(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150850
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】絶縁ハウジング及び該絶縁ハウジングを製造する方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20170612BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20170612BHJP
B21D 51/18 20060101ALI20170612BHJP
B21D 11/08 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
F16L59/065
F16L59/02
B21D51/18 F
B21D51/18 B
B21D11/08
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-134669(P2015-134669)
(22)【出願日】2015年7月3日
(65)【公開番号】特開2016-17635(P2016-17635A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2015年7月27日
(31)【優先権主張番号】10 2014 109 332.1
(32)【優先日】2014年7月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515183632
【氏名又は名称】ケーニヒ メタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Koenig Metall GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】515183643
【氏名又は名称】ヨープスト ハー. ケアスペ
【氏名又は名称原語表記】Jobst H. Kerspe
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨープスト ハー. ケアスペ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フィッシャー
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−019392(JP,A)
【文献】
特開平11−011454(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/017903(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0221011(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0305535(US,A1)
【文献】
特開2001−336691(JP,A)
【文献】
特開2012−180903(JP,A)
【文献】
国際公開第01/018316(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
B21D 11/08
B21D 51/18
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁(12)と、当該内壁(12)から離隔された外壁(13)と、を含む2重壁を備えた絶縁ハウジングであって、
前記内壁(12)と前記外壁(13)との間に真空密に形成された空間に、多孔質の、有利にはマイクロ孔質またはナノ孔質の充填材料(15)が充填されており、当該空間は、少なくとも軽度の真空を形成するために排気されており、
前記絶縁ハウジングは製造段階において、最初は、各壁要素(2)間の移行部が切り込み(10)として形成された一続きの平坦な面状部材(1)の形態であり、
前記切り込み(10)の各底部はそれぞれ、曲げ線(11)によって規定されており、
前記各曲げ線(11)を軸として前記各壁要素(2)を旋回して起こし立て、前記絶縁ハウジングの少なくとも大部分を閉鎖して、最後のステップにおいて、前記壁要素(2)が互いに隣接する領域において生じる当接箇所(18)において当該壁要素(2)を永続的に相互に結合することにより、前記絶縁ハウジングの立体形状を確立することができる、絶縁ハウジングにおいて、
前記一続きの平坦な面状部材(1)は、前記壁要素(2)と、底要素(3)と、上板要素(4)と、背面壁(5)と、第1および第2の側壁(6および7)と、を含み、
前記各要素(2〜7)はそれぞれ、内壁(12)と外壁(13)とを含む2重壁構造であり、
前記内壁(12)と前記外壁(13)との間に充填空間(14)が位置しており、
前記各内壁(12)はそれぞれ、前記外壁(13)より格段に薄肉に形成されており、
前記内壁(12)に繋がっている移行薄膜部(16)に移行するように、前記内壁(12)の、前記平坦な面状部材(1)の外輪郭における周縁は、事前成形されており、
前記移行薄膜部(16)は、前記平坦な面状部材(1)の外周面取り部を成し、
前記移行薄膜部(16)は、前記内壁(12)および前記外壁(13)より格段に薄肉に形成され、
前記移行薄膜部(16)は、前記内壁(12)から延在する第1屈曲部と、前記第1屈曲部から延在する第2屈曲部と、前記第2屈曲部から延在するとともに前記外壁(13)に結合された第3屈曲部と、を有し、
前記切り込み(10)の領域においても、前記内壁(12)と前記外壁(13)との間に真空密に形成された前記空間に、多孔質の、有利にはマイクロ孔質またはナノ孔質の充填材料(15)が充填されており、前記充填材料(15)の支持機能によって、前記切り込み(10)の領域においても、前記内壁(12)と前記外壁(13)との間の間隔が維持される、
ことを特徴とする絶縁ハウジング。
【請求項2】
前記充填材料(15)は、前記空間において更に支持機能を有する、
請求項1記載の絶縁ハウジング。
【請求項3】
前記充填材料(15)は、固体熱伝導率が低く、かつ、ガス放出が少ない、微細孔構造の鉱物材料であるか、
または、
前記充填材料(15)は、とりわけ高密度化されたガラス繊維から成る、開放セル無機発泡材である、
請求項2記載の絶縁ハウジング。
【請求項4】
前記外壁(13)は特殊鋼から製造されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載の絶縁ハウジング。
【請求項5】
前記内壁(12)は、有利には薄肉である特殊鋼板である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の絶縁ハウジング。
【請求項6】
前記移行薄膜部(16)は前記外壁(13)と、周縁において、すなわち内側と外側とにおいて真空密に溶接されているか、または、これに代えて接着継目によって接着されているか、または、たとえば縁曲げ等の機械的結合を用いて、前記外壁(13)と真空密に結合されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の絶縁ハウジング。
【請求項7】
前記移行薄膜部(16)を前記外壁(13)に結合する溶接継目(17)は、ロール溶接継目またはレーザ溶接継目である、
請求項6記載の絶縁ハウジング。
【請求項8】
前記移行薄膜部(16)を前記外壁(13)と、包囲するように真空密に溶接した後、前記平坦な面状部材(1)の排気が行われ、有利には、残留ガス圧p≦0.1ミリバールになるまで行われる、
請求項1から7までのいずれか1項記載の絶縁ハウジング。
【請求項9】
前記平坦な面状部材(1)の排気後に、前記平坦な面状部材(1)を起こし立てて前記絶縁ハウジングが前記立体形状にされる、
請求項1から8までのいずれか1項記載の絶縁ハウジング。
【請求項10】
前記絶縁ハウジングは最終的に前記立体形状になったときに、前記当接箇所(18)を覆う適切な機械的結合部材を用いて、たとえばねじ留めされる金属ラグを用いて、および/または接着により固定可能である、
請求項9記載の絶縁ハウジング。
【請求項11】
絶縁ハウジングの製造方法であって、
・それぞれ内壁(12)と外壁(13)とを含む複数の壁要素(2)が互いに繋がった平坦な面状部材(1)であって、当該各壁要素(2)間の移行領域が、後で前記平坦な面状部材(1)を起こし立てて立体形状にするための曲げ線(11)を設定する切り込み(10)により形成された平坦な面状部材(1)を形成するステップ
を有し、
・前記内壁(12)と外壁(13)との間には、真空密の空間が形成され、当該空間に、多孔質の充填材料(15)が、有利には高密度化されたガラス繊維が充填されており、
・前記内壁(12)は、当該内壁(12)に繋がっている移行薄膜部(16)に移行するように成形されており、当該移行薄膜部(16)は、前記平坦な面状部材(1)の外周面取り部を成し、
・前記移行薄膜部(16)は、前記内壁(12)および前記外壁(13)より格段に薄肉に形成され、
・前記移行薄膜部(16)は、前記内壁(12)から延在する第1屈曲部と、前記第1屈曲部から延在する第2屈曲部と、前記第2屈曲部から延在するとともに前記外壁(13)に結合された第3屈曲部と、を有し、
・前記切り込み(10)の領域においても、前記内壁(12)と前記外壁(13)との間に真空密に形成された前記空間に、多孔質の、有利にはマイクロ孔質またはナノ孔質の充填材料(15)が充填されており、前記充填材料(15)の支持機能によって、前記切り込み(10)の領域においても、前記内壁(12)と前記外壁(13)との間の間隔が維持され、
・前記移行薄膜部(16)はそれぞれ、取り囲むように前記外壁(13)と真空密に溶接され、
・次に、前記平坦な面状部材(1)の排気を行い、
・次に、少なくとも大部分が閉じられた3次元の絶縁ハウジングが形成されるように、底壁要素(3)を中心として前記各壁要素(2)を起こし立て、
・最後に、前記各壁要素(2)の各当接箇所(18)の領域において、適切な機械的結合部材および/または接着により、前記各壁要素(2)を最終的な前記立体形状に固定する、
ことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内壁と該内壁から離間された外壁とを含み、前記内壁と前記外壁との間に真空密に構成された介在空間が、多孔質の充填材料で、好ましくはマイクロ孔質若しくはナノ孔質の充填材料で充填され、少なくともわずかな真空状態を形成するために排気される、二重壁を備えた絶縁ハウジングに関している。また本発明はその製造方法にも関しており、この方法ではまず絶縁ハウジングが製造の範囲内で連続的な平坦な面状部材として形成され、個々の壁要素の間の移行領域は、その底部がそれぞれ曲げ線によって規定される切欠きとして形成される。前記絶縁ハウジングの立体形状は、次のように製造可能である。すなわち個々の壁要素が各曲げ線を中心に旋回して立ち上がり、それによって当該絶縁ハウジングが少なくとも十分に閉じられ、最終段階において、前記壁要素が、当接する壁要素領域内に生じた突き合わせ箇所において相互に永続的に接続するように製造可能である。
【背景技術】
【0002】
そのような絶縁ハウジングは、米国特許出願公開第2013/0256318号明細書から公知である。ここではそれぞれ端面側が開口している相互に接続された矩形管のチューブから閉塞した立体形状が前面壁及び背面壁なしで構築されている。前面壁及び/又は背面壁の接合は、この実施形態では、端面側を除いて閉じられている矩形管の利用に基づき不可能である。この管路では、絶縁壁を形成するために充填材が充填されており、その際には最初に開口している端面側が閉じられ、それに続いて当該管路が充填材で充たされる。その後で別の端面側も閉じられる。これらの処理がチューブ内で相互に接続されたすべての矩形管に対して行なわれた後で、前面側と背面側にて開口したハウジングが、立ち上げられて、排気される。
【0003】
さらに独国特許出願公開第4311510号明細書からは、それぞれが折り畳み可能な平坦パネルから、それぞれ底面プレートと、2つの側壁と、背面壁と、天井要素と、比較的小さな内側ケーシングと比較的大きな外側ケーシングとを含み、閉じられた立体形状に立ち上げられる絶縁ハウジングが公知である。ここでの比較的小さな内側ケーシングは、引き続き前記外側ケーシングに挿入され、それらの介在空間が先に完成された別の折り畳み可能なパネルと共に気密性のプラスチックフィルムの間に入れられた粉末で充たされる。それに続いてこの前記内側ケーシングと前記外側ケーシングの間が粉末で充たされたプラスチック要素は、この確定された位置において当接する壁部と接着される。その後で初めてこのハウジングは排気が行われ、それによって初めて装置の全体的なスキルが形成される。
【0004】
さらに別の絶縁ハウジングは、欧州特許出願公開第0990406号明細書から公知である。詳細にはこの絶縁ハウジングは、例えば、冷蔵庫、冷凍庫、給湯器などの家電製品用の大面積の断熱ハウジングである。この種の断熱ハウジングは、従来方式によれば、介在的なプラスチックの発泡断熱材を用いて形成される。エネルギー消費を低減するために効果的な断熱材の観点においては、いずれにせよ益々効率のよい断熱材が必要となる。
【0005】
同等か少なくとも許容可能な絶縁体厚さのもとでこの点に関する改善を行うならば、真空断熱だけで達成することが可能である。この関係において、提案されている公知の解決策は、冷蔵庫ハウジングに、既製の真空断熱板、いわゆる真空断熱パネル(VIP)を装着し、残りの介在空間には発泡材を充填することである。しかしながらこの解決策も、目下のところはいくらか不十分であることがわかっている。なぜなら、一方で多くの異なる構成要素、材料及びユニットによって高い製造コストが発生するからである。その上さらに、介在空間の発泡材によって、異なる材料同士が多かれ少なかれ不可逆的に接着される結果がもたらされ、それによって寿命が過ぎた後の冷蔵庫ハウジングのその後の再利用や活用が事実上不可能となってしまう。そのようなハウジングは一般に、完全な危険廃棄物として廃棄処理されなければならない。また、真空断熱パネル(VIP)の外套部分には、それらの補強のために金属部品を含むため、少なくとも接合部の領域において、すなわち真空断熱パネル相互に突き合わされている領域において、熱橋絡が形成され、それに伴ってこの領域での対流が可能となり、このことが断熱効果の低下を引き起こす。
【0006】
これに関連して、欧州公開第0990406号公報からは、内壁と外壁との間の介在空間を、支持体を有する真空絶縁材によって充填するための、2重壁かつ真空密の冷蔵庫のハウジングが公知である。ここでは、支持体は、滴下可能な(粒状又は粉末状の)ケイ素酸化物から形成されており、有利には、このケイ素酸化物は泡粒である。通常、介在空間は、残留ガス圧がp<10
1mbarとなるまで排気される。
【0007】
この文献とは関係なく、国際公開第01/18316号公報から、断熱成形体及びその製造方法が公知である。これは、具体的には、微細多孔性の絶縁材料から成るプレスされた絶縁層を含む断熱プレートとして構成された断熱成形体である。絶縁層は可撓性であり、このため、特に絶縁基部に、チューブ、有利にはヒータチューブが密着して設けられている。これにより、少なくとも、絶縁層は、長辺側に、曲げ線に沿って配向された溝状の切り込みを有する。当該切り込みにより、まずヒータチューブを取り巻くように平坦な断熱成形体を配置し、さらにこれを被覆材によって包囲することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0256318号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第4311510号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0990406号明細書
【特許文献4】欧州公開第0990406号公報
【特許文献5】国際公開第01/18316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうした従来技術から出発して、本発明の基礎とする課題は、絶縁ハウジングの製造及び保管及び輸送の点で従来技術に比べて有利であり、かつ、少なくとも従来技術と同等の絶縁特性を有する絶縁ハウジング、並びに、こうした絶縁ハウジングの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する絶縁ハウジング、及び、請求項13記載の特徴を有する方法により解決される。本発明の絶縁ハウジングの有利な実施形態は、従属請求項2−12から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】絶縁ハウジングの、互いに接続される壁要素からなる平坦な面状部材を斜視図で示している。
【
図2】
図1においてAAで示した、上記の平坦な面状部材の詳細を断面図で示している。
【
図3】上記の壁要素を上記の絶縁ハウジングの立体に起こし立てた後の、
図1に示した平坦な面状部材を正面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の絶縁ハウジングの特徴は、絶縁ハウジングが、まず、個々の壁要素を含む平坦な面状部材として構成され、個々の壁要素間の移行領域がそれぞれ切り込みとして成形され、各切り込みの底がそれぞれ曲げ線によって定められる、ということにある。なお、絶縁ハウジングの3次元の立体形状は、個々の壁要素を、底壁要素を取り囲むように立てて起こし、ついで、曲げ線を中心として、少なくとも大部分が閉じられた立体形状が形成されるまで回転させ、さらに、隣接する別の壁要素との当接位置で各壁要素を相互に永続的に接合させることにより、簡単に製造できる。
【0013】
よって、本発明は、最初から完成形態の絶縁ハウジングを製造するのでなく、むしろ、絶縁ハウジングの個々の壁要素を含む、組み立て式の平坦な面状要素としての中間製品を製造するという、驚くべき着想を基礎としている。こうした平坦な面状要素は、格段に小さな所要スペースで容易にスタッキングして保管でき、必要に応じて、格段に小さな所要スペースで輸送できる。最終的な成形ステップに至ってはじめて、個々の壁要素を曲げ線の領域で回転させることにより絶縁ハウジングの3次元の立体形状が形成され、続いて、個々の壁要素が当該位置で永続的に固定される。
【0014】
有利な実施形態では、内壁と外壁との間の介在空間の充填材料が、支持機能を有するように形成される。つまり、本発明においても、支持体を有する真空絶縁材を実現できる。この場合、充填材料は、その支持作用に基づき、外壁及び内壁を、定められた間隔で、絶縁ハウジングの最終的な立体形状に保持する。したがって、場合により多少の効果の低下はあるにしても、当該領域における絶縁作用も保証される。
【0015】
このために、固体熱伝導性が低く、同時にガス抜けも小さい、微細多孔性構造を有する鉱物材料が特に適している。これに代えて、開放セル無機発泡体を使用することもできる。充填材料としては、フュームドシリカが適している。また、有利な実施形態として、充填材料を、高密度なガラスファイバから形成してもよい。
【0016】
本発明の絶縁ハウジングの外壁は、有利には、必要な変形不能性及び腐食耐性を有する高品質な特殊鋼から製造される。
【0017】
一般的には格段に薄肉に構成される内壁も、耐蝕上の理由から特殊鋼板とする。
【0018】
具体的な実施形態において上記の絶縁ハウジングの個々の壁要素間の移行領域は、上記の内壁が、平坦な面状部材を包囲する外周相を構成するように変形される。
【0019】
ここでは上記の移行薄膜部は有利には、上記の内壁および外壁よりも格段に薄肉に構成される。肉厚の低減は、例えば対応する変形プロセスによって、または異なる薄板厚さで前もって作製されるいわゆる「テイラード・ブランク」を使用することによって行うことができる。
【0020】
有利な発展形態において上記の移行薄膜部はつぎに、上記の平坦な面状部材の外周面取り部の領域において、真空密に包囲するように上記の外壁に溶接される。
【0021】
ここでは上記の移行薄膜部と外壁とを接続するためのそれぞれの溶接継目は、簡単に実現されるシーム溶接継目またはレーザ溶接継目によって実現することができる。
【0022】
この過程の間に上記の平坦な面状部材において互いに接続される個々の壁要素が真空密で溶接された後、これらの関連する面状部材は、有利にはp≦0.1ミリバールの残留ガス圧になるまで排気が行われる。さらにこれは、公知のように極めて高い断熱効果を有しかつ考えられ得る対流を十分かつ持続的に阻止する、支えられた真空絶縁である。
【0023】
すべての壁要素を相応に排気した後、輸送または保管に適した完全に機能する絶縁ハウジングが構成されるが、まだ平坦な面状部材である。最後にはつぎに最終製造ステップにおいて有利には上記の絶縁ハウジングをエンドユーザないしは市場に発送する少し前にこの平坦な面状部材を立体形状に起こし、付加的な機械的な接続部材は、例えば、外側の、それぞれ関連する壁要素のそれぞれの突き当て面を跨ぐ、ねじによって固定される薄板ラグにより、または適切な接着継目によって互いに堅牢に接続される。
【0024】
択一的には上記の本発明による課題は、請求項13に記載した特徴的構成によって解決される。
【実施例】
【0025】
以下では、図面において概略的にのみ示した実施例に基づき、本発明を詳しく説明する。
【0026】
図1には、この図では完成した状態では示されていない、十分に閉じられた断熱ハウジングの、相互に隣接している複数の壁要素2が示されている。ここでは、平坦な面状部材1が、詳細には次の複数の壁要素2、つまり底面エレメント3、天井エレメント4、後壁5並びに第1の側壁6及び第2の側壁7から形成されている。個々の壁要素2は、移行領域を介して、隣接している別の壁要素2と相互に結合されている。移行領域は実質的に切り込み10の形状を有している。相応の切り込みは、必ずしも三角形に形成されている必要はなく、場合によってはU字状又は桶状の輪郭の形状を有していてもよい。つまり、例えば、切り込み10を溝状に形成することもできる。切り込み10の各頂点は、以下では、仮想の折り曲げ線11とみなされる。個々の壁要素2自体はそれぞれ二重壁として形成されている。つまり、壁要素2は内壁12及び外壁13から形成されており、且つ、内壁12と外壁13との間には充填空間14が設けられている。
【0027】
図2の断面図によれば、外壁13は特殊鋼外側金属薄板であり、これは有利には0.5mmから0.8mmの間の金属薄板厚さを有している。内壁12も特殊鋼金属薄板として形成されているが、しかしながら外壁13よりも遙かに肉薄であり、例えば0.5mm未満の金属薄板厚さを有している。内壁12と外壁13との間には充填空間14が設けられており、この充填空間14には断熱性のフィラーが充填されている。このフィラーは、それと同時に支持機能も備えている。この支持機能によって、切り込み10の領域においても、内壁12と外壁13との間にある程度の間隔が維持される。ここに示す実施例では、フィラー15は高密度ガラスファイバである。ここでは、平坦な面状部材1の全ての壁要素2が同様に形成されていることを前提とする。
【0028】
図2の詳細図においては、相互に隣接している壁要素2間に形成されている移行領域が断面図で示されている。この図によれば、各壁要素2の端面を覆っている移行薄膜部16が平坦な面状部材1を取り囲む環状の外周面取り部を形成するように、移行薄膜部16は肉薄の内壁12に一体成形されている。つまり、移行薄膜部16はこの外周面取り部の壁部を形成する、内壁12の伸長部を表している。移行薄膜部16は例えば、付加的な変形プロセスによって、内壁12よりも著しく薄く形成されている。
【0029】
移行薄膜部16は、真空密に外壁13に溶接されている。相応の溶接シームを手作業で比較的簡単に、線状溶接シームとして、平坦な面状部材1全体の周囲にわたり形成することができる。択一的に、溶接シームの代わりに、その個所において接着接合部を設けることができるか、又は、例えば縁曲げによって機械的な接合部を設けることもできる。相互に結合されている全ての壁要素2が真空密に相応に閉じられた後には、残留ガス圧力がp≦0.1mbarになるまで、繋がっている平坦な面状部材1の充填空間14全体の真空化が行われる。これによって、壁要素2の断熱効果、したがって断熱ハウジング全体の断熱効果は改めて著しく高められる。
【0030】
この限りにおいて完成した平坦な面状部材1を、続いて、この展開された形態でスペースを節約して保管又は搬送することができる。
【0031】
通常の場合、顧客又は商店に出荷する直前に、最後の製造ステップにおいて、個々の壁要素2が、
図1に記入されている折り曲げ線11について示されている矢印の向きに従って起こされるか、又は折り返され、それによって、十分に閉じられた断熱ハウジングが形成される。断熱ハウジングはこの立体形状において以下のように固定される。つまり、切り込み10によって目印が付けられている移行領域の内側及び/又は外側に適切な接続素子、例えば接続面に被さるタブを取り付け、例えば固定ねじによって位置固定し、それによって壁要素2が断熱ハウジングの3次元の立体形状において固定される。
図1の平坦な面状部材1を起こして、
図3の最終的な立体形状にした後に、冷蔵庫のドアを除いた、例えば冷蔵庫又は大型の冷凍冷蔵庫のための完全な断熱ハウジングが形成される。冷蔵庫のドアは、例えば断熱ハウジングに内装部品を取り付けた後に、断熱ハウジングの後壁とは反対側のフレームの片側に旋回可能に枢着される。通常の場合、冷蔵庫のドアにもやはり、他の壁要素2と同様の支持型真空断熱部が設けられている。
【0032】
ここでは、同じ技術によって、冷蔵庫又は冷凍庫のハウジングだけでなく、冷蔵室又は冷凍室全体も、その種の面状部材から構成することができる。自動車の分野においては、この技術が、バッテリケーシングを形成するために、又はエンジンカプセル化のために使用される。機器製造においては、この技術によって、オーブンマッフル又は蓄熱器を実現することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 面状部材
2 壁要素
3 底要素
4 天井(上板)要素
5 後壁/背面壁
6 第1の側壁
7 第2の側壁
10 切り込み
11 曲げ線
12 内壁
13 外壁
14 充填空間
15 フィラー
16 移行薄膜部
17 溶接継目
18 突き合わせ(当接)箇所