(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150807
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】自動車用の作動流体タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20170612BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20170612BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20170612BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20170612BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20170612BHJP
B29C 51/14 20060101ALI20170612BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
B60K15/03 B
B32B5/28 101
B29C49/04
B29C49/22
B29C51/10
B29C51/14
F02M37/00 301Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-531121(P2014-531121)
(86)(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公表番号】特表2014-534101(P2014-534101A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012003633
(87)【国際公開番号】WO2013041180
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2014年3月24日
(31)【優先権主張番号】102011113845.9
(32)【優先日】2011年9月21日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598001467
【氏名又は名称】カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス ヒュッツェン
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ カーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン シュピッツァー
【審査官】
諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0215102(US,A1)
【文献】
特開2009−067223(JP,A)
【文献】
実開平06−008045(JP,U)
【文献】
特開2004−250059(JP,A)
【文献】
特開2011−168072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00−15/10
B29C 49/00−49/46
B29C 49/58−49/68
B29C 49/72−51/28
B29C 51/42
B29C 51/46
B32B 5/28
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層複合材料から成る少なくとも1つの自立型剛性シェルの内部にポリエチレンをベースとする熱可塑性材料から成る実質的に閉鎖されたタンクボディを成形し、前記自立型剛性シェルは、2つの自立型シェル(3)を含み、前記自立型剛性シェルは、3層の構造を有していて、剛性フォームとしての中央支持層(5)と繊維複合材料から成る少なくとも1つの表面層(4,6)とを含むものであって、前記自立型シェル(3)を、中央ダイ(9)に備えられた構成部材キャリヤ(11)によって外側金型(8a、8b)内に配置し、前記中央ダイ(9)と前記外側金型(8a、8b)との間に管状のプリフォーム又は複数のウェブ状のプリフォームを押し出し、次いで、前記外側金型(8a、8b)を前記中央ダイ(9)に当接するように閉鎖して、前記プリフォームを前記中央ダイ(9)に対して締め付け、
前記外側金型(8a、8b)において前記管状のプリフォーム又は複数のウェブ状のプリフォームをブロー成形し、前記プリフォームを前記自立型シェル(3)上に成形することを特徴とする、自動車用の作動流体タンクを製造する方法。
【請求項2】
少なくとも2つの相補的な前記自立型シェル(3)を、前記外側金型(8a、8b)に導入し、完成したタンクのための完全に閉鎖したジャケットを形成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記プリフォームを、炭化水素のための少なくとも1つのバリヤ層と、少なくとも1つの外側接着促進剤層とを備えて押出し成形し、外側接着促進剤層が少なくとも1つの前記自立型シェル(3)と接触させられる、請求項1又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適にはポリエチレンをベースとする熱可塑性材料から成る実質的に閉鎖されたタンクボディを有する、自動車用の作動流体タンク、特に、プラスチックから成る燃料タンク又は二次流体タンクに関する。
【0002】
燃料タンクは、特に、炭化水素のためのバリヤ層を有する多層壁構造を有するか、又は化学処理(フッ素化、スルホン化)によって炭化水素に対して耐性に形成されている。HDPEをベースとするプラスチック燃料タンクは、比較的複雑な三次元形状を成すように製造することができ、かつ減圧されたときに比較的寸法が安定しているという利点を有する。さらに、このようなタンクは、衝撃による力を吸収することができる。衝撃又は落下による燃料タンクの短時間の変形は、通常、永久変形につながらない。
【0003】
タンクの内部の雰囲気圧力に対する差圧を補償するために、燃料タンクに円柱状の内部強化エレメントを装備するという基本的に公知の方式がある。プラスチックから成る燃料タンクと、金属から成る燃料タンクとを、ストラップによって外側から安定化するという方式も公知である。ストラップは、基本的に、差圧及び/又は燃料の質量による燃料タンクの膨張を防止する。さらに、ストラップは、燃料タンクを車両に固定するためにも機能する。
【0004】
特にポリエチレンをベースとする燃料タンクに関連して、タンクの安定化は特に重要である。なぜならば、ポリエチレンは、室温においてさえも、長期間の圧力又は引張応力を受けると流動する特性を有し、その結果、タンク内の支持エレメントの形態の公知の安定化手段が、全ての状況において満足できる結果を提供しなくなるからである。ストラップの提供は同様に、上述の問題を考慮することができない。
【0005】
プラスチックから成る燃料タンク用の安定化手段は、ハイブリッド車の導入とともにますます重要になっている。ガソリン動力車の燃料タンクは、燃料蒸気フィルタを介して通気され、実質的に加圧されない状態で使用される。自動車の内燃機関の作動中、燃料蒸気フィルタはリバース流によってパージされ、内燃機関に必要な空気は、内燃機関の作動段階の間、燃料蒸気フィルタを介して引き込まれる。燃料蒸気フィルタの吸収能力は、相応に設計されている。
【0006】
ハイブリッド車の場合、内燃機関の作動サイクルの回数及び作動時間は、著しく短縮される。その結果、燃料蒸気フィルタ用の可能なリバース流パージサイクルの回数及び継続時間も同様に制限される。これは、燃料蒸気フィルタの適切な寸法決めを必要とし、これには設置スペースの理由からしばしば制限がある。したがって、ハイブリッド車用の燃料タンクを時々大気から遮断することが望ましく、これにより、大気に対して燃料タンク内に約+400mbar〜−150mbarの圧力変動が生じる場合がある。
【0007】
このような圧力変動は、タンク内に生じるガスの量に大きく依存する。蒸気圧力勾配に応じて、燃料は、ガスをより多く又はより少なく放出する傾向がある。このガス放出作用は温度に依存し、したがって、特に燃料が大きく加熱されると、タンク内の圧力増大が生じる場合がある。
【0008】
圧力変動は、例えば液体が解凍及び/又は凍結するときに、排気ガスからの窒素酸化物の触媒除去のための尿素タンクにおいても生じる恐れがある。
【0009】
本発明の基礎となる課題は、上述の問題を考慮した、プラスチックから成るタンクを提供することである。
【0010】
前記課題は、好適にはポリエチレンをベースとする熱可塑性材料から成る実質的に閉鎖されたタンクボディを有し、かつタンクボディの少なくとも幾つかの部分を包囲する多層複合材料から成るジャケットを有する、自動車用の作動流体タンク、特に、プラスチックから成る燃料タンク又は二次流体タンクによって解決される。
【0011】
本発明によれば、この種のジャケットは、一方では安定化効果を有し、他方では、前記ジャケットはタンクを絶縁し、これは、タンクを安定化すること以外に、タンク内の圧力が最小限に減じられるという効果を有する。なぜならば、例えば上昇した外側温度がタンク内の燃料に伝わらないからである。さらに、この種の手段は、駆動動力学によって生ぜしめられかつ絶縁がなされていない場合に弱められることなく乗員室へ伝えられる、燃料によるはね飛ばし音の低減に寄与することができる。
【0012】
本発明のタンクの特に好適な態様では、ジャケットは、少なくとも1つ、好適には2つの自立型シェルを有することが想定されている。ジャケット又はシェルが、比較的厚い設計であることができる少なくとも1つの剛性フォーム層を有すると特に有利である。この場合、タンクボディの強化は、サンドイッチ構造を提供することによって達せられるのに対し、安定化及び絶縁は同時に、軽量の設計によって達せられる。
【0013】
本発明によるタンクの特に好適な態様では、ジャケット又はシェルは、3層構造であり、かつ中央絶縁層、特に剛性フォーム層を有することが想定されている。例えば、剛性フォーム層は、ポリウレタンフォーム、PVCフォーム、PPフォーム、PEフォーム、PETフォーム又はポリスチレンフォームから形成されてよい。
【0014】
ジャケット/シェルは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から成る少なくとも1つの表面層を有することができる。表面層は、好適には繊維強化されている。
【0015】
他方の表面層又は両方の表面層は、遮熱材料から成ることができる。
【0016】
例えば、ジャケット/シェルは、外側にアルミニウム箔を有することができ、内側にはHDPE層又はLDPW層を設けることができる。内面層がLDPE層から成る場合、これは、ジャケット又はシェルと、タンクボディの外壁との材料結合を促進する。
【0017】
ジャケットの外面層、又はシェルのうちの一方の外面層が、アルミニウム箔又はその他の金属箔から成る場合、例えば、これは、タンクの断熱への付加的な寄与を提供する。この種の層は、タンクを放射熱から遮断する。
【0018】
例えば、ジャケット又はシェルの1つ以上の表面層が繊維複合材料から成ることも可能である。適切な繊維複合材料の例は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂のマトリックスに埋め込まれた連続的な繊維である。例えば、対応するシェルは、"プリプレグ"(予備含浸繊維)又は有機金属シートから製造されていてよい。連続的な繊維は、織布又は非けん縮布としての、完全な一方向層の形態であることができる。
【0019】
ジャケットがタンクボディを完全に包囲していると好適である。本発明によれば、"完全に"とは、もちろん、タンクに設けられたあらゆる開口、タンクを貫く通路、タンクに設けられた接続部が、ジャケットによって被覆されずにあることを意味する。
【0020】
本発明によるタンクの好適な態様において、ジャケットがタンクボディに材料で結合されることが想定されている。
【0021】
ジャケットが、それぞれがサンドイッチ構造を有しかつ、完成した燃料タンクの外形に適合するように予備製造された、2つのシェルから成ると好適である。これらのシェルがサンドイッチ構造として設計されていると有利であり、すなわち、シェルがそれぞれ、比較的薄い外面層を有し、これに対して、連続気泡又は独立気泡フォームから成る内側層が、表面層と支持層との複合的な結合により生じるシェルの全体的な強度に対する大きな寄与をなすことが好適である。この層は、例えば数mm〜数cmの厚さを有してよいPU剛性フォーム層であってよい。中央層、内側層若しくは下側支持層の厚さは、特に、システム全体の強度に寄与する。なぜならば、これは、表面層とともに複合構造を形成しているからであり、その結果、曲げ応力を受けたときに、引張荷重が特に表面層によって吸収されるからである。曲げ応力を受けると、支持層は中立軸線を形成する。支持層の厚さによって、複合的な結合を提供されたシステム全体において、引張応力/圧縮応力のゾーンを選択的に、例えば繊維強化することができる表面層の領域へシフトさせることができ、これにより、システムに高い曲げ強さを提供することを助けることができる。さらに、この種の剛性フォーム層は、燃料タンクの断熱及び遮音にも寄与する。
【0022】
本発明の基礎となる課題は、さらに、多層複合材料から成る少なくとも1つの自立型剛性シェル上に又はその内部にタンクボディを成形することを含む、熱可塑性材料から成るタンクを製造する方法によって達成される。
【0023】
タンクボディは、例えば押出ブロー成形によって得ることができる。
【0024】
本発明による方法の好適かつ有利な実施の形態では、前記方法は、複数の部分から成るブロー金型において管状のプリフォーム又は複数のウェブ状でかつシート状のプリフォームを押出ブロー成形し、シェルがブロー金型に配置され、1つ又は複数のプリフォームはシェル上に成形されることが想定されている。
【0025】
例えば、シェルは、公知の形式でロボットによってインサートとして金型内に配置することができる。シェルは、タンクのそれぞれの半分の輪郭を完全に再現しなくてよい。しかしながら、好適な本発明による方法の態様では、それぞれがタンクの1つの半分輪郭を形成する2つのシェルが、それぞれ予備製造される。シェルは、ブロー金型の2つの相補的なキャビティに配置され、前記キャビティは金型キャビティを形成している。タンクボディは、管、スプリット管、又は可塑化されたプラスチックの複数のウェブ状でかつシート状のプリフォームからシェルに成形され、これにより、HDPEをベースとする好適には多層のタンクボディと、それぞれそれ自体に自立型サンドイッチ構造を有する2つの固体シェルとから成る高強度複合材を提供する。
【0026】
シェルは、別の製造プロセス、例えば、深絞り、スラッシュ成形又は"RIM"(反応射出成形)法、又は回転焼結によって得ることができる。
【0027】
シェル又はジャケットの多層サンドイッチ複合構造は、必要に応じて、広範囲の様々な異なる形式で構成することができる。1つの層が複合材をタンクに結合するために機能し、1つの層が絶縁のために機能し、別の層が機械的強度を高めるために機能することができる。層のための可能な材料は、タンク壁のための材料と同じ材料、又は異なる材料、例えば、プラスチック、繊維複合材料、金属、アルミニウムフォーム、有機材料、例えば木材又は板紙、又はその他の有機繊維を含む。
【0028】
サンドイッチ複合材としてのシェルの製造は、例えば、乾燥織布ウェブのサイズへの切断、複数の部分から成る水平金型への織布ウェブの挿入、PUフォームによる織布ウェブのウェッティング及びフォーミング、及び輪郭付けられたシェルを形成するための金型の閉鎖を含むことができる。次いで、例えば仕上げステップにおいてこのシェルを切断/トリミングすることができる。
【0029】
これに代えて、熱を加えながら個々の構成部材を圧縮することによってシェルを製造することができる。しかしながら、個々の構成部材の接合高温成形、例えば押付けによって個々の構成部材の複合材を製造することもできる。これは、ホットメルト接着剤/LDPEの形態の接着促進剤の使用及び加熱によって達成することもできる。この場合、例えば、シェルの切断/トリミングを同様に仕上げステップとして提供することができる。
【0030】
本発明の1つの態様によれば、タンクの製造方法は、少なくとも2つの相補的なシェルが、ブロー金型に導入され、完成したタンクのための完全に閉鎖したジャケットを形成することを特徴とする。タンクボディを強化するシェルは、全周にわたって接合される必要はなく、シェルは、システムに強度を提供する一方で、実質的に閉鎖されたタンクボディは、システムの密閉性を保証する。したがって、タンクボディは、炭化水素のためのバリヤ層を備えた多層の押出物から製造することができる。
【0031】
例えば、プリフォームは、炭化水素のための少なくとも1つのバリヤ層と、少なくとも1つの外側接着促進剤層とを備えて押出し成形することができ、シェルがタンクボディと材料結合するように、外側接着促進剤層が少なくとも1つのシェルと接触させられる。
【0032】
しかしながら、これに代えて、プリフォームの外側層、すなわちシェルに面したプリフォームの層がHDPEから成る一方で、シェルの表面層が、タンクの製造中にプリフォームの外側HDPE層と材料結合するLDPEから成ることも可能である。
【0033】
もちろん、タンクボディとのシェル又はジャケットの確実な係合も適切であり、望ましい。金型内に配置されたサンドイッチ状半シェルの部分の背後に材料がブロー成形され、半シェルがタンクボディに実質的に永久に結合されることを保証するように、金型を設計することができる。
【0034】
本発明によるタンクの好適な態様では、タンクを車両に固定するための固定手段が、タンクボディを包囲するジャケットに設けられることが想定されている。例えば、成形中にジャケットに固定突起を設けることができる。固定突起により、完成したタンクを自動車の据付位置に固定することができ、これにより、ストラップを使用する必要性を排除する。
【0035】
以下に図面に示された例示的な実施の形態によって本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】2つの半シェルによって安定化/強化された、本発明による燃料タンクの斜視図を示している。
【
図2】シェルの層構造を示す、シェルのうちの1つの断面の拡大図である。
【
図3】燃料タンクのジャケットの構造の概略図である。
【
図4】ブロー金型半部のキャビティに2つのシェルが導入されるときの、本発明による燃料タンクを製造するためのブロー金型の概略図を示している。
【
図5】熱可塑性材料から成るプリフォームを押出し成形する方法ステップを示す、
図4に対応する図を示している。
【
図6】ブロー金型に配置されたシェル上へのタンクボディの成形を例示する、対応する図を示している。
【
図7】タンクボディの最終的なブロー成形中の閉鎖されたブロー金型の図を示している。
【0037】
図1は、本発明による完成した燃料タンク1の概略図を示している。本発明による燃料タンク1は、熱可塑性材料から成る内側タンクボディ2と、示された例示的な実施の形態では多層複合材料から成る2つの相補的なシェル3から形成された外側ジャケットと、を含む。単純にするために、燃料タンク上に成形されたフィラー管は、示されていない。
【0038】
示された例示的な実施の形態では、シェル3は、内側表面層4と、中央支持層5と、外側表面層6とを含む、全体として三層構造を有する。"内側"及び"外側"という用語は、完成した燃料タンク1におけるシェル3の据え付けられた位置に関し、すなわち、内側表面層4はタンクボディ2の外壁に面しているのに対し、外側表面層6は燃料タンク1の外側を形成している。
【0039】
既に上述したように、シェルは、タンクボディ2の製造とは別の作業において、完全に成形された、完成した、自立型のエレメントとして製造されている。表面層4及び6は、シェル3の中央支持層5と緊密結合を形成しており、例えば支持層5はPU剛性フォームから成り、表面層4及び6はそれぞれ、支持層5の材料によって浸透された又は部分的に浸透又は含浸された、織布/非けん縮繊維材料から成る。ここで支持層5は、表面層4及び6の約2倍〜3倍の厚さであり、特にその深さにより、シェル3の機械的耐荷能力及び安定性を担っている。
【0040】
図3から分かるように、タンクボディ2のための閉鎖されたジャケット又は閉鎖されたケーシングを形成するようにシェル3を接合することができる。
【0041】
燃料タンクのタンクボディ2は、押出ブロー成形により慣用の形式で製造され、タンクボディのタンク壁は、好適には6層の層構造を有し、好適には、炭化水素のためのバリヤとして、それぞれ接着促進剤層に埋め込まれた、2つの外側HDPE層と、少なくとも1つのリサイクル物層と、内側EVOH層とを含む。タンクボディ2の外側層は、好適には、少なくとも主としてHDPEから成るのに対し、接着促進剤層は、LDPEから成る。
【0042】
既に上述したように、タンクボディ2の外側層は、燃料タンク1の製造中にシェル3と材料結合、即ち接着又は溶着することができるLDPEから成ることができる。
【0043】
燃料タンク1の製造のための単純な態様において、管状の押出物からタンクボディを製造することができ、この管状のプリフォームは、慣用のブロー金型の開放した部材の間に挿入される。例えば、シェル3は、ロボットによって前もって、金型の開放した部材に又はブロー金型のキャビティに配置することができる。次いで、ブロー金型は、管の周囲に閉鎖され、金型内に配置されたシェル3内でプリフォームがブロー成形される。この方法の間に、シェル3の部分の背後においてタンクボディ2のプラスチックの流動が生じていることができ、これにより、シェル3とタンクボディ2との間の確実な係合を生じる。
【0044】
燃料タンク1の製造の別の態様が、
図4〜
図7に示されている。
【0045】
これによれば、本発明による燃料タンクの製造は、2つの外側金型8a,8b及び中央ダイ9を含む合計で3つの部材を備えたブロー金型7において行われる。中央ダイ9は、主として、タンクボディ2の壁部を成形するために、外側金型8a,8bによって形成されたキャビティをシールするために使用される。第2に、中央ダイ9は、例えばシェル3をも含む、インサートなどの、内部に取り付けられる構成部材を、外側金型8a,8bのキャビティ10内へ導入するために使用される。
【0046】
もちろん、内部に取り付けられた構成部材を、タンクボディ2の内壁に位置決めするために、中央ダイ9を使用することもできる。しかしながら、これは、本願の主題ではない。
【0047】
図平面において互いに接近及び互いから離反することができる外側金型8a,8bの間には、前記中央ダイ9が配置されており、中央ダイ9は、外側金型8a,8bの移動方向に対して横断方向に、すなわち図平面に対して垂直に前後に移動することができる。中央ダイ9は、構成部材キャリヤ11を有し、構成部材キャリヤ11は、空圧式シリンダ12によって、中央ダイ9によって形成されたフレームを起点として、外側金型8a,8bの方向で出入することができる。
図4に示された方法ステップでは、構成部材キャリヤ11は、シェル3に取り付けられており、これらのシェル3は、まず外側金型8a,8b内へ移動させられ、キャビティ10内に配置される。例えば、シェルを、真空によってそこに固定することができる。別の方法ステップにおいて、ウェブ又はセクションの形態のシート状プリフォーム13は、押出ヘッドから、懸吊位置において、すなわち重力の方向に連続的に押し出される。上述のように、プリフォーム13は、EVOHのバリヤ層を備えた、HDPEをベースとする6層同時押出物として設計されている。別の方法ステップにおいて、外側金型8a,8bが中央ダイ9に当接するよう閉鎖され、外側金型8a,8bはそれぞれプリフォーム13を中央ダイ9に対して締め付ける。
【0048】
次いで、連続的に押し出されるプリフォーム13の出現を妨げることを回避するために、ブロー金型7は、押出ヘッドの下側から退出させられる。
【0049】
次いで、プリフォーム13は、キャビティ10を排気することによって又はプリフォームをキャビティ10の内壁に押し付けるための吹付け空気を使用することによって、シェル3に接触させられる。融解温度におけるプリフォーム13からの、接触による熱伝達によって、又はシェル3に設けられた開口によって可能となる背部の周囲の流れによって、シェル3と、タンクボディ2との間の緊密な結合がもたらされる。
【0050】
別の方法ステップにおいて、例えば、内部に取り付けられた構成部材を、中央ダイ9を介して、まだ融解温度にある半シェル内へ導入することができる。上述の構成部材キャリヤは、例えば、同様にこのために使用することができる。最後に、中央ダイ9は、外側金型8a,8bの間から取り出され、外側金型8a,8bは、互いに閉鎖され、それぞれ半シェル内に成形されたプリフォーム13は、周縁部ピンチオフエッジ14の領域において溶接され、完成した燃料タンク1が得られる。周縁部ピンチオフエッジの領域において又はシェル3の接合部の領域においてシェル3を互いに結合することは、必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0051】
1 作動流体タンク
2 タンクボディ
3 シェル
4 内側表面層
5 中央支持層
6 外側表面層
7 ブロー成形ツール
8a,8b 外側金型
9 中央ダイ
10 キャビティ
11 構成部材キャリヤ
12 空圧式シリンダ
13 プリフォーム
14 ピンチオフエッジ
PE ポリエチレン
HDPE 高密度ポリエチレン
LDPE 低密度ポリエチレン
EVOH エチレンビニルアルコール