(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150679
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】流動層熱回収装置およびこれに用いる熱輸送体
(51)【国際特許分類】
F28D 19/02 20060101AFI20170612BHJP
F28D 13/00 20060101ALI20170612BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20170612BHJP
F28F 21/02 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
F28D19/02
F28D13/00
F28F13/18 Z
F28F21/02
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-177428(P2013-177428)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-45464(P2015-45464A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生杉 浩一
(72)【発明者】
【氏名】平岡 和志
(72)【発明者】
【氏名】滝谷 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 直晃
【審査官】
安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−301334(JP,A)
【文献】
特開2006−045596(JP,A)
【文献】
特開2007−031520(JP,A)
【文献】
特開2008−275290(JP,A)
【文献】
特開2013−007514(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3136873(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 19/02
F28D 13/00
F28F 13/18
F28F 21/02
C01B 32/152
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの熱の吸収を行う熱輸送体であって、
カーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブの表面に設けられて無機物からなるコーティング層と
を有し、前記無機物は、Ti,Cu,Cr,Fe,Co,Ni,Zn,Au,Ag,Siの単体,酸化物,炭化物,窒化物、あるいはこれらのうち2種以上を含む化合物であることを特徴とする熱輸送体。
【請求項2】
前記コーティング層は、さらに前記無機物の非結晶体が積層された構造であることを特徴とする請求項1記載の熱輸送体。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの表面に担持された清浄化ナノ粒子をさらに有し、
前記清浄化ナノ粒子は、ゼオライト,活性炭,ソーダ灰、またはFe,Ni,Co,Ti,W,Mo,V,Ru,Ag,Au,Pt,Ir,Zn,K,CaBaの単体,酸化物,炭化物、あるいはこれらのうちの2種以上を含む化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の熱輸送体。
【請求項4】
外部から排気ガスを導入して請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱輸送体と前記排気ガスを混合した混合ガスを流動させるライザーと、
前記混合ガスを前記排気ガスと前記熱輸送体とに分離する固気分離部と、
分離された前記排気ガスを排出する排出口と、
前記混合ガスまたは/および前記熱輸送体から熱を回収して外部に導出する熱交換器と、
前記熱輸送体を前記ライザーに循環させるダウンカマーと
を有することを特徴とする流動層熱回収装置。
【請求項5】
前記固気分離部は、前記ライザー側入り口から前記排出口側出口,前記ダウンカマー側出口,前記ライザー側入り口の順に回転し、前記ライザー側入り口から前記排出口側出口までの間は帯電し、前記ダウンカマー側出口を通過中には無帯電となる回転フィンを備え、
帯電中に前記混合ガスから前記熱輸送体を前記回転フィンに吸着させ、前記回転フィンを無帯電状態にすることにより前記ダウンカマー側出口近傍を通過中に前記熱輸送体を前記回転フィンから開放し、前記熱輸送体を前記ダウンカマーに回収することを特徴とする請求項4記載の流動層熱回収装置。
【請求項6】
前記熱交換器が前記ライザーの外壁または/および前記ダウンカマーの外壁に設けられることを特徴とする請求項4または請求項5のいずれかに記載の流動層熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
気体から熱回収を行う流動層熱回収装置およびこれに用いる熱輸送体に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の各種熱機関や焼却施設等の機器から、高温の排気ガスが排出される。そのため、これらの機器では、熱回収装置により、排気ガスから熱を回収する場合がある。
従来の流動層熱回収装置は、熱輸送体が流動するライザーと、排気ガスと熱輸送体とを分離する固気分離部と、分離後の熱輸送体をライザーに還流させるダウンカマーとを備える。このような流動層熱回収装置において、まず、高温の排気ガスがライザーに導入され、熱輸送体と排気ガスとが混ざり合って固気分離部まで流動する。この時、ライザーにおいて、排気ガスの熱が熱輸送体に吸収される。同時に、排気ガスに含まれる不純物を無害化する流動層熱回収装置もある。その後、熱を吸収した熱輸送体および排気ガスは固気分離部まで流動し、遠心分離等により気体の排気ガスと固体の熱輸送体に分離される。分離された排気ガスは低温化された状態で外部に排出される。また、熱輸送体はダウンカマーにより、再びライザーに戻され、上記循環が繰り返される。
【0003】
ここで、従来、熱輸送体として、活性炭や生石灰,酸化鉄等の粒子が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−275290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の熱輸送体として用いられる活性炭や生石灰,酸化鉄等の粒子は一般的に熱伝導率が高くなく、高効率の熱回収が求められる昨今の流動層熱回収装置においては、十分な熱回収が図れないという問題点があった。
【0006】
上記問題点を解決するために、本発明は、熱回収効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の熱輸送体は、排気ガスの熱の吸収を行う熱輸送体であって、カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブの表面に設けられて無機物からなるコーティング層とを有し、前記無機物は、Ti,Cu,Cr,Fe,Co,Ni,Zn,Au,Ag,Siの単体,酸化物,炭化物,窒化物、あるいはこれらのうち2種以上を含む化合物であることを特徴とする。
【0008】
また、前記コーティング層は、さらに前記無機物の非結晶体が積層された構造であっても良い。
また、前記カーボンナノチューブの表面に担持された清浄化ナノ粒子をさらに有し、前記清浄化ナノ粒子は、ゼオライト,活性炭,ソーダ灰、またはFe,Ni,Co,Ti,W,Mo,V,Ru,Ag,Au,Pt,Ir,Zn,K,CaBaの単体,酸化物,炭化物、あるいはこれらのうちの2種以上を含む化合物であることが好ましい。
【0009】
さらに、流動層熱回収装置は、外部から排気ガスを導入して前記熱輸送体と前記排気ガスを混合した混合ガスを流動させるライザーと、前記混合ガスを前記排気ガスと前記熱輸送体とに分離する固気分離部と、分離された前記排気ガスを排出する排出口と、前記混合ガスまたは/および前記熱輸送体から熱を回収して外部に導出する熱交換器と、前記熱輸送体を前記ライザーに循環させるダウンカマーとを有することを特徴とする。
【0010】
また、前記固気分離部は、前記ライザー側入り口から前記排出口側出口,前記ダウンカマー側出口,前記ライザー側入り口の順に回転し、前記ライザー側入り口から前記排出口側出口までの間は帯電し、前記ダウンカマー側出口を通過中には無帯電となる回転フィンを備え、帯電中に前記混合ガスから前記熱輸送体を前記回転フィンに吸着させ、前記回転フィンを無帯電状態にすることにより前記ダウンカマー側出口近傍を通過中に前記熱輸送体を前記回転フィンから開放し、前記熱輸送体を前記ダウンカマーに回収することが好ましい。
【0011】
また、前記熱交換器が前記ライザーの外壁または/および前記ダウンカマーの外壁に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、熱輸送体としてカーボンナノチューブを用い、カーボンナノチューブの表面にコーティング層を設けることにより、カーボンナノチューブのバンドル化を防いで熱回収効率の低下を防止すると同時に、耐熱性,耐環境性を向上させながら、高比表面積,高熱伝導性を有するカーボンナノチューブにより熱回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の流動層熱回収装置の構成を示す概略図
【
図2】本発明の熱輸送体の構成を例示する概略斜視図
【
図3】本発明の静電分離による固気分離部の構成を説明する概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
まず、
図1〜
図3を用いて、実施の形態1における流動層熱回収装置およびこれに用いる熱輸送体について説明する。
【0015】
図1は本発明の流動層熱回収装置の構成を示す概略図、
図2は本発明の熱輸送体の構成を例示する概略斜視図、
図3は本発明の静電分離による固気分離部の構成を説明する概略図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の流動層熱回収装置3は、熱輸送体1が流動するライザー4と、排気ガス5と熱輸送体1とを分離する固気分離部6と、分離後の熱輸送体1をライザー4に還流させるダウンカマー7とを備える。エンジン等の各種熱機関や焼却施設等の機器9からは、高温の排気ガス5が排出される。本発明の流動層熱回収装置3は、機器9から排出される高温の排気ガス5から熱を回収するものである。以下、詳細に説明する。
【0017】
ライザー4にはあらかじめ熱輸送体1が収容されており、ガス注入口8から排気ガス5が導入されると、排気ガス5と熱輸送体1とが混ざり合って混合ガス10となり、ライザー4内を流動する。この時、熱輸送体1は排気ガス5の熱を吸収する。つまり、熱輸送体1は排気ガス5の熱を回収して低温化させる。その後、ライザー4を流動した排気ガス5と熱輸送体1との混合ガス10は、パイプ11を通って固気分離部6に流入する。固気分離部6は、混合ガス10を排気ガス5と熱輸送体1とに分離し、排気ガス5を排出口である煙突12から排出し、熱輸送体1をダウンカマー7に排出する。ダウンカマー7では、熱交換器13によって熱輸送体1の熱を吸収し、吸収した熱を回収して外部機器(図示せず)に熱を利用させている。また、ダウンカマー7は、熱が吸収されて低温化された熱輸送体1をパイプ15を介してライザー4に循環させて、再び排気ガス5と混合させている。
【0018】
ここで、本発明においては、熱輸送体1としてカーボンナノチューブ14を用いる。また、
図2(a)に示すように、本発明の熱輸送体1として用いるカーボンナノチューブ14の表面に、無機物からなるコーティング層19を設けることを特徴とする。
【0019】
カーボンナノチューブは一般的に熱輸送体として用いられる活性炭や生石灰,酸化鉄よりも熱伝導性が高く、さらに高比表面積であるので、効率的に熱吸収および熱輸送を行うことができる。
【0020】
また、カーボンナノチューブ14の表面をコーティングすることにより、カーボンナノチューブ14の耐熱性が向上し、周辺雰囲気によるカーボンナノチューブ14の変質を抑制することができる。カーボンナノチューブ14は、上述のように熱伝導性が高く、効率的に熱吸収および熱輸送を行うことができるが、耐熱性が低く、また変質もしやすいため、高温の排気ガス5に用いる熱輸送体には適さなかった。しかし、カーボンナノチューブ14の表面をコーティングすることにより、耐熱性および耐環境性が向上し、高温の排気ガス5に対しても、効率的に熱吸収および熱輸送を行う熱輸送体1とすることができる。この時、カーボンナノチューブ14より熱伝導率の低いコーティング層19を用いるが、カーボンナノチューブ14中の熱移動は、従来の熱輸送体に比べて効率的であるので、全体としては熱回収効率を向上させることができる。さらに、熱輸送体1のカーボンナノチューブ14が流動中に互いに接触してバンドル化する場合がある。カーボンナノチューブ14の表面をコーティングすることにより、熱輸送体1が接触しても熱輸送体1がバンドル化することを抑制することができる。
【0021】
コーティング層19に用いる無機物としては、Si,SiCあるいはSiO
2等を用いることができる。他にも、Ti,Cu,Cr,Fe,Co,Ni,Zn,Au,Ag,Siの単体,酸化物,炭化物,窒化物、あるいはこれらのうち2種以上を含む化合物を用いることもできる。
【0022】
なお、コーティング層19の膜厚は、薄すぎると熱によるカーボンナノチューブ14の破壊,燃焼や周辺雰囲気によるカーボンナノチューブ14の変質を抑制することができない。例えば、400℃以上の酸素雰囲気での使用に耐えられず、耐熱性や耐環境性の向上が図れない。同時に、膜厚が厚すぎると、カーボンナノチューブ14の柔軟性が低下し、流動中の熱輸送体1により配管がエロージョン等により破損する場合がある。また、表面からの熱移動の低効率化が顕著となり、全体として熱回収効率の向上が図れない。そのため、コーティング層19の膜厚は5nm以上50nm以下にすることが好ましい。
【0023】
また、コーディング層19は、カーボンナノチューブ14の外表面全面に緻密に設けることが好ましい。カーボンナノチューブ14の根元から先端までコーティングすることにより、カーボンナノチューブ14が露出する領域がなくなり、耐熱性や耐環境性,耐バンドル性がより向上する。なお、図では、カーボンナノチューブ14の内表面にもコーティングを施しているが、外部環境や他の熱輸送体1と接触する機会が少ないので、内表面は全面をコーティングするには及ばない。
【0024】
また、耐熱性や強靭性を向上させるために、コーティング層19の上記無機物は結晶構造とすることが好ましい。
また、コーティング層19として、上記無機物の結晶構造上に、アモルファスSi等の上記無機物の非結晶体を積層する構造としても良い。最外層としてアモルファスSi等の非結晶体を設けることにより、アモルファスSi等の非結晶体の表面には凹凸が形成されるので、排気ガス5との接触面積がさらに大きくなり熱吸収性がさらに向上する。なお、カーボンナノチューブ14の表面に直接アモルファスSi層をコーティングすると、アモルファス構造の欠陥からカーボンナノチューブ14が露出し、耐熱性や耐環境性が低下するため、カーボンナノチューブ14の表面に直接アモルファスSi層をコーティングすることは好ましくない。
【0025】
次に、コーティング層19のコーティング方法について説明する。
SiCの場合、カーボンナノチューブ14を真空状態の耐熱炉中に導入した後、耐熱炉にSiを導入して、例えば1000℃〜1400℃程度に加熱することによりSiを昇華させ、カーボンナノチューブ14のC原子と反応させる。このようにして、カーボンナノチューブ14の表面にSiとCとを還元反応させてSiCのコーティング層19を形成する。
【0026】
Siの場合、カーボンナノチューブ14を真空状態の耐熱炉中に導入した後、耐熱炉にSiを導入して、上記SiCの場合と同じ要領でSiを昇華させ、SiCの形成後、さらにSiを導入して例えば1000℃〜1400℃程度に加熱することでSi原子のみをSiCの表面に堆積させてSiのコーティング層19を形成する。
【0027】
SiO
2の場合、上記Siコーティングしたカーボンナノチューブを、さらに酸素雰囲気中で、例えば1000℃程度に加熱することにより、SiとO原子とを反応させてSiO
2を作成し、カーボンナノチューブ14のSi層表面にSiO
2のコーティング層19を形成する。
【0028】
なお、上記Si、SiO
2の加熱温度では、非結晶体(アモルファスSi、SiO
2)を含む状態であり、これらのコーティング層19を結晶化させる際には、例えば1300〜1400℃(SiO
2は1600℃)でさらに加熱を行う。
【0029】
その他の無機物のコーティング方法についても、同様に、カーボンナノチューブ14を真空状態の耐熱炉中に導入した後、耐熱炉にコーティング材料を導入し、昇華又は蒸発させることでコーティング層19が形成できる。また、昇華又は蒸発を酸化物雰囲気,窒化物雰囲気下で行うことで、コーティング材料の酸化物、窒化物が形成でき、カーボンナノチューブ14のC原子と反応させれば、コーティング材料の炭化物が形成できる。
【0030】
ここで、カーボンナノチューブ14は、強度が不足すると流動中に破断する可能性があるため、カーボンナノチューブ14は、2層以上のカーボンナノチューブで、本発明では、使用する多層カーボンナノチューブは、3層以上であることが望ましい。その場合、少なくともその直径は5nm以上とすることが好ましい。同時に、カーボンナノチューブ14は、柔軟性を確保して破断や装置の破損を防止すると共に、熱交換性能を高めるために比表面積を高くすることが好ましい。そのため、カーボンナノチューブ14の直径は300nm以下とすることが好ましい。また、カーボンナノチューブ14が長いと、流動中に他のカーボンナノチューブ14と頻繁に衝突し、カーボンナノチューブ14同士が絡み合って熱吸収性能が低下すると共に、カーボンナノチューブ14がバンドル化して大きくなり、流動層熱回収装置で目詰まりを起こし易くなる。そのため、カーボンナノチューブ14の長さは500μm以下とすることが好ましい。
【0031】
上記流動層熱回収装置3では、ダウンカマー7に熱交換器13を設ける例について説明したが、さらに、ライザー4やパイプ11に熱交換器16を設けても良い。また、ダウンカマー7,ライザー4,パイプ11等のいずれか、またはこれらの場所を組み合わせて熱交換器13,16を設けても良い。例えば、熱交換器13,16は、ダウンカマー7またはライザー4の外壁に沿って、コイル状に設けられる熱交換パイプであり、熱交換パイプの中を冷却液等の熱媒体が流通する構造とすることができる。熱媒体が熱交換パイプ内を通過する際に、ダウンカマー7またはライザー4,パイプ11の外壁を介して、混合ガス10あるいは分離後の熱輸送体1と熱媒体との間で熱交換を行い、混合ガス10あるいは分離後の熱輸送体1を冷却すると共に、熱媒体に熱を回収する。熱媒体に回収された熱を外部機器に導通させ、外部機器で回収した熱を利用する。また、ダウンカマー7,ライザー4,パイプ11等の内部の混合ガス10や熱輸送体1の流動領域が十分確保されている場合は、熱交換パイプをダウンカマー7,ライザー4,パイプ11等の内部に設けてもよい。この場合、混合ガス10や熱輸送体1と熱交換パイプとが直接接し、かつ接する面積が増大するので、熱移動が効率的に行われ、熱交換効率がより向上する。
【0032】
また、固気分離部6は、排気ガス5と熱輸送体1との比重差を利用して遠心分離により行っても良いが、静電分離を行っても良い。静電分離を行った場合は、遠心分離の場合に比べて、熱輸送体1が小さい場合にも容易に分離できるため好ましい。
【0033】
静電分離方式の固気分離部6は、
図3に示すように、帯電状態および無帯電状態に制御できる回転フィン17を備える。ライザー4側の入り口から導入される混合ガス10は固気分離部6に導入されると回転中の回転フィン17に接触する。この時、回転フィン17は混合ガス10と接する前(位置A)から混合ガスと接する位置(位置B)においては帯電され、煙突12側の出口の近傍(位置C)を越える位置まで回転されると帯電状態を解除し、ダウンカマー7側の出口の近傍(位置D)でも無帯電状態を維持する。このように、回転フィン17の回転位置によって帯電状態および無帯電状態を制御することにより、カーボンナノチューブ14は導電性を有するので、位置Bにおいて混合ガス10と接触すると熱輸送体1を回転フィン17に吸着し、位置Cにおいても帯電状態を維持することにより、熱輸送体1を回転フィン17に吸着したまま排気ガス5のみを煙突12から排出し、位置Dにおいては帯電状態を解除することにより回転フィン17から熱輸送体1を開放して熱輸送体1のみをダウンカマー7に排出する。以上のように、回転する回転フィン17の帯電状態および無帯電状態を制御することにより、排気ガス5を排出する煙突12側の出口の近傍では回転フィン17を帯電して排気ガス5のみを排出し、ダウンカマー7側の出口の近傍では帯電しないことにより、熱輸送体1を放出してダウンカマー7から排出させる。なお、静電分離による、熱輸送体1と排気ガス5との分離をより確実に行うため、カーボンナノチューブ14に鉄や強磁性体金属(例えば、Fe、Co、Ni)等の金属粒子をさらに担持させておいても良い。なお、遠心分離により熱輸送体1と排気ガス5とを分離する場合は、カーボンナノチューブ14よりも比重の大きい粒子を担持させておいても良い。
(実施の形態2)
次に、
図1,
図2を用いて実施の形態2における熱輸送体の構成について説明する。
【0034】
実施の形態2における熱輸送体は、実施の形態1における流動層熱回収装置に用いる熱輸送体に対して、カーボンナノチューブの表面に排気ガスを清浄化するための清浄化ナノ粒子2を担持することを特徴とする。なお、清浄化粒子は球状の形状に限らず、円柱状、扁平状形状等であってもよい。
【0035】
図2(b)に示すように、本実施の形態の熱輸送体18は、実施の形態1で示すコーティング層19がコーティングされたカーボンナノチューブ14のコーティング層19の表面に清浄化ナノ粒子2を担持する。このように、高熱吸収および高熱輸送率のカーボンナノチューブ14のコーティング層19表面に清浄化機能を有する清浄化ナノ粒子2を担持することにより、熱輸送体18は排気ガス中に含まれるNOxやSOx等の有害物質を無害化する清浄化を行いながら、熱回収効率を向上させることができる。また、カーボンナノチューブ14がコーティングされているため、清浄化ナノ粒子2の担持性能も向上し、清浄化ナノ粒子2がカーボンナノチューブ14から脱落、またはカーボンナノチューブ14上で清浄化ナノ粒子2が熱凝集することを抑制することができる。また、清浄化ナノ粒子2がカーボンナノチューブ14に担持されているので、カーボンナノチューブ14と同時に清浄化ナノ粒子2を静電分離することができる。
【0036】
各種機器9から排出される排気ガス5には不純物が含まれているものが有り、流動層熱回収装置3において、熱回収と共に、有害物質の無害化を行うものもある。
本実施の形態の流動層熱回収装置3においては、実施の形態1における熱輸送体1にかわり、上記のような清浄化ナノ粒子2が担持された熱輸送体18を用い、次のように排気ガス5の処理を行う。すなわち、ライザー4にはあらかじめ熱輸送体18が収容されており、ガス注入口8から排気ガス5が導入されると、排気ガス5と熱輸送体18とが混ざり合って混合ガス10となり、ライザー4内を流動する。この時、熱輸送体18は排気ガス5の熱を吸収すると共に、排気ガス5に含まれる有害物質を無害化する。つまり、熱輸送体18は排気ガス5を脱硫,脱硝等して清浄化しながら、排気ガス5の熱を回収して低温化させる。その後、ライザー4を流動した排気ガス5と熱輸送体18との混合ガス10は、パイプ11を通って固気分離部6に流入する。固気分離部6は、混合ガス10を排気ガス5と熱輸送体18とに分離し、排気ガス5を排出口である煙突12から排出し、熱輸送体18をダウンカマー7に排出する。また、ダウンカマー7は、熱が吸収されて低温化された熱輸送体18をパイプ15を介してライザー4に循環させて、再び排気ガス5と混合させている。
【0037】
このように、高熱吸収および高熱輸送率のカーボンナノチューブ14に清浄化機能を有する清浄化ナノ粒子2を担持することにより、熱輸送体18は清浄化機能を備えると共に、熱回収効率を向上させることができる。
【0038】
また、清浄化ナノ粒子2をカーボンナノチューブ14に担持せず、別途混合することも可能であるが、清浄化ナノ粒子2が単体で存在すると、排気ガス5と混合して流動する際に、清浄化ナノ粒子2同士が衝突し、有害物質の無害化効果が低減される場合がある。つまり、清浄化ナノ粒子2同士が凝集して粗大化し、全体の表面積が減少して有害物質の無害化効果が低減される場合がある。さらに、微細な清浄化ナノ粒子2が単独で存在すると、流動の際に、清浄化ナノ粒子2が、パイプ11や、パイプ11とライザー4あるいは固気分離部6との接続部分に目詰まりを生じる場合がある。そのため、本発明では、清浄化ナノ粒子2をカーボンナノチューブ14の表面に担持し、清浄化ナノ粒子2が単独で流動することを防ぐことにより、清浄化ナノ粒子2の清浄化機能の維持と流動層熱回収装置の効力維持を図ることができる。
【0039】
また、清浄化ナノ粒子2の材質は、脱硫,脱硝等の有害物質に対する触媒機能を有するものであれば良く、例えば、ゼオライト,活性炭,ソーダ灰を用いることができる。あるいは、Fe,Ni,Co,Ti,W,Mo,V,Ru,Ag,Au,Pt,Ir,Zn,K,CaBaの単体でも良い。さらに、これらの酸化物,炭化物でも良く、または、これらのうちの2種以上を含む化合物を用いることもできる。また、清浄化ナノ粒子2の粒子径は、カーボンナノチューブ14に担持されること、および清浄効率を考慮して、3nm以上100nm以下とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1 熱輸送体
2 清浄化ナノ粒子
3 流動層熱回収装置
4 ライザー
5 排気ガス
6 固気分離部
7 ダウンカマー
8 ガス注入口
9 機器
10 混合ガス
11 パイプ
12 煙突
13 熱交換器
14 カーボンナノチューブ
15 パイプ
16 熱交換器
17 回転フィン
18 熱輸送体
19 コーティング層