特許第6150702号(P6150702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150702
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   H05B6/12 308
   H05B6/12 303
   H05B6/12 335
   H05B6/12 305
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-208776(P2013-208776)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-72845(P2015-72845A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 和裕
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/114603(WO,A1)
【文献】 特開2009−218042(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0176116(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0212042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の調理容器の載置位置を示す第1の加熱ゾーン部が表示された天板と、
前記第1の加熱ゾーン部の下に配置された複数の加熱コイルと、
前記複数の加熱コイルに対応して設けられ、直流電力を高周波電力に変換して、前記複数の加熱コイルにそれぞれ供給する複数のインバータ回路と、
前記天板前記第1の加熱ゾーン部内の位置表示され、前記第1の調理容器よりも径の小さい第2の調理容器の載置位置を示す第2の加熱ゾーン部と、
前記第2の加熱ゾーン部の下に設置された第1の温度センサーと、
前記第1の加熱ゾーン部内であって、前記第2の加熱ゾーン部を除く位置に設置された少なくとも1つの第2の温度センサーと、
前記複数の加熱コイルへの高周波電力の供給により、前記第1の加熱ゾーン部内に前記第2の調理容器の載置を検知したときに、前記第1の温度センサーにより検出された温度から前記第2の温度センサーにより検出された温度を減算して温度差を算出し、かつ前記温度差と設定温度とを比較し、前記温度差が設定温度以上のときに、前記第2の加熱ゾーン部に前記第2の調理容器が載置されているとして、前記第2の加熱ゾーン部に載置された前記第2の調理容器の加熱を前記複数の加熱コイルで継続する制御部と
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記複数の加熱コイルは、リング形状の外加熱コイルと、前記外加熱コイルの中に隙間を有して配置された内加熱コイルとで構成され、
前記第2の加熱ゾーン部は、前記天板を上方から見て、前記外加熱コイルと前記内加熱コイルの一部を跨ぐ位置に表示されていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記複数の加熱コイルは、前記天板を上方から見て、左右方向あるいは前後方向に配置された2つの加熱コイルで構成され、
前記第2の加熱ゾーン部は、前記天板を上方から見て、前記2つの加熱コイルの一部を跨ぐ位置に表示されていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記複数の加熱コイルは、前記第1の加熱ゾーン部の軸心を中心として周方向に配置された4つの加熱コイルで構成され、
前記第2の加熱ゾーン部は、前記天板を上方から見て、前記第1の加熱ゾーン部の軸心を中心に、前記4つの加熱コイルの一部を跨ぐ位置に表示されていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱コイルにより調理容器を加熱する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器として、調理容器の内容物を対流させながら加熱するものがある。この加熱調理器は、内加熱コイルと、内加熱コイルの外周を囲むように設けられた外加熱コイルとに高周波電力を供給して調理容器の内容物を外向きに対流させる外向き対流モードと、外加熱コイルのみに高周波電力を供給して調理容器の内容物を内向きに対流させる内向き対流モードとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−288184号公報(第9頁、図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の加熱調理器は、調理容器の内容物を対流させることで、内容物の過加熱状態を緩和し、内容物の突沸が抑えられている。しかし、最も突沸の発生しやすい径の小さい調理容器においては、調理容器の底が内加熱コイルのみに対向する状態で、外加熱コイル上には載らない状態となる。このため、外向き対流モードと内向き対流モードの何れかを選択して、また、両方のモードを選択しても、径の小さい加熱調理器の内容物は対流せず、内容物の突沸が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、前述のような課題を解決するためになされたものであり、径の小さい調理容器であっても、内容物を対流させることができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、第1の調理容器の載置位置を示す第1の加熱ゾーン部が表示された天板と、第1の加熱ゾーン部の下に配置された複数の加熱コイルと、複数の加熱コイルに対応して設けられ、直流電力を高周波電力に変換して、複数の加熱コイルにそれぞれ供給する複数のインバータ回路と、天板第1の加熱ゾーン部内の位置表示され、第1の調理容器よりも径の小さい第2の調理容器の載置位置を示す第2の加熱ゾーン部と、第2の加熱ゾーン部の下に設置された第1の温度センサーと、第1の加熱ゾーン部内であって、第2の加熱ゾーン部を除く位置に設置された少なくとも1つの第2の温度センサーと、複数の加熱コイルへの高周波電力の供給により、第1の加熱ゾーン部内に第2の調理容器の載置を検知したときに、第1の温度センサーにより検出された温度から第2の温度センサーにより検出された温度を減算して温度差を算出し、かつ温度差と設定温度とを比較し、温度差が設定温度以上のときに、第2の加熱ゾーン部に第2の調理容器が載置されているとして、第2の加熱ゾーン部に載置された第2の調理容器の加熱を複数の加熱コイルで継続する制御部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1の加熱ゾーン部内に、第1の調理容器よりも径の小さい第2の調理容器の載置位置を示す第2の加熱ゾーン部が表示し、第2の調理容器で調理する場合、その第2の加熱ゾーン部に第2の調理容器を載置して、複数の加熱コイルで加熱するようにしている。これにより、第2の調理容器の底のうち複数の加熱コイルと対向する部分から加熱され、このため、第2の調理容器の内容物を対流させることができ、第2の調理容器の加熱時に発生しやすい突沸を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の外観を示す斜視図。
図2図1の加熱調理器における天板の右加熱ゾーン部の表示例、右加熱コイルの構成及び温度センサーの配置を示す平面図。
図3】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の回路構成を示すブロック図。
図4】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の動作を示すフローチャート。
図5】小鍋を加熱しているときのサーミスタ及び赤外線センサーの温度変化を示す図。
図6】本発明の実施の形態2に係る加熱調理器における天板の右加熱ゾーン部の表示例、右加熱コイルの構成及び温度センサーの配置を示す平面図。
図7】本発明の実施の形態3に係る加熱調理器における天板の右加熱ゾーン部の表示例、右加熱コイルの構成及び温度センサーの配置を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の外観を示す斜視図である。
図1に示す加熱調理器100は、本体ケース1の上部に設けられた天板2と、本体ケース1内に天板2の下に配置された左加熱コイル、右加熱コイル及び中央加熱コイルと、本体ケース1内の左加熱コイル側の下方に設置されたグリル調理器13とを備えている。なお、本実施の形態においては、3つの加熱コイルを用いているが、これは一例であって、加熱コイルの個数は限定されるものではない。また、中央加熱コイルに代えて、ラジエントヒーターを用いてもよい。
【0010】
天板2は、四辺形に形成された耐熱強化ガラスよりなり、外周に額縁状のフレーム3が装着された状態で本体ケース1の上部に取り付けられている。天板2の左右方向の上面には、通常サイズの鍋(第1の調理容器)の載置位置を示す円形状の左加熱ゾーン部4、右加熱ゾーン部5(第1の加熱ゾーン部)及び中央加熱ゾーン部6が表示されている。左加熱ゾーン部4は、左加熱コイルと対向しており、右加熱ゾーン部5は、右加熱コイルと対向している。また、中央加熱ゾーン部6は、中央加熱コイルと対向している。なお、第1の加熱ゾーン部を右加熱ゾーン部5としているが、これに代えて、第1の加熱ゾーン部を左加熱ゾーン部4としても良い。
【0011】
フレーム3の手前側の前部には、左加熱コイル、右加熱コイル、中央加熱コイル及びグリル調理器13の各火力を設定する上面操作部7が設けられている。天板2の前部の左側には、左加熱コイルの加熱動作などを表示する左表示部8a、及び左加熱コイルの火力を表示する左火力表示部8bが設けられている。天板2の前部の右側には、右加熱コイルの加熱動作などを表示する右表示部9a、及び右加熱コイルの火力を表示する右火力表示部9bが設けられている。天板2の前部の中央には、中央加熱コイル及びグリル調理器13の加熱動作などを表示する中央表示部10が設けられている。また、天板2の奥の中央には、中央加熱コイルの火力を表示する中央火力表示部11が設けられている。本体ケース1の前面には、左加熱コイル、右加熱コイル及び中央加熱コイルの各火力を微調節するための火力調節ダイヤルを有する前面操作部12が設けられている。
【0012】
フレーム3の後部には、吸気口カバー14及び排気口カバー15が取り外し自在に設けられている。本体ケース1の吸気口カバー14の下には、本体ケース1内に空気を取り込むための吸気口が設けられている。また、本体ケース1の排気口カバー15の下には、本体ケース1内に取り込んだ空気及びグリル調理器13内の空気を排気するための排気口が設けられている。前述のグリル調理器13は、本体ケース1の前面に開口を有する直方体形状のグリル庫と、グリル庫の開口を開閉するグリル扉と、グリル庫内の上下に配置された上ヒーター及び下ヒーター(例えば、シーズヒーター)とを備えている。
【0013】
ここで、右加熱ゾーン部5、右加熱コイルの構成、及び右加熱ゾーン部5における温度センサーの配置について、図2に基づいて説明する。
図2図1の加熱調理器における天板の右加熱ゾーン部の表示例、右加熱コイルの構成及び温度センサーの配置を示す平面図である。
【0014】
右加熱ゾーン部5の下に配置された右加熱コイル23は、円形状の内加熱コイル23aと、内加熱コイル23aの外周を隙間を有して囲むリング形状の外加熱コイル23bとで構成されている。右加熱ゾーン部5は、通常サイズの鍋50(第1の調理容器、図3参照)に対応する径を有している。この右加熱ゾーン部5内には、天板2を上方から見て、内加熱コイル23aと外加熱コイル23bの一部を跨ぐ位置に小鍋用の加熱ゾーン部5a(第2の加熱ゾーン部)が表示されている。なお、図2の白い円形は、小鍋50aの鍋底の加熱面を示している。
【0015】
内加熱コイル23aと外加熱コイル23bとの間であって、小鍋用の加熱ゾーン部5aを除く隙間には、内加熱コイル23aを挟んで対向するように、例えば2つのサーミスタ21a、21b(第2の温度センサー)が配置されている。また、内加熱コイル23aと外加熱コイル23bとの間の隙間であって、小鍋用の加熱ゾーン部5aの中央に位置するように赤外線センサー22(第1の温度センサー)が設置されている。サーミスタ21a、21bは、天板2の下面に接触された状態で設けられており、赤外線センサー22は、天板2の下方に設置されている(図3参照)。
【0016】
なお、サーミスタ21a、21bを2つとしているが、1つでも良い。また、赤外線センサー22に代えて、サーミスタを用いても良い。
【0017】
次に、右加熱コイル23側の回路構成について、図3に基づいて説明する。
図3は本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の回路構成を示すブロック図である。
サーミスタ21a、21bは、小鍋50aから天板2に伝わる熱に応じて信号(例えば電圧)を生成し、温度検出回路25に入力する。赤外線センサー22は、天板2から発せられる赤外線量に基づいて信号(例えば電圧)を生成し、温度検出回路25に入力する。温度検出回路25は、サーミスタ21a、21bからの信号に基づいて小鍋50aの温度を検出し、制御回路27に入力する。また、温度検出回路25は、赤外線センサー22からの信号に基づいて小鍋50aの温度を検出し、制御回路27に入力する。
【0018】
インバータ回路24aは、制御回路27からの駆動信号(PWM)の入力に基づいて、直流電力を高周波電力に変換し、内加熱コイル23aに供給する。インバータ回路24bは、前記と同様に、制御回路27からの駆動信号の入力に基づいて、直流電力を高周波電力に変換し、外加熱コイル23bに供給する。
【0019】
制御回路27は、上面操作部7あるいは前面操作部12により設定された火力(設定火力)が入力されると、設定火力に基づいて駆動信号を生成し、その駆動信号によりインバータ回路24a、24bを駆動する。また、制御回路27は、設定火力とインバータ回路24a、24bの出力電力(火力)とがほぼ同一となるように駆動信号を生成し、その駆動信号によりインバータ回路24a、24bを駆動する。なお、制御回路27による小鍋50aあるいは通常サイズの鍋50かどうかの判定、小鍋50aが所定の加熱ゾーン部5aに載置されているかどうかの判定などの動作については、後述する。
【0020】
前記のように構成された加熱調理器100の動作について、図4及び図5を参照しながら説明する。
図4は本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の動作を示すフローチャート、図5は小鍋を加熱しているときの2つのサーミスタ及び赤外線センサーの温度変化を示す図である。なお、図5の(b)は、鍋の有無を検知するときの火力と小鍋を加熱しているときの火力を示している。
制御回路27は、上面操作部7あるいは前面操作部12により、右加熱コイル23の火力が設定されると、右加熱コイル23による加熱をスタートする(S1)。制御回路27は、先ず、図5(b)に示すように、内加熱コイル23aと外加熱コイル23bの各火力が500Wとなる駆動信号を2秒毎に2秒間出力してインバータ回路24a、24bを駆動する(S2)。つまり、2秒間ON(出力)、2秒間OFF(停止)とする間欠的な駆動信号を出力する。2秒経過したかどうかは、計時部26により計測される時間から判定している。
【0021】
その後、制御回路27は、内加熱コイル23aと外加熱コイル23bの各出力電力が50W〜100Wの範囲内かどうかを判定する(S3)。制御回路27は、各出力電力が50W〜100Wの範囲内にないときには、S9に移行するが、各出力電力が50W〜100Wの範囲内にあるときには、右加熱ゾーン部5内に小鍋50aが載置されているとして(S4)、小鍋50a用の火力にて加熱されるように、インバータ回路24a、24bを制御する(S5)。
【0022】
例えば、上面操作部7あるいは前面操作部12により設定された火力が2000Wの場合、図5(b)に示すように、その1/2の1000Wの火力で小鍋50aが加熱されるように、インバータ回路24a、24bを制御する。なお、小鍋50aの火力を設定火力の1/2としたが、これは一例であって、限定されるものではない。また、予め調理メニューに応じて小鍋50aの火力を設定しておき、調理メニューの選択に応じた火力で小鍋50aが加熱されるように、インバータ回路24a、24bを制御するようにしてもよい。
【0023】
その後、制御回路27は、サーミスタ21a、21bにより検出される温度(サーミスタ温度)及び赤外線センサー22により検出される温度(IR温度)を温度検出回路25から読み込んで、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃となっているかどうかを判定する(S6)。なお、(IR温度)から減算するサーミスタ温度は、2つのサーミスタ21a、21bのうち温度が高い方を選択する。
【0024】
赤外線センサー22のIR温度は、加熱ゾーン部5a内に小鍋50aが載置されている場合、図5(a)に示すように、サーミスタ21a、21bでそれぞれ検出されるサーミスタ温度よりも高くなり、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃となる。その場合、制御回路27は、小鍋50aが加熱ゾーン部5a内に載置されているとして(S7)、次の処理に入る(S13)。この場合、制御回路27は、小鍋50aが継続して1000Wで加熱されるように、インバータ回路24a、24bを制御する。この時、小鍋50aの鍋底のうち、内加熱コイル23aと外加熱コイル23bと対向する部分から加熱され、小鍋50aの内容物が内向きに対流する。制御回路27は、前面操作部12からの停止指示を受けたときに、小鍋50aの加熱動作を終了する。
【0025】
また、加熱ゾーン部5a内に小鍋50aが載置されていない場合、例えば小鍋50aがサーミスタ21a、21bの何れか一方の上に位置するときには、IR温度の変化が低く小鍋50aの下のサーミスタ温度の変化が高くなるので、IR温度よりもサーミスタ温度が高くなり、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃とはならない。また、赤外線センサー22及びサーミスタ21a、21bの何れの上にも小鍋50aが設置されていないときには、IR温度とサーミスタ温度の両方とも変化が低くなるので、IR温度とサーミスタ温度の温度差が小さくなり、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃とはならない。
【0026】
その場合、制御回路27は、小鍋50aが加熱ゾーン部5a内に載置されていないとして(S8)、次の処理に入る(S13)。この場合、制御回路27は、小鍋50aが加熱ゾーン部5a内に載置されていないことを例えばブザーで報知し、小鍋50aの加熱を終了する。
【0027】
また、制御回路27は、S3において、各出力電力が50W〜100Wの範囲内にないときには、内加熱コイル23aの出力電力と外加熱コイル23bの出力電力との合計が100W未満かどうかを判定する(S9)。制御回路27は、その合計が100W未満のときには、右加熱ゾーン部5に通常サイズの鍋50あるいは小鍋50aの何れも載置されていないとして(S10)、次の処理に入る(S13)。この場合、制御回路27は、右加熱ゾーン部5に鍋がないことをブザーで報知し、加熱動作を終了する。
【0028】
制御回路27は、S9において、内加熱コイル23aの出力電力と外加熱コイル23bの出力電力との合計が100Wを超えているときには、通常サイズの鍋50が右加熱ゾーン部5に載置されているとして(S11)、上面操作部7あるいは前面操作部12により設定された火力で鍋50が加熱されるように、インバータ回路24a、24bを制御する(S12)。そして、制御回路27は、次の処理に入る(S13)。この場合、制御回路27は、例えば、鍋50が継続して設定火力で加熱されるように、インバータ回路24a、24bを制御し、前面操作部12からの停止指示を受けたときに、通常サイズの鍋50の加熱動作を終了する。
【0029】
以上のように実施の形態1によれば、右加熱ゾーン部5内に、内加熱コイル23aと外加熱コイル23bの一部を跨ぐ位置に小鍋用の加熱ゾーン部5aを表示し、小鍋50aで調理する場合、その加熱ゾーン部5aに小鍋50aを載置して、内加熱コイル23aと外加熱コイル23bとで加熱するようにしている。これにより、小鍋50aの鍋底のうち2つの加熱コイル23a、23bと対向する部分から加熱され、このため、小鍋50aの内容物を内向きに対流させることができ、小鍋50aの加熱時に発生しやすい突沸を抑制できる。
【0030】
また、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃のときには、加熱ゾーン部5a内に小鍋50aが載置されているとして、小鍋50aの加熱を継続し、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃とはならないときには、小鍋50aの加熱を終了するようにしている。このように、加熱ゾーン部5a内に小鍋50aが載置されているときだけ、小鍋50aの加熱を継続しているので、小鍋50aの加熱時に発生しやすい突沸を確実に抑えることができる。
【0031】
実施の形態2.
実施の形態1では、右加熱ゾーン部5内に、内加熱コイル23aと外加熱コイル23bの一部を跨ぐ位置に小鍋用の加熱ゾーン部5aを表示したが、本実施の形態は、右加熱ゾーン部5内に、形状が左右対称の2つの加熱コイルの一部を跨ぐ位置に小鍋用の加熱ゾーン部5aを表示したものである。
図6は本発明の実施の形態2の加熱調理器における天板の右加熱ゾーン部の表示例、右加熱コイルの構成及び温度センサーの配置を示す平面図である。なお、実施の形態1と同様あるいは相当部分には同じ符号を付している。
【0032】
実施の形態2においては、右加熱ゾーン部5(第1の加熱ゾーン部)の下に配置された右加熱コイル23は、中央に穴を有する2つの半円形状の加熱コイル30a、30bで構成されている。この加熱コイル30a、30bは、天板2を上方から見て、右加熱ゾーン部5の軸心を中心に、左右対称に隙間を有して配置されている。なお、半円形状の加熱コイル30a、30bを、天板2を上方から見て、右加熱ゾーン部5の軸心を中心に、前後対称に隙間を有して配置するようにしても良い。
【0033】
右加熱ゾーン部5は、通常サイズの鍋50(図3参照)に対応する径を有している。この右加熱ゾーン部5内には、2つの半円形状の加熱コイル30a、30bの一部を跨ぐ位置に小鍋用の加熱ゾーン部5a(第2の加熱ゾーン部)が表示されている。なお、図6の白い円形は、小鍋50aの鍋底を示している。
【0034】
2つの半円形状の加熱コイル30a、30bの間の隙間には、2つのサーミスタ21a、21bと赤外線センサー22とが配置されている。赤外線センサー22は、右加熱ゾーン部5の軸心上に位置され、2つのサーミスタ21a、21bは、赤外線センサー22を中心として、前後に配置されている。2つのサーミスタ21a、21bは、前述したように、天板2に接触して配置されており、赤外線センサー22は、天板2の下方に配置されている。なお、サーミスタ21a、21bを2つとしているが、1つでも良い。また、赤外線センサー22に代えて、サーミスタを用いても良い。
【0035】
実施の形態2における回路構成及び動作については、実施の形態1と同様である。
【0036】
以上のように実施の形態2によれば、右加熱ゾーン部5内に、2つの半円形状の加熱コイル30a、30bの一部を跨ぐ位置に小鍋用の加熱ゾーン部5aを表示し、小鍋50aで調理する場合、その加熱ゾーン部5aに小鍋50aを載置して、2つの半円形状の加熱コイル23a、23bで加熱するようにしている。これにより、小鍋50aの鍋底のうち、2つの半円形状の加熱コイル30a、30bと対向する部分から加熱され、このため、小鍋50aの内容物を内向きに対流させることができ、小鍋50aの加熱時に発生しやすい突沸を抑制できる。
【0037】
また、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃のときには、加熱ゾーン部5a内に小鍋50aが載置されているとして、小鍋50aの加熱を継続し、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃とはならないときには、小鍋50aの加熱を終了するようにしている。このように、加熱ゾーン部5a内に小鍋50aが載置されているときだけ、小鍋50aの加熱を継続しているので、小鍋50aの加熱時に発生しやすい突沸を確実に抑えることができる。
【0038】
実施の形態3.
本実施の形態は、右加熱ゾーン部5内に、その右加熱ゾーン部5の周方向に配置された4つの加熱コイルの一部を跨ぐ位置に小鍋用の加熱ゾーン部5aを表示したものである。
図7は本発明の実施の形態3に係る加熱調理器における天板の右加熱ゾーン部の表示例、右加熱コイルの構成及び温度センサーの配置を示す平面図である。なお、実施の形態1と同様あるいは相当部分には同じ符号を付している。
【0039】
実施の形態3においては、右加熱ゾーン部5(第1の加熱ゾーン部)の下に配置された右加熱コイル23は、右加熱ゾーン部5の軸心を中心として、周方向に配置された4つの円形状の加熱コイル31a、31b、31c、31dで構成されている。
【0040】
右加熱ゾーン部5は、前述したように、通常サイズの鍋50(図3参照)に対応する径を有している。この右加熱ゾーン部5内には、天板2を上方から見て、右加熱ゾーン部5の軸心を中心に、4つの加熱コイル31a、31b、31c、31dの一部を跨ぐ位置に小鍋用の加熱ゾーン部5a(第2の加熱ゾーン部)が表示されている。なお、図7の白い円形は、小鍋50aの鍋底を示している。
【0041】
右加熱ゾーン部5の軸心上には、赤外線センサー22が設置されている。また、右加熱ゾーン部5内であって、4つの加熱コイル31a、31b、31c、31dの外側に周方向に4つのサーミスタ21a、21b、21c、21dが配置されている。なお、赤外線センサー22に代えて、サーミスタを用いても良い。
【0042】
本実施の形態においては、4つの加熱コイル31a、31b、31c、31dには、それぞれインバータ回路が接続されている。実施の形態3の動作については、実施の形態1と同様である。
【0043】
以上のように実施の形態3によれば、右加熱ゾーン部5内に、4つの円形状の加熱コイル31a、31b、31c、31dの一部を跨ぐ位置に小鍋用の加熱ゾーン部5aを表示し、小鍋50aで調理する場合、その加熱ゾーン部5aに小鍋50aを載置して、4つの円形状の加熱コイル31a、31b、31c、31dで加熱するようにしている。これにより、小鍋50aの鍋底のうち、4つの加熱コイル31a、31b、31c、31dと対向する部分から加熱され、このため、小鍋50aの内容物を内向きに対流させることができ、小鍋50aの加熱時に発生しやすい突沸を抑制できる。
【0044】
また、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃のときには、加熱ゾーン部5a内に小鍋50aが載置されているとして、小鍋50aの加熱を継続し、(IR温度)−(サーミスタ温度)≧100℃とはならないときには、小鍋50aの加熱を終了するようにしている。このように、加熱ゾーン部5a内に小鍋50aが載置されているときだけ、小鍋50aの加熱を継続しているので、小鍋50aの加熱時に発生しやすい突沸を確実に抑えることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 本体ケース、2 天板、3 フレーム、4 左加熱ゾーン部、5 右加熱ゾーン部、5a 小鍋用の加熱ゾーン部、6 中央加熱ゾーン部、7 上面操作部、8a 左表示部、8b 左火力表示部、9a 右表示部、9b 右火力表示部、10 中央表示部、11 中央火力表示部、12 前面操作部、13 グリル調理器、14 吸気口カバー、15 排気口カバー、21a、21b サーミスタ、22 赤外線センサー、23 右加熱コイル、23a 内加熱コイル、23b 外加熱コイル、24a、24b インバータ回路、25 温度検出回路、26 計時部、27 制御回路、3a、30b 半円形状の加熱コイル、31a、31b、31c、31d 円形状の加熱コイル、50 通常サイズの鍋、50a 小鍋、100 加熱調理器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7