(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150810
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】電気エネルギーを熱エネルギーに変換するためのシステム
(51)【国際特許分類】
H05H 1/32 20060101AFI20170612BHJP
B23K 10/00 20060101ALI20170612BHJP
B23K 10/02 20060101ALI20170612BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20170612BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
H05H1/32
B23K10/00 504
B23K10/02
H05H1/24
H01S3/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-533906(P2014-533906)
(86)(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公表番号】特表2014-534561(P2014-534561A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012069647
(87)【国際公開番号】WO2013050492
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年10月1日
(31)【優先権主張番号】1158968
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】598098652
【氏名又は名称】ユーロプラスマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ロベール−アルヌイユ,ジャン−ポール
【審査官】
長谷川 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2000/064618(WO,A1)
【文献】
米国特許第03404403(US,A)
【文献】
米国特許第06373023(US,B1)
【文献】
特開2003−282296(JP,A)
【文献】
特開2004−001084(JP,A)
【文献】
特開2002−018584(JP,A)
【文献】
特開2002−011586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/32
B23K 10/00
B23K 10/02
H01S 3/00
H05H 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電極を結合する軸に沿って距離dだけ隔てられ、電位差(pd)に曝されるときの影響が及ぶ区域を画定する力線を生成することができる2つの電極(1、2)と、前記電位差(pd)をもたらすことができる、前記電極用の電源装置(20)と、前記2つの電極間に電気アークをトリガする装置とを備え、前記トリガ装置が、レーザ・パルスを放出する装置(30)と、前記2つの電極の影響が及ぶ前記区域に配置されたN個の集束ポイントで前記レーザ・パルスを集束させる装置(40)とを備え、集束ポイント当たりの前記レーザ・パルスの尖頭パワー密度が1GW/cm2よりも高く、前記レーザ・パルスの尖頭パワーおよび固定された前記距離dに応じてNが決定され、それにより、前記2つの電極間に導電区域を形成することを特徴とする、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するシステム。
【請求項2】
前記集束装置(40)が、レーザ・パルス放出装置の出力に配置され、前記レーザ・パルスの少なくとも1つの高調波を生成することができる周波数逓倍器(42)と、前記逓倍器の下流に配置され、各ポイントを集束させ、次いで前記高調波に応じて決定される色収束光学素子(41)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギーを変換するシステム。
【請求項3】
前記集束装置が、いくつかの集束ポイントに前記レーザ・パルスを集束させることができる、無色収束光学素子(41)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギーを変換するシステム。
【請求項4】
一方または両方の電極(1、2)を穿孔して、前記レーザ・パルスが通過できるようにすることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエネルギーを変換するシステム。
【請求項5】
電極(2)の一部分が、前記レーザ・パルスの経路上にあって、このレーザ・パルスと相互作用することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエネルギーを変換するシステム。
【請求項6】
電極(2)が、起動装置ポイント(21)に置き換えられてもよく、または前記起動装置ポイント(21)を追加されてもよいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエネルギーを変換するシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の変換システムと、2つの電極間にプラズマ生成ガスを注入する装置とを備える、プラズマ・トーチ。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の変換システムを備える、ウェルディング・ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、プラズマ・トーチまたはウェルディング・ステーションなどで使用される、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する分野であり、これは電気アークによって起動される。本発明は、より詳細には、電気アークをトリガする装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無移送アーク・タイプのプラズマ・トーチは、その一例が
図1に示してあり、プラズマ生成ガス3注入チャンバ4によって隔てられた2つの同軸管状電極1、2を備えており、このガスがトーチ内に渦状に注入されるように考案されている。これらの電極は、ガス・フローの方向に対して、上流および下流と呼ばれている。下流電極2には、起動装置ポイント21が設けられている。
【0003】
トーチの動作の方式を以下で簡潔に思い起こしてみる。
−連続的な電流を各電極の端子に印加することにより、電極1と電極2の間で電気アーク10を起動することが可能になる。現在では、2つの電極を「接点」短絡させることにより、高出力の(すなわち80kWを超える)プラズマ・トーチ内部でのこの電気アークのトリガが実行される。すなわち、上流電極1は、その軸に沿った並進運動において移動可能であり、下流電極2に接触するまでプラズマ・トーチの内部を進む。その後、2つの電極の端子に電流が加えられ、したがって、電気アーク10を生成するのと同じ時点で、動作距離dだけ隔てられるまで、2つの電極は非常に離れている。
−アークに接触すると、ガス3は急速に加熱され、非常に高温のプラズマに変換される。
−界磁コイル5を用いて結合されたトーチにプラズマ生成ガス3を注入することにより、その後、トーチの各電極内部の位置を占めるよう、このアークを伸ばすことが可能になる。
−それに引き続いて、トーチの下流端から縦一列になってイオン化ガスが排出される。この結果として、通常4000Kの非常に高温のプラズマ・ジェットすなわち「ダーツ(dard)」が生じる。
−上流電極の周りに巻かれた磁場コイル5により、損耗の領域を制御し、電極1の寿命を延ばすよう、アーク末端10の動きを駆動することが可能になる。
−電極の外部表面に接する水膜の循環を確実におこなう冷却システム6により、アークまたはプラズマに露出している構成部品の冷却が可能になる。
−特定の電流を同時に確定し、トーチに供給されるプラズマ生成ガスの流速を制御することによって、トーチの動作ポイントが選ばれる。
【0004】
この点孤プロセスは非常に有効であるが、それにもかかわらず欠点がある。
−具体的には、上流電極を液圧ラムに取り付けて、その並進運動を可能にしなければならない。このラムは、関連する水圧プラントとともに、かなりの投資になることを意味し、定期メンテナンス作業が必要となる。
−電極の後退と電流の印加の間の2つの時間ずれを調整することは非常に難しい。
−さらに、電源は、高い無負荷電圧ならびに電流の大きな変動に耐えることができなければならず、この電流変動は通常、「接点」短絡時に必要とされる電圧スパイクと動作電圧との間の点火電流に応じておよそ100A程度である。これらの電源により、接点短絡と開回路の間で遷移するときに2つの電極から構成される電気回路での電流をサポートすることが可能になるはずであり、この開回路は、2つの電極およびイオン化されたプラズマ生成ガスを含む。
【0005】
従来のスパーク・プラグまたは高周波放電を使用することなど、低出力プラズマ・トーチにおいて放電をトリガするための他の技法も知られている。しかし、これらの技法に必要とされる電極間の離間距離がわずかであることを考慮すると、これらの技法は、高出力プラズマ・トーチなどのエネルギー伝送システムには適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの欠点を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の原理は、システムの各電極間にトリガ用レーザ・プラズマを生成することであり、これらの電極は、その動作距離である固定距離だけ隔てられている。トリガ用レーザ・プラズマは、2つの電極間の様々なポイントに集束する強力なレーザ・パルスを使用して生成される。
【0008】
より正確には、本発明の主題は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するシステムであって、
−2つの電極を結合する軸に沿って距離dだけ隔てられ、電位差(pd)に曝されるときの影響が及ぶ区域を画定する力線を生成することができる2つの電極と、
−この電位差(pd)をもたらすことができる、これらの電極用の電源装置と、
−これら2つの電極間に電気アークをトリガする装置とを備えるシステムである。
【0009】
トリガ装置は、レーザ・パルスを放出する装置と、2つの電極の影響が及ぶ区域に配置されたN個の集束ポイントでこのパルスを集束させる装置とを備え、集束ポイント当たりのパルスの尖頭パワー密度が1GW/cm
2よりも高く、それにより、2つの電極間に導電区域を形成し、パルスの尖頭パワーおよび固定された距離dに応じてNが決定されることが主として特徴になっている。
【0010】
これにより、以下が可能になる。
−固定距離だけ隔てられた電極を使用すること。したがって、
−前文で述べたラムなど、これらの電極を並進させる装置なしで済ますこと。
−接点短絡と、無負荷電圧が高く電流変動が大きいことに対するその制約条件とによって引き起こされない、エネルギー伝送システムの電源を簡略化すること。
−電極の後退と電流の印加の間の時間ずれの制約条件なしで済ますこと。
【0011】
本発明の特徴によれば、集束装置は、パルス放出装置の出力に配置され、レーザ・パルスの少なくとも1つの高調波を生成することができる周波数逓倍器と、逓倍器の下流に配置され、各ポイントを集束させ、次いでこれらの高調波に応じて決定される色収束光学素子とを備える。
【0012】
ある選択肢によれば、集束装置は、いくつかの集束ポイントにパルスを集束させることができる無色収束光学素子を備える。
【0013】
一方または両方の電極を穿孔して、レーザ・パルスが通過できるようにすることができる。
【0014】
電極の一部分は、レーザ・パルスの経路上にあって、このパルスと相互作用することが好ましい。
【0015】
任意選択的に、電極は、起動装置ポイントに置き換えられ、またはそれを追加される。
【0016】
この伝送システムは、ウェルディング・ステーションとすることができる。
【0017】
本発明の主題はまた、前述の伝送システム、および2つの電極間にプラズマ生成ガスを注入する装置を備えるプラズマ・トーチである。
【0018】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、限定しない例として示した以下の詳細な説明を読むことによって明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】従来技術による例示的なプラズマ・トーチを概略的に表す。
【
図2a】本発明による、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するシステムの例示的な実施形態を概略的に表す。
【
図2b】本発明による、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するシステムの例示的な実施形態を概略的に表す。
【
図2c】本発明による、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するシステムの例示的な実施形態を概略的に表す。
【
図2d】本発明による、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するシステムの例示的な実施形態を概略的に表す。
【
図3a】離隔距離d、電極の端子の両端に印加される電圧pd(
図3aでは100V、
図3bでは700V)、およびレーザ・パルスのエネルギーの様々な値について、2つの電極間に生成される電気アークの尖頭電圧Uの段階的な変化を示す。
【
図3b】離隔距離d、電極の端子の両端に印加される電圧pd(
図3aでは100V、
図3bでは700V)、およびレーザ・パルスのエネルギーの様々な値について、2つの電極間に生成される電気アークの尖頭電圧Uの段階的な変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
各図を通して、同じ要素には同じ参照番号を付してある。
【0021】
静電学に教示されているように、3kV・mm
−1を超える電界が乾燥空気中で印加されると、この乾燥空気はもはや誘電体媒体としての挙動を示さず、電気アークが生成される。この現象の原因となる微視的なメカニズムは、空気中における少数の自由電子の電界による加速である。これらの自由電子は、加速され、衝突し、空気を構成する中性ガス(実質上N
2およびO
2)をイオン化する。1つまたは複数の電子を引き離すことによって、中性ガスのイオン化が顕在化する。したがって、電子なだれ現象が得られ、これは、2つの電極間の軸に沿って電子の数が非常に急激に増加することによって顕在化する。初めは絶縁媒体であった空気が、非常に急速に導電性をもつようになる。次いで、電気アークの原因となるかなり大きな電流が、2つの電極間に流れる。
【0022】
数センチメートル離れてpdに曝されている2つの電極間に、強力なレーザ・パルスを集束させることによって、電気アークが生成されることを示してきた。
【0023】
電気アーク点孤の原理は、上流電極と下流電極の間にトリガ用レーザ・プラズマを生成することである。トリガ用レーザ・プラズマは、空気中に含まれる様々なガスをイオン化する、集束した強力なレーザ・パルスを使用して生成される。電子は、多光子イオン化によって生成される。電子密度が十分に高くなるとすぐに、初めは自由電子を伴うこれらの電子は、レーザ・パルスのエネルギーを強く吸収する(逆「制動放射」という用語で知られていることもある現象)。レーザ・パルスを伴う電磁界が存在する場合、電子はこのように加熱され、空気またはガスの様々な分子と衝突する。電子は、1つまたは複数の電子を分子から引き離すことによって分子をイオン化する。これにより、電子およびイオンの密度が非常に激しく増加することによって顕在化する電子なだれ現象が生じ、これによって空気の抵抗率が著しく低下する。照射区域では、したがって、きわめて高温のプラズマが生成される。このホット・プラズマが、空気中またはガス中を急速に広がり、可視状態で放射し、次いで、数マイクロ秒のうちに消滅する。1ns〜5μsの間のこのプラズマの比較的短い寿命において、レーザ・パルスによって照射される区域は、したがって導電性が強く、大きいpdに曝された2つの電極間での電気アークのトリガを容易に可能にすることができる。
【0024】
しかし、既に指摘してきたように、レーザ・パルスによって誘起されるプラズマは、時間の経過とともに非常に良好に集中するが、やはり空間的に局在化する。したがって、レーザ・プラズマが生成された、レーザ・ビームの軸に沿ったこの区域のみが、電流の経路に対してほとんど抵抗を示さない。レーザ・プラズマを生成するためには、パルス当たりのエネルギーは1GW/cm
2よりも大きくなければならない。エネルギーが10ミリ・ジュールの1ナノ秒のパルスにおいて、ビームの伝搬する軸に沿ってプラズマが延びる範囲は、通常約1mmである。
【0025】
したがって、レーザ・ビームの軸に沿ったレーザ・プラズマの寸法は、演繹的には数ミリメートルに制限され、垂直方向にはほんのわずかである。したがって、これにより、プラズマ・トーチの電極間の距離が数ミリメートルに制限され、この距離において、前文で述べた技術が容易に実装できるものになる。この区域は、通常1mm未満であるが、各電極は、その動作位置において典型的には8mm〜15mmの間の固定距離だけ離れている。
【0026】
本発明は、レーザ・プラズマが誘起される区域を広げることに基づいている。2つの電極間の軸に実質的に沿って配置された様々なポイントにおいて(より具体的には、2つの電極によって生成される力線の影響が及ぶ区域であって、この影響が各電極を連結する軸に沿って最も強くなる区域において)レーザ・パルスを集束させることによって、これが得られる。様々な集束ポイントの近傍において、レーザ・プラズマが生成された区域の導電性が強くなる。このようにレーザ・プラズマの数を増やし、2つの電極を連結する軸に沿ってこれらのレーザ・プラズマを位置合わせすることによって、導電性区域が広がる。
【0027】
集束ポイントのそれぞれにおいて、パルスの尖頭パワーが、指示された尖頭パワーの閾値よりも大きいとき、レーザ・プラズマが生成される。実際には、集束ポイントは事実上、その非ゼロ寸法が焦点距離およびレンズ上のレーザ・ビームのサイズに比例するスポットであり、したがって、有利には、レーザ・スポットのサイズを減らし、したがって、このスポット上にパルスのエネルギーを集中させるよう、短焦点距離の焦点合わせ、およびレンズの入射ひとみをカバーするレーザ・ビームが選ばれる。プラズマは、一連のパルスによって持続されることが好ましく、パルスの放出速度は、その持続時間に依存する。約5nsのパルスに対しては10Hzの速度で十分であり、それより高い速度でもよいが必要ではない。
【0028】
電気アークを容易にトリガするためには、導電区域が必ずしも一様でなく、場所によっては導電性が強く、場所によっては導電性が弱い場合でも、様々なレーザ・プラズマは、2つの電極間に連続的な導電区域を生み出すのに十分近くなければならない。したがって、電極は、距離d
1<dを超えて離れてはならず、この距離は、一方では、各電極の端子の両端に印加されるpdに依存し、他方では、これらの電極間のガスに依存する。たとえば、乾燥した空気および約10キロボルトのpdにおいては、様々なレーザ・プラズマを分離する距離d
1は、10ミリメートルよりも長くてはいけない。後者の距離は、先に指摘したように、レンズの焦点距離を変化させることにより、レーザ・スポットのサイズを変更することによって変調することもできる。
【0029】
もちろん、様々なプラズマ間の距離d
1を長くできるほど、電極間距離dを増やすことがより一層可能になる。LIBS効果を介して、レーザ・パルスを用いて電極の一方の一部分を除去することにより、この電極間距離をさらに増やすことができる。このLIBSという頭辞語は「レーザ誘起破壊分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy)」を表している。後者の場合、レーザ・パルスは、上流電極または下流電極の一部分を、気化および/またはイオン化する。このようにして生成される区域は、同様に電流の経路に対してほとんど抵抗を示さない。
【0030】
したがって、本発明によって以下が可能になる:
−固定距離dだけ隔てられた電極を使用すること、
−これらの電極を並進させる装置なしで済ますこと、
−接点短絡と、無負荷電圧が高く電流変動が大きいことに対するその制約条件とによって引き起こされない、エネルギー伝送システムの電源を簡略化すること、
−電極の後退と電流の印加の間の時間ずれの制約条件なしで済ますことであり、実際、システムをオンにすると、動作電圧が各電極の両端に印加され、ついでレーザが照射され、それにより、同じ動作電圧で保たれている電極間での電気アークをトリガすることが可能になること。
【0031】
本発明による、電気エネルギーを熱エネルギーに変換するシステムの例示的な実施形態を、
図2とともに説明する。このシステムは、以下のものを備える。
−たとえば銅で作製され、その動作距離である固定距離dだけ隔てられた2つの電極1、2。
−これらの電極間にpd(一般に数kV)を印加することができ、その端子が、たとえばこれらの電極またはコイルまたは整流器でもよい、これらの電極用の電源装置20。
−尖頭パワーが1GW/cm
2よりも大きいレーザ・パルスを、2つの電極間に位置している影響が及ぶ区域に向けて放出する装置30。これは、たとえば、エネルギーが330mJ、中心の波長が1.064μm、持続時間が10nsのパルス、あるいは33mJで持続時間が1nsのパルスを伝送するNd:YAGレーザを必要とする。
−N個の集束ポイントにより、2つの電極間でパルスを集束させる装置40。これらの集束ポイントは、2つの電極によって生成される力線の影響が及ぶ区域に位置しなければならない。様々な方式で、このようにいくつかのポイントで同時にレーザ・パルスを焦点合わせすることができる。短焦点の色光学素子41を用いて周波数が2逓倍および3逓倍(さらにその上)されるNd:YAGパルス・レーザのパルスを集束させるには、図から分かるように、一般に一群のレンズ412を要する。この場合、集束装置はさらに、レーザ・パルス放出装置30の出力および色光学素子41の上流に配置された周波数逓倍器42を備え、レーザ・パルスの高調波を生成することができる。一例として引用され、周波数が3逓倍されたレーザの場合、波長の中心が1064nm、532nmおよび335nmで、パルス伝搬軸31に沿った3つのポイントにおいて集束されるパルスが、色集束光学素子を使用して得られる。ある選択肢によれば、集束光学素子は、任意選択的に無色でもよいが、たとえば、ビームの中心があるポイントに集束し、その周辺部が別のポイントに集束し、これら2つの集束ポイントがパルス伝搬軸31に沿っているような構成を有する。2つの実行可能な手段を組み合わせた光学素子を想定することもできる。
【0032】
本発明の第1の実施形態によれば、
図2aに示すように、2つの電極1、2は、レーザ・ビームの軸31と平行に、このビームの両側に配置された板である。
【0033】
図2aおよび
図2bに示すように、プラズマ7は、レーザ・ビームの伝搬軸31に沿って延在することが好ましいことを指摘したので、
図2bに示すように第2の実施形態を考案した。すなわち、2つの電極1、2は、レーザ・ビームの伝搬軸31と平行に配置された板であり、各電極は、約1mm径の孔で穿孔されてレーザ・パルスが通過できるようになっている。レーザ放出装置の側に配置された電極1のみが穿孔されることが好ましいが、それは、もう一方の電極2に対するレーザ・パルスの衝撃が、電極2の金属の一部分を除去し、したがって、レーザ・プラズマ7の生成を容易にし、それにより電極間距離dを増やすことが可能になるからである。レーザ誘起破壊分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy)の頭辞語であるLIBS効果により、パルスは、この電極のレベルで銅の様々な種をイオン化する。従来のレーザ・プラズマに追加されるLIBSプラズマは、トリガ・レーザのパワー閾値を容易に低下させる。
【0034】
図2cから分かる第3の実施形態によれば、電極2は、
図1の例で使用されているように、起動装置ピン21に置き換えられるか、またはそれが追加され、レーザ・パルスを遮るように配置されることが好ましい。
【0035】
離隔距離d(8、10、または12mm)、電極の端子の両端に印加される電圧pd(
図3aでは100V、
図3bでは700V)、およびレーザ・パルスのエネルギーの様々な値について、2つの電極1、2の間に生成される電気アークの尖頭電圧Uの段階的な変化が
図3aおよび
図3bに示してある。これらの値は、
図2cに示すようなシステムで得られた。このシステムは、Nd:YAGレーザに基づいて、中心が1064nmおよび532nmのパルスを生成する周波数2倍器が設けられた集束装置と、焦点距離が約7cmでレーザ・パルスを2つのポイントに集束させる色光学装置とを装備している。
【0036】
図2dと関連して説明する第4の実施形態によれば、たとえば、電極の近傍で必要以上に締め付けられた機械的な状態により、パルス放出装置30は、2つの電極を連結する軸上に配置しなくてもよい。一群のレンズ412に加えて、次いで、各電極を連結する軸を外して配置された集束装置の光学素子は、ミラーまたはプリズム411など各電極間のビームを戻すための構成要素を備える。プリズムは、たとえば、優れた光学特性を有し、エネルギーが大きくて温度が高いパルスに、損傷することなく耐えることができる材料であるサファイヤから作製される。
【0037】
この変換システムは、たとえば、電気ウェルディング・ステーションに適用される。現在は、接点短絡によりウェルディング・ステーションの2つの電極間に電気アークが生成され、電極間距離を操作者が手動で調整してアークを伸ばす。レーザ・ベースのトリガ装置を備えた、本発明によるウェルディング・ステーションにより、この電極間距離の手動調整を回避することが可能になる。
【0038】
このウェルディング・ステーションは、プラズマ・トーチに適用することもできる。この場合、このウェルディング・ステーションには、2つの電極間にプラズマ生成ガスを注入する装置が設けられている。プラズマ・トーチの構成と電極の近傍で締め付けられた機械的状態とを考慮すると、パルス放出装置は、2つの電極を連結する軸上に配置しなくてもよい。この場合、第4の実施形態が好ましい。トリガ・プラズマにより、およそ数kV程度の電位差(pd)に曝された2つの電極間で電気アークを起動することが可能になる。このレーザ・ベースのトリガ装置は、現在使用されているラム・システムに取って代わる。従来のプラズマ・トーチの場合と同様に、その後、プラズマ生成ガスを注入することにより、この電気アークは上流電極および下流電極へと移動する。