(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施の形態において、本発明に係る加熱調理器を、誘導加熱による調理鍋載置部を左右手前に二口と中央奥側に一口設け、内部に調理室を有する、システムキッチンなどに組み込んで使用するビルトイン型の誘導加熱調理器(IHクッキングヒーター)に適用した場合を例に説明する。
尚、以下に示す図面の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図において、同一の構成には同一の符号を付している。
【0010】
実施の形態1.
[加熱調理器100の構成]
図1及び
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100を示す斜視図である。
図1及び
図2において、加熱調理器100の外郭は、筐体1と、この筐体1の上部を覆うトッププレート3から構成されている。
トッププレート3は、ステンレスなどの金属からなる筐体上枠3aを骨格となるフレームとし、筐体上枠3aの内方中央に板状の結晶化ガラス3bが嵌め込まれ、前面側の上面には上面操作部4aが位置し、後部右側には筐体吸気口5及び後部左側には筐体排気口6が形成されている。筐体吸気口5及び筐体排気口6には、吸排気口カバー7によって覆われている。
また、筐体1の内部には、グリル調理等を行う調理室20が設けられている。
【0011】
トッププレート3の上面には、鍋などの被加熱物(図示せず)が載置される載置部9が設けられている。本実施の形態1では、トッププレート3の前面側右、背面側中央、及び前面側左、の3箇所に載置部9が設けられている。
筐体1内のトッププレート3の下方には、各載置部9に対向する位置に、載置部9に載置される被加熱物を加熱するための加熱手段として誘導加熱コイルが設けられている。加熱手段としては、誘導加熱コイルのほか、例えばラジエントヒーター等の電気ヒーターを用いることができるが、具体的な加熱手段はこれらに限定されない。
また、本実施の形態1では、トッププレート3上においても加熱調理を行う加熱調理器を例に示しているが、トッププレート3上において加熱調理を行うための加熱手段は必要に応じて搭載すればよく、調理室20における加熱調理のみを行う加熱調理器としてもよい。
【0012】
また、トッププレート3には、液晶画面やLED等の視覚的な表示手段を備えた表示部8が設けられている。
表示部8は、加熱調理器100の動作状態、操作部4に対する入力内容等を表示するとともに、使用者に対して加熱調理器100の状態等を報知する報知手段として機能する。
尚、本実施の形態1では、報知手段として表示部8を設けた例を示すが、表示部8に代えてあるいはこれに加えて、音声で報知を行うブザーやスピーカ等の報知手段を備えてもよい。
【0013】
操作部4(4a,4b)は、加熱調理器100における加熱動作の設定を受け付けるための操作ボタンやスイッチ、エンコーダー等で構成されている。
本実施の形態1では、上面操作部4aに加え、筐体1の右側前面にも前面操作部4bが設けられている。尚、操作部4は、上記の構成に限定するものではなく、例えば、静電容量スイッチを用いたタッチパネルにより構成してもよい。
【0014】
筐体吸気口5は、加熱調理器100の内部に設けられた発熱する各種部品(以下、発熱部品)を冷却するために、冷却風を筐体1の内部に導入するための開口部である。筐体排気口6は、加熱調理器100の内部の各種部品を冷却した後の冷却風及び調理室20からの排気を、加熱調理器100の外部に排出するための開口部である。
通常の使用状態においては、筐体吸気口5及び筐体排気口6は、
図1に示すように吸排気口カバー7によって覆われている。
【0015】
吸排気口カバー7は、通気性を有するパンチングメタル又は格子状の金属部材で構成されていて通気性があり、冷却風の吸気及び排気、並びに調理室20からの排気は、吸排気口カバー7をスムースに通過する。
尚、本実施の形態において、筐体吸気口5は、加熱調理器100の上面に位置しているが、筐体1の背面(後面)や側面に設けてもよい。
【0016】
図6、
図7、
図9も加えて参照すると、筐体1の前面の左側には、調理室扉21が設けられている。
この調理室扉21は、前面に形成された扉取っ手21aを押し引きすることで、筐体1内に設けられた調理室20の前面開口部20aを開閉自在に覆う扉である。扉取っ手21aは、下方に向けて開口21bしており、この開口21bに手を入れて調理扉21の開閉を行う。
調理室扉21には、調理室内の左右の側壁202にそれぞれ固定して設けられた固定レール203に対して、前後(調理室の奥行き方向)にスライドする一対の移動レール211に取り付けられる。
【0017】
そして、この左右一対の移動レール211には、両方の移動レール211を掛け渡すように、皿受部材211aが設けられ、この皿受部材211aの上に、調理物を載せる調理皿23が載置される。
このように構成することで、調理室扉21を手前に引き出すことで、調理皿23を調理室20の内部から引き出すことができる。また、調理室扉21は、調理室20及び調理室扉21自身の清掃等のメンテナンスを容易にするため、移動レール211から着脱自在に構成されている。
尚、本実施の形態では、移動レール211に設けられた皿受部材211aに受皿23を載せて、受皿23を調理室20に出し入れ可能にしているが、受皿23を調理室の下面205上を摺動可能に構成して、受皿23を出し入れ可能にしても良い。このように構成すれば、固定レール203及び移動レール211を用いなくて済む。
【0018】
以上のような、本実施の形態1の調理室20、操作部4、及び表示部8の配置は一例であり、上記に記載の形態に限るものではない。例えば、調理室20を筐体1の中央や右側に寄せて配置してもよい。
また、操作部4を、トッププレート3と筐体1の前面の両方に設けるのではなく、いずれかの位置にのみ設けてもよい。
【0019】
次に、
図3を用いて、加熱調理器の筐体1の内部について説明する。
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器100の筐体1内部の主要部の斜視図であり、加熱調理器100から、トッププレート3、吸排気口カバー7、及びトッププレート3に載置される被加熱物を加熱するための加熱手段を取り外した状態を示している。
図3に示すように、筐体1の内部は、仕切板10によって概ね左右に仕切られており、一方の収容空間(
図2の紙面右側)には基板ユニット11が収容され、他方の収容空間(
図2の紙面左側)には調理室20が収容されている。
【0020】
尚、図示しないが、基板ユニット11と調理室20の上側には、筐体1の内部を上下に仕切る上下仕切板が配置され、この上下仕切板の上に表示部8や誘導加熱コイル等の加熱手段が配置される。
【0021】
基板ユニット11は、内部に収容空間を有する基板ケース111を有する。
この基板ケース111の内部には、加熱調理器100を構成する発熱部品に冷却風を送るための冷却ファン、トッププレート3に載置される被加熱物を加熱するための誘導加熱コイルに高周波電力を供給するインバータ回路、及び調理室20を含め加熱調理器100を構成する各部を制御するためのマイコンや制御回路等の電子部品が実装された電子回路基板等が収容されている。
尚、
図2では、基板ユニット11内に収容される部品は図示していない。また、本実施の形態1では、加熱調理器100の動作を制御する機能部品の集合体を、制御手段と称する。
【0022】
基板ケース111の上面には、複数の冷却風吹出口12が開口している。基板ユニット11内に設けられた冷却ファンが動作すると、筐体1の外部の空気が筐体吸気口5から筐体1内に吸い込まれ、吸い込まれた空気は基板ケース111内に流入する。
基板ケース111内に流入した空気は、冷却ファンにより吸引されて送出され、冷却風としてインバータ回路及び電子回路基板を冷却した後、冷却風吹出口12から基板ケース111の外側へ吹き出される。
【0023】
冷却風吹出口12から吹き出された冷却風は、筐体1の後部に向かって筐体1内を流れ、その過程において、基板ユニット11及び調理室20の上に配置される誘導加熱コイル等の加熱手段を冷却する。加熱手段を冷却した後の冷却風は、筐体排気口6から筐体1の外部へと排出される。
【0024】
調理室20は、調理物の被加熱物を収容する収容空間を内部に有し、前面を開口している。調理室20の前面開口は、
図1に示した調理室扉21によって開閉自在に覆われる。
調理室20の上には吸引ダクト30が設けられ、調理室20の背面にはコンベクションユニット40が設けられている。
調理室20、吸引ダクト30、及びコンベクションユニット40は互いに連通している。また、コンベクションユニット40には、調理室20内の空気を排気する調理室排気ダクト41が設けられている。
【0025】
次に、
図4及び
図6を参照して、調理室20について説明する。
図4は、実施の形態1に係る調理室20、コンベクションユニット40の斜視図であり、一部を分解して示している。
図6は、実施の形態1に係る調理室20、吸引ダクト30、及びコンベクションユニット40の概略断面図である。
【0026】
調理室20は、略直方体の外形を成している。調理室20の外郭のうち、天面を構成する部分を上壁201、左右両側の壁を側壁202、前面開口と対向する壁を後壁203と称する。
調理室20の内部の上方には、調理室20内を上方から加熱する上ヒーター22が設けられている。本実施の形態1の上ヒーター22は、抵抗発熱体であるシーズヒーターである。
【0027】
この上ヒーター22は、調理室20の幅方向及び奥行き方向に複数回折り曲げられた形状を有しており、調理室20内の幅方向及び奥行き方向において広範囲に加熱することができる。
上ヒーター22の端子部221は、調理室20の後壁203の右側に設けられた開口部から、外部へ突出している。上ヒーター22の端子部221は、基板ユニット11内の電子回路基板に配線接続され、上ヒーター22の加熱の有無や加熱量は、制御手段によって制御される。
【0028】
尚、本実施の形態1では、調理室20内を上方から加熱する上方加熱手段としてシーズヒーターからなる上ヒーター22を設ける例を示したが、シーズヒーターに代えて、遠赤外線ヒーター、近赤外線ヒーター、又はカーボンヒーター等を用いてもよい。
また、調理室20内に上ヒーター22を設けるのではなく、調理室20の上壁201の上側にフラットヒーターや誘導加熱コイルを設け、これらにより調理室20の上壁201を加熱してもよい。調理室20内の被加熱物を、放射又は空気の熱伝達で上方から加熱できる手段であれば、上ヒーター22として任意の構成を採用することができる。
【0029】
調理室20の内部の下方には、被加熱物から滴下する油や汁を受けるための受皿23が設けられている。
受皿23は、調理室20の内部から取り外すことができるように構成されている。受皿23の外周部には周壁が設けられており、被加熱物から滴下した油や汁を受皿23内に溜めることができる。
受皿23には、調理物が載置される調理台としての調理網24が、着脱自在に載置されている。
尚、受皿23及び調理網24の詳しい構造については後述する。
【0030】
調理室20の後壁203には、背面吸込口25と、この背面吸込口25よりも低い位置に設けられた吹出口26とが開口している。調理室20は、背面吸込口25及び吹出口26を介して、コンベクションユニット40の内部と連通している。
背面吸込口25は、吸引ダクト30を介して吸引される調理室20内の空気を、コンベクションユニット40に流入させるための開口部である。
【0031】
吹出口26は、コンベクションユニット40から送られる熱気を調理室20内に吹き出すための開口部である。吹出口26から調理室20内に吹き出された熱気により、被加熱物が加熱される。
【0032】
調理室扉21の下部には、調理室20内と連通する吸気用開口部29が設けられている。吸気用開口部29は、調理室排気ダクト41を経て排気される調理室20内の空気量に相当する量の空気を、調理室20内に補うためのものである。
吸気用開口部29は、本実施の形態1では、調理室扉21の下部であって前面から使用者が調理室扉21を見たときに調理室扉21の取っ手によって隠れる位置に、設けられている。このようにすることで、吸気用開口部29が使用者に視認されにくく、意匠性がよい。
【0033】
(吸引ダクト30)
図6を参照して、吸引ダクト30を説明する。
吸引ダクト30は、調理室20内の空気を、コンベクションユニット40内に導く為の通風路であり、大まかには上面ダクト31と背面ダクト32とによって構成されている。
上面ダクト31は、調理室20の上壁201の上に設けられており、上壁201の手前側から奥側に向かって延びる略直線状の通風路を内部に形成する。上面ダクト31の下面は、調理室20の上壁201によって構成されている。
【0034】
上壁201の手前側には、上面ダクト31への空気の流入口となる上面吸込口27が開口しており、上壁201の奥側には、上面ダクト31からの空気の流出口となる連通口28が開口している。
上面吸込口27は、調理室20の奥行き方向中央よりも手前側(調理室扉21側)に開口している。上面ダクト31の一端側に設けられた上面吸込口27から上面ダクト31内に流入した空気は、上面ダクト31の他端側に設けられた連通口28を通って背面ダクト32に流入する。
【0035】
背面ダクト32は、調理室20の上壁201に設けられた連通口28と、後壁203に設けられた背面吸込口25とを結ぶ通風路である。背面ダクト32は、後壁203と背面ダクト32内部との間に通風路を形成する。
背面ダクト32は、下方から上方に向かって調理室20の内部方向(前面方向)に突出するように傾斜した傾斜面を有する背面ダクト前壁321と、この背面ダクト前壁321の側端部から背面側に向かって延び後壁203に接続される背面ダクト側壁322とを備えている。背面ダクト32の上端において後壁203との間に形成される開口部320aは、上壁201に設けられた連通口28に接続される。
上面ダクト31と背面ダクト32とによって、上面吸込口27から連通口28を経て背面吸込口25に至る通風路が形成される。
【0036】
背面吸込口25の周囲の後壁203であって、背面ダクト32と対向する部分は、後方に向かって凹んでいる。この凹んだ部分を凹部204と称する。背面ダクト32内の後壁203に凹部204が形成されたことにより、背面ダクト32と後壁203(凹部204)との間の空間の容積が拡大されている。
【0037】
上面ダクト31の入口である上面吸込口27には、触媒体33が設けられている。
触媒体33は、複数の開口部を有する触媒体支持材34によって上壁201に固定されている。触媒体33は、通風可能な小孔を有しており、調理室20から上面ダクト31内に流入する空気に含まれる汚染物質の少なくとも一部を吸着して酸化分解し、空気の清浄度を高める機能を発揮する。
尚、触媒体33は、
図4に示すように上壁201の下面に取り付けられていてもよいし、上面ダクト31の内部に一部又は全部が挿入されていてもよい。
【0038】
触媒体33には、酸化触媒が添着されており、上ヒーター22により加熱され触媒活性を得て、空気が通過するときに油煙や臭気成分等の物質を吸着して酸化分解を行い、空気を浄化する。
触媒体33に添着される酸化触媒としては、白金、パラジウム、マンガン等のいずれかまたはすべてを含んだものが用いられる。低温活性の白金やマンガンを含む触媒を用いることで、より高い浄化性能を得ることができる。
【0039】
触媒体33は、上壁201に設けられた上面吸込口27内に設置されており、上ヒーター22によって加熱可能な位置となっている。
上ヒーター22によって触媒体33の温度を高めることで、触媒体33での汚染物の分解に係る化学反応速度が速まり、より多くの汚染物質が除去され、排気の清浄度を高めることができる。
【0040】
上ヒーター22によって触媒体33を加熱することができるので、触媒体33を加熱するための専用の加熱手段を設ける必要もない。
本実施の形態1では、上から見たときに触媒体33と上ヒーター22の少なくとも一部が重なるようにすることで、触媒体33と上ヒーター22とを近接配置し、触媒体33が上ヒーター22からの放射を受けることができるようにしている。
尚、触媒体33の触媒活性を得ることができるように触媒体33及び上ヒーター22の配置を決定すればよい。
【0041】
(コンベクションユニット40)
図4、
図6、及び
図8を参照してコンベクションユニット40の構成を説明する。
図8は、実施の形態1に係るコンベクションユニット40の斜視図である。
コンベクションユニット40は、調理室20内の空気を吸い込んで加熱し、加熱した空気を再び調理室20に供給するためのものである。
コンベクションユニット40は、背面吸込口25が開口するカバー443と加熱室後壁421に囲まれた内部に収容空間を有する加熱室42と、加熱室42内に収容されるコンベクションファン43及びコンベクションヒーター44と、コンベクションファン43を回転させるモーター45と、加熱室42の後方に設けられモーター45を収容するモーター収容ケース46とを備える。
【0042】
加熱室42を構成する加熱室後壁421の上部には、調理室排気ダクト41が接続されている。加熱室42の内部と調理室排気ダクト41は連通している。調理室排気ダクト41の出口側は、筐体排気口6に接続され、調理室排気ダクト41から排出される排気は筐体排気口6から筐体1の外部へと流出する。
【0043】
加熱室42は、調理室20の後壁203に設けられた吹出口26を、後壁203の背面側から覆っている。すなわち、加熱室42の内部に、吹出口26のすべてが配置されている。
図8に示すように、本実施の形態1の加熱室42は、上部の幅よりも下部の幅の方が大きく構成されており、この幅が拡大された加熱室42の下部に対向して、吹出口26が配置される。
【0044】
コンベクションファン43は、モーター45の回転軸と固定され、モーター45の動作により回転する。コンベクションファン43は、空気を吸引する中央部分が、調理室20の後壁203に設けられた背面吸込口25に対面するようにして、加熱室42内に配置されている。
コンベクションファン43が回転すると、その中央部から空気が吸引され、吸引された空気は羽根の外周部から送出される。モーター45とコンベクションファン43は、吸引ダクト30を介して吸い込んだ調理室20内の空気を、吹出口26を介して調理室20へ送る送風手段として機能する。
【0045】
モーター45は、DCモーター又は誘導モーターである。モーター45は、回転軸が後から前に向かって略水平の向きになるように設置されており、モーター45の回転軸には、加熱室42内に設けられたコンベクションファン43が取り付けられている。
調理室20内における加熱調理動作中は、モーター45の回転の有無や回転数等が制御手段によって制御される。
尚、モーター45は、モーター収容ケース46の内部に、モーター45を加熱室42の背面に固定するためのモーター支持台47と共に収容されている。
【0046】
コンベクションヒーター44は、加熱室42内を加熱する加熱室加熱手段である。本実施の形態1では、コンベクションヒーター44は、シーズヒーターで構成されており、加熱室42内のコンベクションファン43を囲むように設けられている。
【0047】
コンベクションヒーター44の端子部441は、加熱室後壁421の右側に設けられた開口部から、外部へ突出している。
図4に示すように、コンベクションヒーター44の端子部441と上ヒーター22の端子部221はともに、調理室20の右側に配置されている。コンベクションヒーター44の端子部441は、基板ユニット11内の電子回路基板に配線接続され、コンベクションヒーター44の加熱の有無や加熱量は、制御手段によって制御される。
尚、本実施の形態1では、コンベクションヒーター44としてシーズヒーターを用いる例を示すが、セラミックヒーター、ニクロム線ヒーター、ハロゲンランプヒーター、カーボンヒーター等のガラス管ヒーターを用いてもよい。
【0048】
また、コンベクションヒーター44は、その少なくとも一部が前後方向において吹出口26と重なるように配置して、コンベクションヒーター44と吹出口26とが近接配置してもよい。
このようにコンベクションヒーター44を吹出口26に近づけて配置することで、コンベクションヒーター44により加熱された空気温度をなるべく低下させることなく吹出口26から吹き出すことができる。
従って、調理室20内の被加熱物の加熱効率を高めることができる。尚、
図8に示すコンベクションヒーター44の形状及び配置は一例であり、図示のものに限定されない。
【0049】
本実施の形態1では、コンベクションユニット40は、調理室20の背面の左側に配置されているので、調理室20の背面の右側のスペースに、上ヒーター22の端子部221及びコンベクションヒーター44の端子部441を配置することができる。
また、上ヒーター22やコンベクションヒーター44を制御する制御手段となる基板ユニット11が設けられる基板ケース111は、調理室20の右側に位置する。
このような配置により、上ヒーター22の端子部221及びコンベクションヒーター44の端子部441が、基板ケース11の近くに配置されているので、加熱調理器100を組み立てる際に、上ヒーター22やコンベクションヒーター44と基板ユニット11をつなぐ配線の結線作業が容易である。
【0050】
尚、調理室20の左右方向におけるコンベクションユニット40の配置は、実施の形態1で例示したものに限定されない。例えば、コンベクションユニット40を調理室20の背面の中央に配置してもよい。
また、上ヒーター22の端子部221及びコンベクションヒーター44の端子部441の配置についても、実施の形態1で例示したものに限定されない。
【0051】
(調理網及び受皿について)
ここで、本願発明の要部について、
図5〜
図7、
図9を参照して詳しく説明する。
受皿23には、調理物が載置される調理台(焼き網)としての調理網24が、着脱自在に載置されている。
調理網24は、矩形状の縁部24aと棒状の線材24bから成り、左右方向に対向する縁部24aを架け渡すように複数の線材24bが並べられて縁部24aに固定されることで、平板状の調理網が構成されている。そして、調理物を載せる調理網24の載置面241は、この複数の線材24bが並べられて配置された部分となる。
【0052】
尚、調理網24を構成する材料は、棒状のステンレス鋼を用いるが、耐熱性のある素材で調理に適した毒性のない素材であればステンレス鋼以外でもよく、また、素材の表面に非粘着性や防汚性を備えた無機セラミックコーティング剤等を塗布してもよい。
なお、調理網24の載置面241の形状は図示のものに限定されず、格子状の焼網や、前後方向に延びる棒状部材を備えた焼網、パンチングメタル等、任意のものを採用することができる。
【0053】
次に、受皿23は、底部23aを取り囲むように側壁23bが立設された上方に向けて開口する矩形状の皿である。
受皿23の前側及び左右の側壁23bには、底部23aから上方に立ち上がった側壁23bを受皿23の外方向に折り曲げることにより、第1の段部23cが形成される。さらに、この第1の段部23cから上方に立ち上がった壁部23bを受皿23の外方向に折り曲げることにより、第2の段部23dが形成される。
【0054】
そして、壁部23bは、第2の段部23dから上方に向けて立ち上がり、開口縁23fへと至る。
このように、壁部23bを形成することで、受皿23の内側に第1の段部23cと第2の段部23dが設けられる。尚、第1の段部23cと第2の段部23dは、それぞれ、左右の側壁から前側の側壁に至り、底部23aからの高さが等しく構成されている。このように、各段部は、前後方向及び左右方向に至る段となっている。
【0055】
次に、受皿23の後ろ側に位置する側壁23bには、後方に向けて開口する受皿23の内部へとコンベクションヒーター44からの高温の空気(「高温の空気」を熱気と称する場合がある)を導入するための導入開口23eが形成されている。導入開口23eは、左右に広がる幅と第1の段部23c(下側の段部)より下方に至る開口領域となっている。つまり、第1の段部23cに調理網24が載せられた状態において、調理網24より下側に導入開口23eが開口する。
尚、本実施の形態において、導入開口23eは側壁23bの開口する穴状のものであるが、開口縁23fから上記の領域まで切り欠かれた切り欠き状のものでもよい。
【0056】
このように構成された受皿23の第1の段部23c及び第2の段部23dには、それぞれ調理網24が載せられ、上下2つの調理物の載置面241が形成される。このように、各段部に載せられる調理網24は、前後及び左右方向に延びる段部に下方から辺で支えられることになる。
これにより、載置面241に載せる調理物が重い場合や、載置面241の偏った位置に調理物が載せられても、調理網24が傾きにくい。つまり、ヒーターとの距離を一定に保つことができ、調理物の焼きムラを防ぐことができる。
【0057】
そして、受皿23に調理網24が設けられた状態で、受皿24を調理室20に入れることで、調理物を加熱調理することができる。
尚、上側の段部である第2の段部23dに設けられた調理網24は、受皿23の内部に納まり、受皿23の開口から外側に出ない構造となっている。つまり、調理網24の載置面241から開口縁23fまで所定の距離D1があり、開口縁23fから上側に調理網24が突出しない構造となる。
また、本実施の形態では、段部を2段設けることにより、2つの載置面241を構成した形態で説明をしたが、段部を1段にしてもよく、また、受皿23の深さを十分取れるのであれば、3段以上の段部を形成してもよい。
【0058】
ここで、
図6、
図7を参照して、受皿23が調理室20に入れられた状態について説明する。
調理扉21と一体的に動く受皿23は、前面開口20aから調理室20内部に入れられる。前面開口20aが調理扉21で覆われると、受皿23は調理室20の所定の位置となる。この状態で受皿23は、調理物の載置面241が上ヒーター22と対向すると共に、導入開口23eが吹出口26と対向する位置となる。
このように配置されるので、吹出口26から吹出される熱気は、導入開口23eを通って受皿23の内部に導入される。
【0059】
また、吹出口26と調理網24と導入開口23eの位置関係は、導入開口23eを介して、吹出口26の一部又は全部は、調理網24の載置面241と受皿23の底部23aとの間の通風空間50の高さの範囲内に配置されるのが好ましい。
このようにすることで、吹出口26から吹き出される空気の多くが、載置面241の下側の通風空間50を流れるので、載置面241に載置される被加熱物の下部を効率よく加熱することができる。
【0060】
以上のように受皿23が調理室20の内部に位置することで、吹出口26から流れるコンベクションユニット40からの高温の空気が、導入開口23eから受皿23の内部に導入することが可能となり、載置面241に載せられた調理物を、上下両面から加熱することができる。
【0061】
次に、調理室20に入れられた調理物を載せた状態の調理網24及び調理網24を載せた受皿23は、調理室扉21を手前に引くことにより、調理室20の内部から取り出すことができる。
取り出された後は、調理室扉21から受皿23を外すことができ、調理網24も容易に受皿23から外すことができる。取り外した調理網24は、平板形状であるので、裏面及び表面のいずれを洗浄するときも、流し台のシンクなど平らな部分に置いて、ブラシやスポンジなどで容易に洗浄することができる。
【0062】
[加熱調理器の動作]
次に、実施の形態1に係る加熱調理器100の動作を説明する。
(トッププレート3上での加熱調理)
使用者がトッププレート3上の載置部9に鍋等の被加熱物を載置し、その載置部9に対応する操作部4を操作すると、基板ユニット11内の電子回路基板に実装された制御手段が、トッププレート3の下方に設けられた誘導加熱コイルやラジエントヒーター等の加熱手段に電力を供給する。
これにより、トッププレート3の上に載置された被加熱物の加熱が行われる。また、制御手段は、基板ユニット11内に設けられた冷却ファンを駆動し、冷却ファンから供給される冷却風によって上述のように加熱調理器100内の各部の冷却が行われる。
【0063】
(調理室20での加熱調理)
調理室20内における加熱動作を、
図6、
図7を参照して説明する。尚、
図6、
図7では、空気の流れを矢印で概念的に示している。
使用者が調理室20内の調理網24の上に被加熱物を載置して調理室扉21を閉じ、調理室20に対応した操作部4を操作して加熱条件の設定を行うと、制御手段は、設定内容に応じた制御シーケンスにより、調理室20内における加熱制御を開始する。
より具体的には、制御手段は、調理室20及び加熱室42内にそれぞれ設けられた図示しない温度検知センサの検知温度、及び操作部4によって設定された設定条件に基づき、上ヒーター22、コンベクションヒーター44、及びモーター45を動作させる。
【0064】
上ヒーター22が加熱を開始すると、上ヒーター22の放射により、調理網24に載置された被加熱物の上面が主に加熱される。
また、コンベクションヒーター44が加熱を開始すると、コンベクションヒーター44の放射熱により、加熱室42内の空気が加熱される。
そして、モーター45の動作によってコンベクションファン43が回転すると、コンベクションファン43に対向して開口している背面吸込口25に吸引力が生じる。そうすると、背面吸込口25と背面ダクト32及び上面ダクト31を介して連通する上面吸込口27に吸引力が生じ、調理室20内の空気が上面吸込口27から上面ダクト31内へと吸い込まれる。
【0065】
上面吸込口27に吸い込まれる調理室20内の空気は、上ヒーター22の近傍を通過する際に、上ヒーター22の放射によって加熱される。
また、上面吸込口27に吸い込まれる空気は、触媒体33を通過する際に煙及び油煙が浄化され、また酸化分解の反応熱でさらに加熱される。また、上面ダクト31内を流れる空気は、上面ダクト31の下面を構成する調理室20の上壁201からの伝熱によってさらに加熱される。
【0066】
上面ダクト31内を流れる空気は、連通口28を通って背面ダクト32に流入する。背面ダクト32の背面ダクト前壁321は、その上部が調理室20の内部に向かって傾斜しており、上面ダクト31と背面ダクト32との接続部分は鈍角であるので、上面ダクト31と背面ダクト32との接続部分における圧力損失が低減され、効率よく空気が流れる。
尚、背面ダクト前壁321の傾斜角度を大きくすると、上面ダクト31と背面ダクト32との接続部分における流路の曲がりが小さくなって圧力損失を低減することができる一方で、調理室20内の容積が縮小されて調理室20内に収容できる被加熱物の大きさが制限される。
【0067】
また、背面ダクト前壁321の傾斜角度を小さくすると、調理室20内の容積を拡大することができる一方で、上面ダクト31と背面ダクト32との接続部分における圧力損失が相対的に大きくなる。
このため、上面ダクト31と背面ダクト32との接続部分における圧力損失と、調理室20内の容積とを考慮して、背面ダクト前壁321の傾斜角度を設定するのがよい。
【0068】
背面ダクト32に流入した空気は背面吸込口25を通って加熱室42内に流入する。背面吸込口25の周囲の後壁203に凹部204を形成することにより、背面ダクト32内の容積を拡大しているので、背面吸込口25に空気を吸い込みやすい。
背面吸込口25から加熱室42内に流入した空気は、コンベクションファン43の回転中心に吸い込まれ、コンベクションファン43の羽根の外周へと送出される。
【0069】
コンベクションファン43から遠心方向に送出された空気の多くは、コンベクションファン43の下側に設けられたコンベクションヒーター44の近傍を通り、コンベクションヒーター44によって加熱される。
コンベクションヒーター44によって加熱された空気は、コンベクションヒーター44と対向する位置に設けられた吹出口26から、調理室20内へと吹き出される。コンベクションヒーター44と吹出口26とが対向しているので、コンベクションヒーター44により加熱された高温の空気を吹出口26から吹き出すことができる。
【0070】
吹出口26から吹き出された熱気は、導入開口23eから受皿23の内部に入り込み、 調理網24の載置面241と受皿23との間の通風空間50内を、調理室扉21側に向かって流れる気流となる。
調理網24の載置面241の下側を流れる気流は、載置面241に載置された調理物の下面を主に加熱する。加熱された調理物からでる油や水分などは、受皿23に落下して内部に保持される。
【0071】
調理網24の載置面241の下側を調理室扉21側に向かって流れる気流は、受皿23の調理室扉21側に到達すると、受皿23により上方に向きを曲げられて、上面吸込口27に生じる吸引力によって上面吸込口27へと吸い込まれる。
ここで、受皿23に形成される各段部は、底部23aから上方に立ち上がった側壁23bを受皿23の外方向に折り曲げることにより形成しているので、上方に向く気流に対向することがなく、気流の流れを妨げにくい構造となっている。
また、調理室扉21と吹出口26の間に、側壁23bが位置しているので、吹出口26から出る高温の空気が、直接調理室扉21に当たることを防ぐ。これにより、調理室扉21が高温になることを防止し、安全性を確保することができる。
【0072】
そして、上面吸込口27に吸い込まれた空気は、上面ダクト31及び背面ダクト32を通って加熱室42に流入し、加熱室42内のコンベクションファン43によって吹出口26から調理室20内に吹き出される。
このように、調理室20内の空気は、上ヒーター22からの放射、触媒体33の反応熱、上ヒーター22によって加熱された調理室20の上壁201からの伝熱、及びコンベクションヒーター44によって加熱され、調理室20内の調理物を加熱する。
【0073】
また、加熱室42内でコンベクションファン43により送出された空気の一部は、調理室排気ダクト41を経て、加熱調理器100の外部に排気される。
調理室排気ダクト41から排気された調理室20内の空気に相当する量の空気は、調理室扉21と調理室20との隙間(図示せず)又は吸気用開口部29から調理室20内に供給される。
【0074】
尚、本実施の形態1では、吸気用開口部29を調理室扉21の下部に設けているが、吸気用開口部29を調理室扉21の上部(すなわち調理網24の載置面241の下側を流れる気流と高さ方向において対向する位置)に、設けてもよい。
このようにすることで、載置面241の下側を流れる気流は、吸気用開口部29から調理室20内に供給される空気によって流れを乱されにくいので、調理室扉21側に向かってまっすぐに流れやすい。
従って、調理網24の載置面241に載置される調理物の下面の加熱ムラを抑制することができる。
【0075】
そして、使用者が操作部4を操作して調理室20における加熱停止を指示すると、あるいは予め定められた加熱時間が経過すると、制御手段は、調理室20における加熱動作を停止する。
【0076】
[実施の形態1の効果]
以上のように、受皿23の内部に段部23c,23dを形成し、この段部に調理網24を載置するように構成したので、調理網に、受皿との間にクリアランスを保つための脚部など突出したものを設ける必要がないので、略平板状の調理網を用いることができる。
これにより、調理網を洗浄する際に、裏面及び表面のいずれを洗浄するときも、流し台のシンクなど平らな部分に置いて、ブラシやスポンジなどを用いて、容易に洗浄することができる。
【0077】
また、調理網を受皿に設けた際に、受皿の開口縁は調理網より上方に位置するので、調理物からでる油などが、受皿の外に飛び散りにくくすることができる。
また、段部を複数設けることにより、調理物を載せる載置面を増やすことができ、一度により多くの調理を行うことが可能となる。
また、高温の空気を循環させて加熱調理を行うコンベクション調理を行う場合、調理網の下側に高温の空気が流れるように、高温の空気の吹出口を位置させることにより、調理網の載置面に載置される調理物の下面の加熱ムラを抑制することができる。
また、コンベクションを用いることにより、調理室内部に突出する形状のヒーターを調理室下側に用いずに済むため、筐体1の上面にトッププレートに載せられた被加熱物を加熱する加熱手段が位置し、調理室が狭い加熱調理器であっても、調理室の壁面を清掃がしやすい。
【0078】
実施の形態2.
次に、
図10を参照して、実施の形態2を説明する。尚、実施の形態1と同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図10は、第2の段部23dに載置された調理網24に、グリル皿70を載せて加熱調理を行う形態を示している。グリル皿70は、把持部となる取っ手71を側面に設けられた皿部72とこの皿部の開口をふさぐ蓋73からなり、煮込み料理、米、パン等、調理網24に直接載せることができない調理物などを調理する際に用いられる。
【0079】
このようなグリル皿70は、第2の段部23dに載置された調理網24に乗せられた状態において、受皿23の開口縁23fは、第2の段部23dに載置された調理網24の載置面241より上方に位置し、かつ、グリル皿70の取っ手71より低い位置となるように構成される。つまり、取っ手71と開口縁23fの間に、所定のクリアランスD2が形成される。
【0080】
このように構成することにより、開口縁23fが調理網24の上方に位置するので、グリル皿の前後左右方向の動きを側壁23bで抑制することができ、調理網24からのグリル皿の脱落を防ぐことができる。
また、開口縁23fは、グリル皿70の把持部71より低い位置なので、受皿23に触れることなくグリル皿70を持ち上げることができる。
【0081】
以上、実施の形態において、本願発明を誘導加熱調理機に用いた形態で説明をしたが、調理室を有するガス調理器にも本願発明を用いることができる。
また、調理物を載せる調理網について、線材で構成されたもので説明をしたが、このような調理網に替えて、平面プレートや波型プレートを用いても良い。