特許第6150812号(P6150812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150812
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】非ハロゲン難燃性ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/26 20060101AFI20170612BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20170612BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20170612BHJP
   C08K 5/31 20060101ALI20170612BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20170612BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20170612BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   C08F20/26
   C08L33/14
   C08K3/00
   C08K5/31
   C08K5/52
   C08L33/00
   C08F8/30
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-539145(P2014-539145)
(86)(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公表番号】特表2014-532782(P2014-532782A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】US2012062639
(87)【国際公開番号】WO2013066906
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】61/553,460
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ライ, ジョン タ−ユアン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, ティ
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−007703(JP,B1)
【文献】 特開2010−235830(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/096444(WO,A1)
【文献】 特開昭53−077292(JP,A)
【文献】 特開2007−277794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00 − 19/44
C08F 6/00 − 246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、またはビニルベンゼンの1種から誘導される基、
b)モノホスホネート部分またはポリホスフェート部分、および
c)グアニル尿素
を含む難燃性モノマー組成物であって、
ここで、a)は、b)に直接または連結基を介して共有結合して、前駆体モノマー単位を形成し、そして
ここで、c)は、前記前駆体モノマー単位中のb)の共有結合した前記モノホスホネート部分または前記ポリホスフェート部分と複合体を形成している、組成物。
【請求項2】
前記モノホスホネート部分またはポリホスフェート部分が、カルボキシエチルモノホスフェート、カルボキシエチルモノホスホネート、カルボアミドエチルモノホスフェート、カルボアミドエチルモノホスホネート、フェネチルモノホスフェート、もしくはフェネチルモノホスホネート、またはそれらの混合物から誘導される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記前駆体モノマー単位が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノホスフェートエステル、ビス(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートジホスフェートエステル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノホスフェートエステル、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートモノホスフェートエステル、メタクリルアミドエチルホスホン酸、およびビニルベンゼンホスホン酸から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記難燃性モノマー組成物が、グアニル尿素と複合体を形成した2−(ホスホノオキシ)エチルメタクリレート、またはグアニル尿素と複合体を形成した(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスホン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
a)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、またはビニルベンゼンの1種から誘導される基、
b)ポリホスフェート部分、および
c)グアニル尿素
から誘導される難燃性モノマー単位を含む難燃性ポリマーであって、
ここで、a)は、b)に直接または連結基を介して共有結合して、前駆体モノマー単位を形成し、そして
ここで、c)は、前記前駆体モノマー単位中のb)の共有結合した前記ポリホスフェート部分と複合体を形成している、
難燃性ポリマー。
【請求項6】
ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーから誘導されるモノマー単位をさらに含む、請求項5に記載の難燃性ポリマー。
【請求項7】
前記ポリマー中前記モノマーの少なくとも20モル%が、前記難燃性モノマー単位であり、そして前記ポリマー中前記モノマーの0.1モル%〜約80モル%が、ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーから誘導されるモノマー単位であり、そしてここで、前記ポリマーが、少なくとも1重量%のPからなり、そして少なくとも約1000g/モルのMnを有し;そしてここで、前記ポリマー中前記モノマーの少なくとも90モル%が、ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーから誘導されるモノマー単位と、前記難燃性モノマー単位との組合せを含み、ここで、前記ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーは、塩化ビニル、スチレン、C〜C40アルキル(メタ)アクリレート、C〜C40(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、C〜C40ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C〜C40ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ブタジエン、イソプレンおよびそれらの誘導体化合物の1種または複数である、請求項6に記載の難燃性ポリマー。
【請求項8】
リン含有量が、前記ポリマーの約1.0〜約15.0重量%である、請求項5に記載のポリマー。
【請求項9】
前記ポリマー中前記モノマーの少なくとも50%が、前記難燃性モノマー単位から選択される、請求項5に記載のポリマー。
【請求項10】
前記前駆体モノマー単位をグアニル尿素と反応させて、前記難燃性モノマー組成物を形成する工程を含む、請求項1に記載の難燃性モノマー組成物を生成させる方法。
【請求項11】
(a)前記前駆体モノマー単位をフリーラジカル重合させる工程、および
(b)(a)の重合された生成物を、前記グアニル尿素と反応させて、前記難燃性ポリマーを形成する工程
を含む、請求項5に記載の難燃性ポリマーを生成させる方法。
【請求項12】
請求項5に記載のポリマーを含み、前記難燃性ポリマーの100重量部当たり約1〜約50重量部の難燃添加剤をさらに含む組成物。
【請求項13】
前記難燃添加剤が、メラミン誘導体難燃剤、有機難燃剤、無機難燃剤、有機ホスフェート、ホスホネートまたはホスフィネート難燃剤、ハロゲン化化合物難燃剤、およびそれらの混合物の1種または複数である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリマーが水性分散物の形態である、請求項5に記載の難燃性ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された技術は、窒素と複合体を形成した、リンを含む非ハロゲン難燃性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン、すなわち、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素は、防火性組成物(fire retardant composition)に使用され得る。しかしながら、ハロゲンは、非常に活性な化学元素であり、分解後に、ジオキシンおよびジフランなどの毒性物質を発生させ得る。これらの物質は、長期間人体に蓄積し、環境ホルモンの問題を引き起こし得る。さらに、フッ素、塩素および臭素は特に、深刻なオゾンの破壊の原因になることが公知になっている。このため、難燃剤として、または他の用途においてにかかわらず、ハロゲンの使用は、ますます規制されている。したがって、非ハロゲン化難燃剤に対する必要性がある。
【0003】
難燃性組成物を得る方法の一つは、組成物中にリンを含有させることである。例えば、1994年1月25日に発行された、Chatelinらの米国特許第5,281,239号は、一般式:
【0004】
【化1】
のリン酸エチレン性エステルで、繊維材料をグラフト化する方法を教示しており、エステルのグラフト率は、20%未満であるか、または20%に等しいことが教示されている。
【0005】
同様に、2010年10月14に公開された、Sugiyamaらの米国特許出願公開第2010/0261862号は、アミン化合物と一緒にリン含有化合物をセルロース繊維にグラフト化する方法を教示している。この方法は、繊維に放射線を照射し、リン含有化合物が結合し得るラジカルを生成させることに依存している。
【0006】
2007年7月19日に公開された、Toshioの特開2007−182652号公報は、有機リン系難燃性付与剤と窒素型難燃剤との混合物を含む難燃性添加剤を教示している。同様に、中国特許出願公開第102071032号は、リン含有難燃剤と窒素含有難燃剤との組合せにおける使用を教示している。これらの公報は、三塩基性リン酸を含む化合物を教示しているのみで、その化合物を重合させることは教示していない。
【0007】
ゴム改質ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、環状アルキルホスフェート化合物、および芳香族ホスフェートエステルを含有するポリマー組成物が、2010年11月9日に発行された、Ahnらの米国特許第7,829,629号に教示されている。同様に、2007年8月23日に公開された、Cottrellらの米国特許出願公開第2007/0192966号は、10〜100重量%のリン含有モノマー由来単位からなる難燃性リン含有ポリマーを教示している。上述の参考文献のいずれも、モノマーがアミン種と複合体を形成しているポリマーを教示していない。これらのポリマーは、非常に酸性であり、かつ様々な基材に対して損傷性であり、したがって、輸送の懸念事である。
【0008】
新規な非ハロゲン化難燃剤に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,281,239号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0261862号明細書
【特許文献3】特開2007−182652号公報
【特許文献4】中国特許出願公開第102071032号明細書
【特許文献5】米国特許第7,829,629号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/0192966号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、新規な非ハロゲン化難燃性ポリマーに重合され得る新規な難燃性(FR)モノマーを発見した。
【0011】
したがって、本発明の最も簡単な態様において、新規な難燃性モノマー組成物が提供される。新規な難燃性モノマー組成物は、a)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、またはビニルベンゼンの1種から誘導される基、b)ポリホスフェート部分、およびc)アミン種を含み得る。新規な難燃性モノマー組成物において、a)のエチレン性不飽和モノマーは、b)のポリホスフェート部分に直接または連結基を介して共有結合して、前駆体モノマー単位を形成する。さらに、c)のアミン種は、前駆体モノマー単位中のb)の共有結合したポリホスフェート部分と複合体を形成している。
【0012】
一実施形態において、新規な難燃性モノマー組成物は、前駆体モノマー単位をアミン種と反応させることによって生成され得る。
【0013】
本発明の別の態様において、難燃性ポリマーが提供される。難燃性ポリマーは、新規な難燃性モノマー組成物に等価な、すなわち、それから誘導される難燃性モノマー単位のホモポリマー、または変化するa)、b)およびc)を有する新規な難燃性モノマー組成物に等価なモノマー単位のコポリマーであり得る。
【0014】
一実施形態において、難燃性ポリマーは、ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーに等価なモノマー単位をさらに含み得る。このような実施形態において、ポリマー中モノマーの少なくとも20%は、本発明の最も簡単な態様の新規な難燃性モノマー組成物に等価なモノマー単位であり、ポリマー中モノマーの0.1%〜約80%は、ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーに等価なモノマー単位であり得る。このようなコポリマーは、少なくとも1重量%のPからなり、少なくとも約1000g/モルの数平均分子量(Mn)を有し得る。
【0015】
本発明の別の実施形態において、難燃性ポリマー中モノマーの少なくとも90%は、ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーに等価なモノマー単位と、本発明の最も簡単な態様の新規な難燃性モノマー組成物に等価なモノマー単位との組合せを含み得る。
【0016】
本発明の一態様において、難燃性ポリマーは、いくつかの経路で生成され得る。
【0017】
一実施形態において、最も簡単な態様の新規な難燃性モノマー組成物は、フリーラジカル重合されて、難燃性ポリマーを形成し得る。
【0018】
別の実施形態において、難燃性ポリマーは、前駆体モノマー単位をフリーラジカル重合させ、その後に、重合した生成物をアミン種と反応させることによって生成され得る。
【0019】
この方法のいずれかの実施形態において、ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン不飽和モノマー単位は、フリーラジカル重合に含まれ得る。
【0020】
本発明のさらなる態様において、難燃性組成物が提供される。難燃性組成物は、他の添加剤とともに難燃性ポリマーを含み得る。特に、難燃添加剤などの添加剤および他のポリマーが、難燃性ポリマーとともに難燃性組成物中でブレンドされてもよい。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
a)(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、またはビニルベンゼンの1種から誘導される基、
b)ポリホスフェート部分、および
c)アミン種
を含む難燃性モノマー組成物であって、
a)は、b)に直接または連結基を介して共有結合して、前駆体モノマー単位を形成し、
c)は、前記前駆体モノマー単位中のb)の共有結合した前記ポリホスフェート部分と複合体を形成している、組成物。
(項目2)
前記ポリホスフェート部分が、式−RX−[P(=O)(OR)O、または−R−P(=O)(OR)(OR)のポリホスフェートまたはモノホスホネート化合物から誘導され、ここで:
nは、約1〜約10であり、
Xは、OまたはNHであり、
は、最大で20個までの炭素原子に代わって置換された酸素および/または窒素原子を有するC〜C50ヒドロカルビル連結基であり、
は、H、またはMであり、
は、H、またはMであり、
は、周期表の第I族および第II族の元素、またはアンモニウムから選択される対イオンである、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記ポリホスフェート部分が、カルボキシエチルモノホスフェート、カルボキシエチルモノホスホネート、カルボアミドエチルモノホスフェート、カルボアミドエチルモノホスホネート、フェネチルモノホスフェート、もしくはフェネチルモノホスホネート、またはそれらの混合物である、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目4)
前記前駆体モノマー単位が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノホスフェートエステル、ビス(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートジホスフェートエステル、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートモノホスフェートエステル、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートモノホスフェートエステル、メタクリルアミドエチルホスホン酸、ビニルベンゼンホスホン酸、ビニルホスホン酸およびイソプロペニルホスホン酸から選択される、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目5)
前記アミン種が、約16〜3000g/モルの分子量を有する、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目6)
前記アミン種が、ジシアンジアミド、アルキルアミン、またはグアニジンから誘導される、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
前記難燃性モノマー組成物が、グアニル尿素と複合体を形成した2−(ホスホノオキシ)エチルメタクリレート、またはグアニル尿素と複合体を形成した(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)ホスホン酸である、前述の項目のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
項目1〜7のいずれかに記載の難燃性モノマー組成物に等価なモノマー単位からなる難燃性ポリマー。
(項目9)
前記ポリマーが、ホモポリマーである、項目8に記載の難燃性ポリマー。
(項目10)
前記ポリマーが、変化するa)、b)およびc)を有する前記難燃性モノマー組成物のコポリマーである、項目8に記載の難燃性ポリマー。
(項目11)
ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーをさらに含む、項目8または10に記載の難燃性ポリマー。
(項目12)
ポリマー中前記モノマーの少なくとも20%が、前記難燃性モノマー組成物であり、前記ポリマー中前記モノマーの0.1%〜約80%が、ポリホスフェート部分に共有結合していない前記エチレン性不飽和モノマーであり、前記ポリマーが、少なくとも1重量%のPからなり、少なくとも約1000g/モルのMnを有し;前記ポリマー中前記モノマーの少なくとも90%が、ポリホスフェート部分に共有結合していない前記エチレン性不飽和モノマーと、前記難燃性モノマー組成物との組合せを含み、ポリホスフェート部分に共有結合していない前記エチレン性不飽和モノマーは、塩化ビニル、スチレン、C〜C40アルキル(メタ)アクリレート、C〜C40(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、C〜C40ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C〜C40ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ブタジエン、イソプレンおよびそれらの二量体または多誘導体化合物の1種または複数である、項目10または11に記載の難燃性ポリマー。
(項目13)
リン含有量が、前記ポリマーの約1.0〜約15.0重量%である、項目8〜12のいずれかに記載のポリマー。
(項目14)
前記組成物中前記モノマーの少なくとも50%が、前記難燃性モノマー組成物から選択される、項目8〜13のいずれかに記載のポリマー。
(項目15)
前記前駆体モノマー単位を前記アミン種と反応させて、前記難燃性モノマー組成物を形成する工程を含む、項目1〜7のいずれかに記載の難燃性モノマー組成物を生成させる方法。
(項目16)
前記反応が、水の存在下で行われる、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記反応が、前記アミン種としてのジシアンジアミドおよび水とである、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記アミン種反応工程におけるポリホスフェートとアミン種との(P:N)比が、約1:0.2〜約1:15である、項目15〜17に記載の方法。
(項目19)
前記難燃性モノマー組成物が、その後にフリーラジカル重合されて、難燃性ポリマーを生成させる、項目15〜18のいずれかに記載の方法。
(項目20)
(a)前記前駆体モノマー単位をフリーラジカル重合させる工程、および
(b)(a)の重合された生成物を、前記アミン種と反応させて、前記難燃性ポリマーを形成する工程
を含む、項目8〜14のいずれかに記載の難燃性ポリマーを生成させる方法。
(項目21)
前記(a)のフリーラジカル重合が、ポリホスフェート部分に共有結合していない前記エチレン性不飽和モノマー単位、および前記前駆体モノマー単位をフリーラジカル重合させる工程を含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記フリーラジカル重合が、乳化重合、分散重合、溶液重合、光重合、または放射線重合によるものである、項目19〜21に記載の方法。
(項目23)
界面活性剤が、前記重合に用いられる、項目22に記載の方法。
(項目24)
工程(b)が、水の存在下で行われる、項目20または21に記載の方法。
(項目25)
前記工程(b)が、前記アミン種としてのジシアンジアミドおよび水で行われる、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記アミン種反応工程におけるポリホスフェートとアミン種との(P:N)比が、約1:0.2〜約1:15である、項目20または21に記載の方法。
(項目27)
項目8〜14のいずれかに記載のポリマーを含み、前記難燃性ポリマーの100重量部当たり約1〜約50重量部の難燃添加剤をさらに含む組成物。
(項目28)
前記難燃添加剤が、メラミン誘導体難燃剤、有機難燃剤、無機難燃剤、有機ホスフェート、ホスホネートまたはホスフィネート難燃剤、ハロゲン化化合物難燃剤、およびそれらの混合物の1種または複数である、項目27に記載の組成物。
(項目29)
前記難燃添加剤が、メラミンシアヌレートである、項目28に記載の組成物。
(項目30)
ポリウレタンポリマー、ポリアミドポリマー、ポリ尿素ポリマー、ポリアクリレートポリマーまたはそれらの混合物の1種または複数とさらにブレンドされる、項目27〜29のいずれかに記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
様々な好ましい特徴および実施形態が、非限定的説明によって以下に記載される。
【0022】
明細書および特許請求の範囲で開示される範囲および比の限界のすべては、任意の様式で組み合わされてもよい。特に断りのない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」および/または「その(the)」への言及は、1つまたは1つより多くを包含してもよいこと、および単数形の品目への言及も、複数形の品目を包含してもよいことが理解されるべきである。
【0023】
「重量%」という用語は、その成分が一部を形成する組成物または材料の100重量部当たりの成分の重量部数を意味する。
【0024】
本明細書で使用される場合、ポリホスフェート部分は、具体的には3つの酸素イオンに結合したリン原子を含有する基(ホスホネート)または4つの酸素イオンに結合したリン原子を有する基(ホスフェート)を指す。ポリホスフェート部分は、モノ−、ジ−、トリ−、もしくはより高次のホスフェート、またはモノ−、および/もしくはジ−ホスホネート、特にモノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェートまたはモノホスホネートを含有してもよい。好ましくは、ポリホスフェート部分は、モノ−、ジ−、またはトリ−ホスフェートである。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知である、その通常の意味で使用される。具体的には、それは、その分子の残部に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、
(i)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)の置換基、ならびに芳香族−、脂肪族−、および脂環式−置換芳香族置換基、ならびに環がその分子の別のポーションを介して完結されている(例えば、2個の置換基が一緒になって環を形成する)環状置換基:
(ii)置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において、主にその置換基の炭化水素の性質を変更しない非炭化水素基を含有する置換基(例えば、ハロ(とりわけ、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ);
(iii)ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈において主に炭化水素の特性を有する一方で、それ以外では炭素原子から構成される環または鎖中に炭素以外を含有する置換基が挙げられる。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、窒素が挙げられ、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が包含される。本明細書で使用される場合、酸素原子を含有するアルキル基は、アルコキシル基と称される。
【0026】
「コーティング」という用語は、含浸、飽和、ローラ、刷毛、噴霧、泡、およびカーテンコーティング、ならびに類似の手順を指すために本明細書で使用される。
【0027】
「(メタ)」、「(アルク)」、または「(アルキル)」などの「( )」の表現は、化学名における特定の置換基が、場合によって存在するが、存在しなくてもよいことを示すために使用される。例えば、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかを指すために使用され得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、1種または複数のモノマーの分子が一緒に連結されて、その分子量がその1種または複数のモノマーのものの倍数である大きな分子を形成する重合反応の生成物を指す。これらのポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。これらのポリマーは、線状ポリマー、分岐ポリマー、架橋ポリマー、またはそれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0029】
「ホモポリマー」という用語は、単一モノマーの重合から得られるポリマーを指すために本明細書で使用される。
【0030】
「コポリマー」という用語は、2種以上の化学的に区別できるモノマーの重合から得られるポリマーを指すために本明細書で使用される。
【0031】
「線状ポリマー」という用語は、その分子が分岐または架橋構造なしに長鎖を形成するポリマーを指す。
【0032】
「分岐ポリマー」という用語は、その分子が主たる鎖またはポリマー主鎖を形成し、1つまたは複数のさらなる相対的に短い鎖がその主たる鎖またはポリマー主鎖に結合しているポリマーを指す。
【0033】
「架橋ポリマー」という用語は、そのポリマー分子がポリマー鎖の末端以外のそれらの構造における点で互いに連結されているポリマーを指す。
【0034】
「ハロゲンを含まない」または「非ハロゲン化」ポリマーという用語は、それに結合したいかなるハロゲン原子も有しないポリマーを指す。一実施形態において、ハロゲンを含まないポリマーは、塩素を含まないポリマーである。「ハロゲンを含まない」という用語は、汚染レベル、例えば、最大で約5重量%まで、および一実施形態において、最大で約2重量%まで、一実施形態において最大で約1重量%まで、一実施形態において最大で約0.5重量%まで、一実施形態において最大で約0.2重量%まで、一実施形態において最大で約0.1重量%までのレベルで存在し得るハロゲンを排除しない。
【0035】
モノマーが重合される場合、結果として生じるポリマー内のモノマー単位は、出発モノマーからわずかに変更されている構造を有することが認識される。モノマー単位は、出発モノマーと等価である、すなわち、出発モノマーから誘導されるかまたはそれから誘導可能であり、モノマー中の互いに同じ相対位置で同じ原子を有し、モノマーの炭素−炭素二重結合だけが、モノマー単位中の炭素−炭素単結合に変換され、モノマーの変換からの過剰電子は、ポリマーの隣接繰返し単位上の隣接炭素原子にそれぞれのモノマー単位を結合するために使用される。モノマーを含むポリマーへの本明細書での言及は、ポリマーがそのモノマーに等価な、すなわち、それから誘導されるかまたはそれから誘導可能なモノマー単位からなることを意味することが理解されるべきである。
【0036】
本発明の最も簡単な態様において、新規な難燃性モノマー組成物が提供される。新規な難燃性モノマー組成物は、a)エチレン性不飽和モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、またはビニルベンゼンの1種から誘導される基、b)ポリホスフェート部分、およびc)アミン種を含み得る。本明細書で使用される場合、ビニルベンゼンは、スチレンまたはアルキル置換ビニルベンゼン、例えば、α−メチルスチレン、1−メチル−2−ビニルベンゼン、1−メチル−3−ビニルベンゼン、1−メチル−4−ビニルベンゼンなどであり得る。
【0037】
エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)も企図される。代替として、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの他のモノマーが企図される。同様に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなども企図される。
【0038】
新規な難燃性モノマー組成物において、a)のエチレン性不飽和モノマーの1つは、b)のポリホスフェート部分と直接または連結基を介して共有結合して、前駆体モノマー単位を形成する。さらに、c)のアミン種は、前駆体モノマー単位中のb)の共有結合したポリホスフェート部分と複合体(典型的には塩)を形成している。したがって、a)のエチレン性不飽和モノマー、b)のポリホスフェート部分およびc)のアミン種は新規な難燃性モノマー組成物において別個に開示されるが、アミン種は、ポリホスフェート部分と複合体を形成して存在しており、ポリホスフェート部分はa)のエチレン性不飽和モノマーに共有結合している。
【0039】
難燃性モノマーは、それが取り込まれるポリマーに難燃性を付与するものである。
【0040】
新規な難燃性モノマー組成物の実施形態の例は、例えば、グアニル尿素と複合体を形成した2−ヒドロキシエチルメタクリレートのホスフェートエステル、およびグアニル尿素と複合体を形成した2−ヒドロキシエチルメタクリレートのホスホン酸エステルであり得る。理論に拘束されることを望むことなく、新規な難燃性モノマー組成物は、例えば、式Iの新規な難燃性モノマー組成物で表され得る。
【0041】
【化2】
本発明の一部の実施形態において、「誘導される」という用語は、誘導される、または誘導可能であることを意味し得る。一部の実施形態において、リン含有モノマーは、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリルアミドから誘導され得るか、または誘導可能であり得る。誘導可能であることによって、モノマーの誘導が(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリルアミドから可能であるが、また他の材料、例えば、他の(メタ)アクリル酸源、例えば、リッター反応における(メタ)アクリロニトリルから誘導されてもよいことが意味される。別の例において、難燃性モノマーから誘導される(メタ)アクリル酸は、(メタ)アクリル酸エステルを用いて製造され得る。上述の例のような場合、モノマー生成物は、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリルアミドから誘導される場合とちょうど同じ(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリルアミド部分を含有する。
【0042】
上記のとおり、前駆体モノマー単位は、ポリホスフェート部分と、a)のエチレン性不飽和モノマーとから形成され得る。ポリホスフェート部分は、式−RX−[P(=O)(OR)O]、または−R−P(=O)(OR)(OR)のポリホスフェートまたはモノホスホネート化合物であることができ、式中:
Xは、OまたはNHであり、
は、最大で20個の炭素原子に代わって置換された酸素および/または窒素原子を有するC〜C50ヒドロカルビル連結基であり、
nは、約1〜約10、もしくは約1〜約8、または約1〜約6、好ましくは約1〜約3であることができ、
は、H、M、またはアルキルであり、
は、H、またはMであり、
は、周期表の第I族および第II族の元素、またはアンモニウムから選択される対イオンである。
【0043】
本明細書で使用される場合、アンモニウムは、NH、またはモノ−、ジ−、トリ−、もしくはテトラ−アルキルアンモニウムを意味する。
【0044】
一部の実施形態において、ポリホスフェート部分は、リンの三塩基性酸を含有し得る。一部の実施形態において、ポリホスフェート部分は、カルボキシエチルモノホスフェート、カルボキシエチルモノホスホネート、カルボアミドエチルモノホスフェート、カルボアミドエチルモノホスホネート、フェネチルモノホスフェート、またはフェネチルモノホスホネートから誘導され得る。
【0045】
しばしば、前駆体モノマー単位、すなわち、ポリホスフェート部分に共有結合した、((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、またはビニルベンゼンからなる単位は、商業的に購入されてもよいが、非商業的前駆体モノマー単位も本明細書で企図される。しばしば、商業的前駆体モノマー単位、例えば、Rhodiaから入手できるSipomer(商標)Pam−4000は混合物であり、これは、主要部分の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)モノホスフェートエステル(HEMA)および非主要部分のビス(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)ホスフェートエステルである。純組成物である前駆体モノマー単位のみならず、このような混合物も本明細書で企図される。HEMAポリホスフェートは、HEMA、および五酸化リンまたはホスホン酸から直接製造することもできる。代替として、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの他のモノマーを、HEMAの代わりに使用することもできる。前駆体モノマー単位の一部の他の例としては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェートエステル(RhodiaからPAM−100として入手できる)、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートホスフェートエステル(RhodiaからPAM−200として入手できる)、メタクリルアミドエチルホスホン酸、ビニルベンゼンホスホン酸、ビニルホスホン酸、およびイソプロペニルホスホン酸が挙げられ得る。
【0046】
一般に、アミン種c)は、約17〜約3000g/モルの分子量を有し得る。新規な難燃性モノマー組成物のための適切なアミン種は、例えば、ジシアンジアミド、アルキルアミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンおよびジメチルアミンなど、またはグアニジンから誘導され得る。適切なアミン化合物の他の例は、尿素、置換アルキル尿素、チオ尿素、アルキルチオ尿素、シアナミド、エチレンジ尿素、アニリン、エチレンアミン、グアニジン、グアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、グリコールウリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メラミン、ベンゼン、スルホンアミド、ナフタレンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、アンメリン、アンメリド、グアナゾール、フェニルグアナゾール、カルバモイルグアナゾール、ジヒドロキシエチレン尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、メレム(C10)、メラム(C11)、オクタデシルアミド、グリシン、およびそれらの混合物である。新規な難燃性モノマー組成物に使用される適切なアミン種の具体例は、グアニル尿素であり得、これは、ジシアンジアミドおよび水から誘導され得る。
【0047】
本発明の別の態様は、難燃性ポリマーである。一部の実施形態において、難燃性ポリマーは、本発明の最も簡単な態様の新規な難燃性モノマー組成物を含む、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。別の実施形態において、難燃性ポリマーは、A)ポリホスフェート部分に共有結合していない少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー単位と、B)本発明の最も簡単な態様の新規な難燃性モノマー組成物とのコポリマーであってもよい。コポリマーとして、ポリマーは、1つもしくは複数の同じかもしくは異なるA)のエチレン性不飽和モノマー単位および/または1つもしくは複数の同じかもしくは異なるB)の新規な難燃性モノマー組成物を含有し得る。
【0048】
一部の実施形態において、A)のエチレン性不飽和モノマー単位は、ポリマー中モノマーの0%または0.1%〜ポリマー中モノマーの約80%のモノマーであり得る。同様に、難燃性ポリマー中のモノマーの最大で約65%が、A)のエチレン性不飽和モノマー単位であってもよい。代わりに、モノマーの最大で約70%または75%が、A)のエチレン性不飽和モノマー単位であってもよい。
【0049】
本発明のA)のエチレン性不飽和モノマー単位は、とりわけ、ポリマーに特定の物理的特性を与えるために役立ち得る。したがって、当業者は、難燃性ポリマーの特定の用途に望ましい特定の物理的特性に基づいて、難燃性ポリマーのための適当なエチレン性不飽和モノマーを選択し得る。
【0050】
難燃性ポリマーにおける使用に適切な、ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーの一部の例は、例えば、スチレン、C〜C40アルキル(メタ)アクリレート、C〜C40(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、C〜C40ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(アセトアセトキシ)エチルメタクリレート、C〜C40ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ビニルエステル、ブタジエン、イソプレンおよびそれらの二量体または多誘導体化合物の1種または複数であり得る。さらに、難燃剤ポリマーは、非ハロゲン化であり得るが、ハロゲン化エチレン性不飽和モノマー、例えば、塩化ビニルなども、難燃性ポリマー中のA)の適切なエチレン性不飽和モノマー単位として本明細書で企図される。
【0051】
本発明による難燃性ポリマーにおいて、ポリマー中モノマーの少なくとも20%は、新規な難燃性モノマー組成物から選択される。難燃性ポリマーを構成するモノマーの最大で100%までが新規な難燃性モノマー組成物であり得ることも企図される。難燃性ポリマー中モノマーの少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%が、新規な難燃性モノマー組成物であり得ることも企図される。本発明によるある種の難燃性ポリマーにおいて、モノマーの少なくとも35%、少なくとも45%、および少なくとも55%が、新規な難燃性モノマー組成物であってもよい。
【0052】
一部の実施形態において、ポリマー中モノマーの少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%、および一部の実施形態において少なくとも95%が、ポリホスフェート部分に共有結合していないエチレン性不飽和モノマーと、新規な難燃性モノマー組成物との組合せを含む。
【0053】
好ましくは、難燃性ポリマーは、少なくとも1重量%のリンからなり、少なくとも約1000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。他の実施形態において、難燃性ポリマーは、約1重量%〜約15重量%、または約2重量%〜約14重量%、または約5重量%〜約10重量%でリンを含有してもよい。一実施形態において、難燃性ポリマーは、少なくとも7重量%のリンを含有し、別の実施形態において、難燃性ポリマーは、約9重量%のリン、および別において10.6重量%のリンを含有する。
【0054】
難燃性ポリマーのMnは、少なくとも1000g/モルであるべきである。Mnはまた、約50,000g/モル〜約1,000,000g/モル、または約100,000g/モル〜約750,000g/モルであり得る。一実施形態において、難燃性ポリマーのMnは、約200,000g/モル〜約500,000g/モルであり得る。
【0055】
意外なことに、新規な難燃性モノマー組成物からなる難燃性ポリマーは、新規な難燃性モノマー組成物が含むほどにポリホスフェート/アミン種を含まない類似のポリマーよりも良好な難燃性能を与える。
【0056】
方法
好ましい実施形態において、難燃性ポリマーは、例えば、式IIに示されるとおりに、少なくとも1種の新規な難燃性モノマー組成物の混合物を最初に生成させ、その後にこの混合物をフリーラジカル重合させて、難燃性ポリマーを形成することによって生成されてもよい。
【0057】
【化3】
さらに、A)の十分なエチレン性不飽和モノマー単位を、少なくとも1種の新規な難燃性モノマー組成物の重合混合物に添加することができ、その結果、重合は、モノマーの0%〜約80%(または約0.1〜75%、または1〜65%または5〜55%)は、A)のエチレン性不飽和モノマー単位であり、モノマーの少なくとも20%は、少なくとも1種の新規な難燃性モノマー組成物である難燃性ポリマーをもたらす。上述の方法を用いることによって、ポリマー中モノマー単位の最大で80%まで、または最大で85%まで、または最大で90%までが、新規な難燃性モノマー組成物であり得る難燃性ポリマーが生成され得る。同様に、ポリマー中モノマー単位の最大で95%まで、または最大で100%までが、新規な難燃性モノマー組成物であり得る。
【0058】
少なくとも1種の新規な難燃性モノマー組成物の混合物は、一実施形態において、少なくとも1種の前駆体モノマー単位の混合物を少なくとも1種のアミン種の混合物と、約20℃〜100℃、好ましくは70℃〜95℃の温度で、10分〜8時間、好ましくは約1〜5時間反応させて、少なくとも1種の新規な難燃性モノマー組成物の混合物を形成することによって生成され得る。
【0059】
代わりの実施形態において、難燃性ポリマーは、最初に前駆体モノマー単位を十分なA)のエチレン性不飽和モノマー単位とともにフリーラジカル重合させることによって前駆体ポリマーを生成させて、モノマーの0%〜約80%がA)のエチレン不飽和モノマー単位であり、モノマーの少なくとも20%が前駆体モノマー単位であるポリマーを生成させることによって生成されてもよい。重合の後で、前駆体ポリマーは、例えば、式IIIにおいて示されるとおりに、十分なアミン種と反応させて、前駆体モノマー単位においてポリホスフェート部分と複合体を形成してもよい。
【0060】
【化4】
前述の方法を用いることによって、ポリマー中モノマー単位の最大で30%まで、または最大で35%まで、または最大で40%までが、ポリホスフェート部分と共有結合していることができる難燃性ポリマーが生成され得る。
【0061】
とりわけ、対イオンが、pH調整の間に化合物中に導入されてもよい。例えば、NaOH、KOH、水酸化アンモニウムまたはアルキルアンモニウムヒドロキシドが、pH調整に用いられ、ヒドロキシルの一方または両方の水素の、対イオン、例えば、Na、K、アンモニウム、またはアルキルアンモニウムによる置換をもたらしてもよい。
【0062】
一部の実施形態において、重合触媒または他の標準的な触媒が用いられて、重合を補助してもよい。重合触媒の例は、アルカリ金属次亜リン酸塩、例えば、次亜リン酸ナトリウム、アルカリ金属亜リン酸塩、アルカリ金属ポリリン酸塩、アルカリ金属二水素リン酸塩、ポリリン酸、およびアルキルホスフィン酸であり得る。新規な難燃性モノマー組成物が生成され、次いで、重合される場合、重合触媒の使用は、ポリホスフェート部分と共有結合した、ポリマー中最大で95%まで、または最大で97.5%まで、またはさらに最大で100%までのモノマー単位をもたらし得る。同様に、重合が複合体形成の前に行われる場合、重合触媒の使用は、ポリホスフェート部分と共有結合した、ポリマー中最大で80%まで、または最大で85%まで、または最大で88%まで、またはさらに最大で90%までのモノマー単位をもたらし得る。重合中に用いられるビニルモノマーの添加および反応の間を含めて、溶媒はこの方法における任意の時点で用いることができる。
【0063】
難燃性ポリマーを生成させる方法のいずれかの実施形態において、少なくとも1種の前駆体モノマー単位の混合物は、商業的に、または当業者に容易に知られる方法によって得ることができる。
【0064】
一実施形態において、少なくとも1種の前駆体モノマー単位は、水中でのアルコキシル(メタ)アクリレートと五酸化リンとの反応から直接製造され得る。
【0065】
難燃性ポリマーを生成させる方法において、アミン種反応工程におけるポリホスフェートとアミン種との比(P:N)は、約1:0.2〜約1:15であり得る。P:N比は、約1:0.5〜約1:10、または約1:1〜約1:5であることもできる。さらに、いずれかの実施形態において、アミン種反応工程は、水の存在下で行われてもよい。特に、この反応工程は、前駆体モノマー単位または前駆体ポリマーをジシアンジアミドおよび水と反応させることによって完了されてもよい。ジシアンジアミドおよび水との反応は、グアニル尿素の生成をもたらし、次いで、このグアニル尿素は、前駆体モノマー単位中のポリホスフェート部分と複合体を形成し得る。複合体形成反応は、他の副生成物を生じることがあり、この副生成物は、本明細書で企図される。
【0066】
いずれかの実施形態において、モノマーのフリーラジカル重合または共重合は、例えば、分散重合、溶液重合、光重合、または放射線重合などによる任意の重合方法によっていてもよい。乳化重合が用いられてもよい。モノマーは、アニオン性、カチオン性、もしくは非イオン性界面活性剤または分散剤、あるいはそれらの相溶性混合物、例えば、アニオン性と非イオン性界面活性剤との混合物によって、例えば、モノマーの重量に基づいて約0.05重量%〜約5重量%の界面活性剤または分散剤を用いて乳化されてもよい。適切なカチオン性分散剤としては、ラウリルピリジニウムクロリド、セチルジメチルアミンアセテート、およびアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(ここで、アルキル基は8〜18個の炭素原子を有する)が挙げられる。適切なアニオン性分散剤としては、例えば、アルカリ脂肪アルコールスルフェート、例えば、ラウイル硫酸ナトリウムなど;アリールアルキルスルホネート、例えば、イソプロピルベンゼンスルホン酸カリウムなど;アルカリアルキルスルホスクシネート、例えば、オクチルスルホコハク酸ナトリウムなど;およびアルカリアリールアルキルポリエトキシエタノールスルフェートまたはスルホネート、例えば、1〜5つのオキシエチレン単位を有するt−オクチルフェノキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。適切な非イオン性分散剤としては、例えば、約7〜18個の炭素原子のアルキル基および約6〜約60個のオキシエチレン単位を有するアルキルフェノキシポリエトキシエタノール、例えば、ヘプチルフェノキシポリエトキシエタノール;長鎖化カルボン酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸など、またはトール油に見出されるものなどの酸の混合物の、6〜60のオキシエチレン単位を有するエチレンオキシド誘導体;長鎖化アルコール、例えば、オクチル、デシル、ラウリル、またはセチルアルコールの、6〜60のオキシエチン単位を含有するエチレンオキシド縮合物;長鎖または分岐鎖アミン、例えば、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンおよびオクタデシルアミンの、6〜60のオキシエチレン単位を含有する、エチレンオキシド縮合物;ならびに1種または複数の疎水性プロピレンオキシドセクションと組み合わされたエチレンオキシドセクションのブロックコポリマーが挙げられる。乳化安定剤および保護コロイドとして、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの高分子量ポリマーが使用され得る。代替として、モノマーを界面活性剤なしで重合することができる。
【0067】
重合は、小さい粒径の前形成エマルションポリマーの存在下で開始される(例えば、シード重合)か、またはシードされなくてもよい。シードされた重合は、シードされない重合よりも均一な粒径を有するラテックスポリマーの水性分散物をもたらし得る。
【0068】
連鎖移動剤は、分子量を制御するために用いられ、ポリマーバインダーの分子量を適度なものにするために重合混合物中で用いられるメルカプタン、ポリメルカプタン、アルコール、およびハロゲン化合物を含んでもよい。一般に、ポリマーバインダーの重量に基づいて0重量%〜約3重量%のC〜C20アルキルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、またはメルカプトプロピオン酸のエステルが用いられてもよい。
【0069】
重合方法は、バッチ方法、連続方法、段階方法、または任意の他の方法を伴う方法を含み得る。段階方法の各段階は、重合の熱またはレドックスによる開始を取り入れてもよい。所与の段階で重合されるモノマーのすべてまたは一ポーションを含有するモノマーエマルションは、モノマー、水、および乳化剤を用いて調製され得る。水中開始剤の溶液は、別個に調製されてもよい。モノマーエマルションおよび開始剤溶液は、方法の任意の段階の乳化重合の過程にわたって重合容器中に共供給されてもよい。反応容器それ自体も、シードエマルションを初期に収容してもよく、さらに、重合開始剤の初期の投入量を追加的に収容してもよい。反応容器の内容物の温度は、重合反応によって発生した熱を除去するために冷却させることによって、または反応容器を加熱することによって制御されてもよい。いくつかのモノマーエマルションが、反応容器に同時に共供給されてもよい。複数のモノマーエマルションが共供給される場合、それらは、異なる新規な難燃性モノマー組成物からなっていてもよい。モノマーエマルションが共供給される順序および速度は、乳化重合方法の間に変更されてもよい。第1のモノマーエマルション(複数可)の添加が完了した後、重合反応混合物は、一時の間ある温度で保持されても、および/またはその後のモノマーエマルション(複数可)の重合前に重合抑制剤で処理されてもよい。同様に、最後のモノマーエマルション(複数可)の添加が完了した後、重合反応混合物は、一時の間ある温度で保持されても、および/または周囲温度に冷却させる前に重合抑制剤で処理されてもよい。
【0070】
ポリマーのpHは、一般に用いられる塩基、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウムまたはカリウム、水酸化マグネシウム、トリエチルアミンまたはトリメチルアミンなどによってプレミックス中またはエマルションポリマー中で約3.0〜約10.0に調整され得る。
【0071】
難燃性組成物
難燃性ポリマーは、従来の成分、例えば、溶媒、可塑剤、顔料、染料、フィラー、乳化剤、界面活性剤、増粘剤、レオロジー調整剤、熱および放射線安定添加剤、消泡剤、レベリング剤、クレータ防止剤(anti−cratering agent)、フィラー、沈降抑制剤、UV吸収剤、酸化防止剤、難燃剤などを含有してもよい。それは、他のポリマー種、例えば、ブレンド、相互貫入網状組織などの形態の追加のポリマーを含有してもよい。
【0072】
一実施形態において、難燃性ポリマーは、追加の難燃添加剤とブレンドされてもよく、これは、文献および当技術分野で周知である。例示的な難燃添加剤としては、非ハロゲン難燃剤、例えば、メラミンおよびメラミン誘導体、例えば、メラミンシアヌレート、メラミンボレート、メラミンホスフェート、メラミンモリブデート;ボレート;有機ホスフェート、有機ホスフィネート、例えば、Clariantから入手できるExolit(商標)OP1230および1311、ならびにリン含有化合物、例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリドおよびビス[テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム]スルフェート;無機化合物、例えば、アルミニウム三水和物、酸化アンチモン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、クレー、およびタルクが挙げられる。一部の実施形態において、難燃性ポリマーは非ハロゲン化されることが望ましいが、難燃性ポリマーをハロゲン化難燃剤、例えば、塩素化および臭素化化合物、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、およびヘキサブロモシクロドデカンとブレンドすることも本明細書で企図される。しばしば1種より多くの難燃剤が用いられ、頻繁に3種以上の難燃剤が、難燃剤配合物で組み合わせられる。本発明の難燃性ポリマーおよびコポリマーと併せて用いられる難燃剤のレベルは、難燃性ポリマーの100重量部当たり約1〜約50重量部の難燃添加剤であり得る。
【0073】
ちょうどエチレン性不飽和モノマーが難燃性ポリマーに特定の物理的特性を付与するために選択され得るように、追加のポリマーが、本発明の難燃性ポリマーおよびコポリマーとブレンドされて、さらなる難燃性の、またはある種の物理的特性を有するブレンドを生成し得る。ブレンドされてもよい他のポリマーの例としては、ポリウレタンポリマー、ポリアミドポリマー、ポリ尿素ポリマー、ポリエステルポリマー、ポリアクリレートポリマー、フェノール樹脂またはそれらの混合物を挙げることができる。
【0074】
ポリマーは、当業者に公知の方法によって他の商業的ポリマーまたはポリマー分散物と組み合わされてもよい。ポリマーは、ウレタンまたはシリコーンなどの他のポリマーとの混成物を形成するために使用されてもよい。これは、ポリマーの存在下で乳化重合もしくは懸濁重合により追加のモノマーを重合させることか、ポリマーを他の前形成ポリマーとブレンドすることか、または他のポリマーの存在下でポリマーを合成することによって行われてもよい。
【0075】
一実施形態において、ポリマーは、好ましくは0.5〜10重量%のN−メチロール(メタ)アクリルアミドを含有して、縮合反応においてフェノール樹脂と混合されてもよい。
【0076】
ポリマーの調製において、および/またはその後の使用において有用なアジュバントが重合反応の間または後に添加されてもよい。これらとしては、補助界面活性剤;消泡剤、例えば、モノマー混合物の重量に基づいて約0.001〜約0.1重量%のレベルで使用されるSURFYNOL(商標)104EおよびNopco(商標)NXZなど;レベリング剤、例えば、モノマー混合物の重量に基づいて約0.001〜約0.1重量%のレベルで使用されるSag(商標)Silicone Antifoam 47など;酸化防止剤、例えば、モノマー混合物の重量に基づいて約0.1〜約5重量%のレベルで使用されるMAROXOL(商標)20およびIRGANOX(商標)1010など;可塑剤、例えば、FLEXOL(商標)可塑剤など;ならびに防腐剤、例えば、約30〜約45パーツパーミリオン(ppm)のレベルでのKATHON(商標)、または約300〜約500ppmのレベルでのPROXEL(商標)GXLなどが挙げられ得る。
【0077】
上に記載された材料の一部は、最終配合物中で相互作用することがあり、その結果、最終配合物の成分は、初期に添加されるものと異なることがあることが公知である。それにより形成された生成物は、その意図された用途において本発明の組成物を用いた際に形成される生成物を含めて、簡単な説明が可能でないこともある。それにもかかわらず、このような変更および反応生成物のすべては、本発明の範囲内に含まれ;本発明は、上に記載された成分を混合することによって調製される組成物を包含する。
【実施例】
【0078】
試料1−グアニル尿素と複合体を形成した、および有機ホスフィネートFR添加剤Exolit(商標)1230(Clariant)を有する組成物中の、PAM−4000であるモノマー35%を有するFRポリマー
半バッチ乳化重合のセットアップにおいて、175gの水、0.1gの30%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)および0.06gのDextrol OC−40を反応器に入れる。この混合物を75℃に加熱し、12gの水中1gの過硫酸アンモニウム(APS)の溶液を添加し、続いて、直ちに75℃で3時間プレミックスする。130gの水、6gのDextrol OC−40、0.8gの濃水酸化アンモニウム、6gの48%N−メチロールアクリルアミド(NMA)、89gのアクリル酸エチル(EA)、40gのメタクリル酸ブチル(BMA)および67gのSipomer(商標)PAM−4000のプレミックス混合物を調製し、反応器に添加する。6gの水を用いて、添加後にラインを洗い流す。30分後、12gの水中1gのAPSを一回で添加し、30分間反応させ、その後、62℃に冷却させる。62℃で、10gの水中0.36gの17.5%t−ブチルヒドロペルオキシド(t−BHP)および0.14gのBruggolite(商標)FF6(Bruggemann Chemicalからのスルフィン酸誘導体)を添加し、反応物を45分間撹拌する。1.2gの水、0.68gの17.5%t−BHPおよび0.14gの30%SLSの混合物、続いて、7gの水中0.2gのホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムの溶液を添加する。凝析から本質的に清浄である反応物を30℃未満に冷却させ、次いで、二重層チーズクロスを通してろ過する。
【0079】
200gのろ過された材料を、26gのジシアンジアミドおよび26gの水を有する500mlの反応器に入れる。この混合物を撹拌し、窒素雰囲気下に約2時間反応させ、その後、室温まで冷却させる。生成物をろ過し、次いで、Cowleブレードを備えた高速撹拌機を用いて1200rpmで30分間54gのExolit(商標)1230および50gの水とブレンドして、最終ポリマー組成物を生成させる。
【0080】
試料2−グアニル尿素と複合体を形成した、およびFR添加剤メラミンシアヌレートを有する組成物中の、PAM−4000であるモノマー65%を有するFRポリマー
63.7gのSipomer(商標)PAM−4000、25.5gのジシアンジアミド、0.1gのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)および89.2gの水を空気下に混合し、90℃に2時間加熱し、その後、冷却させる。
【0081】
生成物を、3gの48%NMA、34.3gのEAおよび1gのOC−40と混合する。反応器中、220gの水、20gのジシアンジアミド、0.5gの30%SLSおよび0.03gのOC−40を混合し、窒素下に撹拌し、次いで、75℃に加熱する。6gの水中0.55gのSPSを一回で、続いて、上述のプレミックスを3時間で添加する。3gの水を用いてラインを洗い流す。添加30分後、3gの水中0.1gのAPSを添加し、反応を75℃でさらに30分間進行し、その後、62℃に冷却させる。次いで、前の実施例においてと同様に、反応混合物を酸化還元反応に2回供する。30℃未満に冷却後、生成物をろ過し、次いで、45gのメラミンシアヌレートとブレンドする。
【0082】
試料3−グアニル尿素と複合体を形成した、PAM−4000であるモノマー70%を有するFRポリマー
300gのSipomer(商標)PAM−4000、120gのジシアンジアミド、0.3gのBHTおよび420gの水を90℃で2時間反応させる。生成物を、12gの48%NMAおよび128.6gのEAと混合して、775gの水および60gのジシアンジアミドが入っている反応器中に3時間でポンプ投入し、前の実施例で記載したとおりに25gの水中2.4gのAPSによって75℃で開始する。12gの水を用いてラインを洗い流す。さらに12gの水中0.45gのAPSを30分後に添加する。この混合物を30分間撹拌し、その後62℃に冷却させる。混合物を、12g水中0.31gのAPSおよび20gの水中0.31gのFF−6で2回酸化還元させ、その後、冷却させる。二重層化チーズクロスを通して生成物をろ過し、明らかな凝塊は見られない。
【0083】
試料4−グアニル尿素と複合体を形成した、PAM−4000であるモノマー97.5%を有するFRポリマー
292.5gのSipomer(商標)PAM−4000を、409.5gの水、117gのジシアンジアミドおよび0.24gのBHTと混合し、空気下に90℃にする。この反応物を約90〜約92℃で5.5時間加熱し、次いで、冷却させる。得られた溶液のpHは、4.52で測定される。
【0084】
470gの水および15gの次亜リン酸ナトリウムが入っている反応器を窒素雰囲気下に75℃に加熱し、18gの水中1.4gのAPSを添加する。その後、前に調製した溶液を、15gの48%N−メチロールアクリルアミドと一緒に、反応器中に3時間かけて計量しながら供給する。反応温度を78℃まで上昇させる。10gの水を用いて、ラインをすすぎ洗いする。計量30分後、9gの水中0.27gのAPSを添加し、反応を78℃でさらに30分間続ける。この反応混合物を62℃に冷却し、6gの水中0.2gのAPSおよび15gの水中0.2gのFF−6を含有する酸化還元系を順次に添加する。30分後、同じ酸化還元系を添加し、この反応物を室温に冷却させる。半透明な材料は、4.67のpHを有する。
【0085】
試料5−HEMAから直接製造したFRポリマー
51gのHEMAおよび0.03gのブチルヒドロキノンを250mlの3つ口フラスコに入れる。この混合物を空気下に50℃に加熱する一方で、27.9gの五酸化リンを30分かけて5回にわけて添加する。次いで、反応物を80℃に加熱し、2時間保持し、約60℃に冷却させる。12gの水、続いて、32.9gのジシアンジアミドを少しずつ添加し、反応温度を70℃未満に保つ。次いで、温度を90℃にさせ、3時間保持し、その後、60℃に冷却させ、60gの脱塩水を添加する。温度が30℃未満になるまで、この混合物を撹拌する。この水溶液のpHは、3.8であり、リンNMRは、44%のリンが、モノホスフェートであり、40%がジホスフェートであり、約16%が、トリホスフェートであることを明らかにする。
【0086】
この溶液に、34.65gのスチレン、29.25gのアクリル酸ブチル、7.5gの52%N−メチロールアクリルアミドおよび2.25gのOC−40を添加する。上に記載したとおりに重合を行って、本質的に凝塊のない安定なラテックスを得る。
【0087】
試料6−HEMAから直接製造したFRポリマー
37.1gのHEMAおよび0.02gのブチルヒドロキノンを250mlの3つ口フラスコに入れ、空気下に60℃に加熱する一方で、20.3gの五酸化リンを30分で5回にわけて添加する。反応物を空気下に60℃に加熱し、約2時間保持し、23gのスチレン、14.5gのアクリル酸ブチル、24gのジシアンジアミドおよび8gの水を添加する。温度をゆっくりと90℃にさせ、3時間保持し、その後、60℃に冷却させ、40gの脱塩水を添加する。温度が30℃未満になるまで、この混合物を撹拌する。この水溶液のpHは、4.0であり、リンNMRは、35.8%のリンが、モノホスフェートであり、47.5%がジホスフェートであり、約16.7%が、トリホスフェートであることを示す。
【0088】
この溶液に、1gのアクリル酸ブチル、3gの48%N−メチロールアクリルアミドおよび1.5gのOC−40を添加する。前に記載したとおりに重合を行って、本質的に凝塊のない安定なラテックスを得る。
【0089】
試料6(a)−HEMAから直接製造したFRポリマー
51.1gのHEMAおよび0.04gのブチルヒドロキノンを250mlの3つ口フラスコに入れ、空気下に50℃に加熱する一方で、20.3gの五酸化リンを30分で5回にわけて添加する。反応物を空気下に60℃に加熱し、約2時間保持し、30gのアクリル酸ブチル、0.02gのBHT、33gのジシアンジアミドおよび12gのDM水を添加する。温度をゆっくりと90℃にさせ、3時間保持し、その後、60℃に冷却させ、60gの脱塩水を添加する。温度が30℃未満になるまで、この混合物を撹拌する。この水溶液のpHは、3.8であり、リンNMRは、約40%のリンが、モノホスフェートであり、48%がジホスフェートであり、約12%が、トリホスフェートであることを示す。溶液を4.12gのトリエタノールアミンでpH4.4に調整する。
【0090】
この溶液に、35gのスチレン、4gの48%N−メチロールアクリルアミドおよび1.5gの30%ラウリル硫酸ナトリウム溶液を添加する。前に記載したとおりに重合を行って、本質的に凝塊のない安定なラテックスを得る。
【0091】
試料6(b)−HEMAから直接製造したFRポリマー
34gのHEMAおよび0.02gのブチルヒドロキノンを250mlの3つ口フラスコに入れ、空気下に50℃に加熱する一方で、18.6gの五酸化リンを30分で5回にわけて添加する。反応物を空気下に60℃に加熱し、約2時間保持し、23gのスチレン、0.02gのBHT、22gのジシアンジアミドおよび8gの水を添加する。温度をゆっくりと90℃にさせ、3時間保持し、その後、60℃に冷却させ、40gの脱塩水を添加する。温度が30℃未満になるまで、この混合物を撹拌する。この水溶液のpHは、3.44であり、これを、7.4gの20%NaOH溶液でpH4.47に調整する。
【0092】
この溶液に、19gのアクリル酸ブチル、3gのイタコン酸および1gの30%ラウリル硫酸ナトリウム溶液を添加する。前に記載したとおりに重合を行って、本質的に凝塊のない安定なラテックスを得る。
【0093】
試料7−フェノール樹脂と一緒のFRポリマー
試料4のポリマーを、フェノール樹脂と一緒に難燃添加剤として用いる。ブレンド比は、乾燥重量基準で、50%フェノール樹脂/50%試料4である。
【0094】
試料8−ウレタン樹脂と一緒のFRポリマー
試料4のポリマーを、水性(waterborne)ポリウレタン分散物中難燃添加剤として用いる。ブレンド比は、乾燥重量基準で、50%ポリウレタン(Lubrizol CorporationからのSancure(登録商標)2715)/50%試料4である。
【0095】
試料9−尿素ホルムアルデヒド樹脂と一緒のFRポリマー
試料4のポリマーを、尿素ホルムアルデヒド樹脂と一緒に難燃添加剤として用いる。ブレンド比は、乾燥重量基準で、50%尿素ホルムアルデヒド(Arclinから)/50%試料4である。
【0096】
(実施例1)−ラテックス樹脂の性能データ
試料1、2、3、5および6の組成物を含浸させた紙を、いくつかの異なる対照を含浸させた紙に対して難燃性について試験する。第1の対照組成物は、Hycar(商標)26846であり、これは、Lubrizolから入手できる市販用ラテックス組成物である。それを、それ自体について、および市販用難燃添加剤に関して、水浸漬前と、脱塩水に24時間浸漬させ、乾燥させた後との両方で、TAPPI461、Apparatus3.1〜3.4に従って垂直燃焼試験で試験する。
【0097】
PAM−4000も、それ自体について、周囲温度で乾燥させ、300°Fで5分間硬化させたキャストフィルムとして試験する。
【0098】
結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
Pyrosan(商標)SYNは、Emerald Performance Materialsから入手できる有機ホスフェート化合物である。
【0100】
Antiblaze(商標)LR3、LR4、およびMCは、Albemarle Corp.から入手できるポリリン酸アンモニウムである。
【0101】
Martinal(商標)OL−104LEは、Albemarle Corp.から入手できる水酸化アルミニウムである。
【0102】
Melapur(商標)MPは、DSM Melapurから入手できるメラミンホスフェートである。
【0103】
試料1〜試料6を垂直燃焼について試験する。結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
(実施例2)−フェノール樹脂についての性能データ
紙に、試料7の難燃性ブレンド、またはレゾール型対照ポリマーに含浸させ、難燃性について試験する。試料および対照を、水浸漬前と脱塩水に浸漬後との両方で、TAPPI461、Apparatus3.1〜3.4に従って、垂直燃焼試験においてそれら自体に対して試験する。水浸漬は、紙試料を脱塩水に2時間浸漬し、続いて乾燥することによって行う。この過程を、垂直燃焼試験前に合計6時間の浸漬について合計3回繰り返す。
【0105】
結果を以下の表3に示す。
【0106】
【表3】
(実施例3)−ポリウレタン樹脂についての性能データ
試料8の組成物を含浸させた紙を、Sancure(商標)2715(脂肪族水性ポリウレタン型ポリマー)を含浸させた紙に対して難燃性について試験する。試料および対照を、水浸漬前と脱塩水に浸漬後との両方で、TAPPI461、Apparatus3.1〜3.4に従って、垂直燃焼試験においてそれら自体に対して試験する。水浸漬は、紙試料を脱塩水に2時間浸漬し、続いて乾燥することによって行う。この過程を、垂直燃焼試験前に合計6時間の浸漬について合計3回繰り返す。
【0107】
結果を以下の表4に示す。
【0108】
【表4】
(実施例4)−尿素ホルムアルデヒド樹脂についての性能データ
試料9の組成物を含浸させた紙を、Arclin(商標)からの尿素ホルムアルデヒド樹脂を含浸させた紙に対して難燃性について試験する。試料および対照を、水浸漬前と脱塩水に浸漬後との両方で、TAPPI461、Apparatus3.1〜3.4に従って、垂直燃焼試験においてそれら自体に対して試験する。水浸漬は、紙試料を脱塩水に2時間浸漬し、続いて乾燥することによって行う。この過程を、垂直燃焼試験前に合計6時間の浸漬について合計3回繰り返す。
【0109】
結果を以下の表5に示す。
【0110】
【表5】
上で言及した文献のそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。いずれの文献についての言及も、このような文献が従来技術として資格があるか、またはいずれの権限においても当業者の一般知識を構成することの是認ではない。実施例中を除いて、またはそうでなければ明示的に示される場合、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを特定する本説明における数量のすべては、語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。本明細書で示される量、範囲、および比の上限および下限は、独立して組み合わされてもよいことが理解されるべきである。同様に、本発明のそれぞれの要素についての範囲および量は、他の要素のいずれかについての範囲または量と一緒に使用され得る。本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、考慮下の組成物の基本のおよび新規な特性に実質的に影響を及ぼさない物質の包含を許容する。