方法も考えられるが、この方法では雨の日に野地板の含水率が上昇してしまうため、正確な劣化の程度の判定が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5090062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、野地板の劣化の程度を容易に判定することが可能な屋根の劣化判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、野地板の劣化の程度を判定する屋根の劣化判定方法であって、野地板の反発速度比を検出する検出工程と、前記反発速度比から野地板の劣化の程度を判定する判定工程と、を具備するものである。
【0011】
請求項2においては、前記野地板の反発速度比は、前記野地板を支持する垂木の際で検出するものである。
【0012】
請求項3においては、前記野地板の反発速度比は、前記野地板の端部を除く部分で検出するものである。
【0013】
請求項4においては、前記野地板の反発速度比は、前記野地板の複数個所で検出するものである。
【0014】
請求項5においては、前記判定工程は、予め作成された前記野地板の反発速度比と釘の保持力との関係を示す第一マップを用いて、前記検出工程において検出された野地板の反発速度比から釘の保持力を判定する保持力判定工程を含むものである。
【0015】
請求項6においては、前記判定工程は、予め作成された通常の条件下における前記野地板の釘の保持力の経年劣化の様子を示す第二マップを用いて、屋根の実際の築年数及び前記保持力判定工程において判定された釘の保持力から、通常の条件下における前記野地板の劣化に対する実際の前記野地板の劣化の程度を判定する劣化比較工程を含むものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、野地板の劣化の程度を容易に判定することができる。
【0018】
請求項2においては、反発速度比を計測する際の野地板のたわみを極力少なくすることができ、ひいては野地板の劣化の程度をより正確に判定することができる。
【0019】
請求項3においては、反発速度比を計測する際の野地板のたわみを極力少なくすることができ、ひいては野地板の劣化の程度をより正確に判定することができる。
【0020】
請求項4においては、複数個所の検出結果を用いることで、野地板の劣化の程度をより正確に判定することができる。
【0021】
請求項5においては、釘の保持力を用いて野地板の劣化の程度を判定することができる。
【0022】
請求項6においては、通常の条件下において想定される野地板の劣化と比較して、判定対象となる野地板がどの程度劣化しているかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】劣化の判定の対象となる屋根の概略構成を示した斜視図。
図2】(a)本実施形態に係る屋根の劣化判定方法の工程を示した図。(b)判定工程の内容をより詳細に示した図。
図3】野地板を小屋裏側から見た図(図1におけるA矢視図)。
図4】(a)第一マップを示した図。(b)第二マップを示した図。
図5】第一基準値及び第二基準値が記された第一マップを示した図。
図6】従来の瓦葺きの屋根の浸水の様子を示した断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、図1を用いて、屋根1の構造の概略について説明する。
【0025】
屋根1は、棟木2、大桁4、垂木6及び野地板8等を具備する。屋根1の一番高い位置において水平方向に架け渡された棟木2から、屋根1の一番外側において棟木2と平行に架け渡された大桁4にわたるように、複数の垂木6が取り付けられる。垂木6は、互いに所定間隔を置いて配置される。垂木6の上には、屋根1の下地となる野地板8が敷き詰められる。野地板8は、適宜の箇所に釘(不図示)を打つことで、垂木6に固定される。このようにして敷き詰められた野地板8の上に、図示しない防水用のルーフィング(アスファルトルーフィング)が敷かれ、さらのその上から図示しない瓦を葺くことで、瓦葺きの屋根1が構成される。
【0026】
次に、図2から図4までを用いて、本実施形態に係る屋根1の劣化判定方法について説明する。
【0027】
図2(a)に示すように、屋根1の劣化判定方法は、検出工程S100及び判定工程S200から構成される。
【0028】
検出工程S100は、野地板8の反発速度比を検出する工程である。以下では、当該検出工程S100について具体的に説明する。
【0029】
検出工程S100においては、小屋裏側(下方)から計測機器10を用いて野地板8の反発速度比が検出される。
【0030】
ここで、計測機器10は、計測対象となるもの(本実施形態においては、野地板8)の反発速度比を検出することが可能な機器である。また、反発速度比とは、計測機器10が有する検出体で野地板8の表面を打撃し、当該検出体が野地板8の表面を打撃する際の速度と、当該検出体が野地板8の表面から反発する(はねかえる)際の速度と、の比である。計測機器10は、野地板8を前記検出体で打撃し、当該野地板8の反発速度比を検出することができる。
【0031】
図3に示すように、野地板8の反発速度比は、当該野地板8の垂木6際(垂木6に可能な限り近い位置)の位置P1、位置P2及び位置P3でそれぞれ検出される。すなわち、野地板8のうち、隣り合う垂木6の中間部近傍の領域T1では、野地板8の反発速度比の検出は行われない。これは、野地板8が固定されている垂木6から離れれば離れるほど、計測機器10による反発速度比の検出の際に野地板8がたわみ易く、検出精度が低下してしまうためである。
【0032】
また、同様の理由(野地板8のたわみが発生し易いこと)から、野地板8の端部近傍の領域T2では、野地板8の反発速度比の検出は行われない。
【0033】
また、野地板8の反発速度比は、複数の位置(本実施形態においては、位置P1、位置P2及び位置P3の3箇所)でそれぞれ検出される。このように複数の位置で検出することで、検出ミスが発生したことを発見し易くすることができる。具体的には、3つの検出値のうち1つだけ大きく異なる値が得られた場合、当該検出はミスであると考えられる。また、反発速度比を4箇所以上検出する場合も同様に検出ミスを発見することができる。さらに、反発速度比を2箇所で検出する場合であっても、互いに大きく異なる検出値が得られた場合、いずれかが検出ミスであると考えられるため、再度検出を行い、正確な検出値を得ることができる。
【0034】
また、野地板8の反発速度比を複数の位置で検出し、それらの平均値を検出値として用いることで、各位置での検出の際に発生する測定誤差を平均化し、検出値の精度を高めることもできる。本実施形態においては、3箇所で検出された反発速度比を平均した1つの値(平均値)を、検出値(機器値M)として用いるものとする。
【0035】
検出工程S100において、対象となる野地板8の反発速度比を検出した後、判定工程S200に移行される。
【0036】
判定工程S200は、検出工程S100において検出された機器値M(反発速度比)から、野地板8の劣化の程度を判定する工程である。図2(b)に示すように、判定工程S200は、さらに保持力判定工程S201及び劣化比較工程S202から構成される。
【0037】
保持力判定工程S201は、野地板8の釘の保持力Hを判定する工程である。以下では、当該保持力判定工程S201について具体的に説明する。
【0038】
保持力判定工程S201においては、予め作成された第一マップを用いて、検出工程S100において検出された野地板8の機器値M(反発速度比)から当該野地板8の釘の保持力Hが判定される。
【0039】
ここで、釘の保持力Hとは、野地板に打ち込まれた釘を引き抜く際に必要な力の値である。当該釘の保持力Hは、野地板の性能の1つを示すものであり、当該野地板の材質や劣化の程度によって異なる値を取るものである。
【0040】
また、第一マップは、図4(a)に示すように、野地板の機器値M(反発速度比)と当該野地板の釘の保持力Hとの関係を示したものである。第一マップは、計測機器10を用いて機器値Mが検出された野地板に対して、釘の保持力Hを検出するための試験(釘の引き抜き試験)を行うことで(又は、シミュレーション解析等で)、作成することができる。当該第一マップは予め作成される。
【0041】
第一マップが示すように、野地板の機器値M(反発速度比)と釘の保持力Hとの間には一定の関係性がある。よって、当該第一マップに、本実施形態の検出工程S100において検出された機器値Mを当てはめることで、野地板8の釘の保持力Hを判定することができる。
【0042】
保持力判定工程S201において、機器値Mから野地板8の釘の保持力Hが判定された後、劣化比較工程S202に移行される。
【0043】
劣化比較工程S202は、通常の条件下における野地板の劣化に対する、実際の野地板8の劣化の程度を判定する工程である。以下では、当該劣化比較工程S202について具体的に説明する。
【0044】
劣化比較工程S202においては、予め作成された第二マップを用いて、屋根1の築年数Y及び保持力判定工程S201において判定された釘の保持力Hから、野地板8の劣化の程度が判定される。
【0045】
ここで、第二マップは、図4(b)に示すように、通常の条件下における野地板の釘の保持力Hの経年劣化の様子を示したものである。「通常の条件」とは、一般的な環境(天気や気温等)を意味するものであり、野地板の劣化に特別な影響を与える特殊な要因(例えば、極端に高い気温や、極端に強い風雨(異常気象)等)がない条件を意味する。第二マップは、一般的な環境における野地板の釘の保持力Hの経年劣化の様子をシミュレーション解析を用いて算出することで(又は、試験を行うことで)、作成することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、野地板を劣化させる主な要因は気温であるものとし、第二マップは所定の気温(通常の条件)での野地板の釘の保持力Hの経年劣化の様子を示したものとする。
【0047】
第二マップが示すように、野地板は年数の経過と共に劣化するため、当該野地板の釘の保持力Hも年数が経過するごとに低下(経年劣化)していく。第二マップに示した釘の保持力Hの経年劣化(曲線L)は、通常の条件下で想定されるものである。このため、実際の野地板8の釘の保持力Hが、当該野地板8の築年数における第二マップの曲線Lよりも上方に位置する(大きい)場合、当該野地板8の劣化の程度は通常よりも小さいと判定することができる。また、実際の野地板8の釘の保持力Hが、当該野地板8の築年数における第二マップの曲線Lよりも下方に位置する(小さい)場合、当該野地板8の劣化の程度は通常よりも大きいと判定することができる。
【0048】
以下では、保持力判定工程S201及び劣化比較工程S202について、具体例を用いて説明する。
【0049】
図4(a)に示すように、築年数Y1の屋根1において、一の野地板8(以下、単に「第一の野地板8」と記す)の反発速度比を検出(検出工程S100)した結果、機器値MとしてM1が得られたものとする。また、他の野地板8(以下、単に「第二の野地板8」と記す)の反発速度比を検出した結果、機器値MとしてM2(M1<M2)が得られたものとする。
【0050】
保持力判定工程S201において、図4(a)に示す第一マップを用いて、第一の野地板8の機器値M1に対応する釘の保持力HがH1であると判定される。また、第二の野地板8の機器値M2に対応する釘の保持力HがH2(H2<H1)であると判定される。
【0051】
次に、劣化比較工程S202において、図4(b)に示す第二マップを用いて、屋根1の築年数Y1における第一の野地板8及び第二の野地板8の釘の保持力H1及び保持力H2が、曲線Lと比較される。
【0052】
本実施形態において、築年数Y1における曲線L上の保持力Hの値はHtである。
第一の野地板8の釘の保持力H1は、保持力Htよりも大きい。従って、第一の野地板8の劣化は、通常の条件下における劣化よりも進行していない、すなわち良好な状態であると判定することができる。
一方、第二の野地板8の釘の保持力H2は、保持力Htよりも小さい。従って、第二の野地板8の劣化は、通常の条件下における劣化よりも進行している、すなわち不良な状態であると判定することができる。
【0053】
以上の如く、本実施形態に係る屋根1の劣化判定方法は、
野地板8の劣化の程度を判定する屋根1の劣化判定方法であって、
小屋裏側から野地板8の反発速度比を検出する検出工程S100と、
前記反発速度比から野地板8の劣化の程度を判定する判定工程S200と、
を具備するものである。
このように構成することにより、野地板8の劣化の程度を容易に判定することができる。
【0054】
また、野地板8の反発速度比は、野地板8を支持する垂木6の際で検出するものである。
このように構成することにより、反発速度比を計測する際の野地板8のたわみを極力少なくすることができ、ひいては野地板8の劣化の程度をより正確に判定することができる。
【0055】
また、野地板8の反発速度比は、野地板8の端部を除く部分で検出するものである。
このように構成することにより、反発速度比を計測する際の野地板8のたわみを極力少なくすることができ、ひいては野地板8の劣化の程度をより正確に判定することができる。
【0056】
また、野地板8の反発速度比は、野地板8の複数個所で検出するものである。
このように構成することにより、複数個所の検出結果を用いることで、野地板8の劣化の程度をより正確に判定することができる。例えば、極端に他の検出結果(検出値)と異なる検出結果が得られた場合には、当該検出はミスであると判断することができる。また、複数個所の検出結果の平均値を検出値として用いることで、検出値の精度を高めることもできる。
【0057】
また、判定工程S200は、
予め作成された野地板8の反発速度比と釘の保持力Hとの関係を示す第一マップを用いて、検出工程S100において検出された野地板8の反発速度比から釘の保持力Hを判定する保持力判定工程S201を含むものである。
このように構成することにより、釘の保持力Hを用いて野地板8の劣化の程度を判定することができる。
【0058】
また、判定工程S200は、
予め作成された通常の条件下における野地板8の釘の保持力Hの経年劣化の様子を示す第二マップを用いて、屋根1の実際の築年数Y及び保持力判定工程S201において判定された釘の保持力Hから、通常の条件下における野地板8の劣化に対する実際の野地板8の劣化の程度を判定する劣化比較工程S202を含むものである。
このように構成することにより、通常の条件下において想定される野地板8の劣化と比較して、判定対象となる野地板8がどの程度劣化しているかを判定することができる。これによって、判定対象となる野地板8の劣化が、築年数Yに照らし合わせて妥当な劣化であるか否かを判定することができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、検出工程S100において、野地板8の反発速度比を3箇所で検出するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、2箇所や4箇所以上で検出することも可能である。また、1箇所で検出することも可能であるが、検出精度を向上させるために複数個所で検出することが望ましい。
【0060】
また、本実施形態においては、検出工程S100において、野地板8の反発速度比を検出する際、1本の垂木6の左右一側のみで検出するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、左右両側で検出することも可能であり、検出箇所は任意に選択することが可能である。
【0061】
また、本実施形態においては、保持力判定工程S201において野地板8の釘の保持力Hを判定した後、さらに劣化比較工程S202において築年数Yに照らし合わせて妥当な劣化であるか否かを判定するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、単に保持力判定工程S201において判定された野地板8の釘の保持力Hを用いて劣化の程度を判定することも可能である。
この場合、例えば図5に示すように、劣化の程度を判定する際の基準となる第一基準値Ha及び第二基準値Hbを予め定め、釘の保持力Hが第一基準値Ha以上である場合は「異常なし」、釘の保持力Hが第二基準値Hb以上かつ第一基準値Ha未満である場合は「劣化が発生している」、釘の保持力Hが第二基準値Hb未満である場合は「著しく劣化している」、等のように、野地板8の劣化の程度を段階的に判定することも可能である。
【0062】
また、各工程における種々の判定(例えば、保持力判定工程S201における、機器値Mに基づく釘の保持力Hの判定等)は、制御装置(パソコン等)を用いて自動的に行われる構成としても良い。
【符号の説明】
【0063】
1 屋根
2 棟木
4 大桁
6 垂木
8 野地板
10 計測機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6