特許第6150704号(P6150704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150704
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】継目塗油装置
(51)【国際特許分類】
   B61K 3/02 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   B61K3/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-213520(P2013-213520)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-74407(P2015-74407A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】597110995
【氏名又は名称】株式会社レールテック
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】羽田 幸男
(72)【発明者】
【氏名】内田 收冶
(72)【発明者】
【氏名】板谷 好規
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−039297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61K 3/00
B61B 13/00
B61B 13/06
B61D 15/00
B61F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール継目部に塗油するための継目塗油装置であって、
レール上を移動するための車輪と、
油を収容する油タンクと、
前記油タンクに収容された油を拡散せずに射出するノズルとを備え、
レール上を推されて移動しながら前記ノズルから油を射出することによって、レール継目部に線状に塗油することを特徴とする継目塗油装置。
【請求項2】
レール継目部を検知する継目検知部と、
前記ノズルからの油の射出を制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、前記継目検知部によるレール継目部の検知に基づき、前記ノズルからの油の射出を開始及び停止することを特徴とする請求項1に記載の継目塗油装置。
【請求項3】
前記継目検知部は、下方に突出して先端側が後方に可動の棒状部材を有し、前記棒状部材がレール継目部の一部と接触することによってレール継目部を検知することを特徴とする請求項2に記載の継目塗油装置。
【請求項4】
前記ノズルを支持する支持部を有し、
前記支持部は、レール頭部上を転動するコロと、レール頭部の側部に接触するガイド車輪とを有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の継目塗油装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール継目部に塗油するための継目塗油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の線路において、長手方向に隣接する2本のレールを接続するレール継目部がある(例えば、特許文献1参照)。図6に示されるように、レール継目部10は、レール11の端部に設けられ、継目板12と、継目板締結ボルト13とを有する。継目板12は、2本のレール11を両側面から挟む。継目板締結ボルト13は、継目板12をレール11に締結する。2本のレール11の端部の間には、温度変化によるレールの伸縮を許容するための遊間14が設けられる。レールが伸縮する時の抵抗を低減するために、レール継目部10は塗油される。レール継目部10の塗油作業は、春と秋の年2回行われる。レール継目部10の塗油作業を手作業で行うことは効率的ではない。
【0003】
レール継目部の塗油作業の効率化を図るため、自走車に油タンク及び塗油ノズル等を搭載し、上方からレール継目部に油を噴射するレール締結部塗油装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。作業員は、塗油作業開始時にレール締結部塗油装置をレールに載せ(載線)、塗油作業後に線路外に撤去する。このレール締結部塗油装置は、塗油のための油タンク等に加え、自走するためのエンジン等を搭載するので、非常に重くなり、載線及び撤去が容易ではない。また、このレール締結部塗油装置は、自走車の前部に塗油ノズルが配置されている。このため、塗油ノズルから噴射された油が霧状に飛散して、自走車に乗っている作業員にかかるので、塗油作業が容易ではない。
【0004】
上述のような問題を回避するために、軌道自動自転車の後ろに連結して使用する継目塗油装置が作られた(図示せず)。この継目塗油装置は、車輪を有するフレームに油タンク及び塗油ノズル等を搭載し、自走機能を持たず、軌道自動自転車に牽引される。軌道自動自転車とは、作業員が線路の保守において線路上を移動する手段であり、エンジンで自走する(例えば、特許文献3参照)。このような牽引される継目塗油装置は、自走するためのエンジン等を搭載しないので、軽量となる。また、この継目塗油装置は、軌道自動自転車の後ろで油を噴射するので、噴射されて飛散する油が軌道自動自転車に乗っている作業員にかからない。
【0005】
しかしながら、このような継目塗油装置を線路で安全に用いるには、軌道自動自転車に乗る作業員として、監督と、前を向いて軌道自動自転車を操作する操作員に加え、後ろを向いて継目塗油装置を操作するオペレータの合計3人が必要であり、塗油作業が効率的とはいえない。また、軌道自動自転車として、2人乗りでは不十分であり、3人が乗れるものが必要である。さらに、後ろを向いたオペレータにとって、レール継目部が背後から視野に入ってくるので、塗油作業における視認性が良くない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−328643号公報
【特許文献2】特開2001−278044号公報
【特許文献3】特開2006−312417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、レール継目部の塗油作業を効率化するとともに、塗油作業における視認性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の継目塗油装置は、レール継目部に塗油するためのものであって、レール上を移動するための車輪と、油を収容する油タンクと、前記油タンクに収容された油を拡散せずに射出するノズルとを備え、レール上を推されて移動しながら前記ノズルから油を射出することによって、レール継目部に線状に塗油することを特徴とする。
【0009】
この継目塗油装置において、レール継目部を検知する継目検知部と、前記ノズルからの油の射出を制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、前記継目検知部によるレール継目部の検知に基づき、前記ノズルからの油の射出を開始及び停止することが好ましい。
【0010】
この継目塗油装置において、前記継目検知部は、下方に突出して先端側が後方に可動の棒状部材を有し、前記棒状部材がレール継目部の一部と接触することによってレール継目部を検知することが好ましい。
【0011】
この継目塗油装置において、前記ノズルを支持する支持部を有し、前記支持部は、レール頭部上を転動するコロと、レール頭部の側部に接触するガイド車輪とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の継目塗油装置によれば、継目塗油装置がレール上を推されて移動するので、継目塗油装置が作業員の前に位置することになり、後ろを向く作業員が不要となり、レール継目部の塗油作業が効率化されるとともに、塗油作業における視認性が向上する。継目塗油装置が作業員の前に位置しても、油は、拡散せずに射出されるので、作業員にかからない。油が拡散せずに射出されるので、油の消費量が低減される。また、この継目塗油装置は、自走するためのエンジン等が不要となり、軽量化される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る継目塗油装置の側面図。
図2】同継目塗油装置の正面図。
図3】同継目塗油装置の斜視図。
図4】同継目装置におけるノズル周辺の斜視図。
図5】レール継目部の断面図。
図6】レール継目部の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る継目塗油装置を図1乃至図5を参照して説明する。図1乃至図3に示されるように、継目塗油装置1は、レール継目部に塗油するためのものであり、車輪2と、油タンク3と、ノズル4とを備える。車輪2は、レール上を移動するために設けられる。油タンク3は、油を収容する。ノズル4は、油タンク3に収容された油を拡散せずに射出する。本実施形態では、継目塗油装置1は、線路上での保守用の移動手段である軌道自動自転車(図示せず)の前に連結され、軌道自動自転車によって推進される。継目塗油装置1は、レール上を推されて移動しながら(図1図3のX方向)、ノズル4から油を射出することによって(図1図3の矢印A)、レール継目部に線状に塗油する。
【0015】
継目塗油装置1は、継目検知部5と、制御部6とをさらに備える。継目検知部5は、レール継目部を検知する。制御部6は、継目検知部5によるレール継目部の検知に基づき、ノズル4からの油の射出を開始及び停止する。
【0016】
図4に示されるように、継目検知部5は、棒状部材51を有する。棒状部材51は、下方に突出して先端側が後方(矢印Bの方向)に可動である。継目検知部5は、棒状部材51がレール継目部の一部と接触することによってレール継目部を検知する。本実施形態では、棒状部材51が接触する部分は、継目板締結ボルトである。
【0017】
継目塗油装置1は、ノズル4を支持する支持部7を有する。支持部7は、コロ71と、ガイド車輪72とを有する。コロ71は、レール頭部上を転動する。ガイド車輪72は、レール頭部の側部に接触する。
【0018】
継目塗油装置1の各構成をさらに詳述する。継目塗油装置1は、構造部材として、フレーム8を有する(図3参照)。本実施形態では、フレーム8は、軽量化のため、アルミニウム製である。左右一対の車輪2が、フレーム8の前側下部に回転可能に設けられる。フレーム8は、軌道自動自転車と連結するため、後部に突出した連結部81を有する。フレーム8には、油タンク3及び制御部6の他に、コンプレッサ82、エアタンク83、前照灯84、及び、発電機85が搭載される。また、ノズル4を有する塗油ユニット9が、フレーム8に取り付けられる。塗油ユニット9は、左右のレールに対応して、継目塗油装置1の左右各々の下部付近に設けられる(図2参照)。
【0019】
油タンク3は、レール継目部に塗油する油を収容する容器であり、ノズル4に油を供給する。なお、図1図4において、油タンク3とノズル4とを接続する配管は、図示を省略している。
【0020】
継目塗油装置1は、左右一対の各レールの両側面に取り付けられた継目板に対応して、4つのノズル4を有する(2×2=4)。図5に示されるように、各々のノズル4は、先端がレール継目部10におけるレール11と継目板12との境の方向に向けられ、斜め下方に油を射出する。ノズル4には、油を拡散せずに射出するために、油を噴霧せずに真直ぐに飛ばすタイプが用いられる。本実施形態では、ノズル4は、スプレーガンであり、そのスプレーパターンがピンポイント押し出し塗布である(ユニコントロールズ株式会社製、型番SPV−ST−6PR)。なお、ノズル4として、ニードルノズルを用いてもよい。
【0021】
継目検知部5は、リミットスイッチ52のレバーに棒状部材51を取り付けたものである(図4参照)。棒状部材51は、通常は、下方に突出しており、レール継目部の一部と接触すると、先端側が後方に動き、リミットスイッチ52が動作する。リミットスイッチ52の出力は、制御部6に入力される(図3参照)。
【0022】
制御部6は、エアーユニットとも呼ばれ、コンプレッサ82の運転や、ノズル4の動作のためのエア供給を制御する電気回路である。制御部6は、タイマを有する。このタイマの調整によって、継目検知部5によるレール継目部の検知に基づく油の出射の開始及び停止のタイミングが調整される。
【0023】
コンプレッサ82は、圧縮空気を作る。圧縮空気は、エアタンク83に蓄えられる。エアタンク83に蓄えられた圧縮空気は、制御部6を介してノズル4等に供給される。前照灯84は、前方を照らす灯具である。発電機85は、発動発電機であり、制御部6、コンプレッサ82、及び、前照灯84等に電力を供給する。
【0024】
塗油ユニット9は、フレーム8に対して上下及び左右方向に可動とされた可動板91を有する。可動板91の下側には、支持部7が押ばね92を介して取り付けられる。塗油ユニット9は、上下シリンダ93及び左右シリンダ94を有する。可動板91は、上下シリンダ93によって昇降される。上下シリンダ93は、可動板91を降下することによって、コロ71がレール頭部に押し付ける。また、可動板91は、左右シリンダ94によって左右に動かされる。左右シリンダ94は、ガイド車輪72をレール頭部の側部に押し付ける。上下シリンダ93及び左右シリンダ94は、圧縮空気で動作する。上下シリンダ93及び左右シリンダ94に供給される圧縮空気は、オペレータの操作に基づき、制御部6によって制御される。なお、左右方向とは、レールに直交する横方向、すなわち、マクラギ方向である。
【0025】
上記のように構成された継目塗油装置1を用いたレール継目部の塗油作業について説明する。先ず、軌道自動自転車がレールに載せられる。次に、発電機85を取り外した継目塗油装置1がレールに載せられ、発電機85が継目塗油装置1に搭載される。継目塗油装置1は、軌道自動自転車の前に連結される。
【0026】
作業員として、監督とオペレータの合計2人が軌道自動自転車に乗る。オペレータは、前を向き、監督の指示に従って、継目塗油装置1及び軌道自動自転車を操作する。上下シリンダ93及び左右シリンダ94を動かして、コロ71をレール頭部に押し付けるとともに、ガイド車輪72をレール頭部の側部に押し付ける。これにより、ノズル4は、レールに対して、上下及び左右方向において位置決めされる。オペレータは、軌道自動自転車をほぼ一定速度で走らせる。継目検知部5がレール継目部を検知すると、継目塗油装置1は、自動的にレール継目部に塗油する。継目塗油装置1がレール方向に移動し、油を拡散せずに射出するので、塗油範囲は、レール方向の線状となる。
【0027】
所定区間におけるレール継目部の塗油作業が終了すると、継目塗油装置1及び軌道自動自転車が、線路外に撤去される。
【0028】
以上、本実施形態に係る継目塗油装置1によれば、継目塗油装置1がレール上を推されて移動するので、継目塗油装置1が作業員の前に位置することになり、後ろを向く作業員が不要となり、レール継目部の塗油作業が効率化されるとともに、塗油作業における視認性が向上する。継目塗油装置1が作業員の前に位置しても、油は、拡散せずに射出されるので、作業員にかからない。油が拡散せずに射出されるので、油の消費量が低減される。また、この継目塗油装置1は、自走するためのエンジン等が不要となり、軽量化される。
【0029】
制御部6が、継目検知部5によるレール継目部の検知に基づき、ノズル4からの油の射出を開始及び停止するので、作業員の負担が軽減され、レール継目部の塗油作業が効率化される。
【0030】
棒状部材51がレール継目部の一部と接触することによってレール継目部を検知するので、継目検知部5によって、確実にレール継目部が検知される。
【0031】
ノズル4を支持する支持部7がレール頭部上を転動するコロと、レール頭部の側部に接触するガイド車輪とを有するので、ノズル4が、レールに対して、上下及び左右方向において位置決めされ、ノズル4から射出される油を精度良くレール継目部に命中させることができる。
【0032】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、継目検知部5として、棒状部材51及びリミットスイッチ52の代わりに、レール継目部を非接触で検知する近接センサを用いてもよい。また、継目塗油装置1を推進する手段は、軌道自動自転車に限られず、例えば、人力で走行する軌道自転車で継目塗油装置1を推進してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 継目塗油装置
2 車輪
3 油タンク
4 ノズル
5 継目検知部
51 棒状部材
6 制御部
7 支持部
71 コロ
72 ガイド車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6